(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024119053
(43)【公開日】2024-09-02
(54)【発明の名称】アンテナパッケージ及びアンテナパッケージの製造方法
(51)【国際特許分類】
H01Q 23/00 20060101AFI20240826BHJP
H01Q 21/20 20060101ALI20240826BHJP
H01P 11/00 20060101ALI20240826BHJP
【FI】
H01Q23/00
H01Q21/20
H01P11/00
【審査請求】有
【請求項の数】20
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024022504
(22)【出願日】2024-02-19
(31)【優先権主張番号】63/486,103
(32)【優先日】2023-02-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】18/317,304
(32)【優先日】2023-05-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】523225520
【氏名又は名称】トロン フューチャー テック インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100120891
【弁理士】
【氏名又は名称】林 一好
(74)【代理人】
【識別番号】100165157
【弁理士】
【氏名又は名称】芝 哲央
(74)【代理人】
【識別番号】100205659
【弁理士】
【氏名又は名称】齋藤 拓也
(74)【代理人】
【識別番号】100126000
【弁理士】
【氏名又は名称】岩池 満
(74)【代理人】
【識別番号】100185269
【弁理士】
【氏名又は名称】小菅 一弘
(72)【発明者】
【氏名】チェン クァン-ネン
(72)【発明者】
【氏名】フー ハン-ウェン
(72)【発明者】
【氏名】ワン ユー-ジウ
(72)【発明者】
【氏名】チャン リー ハン
【テーマコード(参考)】
5J021
【Fターム(参考)】
5J021AA05
5J021AA09
5J021AA11
5J021AB06
5J021CA03
5J021HA05
(57)【要約】
【課題】アンテナパッケージを提供すること。
【解決手段】アンテナパッケージは、ガラス基板、複数のアンテナ、多層回路構造及び複数の無線周波数チップを含む。ガラス基板は、第1の表面及び第2の表面を有する。複数のアンテナは、ガラス基板の第1の表面に配置される。多層回路構造は、第1の表面及び第2の表面を有する。複数の無線周波数チップは、多層回路構造の第1の表面に配置される。ガラス基板の第2の表面は、多層回路構造の第2の表面に接着される。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の表面及び第2の表面を有するガラス基板と、
前記ガラス基板の第1の表面に配置された複数のアンテナと、
第1の表面及び第2の表面を有する多層回路構造と、
前記多層回路構造の第1の表面に配置された複数の無線周波数(RF)チップと、を含み、
前記ガラス基板の第2の表面は、前記多層回路構造の第2の表面に接着されている、アンテナパッケージ。
【請求項2】
前記多層回路構造は、
コアと、
前記コアと前記多層回路構造の第1の表面との間に配置された第1の数の第1の相互接続層と、
前記コアと前記多層回路構造の第2の表面との間に配置された第2の数の第2の相互接続層と、を含む、請求項1に記載のアンテナパッケージ。
【請求項3】
前記第1の相互接続層のそれぞれの厚さは、50μmよりも大きい、請求項2に記載のアンテナパッケージ。
【請求項4】
前記第1の相互接続層は、前記複数のRFチップに結合された前記多層回路構造の第1の表面に複数の給電線を有し、
前記第2の相互接続層は、前記多層回路構造の第2の表面にグランドプレーンを有する、請求項2に記載のアンテナパッケージ。
【請求項5】
前記第1の数と前記第2の数との合計は、6以下である、請求項2に記載のアンテナパッケージ。
【請求項6】
前記ガラス基板の厚さは、300μm~1000μmである、請求項1に記載のアンテナパッケージ。
【請求項7】
前記多層回路構造の第2の表面に塗布され、前記ガラス基板を取り囲む第1の接着材料と、前記ガラス基板の第2の表面と前記多層回路構造の第2の表面との間に塗布された第2の接着材料との少なくとも1つを更に含む、請求項1に記載のアンテナパッケージ。
【請求項8】
前記複数のアンテナは、金ペースト、銀ペースト及び銅ペーストのうちの少なくとも1つを使用することにより前記ガラス基板の第1の表面に印刷されている、請求項7に記載のアンテナパッケージ。
【請求項9】
前記多層回路構造の第1の表面に前記RFチップを被覆する成形層を更に含み、前記成形層は、前記RFチップに対して連続的な封止を形成する、請求項1に記載のアンテナパッケージ。
【請求項10】
前記多層回路構造の誘電体部は、プリプレグ材料、FR―4又はFR―5を含む、請求項1に記載のアンテナパッケージ。
【請求項11】
200mm×200mmよりも大きい面積を有する、請求項1に記載のアンテナパッケージ。
【請求項12】
第1の表面及び第2の表面を有するガラス基板を用意するステップと、
第1の表面及び第2の表面を有する多層回路構造を用意するステップと、
前記ガラス基板の第2の表面を前記多層回路構造の第2の表面に接着するステップと、
複数のアンテナを前記ガラス基板の第1の表面に配置するステップと、を含む、アンテナパッケージの製造方法。
【請求項13】
前記ガラス基板を前記多層回路構造に接着した後、フリップチップ工程により複数の無線周波数(RF)チップを前記多層回路構造の第1の表面に配置するステップを更に含む、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記ガラス基板を前記多層回路構造に接着した後、1回成形工程により前記複数のRFチップを封止するステップを更に含む、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記1回成形工程は、
成形材料を前記多層回路構造の第1の表面に塗布するステップと、
前記成形材料を硬化させるステップと、を含む、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記多層回路構造は、
コアと、
前記コアと前記多層回路構造の第1の表面との間に配置された第1の数の第1の相互接続層と、
前記コアと前記多層回路構造の第2の表面との間に配置された第2の数の第2の相互接続層と、を含む、請求項12に記載の方法。
【請求項17】
前記第1の相互接続層は、前記複数のRFチップに結合された前記多層回路構造の第1の表面に複数の給電線を有し、
前記第2の相互接続層は、前記多層回路構造の第2の表面にグランドプレーンを有する、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
前記ガラス基板を前記多層回路構造に接着するステップは、
第1の接着材料を前記多層回路構造の第2の表面に塗布し、前記ガラス基板を取り囲むステップと、
前記ガラス基板の第2の表面と前記多層回路構造の第2の表面との間に第2の接着材料を塗布するステップと
の少なくとも1つを含む、請求項12に記載の方法。
【請求項19】
前記ガラス基板を前記多層回路構造に接着するステップは、ドライフィルムラミネート工程を実行するステップを含む、請求項12に記載の方法。
【請求項20】
接着工程の前に、前記複数のアンテナを保護するために前記ガラス基板の第1の表面に保護層を形成するステップを更に含む、請求項12に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本願は、2023年2月21日に出願された先の出願である米国仮出願第63/486,103号及び2023年5月15日に出願された米国特許出願第18/317,304号の優先権を主張するものであり、これらの全体は参照により本明細書に組み込まれるものとする。
【0002】
技術分野
本開示は、アンテナパッケージに関し、特に大規模アンテナアレイを含むアンテナパッケージに関する。
【背景技術】
【0003】
現代の無線通信技術では、衛星通信は、従来の地上通信技術に比べて、信号カバレッジがより良好で、帯域幅がより広いため、競争力が高まっている。衛星通信を実現するには、ビームフォーミング及び高い電力利得を実現できる大規模フェーズドアレイ(phased-array)アンテナが求められている。しかしながら、大規模フェーズドアレイアンテナは、従来の非アレイアンテナよりもはるかに大きな基板面積を必要とする。したがって、製造プロセスは、困難でコストがかかる。また、アレイアンテナを対応する無線周波数(radio frequency、RF)チップとともにパッケージ内に収容することは、大量生産をより困難にする。したがって、新しいアンテナパッケージを開発して、歩留まりを高め、製造コストを下げる必要がある。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0004】
本開示の一態様は、アンテナパッケージを提供する。このアンテナパッケージは、ガラス基板、複数のアンテナ、多層回路構造及び複数の無線周波数チップを含む。ガラス基板は、第1の表面及び第2の表面を有し、アンテナは、ガラス基板の第1の表面に配置される。多層回路構造は、第1の表面及び第2の表面を有し、複数の無線周波数(RF)チップは、多層回路構造の第1の表面に配置される。ガラス基板の第2の表面は、多層回路構造の第2の表面に接着される。
【0005】
本開示の別の態様は、アンテナパッケージの製造方法を提供する。この方法は、第1の表面及び第2の表面を有するガラス基板を用意するステップと、第1の表面及び第2の表面を有する多層回路構造を用意するステップと、ガラス基板の第2の表面を多層回路構造の第2の表面に接着するステップと、複数のアンテナをガラス基板の第1の表面に配置するステップと、を含む。
【図面の簡単な説明】
【0006】
図面に関連して考慮すると、詳細な説明及び特許請求の範囲を参照することにより本開示をより完全に理解することができ、図面全体において、同様の参照番号は類似の要素を示す。
【0007】
【
図1A】一比較実施形態に係るアンテナパッケージを示す。
【
図1B】別の比較実施形態に係るアンテナパッケージを示す。
【
図2】本開示の一実施形態に係るアンテナパッケージを示す。
【
図3】本開示の一実施形態に係る
図2のアンテナパッケージの上面図を示す。
【
図4】本開示の別の実施形態に係るアンテナパッケージを示す。
【
図5】本開示の一実施形態に係るアンテナパッケージの製造方法のフローチャートを示す。
【
図6A】
図5中の方法に係る
図2中のアンテナパッケージの製造プロセスの各段階を示す断面図である。
【
図6B】
図5中の方法に係る
図2中のアンテナパッケージの製造プロセスの各段階を示す断面図である。
【
図6C】
図5中の方法に係る
図2中のアンテナパッケージの製造プロセスの各段階を示す断面図である。
【
図6D】
図5中の方法に係る
図2中のアンテナパッケージの製造プロセスの各段階を示す断面図である。
【
図6E】
図5中の方法に係る
図2中のアンテナパッケージの製造プロセスの各段階を示す断面図である。
【
図6F】
図5中の方法に係る
図2中のアンテナパッケージの製造プロセスの各段階を示す断面図である。
【
図6G】
図5中の方法に係る
図2中のアンテナパッケージの製造プロセスの各段階を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下の開示は、提供された主題の異なる特徴を実施するための多くの異なる実施形態又は実施例を提供する。以下、本開示を簡略化するために、要素及び配置の特定の実施例を説明する。当然のことながら、これらは、単なる実施例であり、限定を意図するものではない。例えば、以下の説明における、第2の特徴の上方又はその上での第1の特徴の形成は、第1の特徴と第2の特徴が直接接触して形成される実施形態を含んでもよく、第1の特徴と第2の特徴が直接接触しないように、第1の特徴と第2の特徴との間に追加の特徴が形成される実施形態を含んでもよい。また、本開示は、様々な実施例において参照数字及び/又は符号を繰り返すことがある。この繰り返しは、簡略化及び明瞭化を目的とするものであり、それ自体では、説明した様々な実施形態及び/又は構成の間の関係を示すものではない。
【0009】
更に、「下(beneath)」、「下方(below)」、「下部(lower)」、「上方(above)」、「上部(upper)」、「上に(on)」などの空間的に相対的な用語は、図面に示すように、ある要素又は特徴と別の要素又は特徴との関係を説明するための記述を容易にするために本明細書で使用されることがある。空間的に相対的な用語は、図面に描かれている配向に加えて、使用中又は動作中の装置の異なる配向を包含することを意図する。装置は、他の方法で配向されてもよく(90度回転又は他の方向の配向)、本明細書で使用される空間的に相対的な記述語も同様にそれに応じて解釈されてもよい。
【0010】
本明細書で使用される場合、「第1の」、「第2の」及び「第3の」などの用語は、様々な要素、コンポーネント、領域、層及び/又はセクションを説明し、これらの要素、コンポーネント、領域、層及び/又はセクションは、これらの用語によって限定されるべきではない。これらの用語は、ある要素、コンポーネント、領域、層又はセクションを別の要素、コンポーネント、領域、層又はセクションと区別するためにのみ使用される。本明細書で使用される場合、「第1の」、「第2の」及び「第3の」などの用語は、文脈によって明確に示されない限り、順序又はオーダーを意味するものではない。
【0011】
図1Aは、一比較実施形態に係るアンテナパッケージ900を示す。アンテナパッケージ900は、アンテナインパッケージ(Antenna-in-Package、AiP)技術に基づいてパッケージ化される。
図1Aに示すように、典型的なAiP構造901は、パッケージ基板902、複数のアンテナ904及び1つ以上のRFチップ906を含むモジュールと見なすことができる。アンテナ904及びRFチップ906は、パッケージ基板902の上面に配置される。また、フェーズドアレイアンテナを実現するために、複数のAiP構造901をプリント回路基板(printed circuit board、PCB)908に更に組み立てることができる。即ち、AiP構造901が使用される場合、アンテナパッケージ900は、2段の基板(すなわち、基板902及びPCB908)を必要とする。このような場合、フェーズドアレイアンテナを含むアンテナパッケージ900の製造プロセスは、複雑でコストがかかる。
【0012】
図1Bは、別の比較実施形態に係るアンテナパッケージ910を示す。別のアンテナパッケージ910において、高密度相互接続(high density interconnect、HDI)プリント回路基板(PCB)912が使用される。HDI技術を使用することにより、設計者は、生のPCBの両面により多くのコンポーネントを配置できる。例えば、HDI PCB912の第1の面912Aにアンテナ914を形成することができ、HDI PCB912の第2の面912BにRFチップ916を取り付けることができる。したがって、アンテナパッケージ900とは異なり、アンテナパッケージ910は、1段の基板のみを必要とする。しかしながら、HDI PCB912の熱膨張係数がかなり高いため、高温で実行する必要があるプロセスにおいて反りなどのプロファイル欠陥が発生しやすい。例えば、200℃~250℃でRFチップ916を成形する硬化プロセスは、HDI PCB912に反りを引き起こす可能性があり、それにより、RFチップ916のフリップチップボンディング及び成形に関して信頼性の問題を引き起こす可能性がある。また、アンテナパッケージ910の規模が大きくなると、反りは更に深刻になる可能性がある。このような場合、アンテナパッケージ910の平坦なプロファイルを維持するために、RFチップ916の封止を個別に実行することができるが、これは非常に時間がかかり、コスト効率が悪い。また、反りの度合いを低減するために、HDI PCB912は、コア層に関して対称な積層構造を形成するようにより多くの層(例えば、10層を超える)を含む必要がある場合があるが、これは、アンテナパッケージ910の厚さを必然的に増加させる。特に、低誘電率材料を積層誘電体として選択する場合、層が多いほど、製造コストが高くなることになる。
【0013】
図2は、本開示の一実施形態に係るアンテナパッケージ100を示す。アンテナパッケージ100は、ガラス基板110、複数のアンテナ120、多層回路構造130及び複数のRFチップ140を含む。
図2に示すように、ガラス基板110は、第1の表面110A及び第2の表面110Bを有し、アンテナ120は、ガラス基板110の第1の表面110Aに配置される。多層回路構造130は、第1の表面130A及び第2の表面130Bを有し、RFチップ140は、多層回路構造130の第1の表面130Aに配置される。また、多層回路構造130の第2の表面130Bに塗布されるとともに、ガラス基板110を取り囲む接着材料150により、ガラス基板110の第2の表面110Bは、多層回路構造130の第2の表面130Bに接着される。
【0014】
本実施形態において、ガラス基板110の熱膨張係数(coefficient of thermal expansion、CTE)が低いため、ガラス基板110は、多層回路構造130に十分な剛性を与え、高温(例えば、200℃~250℃)でのアンテナパッケージ100の反りを防止することができ、これにより、製造プロセスの柔軟性を向上させることができる。例えば、ガラス基板110による構造強化及び低CTEにより、RFチップ140上の成形層160は、反りを心配することなく、1回成形工程により形成し硬化させることができる。したがって、成形プロセスをより効率的に実行することができ、
図2に示すように、成形層160は、複数のRFチップ140の間又はRFチップ140のアレイの間で連続的な封止を形成することができる。また、ガラス基板110をアンテナパッケージ100内に実装することにより、多層回路構造130の数を10層以上から4層又は6層に低減することができ、これにより、製造コストを低減するだけでなく、特に大規模(例えば、200mm×200mm以上)である場合の反りに対する耐性を向上させる。
【0015】
本実施形態において、多層回路構造130は、高密度相互接続プリント回路基板であってもよく、従来のプリント回路基板であってもよい。いくつかの実施形態において、多層回路構造は、コア132、多数の相互接続層134A、134B又はビルドアップ層、及び多数の相互接続層136A、136B又はビルドアップ層を含む。
図2に示すように、相互接続層134A及び134Bは、コア132と多層回路構造130の第1の表面130Aとの間に配置され、相互接続層136A及び136Bは、コア132と多層回路構造130の第2の表面130Bとの間に配置される。
【0016】
コア132及び相互接続層134A、134B、136A、136Bは、アンテナ120とRFチップ140との間に信号伝送経路を提供することができる。いくつかの実施形態において、コア132及び相互接続層134A、134B、136A、136Bは、信号伝送経路を提供するために、導電性トレースを含んでもよい。また、異なるトレースを互いに絶縁するために、相互接続層134A、134B、136Aは、導電性トレースの層間に介在する誘電体材料を更に含んでもよい。いくつかの実施形態において、多層回路構造130の誘電体部は、プリプレグ材料を含んでもよく、多層回路構造130の導電部は、銅、タングステン、アルミニウム、チタン、タンタル、これらの合金などの導電材料を含んでもよい。いくつかの実施形態において、コア132は、銅張積層板(copper clad laminate、CCL)であってもよい。いくつかの実施形態において、コア132は、めっきスルーホールを含んでもよい。
【0017】
本実施形態において、相互接続層134Bは、RFチップ140に結合された多層回路構造130の第1の表面130Aに複数の給電線(feed line)172を有する。給電線172は、アンテナ120の入力/出力ポートと見なすことができ、アンテナ120に/からRF信号を供給することができる。例えば、RFチップ140により生成されたRF信号を給電線172を介してアンテナ120に供給することができ、給電線172に供給されたRF信号を、多層回路構造130内の相互接続層134A、134B、136A、136B及びコア132により提供された伝送経路を介してアンテナ120に更に伝送することができる。
【0018】
また、本実施形態において、ガラス基板110にビアがなくてもよく、即ち、ガラス基板110を貫通するビアホールがなくてもよい。したがって、ガラス基板110の第1の表面110A及び第2の表面110Bは、全体的に平坦かつ完全であってもよい。このような場合、アンテナ120とRFチップ140との間のRF信号の伝送は、ガラス基板110を介した無線結合に部分的に依存する。
【0019】
ガラス基板110を介してアンテナ120とRFチップ140とを無線接続するために、電磁結合技術が適用される。即ち、本実施形態において、アンテナ120とRFチップ140との間の通信は、実質的に透明であるか又はRF帯域に対する減衰が許容可能なガラス基板110を通過するRF信号に部分的に基づくものである。いくつかの実施形態において、相互接続層136Bは、多層回路構造130の第2の表面130Bにグランドプレーン174を有してもよい。即ち、グランドプレーン174は、多層回路構造130の第2の表面130Bに形成されてもよい。また、グランドプレーン174には、電磁信号の伝送を可能にする1つ以上の開口部(図示せず)が形成されてもよい。
【0020】
その結果、給電線172に供給されたRF信号は、相互接続層134A、136Aにより提供された導電経路を介してグランドプレーン174の開口部に伝送され、グランドプレーン174の開口部からガラス基板110を介してアンテナ120に無線で伝送することができる。同様に、アンテナ120により空中から受信されたRF信号は、ガラス基板110を介して開口部に無線で伝送することができ、更に、相互接続層134A、136Aにより提供された導電経路を介して給電線172に供給することができる。
【0021】
アンテナ120とグランドプレーン174との間の距離は、RF信号の伝送に影響を与える可能性があるため、ガラス基板110の厚さは、アンテナ120の設計及びRF信号の動作周波数に従って決定されるべきである。いくつかの実施形態において、ガラス基板110の厚さは、300μm~1000μmであってもよい。
【0022】
このような場合、ガラス基板110は、アンテナ120とグランドプレーン174との間に十分な厚さを提供できるため、相互接続層134A、134B、136A、136Bの数は、
図1Bに示すようなHDI PCBベースのアンテナパッケージに必要な層の数よりも少なくてもよい。いくつかの実施形態において、多層回路構造130内の相互接続層の数の合計は、6以下であってもよく、134A又は136Aなどの相互接続層のそれぞれの厚さは、50μmよりも大きくてもよく、相互接続層134A又は136Aの誘電体部は、プリプレグ材料、FR-4又はFR-5で構成されてもよい。また、いくつかの実施形態において、相互接続層134A、134B、136A及び136Bは、コア132に対して対称的に形成されてもよい。即ち、相互接続層134A、134Bの数は、相互接続層136A、136Bの数と同じであってもよい。
【0023】
また、グランドプレーン174と給電線172との間の距離は、グランドプレーン174と給電線172との間のインピーダンスに影響を大きく与える可能性があるため、コア132の厚さは、信号損失を低減するように、グランドプレーン174と給電線172との間の所望の整合インピーダンスに従って決定されてもよい。いくつかの実施形態において、コアレス多層回路構造130は、本明細書に記載のアンテナパッケージ100内に実装されてもよい。
【0024】
図3は、本開示の一実施形態に係るアンテナパッケージ100の上面図を示す。
図2及び
図3に示すように、接着材料150は、多層回路構造130の第2の表面130Bに塗布され、ガラス基板110を取り囲む。このような場合、多層回路構造130に接着材料150を塗布するために空間を取り、接着材料150がガラス基板110を取り囲み、これにより、ガラス基板110を多層回路構造130に固定することができるように、ガラス基板110の面積は、多層回路構造130の面積よりも小さい。いくつかの実施形態において、多層回路構造130に塗布された接着材料150の幅W1は、2mmよりも大きくてもよく、多層回路構造130に積層した接着材料150の高さH1は、ガラス基板110の高さの3分の1よりも大きくてもよい。いくつかの実施形態において、接着材料150がガラス基板110を多層回路構造130に固定するのに十分な強度を有する場合、幅W1は、2mmよりも小さくてもよく、かつ/又は、高さH1は、ガラス基板110の高さの3分の1よりも小さくてもよい。
【0025】
本実施形態において、接着材料150は、UV接着剤及び/又はシリコーンを含んでもよい。しかしながら、本開示はこれに限定されない。いくつかの実施形態において、他の種類の接着材料を使用してもよい。また、ガラス基板110を取り囲むように接着材料を塗布する代わりに、ガラス基板110と多層回路構造130との間に接着材料を塗布してもよい。
図4は、本開示の別の実施形態に係るアンテナパッケージ200を示す。アンテナパッケージ200とアンテナパッケージ100は、同様の構造を有するが、アンテナパッケージ200に使用される接着材料250は、ガラス基板110の第2の表面110Bと多層回路構造130の第2の表面130Bとの間に塗布される。
【0026】
このような場合、アンテナ120とグランドプレーン174との間の距離は、RF信号の伝送に影響を与える可能性があるため、アンテナ120とグランドプレーン174との間に配置された接着材料250の厚さは、慎重に決定される。いくつかの実施形態において、接着材料250の厚さは、約50μmであり、ガラス基板の厚さは、300μm~1000μmである。
【0027】
図5は、本開示の一実施形態に係るアンテナパッケージの製造方法M1のフローチャートを示す。方法M1は、ステップS110~S170を含む。いくつかの実施形態において、方法M1は、アンテナパッケージ100の製造に適用することができ、
図6A~
図6Gは、方法M1に係るアンテナパッケージ100の製造プロセスを示す断面図である。
【0028】
図6Aに示すように、ステップS110において、ガラス基板110を用意する。一般的に、ガラス基板110は、絶縁性が良好で、(特に高い動作周波数で)電気損失が低いなどの利点を有する。また、ガラス基板110は、低いCTEの特性により、アンテナパッケージ100の反りを防止するための優れた候補となる。いくつかの実施形態において、ガラス基板110は、4つの直線状の辺を有する長方形又は正方形である。いくつかの実施形態において、アンテナパッケージは、256個を超えるアンテナ120を収容できる大規模アンテナパッケージであってもよく、ガラス基板110の一辺の長さ(即ち、アンテナパッケージ100の辺長)は、約200mm以上である。いくつかの実施形態において、ガラス基板110の厚さは、RF信号伝送の重要なパラメータに基づくグランドプレーンとアンテナパッチとの間の距離の設計に応じて、0.3mm~1mmであってもよい。
【0029】
図6Bに示すように、ステップS120において、多層回路構造130を用意する。多層回路構造130は、第1の表面130A及び第2の表面130Bを有し、第1の表面130Aは、後続の工程においてRFチップ140を受け入れるために使用することができる。いくつかの実施形態において、グランドプレーン174と給電線172(
図2に示す)との間のインピーダンスが導電線配線の設計により整合できる限り、多層回路構造130は、高密度相互接続特徴を有するか又は有さないコア又はコアレスPCB基板であってもよい。いくつかの実施形態において、多層回路構造130は、厚さの合計が数百マイクロメートルの4つ又は6つのビルドアップ層を含んでもよい。ビルドアップ層の誘電体は、プリプレグ材料、FR-4又はFR-5を含んでもよい。
【0030】
RFチップ140を多層回路構造130の第1の表面130Aに取り付ける前に、
図6Cに示すように、ステップS130において、多層回路構造130の第2の表面130Bをガラス基板110の第2の表面110Bに接着することができる。本実施形態において、
図6Cに示すように、接着材料150を多層回路構造130の第2の表面130Bに塗布し、ガラス基板110を取り囲むことにより、多層回路構造130の第2の表面130Bをガラス基板110の第2の表面110Bに接着することができる(
図3も参照)。しかしながら、本開示はこれに限定されない。
【0031】
いくつかの実施例において、
図4に示すように、接着材料250を多層回路構造130の第2の表面130Bとガラス基板110の第2の表面110Bとの間に塗布することにより、多層回路構造130の第2の表面130Bをガラス基板110の第2の表面110Bに接着することができる。このような場合、接着材料250は、CTEが低く、損失正接が低く、多層回路構造130とガラス基板110との間に十分な接着性を同時に提供する材料を含んでもよく、これにより、同様に低CTE材料で製造されたガラス基板110は、アンテナパッケージ100が大きな面積規模(例えば、200mm×200mm以上)であるように設計されるとともに高温条件(例えば、200℃~250℃)で製造されている場合でも、多層回路構造130の平坦度を維持することができる。
【0032】
いくつかの実施形態において、接着材料250の厚さは、30μm~100μmであってもよく、電磁信号伝送のために設計された距離を実質的に妨げないように、ガラス基板110の厚さよりも大幅に薄い。接着材料250はまた、応力を緩和できる材料から選択することができる。いくつかの実施形態において、ラミネート工程により、ガラス基板110を多層回路構造130にドライフィルムからなる接着材料250により接着することができる。また、いくつかの実施形態において、ガラス基板110と多層回路構造130との間の接着性を更に高めるために、接着材料150及び250の両方を塗布してもよい。
【0033】
ガラス基板110を多層回路構造130に接着した後、ステップS140において、RFチップ140を多層回路構造130の第1の表面130Aに配置することができる。本実施形態において、RFチップ140は、ベアチップであってもよく、
図6Dに示すように、ステップS140において、フリップチップ工程によりRFチップ140を多層回路構造130に配置することができる。このような場合、多層回路構造130の反りを心配することなく、高温条件(例えば、200℃~250℃)を必要とするはんだ付け技術又は他の接合技術により、RFチップ140を多層回路構造130の第1の表面130Aに取り付けることができる。
【0034】
いくつかの実施形態において、RFチップ140のそれぞれは、複数のアンテナ120を制御するために使用されてもよい。例えば、RFチップ140は、制御のために4つの異なるアンテナ120に結合されてもよい。このような場合、アンテナ120がアンテナパッケージ100内に16×16アンテナアレイとして配置される場合、アンテナパッケージ100は、多層回路構造130に8×8個のRFチップを有してもよい。しかしながら、本開示はこれに限定されない。
【0035】
また、多層回路構造130をガラス基板110に接着するか又はガラス基板110により担持して、高温(例えば、200℃~250℃)でのアンテナパッケージ100の反りを防止することができるため、S150において、1回成形工程によりRFチップ140を封止することができる。例えば、
図6Eに示すように、成形材料162は、多層回路構造130の第1の表面130Aに塗布することができ、多層回路構造130の第1の表面130Aに配置された個々のベアチップの形態のすべてのRFチップ140を被覆することができる。その後、多層回路構造130の平坦度を維持しながら、温度上昇により成形材料162を硬化させることができる。その結果、
図2において、複数のRFチップ140を連続的に封止する成形層160を形成することができる。或いは、隣接するRFチップ140の間に成形境界又は空隙がない。いくつかの実施形態において、ガラス基板110を使用することにより、アンテナパッケージ100の反りを0.75%よりも小さくなるように制御することができる。即ち、ガラス基板110の一辺の長さが200mmである場合、反りによるアンテナパッケージ100の高さ歪みは、1.5mm(即ち、200mm×0.75%)よりも小さくなることができる。しかしながら、本開示はこれに限定されない。
【0036】
いくつかの実施形態において、成形材料162は、モールドアンダーフィル(molding-underfill、MUF)材料であってもよく、該材料は、一工程で、RFチップ140の下の接合構造又ははんだ付け構造と多層回路構造130の第1の表面130Aとの間の隙間を充填し、その上にRFチップ140を成形することができる。しかしながら、本開示はこれに限定されない。いくつかの実施形態において、成形プロセスでは、アンダーフィル用材料と成形用材料の2つの異なる材料が使用されてもよい。例えば、RFチップ140の下の接合構造又ははんだ付け構造と多層回路構造130の第1の表面130Aとの間の隙間を充填するためにキャピラリーアンダーフィル(capillary underfill、CUF)などのアンダーフィル材料を塗布してもよく、そして、成形エポキシなどの成形材料をRFチップ140及びアンダーフィル材料に塗布してもよい。また、いくつかの実施形態において、成形工程は、ドライフィルムの真空ラミネートにより実行することができる。
【0037】
図6Fに示すように、ステップS160において、複数のアンテナ120をガラス基板110の第1の表面110Aに配置する。アンテナ120は、前述の衛星通信などの長距離伝送用のビームフォーミングを実現するように、単一の放射器に異なる位相シフトを与えることができるフェーズドアレイアンテナとして配置することができる。
【0038】
いくつかの実施形態において、アンテナ120は、平坦なプロファイルを有するパッチアンテナであってもよく、それにより、ガラス基板110の第1の表面110Aに配置又はめっきすることができる。しかしながら、本開示はこれに限定されない。いくつかの実施形態において、金ペースト、銀ペースト、銅ペースト又はそれらの混合物などの金属材料を印刷することにより、アンテナ120をガラス基板110の第1の表面110Aに配置してもよい。アンテナ120をガラス基板110の第1の表面110Aに配置した後、
図6Gに示すように、ステップS170において、アンテナ120を保護するために、ガラス基板110の第1の表面110Aに保護層180を形成することができる。
【0039】
いくつかの実施形態において、アンテナ120は、グランドプレーン174の開口部と位置合わせされる必要があるため、位置合わせをより正確に実行することができるように、ガラス基板110を多層回路構造130に接着した後、アンテナ120を基板ガラス110に配置することが好ましい。しかしながら、本開示はこれに限定されない。
【0040】
なお、
図5中のフローチャートに示す順序は、方法M1の実行順序を限定するものではない。いくつかの実施形態において、方法M1のステップS110~S170を他の順序で実行してもよい。例えば、ステップS110及びS120を異なる工場によって並行して実行してもよい。また、いくつかの実施形態において、多層回路構造130の反りが許容可能である場合、多層回路構造130をガラス基板110に接着する(ステップS130)前であっても、RFチップ140を多層回路構造130に配置してもよい(ステップS140)。このような場合、成形プロセス(ステップS150)もステップS130の前に実行してもよい。しかしながら、いくつかの実施形態において、多層回路構造130の反りを低減するために、RFチップ140の上部を封止する成形プロセスを省略し、RFチップ140のはんだ付け構造を保護するためにアンダーフィルプロセスのみを実行してもよい。また、ステップS130の前にステップS160及びS170を実行してもよい。即ち、ガラス基板110を多層回路構造130に接着する前に、アンテナ120をガラス基板110に配置してもよい。或いは、ステップS130の後、ステップS140及びS150の前にステップS160及びS170を実行してもよい。
【0041】
本開示の実施形態に係るアンテナパッケージ及びアンテナパッケージの製造方法は、ガラス基板に回路基板を積層することができる。このような場合、低CTEガラス基板が回路基板に十分な剛性を与えることができるため、アンテナパッケージが大きな面積規模(例えば、200mm×200mm以上)であり、高温(例えば、200℃~250℃)でのプロセスを必要とする場合でも、アンテナパッケージは、その平坦度プロファイルを維持することができ、これにより、複数のRFチップを1回成形工程で成形することができる。その結果、製造プロセスを簡略化し、製造コストを低減することができる。
【0042】
本開示及びその利点を詳細に説明したが、添付の特許請求の範囲によって定められるような本開示の精神及び範囲から逸脱することなく、本開示において様々な変形、置換及び修正を行うことができることを理解されたい。例えば、上に論じたプロセスの多くは、異なる方法で実施することができ、他のプロセスで置き換えることができ、又はこれらを組み合わせることができる。
【0043】
また、本願の範囲は、本明細書に記載のプロセス、機器、製品、組成物、手段、方法及びステップの特定の実施形態に限定されることを意図しない。当業者であれば、本開示から、本明細書に記載される対応する実施形態と実質的に同じ機能を実行するか又は実質的に同じ結果を実現する、現在存在するか又は将来開発されるプロセス、機器、製品、組成物、手段、方法又はステップが本開示に従って利用され得ることを容易に理解する。したがって、添付の特許請求の範囲は、そのようなプロセス、機器、製品、組成物、手段、方法又はステップをその範囲内に含むことを意図している。
【符号の説明】
【0044】
100 アンテナパッケージ
110 ガラス基板
110A ガラス基板110の第1の表面
110B ガラス基板110の第2の表面
120 アンテナ
130 多層回路構造
130A 多層回路構造130の第1の表面
130B 多層回路構造130の第2の表面
132 コア
134A、134B 相互接続層
136A、136B 相互接続層
140 無線周波数チップ
150 接着材料
160 成形層
162 成形材料
172 給電線
174 グランドプレーン
180 保護層
200 アンテナパッケージ
250 接着材料
900 アンテナパッケージ
901 アンテナインパッケージ構造
902 パッケージ基板
904 アンテナ
906 無線周波数チップ
908 プリント回路基板
910 アンテナパッケージ
912 高密度相互接続プリント回路基板
912A 高密度相互接続プリント回路基板912の第1の面
912B 高密度相互接続プリント回路基板912の第2の面
914 アンテナ
916 無線周波数チップ
W1 接着材料150の幅
H1 接着材料150の高さ
M1 アンテナパッケージの製造方法