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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024119047
(43)【公開日】2024-09-02
(54)【発明の名称】樋支持具及び樋支持構造
(51)【国際特許分類】
   E04D 13/072 20060101AFI20240826BHJP
【FI】
E04D13/072 B
E04D13/072 502F
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024021354
(22)【出願日】2024-02-15
(31)【優先権主張番号】P 2023024984
(32)【優先日】2023-02-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000002174
【氏名又は名称】積水化学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100161207
【弁理士】
【氏名又は名称】西澤 和純
(74)【代理人】
【識別番号】100152272
【弁理士】
【氏名又は名称】川越 雄一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100147267
【弁理士】
【氏名又は名称】大槻 真紀子
(74)【代理人】
【識別番号】100188592
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 洋
(72)【発明者】
【氏名】鎌田 政博
(57)【要約】
【課題】物件ごとに勾配が異なる樋においても適用可能な樋支持具及び樋支持構造を提供する。
【解決手段】樋を支持する樋支持具Aであって、前記樋を支持し、前記樋の支持位置の高さを調整する第1調整部70を有する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
樋を支持する樋支持具であって、
前記樋を支持し、前記樋の支持位置の高さを調整する第1調整部を有する樋支持具。
【請求項2】
前記第1調整部は、前記樋支持具の底片に着脱する請求項1に記載の樋支持具。
【請求項3】
前記第1調整部に装着される調整ボルトを有し、
前記第1調整部は、前記調整ボルトにより前記樋の支持位置の高さを調整する請求項1に記載の樋支持具。
【請求項4】
屋根の軒先板先端部に取り付けられる支持具本体と、
前記支持具本体の下方に着脱自在に支持される係止片と、
を有し、
前記係止片は前記支持具本体に対して上下方向に調節可能であり、前記係止片が前記第1調整部である、請求項1に記載の樋支持具。
【請求項5】
前記樋支持具の傾きを変更することで前記樋の支持位置の高さを調整する第2調整部を有する請求項1に記載の樋支持具。
【請求項6】
前記樋支持具の前記傾きは、前記樋の長手方向からみた傾きである請求項5に記載の樋支持具。
【請求項7】
屋根の軒先板先端部に取り付けられる支持具本体と、
前記軒先板先端部と前記支持具本体とを固定するボルトおよびナットと、
を有し、
前記第2調整部は、前記ボルトと前記ナットの間に配置されるスペーサである、
請求項6に記載の樋支持具。
【請求項8】
前記樋支持具の前記傾きは、屋根の軒先板先端部の正面方向からみた傾きである請求項5に記載の樋支持具。
【請求項9】
請求項1から8のいずれか一項に記載の樋支持具を複数有する樋支持構造であって、複数の前記樋支持具は、前記樋の支持位置の高さが異なる樋支持構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、樋支持具及び樋支持構造に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、折板屋根の軒先先端部に取付けられて、軒樋(雨樋)を支持するために使用される受型吊具が開示されている。雨樋はこの受型吊具の本体部に固定される。また特許文献1には、複数の雨樋の受型吊具が複数個所において折板屋根の軒先側先端部に取付けられ、雨樋を全体として支持する構造が開示されている。
【0003】
この受型吊具では、本体部は、水平方向に延びる上部片と、鉛直方向に延びる側部片と、上部片の下部に位置して水平方向に延びる下部片と、によって、U字状の形状を構成している。本体部を構成する上部片、側部片及び下部片は、例えば、板状部材を加工して成型される。特許文献1には、例えば、1枚の板状部材を、上部片、側部片及び下部片を含んだU字型を構成するように、プレス成型によって成型してもよいし、複数の板状部材を溶接し、U字型の本体部を構成してもよいことが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2022-150188号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1は、複数の雨樋の受型吊具が複数個所において折板屋根の軒先側先端部に取付けられ、雨樋を全体として支持する構造であることを開示している。雨樋は、勾配を設けることで水が下流側に流れる。特許文献1に記載のような構造においては、適切な勾配を設けるために、物件ごとに特注の受型吊具を製作することが一般的である。例えば、一組で4つの受型吊具を用いる支持構造を、軒先側先端部に2つ取り付ける場合、一組中の4つの受型吊具は同一のものを用いる。ただし、雨樋は下流側に向かって傾斜するので、下流側に向かって、受型吊具が雨樋を支持する位置が低くなることが必要である。このため、1つの組の受型吊具は、その上流側の組の受型吊具より低い位置で雨樋を支持する。この場合、雨樋の長さや設定勾配によっては、一組中の4つの受型吊具のうち、例えば、最も下流側の受型吊具が雨樋を支持し、残りの受型吊具は雨樋を支持しない場合がある。このような場合、雨樋の撓み(変形)や破損、応力集中が発生する虞がある。また、雨樋の撓みによる水溜まり、外観への影響も懸念される。
【0006】
本開示は、前述した事情に鑑みなされたものであって、物件ごとに勾配が異なる樋においても適用可能な樋支持具及び樋支持構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記課題を解決するために、本開示は以下の形態を提案している。
(1)本開示の一実施形態に係る樋支持具は、樋を支持する樋支持具であって、前記樋を支持し、前記樋の支持位置の高さを調整する第1調整部を有する。
【0008】
上述の構成からなる樋支持具によれば、調整部が樋の支持位置の高さを調整できる構成であるので、樋を適切な位置で支持することができる。これにより、樋の勾配に応じて、上記樋支持具は適切に樋を支持することができる。物件ごとに樋の勾配が異なる場合でも、調整部で樋の支持位置を適切に調整できる。
【0009】
(2)上記(1)において、前記第1調整部は、前記樋支持具の底片に着脱してもよい。
【0010】
調整部は樋支持具の底部に着脱する構成であるので、板厚の異なる複数の調整部を準備することができ、物件ごとに現場において調整部を採用することができる。
【0011】
(3)上記(1)において、前記第1調整部に装着される調整ボルトを有し、前記第1調整部は、前記調整ボルトにより前記樋の支持位置の高さを調整してもよい。
【0012】
調整部に調整ボルトが装着される構成であるので、樋を適切な位置で支持することができる。物件ごとに樋の勾配が異なる場合でも、調整部で樋の支持位置を適切に調整できる。
【0013】
(4)上記(1)において、屋根の軒先板先端部に取り付けられる支持具本体と、前記支持具本体の下方に着脱自在に支持される係止片と、を有し、前記係止片は前記支持具本体に対して上下方向に調節可能であり、前記係止片が前記調整部であってもよい。
【0014】
係止片が支持具本体に対して上下方向に調節可能であるので、樋支持具は樋を適切な位置で支持することができる。物件ごとに樋の勾配が異なる場合でも、係止片で樋の支持位置を適切に調整できる。
【0015】
(5)上記(1)において、前記樋支持具の傾きを変更することで前記樋の支持位置の高さを調整する第2調整部を有してもよい。
【0016】
(6)上記(5)において、前記樋支持具の前記傾きは、前記樋の長手方向からみた傾きであってもよい。
【0017】
(7)上記(6)において、屋根の軒先板先端部に取り付けられる支持具本体と、前記軒先板先端部と前記支持具本体とを固定するボルトおよびナットと、を有し、前記第2調整部は、前記ボルトと前記ナットの間に配置されるスペーサであってもよい。
【0018】
(8)上記(5)において、前記樋支持具の前記傾きは、屋根の軒先板先端部の正面方向からみた傾きであってもよい。
【0019】
(9)本開示の一実施形態に係る樋支持構造は、上記(1)から(8)のいずれか一項に記載の樋支持具を複数有する樋支持構造であって、複数の前記樋支持具は、前記樋の支持位置の高さが異なる。
【0020】
本実施形態の樋支持構造によれば、複数の樋支持具は、樋の支持位置の高さが異なっているので、樋の勾配に応じて、上記樋支持具は適切に樋を支持することができる。
【発明の効果】
【0021】
本開示によれば、物件ごとに勾配が異なる樋においても適用可能な樋支持具及び樋支持構造を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】本開示の第1実施形態に係る樋支持具を示す斜視図である。
図2】第1実施形態の樋支持具により樋を支持した状態を示す斜視図である。
図3図2の平面図である。
図4A】本開示の第2実施形態に係る樋支持具の調整部の一例を示すもので、側面からみた概略図である。
図4B】第2実施形態に係る樋支持具の調整部の他の例を示すもので、側面からみた概略図である。
図4C】第2実施形態に係る樋支持具の調整部の他の例を示すもので、側面からみた概略図である。
図5A】本開示の第3実施形態に係る樋支持具の調整部の一例を示すもので、側面からみた概略図である。
図5B】第3実施形態に係る樋支持具の調整部の別の例を示すもので、側面からみた概略図である。
図5C】第3実施形態に係る樋支持具の調整部の調整方法の一例を示す概略図である。
図6】本開示の第4実施形態に係る樋支持具の調整部の一部を示す拡大概略図である。
図7A】スペーサの一例の概略を示す平面図である。
図7B】スペーサの別の例の概略を示す平面図である。
図8】本開示の第5実施形態に係る樋支持具の調整部の一例を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
本開示の各実施形態に係る樋支持具について図面を参照しながら説明する。以下の説明では、各実施形態において共通する構成要素には同一符号を付してそれらの重複説明を省略する場合がある。
【0024】
[第1実施形態]
図1から図3を参照し、本開示の第1実施形態に係る樋支持具及び樋支持構造の一例について説明する。
本実施形態に係る樋支持具は、例えば、折板屋根の軒先板先端部に取り付けられ、樋を支持するために使用される。本実施形態に係る樋支持具は、雨水を排水するための雨樋であって、軒樋、谷樋などが含まれる。
図2図3に示すように、第1実施形態の樋支持具A1(A)は、折板屋根(屋根)Bの軒先に沿って所定の間隔をあけて複数取り付けられ、複数の樋支持具A1により後述する樋40が支持されている。本実施形態で図示した折板屋根Bは、複数の山部2と複数の谷部3を交互に連続した波形の折板屋根材4からなる。本実施形態において山部2と谷部3はいずれも等脚台形状の輪郭を有する波形に形成されている。なお、折板屋根Bは、はぜ継ぎ式、折板重ね式、折板嵌合式等の種々の形式のものがあるが、本実施形態の樋支持具A1はいずれの形式の折板屋根にも適用することができる。
【0025】
図2図3に示すように、折板屋根Bの山部2の山頂部を構成する軒先板先端部2Aに樋支持具A1がボルト止めされている。
樋支持具A1は、支持具本体10と係止片80とを備える。支持具本体10は、折板屋根Bの軒先板先端部2Aに取り付けられる。支持具本体10は、上部に軒先板先端部2Aを差し込み挿入可能な凹部5を形成する下部片6と、下部片6の上方に位置する上部片7と、を備える。係止片80は、支持具本体10の下方に支持される。係止片80は、縦片16、横片(底片)17、縦側係止片18を含む。樋支持具A1は、支持具本体10と係止片80で、樋40の長手方向から見て、全体として上下方向に延びる矩形状となる。
支持具本体10と係止片80は、両者の重ね合わせ部分を貫通したボルトとそれに螺合したナットにより一体化される。
【0026】
縦片16の下端部には、縦片16に対しほぼ90°向きに横方向に延在する横片(底片)17が形成されている。この底片17は、縦片16の全体幅と対応する同等の全体幅を有する。底片17における縦片16の反対側の端には、縦側係止片18が設けられている。
【0027】
図2に示す状態は、折板屋根Bの軒先板先端部2Aに樋支持具A1を取り付けた状態を示している。
図2に示すように、樋支持具A1の支持具本体10と係止片80とで囲まれる矩形枠の内側に樋40が支持されている。樋40は底板40Aと内側板40Bと外側板40Cとからなる。
【0028】
樋支持具A1において係止片80の内側には、内側板40Bの上部に接する切り起こし片からなる切り起こし係止片42が形成されている。
【0029】
樋支持具A1は調整部70(第1調整部)を有する。調整部70は、樋40を支持し、樋40の支持位置の高さを調整できる機構である。調整部70は、樋40の支持位置の高さを調整できる機構であればよい。調整部70は、例えば後述するように、異なる高さ(調整部70の厚さ)を有する調整部としてもよく、調整ボルトにより調整してもよく、また係止片を支持具本体10に対して上下方向に調節可能としてもよい。支持位置の高さは、例えば、底片17と樋40との間に他の構成を配置することで調整することもできるし、底片17の高さが調整されることで調整することもできる。調整部70の上方に樋40が支持される。
【0030】
図3は、本実施形態の樋支持具A1により樋40を支持した状態を示す平面図である。図3は、樋支持具A1を複数有する樋支持構造Sを示すものでもある。樋支持構造Sは、複数の樋支持具A1を有し、複数の樋支持具A1が複数の軒先板先端部2Aに取り付けられる。樋支持構造Sは、複数の樋支持具A1を一組(1丁)として、樋40の長手方向に複数配置される。図3では、2組の樋支持構造S1,S2が示されているが、実際には例えば12組の樋支持構造Sを取付けてもよい。樋支持構造Sが12組取付けられる場合には、樋支持構造Sの全体の長さは、おおよそ24mである。本実施形態では、樋支持構造S1は4つの樋支持具A1-1,A1-2,A1-3,A1-4を備え、樋支持構造S2は4つの樋支持具A1-11,A1-12,A1-13,A1-14を備える。
【0031】
図3の矢印Fは、水の流れる方向を示し、紙面左側(後述する樋支持具A1-1側)が上流、紙面右側(後述するA1-14側)が下流である。樋支持具A1は、樋40の支持位置の高さを調整する調整部70を有するので、上流から下流に向かって樋40に勾配を設けることができる。樋支持構造S1では、複数の樋支持具(例えば樋支持具A1-1,A1-2,A1-3,A1-4)は、樋40の支持位置の高さが異なっている。樋支持構造S1では、最も上流側に配置される樋支持具A1-1は、それに隣接する樋支持具A1-2よりも高い位置で樋40を支持する関係である。樋支持具A1-2,A1-3,A1-4についても同様の関係である。樋支持構造S2でも同様に、最も上流側に配置される樋支持具A1-11は、それに隣接する樋支持具A1-12よりも高い位置で樋40を支持する関係である。樋支持具A1-12,A1-13,A1-14についても同様の関係である。また、樋支持構造S1は、樋支持構造S2よりも上流側に配置され、樋支持構造S1よりも高い位置で樋40を支持する。
【0032】
本実施形態に係る樋支持具A1は、樋40の支持位置の高さを調整する調整部70を有する。これにより、各樋支持具A1は樋40を適切な位置で支持することができる。物件ごとに樋40の勾配が異なる場合でも、調整部70で樋の支持位置を適切に調整できる。 また、樋支持構造S1では、複数の樋支持具A1(例えば樋支持具A1-1,A1-2,A1-3,A1-4)が、樋40の支持位置の高さが異なっている構成であるので、樋40の勾配に応じて、樋支持具A1は適切に樋40を支持することができる。
【0033】
調整部70は、樋支持具A1の底片17に着脱可能な部材(71)でもよい。本実施形態では、図1に示すように、調整部71は底片17に取り付けられる。調整部71は、例えば、平板状の部材を略U字形状に成形したもので、爪を有する嵌合構造である。底片17の周縁部に形成された係合孔に、調整部71の嵌合爪が嵌合する。調整部71は、例えば樹脂製である。
【0034】
調整部71を樋支持具A1の底片17に着脱可能な部材とすることで、板厚が異なる複数の調整部71を準備することができる。
調整部71の厚さ(板厚方向の長さ)は、調整部71の形状により適宜好ましい厚さを採用する。例えば、板厚が、2mm、4mm、6mm、8mmとなるように、2mmずつ分厚くなるように調整部71を準備してもよい。板厚が異なる複数の調整部71を準備することで、現場において、物件ごとに勾配が異なる樋においても適切な厚さの調整部71を採用できる。
調整部71の長さ(底片17に沿う長さ)は、底片17の幅の、例えば50%から100%が好ましく、樋40を安定的に支持できる。
【0035】
[第2実施形態]
図4Aから図4Cを参照し、本開示の第2実施形態に係る樋支持具について説明する。第2実施形態の構造において、第1実施形態の構造と同等の構成要素については同一の符号を付し、それらの詳細説明は省略する。
第1実施形態では、調整部71が樋支持具A1の底片17に着脱可能な部材である構成であるが、第2実施形態に係る樋支持具A2(A)では、調整部が、調整ボルトにより樋の支持位置の高さを調整する構成である。
【0036】
調整ボルトにより樋の支持位置の高さを調整する構成の一例を示す。
図4Aは、調整ボルト25が水平方向に装着されている場合であり、一部断面を示す概略図である。調整ボルト25は調整部72に装着される。調整部72は、底片17に取り付けられる。調整ボルト25を回転させることで、調整部72の高さを調整する。図4Aに示すように、調整部72は、例えばジャッキ75を備える。調整ボルト25はジャッキ75に接続され、調整ボルト25を回転させることで、ジャッキ75が上下動する。例えば、調整ボルト25を締めることでジャッキ75が持ち上がり、調整ボルト25を緩めることでジャッキ75が下がる。樋40は、調整部72の上方に支持される。ジャッキ75が上下動すると、樋40もそれに伴い上下動する。
【0037】
図4Bは、調整ボルトにより樋の支持位置の高さを調整する構成の他の例であり、一部断面を示す概略図である。
図4Bでは、調整ボルト26が鉛直方向に装着されている場合を示す。図4Bでは2つの調整ボルト26,26が示されているが、調整ボルト26の数は2に限らない。調整ボルト26は調整部73に装着される。調整ボルト26を回転させることで、調整部73の高さを調整する。図4Bに示すように、調整ボルト26は、下方から調整部73に向かって装着される。調整ボルト26の先端が調整部73を下方から支持する。調整ボルト26を回転させることで、調整部73が上下動する。例えば、調整ボルト26を締めることで調整部73が持ち上がり、調整ボルト26を緩めることで調整部73が下がる。樋40は、調整部73の上方に支持される。調整部73が上下動すると、樋40もそれに伴い上下動する。
【0038】
図4Cは、調整ボルトにより樋の支持位置の高さを調整する構成の他の例であり、一部断面を示す概略図である。
図4Cでは、調整部74が一組の高さ調節機構76を備える。一組の高さ調節機構76は2つの高さ調節機構76を備える。一つの高さ調節機構76は、調整ボルト27、ナット28、ロックナット29を備える。一組の高さ調節機構76は、樋40の両側に配置され、両側から挟むように配置される。調整ボルト27は調整部74に装着される。図4Cに示すように、ナット28の下面は調整部74の端部に固定される。ナット28と調整部74は、例えば隅肉溶接される。隅肉溶接の位置は、図4Cでは符号83で示す。調整ボルト27は、ナット28を下方から螺合する。ロックナット29は、支持板30を挟んで調整ボルト27の頭部と対向して配置される。支持板30は、底片17の下端で固定される。支持板30は、一組の高さ調節機構76の両端で支持される。調整ボルト27は、下方から調整部74に向かって装着される。
調整ボルト27を回転させることで、調整部74の高さを調整する。具体的には、ロックナット29を緩め、調整ボルト27を回転させると、ナット28に固定された調整部74が上下動する。例えば、調整ボルト27を締めることで調整部74が持ち上がり、調整ボルト27を緩めることで調整部74が下がる。樋40は、調整部74の上方に支持される。調整部74が上下動すると、樋40もそれに伴い上下動する。
【0039】
本実施形態に係る樋支持具A2は、調整ボルト25,26,27により樋40の支持位置の高さを調整する。これにより、各樋支持具A2は樋40を適切な位置で支持することができる。物件ごとに樋40の勾配が異なる場合でも、調整部72,73,74で樋40の支持位置を適切に調整できる。
【0040】
[第3実施形態]
図5Aから図5Cを参照し、本開示の第3実施形態に係る樋支持具について説明する。第3実施形態の構造において、第1実施形態及び第2実施形態の構造と同等の構成要素については同一の符号を付し、それらの詳細説明は省略する。
第3実施形態の樋支持具A3(A)において第1実施形態及び第2実施形態の構成と異なっている点は、樋支持具の下部が上下方向に調節可能である点である。
【0041】
第3実施形態において、樋支持具A3は、軒先板先端部2Aに取り付けられる支持具本体10と、支持具本体10の下方に着脱自在に支持される係止片81,82と、を有する。この係止片81,82が支持具本体10に対して上下方向に調節可能である。なお、係止片81,82は、調整部70に相当する。
【0042】
係止片81,82が支持具本体10に対して上下動する構成の一例を示す。
図5Aは、係止片81が樋支持具A3の底片に相当する構成を示し、一部断面を示す。係止片81は、平板状で、支持具本体10の下端部において支持具本体10に対しほぼ90°向に横方向に延在する。係止片81の端部には係止片81をほぼ90°下向きに折り曲げた折曲片81Eが形成される。支持具本体10の下端部において、折曲片81Eと支持具本体10とが当接して支持される。樋40は、係止片81の上方に支持される。係止片81が上下動すると、樋40もそれに伴い上下動する。
【0043】
図5Bは、係止片82が略U字形状である構成を示し、一部断面を示す。係止片82は、平板状の部材を略U字形状に成形したものである。支持具本体10の下端部と係止片82の上端部とが当接して支持される。樋40は、係止片82の上方に支持される。係止片82が上下動すると、樋40もそれに伴い上下動する。
【0044】
図5Cに、図5A及び図5Bに示す、支持具本体10と係止片81,82との支持方法の一例について示す。
支持具本体10と係止片81,82とは、ボルト及びナットによって支持する。図5Aでは、支持具本体10と係止片81とが重なる部分を貫通するボルト32と、ボルト32に螺合するナット33と、が設けられる。図5Bでは、支持具本体10と係止片82とが重なる部分を貫通するボルト34と、ボルト34に螺合するナット35と、が設けられる。
支持具本体10及び係止片81,82には、図5Cに示すように、ボルト32,34が貫通する貫通孔36,37が設けられている。図5Cでは、複数の貫通孔36,37が鉛直方向に一列に設けられている。複数の貫通孔36,37は同一の直径である。図5Cの(a)では、隣接する貫通孔36,36の一部が重なっている。図5Cの(b)では、隣接する貫通孔37,37は重なっていない。
【0045】
複数の貫通孔36,37は、例えば、鉛直方向に一列に設けることが好ましい。複数の貫通孔36,37を設けることで、所望する高さでボルトを固定することができる。貫通孔36,37は、ボルト32,34が貫通する程度の直径を有する丸穴である。貫通孔36,37が、例えば長方形状の長穴の場合、ボルト32,34を締めてもずれる可能性があるので、貫通孔36,37は丸穴形状が好ましい。
【0046】
本実施形態に係る樋支持具A3は、係止片81,82が支持具本体10に対して上下方向に調節可能である。これにより、樋支持具A3は樋40を適切な位置で支持することができる。物件ごとに樋40の勾配が異なる場合でも、係止片81,82(調整部)で樋40の支持位置を適切に調整できる。
【0047】
[第4実施形態]
図6から図7Bを参照し、本開示の第4実施形態に係る樋支持具A4(A)について説明する。第4実施形態の構造において、第1実施形態から第3実施形態の構造と同等の構成要素については同一の符号を付し、それらの詳細説明は省略する。
【0048】
折板屋根Bの水勾配および肩勾配は物件によって異なる。折板屋根Bの水勾配とは、折板屋根Bの軒先板先端部2Aに取り付けられた樋40の長手方向からみた折板屋根Bの傾きである。折板屋根Bの肩勾配とは、折板屋根Bのハゼ部の両側に接続する肩部2Bの傾きである。樋支持具A4は、水勾配および肩勾配の程度によって、軒先板先端部2Aへの取付角度が変わってくるため、樋支持具A4は各水勾配や各肩勾配に適したものであることが好ましい。
【0049】
樋支持具A4は、樋支持具A4の傾きを変更可能である。樋支持具A4は、樋支持具A4の傾きを変更することで、樋40の支持位置の高さを調整する調整部77(第2調整部)を有する。第2調整部77により、折板屋根Bの水勾配や肩勾配に対して適切な樋支持具A4の傾きに変更できるので、樋支持具A4を安定的に軒先板先端部2Aに取り付け可能である。
【0050】
本実施形態では、折板屋根Bの水勾配に対して適用可能な好ましい樋支持具A4を説明する。本実施形態では、樋支持具A4の傾きは、樋40の長手方向からみた傾きである。樋40を長手方向からみて、折板屋根Bの軒先板先端部2Aに取り付けられた樋支持具A4の傾きは、折板屋根Bの水勾配によって変わる。折板屋根Bの水勾配の傾斜が大きい場合、折板屋根Bの軒先板先端部2Aに取り付けられた樋支持具A4の傾きも大きくなる。樋支持具A4の上記傾きが大きくなれば、樋支持具A4によって支持される樋40の傾きも大きくなってしまうため、樋支持具A4の上記傾きは小さい方が好ましい。
【0051】
図6は、樋40の長手方向からみた樋支持具A4における第2調整部77の一部の概略を示す拡大図である。本実施形態では、図6に示すように、樋支持具A4がスペーサ85を有することで、折板屋根Bの軒先板先端部2Aに取り付けられた樋支持具A4の傾きを小さくするものである。樋支持具A4は、折板屋根Bの軒先板先端部2Aに取り付けられる支持具本体10と、軒先板先端部2Aと支持具本体10とを固定するボルト38およびナット39と、を有する。軒先板先端部2Aと支持具本体10とは、両者を重ね合わせた部分を貫通するボルト38と、それに螺合するナット39により一体化される。折板屋根Bの軒先板先端部2Aは下部片6と上部片7との間で挟み込まれる。
【0052】
第2調整部77は、ボルト38とナット39の間に配置されるスペーサ85である。図6等では、スペーサ85の下側にボルト38、上側にナット39が配置されているが、スペーサ85の上側にボルト38、下側にナット39が配置されてもよい。スペーサ85が配置されない樋支持具A4が、折板屋根Bの軒先板先端部2Aに取り付けられた状態では、折板屋根Bの水勾配の傾斜に応じて樋支持具A4が傾いている。この状態で、樋40の長手方向からみて、樋支持具A4の傾きが小さくなるようにボルト38とナット39の間にスペーサ85が配置される。図6に示す例では、軒先板先端部2Aの下面、上面の両側にスペーサ85が配置されている。樋支持具A4は、複数のボルト38の位置で固定されてもよく、例えば図1に示すように2箇所のボルト38の位置で固定されてもよい。例えば、樋支持具A4が2箇所のボルト38の位置で固定される場合、一方のボルト38の位置では軒先板先端部2Aの下面側にスペーサ85を配置し、もう一方のボルト38の位置では軒先板先端部2Aの上面側にスペーサ85を配置してもよい。このようにスペーサ85を配置することで、軒先板先端部2Aの傾きに対して樋支持具A4の傾きを小さくすることができる。
【0053】
図7Aおよび図7Bにスペーサ85の概略を示す。図7Aおよび図8Aの、各上図はスペーサ85の平面図、各下図はスペーサ85の側面図を示す。スペーサ85の形状は、限定されるものではなく、ボルト38とナット39の間に挟み込んで樋支持具A4の傾きを変更できればよい。スペーサ85は、例えば、図7Aに示すように、平面視が矩形状で、中央部分においてボルト38が貫通可能な貫通孔90を設ける形状である。また、スペーサ85は、例えば、図7Bに示すように、平面視が矩形状で、ボルト38を差し込み可能なU形状部91を設ける形状である。スペーサ85は、図7Aおよび図7Bに示すような矩形状に限ったものではく、例えば円形状、多角形状でもよい。スペーサ85の外径は、支持具本体10の幅を超えないことが好ましい。
【0054】
スペーサ85は平板でもよい。スペーサ85は、図7Aおよび図7Bに示すように、表面に傾斜面92を有してもよい。軒先板先端部2Aに当接する面が傾斜面92であってよい。図6に示すように、軒先板先端部2Aの両面を、傾斜面92側で挟み込むようにしてスペーサ85を配置してもよい。軒先板先端部2Aの片面側に傾斜面92を有するスペーサ85を配置してもよい。図7Aおよび図7Bの側面図ではスペーサ85は側面視が台形であるが、側面視が楔形または三角形であってもよい。
スペーサ85の材質は、限定されるものではなく、例えば、樹脂、金属、ゴムである。
【0055】
ボルト38とナット39の間に配置されるスペーサ85の数は、限定されるものではなく、所望する樋支持具A4の傾きとなるように1または2以上のスペーサ85を配置すればよい。
【0056】
本実施形態では、樋支持具A4がスペーサ85を有する構成である。このような構成により、折板屋根Bの水勾配の傾斜に応じて樋支持具A4の軒先板先端部2Aへの取付角度を調整することができ、樋支持具A4をより安定的に軒先板先端部2Aに取り付け可能である。
【0057】
[第5実施形態]
図8を参照し、本開示の第5実施形態に係る樋支持具A5(A)について説明する。第5実施形態の構造において、第1実施形態から第4実施形態の構造と同等の構成要素については同一の符号を付し、それらの詳細説明は省略する。
【0058】
本実施形態では、折板屋根Bの肩勾配に対して適用可能な好ましい樋支持具A5を説明する。本実施形態では、樋支持具A5の傾きは、折板屋根Bの軒先板先端部2Aの正面方向からみた傾きである。樋支持具A5の傾きは、樋40の長手方向および鉛直方向に垂直な方向(図8の矢視からみた方向、すなわち樋支持具A5の側面視方向)からみた傾きである。
折板屋根Bの肩勾配は物件によって異なる。物件によっては、折板屋根Bのハゼ部の両側に接続する肩部2Bにおいて樋支持具A5を支持する。図8に示すように、折板屋根Bのハゼ部の両側に接続する肩部2Bにおいて樋支持具A5を支持する場合、樋支持具A5が傾斜して支持される場合がある。折板屋根Bの肩勾配が大きい場合、折板屋根Bの軒先板先端部2Aに取り付けられた樋支持具A5の傾きも大きくなる。樋支持具A5の上記傾きが大きくなれば、樋支持具A5によって支持される樋40の傾きも大きくなってしまうため、樋支持具A5の上記傾きは小さい方が好ましい。
【0059】
樋支持具A5は、支持具本体10と係止片80(82)とを接続するボルト34およびボルト34に螺合するナット35を有し、係止片80はボルト34を支点に傾斜可能である。樋支持具A5は、樋支持具A5の傾きを変更可能である。樋支持具A5は、樋支持具A5の傾きを変更することで、樋40の支持位置の高さを調整する調整部78(第3調整部)を有する。第3調整部78は、係止片80を傾斜させる構成である。具体的には、支持具本体10と係止片80とを接続するボルト34を支点に係止片80を傾斜させる。図8に示すように、傾斜する肩部2Bに接続される支持具本体10は傾斜しているが、係止片80はボルト34を支点にして鉛直方向に近づくように傾斜させることができる。係止片80は、鉛直方向に配置させることが好ましい。
【0060】
本実施形態では折板屋根Bの軒先板先端部2Aの正面方向からみた樋支持具A5の傾きを変更することができる。このような構成により、折板屋根Bの肩勾配の傾斜に応じて樋支持具A5の軒先板先端部2Aへの取付角度を調整することができ、樋支持具A5をより安定的に軒先板先端部2Aに取り付け可能である。
【0061】
樋支持具Aは、第4実施形態に係る樋支持具A4および第5実施形態に係る樋支持具A5の両構成を採用してもよい。このような構成により、折板屋根Bの水勾配および肩勾配に対して好適な樋支持具Aを得ることができる。
【0062】
以上、本開示の実施形態を説明したが、上記実施形態は、例として提示したものであり、本発明の範囲が上記実施形態のみに限定されるものではない。上記実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。上記実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0063】
A,A1,A2,A3…樋支持具、B…折板屋根、S…樋支持構造、2…山部、2A…軒先板先端部、2B…肩部、3…谷部、5…凹部、6…下部片、7…上部片、10…支持具本体、16…縦片、17…横片(底片)、18…縦側係止片、25,26,27…調整ボルト、32,34,38…ボルト、28,33,35,39…ナット、29…ロックナット、30…支持板、40…樋、40A…底板、40B…内側板、40C…外側板、70,71,72,73,74,77,78…調整部、75…ジャッキ、76…調節機構、80,81,82…係止片、85…スペーサ、90…貫通孔、91…U形状部。
図1
図2
図3
図4A
図4B
図4C
図5A
図5B
図5C
図6
図7A
図7B
図8