(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024119051
(43)【公開日】2024-09-02
(54)【発明の名称】ウェアラブルサウンドデバイスのための低周波数ロールオフをイコライジングするデバイス及び方法
(51)【国際特許分類】
H04R 1/10 20060101AFI20240826BHJP
H04R 3/00 20060101ALI20240826BHJP
【FI】
H04R1/10 104Z
H04R3/00 310
【審査請求】有
【請求項の数】28
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024022170
(22)【出願日】2024-02-16
(31)【優先権主張番号】63/447,340
(32)【優先日】2023-02-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】63/464,190
(32)【優先日】2023-05-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】18/434,743
(32)【優先日】2024-02-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】521287935
【氏名又は名称】エクスメムス ラブズ,インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100229448
【弁理士】
【氏名又は名称】中槇 利明
(72)【発明者】
【氏名】イエンチェン ルゥ
(72)【発明者】
【氏名】ジェム ユエ リヤーン
(72)【発明者】
【氏名】マイケル デイヴィッド ハウスホルダー
(72)【発明者】
【氏名】ジュヨンゥラオ ジアーン
【テーマコード(参考)】
5D005
5D220
【Fターム(参考)】
5D005BA00
5D220AA50
5D220AB01
(57)【要約】
【課題】ウェアラブルサウンドデバイスを提供する。
【解決手段】ウェアラブルサウンドデバイスは、ウェアラブルサウンドデバイス内のボリュームと周囲環境とを接続する少なくとも1つの通気孔を形成するように構成された通気モジュールと、イコライズされた入力信号に従ってサウンドを生成するように構成されたサウンド生成デバイスとを含む。少なくとも1つの通気デバイスを含む通気モジュールは、複数の開度に対応する複数の状態の中で動作する。コントローラが、少なくとも1つの通気孔によって生じるロールオフを打ち消すために、複数の開度の中の開度に従ってイコライズされた入力信号を生成する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ウェアラブルサウンドデバイスであって、
前記ウェアラブルサウンドデバイス内のボリュームと周囲環境とを接続する少なくとも1つの通気孔を形成するように構成された、少なくとも1つの通気デバイスを有する、通気モジュール;及び
イコライズされた入力信号に従ってサウンドを生成するように構成されたサウンド生成デバイス;を有し、
前記通気モジュールは、複数の開度に対応する複数の状態の中で動作し;
コントローラが、前記少なくとも1つの通気孔によって引き起こされるロールオフを打ち消すために、前記複数の開度の中の開度に従って前記イコライズされた入力信号を生成する、
ウェアラブルサウンドデバイス。
【請求項2】
最小の開度を伴う第1の状態の下で知覚される前記サウンドは、第1の周波数応答に対応しており;
最大の開度を伴う第2の状態の下で知覚される前記サウンドは、第2の周波数応答に対応しており;
前記第1の周波数応答と前記第2の周波数応答との間の差は、特定の閾値未満である、
請求項1に記載のウェアラブルサウンドデバイス。
【請求項3】
前記通気モジュール内の通気デバイスは、複数のモードの中のモードで動作し、前記少なくとも1つの通気デバイスの前記複数のモードは、前記通気モジュールの複数の状態を形成する、
請求項1に記載のウェアラブルサウンドデバイス。
【請求項4】
前記複数のモードは、閉モード、開モード又はコンフォートモードを含む、
請求項3に記載のウェアラブルサウンドデバイス。
【請求項5】
前記コンフォートモードの開度は、前記開モードの開度と前記閉モードの開度との間である、
請求項4に記載のウェアラブルサウンドデバイス。
【請求項6】
前記通気デバイスは、第1のフラップ及び第2のフラップを有し;
前記開モードにおいて、前記第1のフラップは上方に曲がるように作動され、前記第2のフラップは下方に曲がるように作動され;
前記閉モードにおいて、前記第1のフラップ及び前記第2のフラップは、互いに平行になるように作動され;
前記コンフォートモードにおいて、前記第1のフラップ及び前記第2のフラップは、それらの固定部分に対応するレベルより下に垂れ下がる、
請求項4に記載のウェアラブルサウンドデバイス。
【請求項7】
前記コントローラは、前記イコライズされた入力信号を生成するために、前記通気モジュールの第1の状態に従って複数のイコライゼーション曲線の中の第1のイコライゼーション曲線を利用する、
請求項1に記載のウェアラブルサウンドデバイス。
【請求項8】
前記第1の状態から第2の状態に切り替えることに関する制御メッセージに応答して、前記コントローラは、前記第1のイコライゼーション曲線を、前記複数のイコライゼーション曲線のうちの第2のイコライゼーション曲線に置き換える、
請求項7に記載のウェアラブルサウンドデバイス。
【請求項9】
前記第1の状態は、前記コントローラによって決定される、又は、ユーザ若しくは前記コントローラに通信可能に結合されたデバイスから前記コントローラに伝達される、
請求項7に記載のウェアラブルサウンドデバイス。
【請求項10】
前記通気モジュールの前記第1の状態に関する制御メッセージが、前記コントローラによって受信される、又は、無線若しくは有線接続を介して前記少なくとも1つの通気デバイスに向けて送信される、
請求項7に記載のウェアラブルサウンドデバイス。
【請求項11】
前記複数のイコライゼーション曲線の各々は、前記通気モジュールの複数の状態の1つに対応して、パラメトリックに、グラフィカルに、自動的に、又は、手動で作成又は編集される、
請求項7に記載のウェアラブルサウンドデバイス。
【請求項12】
前記複数のイコライゼーション曲線の総数は、少なくとも、前記少なくとも1つの通気デバイスの総数又は前記少なくとも1つの通気デバイスのうちの1つのモードの総数に関連する、
請求項7に記載のウェアラブルサウンドデバイス。
【請求項13】
前記コントローラは、前記ウェアラブルサウンドデバイス内に配置される、
請求項1に記載のウェアラブルサウンドデバイス。
【請求項14】
前記コントローラは、前記ウェアラブルサウンドデバイスに通信可能に結合された電子デバイス内に配置される、
請求項1に記載のウェアラブルサウンドデバイス。
【請求項15】
前記イコライズされた入力信号は、無線又は有線接続を介して、前記コントローラから前記サウンド生成デバイスに向けて送信される、
請求項1に記載のウェアラブルサウンドデバイス。
【請求項16】
前記コントローラは、前記イコライズされた入力信号を生成するために、前記複数の状態に対応する複数のイコライゼーション曲線を利用する、
請求項1に記載のウェアラブルサウンドデバイス。
【請求項17】
前記複数の状態の数は、2より大きい、
請求項1に記載のウェアラブルサウンドデバイス。
【請求項18】
前記通気モジュール内の通気デバイスが、上に形成されたスリットを備えるフィルム構造を有し、前記少なくとも1つの通気孔の通気孔が、前記スリットのために形成される、
請求項1に記載のウェアラブルサウンドデバイス。
【請求項19】
前記サウンド生成デバイスは、ツイータとして機能する第1のサウンド生成サブデバイス及びウーファとして機能する第2のサウンド生成サブデバイスを有する、
請求項1に記載のウェアラブルサウンドデバイス。
【請求項20】
前記第1のサウンド生成サブデバイスは、MEMS(微小電気機械システム)で製造される、
請求項19に記載のウェアラブルサウンドデバイス。
【請求項21】
前記第2のサウンド生成サブデバイスは、オーディオダイナミックドライバ又はムービングコイルスピーカを有する、
請求項19に記載のウェアラブルサウンドデバイス。
【請求項22】
通気モジュールの複数の開度の中の開度に従ってイコライズされた入力信号を生成するように構成されたコントローラ;を有し、
前記通気モジュールは、少なくとも1つの通気孔を形成するように構成され、前記複数の開度を有し;
前記イコライズされた入力信号を生成する前記コントローラは、前記少なくとも1つの通気孔によるロールオフを打ち消すためのものである、
デバイス。
【請求項23】
前記コントローラは、前記イコライズされた入力信号を生成するために、前記通気モジュールの第1の状態に従って、複数のイコライゼーション曲線の中の第1のイコライゼーション曲線を利用する、
請求項22に記載のデバイス。
【請求項24】
サウンド生成デバイスのためのイコライズされた入力信号を生成するように構成されたイコライジング方法であって、前記イコライジング方法は:
複数の状態の中の通気モジュールの状態を取得するステップであって、少なくとも1つの通気孔を形成する前記通気モジュールは、複数の開度に対応する前記複数の状態の中で動作する、ステップ;及び
前記状態に従って前記イコライズされた入力信号を生成するステップ;を含む、
イコライジング方法。
【請求項25】
前記イコライズされた入力信号を生成するために、前記通気モジュールの第1の状態に従って複数のイコライゼーション曲線の中の第1のイコライゼーション曲線を利用するステップ、を含む、
請求項24に記載のイコライジング方法。
【請求項26】
前記第1の状態を第2の状態に切り替えることに関する制御メッセージに応答して、前記第1のイコライゼーション曲線から前記複数のイコライゼーション曲線のうちの第2のイコライゼーション曲線に切り替えるステップをさらに含む、
請求項25に記載のイコライジング方法。
【請求項27】
前記複数のイコライゼーション曲線は、パラメトリックに、グラフィカルに、自動的に、又は前記通気モジュールの前記複数の状態のうちの1つに対応するユーザ指示に従って確立される、
請求項25に記載のイコライジング方法。
【請求項28】
ウェアラブルサウンドデバイスであって、
前記ウェアラブルサウンドデバイス内のボリュームと周囲環境とを接続する少なくとも1つの開口部を形成するように構成され、イコライズされた入力信号に従ってサウンドを生成するように構成された音響トランスデューサ;を有し、
前記音響トランスデューサは、複数の開度に対応する複数の状態の中で動作し;
コントローラが、少なくとも1つの通気孔によって生じるロールオフを打ち消すために、前記複数の開度の中の開度に従って前記イコライズされた入力信号を生成する、
ウェアラブルサウンドデバイス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ウェアラブルサウンドデバイス、コントローラ、及びイコライゼーション方法に関し、特にユーザエクスペリエンスを向上させるウェアラブルサウンドデバイス、コントローラ、及びイコライゼーション方法に関する。
【背景技術】
【0002】
オクルージョン効果は、外耳道の密閉されたボリューム(volume(容積))から生じ、聴取者に知覚圧力を生じさせる。例えば、外耳道にウェアラブルサウンドデバイスを装着した聴取者が、骨伝導音を生成する特定の動き(例えば、ジョギング)に従事したとき、オクルージョン効果が生じる。しかし、密閉されたフィールドチャンバ内の圧力を解放することは、周波数応答に影響を与え、深刻な低周波数ロールオフ(low frequency roll off)問題に直面する可能性があり、これらは特に音楽の低周波数の低音部においてユーザエクスペリエンスを低下させる。オーディオ品質の最適化に関しては、さらなる改善の余地がある。
【発明の概要】
【0003】
したがって、本出願の主な目的は、従来技術の欠点を改善するために、ウェアラブルサウンドデバイス、コントローラ、及びイコライゼーション方法を提供することである。
【0004】
本出願の一実施形態は、少なくとも1つの通気デバイスを含む通気モジュールと、イコライズされた(equalized)入力信号に従ってサウンド(音)を生成するように構成されたサウンド生成デバイスとを有するウェアラブルサウンドデバイスを開示し;ウェアラブルサウンドデバイス内のボリューム(volume)と周囲環境とを接続する少なくとも1つの通気孔(vent)を形成するように構成された通気モジュールは、複数の開度に対応する複数の状態の中で動作し;コントローラが、少なくとも1つの通気孔によって引き起こされるロールオフを打ち消すために、複数の開度の中の開度に従ってイコライズされた入力信号を生成する。
【0005】
本出願の一実施形態は、通気モジュールの複数の開度の中の開度に従ってイコライズされた入力信号を生成するように構成されたコントローラを有するデバイスを開示し;通気モジュールは、少なくとも1つの通気孔を形成するように構成され、複数の開度を有し;イコライズされた入力信号を生成するコントローラは、少なくとも1つの通気孔によるロールオフを相殺する。
【0006】
本出願の一実施形態は、サウンド生成デバイスのためにイコライズされた入力信号を生成するように構成されたイコライジング方法を開示し、このイコライジング方法は、複数の状態の中の通気モジュールの状態を取得することと;その状態に従ってイコライズされた入力信号を生成することと、を含み、少なくとも1つの通気孔を形成する通気モジュールは、複数の開度に対応する複数の状態の中で動作する。
【0007】
本出願の一実施形態は、ウェアラブルサウンドデバイス内のボリュームと周囲とを接続する少なくとも1つの開口部を形成するように構成されるとともにイコライズされた入力信号に従ってサウンドを生成するように構成された音響トランスデューサを有するウェアラブルサウンドデバイスを開示すし;音響トランスデューサは、複数の開度に対応する複数の状態の中で動作し;コントローラが、少なくとも1つの通気孔によって生じるロールオフを相殺するために、複数の開度の中の開口の開度に従ってイコライズされた入力信号を生成する。
【0008】
本発明のこれら及び他の目的は、種々の図及び図面に示されている好ましい実施形態の以下の詳細な説明を読んだ後に、当業者には間違いなく明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本出願の一実施形態によるオーディオシステムの概略図である。
【0010】
【
図2】本出願の一実施形態による1つの通気デバイスに対応する周波数応答の概略図である。
【0011】
【
図3】本出願の一実施形態による2つの通気デバイスに対応する周波数応答の概略図である。
【0012】
【
図4】本出願の一実施形態によるイコライゼーション曲線の概略図である。
【0013】
【
図5】本出願の一実施形態による通気デバイスの3つの異なるモードの概略図である。
【0014】
【
図6】本出願の一実施形態によるウェアラブルサウンドデバイスの概略図である。
【0015】
【
図7】本出願の一実施形態によるサウンド生成デバイスの概略図である。
【0016】
【
図8】本出願の一実施形態による信号伝達及びサウンドの伝搬メカニズムの概略図である。
【0017】
【
図9】本出願の一実施形態によるイコライジング処理の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
図1は、本出願の一実施形態によるオーディオシステム10の概略図である。オーディオシステム10は、通気デバイス10DV1、10DV2、サウンド生成デバイス10SPD、駆動回路10drvC、10drvC1、10drvC2、及びコントローラ10CTRを含み得る。通気デバイス10DV1、10DV2及びサウンド生成デバイス10SPDは、インイヤーサウンドデバイス、イヤーバッド、又は補聴器などのウェアラブルサウンドデバイス内に配置され得る。コントローラ10CTRは、イコライザ10EQを含み得、イコライザ10EQは、本出願で開示されるイコライゼーションに関連する動作を実行するコントローラ10CTRの一部/部分を示し得る。通気デバイス10DV1、10DV2は、一緒に通気モジュール10DVとしてみなされ得る/形成され得る。
【0019】
通気デバイス10DV1/10DV2は、通気孔(例えば、
図5に示す513vnt)を形成するように開モード(例えば、
図5(a))で、通気孔を密閉するように閉モード(例えば、
図5(b))で、又は通気孔をわずかに開放するようにコンフォート(comfort)モード(例えば、
図5(c))で動作し得る。しかし、通気デバイス10DV1/10DV2がサウンド(音)伝達経路(sound transmission channel)に影響を与える可能性があるため、通気モジュール10DVの異なる状態は、異なる周波数応答(例えば、低周波数ロールオフ(LFRO))をもたらす。
【0020】
例えば、
図2は、イコライゼーションなし/イコライゼーション前のシングル(single)通気デバイス構成に対応する周波数応答の概略図である。
図2(各イヤホンは、シングル通気デバイス(例えば、10DV1)を特徴とし、シングルMEMSスピーカを収容している)では、100Hz未満では、コンフォートモード/状態(すなわち、破線曲線)に対応する周波数応答はわずかにロールオフするが、開モード/状態(すなわち、太い実線の曲線)に対応する周波数応答は、低周波数で/低周波数に向かってより明白/顕著なロールオフを示す。
図3は、イコライゼーションなし/イコライゼーション前の2つの通気デバイス構成に対応する周波数応答の概略図である。
図3(各イヤホンは、デュアル(dual)通気デバイス(例えば、10DV1及び10DV2)を備え、1つのダイナミックドライバ(DD)と1つのMEMSスピーカ(2ウェイ)を含む)では、2つの通気デバイスが両方開状態でそれらの通気孔を開いている場合、低周波数ロールオフが深刻になる(すなわち、太い実線の曲線)。しかし、2つの通気デバイスが両方閉状態でそれらの通気孔を閉じている場合、周波数応答曲線は低周波で実質的に平坦なままである(すなわち、細い実線の曲線)。言い換えれば、一方の側から他方の側へより多くのサウンド/空気を排出する状態は、他の状態に比べて、閉鎖又は半閉鎖空洞(例えば、外耳道又はイヤーシミュレータ/カプラ(711など))内で測定されたサウンド生成デバイス10SPDによって生成される低周波サウンドが弱くなる可能性がある。
【0021】
通気モジュール10DVの異なる状態にわたる(低周波数の)ロールオフを補償するために、イコライザ10EQは、イコライゼーションを実行するために異なるイコライゼーション曲線を利用することによってイコライズされた入力信号を生成し得る。これは、イコライザ10EQを伴い、このイコライザは、複数のイコライゼーション曲線EQCV
1-EQCV
Mを取得/アクセスすることができ、通気モジュール10DVの状態(例えば、両方開状態)に対応する特定のイコライゼーション曲線(例えば、EQCV
1)を選択する。イコライザ10EQの選択(又はイコライズされた入力信号を生成すること)は、通気モジュール10DVの状態に特に関連する通気孔(複数可)によって引き起こされるロールオフ効果を補償/相殺することを目的としており、これにより、様々な通気モジュールの開状態の下で又はそれに対応して知覚されるサウンド(例えば、
図8に示すSS2)の周波数応答が一貫している(ほぼ同じであることを意味する)。
【0022】
具体的には、本願のイコライゼーション(コントローラによって生成されたイコライズされた入力信号に従ってサウンドを生成することを介した)により、最小開度に対応する第1の開状態の下で知覚されるサウンドの第1の周波数(大きさ)応答と、最大開度に対応する第2の開状態の下で知覚されるサウンドの第2の周波数(大きさ)応答とは、実質的に同じになる。すなわち、特定の周波数における第1の開状態の下で知覚されるサウンドの第1の大きさ(又は音圧レベル、SPL)と、その特定の周波数における第2の開状態の下で知覚されるサウンドの第2の大きさ(SPL)との間の差は、ある(certain)/特定の(specific)閾値未満であり、ある/特定の閾値は、サプライヤが提供することを望む良好なユーザエクスペリエンスに応じて、±1dB、±3dB、又は±5dBであり得る。知覚されるサウンド及び/又は第1/第2の(大きさ)周波数応答は、音響測定デバイス及び/又はオーディオ分析デバイスを介して取得され得る。
【0023】
例えば、
図4は、本願の一実施形態によるイコライゼーション曲線4EQCV
1及び4EQCV
Mの概略図である。イコライゼーション曲線EQCV
1又はEQCV
Mは、イコライゼーション曲線4EQCV
1又は4EQCV
Mによって実現され得る。
図4では、100Hzから1000Hzの周波数範囲内でのイコライゼーション曲線4EQCV
1又は4EQCV
Mの減衰は、100Hz未満の減衰よりもほぼ大きい。これは、イコライゼーション曲線4EQCV
1及び4EQCV
Mが(低周波数での)周波数応答の偏差を補償することを意図しているためである。しかし、100Hz未満でのイコライゼーション曲線4EQCV
1の減衰は、100Hz未満でのイコライゼーション曲線4EQCV
Mの減衰よりも著しく小さいため、イコライゼーション曲線4EQCV
1は、低周波数ロールオフがより深刻な状態により適している。例えば、両方開状態に対してイコライゼーション曲線4EQCV
1が選択され得、両方閉状態に対してイコライゼーション曲線4EQCV
Mが選択され得る。
【0024】
イコライゼーション曲線の選択を行うために、イコライザ10EQは、通気モジュール10DVの状態を確認することができる。具体的には、コントローラ10CTRは、自身の評価又はユーザの指示に従って、駆動回路10drvC1,10drvC2に対して、通気モジュール10DVをどの状態にすべきかを指示し得る。次いで、駆動回路10drvC1,10drvC2は、コントローラ10CTRによって提供される制御メッセージMctrに従って、通気デバイス10DV1,10DV2を駆動して、通気モジュール10DVを特定の状態に設定する。さらに、コントローラ10CTRは、通気モジュール10DVをどの状態にすべきか、又は現在どの状態にあるかに関する情報を有しているか又は知っているので、コントローラ10CTR内のイコライザ10EQは、通気モジュール10DVの状態に関する情報(例えば、制御メッセージMctr)を活用し、入力信号Sinを調整/イコライゼーションするために、コントローラ10CTRによって供給される情報に従って、イコライゼーション曲線EQCV1-EQCVMの中から対応する/適切なイコライゼーション曲線(例えば、EQCV1)を選択/採用することができる。
【0025】
イコライザ10EQが、選択されたイコライゼーション曲線(例えば、EQCV
1)に従って入力信号Sinを調整/イコライズされた入力信号SINに変換した後、駆動回路10drvCは、イコライザ10EQの出力端子から送られる調整/イコライズされた入力信号SINに従って、サウンド生成デバイス10SPDを駆動し得る。これにより、サウンド生成デバイス10SPDは、調整/イコライズされた入力信号SINに対応する方法でサウンド(音)(例えば、
図8に示すSS1)を生成する。イコライザ10EQは、既に低周波減衰を克服するために信号強度を高めているので、サウンド生成デバイス10SPDによって生成される低周波数サウンドは、強調される(例えば、通気モジュール10DVが両方開状態で動作するとき)。
【0026】
用語(開)状態は、用語モードとは異なる。オーディオシステム10内のすべての通気デバイス(複数可)の状態(すなわち、通気モジュール10DVの状態)は、1つの通気デバイスのモードによって影響を受け得、各通気デバイスのモードが一緒になって通気モジュール10DVの状態を定義/形成し得る。しかし、シングル通気孔構成に関しては、用語状態及び用語モードは互換的に使用され得る。
【0027】
言い換えれば、通気デバイス10DV1又は10DV2は、開モード、閉モード及びコンフォートモードのうちの1つで動作し得る。通気デバイス10DV1/10DV2の開モード、閉モード及びコンフォートモードは、通気モジュール10DVの複数の状態を形成/定義する。
【0028】
例えば、通気デバイスには3つの異なるモードがあり、シングル通気孔構成には3つの異なる状態がある。
図5は、本出願の一実施形態による通気デバイス/モジュール50DVの3つの異なるモードの概略図である。通気デバイス10DV1又は10DV2は、通気デバイス50DVによって実現され得る。通気デバイス50DVは、互いに対向する2つのフラップ511Fa、511Fbと、駆動回路50drvCによって駆動され、それぞれフラップ511Fa,511Fb上に配置された作動部512Ca,512Cbとを含み得る。フラップ511Fa/511Fbは、上下に屈曲/旋回/傾動してダイナミック通気孔513vntを提供するように作動部512Ca/512Cbによって作動され得る。
【0029】
フラップ511Faが上方に屈曲するように作動され、フラップ511Fbが下方に屈曲するように作動されて(又はフラップ511Fa,511Fbが逆方向に揺動する)、第1の開口幅を有する通気孔513vntが形成されるとき、通気デバイス50DVは、
図5(a)に示す開モード/状態で作動しているという。これにより、空気通路が(外耳道に接続された又は接続される)ボリューム530chmFと、(外部周囲環境に接続された又は接続される)ボリューム530chmBとの間に形成され、オクルージョン効果に起因する圧力が解放/低減される。その結果、周波数応答曲線(例えば、
図2に示す太い実線の曲線)は、(低周波数に向かって延びるとき)著しく低下する。
【0030】
ここでの開口幅は、2つのフラップ(511Fa及び511Fb)の2つの先端間の距離として評価することができ、一種の開度とみなすことができる。
【0031】
フラップ511Fa及び511Fbが通気孔513vntを閉鎖/密閉するために互いに実質的に平行に整列する(又は互いに平行になるように作動される)とき、通気デバイスDVは、
図5(b)に示される閉モード/状態で作動すると言われ、通気孔513vntは第2の開口幅を有する。閉モードでは、通気デバイス50DVはパッシブアイソレーション(passive isolation)を改善するためにバックグラウンドノイズが外耳道に入ることをブロックする。ボリューム530chmF及び530chmBはかろうじて接続されており、これは、低周波数において音圧レベル(SPL)の大幅な低下を回避することができる(例えば、
図2に示す細い実線の曲線)。
【0032】
フラップ513Fa及び511Fbが、それらの固定部分に対応する水平レベルよりも下に中立的/緩く垂れ下がっている及び/又は傾斜しているとき、通気デバイス50DVは、
図5(c)に示すコンフォートモード/状態で動作していると言われ、通気孔513vntは、第3の開口幅を有する。第1の開口幅は、3つの開口幅の中で最も大きく、第2の開口幅は、第3の開口幅よりも狭い。すなわち、コンフォートモードの開度は、開モードの開度と閉モードの開度との間にある。コンフォートモードにおいて形成される小さな通気孔513vntは、外耳道に蓄積される圧力を緩和して、快適性を向上させ、エネルギーを節約し得る。コンフォートモード/状態に対応する周波数応答曲線(例えば、
図2に示す太い実線の曲線)は、スペクトルの下端に向かって徐々に減少する。
【0033】
コンフォートモードでは、低電力/ゼロ電力がフラップ上のアクチュエータに適用されるため(例えば、アクチュエータに印加される駆動電圧は、0V又はフローティング(floating)のいずれかであり得る)、通気デバイス50DVは最低電力状態にある。2つの通気孔フラップの位置は、外耳道に蓄積される圧力を緩和して、長時間の使用中のイヤホンの装着快適性を向上させるために、小さなリーク開口部を形成する。
【0034】
コンフォートモードで動作することは、長時間のイヤホン使用時に外耳道の圧力を減少させ得、閉塞された外耳道に蓄積される静圧を減少させ得、外耳道の温度及び湿度が低下するために耳垢を減少させる可能性があり得る。通気デバイス50DVは、ユーザが周囲のノイズ低減及び/又は集中したメディアリスニングのためにパッシブアイソレーションを強化することを好むときに、閉モードに切り替えることができる。
【0035】
一方、閉塞された耳は、例えば250Hzで25dBだけ、耳の感度が増加する。オクルージョン効果は、ユーザの声、足音、及び咀嚼音のくぐもったより大きなバージョンをユーザの頭の中で作成する。コンフォートモードで動作すると、イヤホンのバッテリ寿命への影響を制限しながら、オクルージョン効果の強度レベルを低減するリークパスが作成される。また、リークが減少すると、開モードよりも音楽再生中の低周波数の低音の感触が向上する。完全なオクルージョン効果をキャンセルするために、通気デバイス50DVは、より高いエネルギー消費を犠牲にして、開モードに移動することができる。
【0036】
さらに、コンフォートモードで動作すると、周囲の認識も向上する。マイク、デジタル信号プロセッサ(DSP)技術及びスピーカを使用して人間の声を再放送(re-broadcast)及び増幅するほとんどのアクティブパススルー機能のようにデジタル的に変更するのではなく、より自然な1対1の会話のための物理的なパススルーを提供することによって、閉モードよりもコンフォートモードでは、音声の明瞭度が改善され得る。環境ノイズ及び状況ノイズ(例えば、対向車又はサイレン)の直接的且つより自然なパススルーを提供することによって、閉モードよりもコンフォートモードでは、安全性が向上される。もちろん、通気デバイス50DVは、ユーザが周囲ノイズ低減及び/又は集中したメディア聴取のためにパッシブアイソレーションの向上を好む場合には、閉モードに戻すことができる。
【0037】
要するに、シングル通気孔構成には3つの異なる状態がある。イコライザ10EQは、オーディオシステムにおける唯一の通気デバイス(例えば、50DV)の3つの異なる状態に対応する3つのイコライゼーション曲線を取得し得る。
【0038】
一実施形態では、デュアル通気孔構成には9つの異なる状態がある:各通気デバイス(例えば、10DV1又は10DV2)は、3つのモード(例えば、開モード、閉モード及びコンフォートモード)の1つで動作し得る。したがって、通気デバイス10DV1及び10DV2の両方が動作する場合、2つの通気デバイス10DV1及び10DV2は、共に、合計3×3=9の異なる状態(例えば、両方開状態、両方閉状態、両方コンフォート状態、一開一閉状態、又は一閉一開状態)を生じる。イコライザ10EQは、通気デバイス(例えば、10DV)の9つの異なる状態に対して9つのイコライゼーション曲線(例えば、EQCV1-EQCV9)を得ることができる。
【0039】
一実施形態では、デュアル通気孔構成の場合、2つの通気デバイス(例えば、10DV1及び10DV2)の動作は、3つの異なる状態:両方開状態、両方閉状態及び1つのみ開状態に分類/簡略化され得る。両方開状態では、通気デバイス10DV1及び10DV2の両方が通気孔を開き、開モードで動作する。1つのみ開状態では、通気デバイス10DV1及び10DV2の一方が開モードで動作し、他方が閉モード又はコンフォートモードで動作する。両方閉状態では、通気デバイス10DV1及び10DV2の両方が閉モード又はコンフォートモードのいずれかで動作する。イコライザ10EQは、3つの異なる状態にそれぞれ対応する3つのイコライゼーション曲線(例えば、EQCV1-EQCV3)を得ることができる。
【0040】
2つの通気デバイスに対して3つのイコライゼーション曲線(例えば、EQCV1-EQCV3)のみを使用することは、暗黙的に、閉モード/状態のためのイコライゼーション曲線とコンフォートモード/状態のための他のイコライゼーション曲線との間の差が無視できること、及び一開一閉状態のためのイコライゼーション曲線が一閉一開状態のための他のイコライゼーション曲線と区別できないことを仮定する。例えば、通気デバイス10DV1及び10DV2が対称的に配置され、同一に製造されるので、一開一閉状態及び一閉一開状態に対応する周波数応答は、通気デバイス10DV1又は10DV2が開モードであるかどうかにかかわらず、識別できない可能性がある。
【0041】
上述のように、イコライゼーション曲線(例えば、EQCV1-EQCVM)の総数は、通気モジュール10DVの可能な状態の総数に等しい又は関連し得る。例えば、シングル通気孔構成のための3つの異なる状態に対応して、イコライザ10EQにアクセス可能な3つのイコライゼーション曲線がある。デュアル通気孔構成のための3つ(又は9つ)の異なる状態に対応して、イコライザ10EQにアクセス可能な3つ(又は9つ)のイコライゼーション曲線がある。
【0042】
一実施形態では、イコライゼーション曲線(例えば、EQCV1-EQCVM)の総数は、少なくとも、通気デバイス(複数可)の総数、1つの通気デバイスのモードの総数、又は音楽スタイルに関連し得る。例えば、それぞれが3つの異なるモード(例えば、開モード、閉モード及びコンフォートモード)を有する2つの通気デバイス10DV1及び10DV2について、イコライザ10EQは、32の異なるイコライゼーション曲線にアクセスし得る。
【0043】
一実施形態では、イコライゼーション曲線の総数又は通気モジュール10DVが実行する複数の状態の総数は、少なくとも3であり得る、2より大きくなり得る。換言すれば、オーディオシステム10が補償することができる低周波数ロールオフの種類は、単純な2種類のオン又はオフのシナリオを超えており、これは、一方が開モード用であり、他方が閉モード用である2種類より多い低周波数ロールオフが、オーディオシステム10によって補償/イコライゼーションされ得ることを意味する。それは、1)通気デバイスが第3のコンフォートモードで動作するオプションを有するからである;及び/又は、2)複数の通気デバイスを有する通気モジュールが、その上で動作する2つより多い状態のオプションを有するからである。
【0044】
図6は、本出願の一実施形態によるウェアラブルサウンドデバイス60IEの概略図であり、通気デバイス(複数可)及びサウンド生成デバイスの配置を示している。ウェアラブルサウンドデバイス60IE(例えば、インイヤーデバイス、イヤホン、又は補聴器)は、通気デバイス60DV1、60DV2、サウンド生成デバイス60SPD、及び通気デバイス60DV1、60DV2又はサウンド生成デバイス60SPDの駆動回路を含み得、これらのすべてはハウジング600内に配置され得る。通気デバイス10DV1、10DV2、及びサウンド生成デバイス10SPDは、通気デバイス60DV1、60DV2、及びサウンド生成デバイス60SPDによってそれぞれ実現され得る。
【0045】
図6では、1つのウェアラブルサウンドデバイス(すなわち、60IE)内に2つの通気デバイス(すなわち、60DV1及び60DV2)が配置されているので、通気デバイスの総数は2に等しい。しかし、本出願はこれに限定されるものではない。1つのウェアラブルサウンドデバイス(すなわち、60IE)内に配置されたn個の通気デバイスを有する通気モジュールがあってもよく、通気デバイスの総数はnに等しくてもよい。
【0046】
通気モジュールのn個の通気デバイスの状態に対応して、イコライゼーション曲線(例えば、EQCV1-EQCVM)の総数はMであってもよく、ここで、n及びMは正の整数(例えば、1、2、又は3)である。上述のように、Mはnの関数(例えば、M=3n、M=n+1、M=p×cn、M=(n+1)×p)であってもなくてもよく、又はn(例えば、M≧n)に関連していてもよく、ここで、c及びpは正の整数であり、cは1つの通気デバイスのモード(例えば、開モード、閉モード及びコンフォートモード)の総数を表し、pは音楽スタイルに関連し得る係数を表す。1つの通気デバイスのみを有する通気モジュールも本出願の範囲内であることに留意されたい。
【0047】
一実施形態では、イコライゼーション曲線(例えば、EQCV1-EQCVM)は、プログラムによって自動的に又はユーザによって手動で作成/調整され得る。例えば、オーディオシステム10は、ソフトウェアを利用して、通気モジュールの異なる状態の(低周波数)ロールオフを補償するために、プリセット又はアルゴリズムに基づいてイコライゼーション曲線を自動的に生成/計算し得る。オーディオシステム10は、1つのウェアラブルサウンドデバイス(すなわち、60IE)のすべての可能な状態を分析し、その後のオーディオ品質の最適化のために、事前にイコライゼーション曲線を生成/調整し得る。
【0048】
あるいは、ユーザは、一連の物理的又は仮想的なスライダを備えたグラフィックイコライザのグラフィカルユーザインタフェース(GUI)アプリケーションを使用して、各周波数帯域の音量を制御し得る。ユーザがスライダを調整してカスタマイズされたイコライゼーション曲線を手動で設計した後、全体的なオーディオ品質は、個々の好み及び必要性に従って向上され得る。スライダによってグラフィカルに表示される曲線は、通気モジュールの異なる状態の(低周波数)ロールオフに対処するためのイコライゼーション曲線(例えば、EQCV1)に対応し得る。あるいは、ユーザは、通気モジュールの異なる状態の(低周波数)ロールオフに対処するための調整された(tailored)イコライゼーション曲線(例えば、EQCV1)を作成するために、パラメトリックイコライザのアプリケーションを使用して各周波数帯域の中心周波数、帯域幅、又は振幅などのパラメータを操作し得る。自動又は手動で作成されたイコライゼーション曲線は、記憶回路又はルックアップテーブルに格納され得る。
【0049】
図6に示す一実施形態では、通気デバイス60DV1及び60DV2を対称的に配置され得る。通気デバイス60DV1又は60DV2が開モードで動作して通気孔を開くとき、空気は対応する破線矢印で示す方向に流れ得る。
【0050】
図1及び
図6を参照されたい。コントローラ10CTRは、ウェアラブルサウンドデバイス60IE内に配置されても配置されなくてもよい。通気デバイス60DV1、60DV2、又はサウンド生成デバイス60SPDは、コントローラ10CTRと通気デバイス60DV1、60DV2、又はサウンド生成デバイス60SPDとの間に信号(例えば、制御メッセージMctr又は調整/イコライゼーション入力信号SIN)を届けるために、無線/有線接続を介してコントローラ10CTRに通信可能に結合され得る。無線接続は、IEEE802.15.4(ZigBee(登録商標))又はBluetooth(登録商標)のような短距離接続、Wi-Fi(登録商標)のような中距離接続、LTE又は5Gのような長距離接続であってもよい。コントローラ10CTRは、スマートフォン、タブレット、又はほとんどの高速コンピューティングのニーズを満たし、大容量のバッテリ容量を有する他のデバイスのような電子デバイスに配置され得る。電子デバイスのコンピューティングリソースを活用することは、すべての(計算)処理を電子デバイスにオフロードすることによって、ウェアラブルサウンドデバイス60IEの複雑さ、電力消費を低減し、又はバッテリ寿命を延ばし得る。
【0051】
コントローラ10CTRは、他のデバイス(複数可)から無線/有線接続(例えば、Bluetooth(登録商標))を介して通気モジュール(例えば、10DV)の状態に関する状態指示を受信し得る。例えば、ユーザは、ユーザが通気孔(複数可)を動的に開閉できるように、コントローラ10CTRを含む又は無線/有線接続を介してコントローラ10CTRに通信可能に結合されたデバイスのGUIを介して、通気モジュールの状態に関する情報/指示をコントローラ10CTRに提供し得る。あるいは、センサは、通気孔(複数可)を動的に強制的に開閉するために、通気モジュールの状態をコントローラ10CTRに通知し得る。
【0052】
通気デバイス(例えば、60DV1及び60DV2)又はサウンド生成デバイス(例えば、60SPD)を間接的又は直接的に制御するコントローラ10CTRは、デジタル領域で動作し得る。コントローラ10CTR内に配置されたイコライザ10EQは、デジタル領域で動作し得る。イコライザ10EQは、イコライゼーションフィルタであり得る又は(プログラムされた又はプログラム可能な)フィルタのセットを含み得る。一実施形態では、コントローラ10CTRは、システムオンチップ(SoC)によって実現されてもよいが、これに限定されない。
【0053】
サウンド生成デバイス(例えば、60SPD)を駆動するための駆動回路10drvCは、アナログ増幅器又はデジタルアナログ変換器(DAC)を含み得る。
【0054】
通気デバイス(例えば、60DV1又は60DV2)を駆動するための駆動回路10drvC1又は10drvC2は、(アナログ)増幅器を含み得る。駆動回路(例えば、60DV1又は60DV2)は、通気デバイス(例えば、60DV1又は60DV2)が制御メッセージMctrによって指定されたモードで動作するように、コントローラ10CTRによって送信された制御メッセージMctrに従って、通気デバイス10DV1又は10DV2に駆動電圧(複数可)を提供し得る。一実施形態では、駆動回路10drvC1又は10drvC2は、米国特許出願第18/366,637号に開示された駆動回路を含み得るが、これに限定されない。
【0055】
一実施形態では、駆動回路10drvC1、10drvC1又は10drvC2は、実際の要件に応じて、ウェアラブルサウンドデバイス内に配置されてもよいし、配置されなくてもよい。一実施形態では、駆動回路10drvC及びサウンド生成デバイス10SPDは、音響生成パッケージ内に統合することができる。同様に、通気デバイス(10DV1)及びそれに対応する駆動回路(10drvC1)は、通気パッケージ内に統合することができる。サウンド生成パッケージ及び通気パッケージは、両方ともウェアラブルサウンドデバイス内に配置することができる。
【0056】
さらに、通気デバイス(例えば、60DV1又は60DV2)は、微小電気機械システム(MEMS)デバイスであり得る。サウンド生成デバイス(例えば、60SPD)は、任意のタイプの電気音響トランスデューサ(例えばMEMSデバイス)、任意のタイプのスピーカ、又はそれらの組み合わせであり得る又はそれらを有し得る。例えば、米国特許出願第17/842,810号、第17/344,980号、第17/344,983号、第17/720,333号に開示されているMEMSで製造された通気デバイス又はサウンド生成デバイスは、本出願のオーディオシステム又はウェアラブルサウンドデバイスで利用することができるが、これらに限定されない。
【0057】
例えば、米国特許出願第17/842,810号、第17/344,980号、及び第17/344,983号に教示されているように、通気モジュール内の通気デバイスは、その上にスリットが形成されたフィルム構造を有し得、その結果、ウェアラブルサウンドデバイス内のボリューム(及び/又は外耳道のボリューム)と周囲環境とを接続する通気孔が、スリットによって形成されることができる。
【0058】
さらに、米国特許出願第17/842,810号、第17/344,980号、及び第17/344,983号は、音響変換(例えば、サウンドを生成すること)を行うだけでなく、(ウェアラブルサウンドデバイス又は外耳道のボリュームを周囲環境と接続するために)少なくとも1つの通気孔を形成するように作動させることができるフィルム構造を有する音響トランスデューサを教示している。通気孔を形成すること及びイコライズされた入力信号を介してサウンドを生成することの両方が可能な音響トランスデューサを配置することも、本出願の範囲内である。
【0059】
一実施形態では、通気孔を形成すること及びサウンドを生成することの両方が可能な音響トランスデューサのフィルム構造は、これに限定されないが、一例として
図5に示すフラップと同様の構造を有し得る。音響トランスデューサは、(通気デバイス(複数可)として)通気孔(複数可)を形成するための第1の膜と、(サウンド生成デバイスとして)サウンドを生成するための第2の膜とを有し得、第1及び第2の膜はフィルム構造とみなすことができる。別の見方では、
図1に示す通気デバイス10DV1/10DV2及びサウンド生成デバイス10SPDは、共に本出願の音響トランスデューサとして見ることができる。
【0060】
一実施形態では、ウェアラブルサウンドデバイスは、1つの通気デバイスのみを有し得、これも本出願の範囲内である。
【0061】
イコライズされた入力信号が、知覚されるサウンドが実質的に一貫した(大きさの)周波数応答を有するように、複数の開度に応じて少なくとも1つの通気孔によって生じるロールオフを相殺するために、ウェアラブルサウンドデバイスにおいてサウンドを生成するために使用される限り、本出願の要件は満たされ、本出願の範囲内である。
【0062】
図7は、本出願の一実施形態によるサウンド生成デバイス70SPDの概略図である。サウンド生成デバイス10SPD又は60SPDは、サウンド生成デバイス70SPDによって実現され得る。サウンド生成デバイス70SPDは、サウンド生成サブデバイス70SPDa及び70SPDbを含む2ウェイスピーカを含み得る。サウンド生成サブデバイス70SPDa及び70SPDbは、それぞれツイータ及びウーファとして機能し得る。サウンド生成サブデバイス70SPDaは、例えば米国特許出願第17/720,333号に開示されているMEMSデバイスによって実現され得る。サウンド生成サブデバイス70SPDbは、オーディオダイナミックドライバ又はムービングコイルスピーカによって実現され得る。好ましくは、ウーファとして機能するサウンド生成サブデバイス70SPDbは、低周波数での音響イコライゼーションを促進するために、低周波数において(ツイータよりも)大きな音量又は十分な音響駆動能力を提供/生成できるように選択され得る。
【0063】
図8は、本出願の一実施形態による信号伝達機構及びサウンドの伝搬メカニズムの概略図である。入力信号Sinに応答してイコライザ10EQが選択されたイコライゼーション曲線(例えば、EQCV
1)に従って調整/イコライズされた入力信号SINを出力した後、サウンド生成デバイス10SPDはサウンドSS1を生成し得る。サウンド生成デバイス10SPDから聴取者の鼓膜に向かって伝わるサウンドSS1は、ウェアラブルサウンドデバイス(例えば、60IE)のカバー/ハウジング(例えば、600)を通過/遭遇するとき、再形成/歪曲されてサウンドSS2に変換される。サウンドSS1と比較して、サウンドSS2では、通気モジュール(例えば、10DV)の状態により低周波数ロールオフが発生し得る。しかし、低周波数ロールオフはすでにイコライザ10EQによって補償/相殺されているので、サウンドSS2の音響効果は最終的には期待通りのものとなる。
【0064】
図1及び8を参照すると、コントローラ10CTRによってシグナリングされた制御メッセージMctrに応答して通気デバイス10DV1及び10DV2が両方閉状態から両方開状態に切り替えられると、通気デバイス10DV1及び10DV2の閉じた通気孔が開かれる。その結果、ウェアラブルサウンドデバイス(例えば、60IE)のカバー/ハウジングの音響特性が変化し、これはサウンドSS2の低周波数ロールオフが増大する可能性がある。
【0065】
一方、両方開状態を示す制御メッセージMctrによって促されて、イコライザ10EQは、状態に基づいて入力信号Sinを異なるように扱うために、一つのイコライゼーション曲線(例えば、4EQCVM)と別のイコライゼーション曲線(例えば、4EQCV1)と交換する。両方開状態に対応する、第1の周波数成分(例えば、低周波成分)及び第2の周波数成分(例えば、中間周波数成分)に分割され得る、調整された/イコライズされた入力信号SINは、両方閉状態に対応する調整された/イコライズされた入力信号SINとは異なるように、イコライザ10EQによって変更されている可能性がある。したがって、両方開状態に対応する第1の周波数成分と両方閉状態に対応する第1の周波数成分との間の差は、両方開状態に対応する第2の周波数成分と両方閉状態に対応する第2の周波数成分との間の差とは異なり得る(又はそれよりも大きくなり得る);両方開状態に対応する第1の周波数成分と第2の周波数成分との間の差は、両方閉状態に対応する第1の周波数成分と第2の周波数成分との間の差と異なり得る(又はそれよりも大きくなり得る)。
【0066】
例えば、イコライザ10EQは、両方閉状態よりも両方開状態について第1の周波数成分をより少なく減衰させる傾向があり得、したがって、サウンド生成デバイス10SPDは、両方閉状態よりも両方開状態についてサウンドSS1の第1の周波数サウンド(例えば、低周波数サウンド)を大きくする傾向がある。その後、ウェアラブルサウンドデバイスを伝搬するサウンドSS1の強い第1の周波数サウンドは、より減らされ得、サウンドSS2の第1の周波数サウンドに変換され得るが、これは予想通りである。例えば、両方閉状態のサウンドSS2の音響効果は、両方開状態のサウンドSS2の音響効果に近づき得る。
【0067】
言い換えれば、通気デバイス10DV1又は10DV2のダイナミック通気孔(複数可)に対して、イコライザ10EQは、所望のオーディオバランスを達成するために、切り替え可能なイコライゼーションを動的に行う。イコライザ10EQとウェアラブルサウンドデバイス及び外耳道のサウンド伝達チャネルによる変換は、ある状態(例えば、両方開状態)のサウンドSS2に対して、他の状態(例えば、両方閉状態)で観察されるのと同様の音響効果をもたらし得る。
【0068】
周波数応答は、洗練された設計の入力信号でサウンド生成デバイス10SPDを励起し、聴取者の鼓膜(又は、711カプラのようなオクルージョンされた外耳道シミュレータ)で得られた音を測定することを含み得る。
【0069】
イコライゼーションの動作は、
図9に示すイコライジングプロセス90として要約することができる。イコライジングプロセス90は、以下のステップを含む。
【0070】
ステップ900:複数の状態の中の通気モジュールの状態を取得し、少なくとも1つの通気孔を形成する通気モジュールは、複数の開度に対応する複数の状態の中で動作する。
【0071】
ステップ902:状態に従ってイコライズされた入力信号を生成する。
【0072】
イコライジングプロセス90の詳細は、上述の段落を参照することができ、簡潔にするためにここでは説明しない。
【0073】
ウェアラブルサウンドデバイス、サウンド生成デバイス、通気デバイス、駆動回路、又はコントローラの詳細又は修正は、米国特許出願第17/842,810号、第17/344,980号、第17/344,983号、第17/720,333号、第18/172,346号、第18/303,599号、第18/366,637号、第18/530,235号、及び米国仮出願第63/320,703号に開示されており、その開示は、その全体が参照により本明細書に組み込まれ、本明細書の一部とされる。
【0074】
「第1」及び「第2」のような序数用語の使用は、それ自体は、ある要素の他の要素に対する優先順位、先行、順序、ある方法の行為が実行される時系列、又はすべての要素が同時に存在する必要性を意味するものではなく、これらの用語は、単に、ある名前を持つある要素と同じ名前を持つ別の要素を区別するためのラベルとして使用される。以下の実施形態で説明する技術的特徴は、それらの間に矛盾がない限り、様々な方法で混合又は結合されてもよい。
【0075】
要約すると、本出願は、通気デバイス(複数可)の異なる状態がオーディオ品質に与える可能性のある様々な影響を発見する。したがって、本出願は、通気デバイス(複数可)の異なる状態にそれぞれ対応する複数の(例えば、2より多い)イコライゼーション曲線を提供する。さらに、本出願のイコライザは、オーディオ体験を改善又は音質を向上させるために、通気デバイス(複数可)の現在の状態、予想される状態、又は将来の状態に対するイコライゼーション曲線から選択することができる。
【0076】
当業者は、本発明の教示を保持しながら、デバイス及び方法の多くの修正及び変更がなされ得ることを容易に認めるであろう。したがって、上記開示は、添付の特許請求の範囲の範囲によってのみ限定されると解釈されるべきである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0077】
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【特許文献4】米国特許出願公開第2013/0121509号
【特許文献5】米国特許出願公開第2016/0176704号
【特許文献6】米国特許出願公開第2017/0021391号
【特許文献7】米国特許出願公開第2017/0325030号
【特許文献8】米国特許出願公開第2020/0213770号
【特許文献9】米国特許出願公開第2020/0178000号
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【特許文献14】米国特許出願公開第2019/0349665号
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【特許文献16】米国特許出願公開第2017/0217761号
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【特許文献57】米国特許出願公開第2016/0381464号
【非特許文献】
【0078】
【非特許文献1】HYONSE KIM ET AL, A slim type microvalve driven by PZT films, Sensors and Actuators A: PHYSICAL, 18 January, 2005, pages 162-171, Vol. 121, Elsevier B. V., XP027806904
【非特許文献2】Shen Guohao et al., Structure optimization design for capacitive silicon-based MEMS microphone, Semiconductor Devices, Vol. 43, No. 12, p.912-917, China Academic Journal Electronic Publishing House.
【非特許文献3】HUA Qing et al., Acoustoeletric model of piezoelectric microphone with package structure, Transducer and Microsystem Technologies, 2018 Vol. 37, No. 11, p.42-44, China Academic Journal Electronic Publishing House.
【非特許文献4】Chen Guidong et al., Highly sensitive MEMS humidity sensor based on candle-soot nanoparticle layer, Micronanoelectronic Technology, Vol. 57, No.1, p.36-40, p.48, China Academic Journal Electronic Publishing House
【非特許文献5】Wang Zhicheng, Stylish structure and innovative features of new generation speakers, Household Electric Appliances, Issue 12, 2003, p.38-40, China Academic Journal Electronic Publishing House
【非特許文献6】ZHOU Xiao-wei et al., Preliminary evaluation of predicative performance of BAHA softband in the conductive or mixed hearing loss patients, Journal of Otolaryngology and Ophthalmology of Shandong University, Vol. 29, Issue No. 2, 2015, p. 28-30, China Academic Journal Electronic Publishing House.
【非特許文献7】Stefan Liebich, Active Occlusion Cancellation with Hear-Through Equalization for Headphones, 2018 IEEE International Conference on Acoustics, Speech and Signal Processing (ICASSP), Calgary, Canada, April. 2018, DOI: 10.1109/ICASSP.2018.8461834