(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024119049
(43)【公開日】2024-09-02
(54)【発明の名称】有機過酸化物組成物
(51)【国際特許分類】
C07C 409/32 20060101AFI20240826BHJP
C08F 8/00 20060101ALI20240826BHJP
【FI】
C07C409/32
C08F8/00
【審査請求】有
【請求項の数】15
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2024021683
(22)【出願日】2024-02-16
(31)【優先権主張番号】23157698
(32)【優先日】2023-02-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(71)【出願人】
【識別番号】509131443
【氏名又は名称】ヌーリオン ケミカルズ インターナショナル ベスローテン フェノーツハップ
【氏名又は名称原語表記】Nouryon Chemicals International B.V.
(74)【代理人】
【識別番号】100092783
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100120134
【弁理士】
【氏名又は名称】大森 規雄
(74)【代理人】
【識別番号】100128484
【弁理士】
【氏名又は名称】井口 司
(72)【発明者】
【氏名】ファン デル アーアー,パウルス ペトルス ヘンリクス マリア
(72)【発明者】
【氏名】フリエリンク,ヴィルヘルム クラース
【テーマコード(参考)】
4H006
4J100
【Fターム(参考)】
4H006AA01
4H006AB48
4J100AA03P
4J100CA31
4J100DA42
4J100FA05
4J100FA28
4J100HA53
4J100HC36
(57)【要約】 (修正有)
【課題】取り扱いにおける安全上の問題を回避しながら、非不活性押出条件下でポリプロピレン生成物を生成する有機過酸化物組成物を提供する。
【解決手段】本開示は、固体形態の有機過酸化物組成物であって、
a)以下の式の少なくとも一つの有機過酸化物であって、
式中、各Rが、C
1-5アルキル基から個々に選択される、有機過酸化物と、
b)室温で固体である少なくとも一つの保水剤と、
c)水と、
を含む、有機過酸化物組成物を提供する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
固体形態の有機過酸化物組成物であって、
a)以下の式の少なくとも一つの有機過酸化物であって、
【化1】
式中、各Rが、C
1-5アルキル基から個々に選択される、有機過酸化物と、
b)室温で固体である少なくとも一つの保水剤と、
c)水と、を含む、有機過酸化物組成物。
【請求項2】
各Rが、メチル、エチル、n-プロピル、i-プロピル、n-ブチル、sec-ブチル、tert-ブチル、およびtert-アミルから個別に選択される、請求項1に記載の有機過酸化物組成物。
【請求項3】
前記少なくとも一つの有機過酸化物が、ジ(パラ-メチルベンゾイル)過酸化物である、請求項1または2に記載の有機過酸化物組成物。
【請求項4】
有機過酸化物組成物が、40~75重量%、好ましくは45~70重量%、より好ましくは50~65重量%の前記少なくとも一つの有機過酸化物a)(前記有機過酸化物組成物の前記総重量に基づいた重量%)を含む、請求項1~3のいずれか一項に記載の有機過酸化物組成物。
【請求項5】
前記少なくとも一つの保水剤b)が、
・陰イオン性粘土、
・吸水性ポリマー、
・金属炭酸塩および金属重炭酸塩、
・金属酸化物、
・金属ケイ酸塩、
・金属リン酸塩、
・親水性シリカ、または
・金属硫酸塩乾燥剤のうちの一つ以上から選択される、請求項1~4のいずれか一項に記載の有機過酸化物組成物。
【請求項6】
前記少なくとも一つの保水剤が一つ以上の陰イオン性粘土を含む、請求項5に記載の有機過酸化物組成物。
【請求項7】
前記有機過酸化物組成物が、1~30重量%、好ましくは3~20重量%、より好ましくは5~15重量%の少なくとも一つの保水剤b)(前記有機過酸化物組成物の前記総重量に基づいた重量%)を含む、請求項1~6のいずれか一項に記載の有機過酸化物組成物。
【請求項8】
前記有機過酸化物組成物が、5~30重量%、好ましくは10~25重量%、より好ましくは15~20重量%の水(前記有機過酸化物組成物の前記総重量に基づいた重量%)を含む、請求項1~7のいずれか一項に記載の有機過酸化物組成物。
【請求項9】
好ましくは5~20重量%(前記有機過酸化物組成物の前記総重量に基づいた重量%)の量で、一つ以上の安定剤をさらに含む、請求項1~8のいずれか一項に記載の有機過酸化物組成物。
【請求項10】
前記一つ以上の安定剤が、一つ以上の抗酸化剤を含むか、または抗酸化剤から成る、請求項9に記載の有機過酸化物組成物。
【請求項11】
押出機内で、150℃~300℃の温度で、かつ請求項1~10のいずれか一項に記載の有機過酸化物組成物の存在下で、前記ポリプロピレンを押し出すことによってポリプロピレンの溶融強度を強化するためのプロセス。
【請求項12】
前記有機過酸化物組成物が、押出前または押出中に前記ポリプロピレンに添加される、請求項11に記載のプロセス。
【請求項13】
使用される前記有機過酸化物組成物の量が、前記少なくとも一つの有機過酸化物a)の前記濃度が、100gのポリプロピレン当たり0.1~5.0gの過酸化物の範囲、より好ましくは100gのポリプロピレン当たり0.5~3.0gの範囲となるような量である、請求項11または12に記載のプロセス。
【請求項14】
前記ポリプロピレンが、プロピレンのホモポリマー、またはプロピレンおよび他のオレフィンのランダム、交互、異相、またはブロック共重合体もしく三元重合体である、請求項11~13のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項15】
ポリプロピレンの前記溶融強度を増加させるための、および/またはポリオレフィンプラスチックのリサイクルのための添加剤としての、請求項1~10のいずれか一項に記載の有機過酸化物組成物の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、固体形態の有機過酸化物組成物、および高溶融強度ポリプロピレン(HMS-PP)を生産するためのプロセスにおけるその使用に関する。
【背景技術】
【0002】
過酸化物を使用してポリプロピレンの溶融強度を改善するためのプロセスは、当技術分野で公知である。過酸化物を用いた処理は、長鎖分岐を形成する。長鎖分岐が多いほど、溶融強度が高くなる。
【0003】
例えば、国際特許公開第99/027007号は、ペルオキシ二炭酸塩によるポリプロピレンの熱処理を伴うプロセスを開示している。本明細書では、ペルオキシ二炭酸ジセチル、ペルオキシ二炭酸ジミリスチル、およびペルオキシ二炭酸ジ(4-tert-ブチルシクロヘキシル)を含む、いくつかのペルオキシ二炭酸塩が開示されている。
【0004】
これらの特定のペルオキシ二炭酸ジアルキルの利点は、プロセスにおけるそれらの良好な性能を除いては、その安全面および取り扱いの容易さである。これらはすべて固体形態であり、他の多くのペルオキシ二炭酸塩とは対照的に、室温で安全に保管および処理することができる。加えて、これらは押出プロセスで使用することができる。
【0005】
高溶融強度ポリプロピレン(HMS-PP)は、食品包装および自動車用途での使用がある。より高い温度では、ペルオキシ二炭酸ジアルキルの分解生成物、すなわち、セチルアルコール、ミリスチルアルコール、および4-tert-ブチルシクロヘキサノールなどのアルコールは、HMS-PPから蒸発し、他の表面上に凝縮する傾向があり、それによって、視覚的透明性が低下した曇った表面を形成する。この現象は、フォギングと呼ばれる。
【0006】
例えば、HMS-PPベースの食品パッケージをマイクロ波で加熱した結果、アルコール分解生成物は、パッケージの蓋またはマイクロ波窓上で蒸発および凝縮し、それによってその透明性に悪影響を及ぼしうる。
【0007】
自動車内部で使用されるHMS-PPは、暖かい気象条件で加熱される場合があり、アルコール分解生成物は、自動車の窓上で凝縮して、明らかに望ましくない視界性の低下をもたらしうる。
【0008】
ペルオキシ二炭酸ジセチルおよびペルオキシ二炭酸ジミリスチルの分解生成物はまた、変性ポリプロピレンの表面に移動する傾向がある。この現象は「ブルーミング」と呼ばれ、表面上に白色または光輝性の粒子の形成をもたらし、ポリマー表面の不均一な外観をもたらす。
【0009】
国際特許公開第99/36466号および国際特許公開第2019/038244号は、ポリプロピレンの溶融強度を増加させるためのプロセスを開示している。国際特許公開第2019/038244号に記載されるように、その中に開示される特定の過酸化物を使用すると、例えば、ペルオキシ二炭酸ジセチル、過酸化ジベンゾイル、およびオルト置換過酸化ジベンゾイル(国際特許公開第99/36466号で使用されるような)の使用よりも高い溶融強度をもたらした。この改善は、押出機内の不活性雰囲気と組み合わせたこれらの特定の過酸化物の使用を直接的な原因としうる。
【0010】
国際特許公開第2019/038244号のプロセスは、実際に優れた溶融強度特性を有するポリプロピレン生成物を製造するが、押出機内で不活性環境を使用することは、必ずしも実用的でないか、または望ましくない。例えば、ポリプロピレン製プラスチックのリサイクルでは、(プロセスの全体的な複雑さおよびコストを最小限に抑えるために)不活性環境を回避することができることが好ましい。
【0011】
発明者らによる経験的研究を通して、国際特許公開第2019/038244号の有機過酸化物を使用する一方で、押出機内において不活性雰囲気から非不活性雰囲気(すなわち、不活性雰囲気の代わりに空気)へと切り替えることは、国際特許公開第99/36466号で使用される有機過酸化物(同一のプロセス条件下で)の性能を上回る溶融強度特性を有するポリプロピレン生成物を依然として生成したことが見出された。しかしながら、非不活性の押出条件下では、製造されたポリプロピレン生成物は変色し(すなわち、白色の代わりに黄変し)、分解の兆候を示し、不活性雰囲気下で製造されたものよりも低い溶融強度特性を有するが、そのいずれも望ましい結果ではない。
【0012】
さらに、国際特許公開第2019/038244号で使用される好ましい有機過酸化物製剤は、かなりの量の水を含有した。こうした有機過酸化物製剤は、(適切な訓練を受けていれば)一般的に使用するのに安全であるが、安全上の複雑な問題がないわけではない。具体的には、押出機に投与された時、押出機上への製剤の意図しない流出の可能性が常に存在する。その場合、水(鈍感剤)は急速に蒸発し、それによって過酸化物の濃度を、過酸化物が摩擦感度および衝撃感度となり得る点まで増加させる。その場合、爆発の可能性が著しく増大するが、これは(特に工業規模において)明らかに回避すべきことである。この問題により、こうした有機過酸化物製剤の取り扱いは、いくらかの危険および困難が伴う。
【0013】
この点を考慮して、国際特許公開第2019/038244号の優れたポリプロピレン特性を維持しながら、かつ上述の安全上の危険および取り扱いの問題を回避しながら、非不活性押出条件下でポリプロピレン生成物を生成する有機過酸化物組成物に対するニーズが依然として存在する。
【発明の概要】
【0014】
これらの目的は、水および保水剤を含む有機過酸化物組成物によって満たされることが見出された。したがって、本開示は、以下の態様によって要約され得る。
【0015】
態様1. 固体形態の有機過酸化物組成物であって、
a)次式の少なくとも一つの有機過酸化物であって、
【化1】
式中、各Rは、C1-5アルキル基から個々に選択される、有機過酸化物と、
b)室温で固体である少なくとも一つの保水剤と、
c)水と、を含む、有機過酸化物組成物。
【0016】
態様2. 各Rが、メチル、エチル、n-プロピル、i-プロピル、n-ブチル、sec-ブチル、tert-ブチル、およびtert-アミルから個別に選択される、態様1に記載の有機過酸化物組成物。
【0017】
態様3. 少なくとも一つの有機過酸化物が、ジ(パラ-メチルベンゾイル)過酸化物である、態様1または2に記載の有機過酸化物組成物。
【0018】
態様4. 有機過酸化物組成物が、40~75重量%、好ましくは45~70重量%、より好ましくは50~65重量%の少なくとも一つの有機過酸化物a)(有機過酸化物組成物の総重量に基づいた重量%)を含む、態様1~3のいずれか一つに記載の有機過酸化物組成物。
【0019】
態様5. 有機過酸化物組成物が、有機過酸化物組成物が「プロトコルA」に供されるとき、有機過酸化物組成物の元の含水量の60%以上を保持する、態様1~4のいずれか一つに記載の有機過酸化物組成物。
【0020】
態様6. 少なくとも一つの保水剤が、一つ以上の陰イオン性粘土を含む、態様1~5のいずれか一つに記載の有機過酸化物組成物。
【0021】
態様7. 一つ以上の陰イオン性粘土が、ヒドロタルサイトである、態様6に記載の有機過酸化物組成物。
【0022】
態様8. 少なくとも一つの保水剤が、一つ以上の金属リン酸塩を含む、態様1~5のいずれか一つに記載の有機過酸化物組成物。
【0023】
態様9. 一つ以上の金属リン酸塩が、リン酸二カルシウムである、態様8に記載の有機過酸化物組成物。
【0024】
態様10. 有機過酸化物組成物が、1~30重量%、好ましくは3~20重量%、より好ましくは5~15重量%の少なくとも一つの保水剤b)(有機過酸化物組成物の総重量に基づいた重量%)を含む、態様1~9のいずれか一つに記載の有機過酸化物組成物。
【0025】
態様11. 有機過酸化物組成物が、5~30重量%、好ましくは10~25重量%、より好ましくは15~20重量%の水(有機過酸化物組成物の総重量に基づいた重量%)を含む、態様1~10のいずれか一つに記載の有機過酸化物組成物。
【0026】
態様12. 好ましくは5~25重量%(有機過酸化物組成物の総重量に基づいた重量%)の量で、一つ以上の安定剤をさらに含む、態様1~11のいずれか一つに記載の有機過酸化物組成物。
【0027】
態様13. 一つ以上の安定剤が、一つ以上の抗酸化剤を含むか、または抗酸化剤から成る、態様12に記載の有機過酸化物組成物。
【0028】
態様14. 組成物が、圧縮された固体物品、任意選択的には圧縮かつ成形された固体物品の形態である、態様1~13のいずれか一つに記載の有機過酸化物組成物。
【0029】
態様15. 圧縮された固体物品が、フレークまたは顆粒である、態様14に記載の有機過酸化物組成物。
【0030】
態様16. 押出機内で、150℃~300℃の温度で、かつ態様1~13のいずれか一つに記載の有機過酸化物組成物の存在下で、前記ポリプロピレンを押し出すことによってポリプロピレンの溶融強度を強化するためのプロセス。
【0031】
態様17. 有機過酸化物組成物が、押出前または押出中にポリプロピレンに添加される、態様16に記載のプロセス。
【0032】
態様18. 使用される有機過酸化物組成物の量が、少なくとも一つの有機過酸化物a)の濃度が、100gのポリプロピレン当たり0.1~5.0gの過酸化物の範囲、より好ましくは100gのポリプロピレン当たり0.5~3.0gの範囲となるような量である、態様16または17に記載のプロセス。
【0033】
態様19. ポリプロピレンが、プロピレンのホモポリマー、またはプロピレンおよび他のオレフィンのランダム、交互、異相、またはブロック共重合体もしく三元重合体である、態様16~18のいずれか一つに記載のプロセス。
【0034】
態様20. ポリプロピレンの溶融強度を増加させるための、および/またはポリオレフィンプラスチックのリサイクルのための添加剤としての、態様1~15のいずれか一つに記載の有機過酸化物組成物の使用。
【発明を実施するための形態】
【0035】
第一の態様では、本開示は、固体形態(好ましくはフレークまたは顆粒などの圧縮された固体物品の形態)である、有機過酸化物組成物に関し、
a)次式の少なくとも一つの有機過酸化物であって、
【化2】
式中、各Rが、C
1-5アルキル基から個々に選択される、有機過酸化物と、
b)室温で固体である少なくとも一つの保水剤と、
c)水と、を含む、有機過酸化物組成物。
【0036】
予想外の発見は、有機過酸化物組成物中に水および保水剤を含むことによって、押出機内で不活性環境を使用することがもはや必須でなくなった(すなわち、過酸化物の性能は、使用される雰囲気のタイプによって影響を受けなかった)ということであった。ポリプロピレン生成物もポリプロピレン分解の明らかな兆候を示さず、生成物の変色は観察されなかった(すなわち、白色の製品が得られた)。さらに、本明細書に開示される有機過酸化物組成物は、国際特許公開第2019/038244号の好ましい有機過酸化物製剤よりも、はるかに安全かつ取り扱いが容易であることが見出された。したがって、上記の技術的問題のすべては、本明細書に開示される有機過酸化物組成物によって解決された。したがって、本明細書に開示される有機過酸化物組成物は、ポリプロピレン製プラスチックのリサイクルで使用するための優れた候補である。
【0037】
本明細書に開示される有機過酸化物組成物は、固体形態である。有機過酸化物組成物には多くの適切な固体形態があり、例えば、粉末(例えば、粉末成分のブレンド、典型的には円錐スクリューミキサーまたはプロシェアミキサー内で混合される)、顆粒、フレークなどが挙げられるが、必ずしもこれらに限定されない。好ましくは、有機過酸化物組成物は、圧縮された固体物品(フレークおよび顆粒など)は、圧縮されていない粉末よりも化学的に安定しており、かつ投与が容易であることが見出されているため、フレークまたは顆粒などの固体物品へと圧縮(および任意選択的に成形)され、したがって押出機に添加することがはるかにより安全かつより簡単である。追加的な予想外の発見は、成分の圧縮されていない粉末ブレンドの代わりに圧縮された(および任意選択的に成形された)固体物品(例えば、フレークまたは顆粒)を使用することが、より低いMFIをもたらしたことであった。当業者は、圧縮された(および任意選択的に成形された)固体物品を調製する方法を把握しているとともに、圧縮された(および任意選択的に成形された)固体物品を調製するための適切かつ容易に入手可能な装置(例えば、Amandus Kahlペレットミル、Bepexギアペレタイザーなど)を認識している。
【0038】
有機過酸化物組成物は、第一の必須成分a)として、次式から選択される少なくとも一つの有機過酸化物を含み、
【化3】
式中、各Rは、芳香族環のパラ位に位置し、C
1-5アルキル基から個別に選択される。
【0039】
好ましい実施形態では、各Rは、C1-5アルキル基から個別に選択される。こうした基の例は、メチル、エチル、n-プロピル、i-プロピル、n-ブチル、sec-ブチル、tert-ブチル、およびtert-アミルである。
【0040】
少なくとも一つのRはメチルであることがより好ましい。
【0041】
最も好ましくは、有機過酸化物は、ジ(パラ-メチルベンゾイル)過酸化物である(すなわち、各Rはメチルである)。
【0042】
好ましくは、有機過酸化物組成物は、40~75重量%、好ましくは45~70重量%、より好ましくは50~65重量%の上述の少なくとも一つの有機過酸化物(有機過酸化物組成物の総重量に基づいた重量%)を含む。
【0043】
有機過酸化物組成物は、第二の必須成分b)として、室温で固体である少なくとも一つの保水剤を含む。「保水剤」という用語は、特に圧縮力に供された時(すなわち、組成物が圧縮された時の水分損失を最小化する)に、有機過酸化物組成物中に水を保持(例えば、「保水剤」による組成物中の自由水の吸収または吸着を介して)させる作用物質を(この技術的文脈において)意味する、その通常の意味を有する。作用物質が、本開示された有機過酸化物組成物中で使用するのに特に適切な保水剤であるかどうかを決定するための試験は、以下の実施例(「プロトコルA」)に提示される。「室温で固体」とは、その通常の意味、すなわち、25℃および1気圧での固体という意味を有する。固体の有機過酸化物組成物中に水を保持することは、国際特許公開第2019/038244号のプロセスによって生成されるポリプロピレン生成物の同じ望ましい技術的特性を有する非不活性雰囲気下での押出によってポリプロピレン生成物を首尾よく製造するために重要であることが見出された。化学組成物での使用に適した保水剤は公知であり、当業者にとって容易に入手可能である。本開示による適切な保水剤の例としては、以下が挙げられるが、必ずしもこれらに限定されない。
・天然および合成のヒドロタルサイトを含むがこれらに限定されない、合成および天然の層状複水酸化物などであるがこれらに限定されない、陰イオン性粘土、
・アクリル系吸水性ポリマー(例えば、ポリ(メタ)アクリル酸、ポリアクリルアミド、など)、ポリビニルアルコール系吸水性ポリマー、ポリエチレングリコール系吸水性ポリマー、多糖類ベースの吸水性ポリマー(例えば、吸水性ポリマー系の天然デンプンまたは加工デンプン、天然または変性セルロース〔特にカルボキシメチルセルロース〕、天然または変性シクロデキストリン、天然または変性グアーガム、など)、ポリアミド系吸水性ポリマー(例えば、ポリアスパラギン酸)などであるがこれらに限定されない、吸水性ポリマー、
・例えば、Ca、Mg、Zn、Na、K、もしくはLi炭酸塩、またはNa、K、もしくはLi重炭酸塩などであるがこれらに限定されない、金属炭酸塩および金属重炭酸塩、
・CaO、MgO、およびZnOなどの金属酸化物、
・ケイ酸カルシウムまたはケイ酸マグネシウムなどであるがこれらに限定されない、金属ケイ酸塩、
・リン酸二カルシウムなどであるがこれに限定されない、金属リン酸塩、
・親水性シリカ、および
・硫酸ナトリウム、硫酸バリウム、および硫酸マグネシウムなどであるがこれらに限定されない、金属硫酸塩乾燥剤。
【0044】
好ましい保水剤は、少なくとも一つの陰イオン性粘土を含むか、またはそれらから成る。陰イオン性粘土は、その間に陰イオンおよび水分子がある二価および三価の金属水酸化物の組み合わせから構築された正荷電層を含む結晶構造を有する。ヒドロタルサイトは、炭酸塩が主要な陰イオンであり、層がMgおよびAlを含む、天然由来の陰イオン性粘土の一例である。他の二価および/または三価の金属および/または陰イオン(硝酸アニオン、有機アニオン、および柱状アニオンを含む)を有する様々な天然、合成、および修飾形態が公知であり、本明細書に開示される組成物での使用に適している。好ましい陰イオン性粘土は、中間層に炭酸塩または水酸化物アニオンを有する陰イオン性粘土である。陰イオン性粘土は、天然および合成のヒドロタルサイト、例えば水酸化炭酸アルミニウムマグネシウムなどの開示されている組成物において特に有効であることが見出されている。
【0045】
好ましくは、有機過酸化物組成物は、1~30重量%、好ましくは3~20重量%、より好ましくは5~15重量%の上述の少なくとも一つの保水剤(有機過酸化物組成物の総重量に基づいた重量%)を含む。
【0046】
有機過酸化物組成物は、第三の必須成分c)水を含む。好ましくは、有機過酸化物組成物は、5~30重量%、好ましくは10~25重量%、より好ましくは15~20重量%の水(有機過酸化物組成物の総重量に基づいた重量%)を含む。
【0047】
有機過酸化物組成物で従来使用されている他の添加剤が、本明細書に開示される有機過酸化物組成物に含まれてもよい。これらの従来の添加剤は、典型的には、有機過酸化物組成物の約5~25重量%、好ましくは5~20重量%を占める。好ましい添加剤としては、一つ以上の抗酸化剤、例えば、フェノール系などの一次抗酸化剤、および/または二次抗酸化剤、例えば、亜リン酸塩、亜硫酸塩型(例えば、Irganox(登録商標)1010[フェノール系、ペンタエリスリトールテトラキス(3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオン酸塩)]および/またはIrgafos 168[亜リン酸塩、トリス(2,4-ジ-tert-ブチルフェニル)-亜リン酸塩]、またはIrganox B225と名付けられる両方の抗酸化剤の1:1混合物(その全てがBASF(登録商標)から入手可能)などの安定剤が挙げられる(ただしこれらに限定されない)。
【0048】
好ましい実施形態では、固体形態(好ましくはフレークまたは顆粒などの圧縮された固体物品の形態)の有機過酸化物組成物は、
a)40~75重量%の式の少なくとも一つの有機過酸化物であって、
【化4】
式中、各Rが、C
1-5アルキル基から個々に選択される、有機過酸化物と、
b)室温で固体であり、「プロトコルA」の要件を満たす、1~30重量%の少なくとも一つの保水剤と、
c)5~30重量%の水と、
d)任意選択的に、5~25重量%の少なくとも一つの抗酸化剤と、を含む。
【0049】
より好ましい実施形態では、固体形態(好ましくはフレークまたは顆粒などの圧縮された固体物品の形態)の有機過酸化物組成物は、
a)40~75重量%の式の少なくとも一つの有機過酸化物であって、
【化5】
式中、各Rが、C
1-5アルキル基から個々に選択される、有機過酸化物と、
b)陰イオン性粘土から選択される、室温で固体である1~30重量%の少なくとも一つの保水剤と、
c)5~30重量%の水と、
d)任意選択的に、5~25重量%の少なくとも一つの抗酸化剤、好ましくは、少なくとも一つの一次抗酸化剤および/または少なくとも一つの二次抗酸化剤と、を含む。
【0050】
より好ましい実施形態では、固体形態(好ましくはフレークまたは顆粒などの圧縮された固体物品の形態)の有機過酸化物組成物は、
a)40~75重量%のジ(パラ-メチルベンゾイル)の過酸化物と、
b)ヒドロタルサイトから選択される、室温で固体である1~30重量%の少なくとも一つの保水剤と、
c)5~30重量%の水と、
d)任意選択的に、5~25重量%の少なくとも一つの抗酸化剤、好ましくは少なくとも一つのフェノール系抗酸化剤および/または少なくとも一つの亜リン酸塩型抗酸化剤もしくは亜硫酸塩型抗酸化剤を含む。
【0051】
さらに好ましい実施形態では、固体形態(好ましくはフレークまたは顆粒などの圧縮された固体物品の形態)の有機過酸化物組成物は、
a)40~75重量%のジ(パラ-メチルベンゾイル)の過酸化物と、
b)Mg/Alヒドロタルサイトから選択される、室温で固体である1~30重量%の少なくとも一つの保水剤と、
c)5~30重量%の水と、
d)5~25重量%の少なくとも一つの抗酸化剤、好ましくは少なくとも一つのフェノール系抗酸化剤および/または少なくとも一つの亜リン酸塩型もしくは亜硫酸塩型の抗酸化剤と、を含む。
【0052】
第二の態様では、本開示は、押出機内で、150℃~300℃の温度で、また上述の固体形態の有機過酸化物組成物の存在下で、前記ポリプロピレンを押し出すことによって、ポリプロピレンの溶融強度を強化するためのプロセスに関する。
【0053】
有機過酸化物組成物が、押出前または押出中にポリプロピレンに添加される。使用される有機過酸化物組成物の量は、望ましい修飾の程度および用いられるポリプロピレンのタイプに依存する。好ましくは、使用される有機過酸化物組成物の量が、少なくとも一つの有機過酸化物a)の濃度が、100gのポリプロピレン当たり0.1~5.0gの過酸化物の範囲、より好ましくは100gのポリプロピレン当たり0.5~3.0gの範囲となるような量である。
【0054】
押出は、155~250℃、より好ましくは160~240℃の範囲の温度で実施されることが好ましい。
【0055】
ポリプロピレンは、プロピレンのホモポリマー、またはプロピレン および他のオレフィン のランダム、交互、異相、またはブロック共重合体もしく三元重合体である。一般的に、プロピレン共重合体または三元重合体は、エチレン、ブテン、ペンテン、ヘキセン、ヘプテン、またはオクテンなどの一つ以上の他のオレフィンを含有するが、スチレンまたはスチレン誘導体を含んでもよい。プロピレン以外のオレフィンの含有量は、すべてのモノマーの30重量%以下であることが好ましい。
【0056】
ポリプロピレンホモポリマーおよびプロピレンおよびエチレンの共重合体が最も好ましい。また、ポリオレフィンリサイクル流などの、ポリプロピレンとポリエチレンの混合物を使用することも可能である。
【0057】
市販のプロピレンホモポリマーの融点は、約160~170℃である。プロピレン共重合体および三元重合体の融点は概してより低い。
【0058】
使用されるポリプロピレンの分子量は、広範囲から選択することができる。分子量の指標はメルトフローインデックス(MFI)である。使用は、0.1~1000g/10分(230℃、21.6N)のMFIを有するポリプロピレンで作製され得る。好ましくは、使用は、0.5~250g/10分のMFIを有するポリプロピレンで作製され得る。
【0059】
ポリプロピレンは、国際特許公開第2016/126429号および国際特許公開第2016/126430号に記載されるような分岐ポリプロピレンであってもよい。
【0060】
押出は、ポリプロピレンの変性をペレット化と組み合わせることを可能にする。単軸押出機または二軸押出機が使用される。ポリプロピレン内の過酸化物をより完全に均質化するため、二軸押出機が好ましい。押出機内の滞留時間は概して、約10秒~約5分である。
【0061】
押出機のスクリュー回転数は、25~1000rpmの範囲内であることが好ましい。押出機の温度はポリプロピレンの溶融温度を上回るべきである。
【0062】
プロセスは、バッチプロセス、連続プロセス、またはそれらの組み合わせとして実施され得る。連続的なプロセスが好ましい。
【0063】
押出中、過酸化物製剤の一部として導入される揮発性分解生成物および任意の水を除去するために、真空または大気圧脱気を適用してもよい。
【0064】
押出は、ポリプロピレンのメルトフローインデックスに影響を与えるために、および/または変性の程度を高めるために、共作用剤の存在下で行われてもよい。共作用剤の例としては、TMAIC(イソシアヌル酸トリメタリル)、TAIC(イソシアヌル酸トリアリル)、TAC(トリアリシアヌル酸塩)、TRIM(トリメタクリル酸トリメチロールプロパン)、ジビニルベンゼン、HVA-2(N,N’-フェニレンビスマレイミド)、AMSD(アルファメチルスチレン二量体)、およびPerkalink 900(1,3-ビス(シトラコンイミドメチル)ベンゼン)が挙げられる。
【0065】
共作用剤は、ポリマーラジカルと急速に反応し、立体障害を克服し、望ましくない副作用を最小化する多価不飽和化合物などの多官能性反応性添加剤であると一般的に理解される。本発明のプロセス前またはプロセス中に、これらの共作用剤のうちの一つ以上の有効量をポリプロピレンに組み込むことは、結果として生じるポリプロピレンのメルトフローインデックスおよび分子量に影響を与える傾向がある。
【0066】
望ましい場合、抗酸化剤、UV安定剤、潤滑剤、抗分解剤、発泡剤、核形成剤、充填剤、顔料、酸捕捉剤(例えば、ステアリン酸カルシウム)、および/または抗静電剤などの、当業者に公知の量での従来のアジュバントを、ポリプロピレンに添加してもよい。これらのアジュバントは、押出前、ならびに押出中または押出後にポリプロピレンに添加することができる。例えば、発泡ポリプロピレンを生成するために、化学的発泡剤(例えば、アゾジカーボンアミド)を添加するか、または物理的発泡剤(例えば、窒素、二酸化炭素、ブタン、またはイソブタンなどのガス)を押出機に注入することができる。化学的発泡剤は、押出前または押出後に添加されることが好ましい。物理的発泡剤が、押出中または押出後に注入されることが好ましい。
【0067】
HMS-PPは、当業者に公知のようにさらに処理されてもよい。これは、所望の最終生成物に直接形成されてもよく、水中ペレット化器を使用して処理されてもよく、またはEPM、EPDM、および/またはLDPEなどの混和可能量の他の(ポリマー)材料と精製、改変、成形、または混合されてもよい。従って、最終生成物のその他の材料との適合性を高めるために、別のポリマーまたはモノマーを使用する修正があってもよい。
【0068】
あるいは、HMS-PPは、その加工可能性および/または適用性を増加させるために分解されてもよく、または例えば、発泡、発泡成形、射出成形、ブロー成形、押出コーティング、異形押出、キャストフィルム押出、インフレーション成形、および/または熱成形によってさらに処理されてもよい。
【0069】
様々なパラメータの好ましい範囲を含むがこれに限定されない、本発明の様々な要素は、それらが相互に排他的でない限り、組み合わせられ得ることに留意されたい。
【実施例0070】
本発明は、以下の実施例によって示されるが、それらに又はそれによって限定されるものではない。
【0071】
メルトフローインデックス
メルトフローインデックス(MFI)を、ISO 1133(230℃/2.16kgの負荷)に従って、Goettfert Melt Indexer MI-3を用いて測定した。MFIは、g/10分で表される。
【0072】
溶融強度
溶融強度(MS)を、以下の構成および設定を使用して、製造業者の指示に従って、Goettfert Rheograph 20(細管レオメーター)とGoettfert Rheotens 71.97との組み合わせで(単位:cN)測定した。
レオグラフ:
・温度:220℃
・溶融時間:10分
・ダイ:毛細管、長さ:30mm、直径:2mm
・バレルチャンバーおよびピストン:直径15mm
・ピストン速度:0.32mm/秒、せん断速度72s-1に対応
・溶融ストランド速度(開始時):20mm/秒
レオテンス:
・ホイールの加速度(ストランド):10 mm/s2
・バレルから中間ホイールまでの距離:100mm
・鎖長:70mm
【0073】
実施例1(比較 - 保水剤b)なし)
500gのポリプロピレンホモポリマー(PP)粉末、有機過酸化物製剤、および0.5g(0.1phr)のIrganox(登録商標)1010抗酸化剤を、へらを有するバケット内で混合し、その後、バケットミキサー内で10分間混合した。有機過酸化物製剤を、表1に記載される重量%の純粋な過酸化物に対応する量で添加した。
【0074】
以下の有機過酸化物製剤を使用した:
・過酸化ジベンゾイル、75%含水(Perkadox(登録商標)L-W75、Nouryon(登録商標))
・ジ(パラ-メチルベンゾイル)過酸化物、75%含水(Perkadox(登録商標)PM-W75、Nouryon(登録商標))
【0075】
化合物を、以下の設定を使用して、Thermo Scientific製のHaake Rheomex OS PTW16押出機(共回転式二軸、L/D=40)を装備したHaake PolyLab OS RheoDrive 7システムで押出した。
・温度プロファイル設定:ホッパー:30℃、ゾーン1:160℃、ゾーン2~4:190℃、ゾーン5~6:200℃、ゾーン7~10:210℃。
・スクリュー回転数:280rpm。
・スループット:1.2kg/時間、Brabender押出用重量スクリューフィーダータイプDDW-MD2-DSR28-10によって投与された。
・窒素をホッパー(3.5L/分)およびダイ(9L/分)でパージした。
【0076】
押し出された材料を冷却のために水槽に通し、冷却されたストランドを自動造粒機によって造粒した。
【0077】
メルトフローインデックス(MFI)および溶融強度(MS)は、結果として生じるポリプロピレン構造の分子量および長鎖分岐に直接連結される。より高いMFIは、鎖の切断によるポリプロピレン分解を意味し、より低いMFIは、有利な長鎖分岐を表し、これは次に、MSの増加をもたらす。押し出されたHMS-PP化合物のメルトフローインデックス(MFI)および溶融強度(MS)を、以下に記載されるように分析した。結果を表1に列挙する。
【0078】
【0079】
上記の結果から、空気雰囲気の使用は、不活性雰囲気の使用と比較して、ポリプロピレン分解(より高いMFI)を増加させ、溶融強度を減少させることが分かる。
【0080】
また、Perkadox L-W75(過酸化ジベンゾイル(BPO))を使用するのではなく、1または2重量%のPerkadox PM-W75、すなわち、ジ(パラ-メチルベンゾイル)過酸化物[ジ(4-メチルベンゾイル)過酸化物](PTP)を不活性雰囲気中で使用する場合に、最良の結果が達成されることも分かる。
【0081】
実施例2
本開示による固体形態(フレーク)の有機過酸化物組成物を、以下のように調製した。
ステップ1:以下の成分を、50Lのプロシェアミキサー(Lodigeミキサー)に連続的に添加し、60rpmで10分間混合した:4.5kgのジ(パラ-メチルベンゾイル)過酸化物(75%含水、Perkadox(登録商標)PM-W75)、0.9kgのIrganox(登録商標)1010(フェノール系抗酸化剤)、0.9kgのIrgafos 168(亜リン酸塩抗酸化剤)、1.2kgのDHT-4V(Kisuma Chemicalsから入手可能な水酸化炭酸アルミニウムマグネシウムのヒドロタルサイト)、次いで4.5kgのジ(パラ-メチルベンゾイル)過酸化物(75%含水、Perkadox(登録商標)PM-W75)。
ステップ2:(ステップ1から)得られた混合物の500gバッチを、以下の圧縮機設定で、Alexaderwerk WP50 N/75圧縮機を使用して圧縮した:圧力:40バール、フィーダー:7.0、ローラー:1.0。
ステップ3:(ステップ2からの)圧縮生成物を、6mmの篩を/備えたFrewitt GLA ORV造粒機を使用して造粒した。
ステップ4:(ステップ3からの)造粒生成物を、3.15mmの篩および1.0mmの篩を備えたRetsch AS 450篩い分け装置を使用して篩過した。造粒生成物を、3.15mmの篩、続いて1.0mmの篩を使用して最初に篩過した。微粉(<1mm)を圧縮機に戻した。篩から回収された最終生成物は、固体フレークの形態であった。
【0082】
ステップ1で混合された固体粉末に基づき、固体フレークは以下のおよその組成物を有した:
【0083】
【0084】
実施例3
この実施例では、実施例2のポリプロピレンホモポリマー(PP)粉末および固体フレークを、二軸押出機に別々に投与した。二通りのフィード方法を適用した:
・ガス放出のために1cmの開口部を有する窒素パージ(5リットル/分)下でのホッパーの閉設定(「不活性雰囲気」)
・空気下での漏斗への開設定(「空気雰囲気」)
【0085】
化合物を、以下の設定を使用して、Coperion W&P ZSK30二軸押出機(共回転二軸、L/D=36)上で押出した:
・スループットPP:9.75kg/時間、Ktronロスインウェイトフィーダーにより投与
・スループット有機過酸化物製剤:0.25kg/時間、Plasticolor 1500単軸フィーダー(体積)により投与、天秤上に置き、kg/時間で投与速度を記録
・温度プロファイル設定:ホッパー:20℃、ゾーン1:160℃、ゾーン2~3:190℃、ゾーン4:200℃、ゾーン5~6:210℃(ゾーン6=ダイ)。
・スクリュー速度:300rpm。
・真空脱気を約-0.8バールで適用した。
【0086】
押し出された材料を冷却のために水槽に通し、冷却されたストランドを自動造粒機によって造粒した。
【0087】
フレーク中の水の有益な効果を示す比較として、水を含まない実施例2のフレークのバッチも試験した(すなわち、試験前にフレークを意図的に乾燥することによって、実施例2のフレークから水を意図的に除去した)。結果を以下の表2に示す。
【0088】
【0089】
上記の結果は、本開示の有機過酸化物組成物の有効性を明確に実証する。空気雰囲気下で製造されたポリプロピレン生成物は、不活性雰囲気下で製造された生成物と本質的に同じ技術的特性を有した(すなわち、空気雰囲気は過酸化物組成物の性能に影響を与えなかった)。しかしながら、水を含まないフレークは、空気雰囲気下(ポリプロピレン分解、生成物の黄化、およびより低い溶融強度)で顕著な性能の損失を示した。
【0090】
したがって、上記を要約すると、
・比較例1 - 水を含むが保水剤は含まない有機過酸化物は、空気雰囲気下で性能の顕著な損失を示す。
・比較例3 - 保水剤を含むが水は含まない有機過酸化物は、空気雰囲気下で性能の顕著な損失を示す。
・本発明の実施例3 - 保水剤および水を有する有機過酸化物は、空気雰囲気下で性能の顕著な損失を示さない。
【0091】
これらの結果から、水および保水剤は相乗作用で作用しており、実質的に改善された技術的結果をもたらす、と結論付けることができる。
【0092】
実施例4
実施例3を、ポリプロピレンホモポリマーの代わりにポリプロピレンランダム共重合体を使用して反復した。(実施例2のステップ4からの)微粉の試料も、タンブルミキサー(濃縮ミル)内のPP粉末との予混合物を調製し、この予混合物を10kg/時間でKtronフィーダーを介して投与することによって試験した。結果を表3に示し、上記の結論を裏付ける。
【0093】
【0094】
実施例5 - 保水試験(および「プロトコルA」)
以下の固体組成物を、80重量部(pbw)のジ(パラ-メチルベンゾイル)過酸化物(75%含水、Perkadox(登録商標)PM-W75)、7.5pbwのIrganox(登録商標)1010(フェノール系抗酸化剤)、7.5pbwのIrgafos 168(亜リン酸塩抗酸化剤)、および5pbwの保水剤を混合することによって調製した。得られた固体組成物は、記載された量で以下の成分を含有した:
【0095】
【0096】
各固体組成物をペレット化プレス(Herzog HTP 40、直径プレスチャンバー:25mm、取込み生成物:10.0g、圧力:20±5kN(0.4±0.1トン/cm2))上に圧縮し、損失した水(すなわち、これらの試験条件下でプレスによって錠剤から押し出された水)を決定した(すなわち、プレス前の粉末混合物とプレス後の錠剤の重量差に基づいて、水分損失%を計算した)。水分損失は、元の含水量の%として報告される。例えば、1gの重量損失(すなわち、9gの最終重量)は、元の含水量の50%の損失に等しい(10gの20重量%の=2gの水、したがって、錠剤から押し出された1gの水 = 50%の水分損失)。
【0097】
以下の作用物質を、それらの保水能力について試験した。
・ステアリン酸カルシウム
・Lankroflex E2307(エポキシ化大豆油)
・DHT-4V(Kisuma Chemicalsから入手可能な水酸化炭酸アルミニウムマグネシウムのヒドロタルサイト)
結果を以下の表4に示す。
【0098】
【0099】
本開示の文脈では、本明細書に開示される組成物での使用に特に好適な保水剤は、作用物質を含む組成物が上記の特定の試験条件に供される時に、組成物に元の含水量の60%以上を保持させる(すなわち、水分損失が元の含水量に対して40%以下である)前記作用物質である。
【0100】
言い換えれば、本開示の文脈において、作用物質は、前記作用物質が室温で固体であり、以下の実験プロトコル(本明細書では「プロトコルA」と称される)の要件を満たす場合、特に好適な「保水剤b)」である。
I.60重量部(pbw)のジ(パラ-メチルベンゾイル)過酸化物を、20pbwの水、7.5pbwのペンタエリトリトールテトラキス(3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオン酸塩、7.5pbwのトリス(2,4-ジ-tert-ブチルフェニル)-亜リン酸塩、および5pbwの保水剤と混合する、
II.ペレット化プレス(Herzog HTP 40、直径プレスチャンバー:25mm、取入れ生成物:10.0g、圧力:20±5kN(0.4±0.1トン/cm2))上で、ステップIから得られる10gの組成物を圧縮する、
III.ステップIIから得られた圧縮組成物(ペレット)を計量する(単位:グラム)、
IV.ステップIIでの圧縮による重量損失を決定する、
-すなわち、10g-[ステップIIIで決定された重量]、
-これらの特定の試験条件下では、重量損失は、ステップIIで固体組成物に加えられた圧縮力の結果としての水分損失重量に対応する、
V.水の損失%を計算する、
-すなわち、([ステップIVでの重量損失]/2)*100)、
VI.圧縮組成物中に保持された元の含水量の%を決定する、
-すなわち、元の含水量の% = 100%- [ステップVで決定された%]、
VII.ステップVI)で計算された%が≧60%の場合、作用物質は、本開示による特に好適な保水剤b)である。
【0101】
好ましい保水剤b)は、プロトコルAに供された時に、薬剤b)を含む有機過酸化物組成物が元の含水量の80%以上を保持するものである。
【0102】
実施例6
上述のように、国際特許公開第2019/038244号で使用される好ましい有機過酸化物製剤が押出機に投与される時、押出機装置上への製剤の意図しない流出の可能性は常にある。その場合、水(鈍感剤)は急速に蒸発し、それによって過酸化物の濃度を、過酸化物が摩擦感度および衝撃感度となり得る点まで増加させる。その場合、爆発の可能性が著しく増大するが、これは(特に工業規模において)明らかに回避すべきことである。この問題により、こうした有機過酸化物製剤の取り扱いは、ある程度危険かつ困難である。本明細書に開示される有機過酸化物組成物は、国際特許公開第2019/038244号の好ましい有機過酸化物製剤よりも、はるかに安全かつ取り扱いが容易であることが見出された。この所見は、実施例2の過酸化物組成物を国際特許公開第2019/038244号の好ましい有機過酸化物製剤と比較した、以下の熱爆発および衝撃感度安全性試験に基づいた。
【0103】
試験された組成物
・実施例2の過酸化物組成物
・乾燥された実施例2の過酸化物組成物(組成物中に含有される水の流出および蒸発をシミュレートするため)
・Perkadox PM-W75(国際特許公開第2019/038244号の好ましい有機過酸化物製剤)
・乾燥されたPerkadox PM-W75(製剤中に含有される水の流出および蒸発をシミュレートするため)
【0104】
安全性試験方法
熱爆発:圧力容器試験(PVT)
基準:強烈 - 限界直径≧9mm
中程度 - 限界直径≧3.5mmおよび<9mm
低度 - 限界直径≧1mmおよび<3.5mm
なし - 限界直径 < 1 mm
参考文献:UN Manual of Tests and Criteria, 7th revised edition, 2019, Test method E.2
【0105】
衝撃感度:BAM Fallhammer
基準:非常に高い - 衝撃感度≦2 J
高 - 衝撃感度 > 2 Jおよび≦ 7.5 J
中 - 衝撃感度 > 7.5 Jおよび≦ 40 J
低 - 衝撃感度 > 40 J
参考文献:UN Manual of Tests and Criteria, 7th revised edition, 2019, Test method 3 (a) (ii)
【0106】
結果
結果を以下の表5に示す。
【0107】
【0108】
これらの結果は、本開示の有機過酸化物組成物が、乾燥状態(例えば、押出機の近くまたは上での偶発的な流出)において、Perkadox PM-W75(熱爆発なし)よりも安全であり、Perkadox PM-W75よりもはるかに安全であることを示す。
【0109】
はるかに改善された空気雰囲気の性能およびはるかに改善された安全性プロファイルを考慮すると、本明細書に開示される有機過酸化物組成物は、ポリオレフィンプラスチックのリサイクルで使用するための優れた候補である。
【0110】
実施例7
本開示による固体形態(固体顆粒)の有機過酸化物組成物を、以下のように調製した。
【0111】
ステップ1:以下の成分を、10LのEirich R02プラネタリーミキサーに連続的に添加し、15分間混合した:1.5kgのジ(パラ-メチルベンゾイル)過酸化物(75%含水、Perkadox(登録商標)PM-W75)、0.3kgのIrganox(登録商標)1010(フェノール系抗酸化剤)、0.3kgのIrgafos 168(亜リン酸塩抗酸化剤)、0.4kgのDHT-4V(Kisuma Chemicalsから入手可能な水酸化炭酸アルミニウムマグネシウムのヒドロタルサイト)、次いで1.5kgのジ(パラ-メチルベンゾイル)過酸化物(75%含水、Perkadox(登録商標)PM-W75)。
ステップ2:(ステップ1から)得られた混合物の4kgバッチを、4mmのダイプレートを備えるAmandus Kahl 14~175圧縮機を使用して、以下の圧縮機設定で圧縮した:50rpm、トルクは、手動フィードを使用して2.5~2.8kWに維持した。
ステップ3:(ステップ2からの)圧縮された生成物を、2mmの篩上において手動で篩い分けて、微粉を除去した。篩から回収された最終生成物は、固体顆粒(主に4mmの断面直径を有する、実質的に円筒形状の顆粒から構成される)の形態であった。
【0112】
ステップ1で混合された固体粉末に基づき、固体顆粒は以下のおよその組成物を有した:
【0113】
【0114】
実施例8
本開示による固体形態(粉末)の有機過酸化物組成物を、以下の成分を混合することによって調製した:4.5kgのジ(パラ-メチルベンゾイル)過酸化物(75%含水、Perkadox(登録商標)PM-W75)、0.9kgのIrganox(登録商標)1010(フェノール系抗酸化剤)、0.9kgのIrgafos 168(亜リン酸塩抗酸化剤)、1.2kgのDHT-4V(Kisuma Chemicalsから入手可能な水酸化炭酸アルミニウムマグネシウムのヒドロタルサイト)、次いで、4.5kgのジ(パラ-メチルベンゾイル)過酸化物(75%含水、Perkadox(登録商標)PM-W75)。
【0115】
固体粉末は、以下のおよその組成物を有した。
【0116】
【0117】
実施例9
本実施例では、本開示によるポリプロピレンホモポリマー(PP)粉末および過酸化物組成物を、空気雰囲気下で二軸押出機に別々に投与した。化合物を、以下の設定を使用して、Coperion W&P ZSK30二軸押出機(共回転二軸、L/D=36)上で押出した:
・スループットPP:9.75kg/時間(実施例10のCaHPO4に基づく顆粒については、8.78kg/時間)、Ktronロスインウェイトフィーダーにより投与
・スループット有機過酸化物製剤:0.25kg/時間(実施例10のCaHPO4に基づく顆粒については、0.22kg/時間)、Plasticolor 1500単軸フィーダー(体積)により投与、天秤上に置き、kg/時間で投与速度を記録
・温度プロファイル設定:ホッパー:20℃、ゾーン1:160℃、ゾーン2~3:190℃、ゾーン4:200℃、ゾーン5~6:210℃(ゾーン6 = ダイ)。
・スクリュー回転数:300rpm。
・真空脱気を約-0.65バールで適用した。
【0118】
押し出された材料を冷却のために水槽に通し、冷却されたストランドを自動造粒機によって造粒した。結果を以下の表6に示す。
【0119】
【0120】
予想通り、本開示の有機過酸化物組成物(実施例2、7および8)は、メルトフローインデックスを実質的に減少させ、溶融強度を実質的に増加させた。しかしながら、予想外の観察は、有機過酸化物組成物の物理的形態が、MFIに重大な効果を有すると思われることであり、圧縮された組成物(フレークおよび顆粒)は、圧縮ステップ(混合粉末)に供されなかった同等の混合物の性能を上回った。したがって、粉末形態が優れた結果をもたらしたにもかかわらず、混合物を圧縮された物品(例えば、フレークおよび顆粒)に変換することによってこれらの結果をさらに強化することができることが見出された。
【0121】
実施例10
本開示による固体形態(固体顆粒)の有機過酸化物組成物を、以下のように調製した。リン酸二カルシウム(CaHPO4.2H2O)は、本実施例の保水剤であった。
ステップ1:以下の成分を10LのEirich R02プラネタリーミキサーに連続的に添加し、15分間混合した:1.6kgのジ(パラ-メチルベンゾイル)過酸化物(75%含水、Perkadox(登録商標)PM-W75)、0.8kgのリン酸二カルシウム(CaHPO4.2H2O)、次いで1.6kgのジ(パラ-メチルベンゾイル)過酸化物(75%含水、Perkadox(登録商標)PM-W75)。
ステップ2:(ステップ1から)得られた混合物の4kgバッチを、4mmダイプレートを備えるAmandus Kahl 14~175圧縮機を使用して、以下の圧縮機設定で圧縮した:50rpm、トルクは、手動フィードを使用して2.5~2.8kWに維持した。
ステップ3:(ステップ2からの)圧縮生成物を、2mmの篩上において手動で篩い分けて、微粉を除去した。篩から回収された最終生成物は、固体顆粒(主に4mmの断面直径を有する、実質的に円筒形状の顆粒から構成される)の形態であった。
【0122】
ステップ1で混合された固体粉末に基づき、固体顆粒は以下のおよその組成物を有した:
【0123】
【0124】
実施例9と同等のPP処理条件下で、顆粒は予想通りに実施された(MFIの減少、溶融強度の増加、結果を表7に示す)。
【0125】
【0126】
本明細書において、明示的に別段の指示がない限り、「または」という用語は、条件の一方のみが満たされることを必要とする「排他的または」という演算子とは対照的に、記載された条件のいずれかまたは両方が満たされたときに真値を返す演算子という意味で使用される。「含む(comprising)」という言葉は、「からなる(consisting of)」という意味ではなく、「含む(including)」という意味で使用される。上記で確認したすべての以前の教示は、参照により本明細書に組み込まれる。本明細書の以前に公開されたいかなる文書の承認も、その教示が、本明細書の日付において欧州または他の場所での一般知識であったことを認めるまたは表明するものと解釈されるべきではない。
各Rが、メチル、エチル、n-プロピル、i-プロピル、n-ブチル、sec-ブチル、tert-ブチル、およびtert-アミルから個別に選択される、請求項1に記載の有機過酸化物組成物。
有機過酸化物組成物が、40~75重量%、好ましくは45~70重量%、より好ましくは50~65重量%の前記少なくとも一つの有機過酸化物a)(前記有機過酸化物組成物の前記総重量に基づいた重量%)を含む、請求項1に記載の有機過酸化物組成物。
前記有機過酸化物組成物が、1~30重量%、好ましくは3~20重量%、より好ましくは5~15重量%の少なくとも一つの保水剤b)(前記有機過酸化物組成物の前記総重量に基づいた重量%)を含む、請求項1に記載の有機過酸化物組成物。
前記有機過酸化物組成物が、5~30重量%、好ましくは10~25重量%、より好ましくは15~20重量%の水(前記有機過酸化物組成物の前記総重量に基づいた重量%)を含む、請求項1に記載の有機過酸化物組成物。
使用される前記有機過酸化物組成物の量が、前記少なくとも一つの有機過酸化物a)の前記濃度が、100gのポリプロピレン当たり0.1~5.0gの過酸化物の範囲、より好ましくは100gのポリプロピレン当たり0.5~3.0gの範囲となるような量である、請求項11に記載のプロセス。