(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024119050
(43)【公開日】2024-09-02
(54)【発明の名称】はんだ付け用水溶性フラックス、はんだペースト
(51)【国際特許分類】
B23K 35/363 20060101AFI20240826BHJP
B23K 35/26 20060101ALI20240826BHJP
C22C 13/00 20060101ALN20240826BHJP
C22C 12/00 20060101ALN20240826BHJP
【FI】
B23K35/363 D
B23K35/26 310A
B23K35/26 310C
B23K35/363 E
C22C13/00
C22C12/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024021714
(22)【出願日】2024-02-16
(31)【優先権主張番号】P 2023024773
(32)【優先日】2023-02-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000168414
【氏名又は名称】荒川化学工業株式会社
(72)【発明者】
【氏名】北浦 知憲
(57)【要約】 (修正有)
【課題】濡れ性に優れ、高温下に曝した後でも水での洗浄が可能なはんだ付け用フラックス、当該フラックスを含むはんだペーストを提供することにある。
【解決手段】下記の(a1)並びに、(a2)及び/又は(a3)を含むグリコール(A)と、活性剤(B)とを含むはんだ付け用水溶性フラックス(ただし、ウレタン変性ポリエーテルを含むフラックスを除く)であって、
フラックス成分を100重量%として、(A)成分が35重量%以上99重量%以下であり、
(B)成分が、水溶性非ハロゲン系有機カルボン酸(b1)及び/又は水溶性有機ハロゲン(b2)であるはんだ付け用水溶性フラックス。
・(a1)成分:数平均分子量が1000未満であるポリエチレングリコール
・(a2)成分:数平均分子量が1000以上10000以下であるポリエチレングリコール
・(a3)成分:ポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリコール
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記の(a1)並びに、(a2)及び/又は(a3)を含むグリコール(A)と、活性剤(B)とを含むはんだ付け用水溶性フラックス(ただし、ウレタン変性ポリエーテルを含むフラックスを除く)であって、
フラックス成分を100重量%として、(A)成分が35重量%以上99重量%以下であり、
(B)成分が、水溶性非ハロゲン系有機カルボン酸(b1)及び/又は水溶性有機ハロゲン(b2)である、はんだ付け用水溶性フラックス。
・(a1)成分:数平均分子量が1000未満であるポリエチレングリコール
・(a2)成分:数平均分子量が1000以上10000以下であるポリエチレングリコール
・(a3)成分:ポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリコール
【請求項2】
更に非ハロゲン系有機アミン、ポリプロピレングリコール、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル及びポリオキシアルキレンフェニルエーテルからなる群より選ばれる少なくとも1種以上の成分(C)を含む請求項1に記載のはんだ付け用水溶性フラックス。
【請求項3】
請求項1又は2に記載のはんだ付け用水溶性フラックス及びはんだ粉末を含むはんだペースト。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、はんだ付け用水溶性フラックス、はんだペーストに関する。
【背景技術】
【0002】
はんだ付け用フラックスやはんだペーストは、携帯電話やパソコン等の電子機器や車載、プリント基板等の製造において、電子部品を実装する、又はその他の部品を接合するのに使用される材料である。フラックスの組成は、ベース樹脂、活性剤、溶剤、及びその他の成分で構成され、そのベース樹脂としては、溶融時のはんだ付け性、濡れ性やフラックス残渣の絶縁抵抗性等に優れたロジンが汎用されている。一方、リフロー後にはんだ表面に付着したフラックス残渣等は、電気的信頼性の低下(例えば、マイグレーション、高周波特性の悪化等)や、樹脂モールド工程でのはんだペーストの濡れ性の低下(不濡れ)、硬化不良や密着不良等の原因となるため、樹脂モールドを伴うディスクリートデバイス、半導体パッケージ、パワーモジュール、精密光学デバイス、高信頼性を要求する航空宇宙関連の電子基板等ではフラックス残渣の洗浄工程が必要とされる。しかしながら、ロジンを主成分とするフラックスでは、グリコールや炭化水素等の有機溶剤での洗浄となり、有機溶剤の揮発による火災、大気汚染や排水汚染による人体への悪影響等の安全衛生面や、コスト面で問題となる。
【0003】
このような問題から、フラックス残渣等を水や温水で洗浄できる水溶性フラックスが種々開発されている。その技術として、例えば、分子量500以上でオキシエチレン基及びオキシプロピレン基を特定の比率で有するポリアルキレングリコールおよび抗酸化剤からなるハンダ付用水溶性フラックスが開示されており(特許文献1)、これとは別に、本出願人も固体状ポリアルキレングリコール、ウレタン系会合型増粘剤、液状ポリアルキレングリコール、アルカノールアミン及び活性剤を含有するフラックスを公知にしている(特許文献2)。
【0004】
このようなフラックスでは、通常のリフロー後では、フラックス残渣等を水による洗浄で除去できていたが、はんだペーストを溶融し、更に高温下で曝した後の場合には、基板のはんだ接合部にフラックス残渣が残ってしまい、水による洗浄性が充分ではなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開昭56-163094号公報
【特許文献2】特開2017-100137号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、濡れ性に優れ、高温下に曝した後でも水によって、はんだ付け後のフラックス残渣を除去できるはんだ付け用水溶性フラックスを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、前記課題を解決すべく、鋭意検討したところ、特定のグリコール類と水溶性有機酸とを組み合わせたフラックスが、前記課題を解決することを見出し、本発明を完成させるに至った。すなわち、本発明は、以下のはんだ付け用水溶性フラックス、はんだペーストに関する。
【0008】
1.下記の(a1)並びに、(a2)及び/又は(a3)を含むグリコール(A)と、活性剤(B)とを含むはんだ付け用水溶性フラックス(ただし、ウレタン変性ポリエーテルを含むフラックスを除く)であって、
フラックス成分を100重量%として、(A)成分が35重量%以上99重量%以下であり、
(B)成分が、水溶性非ハロゲン系有機カルボン酸(b1)及び/又は水溶性有機ハロゲン(b2)である、はんだ付け用水溶性フラックス。
・(a1)成分:数平均分子量が1000未満であるポリエチレングリコール
・(a2)成分:数平均分子量が1000以上10000以下であるポリエチレングリコール
・(a3)成分:ポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリコール
【0009】
2.更に非ハロゲン系有機アミン、ポリプロピレングリコール、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル及びポリオキシアルキレンフェニルエーテルからなる群より選ばれる少なくとも1種以上の成分(C)を含む前項1に記載のはんだ付け用水溶性フラックス。
【0010】
3.前項1又は2に記載のはんだ付け用水溶性フラックス及びはんだ粉末を含むはんだペースト。
【発明の効果】
【0011】
本発明のはんだ付け用水溶性フラックス(以下、単に“フラックス”ともいう)によれば、濡れ性に優れ、高温下に曝した後でも水によって、はんだ付け後のフラックス残渣を除去できる。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明における各含有量、物性値等の数値範囲は、項目ごとに記載された数値から適宜選択して設定される。例えば、数値Mがm1、m2、m3(なお、m1<m2<m3とする)である場合、その数値範囲としては、m1以上、m2以上、m1を超える、m2を超える、m2以下、m3以下、m2未満、m3未満、m1以上m2以下(m1~m2)、m1以上m3以下(m1~m3)、m2以上m3以下(m2~m3)、m1以上m2未満、m1以上m3未満、m2以上m3未満、m1を超えてm2以下、m1を超えてm3以下、m2を超えてm3以下、m1を超えてm2未満、m1を超えてm3未満、m2を超えてm3未満等が挙げられる。
【0013】
本発明のフラックスは、下記の(a1)並びに、(a2)及び/又は(a3)を含むグリコール(A)(以下、(A)成分ともいう。)と、特定の活性剤(B)(以下、(B)成分ともいう。)とを含むものである。
・(a1)成分:数平均分子量が1000未満であるポリエチレングリコール
・(a2)成分:数平均分子量が1000以上10000以下であるポリエチレングリコール
・(a3)成分:ポリオキシエチレンポリプロピレングリコール
【0014】
前記フラックスにおいて、(A)成分の含有量(不揮発分換算、以下同様)は、フラックス成分を100重量%として、35重量%以上99重量%以下であり、その例としては、35重量%、40重量%、45重量%、50重量%、55重量%、60重量%、65重量%、70重量%、75重量%、80重量%、85重量%、90重量%、95重量%、99重量%が挙げられる。ここで、フラックス成分とは、本発明のフラックスに含まれる全ての成分を指す。(A)成分の含有量が35重量%未満であると、フラックス残渣の耐熱性が不足し、高温下で曝された前記残渣が水によって洗浄されにくくなり、99重量%を超えると、(B)成分が少なくなるため、はんだ付け性が不良となりやすい。
【0015】
(a1)成分は、数平均分子量が1000未満であるポリエチレングリコールであり、フラックスに流動性をもたせて、基板上へフラックスを塗布しやすくする成分である。(a1)成分の数平均分子量の上限及び下限としては、例えば、100、150、200、250、300、350、400、450、500、550、600、650、700、750、800、850、900、950、960、970、980、990等が挙げられる。中でも、フラックスに流動性をもたせて、基板上へフラックスを塗布しやすくする点から100以上990以下が好ましい。また、(a1)成分は、単独でも2種以上を組み合わせても良い。
【0016】
(a1)成分の市販品としては、例えば、「PEG-200」、「PEG-300」、「PEG-400」、「PEG-600」、「PEG-1500」(以上、三洋化成工業(株)製)、「PEG#200T」、「PEG#200」、「PEG#300」、「PEG#400」、「PEG#600」、「PEG#1500」(以上、日油(株)製)等が挙げられる。
【0017】
(a1)成分の含有量の上限及び下限としては、例えば、5重量%、10重量%、15重量%、20重量%、25重量%、30重量%、35重量%、40重量%、45重量%、50重量%、55重量%、60重量%、65重量%、70重量%、75重量%、80重量%、85重量%、90重量%、95重量%等が挙げられる。中でも、基板上へフラックスを塗布しやすくする点から、5重量%以上95重量%以下が好ましい。
【0018】
(a2)成分は、数平均分子量が1000以上10000以下であるポリエチレングリコールであり、フラックスに粘着性を付与するとともに、基板上へフラックスを塗布又は印刷しやすくするための成分である。(a2)成分の数平均分子量の上限及び下限としては、例えば、1000、1500、2000、2500、3000、3500、4000、4500、5000、5500、6000、6500、7000、7500、8000、8500、9000、9500、10000が挙げられる。これらの(a2)成分は、単独でも2種以上を組み合わせても良い。
【0019】
(a2)成分の市販品としては、例えば、「PEG-1000」、「PEG-1540」、「PEG-2000」、「PEG-4000」、「PEG-6000」、「PEG-8000」、「PEG-10000」(以上、三洋化成工業(株)製)、「PEG#1000」、「PEG#1540」、「PEG#2000」、「PEG#4000」、「PEG#4000P」、「PEG#6000」、「PEG#6000P」(以上、日油(株)製)等が挙げられる。
【0020】
(a2)成分の含有量の上限及び下限としては、例えば、1重量%、3重量%、5重量%、7重量%、10重量%、15重量%、20重量%、25重量%、30重量%、35重量%、40重量%等が挙げられる。中でも、基板上へフラックスを塗布しやすくする点から、1重量%以上40重量%以下が好ましい。
【0021】
(a3)成分は、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリコールであり、ポリエチレングリコールとポリプロピレングリコール(プロパン-1,2-ジオール)とを反応させて得られるものである。(a3)成分を使用することにより、温度上昇に伴うフラックスの粘度低下を抑制する効果を発揮する。
【0022】
(a3)成分の数平均分子量としては、例えば、100、200、300、400、500、600、700、800、900、1000、1500、2000、2500、3000、3500、4000、4500、5000、5500、6000、6500、7000、7500、8000、8500、9000、9500、10000が挙げられる。中でも(a1)成分と相溶しやすくする点から、(a3)成分の数平均分子量は、100以上10000以下が好ましい。なお、(a3)成分は、単独でも2種以上を組み合わせても良い。
【0023】
(a3)成分の市販品としては、「アデカポリエーテルCM-252」、「アデカポリエーテルCM-294」、「アデカポリエーテルCM-381」、「アデカポリエーテルPR-3005」、「アデカポリエーテルPR-3007」、「アデカポリエーテルPR-5007」(以上、(株)ADEKA製)等が挙げられる。
【0024】
(a3)成分の含有量の上限及び下限としては、例えば、1重量%、3重量%、5重量%、7重量%、10重量%、15重量%、20重量%、25重量%、30重量%、35重量%、40重量%、45重量%、50重量%等が挙げられる。中でも、フラックス残渣が水によって洗浄されやすくする点から、1重量%以上50重量%以下が好ましい。
【0025】
(B)成分は、活性剤である。前記活性剤は、水溶性非ハロゲン系有機カルボン酸(b1)(以下、(b1)成分ともいう。)及び/又は水溶性有機ハロゲン(b2)(以下、(b2)成分ともいう。)であり、はんだ付け性に寄与する成分である。ここで、水溶性とは水に対して可溶なことを意味する。また、(B)成分は、立体異性体(cis体及びtrans体の幾何異性体、D体及びL体の光学異性体等)のものでも、これら異性体の混合物でも使用できる。
【0026】
(b1)成分としては、例えば、
シュウ酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、ピメリン酸、マレイン酸、trans-アコニット酸等のヒドロキシ基を有さない水溶性脂肪族ジカルボン酸;
o-フタル酸、m-フタル酸、p-フタル酸等のヒドロキシ基を有さない水溶性芳香族ジカルボン酸;
2-ヒドロキシ酢酸(グリコール酸)、2-ヒドロキシプロピオン酸(乳酸)、3-ヒドロキシプロピオン酸、2-ヒドロキシブタン酸、1,2-ジヒドロキシプロピオン酸(グリセリン酸)、2,2-ビス(ヒドロキシメチル)プロピオン酸、2,2-ジメチロールプロピオン酸、2,2-ジメチロールブタン酸、2,2-ジメチロール吉草酸等のヒドロキシ基を有する水溶性脂肪族モノカルボン酸;
2-ヒドロキシプロパンニ酸(タルトロン酸)、2-ヒドロキシブタンニ酸(リンゴ酸)、2,3-ジヒドロキシコハク酸(酒石酸)等のヒドロキシ基を有する水溶性脂肪族ジカルボン酸;
クエン酸等のヒドロキシ基を有する水溶性脂肪族トリカルボン酸;
オキサロ酢酸、α-ケトグルタル酸、ジグリコール酸、ピコリン酸等が挙げられる。
【0027】
(b2)成分としては、例えば、
1-ブロモ-2-プロパノール、3-ブロモ-1-プロパノール、2,3-ジブロモ-1-プロパノール、1,3-ジブロモ-2-プロパノール、2,3-ジブロモ-1,4-ブタンジオール、2,3-ジブロモ-2-ブテン-1,4-ジオール等のハロゲン化アルコール;
エチルアミン塩酸塩、ジメチルアミン塩酸塩、ジエチルアミン塩酸塩、トリエチルアミン塩酸塩、イソプロピルアミン塩酸塩、ブチルアミン塩酸塩、へキシルアミン塩酸塩、n-オクチルアミン塩酸塩、ドデシルアミン塩酸塩、ジエタノールアミン塩酸塩、シクロヘキシルアミン塩酸塩、ジメチルシクロヘキシルアミン塩酸塩、1,3-ジフェニルグアニジン塩酸塩、ジメチルベンジルアミン塩酸塩、ピリジン塩酸塩、ジエチルアニリン塩酸塩、ヒドラジン一塩酸塩、ヒドラジン二塩酸塩等のアミン塩酸塩;
エチルアミン臭化水素酸塩、イソプロピルアミン臭化水素酸塩、ジメチルアミン臭化水素酸塩、ジエチルアミン臭化水素酸塩、トリエチルアミン臭化水素酸塩、2-エチルヘキシルアミン臭化水素酸塩、シクロヘキシルアミン臭化水素酸塩、1,3-ジフェニルグアニジン臭化水素酸塩、ジアニリン臭化水素酸塩、エチルアニリン臭化水素酸塩、ピリジン臭化水素酸塩、ヒドラジン一臭化水素酸塩、ヒドラジン二臭化水素酸塩等のアミン臭化水素酸塩等が挙げられる。
【0028】
これらの(B)成分は、単独でも2種以上を組み合わせても良い。中でも、フラックス残渣が水によって洗浄されやすくする点から、ヒドロキシ基を有さない水溶性脂肪族ジカルボン酸、ヒドロキシ基を有する水溶性脂肪族モノカルボン酸、ヒドロキシ基を有する水溶性脂肪族ジカルボン酸、ハロゲン化アルコールが好ましい。
【0029】
(B)成分の含有量の上限及び下限としては、例えば、0.1重量%、0.25重量%、0.5重量%、0.75重量%、1重量%、3重量%、5重量%、7重量%、10重量%、15重量%、20重量%、25重量%、30重量%等が挙げられる。中でも、フラックス残渣が水によって洗浄されやすくする点から、0.1重量%以上30重量%以下が好ましい。
【0030】
本発明のフラックスは、ウレタン変性ポリエーテルを含むと、高温下で曝したときにフラックス残渣が固化し、水によって洗浄できないため、好ましくない。
【0031】
ウレタン変性ポリエーテルは、末端に疎水基を有し、分子鎖中にウレタン結合を有するポリエーテルを指す。また、その市販品としては、例えば、「SN-シックナー603」、「SN-シックナー607」、「SN-シックナー612」、「SN-シックナー612N」、「SN-シックナー619」、「SN-シックナー621N」、「SN-シックナー621TF」、「SN-シックナー623N」、「SN-シックナー624N」、「SN-シックナー625N」、「SN-シックナー629N」、「ノパール700N」、「SN-シックナー660T」、「SN-シックナー665T」、「SN-シックナーA-812」、「SN-シックナーA-814」(以上、サンノプコ(株)製)、「UH-420」、「UH-450」、「UH-540」、「UH-752」(以上、(株)ADEKA製)、「レオレート244」、「レオレート278」、「レオレート300」、「レオレート212」(以上、エレメンティス・ジャパン(株)製)等が挙げられる。
【0032】
本発明のフラックスは、はんだペーストの濡れ性を向上させる点から、さらに非ハロゲン系有機アミン、ポリプロピレングリコール、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル及びポリオキシアルキレンフェニルエーテルからなる群より選ばれる少なくとも1種以上の成分(C)(以下、(C)成分という。)を含んでも良い。
【0033】
非ハロゲン系有機アミンとしては、例えば、
n-ブチルアミン、イソブチルアミン、n-ペンチルアミン、n-ヘキシルアミン、n-へプチルアミン、n-オクチルアミン等のモノアルキルアミン;
ジn-プロピルアミン、ジイソプロピルアミン、ジn-ブチルアミン、ジイソブチルアミン、ジーtert-ブチルアミン、N-(n-ブチル)-N-エチルアミン、N-(n-ブチル)-N-(n-プロピル)アミン、ジn-ペンチルアミン、ジイソペンチルアミン、ジn-ヘキシルアミン、ジn-ヘプチルアミン、ジ(2-エチルヘキシル)アミン、ジn-オクチルアミン、ジn-ノニルアミン等のジアルキルアミン;
トリn-ヘキシルアミン、トリn-ヘプチルアミン、トリn-オクチルアミン、N,N-ジエチルメチルアミン等のトリアルキルアミン;
シクロペンチルアミン、シクロヘキシルアミン等のモノシクロアルキルアミン;
ジシクロペンチルアミン、ジシクロヘキシルアミン等のジシクロアルキルアミン;
N-メチルシクロヘキシルアミン、N-エチルシクロヘキシルアミン、N-イソプロピルシクロヘキシルアミン等のN-アルキルモノシクロアルキルアミン等
アニリン、ジフェニルアミン、トリフェニルアミン、ベンジルアミン等のアリールアミン;
モノエタノールアミン、3-アミノ-1-プロパノール、2-アミノ-1-プロパノール、4-アミノ-1-ブタノール、2-アミノ-1-ブタノール、2-アミノ-2-メチル-1-プロパノール等のモノアルカノールアミン;
ジエタノールアミン、N-メチルジエタノールアミン、ジイソプロパノールアミン、2-アミノ-1,3-プロパンジオール、2-アミノ-2-メチル-1,3-プロパンジオール、2-アミノ-2-エチル-1,3-プロパンジオール等のジアルカノールアミン;
トリエタノールアミン、1,3-ビス[トリス(ヒドロキシメチル)メチルアミノ]プロパン等のトリアルカノールアミン;
N,N,N’,N’-テトラキス(2-ヒドロキシエチル)エチレンジアミン、N,N,N’,N’-テトラキス(2-ヒドロキシプロピル)エチレンジアミン等のテトラアルカノールアミン等が挙げられる。これらは単独でも2種以上を組み合わせても良い。中でも、フラックス残渣が水によって洗浄されやすくする点から、テトラアルカノールアミンが好ましい。
【0034】
ポリプロピレングリコールは、プロピレングリコール(プロパン-1,2-ジオール)が2つ以上重合したものを意味し、例えば、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、テトラプロピレングリコール、プロピレングリコールが5つ以上重合したポリプロピレングリコールが挙げられる。これらは単独でも2種以上を組み合わせても良い。また、市販品としては、例えば、「DPG-RF」、「TPG-H」(以上(株)ADEKA製)、「サンニックスPP-200」、「サンニックスPP-400」、「サンニックスPP-600」、「サンニックスPP-950」、「サンニックスPP-1000」、「サンニックスPP-1200」、「サンニックスPP-2000」、「サンニックスPP-3000」、「サンニックスPP-4000」、「ニューポールPP-200」(以上、三洋化成工業(株)製)、トリプロピレングリコール(旭硝子(株)製)、「エクセノール510」、「エクセノール1020」、「エクセノール2020」(以上、AGC(株))等が挙げられる。中でも、(A)成分と相溶しやすくする点から、トリプロピレングリコールが好ましい。
【0035】
ポリオキシアルキレンアルキルエーテルは、主鎖が複数のオキシアルキレン基で結合し、末端がアルキル基であるエーテルを指す。オキシアルキレン基としては、例えば、オキシエチレン基、オキシプロピレン基、オキシブチレン基等が挙げられる。また、アルキル基としては、例えば、炭素数が1~20の飽和炭化水素基が挙げられ、その構造は直鎖であっても分岐であっても良い。これらは単独でも2種以上を組み合わせても良い。また、その市販品としては、例えば、「ソフタノール30」、「ソフタノール50」、「ソフタノール70」、「ソフタノール90」、「ソフタノール120」、「ソフタノール200」、「ソフタノール300」、「ソフタノール400」、「ソフタノール500」等のソフタノールMシリーズ、「ソフタノールL90」等のソフタノールLシリーズ(以上、(株)日本触媒製)、「アデカノールLG-109」、「アデカノールLG-126」、「アデカノールLG-294」、「アデカノールLG-295S」、「アデカノールLG-299」、「アデカノールLG-805」、「アデカノールLG-131N」(以上、(株)ADEKA製)等が挙げられる。
【0036】
ポリオキシアルキレンフェニルエーテルは、主鎖が複数のオキシアルキレン基で結合し、末端がフェニル基であるエーテルを指す。前記のフェニル基は、非置換フェニル基でもアルキル基等が結合した置換フェニル基でも使用できる。これらは単独でも2種以上を組み合わせても良い。また、その市販品としては、例えば、「ブラウノンNK-8055」、「ブラウノンNK-808」、「ブラウノンNK-810」、「ブラウノンNK-824」、「ブラウノンDP-5.3」、「ブラウノンDP-6.5」、「ブラウノンDP-9」、「ブラウノンDP-12」、「ブラウノンPH-5」、「ブラウノンDSP-9」(以上、青木油脂工業(株)製)等が挙げられる。
【0037】
(C)成分の含有量の上限及び下限としては、フラックス成分を100重量%として、例えば、0.1重量%、0.25重量%、0.5重量%、0.75重量%、1重量%、3重量%、5重量%、7重量%、10重量%、15重量%、20重量%、25重量%、30重量%等が挙げられる。中でも、(A)成分と相溶しやすくする点から、0.1重量%以上30重量%以下が好ましい。
【0038】
本発明のフラックスには、更に酸化防止剤、防黴剤、艶消し剤等の添加剤を含んでも良い。添加剤の含有量としては、フラックス成分を100重量%として、1重量%以下が好ましく、0.5重量%以下がより好ましい。
【0039】
本発明のフラックスの製造方法としては、例えば、(A)成分及び(B)成分、必要に応じて、(C)成分及び前記添加剤を配合し、室温下又は加熱下で溶解するまで混合すること等が挙げられる。
【0040】
本発明のはんだペーストは、前記はんだ付け用水溶性フラックス及びはんだ粉末を含むものである。
【0041】
はんだ粉末としては、例えば、Snをベースとするはんだ粉末、例えばSn-Ag系、Sn-Cu系、Sn-Sb系、Sn-Zn系、Sn-Bi系のはんだ粉末等が挙げられる。また、はんだ粉末は、Ag、Al、Au、Bi、Co、Cu、Fe、Ga、Ge、In、Ni、P、Pt、Sb、Znの1種又は2種以上の元素がドープされたものであっても良く、例えば、Sn96.5Ag3Cu0.5、Sn95Sb5、Sn99.3Cu0.7、Sn97Cu3、Sn92Cu6Ag2、Sn99Cu0.7Ag0.3、Sn95Cu4Ag1、Sn97Ag3、Sn96.3Ag3.7、Sn42Bi58等が挙げられる。
【0042】
はんだペーストを調製する際のフラックスの含有量としては、はんだペーストを100重量%として、10重量%以上30重量%以下が好ましく、10重量%以上15重量%以下がより好ましい。
【実施例0043】
以下に本発明を実施例により更に具体的に説明する。ただし、本発明の技術的範囲がこれらに限定されるものではない。
【0044】
実施例1
数平均分子量が400のポリエチレングリコール(商品名:「PEG#400」、日油(株)製)80重量部、数平均分子量が4000のポリエチレングリコール(商品名:「PEG#4000」、日油(株)製)5重量部、DL-リンゴ酸5重量部、及びN,N,N’,N’-テトラキス(2-ヒドロキシプロピル)エチレンジアミン(商品名:「アデカカーポールMD-100」、(株)ADEKA製)10重量部を混合し、加熱下で溶融することによりフラックスを調製した。組成を表1に示す。
【0045】
実施例2~40
表1及び表2に示す組成に変更した他は、実施例1と同様にしてフラックスをそれぞれ調製した。
【0046】
比較例1~6
表3に示す組成に変更した他は、実施例1と同様にしてフラックスをそれぞれ調製した。
【0047】
<はんだペーストの調製>
各フラックス12重量%及びはんだ粉末(Sn96.5Ag3.5)88重量%を室温にて混合することにより、はんだペーストをそれぞれ調製した。
【0048】
<はんだ濡れ性>
銅板(縦40mm、横40mm、厚さ:0.3mm)に各フラックス0.025gとはんだリング(はんだ合金の組成:Sn96.5Ag3.5)を載せて、温度270℃のホットプレート上で、はんだを溶融させた後、30秒間加熱して試験サンプル(1)を作製した。JIS Z 3197(はんだ広がり試験)に準拠して、はんだ濡れ性を評価し、広がり率が65%以上を良好とした。評価結果を表1、表2及び表3に示す(以下同様)。
【0049】
<水に対する洗浄性>
はんだ広がり試験後の試験サンプル(1)を温度25℃のイオン交換水中、周波数38kHzで1分間超音波洗浄した。以下の基準で洗浄性を評価した。
(評価基準)
4:フラックス残渣は完全に洗浄できている
3:フラックス残渣はほぼ洗浄できている
2:フラックス残渣がほとんど残っている
1:フラックス残渣が全く落ちない
【0050】
<高温下で曝した後の水に対する洗浄性>
銅板(縦40mm、横40mm、厚さ:0.3mm)に各フラックス0.025gとはんだリング(はんだ合金の組成:Sn96.5Ag3Cu0.5)を載せて、温度270℃のホットプレート上で、はんだを溶融させた後、30秒間加熱して、さらに180℃の循風乾燥機内で3時間静置して、試験サンプル(2)を作製した。
試験サンプル(2)を温度60℃のイオン交換水中に浸漬して、2分間撹拌して洗浄した。前段落に記載の基準で洗浄性を評価した。
【0051】
【0052】
【0053】
【0054】
表1、表2及び表3における略号は、以下の化合物を意味する。
<(A)成分>
・PEG400:ポリエチレングリコール(商品名:「PEG#400」、日油(株)製)
・PEG-200:ポリエチレングリコール(商品名:「PEG-200」、三洋化成工業(株)製)
・PEG600:ポリエチレングリコール(商品名:「PEG#600」、日油(株)製)
・PEG-1500:ポリエチレングリコール(商品名:「PEG-1500」、三洋化成工業(株)製)
・PEG4000:ポリエチレングリコール(商品名:「PEG#4000」、日油(株)製)
・PEG-1540:ポリエチレングリコール(商品名:「PEG-1540」、三洋化学工業(株)製)
・PEG6000P:ポリエチレングリコール(商品名:「PEG#6000P」、日油(株)製)
・PEG-8000:ポリエチレングリコール(商品名:「PEG-8000」、三洋化学工業(株)製)
・PR-5007:ポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリコール(商品名:「アデカポリエーテルPR-5007」、(株)ADEKA製)
・CM-252::ポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリコール(商品名:「アデカポリエーテルCM-252」、(株)ADEKA製)
<(C)成分>
・カーポールMD:N,N,N’,N’-テトラキス(2-ヒドロキシプロピル)エチレンジアミン(商品名:「アデカカーポールMD-100」、(株)ADEKA製)
・ソフタノール400:ポリオキシエチレンアルキルエーテル(商品名:「ソフタノール400」、(株)日本触媒製)
<その他>
・シックナー660T:ウレタン変性ポリエーテル(商品名:「シックナー660T」、三洋化成工業(株)製)