(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024119078
(43)【公開日】2024-09-03
(54)【発明の名称】力率改善装置および力率改善方法
(51)【国際特許分類】
H02J 3/18 20060101AFI20240827BHJP
【FI】
H02J3/18 128
【審査請求】未請求
【請求項の数】24
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023025688
(22)【出願日】2023-02-22
(71)【出願人】
【識別番号】000219820
【氏名又は名称】株式会社トーエネック
(71)【出願人】
【識別番号】000002853
【氏名又は名称】ダイキン工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100131406
【弁理士】
【氏名又は名称】福山 正寿
(72)【発明者】
【氏名】小林 浩
(72)【発明者】
【氏名】藤田 悠
(72)【発明者】
【氏名】河野 雅樹
(72)【発明者】
【氏名】太田 圭祐
(72)【発明者】
【氏名】小嶋 広幹
【テーマコード(参考)】
5G066
【Fターム(参考)】
5G066FB02
(57)【要約】
【課題】力率改善のさらなる向上に資する技術を提供すること。
【解決手段】アクティブフィルタAFから出力する補償無効電力Q
AFを反転させると、受電点無効電力Qrpが開放閾値Qth2よりも進み位相となる場合に、補償無効電力Q
AFを反転する(ステップS214~S226)。これにより、進相コンデンサSC
1,SC
2,・・・,SC
nを開放可能な値まで受電点無効電力Qrpが進み位相となるため、進相コンデンサSC
1,SC
2,・・・,SC
nを積極的に開放することができる。この結果、アクティブフィルタAFの容量を増大することなく、進相コンデンサSC
1,SC
2,・・・,SC
nが開放されるまで受電点無効電力Qrpが進み位相に維持されるという不都合を回避することができるため、受電点Prpにおける力率を改善することができる。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1つの負荷と、該負荷に並列に接続された少なくとも1つの空調機と、を備える電力需要家の受電点における力率を改善する力率改善装置であって、
前記受電点における電流および電圧を検出する検出器と、
前記検出器により検出された前記電流および前記電圧に基づき前記受電点の無効電力である受電点無効電力を算出する無効電力算出部と、
前記負荷に並列に接続された少なくとも1つの進相コンデンサと、
前記受電点無効電力が第1電力値よりも遅れ位相となったときに前記進相コンデンサを投入し、前記受電点無効電力が第2電力値よりも進み位相となったときに前記進相コンデンサを開放する進相コンデンサ制御部と、
前記空調機に並列に接続されると共に、前記受電点無効電力が前記第1電力値に近付く第1補償無効電力を出力する少なくとも1つのアクティブフィルタと、
を備え、
前記アクティブフィルタは、前記第1補償無効電力とは異なる第2補償無効電力を出力したと仮定したときに、前記受電点無効電力が前記第2電力値よりも進み位相となる場合に、前記第1補償無効電力に代えて前記第2補償無効電力を出力する
力率改善装置。
【請求項2】
前記第2補償無効電力は、前記第1補償無効電力とは逆位相の電力である
請求項1に記載の力率改善装置。
【請求項3】
前記第2補償無効電力は、前記第1補償無効電力と同じ大きさの電力である
請求項2に記載の力率改善装置。
【請求項4】
前記アクティブフィルタは、前記第1補償無効電力が前記進相コンデンサの単機容量を超えないよう出力を制御する
請求項1に記載の力率改善装置。
【請求項5】
前記アクティブフィルタは、前記第1補償無効電力が前記進相コンデンサの単機容量の1/2を超えないよう出力を制御する
請求項4に記載の力率改善装置。
【請求項6】
前記アクティブフィルタは、前記第2補償無効電力を第1所定時間継続して出力する
請求項1ないし5のいずれか1項に記載の力率改善装置。
【請求項7】
前記アクティブフィルタは、前記受電点無効電力が前記第2電力値よりも進み位相となる状態が第2所定時間継続したときに、前記第2補償無効電力を出力する
請求項1ないし5のいずれか1項に力率改善装置。
【請求項8】
前記アクティブフィルタは、前記受電点無効電力が前記第2電力値よりも進み位相となる状態が第2所定時間継続したときに、前記第2補償無効電力を出力すると共に、前記第2補償無効電力を第1所定時間継続して出力する
請求項1ないし5のいずれか1項に力率改善装置。
【請求項9】
前記アクティブフィルタは、複数台配置されており、
前記第1補償無効電力を前記アクティブフィルタそれぞれで分担して出力するよう前記アクティブフィルタそれぞれの分担率を設定可能な分担率設定部をさらに備え、
前記アクティブフィルタそれぞれは、前記分担率に応じた第1分担補償無効電力とは異なる第2分担補償無効電力を出力したと仮定したときに、前記受電点無効電力が前記第2電力値よりも進み位相となる場合に、前記第1分担補償無効電力に代えて前記第2分担補償無効電力を出力する
請求項1ないし5のいずれか1項に記載の力率改善装置。
【請求項10】
前記アクティブフィルタそれぞれは、前記第2分担補償無効電力を第3所定時間継続して出力する
請求項9に記載の力率改善装置。
【請求項11】
前記アクティブフィルタそれぞれは、前記受電点無効電力が前記第2電力値よりも進み位相となる状態が第4所定時間継続したときに、前記第2分担補償無効電力を出力する
請求項9に力率改善装置。
【請求項12】
前記アクティブフィルタそれぞれは、前記受電点無効電力が前記第2電力値よりも小さい状態が第4所定時間継続したときに、前記第2分担補償無効電力を出力すると共に、該第2分担補償無効電力を第3所定時間継続して出力する
請求項9に記載の力率改善装置。
【請求項13】
少なくとも1つの負荷と、該負荷に並列に接続された少なくとも1つの空調機と、を備える電力需要家の受電点における力率を改善する力率改善装置であって、
前記受電点における電流および電圧を検出する検出器と、
前記検出器により検出された前記電流および前記電圧に基づき前記受電点の無効電力である受電点無効電力を算出する無効電力算出部と、
前記負荷に並列に接続された少なくとも1つの進相コンデンサと、
前記受電点無効電力が第3電力値よりも遅れ位相となったときに前記進相コンデンサを投入し、前記受電点無効電力が第4電力値よりも進み位相となったときに前記進相コンデンサを開放する進相コンデンサ制御部と、
前記空調機に並列に接続されると共に、前記受電点無効電力が前記第3電力値に近付く第3補償無効電力を分担して出力する複数のアクティブフィルタと、前記第3補償無効電力の分担率を設定可能な分担率設定部と、
を備え、
前記アクティブフィルタそれぞれは、前記分担率に応じた第3分担補償無効電力とは異なる第4分担補償無効電力を出力したと仮定したときに、前記受電点無効電力が前記第4電力値よりも進み位相となる場合に、前記第3分担補償無効電力に代えて前記第4分担補償無効電力の2倍以上の大きさを有する電力を第5所定時間で出力する
力率改善装置。
【請求項14】
前記第4分担補償無効電力は、前記第3分担補償無効電力とは逆位相の電力である
請求項13に記載の力率改善装置。
【請求項15】
前記前記アクティブフィルタそれぞれは、前記第3分担補償無効電力が前記進相コンデンサの単機容量に前記分担率を乗じた値を超えないよう出力を制御する
請求項13に記載の力率改善装置。
【請求項16】
前記アクティブフィルタそれぞれは、前記第3分担補償無効電力が前記進相コンデンサの単機容量に前記分担率を乗じた値の1/2を超えないよう出力を制御する
請求項15に記載の力率改善装置。
【請求項17】
前記アクティブフィルタそれぞれは、前記第4分担補償無効電力の2倍以上の大きさを有する電力を第6所定時間継続して出力する
請求項13ないし16のいずれか1項に記載の力率改善装置。
【請求項18】
前記アクティブフィルタそれぞれは、前記受電点無効電力が前記第4電力値よりも進み位相となる状態が第7所定時間継続したときに、前記第4分担補償無効電力を出力する
請求項13ないし16のいずれか1項に力率改善装置。
【請求項19】
前記アクティブフィルタそれぞれは、前記受電点無効電力が前記第4電力値よりも進み位相となる状態が第7所定時間継続したときに、前記第4分担補償無効電力を出力すると共に、前記第4分担補償無効電力を第6所定時間継続して出力する
請求項13ないし16のいずれか1項に記載の力率改善装置。
【請求項20】
前記アクティブフィルタそれぞれは、前記受電点無効電力が前記第4電力値よりも進み位相となったときに、前記第4分担補償無効電力の出力速度を低下する
請求項13ないし16のいずれか1項に記載の力率改善装置。
【請求項21】
少なくとも1つの負荷と、該負荷に並列に接続された少なくとも1つの進相コンデンサと、前記負荷に並列に接続された少なくとも1つの空調機と、該空調機に並列に接続された少なくとも1つのアクティブフィルタと、を備える電力需要家の受電点における力率を改善する力率改善方法であって、
(a)前記受電点における電流および電圧を検出する検出し、
(b)検出した前記電流および前記電圧に基づき前記受電点の無効電力である受電点無効電力を算出し、
(c)前記受電点無効電力が第1電力値よりも遅れ位相となったときに、前記進相コンデンサを投入すると共に、前記受電点無効電力が第2電力値よりも進み位相となったときに前記進相コンデンサを開放し、
(d)前記受電点無効電力が第1電力値に近付く第1補償無効電力を前記アクティブフィルタから出力し、
(e)前記第1補償無効電力とは異なる第2補償無効電力を出力したと仮定したときに、前記受電点無効電力が前記第2電力値よりも進み位相となる場合には、前記第1補償無効電力に代えて前記第2補償無効電力を前記アクティブフィルタから出力する
力率改善方法。
【請求項22】
前記アクティブフィルタが複数台配置されている請求項21に記載の力率改善方法であって、
前記ステップ(d)は、前記第1補償無効電力を前記アクティブフィルタそれぞれで分担して出力するよう前記アクティブフィルタそれぞれの分担率を設定するステップを含んでおり、
前記ステップ(e)は、前記分担率に応じた第1分担補償無効電力とは異なる第2分担補償無効電力を出力したと仮定したときに、前記受電点無効電力が前記第2電力値よりも進み位相となる場合に、前記第1分担補償無効電力に代えて前記第2分担補償無効電力を前記アクティブフィルタそれぞれから出力するステップである
力率改善方法。
【請求項23】
少なくとも1つの負荷と、該負荷に並列に接続された少なくとも1つの進相コンデンサと、前記負荷に並列に接続された少なくとも1つの空調機と、該空調機に並列に接続された複数のアクティブフィルタと、を備える電力需要家の受電点における力率を改善する力率改善方法であって、
(f)前記受電点における電流および電圧を検出し、
(g)検出した前記電流および前記電圧に基づき前記受電点の無効電力である受電点無効電力を算出し、
(h)前記受電点無効電力が第3電力値よりも遅れ位相となったときに前記進相コンデンサを投入すると共に、前記受電点無効電力が第4電力値よりも進み位相となったときに前記進相コンデンサを開放し、
(i)前記受電点無効電力が前記第3電力値に近付く第3補償無効電力を予め設定した分担率に応じて前記アクティブフィルタそれぞれから出力し、
(j)前記分担率に応じた第3分担補償無効電力とは異なる第4分担補償無効電力を出力したと仮定したときに、前記受電点無効電力が前記第4電力値よりも進み位相となる場合に、前記第3分担補償無効電力に代えて前記第4分担補償無効電力の2倍以上の大きさを有する電力を前記アクティブフィルタそれぞれから第5所定時間で出力する
力率改善方法。
【請求項24】
(l)前記受電点無効電力が前記第4電力値よりも進み位相となったときに、前記第4分担補償無効電力の出力速度低下するステップを含んでいる
請求項23に記載の力率改善方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、少なくとも1つの負荷と,該負荷に並列に接続された少なくとも1つの空調機と,を備える電力需要家の受電点における力率を改善する力率改善装置、および、少なくとも1つの負荷と,該負荷に並列に接続された少なくとも1つの進相コンデンサと前記負荷に並列に接続された少なくとも1つの空調機と,該空調機に並列に接続されると共に前記受電点無効電力と同位相または逆位相の無効電力を出力可能な電源を有する少なくとも1つのアクティブフィルタと,を備える電力需要家の受電点における力率を改善する力率改善方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特開平10-295041号公報(特許文献1)には、受電変電設備の2次側に接続された複数の進相コンデンサおよび1つのアクティブフィルタと、進相コンデンサの投入・開放制御を行う自動力率調整装置と、を備える力率改善装置が記載されている。
【0003】
当該力率改善装置は、受電変電設備の2次側に接続された負荷設備からの無効電力が増加して、受電点における力率が遅れ位相になると、受電点における力率が設定力率となるように、自動力率調整装置によって進相コンデンサを選択的に投入すると共に、投入された進相コンデンサで補正しきれなかった残りの無効電力をアクティブフィルタからの無効電力で補償する構成であるため、進相コンデンサが頻繁に投入および開放を繰り返す不都合を防止することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述した公報に記載の力率改善装置は、負荷設備の無効電力が増加する場合の受電点における力率を改善することができるものの、負荷設備の無効電力が減少する場合には、受電点における力率を改善することができない場合がある。これは、進相コンデンサが、受電点における無効電力が、進み位相、かつ、少なくとも進相コンデンサの単機容量以上の無効電力と同じ大きさとなるまで開放されないように制御されることが一般的であり、また、アクティブフィルタが、電力需要家から配電線に流出する高調波電流を所望の値に抑えるための補償電流を発生させる機能も兼用しており、アクティブフィルタから出力可能な無効電力が制限される場合があることに起因する。これにより、負荷設備の無効電力が減少する場合に、受電点における力率が、進相コンデンサが開放されるまで進み位相に維持されて、受電点における力率を改善することができないのである。アクティブフィルタの容量を増大して、アクティブフィルタから出力可能な無効電力の増大をはかることも考えられるが、装置の大型化およびコスト増加を招いてしまう。
【0006】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであり、力率改善のさらなる向上に資する技術を提供することを主目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る力率改善装置の好ましい形態によれば、少なくとも1つの負荷と、当該負荷に並列に接続された少なくとも1つの空調機と、を備える電力需要家の受電点における力率を改善する力率改善装置が構成される。当該力率改善装置は、受電点における電流および電圧を検出する検出器と、当該検出器により検出された電流および電圧に基づき受電点の無効電力である受電点無効電力を算出する無効電力算出部と、負荷に並列に接続された少なくとも1つの進相コンデンサと、当該進相コンデンサの投入および開放を制御する進相コンデンサ制御部と、空調機に並列に接続されると共に受電点無効電力が第1電力値に近付く第1補償無効電力を出力する少なくとも1つのアクティブフィルタと、を備えている。進相コンデンサ制御部は、受電点無効電力が第1電力値よりも遅れ位相となったときに進相コンデンサを投入し、受電点無効電力が第2電力値よりも進み位相となったときに進相コンデンサを開放する。そして、アクティブフィルタは、第1補償無効電力とは異なる第2補償無効電力を出力したと仮定したときに、受電点無効電力が第2電力値よりも進み位相となる場合に、第1補償無効電力に代えて第2補償無効電力を出力する。ここで、第2補償無効電力は、第1補償無効電力とは逆位相の電力であるものとすることができる。この場合、第2補償無効電力は、第1補償無効電力と同じ大きさの電力であるものとすることができる。なお、本発明における「第1電力値」は、典型的には、受電点における力率が所望の力率(例えば、100%)となる受電点無効電力の値がこれに該当する。また、本発明における「第2電力値」は、進相コンデンサを開放するための閾値として設定される値であり、典型的には、進相コンデンサの単機容量に所定の安全率を乗じた値がこれに該当する。
【0008】
本発明によれば、負荷からの無効電力(以下、「負荷無効電力」という)が増加して、受電点無効電力が第1電力値よりも遅れ位相になると、進相コンデンサを投入すると共に、投入された進相コンデンサで補正しきれなかった残りの負荷無効電力をアクティブフィルタから第1補償無効電力として出力するため、負荷無効電力が増加した場合の受電点における力率を改善することができる。一方、負荷無効電力が減少して、受電点無効電力が進み位相になると、受電点無効電力が第2電力値よりも進み位相となるように、アクティブフィルタから第1補償無効電力とは異なる第2補償無効電力を出力する。即ち、負荷無効電力が減少して、受電点無効電力が進み位相になると、アクティブフィルタから第2補償無効電力を出力させて進相コンデンサを積極的に開放するのである。これにより、アクティブフィルタの容量を増大することなく、受電点における力率が、進相コンデンサが開放されるまで進み位相に維持されるという不都合を回避することができる。この結果、負荷無効電力が減少した場合においても、受電点における力率を改善することができる。
【0009】
本発明に係る力率改善装置の更なる形態によれば、アクティブフィルタは、第1補償無効電力が進相コンデンサの単機容量を超えないように出力を制御する。
【0010】
本形態によれば、アクティブフィルタから出力する第1補償無効電力を制限するため、アクティブフィルタの容量増大を抑制することができる。これにより、アクティブフィルタの大型化やコスト増加を抑制することができる。この結果、装置の大型化やコスト増加を抑制することができる。
【0011】
本発明に係る力率改善装置の更なる形態によれば、アクティブフィルタは、第1補償無効電力が進相コンデンサの単機容量の1/2を超えないように出力を制御する。
【0012】
本形態によれば、アクティブフィルタから出力する第1補償無効電力の最適化と、アクティブフィルタの大型化抑制と、の両立を図ることができる。
【0013】
本発明に係る力率改善装置の更なる形態によれば、アクティブフィルタは、第2補償無効電力を第1所定時間継続して出力する。
【0014】
本形態によれば、第1所定時間を進相コンデンサが確実に開放されるのに要する時間以上に設定することで、進相コンデンサが開放されるまで、アクティブフィルタから第2補償無効電力が継続して出力されるため、進相コンデンサを確実に開放することができる。もとより、第1所定時間経過後には、アクティブフィルタが第1補償無効電力を出力するため、進相コンデンサが強制的に開放されることによって受電点無効電力が遅れ位相となることを防止することができる。
【0015】
本発明に係る力率改善装置の更なる形態によれば、アクティブフィルタは、受電点無効電力が第2電力値よりも進み位相となる状態が第2所定時間継続したときに、第2補償無効電力を出力する。
【0016】
本形態によれば、一時的に受電点無効電力が第2電力値よりも進み位相となった場合、即ち、一時的に受電点無効電力が進相コンデンサを開放可能な大きさとなった場合に、アクティブフィルタが第2補償無効電力を出力することを防止できる、即ち、第2補償無効電力を出力することで進相コンデンサが開放された後、すぐに進相コンデンサが投入される動作を繰り返す、所謂、ハンチング現象を防止することができる。この結果、装置の動作の安定化を図ることができる。
【0017】
本発明に係る力率改善装置の更なる形態によれば、アクティブフィルタは、受電点無効電力が第2電力値よりも進み位相となる状態が第2所定時間継続したときに、第2補償無効電力を第1所定時間継続して出力すると共に、第2補償無効電力を第1所定時間継続して出力する。
【0018】
本形態によれば、一時的に受電点無効電力が第2電力値よりも進み位相となった場合、即ち、一時的に受電点無効電力が進相コンデンサを開放可能な大きさとなった場合に、アクティブフィルタが第2補償無効電力を出力することを防止できる、即ち、第2補償無効電力を出力することで進相コンデンサが開放された後、すぐに進相コンデンサが投入される動作を繰り返す、所謂、ハンチング現象を防止することができる。この結果、装置の動作の安定化を図ることができる。また、第1所定時間を進相コンデンサが確実に開放されるのに要する時間以上に設定することで、進相コンデンサが開放されるまで、アクティブフィルタから第2補償無効電力が継続して出力されるため、進相コンデンサを確実に開放することができる。もとより、第1所定時間経過後には、アクティブフィルタが第1補償無効電力を出力するため、進相コンデンサが強制的に開放されることによって受電点無効電力が遅れ位相となることを防止することができる。
【0019】
本発明に係る力率改善装置の更なる形態によれば、アクティブフィルタは、複数台配置されている。また、第1補償無効電力をアクティブフィルタそれぞれで分担して出力するように、アクティブフィルタそれぞれの分担率を設定可能な分担率設定部をさらに備えている。そして、アクティブフィルタそれぞれは、分担率に応じた第1分担補償無効電力とは異なる第2分担補償無効電力を出力したと仮定したときに、受電点無効電力が第2電力値よりも進み位相となる場合に、第1分担補償無効電力に代えて第2分担補償無効電力を出力する。
【0020】
本形態によれば、アクティブフィルタが複数配置される場合には、当該複数のアクティブフィルタそれぞれが第1補償無効電力を分担して出力するため、各アクティブフィルタから出力する補償無効電力量を抑制することができる。これにより、各アクティブフィルタの容量増大を抑制することができ、各アクティブフィルタの大型化やコスト増加を抑制することができる。この結果、装置の大型化やコスト増加を抑制することができる。また、負荷無効電力が減少して、受電点無効電力が進み位相になると、受電点無効電力が第2電力値よりも進み位相なるように、アクティブフィルタから第1補償無効電力とは異なる第2補償無効電力を出力する。即ち、負荷無効電力が減少して、受電点無効電力が進み位相になると、各アクティブフィルタから第2分担補償無効電力を出力させて進相コンデンサを積極的に開放するのである。これにより、アクティブフィルタの容量を増大することなく、受電点における力率が、進相コンデンサが開放されるまで進み位相に維持されるという不都合を回避することができる。なお、各アクティブフィルタは、互いに通信をして第1分担補償無効電力を反転するか否かの判断を行うのではなく、各アクティブフィルタが自律的に第1分担補償無効電力を反転するか否かの判断を行うため、負荷無効電力が減少した場合における受電点の力率改善を簡易な制御で実現することができる。
【0021】
本発明に係る力率改善装置の更なる形態によれば、アクティブフィルタそれぞれは、第2分担補償無効電力を第3所定時間継続して出力する。
【0022】
本形態によれば、第3所定時間を進相コンデンサが確実に開放されるのに要する時間以上に設定することで、進相コンデンサが開放されるまで、各アクティブフィルタから第2分担補償無効電力が継続して出力されるため、進相コンデンサを確実に開放することができる。もとより、第3所定時間経過後には、各アクティブフィルタが第1分担補償無効電力を出力するため、進相コンデンサが強制的に開放されることによって受電点無効電力が遅れ位相となることを防止することができる。
【0023】
本発明に係る力率改善装置の更なる形態によれば、アクティブフィルタそれぞれは、受電点無効電力が第2電力値よりも進み位相となる状態が第4所定時間継続したときに、第2分担補償無効電力を出力する。
【0024】
本形態によれば、一時的に受電点無効電力が第2電力値よりも進み位相となった場合、即ち、一時的に受電点無効電力が進相コンデンサを開放可能な大きさとなった場合に、各アクティブフィルタから第2分担補補償無効電力が出力されることを防止できる。これにより、第2分担補補償無効電力を出力することで進相コンデンサが開放された後、すぐに進相コンデンサが投入される動作を繰り返す、所謂、進相コンデンサのハンチング現象を防止することができる。この結果、装置の動作の安定化を図ることができる。
【0025】
本発明に係る力率改善装置の更なる形態によれば、アクティブフィルタそれぞれは、受電点無効電力が第2電力値よりも進み位相となる状態が第4所定時間継続したときに、第2分担補償無効電力を出力する。また、アクティブフィルタそれぞれは、第2分担補償無効電力を第3所定時間継続して出力する。
【0026】
本形態によれば、一時的に受電点無効電力が第2電力値よりも進み位相となった場合、即ち、一時的に受電点無効電力が進相コンデンサを開放可能な大きさとなった場合に、各アクティブフィルタから第2分担補償無効電力が出力されることを防止できる。これにより、2分担補補償無効電力を出力することで進相コンデンサが開放された後、すぐに進相コンデンサが投入される動作を繰り返す、所謂、進相コンデンサのハンチング現象を防止することができる。この結果、装置の動作の安定化を図ることができる。第3所定時間を進相コンデンサが確実に開放されるのに要する時間以上に設定することで、進相コンデンサが開放されるまで、各アクティブフィルタから第2分担補償無効電力が継続して出力されるため、進相コンデンサを確実に開放することができる。もとより、第3所定時間経過後には、各アクティブフィルタが第1分担補償無効電力を出力するため、進相コンデンサが強制的に開放されることによって受電点無効電力が遅れ位相となることを防止することができる。
【0027】
本発明に係る力率改善装置の好ましい形態によれば、少なくとも1つの負荷と、当該負荷に並列に接続された少なくとも1つの空調機と、を備える電力需要家の受電点における力率を改善する力率改善装置が構成される。当該力率改善装置は、受電点における電流および電圧を検出する検出器と、検出器により検出された電流および前記電圧に基づき受電点の無効電力である受電点無効電力を算出する無効電力算出部と、負荷に並列に接続された少なくとも1つの進相コンデンサと、進相コンデンサの投入および開放を制御する進相コンデンサ制御部と、空調機に並列に接続されると共に受電点無効電力が第3電力値に近付く第3補償無効電力を分担して出力する複数のアクティブフィルタと、第3補償無効電力の分担率を設定可能な分担率設定部と、を備えている。進相コンデンサ制御部は、受電点無効電力が第3電力値よりも遅れ位相となったときに進相コンデンサを投入し、受電点無効電力が第4電力値よりも進み位相となったときに進相コンデンサを開放する。そして、アクティブフィルタそれぞれは、分担率に応じた第3分担補償無効電力とは異なる第4分担補償無効電力を出力したと仮定したときに、第4電力値よりも進み位相となったときに、アクティブフィルタそれぞれが現在出力している第3分担補償無効電力に代えて第4分担補償無効電力の2倍以上の大きさを有する電力を第5所定時間で出力する。ここで、第4分担補償無効電力は、第3分担補償無効電力とは逆位相の電力であるものとすることができる。本発明における「第3電力値」は、典型的には、受電点における力率が所望の力率(例えば、100%)となる受電点無効電力の値がこれに該当する。また、本発明における「第4電力値」は、進相コンデンサを開放するための閾値として設定される値であり、典型的には、進相コンデンサの単機容量に所定の安全率を乗じた値がこれに該当する。
【0028】
本発明によれば、負荷無効電力が増加して、受電点無効電力が第3電力値よりも遅れ位相になると、進相コンデンサを投入すると共に、投入された進相コンデンサで補正しきれなかった残りの負荷無効電力に相当する第3補償無効電力を、複数のアクティブフィルタそれぞれが分担して出力するため、各アクティブフィルタから出力する補償無効電力量を抑制しながら、負荷無効電力が増加した場合の受電点における力率を改善することができる。一方、負荷無効電力が減少して、受電点無効電力が進み位相になると、受電点無効電力が第4電力値よりも進み位相となるように、アクティブフィルタから第4分担補償無効電力の2倍以上の大きさの電力を第5所定時間で出力する。即ち、負荷無効電力が減少して、受電点無効電力が進み位相になると、各アクティブフィルタから第4分担補償無効電力の2倍以上の大きさの電力を出力させて進相コンデンサを積極的に開放するのである。ここで、各アクティブフィルタから第4分担補償無効電力を、その大きさを2倍にして出力するのは、出力可能な補償無効電力に制約があるアクティブフィルタ(例えば、高調波電流の補償量が大きくなった結果、補償無効電力の出力が制限されるアクティブフィルタ)が存在して、当該アクティブフィルタから第4分担補償無効電力を出力できない場合が生じても、補償無効電力の出力に余裕があるアクティブフィルタ(例えば、高調波電流の補償量が小さく、補償無効電力の出力に余裕があるアクティブフィルタ)から第4分担補償無効電力以上の補償無効電力を出力させて、補償無効電力の出力に制約があるアクティブフィルタにおける補償無効電力の不足分を、補償無効電力の出力に余裕があるアクティブフィルタからの補償無効電力により補うためである。これにより、確実に受電点無効電力を進み位相で、かつ、進相コンデンサを開放可能な大きさにすることができる。この結果、いずれかのアクティブフィルタからの補償無効電力の出力に制約が生じたことに起因して、受電点無効電力が進み位相で、かつ、進相コンデンサを開放可能な大きさとなっていないにも拘らず、進相コンデンサを開放した結果、受電点無効電力が第3電力値よりも遅れ位相となって、再び進相コンデンサが投入されるという動作を繰り返す所謂進相コンデンサのハンチング現象を確実に防止することができる。なお、第5所定時間は、受電点無効電力が進み位相となることに起因する不都合が問題にならないような時間に設定すれば良い。なお、各アクティブフィルタは、互いに通信をして第4分担補償無効電力の2倍以上の大きさを有する電力を出力するか否かの判断を行うのではなく、各アクティブフィルタが自律的に第4分担補償無効電力の2倍以上の大きさを有する電力を出力するか否か判断を行うため、負荷無効電力が減少した場合における受電点の力率改善を簡易な制御で実現することができる。このように、本発明によれば、アクティブフィルタが複数配置される場合であって、かつ、各アクティブフィルタから出力可能な補償無効電力に制約がある場合においても公的に適用できる。
【0029】
本発明に係る力率改善装置の更なる形態によれば、アクティブフィルタそれぞれは、第3分担補償無効電力が進相コンデンサの単機容量に分担率を乗じた値を超えないように、出力を制御する。
【0030】
本形態によれば、各アクティブフィルタから出力する第3分担補償無効電力を制限するため、各アクティブフィルタの容量増大を抑制することができる。これにより、各アクティブフィルタの大型化やコスト増加を抑制することができる。この結果、装置の大型化やコスト増加を抑制することができる。
【0031】
本発明に係る力率改善装置の更なる形態によれば、アクティブフィルタそれぞれは、第3分担補償無効電力が進相コンデンサの単機容量に分担率を乗じた値の1/2を超えないように出力を制御する。
【0032】
本形態によれば、各アクティブフィルタから出力する第3分担補償無効電力の最適化と、各アクティブフィルタの大型化抑制と、の両立を図ることができる。
【0033】
本発明に係る力率改善装置の更なる形態によれば、アクティブフィルタそれぞれは、第4分担補償無効電力を第6所定時間継続して出力する。
【0034】
本形態によれば、第6所定時間を進相コンデンサが確実に開放されるのに要する時間以上に設定することで、進相コンデンサが開放されるまで、各アクティブフィルタから第4分担補償無効電力が出力されるため、進相コンデンサを確実に開放することができる。もとより、第6所定時間経過後には、各アクティブフィルタが第3分担補償無効電力を出力するため、進相コンデンサが強制的に開放されることによって受電点無効電力が遅れ位相となることを防止することができる。
【0035】
本発明に係る力率改善装置の更なる形態によれば、アクティブフィルタそれぞれは、受電点無効電力が第4電力値よりも進み位相となる状態が第7所定時間継続したときに、第4分担補償無効電力を出力する。
【0036】
本形態によれば、一時的に受電点無効電力が第4電力値よりも進み位相となった場合、即ち、一時的に受電点無効電力が進相コンデンサを開放可能な大きさとなった場合に、各アクティブフィルタが第4分担補償無効電力の2倍以上の大きさを有する電力を出力することを防止できる。即ち、第4分担補償無効電力の2倍以上の大きさを有する電力を出力することで進相コンデンサが開放された後、すぐに進相コンデンサが投入される動作を繰り返す、所謂、ハンチング現象を防止することができる。この結果、装置の動作の安定化を図ることができる。
【0037】
本発明に係る力率改善装置の更なる形態によれば、アクティブフィルタそれぞれは、受電点無効電力が第4電力値よりも進み位相となる状態が第7所定時間継続したときに、第4分担補償無効電力の2倍状の大きさを有する電力を出力すると共に、当該第4分担補償無効電力の2倍状の大きさを有する電力を第6所定時間継続して出力する。
【0038】
本形態によれば、一時的に受電点無効電力が第4電力値よりも進み位相となった場合、即ち、一時的に受電点無効電力が進相コンデンサを開放可能な大きさとなった場合に、各アクティブフィルタが第4分担補償無効電力の2倍状の大きさを有する電力を出力することを防止できる。即ち、第4分担補償無効電力の2倍以上の大きさを有する電力を出力することで進相コンデンサが開放された後、すぐに進相コンデンサが投入される動作を繰り返す、所謂、ハンチング現象を防止することができる。この結果、装置の動作の安定化を図ることができる。また、第6所定時間を進相コンデンサが確実に開放されるのに要する時間以上に設定することで、進相コンデンサが開放されるまで、各アクティブフィルタから第4分担補償無効電力の2倍以上の大きさを有する電力が出力されるため、進相コンデンサを確実に開放することができる。もとより、第6所定時間経過後には、各アクティブフィルタが第3分担補償無効電力を出力するため、進相コンデンサが強制的に開放されることによって受電点無効電力が遅れ位相となることを防止することができる。
【0039】
本発明に係る力率改善装置の更なる形態によれば、アクティブフィルタそれぞれは、受電点無効電力が第4電力値よりも進み位相となったときに、第4分担補償無効電力の2倍以上の大きさを有する電力の出力速度を低下する。
【0040】
本形態によれば、受電点における力率(受電点無効電力)が過剰に進み位相となることを良好に防止することができる。
【0041】
本発明に係る力率改善方法の好ましい態様によれば、少なくとも1つの負荷と、当該負荷に並列に接続された少なくとも1つの進相コンデンサと、負荷に並列に接続された少なくとも1つの空調機と、当該空調機に並列に接続された少なくとも1つのアクティブフィルタと、を備える電力需要家の受電点における力率を改善する力率改善方法が構成される。当該力率改善方法は、(a)受電点における電流および電圧を検出する検出し、(b)検出した電流および電圧に基づき受電点の無効電力である受電点無効電力を算出し、(c)受電点無効電力が第1電力値よりも遅れ位相となったときに、進相コンデンサを投入すると共に、受電点無効電力が第2電力値よりも進み位相となったときに進相コンデンサを開放し、(d)受電点無効電力が第1電力値に近付く第1補償無効電力をアクティブフィルタから出力し、(e)第1補償無効電力とは異なる第2補償無効電力を出力したと仮定したときに、受電点無効電力が第1差電力値に代えて第2補償無効電力をアクティブフィルタから出力する。ここで、本発明における「第1電力値」は、典型的には、受電点における力率が所望の力率(例えば、100%)となる受電点無効電力の値がこれに該当する。また、本発明における「第2電力値」は、進相コンデンサを開放するための閾値として設定される値であり、典型的には、進相コンデンサの単機容量に所定の安全率を乗じた値がこれに該当する。
【0042】
本発明によれば、負荷無効電力が増加して、受電点無効電力が第1電力値よりも遅れ位相になると、進相コンデンサを投入すると共に、投入された進相コンデンサで補正しきれなかった残りの無効電力をアクティブフィルタから第1補償無効電力として出力するため、負荷無効電力が増加した場合の受電点における力率を改善することができる。一方、負荷無効電力が減少して、受電点無効電力が進み位相になると、受電点無効電力が第2電力値よりも進み位相となるように、アクティブフィルタから第1補償無効電力とは異なる第2補償無効電力を出力する。即ち、負荷無効電力が減少して、受電点無効電力が進み位相になると、アクティブフィルタから第2補償無効電力を出力させて進相コンデンサを積極的に開放するのである。これにより、アクティブフィルタの容量を増大することなく、受電点における力率が、進相コンデンサが開放されるまで進み位相に維持されるという不都合を回避することができる。この結果、負荷無効電力が減少した場合においても、受電点における力率を改善することができる。
【0043】
アクティブフィルタが複数台配置される態様の本発明に係る力率改善方法の更なる形態によれば、ステップ(d)は、第1補償無効電力をアクティブフィルタそれぞれで分担して出力するように、アクティブフィルタそれぞれの分担率を設定するステップを含んでおり、ステップ(e)は、分担率に応じた第1分担補償無効電力とは異なる第2分担補償無効電力を出力したと仮定したときに、受電点無効電力が第2電力値よりも進み位相となる場合に、第1分担補償無効電力に代えて第2分担補償無効電力をアクティブフィルタそれぞれから出力するステップである。
【0044】
本形態によれば、アクティブフィルタが複数配置される場合には、当該複数のアクティブフィルタそれぞれが第1補償無効電力を分担して出力するため、各アクティブフィルタから出力する無効電力量を抑制することができる。これにより、各アクティブフィルタの容量増大を抑制することができる。これにより、各アクティブフィルタの大型化やコスト増加を抑制することができる。この結果、装置の大型化やコスト増加を抑制することができる。また、負荷無効電力が減少して、受電点無効電力が進み位相になると、受電点無効電力が第2電力値よりも進み位相なるように、アクティブフィルタから第1補償無効電力とは異なる第2補償無効電力を出力する。即ち、荷無効電力が減少して、受電点無効電力が進み位相になると、各アクティブフィルタから第2分担補償無効電力を出力させて進相コンデンサを積極的に開放するのである。これにより、アクティブフィルタの容量を増大することなく、受電点における力率が、進相コンデンサが開放されるまで進み位相に維持されるという不都合を回避することができる。なお、各電源制御部は、互いに通信をして、各アクティブフィルタからの第1分担補償無効電力を反転可能か否かの判断を行うのではなく、各電源制御部が自律的に各アクティブフィルタからの第1分担補償無効電力を反転可能か否かの判断を行うため、負荷無効電力が減少した場合における受電点の力率改善を簡易な制御で実現することができる。
【0045】
本発明に係る力率改善方法の好ましい態様によれば、少なくとも1つの負荷と、当該負荷に並列に接続された少なくとも1つの進相コンデンサと、負荷に並列に接続された少なくとも1つの空調機と、当該空調機に並列に接続された複数のアクティブフィルタと、を備える電力需要家の受電点における力率を改善する力率改善方法が構成される。当該力率改善方法は、(f)受電点における電流および電圧を検出し、(g)検出した電流および電圧に基づき受電点の無効電力である受電点無効電力を算出し、(h)受電点無効電力が第3電力値よりも遅れ位相となったときに進相コンデンサを投入すると共に、受電点無効電力が第4電力値よりも進み位相となったときに進相コンデンサを開放し、(i)受電点無効電力が第3電力値に近付く第3補償無効電力を予め設定した分担率に応じてアクティブフィルタそれぞれから出力し、(j)分担率に応じた第3分担補償無効電力とは異なる第4分担補償無効電力を出力したと仮定したときに、受電点無効電力が第4電力値よりも進み位相となった場合に、第3分担補償無効電力に代えて第4分担補償無効電力の2倍以上の大きさを有する電力をアクティブフィルタそれぞれから第5所定時間で出力する。
【0046】
本発明によれば、負荷無効電力が増加して、受電点無効電力が第3電力値よりも遅れ位相になると、進相コンデンサを投入すると共に、投入された進相コンデンサで補正しきれなかった残りの負荷無効電力に相当する第3補償無効電力を、複数のアクティブフィルタそれぞれが分担して出力するため、各アクティブフィルタから出力する補償無効電力量を抑制しながら、負荷無効電力が増加した場合の受電点における力率を改善することができる。一方、負荷無効電力が減少して、受電点無効電力が進み位相になると、受電点無効電力が第4電力値よりも進み位相となるように、アクティブフィルタから第4分担補償無効電力の2倍以上の大きさの電力を第5所定時間で出力する。即ち、負荷無効電力が減少して、受電点無効電力が進み位相になると、各アクティブフィルタから第4分担補償無効電力をの2倍以上の大きさの電力を出力させて進相コンデンサを積極的に開放するのである。ここで、各アクティブフィルタから第4分担補償無効電力を、その大きさを2倍にして出力するのは、出力可能な補償無効電力に制約があるアクティブフィルタ(例えば、高調波電流の補償量が大きくなった結果、補償無効電力の出力が制限されるアクティブフィルタ)が存在して、当該アクティブフィルタから第4分担補償無効電力を出力できない場合が生じても、補償無効電力の出力に余裕があるアクティブフィルタ(例えば、高調波電流の補償量が小さく、補償無効電力の出力に余裕があるアクティブフィルタ)から第4分担補償無効電力以上の補償無効電力を出力させて、補償無効電力の出力に制約があるアクティブフィルタにおける補償無効電力の不足分を、補償無効電力の出力に余裕があるアクティブフィルタからの補償無効電力により補うためである。これにより、確実に受電点無効電力を進み位相で、かつ、進相コンデンサを開放可能な大きさにすることができる。この結果、いずれかのアクティブフィルタからの補償無効電力の出力に制約が生じたことに起因して、受電点無効電力が進み位相で、かつ、進相コンデンサを開放可能な大きさとなっていないにも拘らず、進相コンデンサを開放した結果、受電点無効電力が第3電力値よりも遅れ位相となって、再び進相コンデンサが投入されるという動作を繰り返す所謂進相コンデンサのハンチング現象を確実に防止することができる。なお、第5所定時間は、受電点無効電力が進み位相となることに起因する不都合が問題にならないような時間に設定すれば良い。なお、各アクティブフィルタは、互いに通信をして第4分担補償無効電力の2倍以上の大きさを有する電力を出力するか否かの判断を行うのではなく、各アクティブフィルタが自律的に第4分担補償無効電力の2倍以上の大きさを有する電力を出力するか否か判断を行うため、負荷無効電力が減少した場合における受電点の力率改善を簡易な制御で実現することができる。このように、本発明によれば、アクティブフィルタが複数配置される場合であって、かつ、各アクティブフィルタから出力可能な補償無効電力に制約がある場合においても公的に適用できる。
【0047】
本発明に係る力率改善方法の更なる形態によれば、(l)受電点無効電力が第4電力値よりも進み位相となったときに、第4分担補償無効電力の出力速度低下するステップを含んでいる。
【0048】
本形態によれば、受電点における力率(受電点無効電力)が過剰に進み位相となることを良好に防止することができる。
【発明の効果】
【0049】
本発明によれば、力率をより改善することができる。
【図面の簡単な説明】
【0050】
【
図1】本発明の第1実施例としての力率改善装置1を備える電力需要家の構成の一例を示す説明図である。
【
図2】アクティブフィルタAFの構成の概略を示す構成図である。
【
図3】自動力率調整器APFCによって実行される進相コンデンサ制御ルーチンの一例を示すフローチャートである。
【
図4】力率改善装置1が備えるアクティブフィルタAFによって実行されるアクティブフィルタ制御ルーチンの一例を示すフローチャートである。
【
図5】アクティブフィルタ制御ルーチンから分岐した部分のフローチャートである。
【
図6】負荷無効電力Q
LTと、補償無効電力Q
AFと、補償無効電力Q
SCと、受電点無効電力Qrpの時間変化を示す説明図である。
【
図7】本発明の第2実施例としての力率改善装置100を備える電力需要家の構成の一例を示す説明図である。
【
図8】力率改善装置100が備えるアクティブフィルタAF
1,AF
2,・・・,AF
nの構成の概略を示す構成図である。
【
図9】各アクティブフィルタAF
1,AF
2,・・・,AF
nによって実行されるアクティブフィルタ制御ルーチンの一例を示すフローチャートである。
【
図10】アクティブフィルタ制御ルーチンから分岐した部分のフローチャートである。
【
図11】本発明の第3実施例としての力率改善装置が備える各アクティブフィルタAF
1,AF
2,・・・,AF
nによって実行されるアクティブフィルタ制御ルーチンの一例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0051】
次に、本発明を実施するための最良の形態を実施例を用いて説明する。
【実施例0052】
本実施の形態に係る力率改善装置1は、
図1に示すように、配電線PCを介して電源2から電力供給を受ける電力需要家の受電点Prpにおける力率を改善するための装置として構成されており、配電線PCに接続された電圧計Vol、電流計Amp、複数の進相コンデンサSC
1,SC
2,・・・,SC
n、自動力率調整器APFC、および、アクティブフィルタAFを備えている。
【0053】
電力需要家は、
図1に示すように、配電線PCに接続された複数の負荷L
1,L
2,・・・,L
nと、当該複数の負荷L
1,L
2,・・・,L
nに並列となるように配電線PCに接続された空調機Acと、を有している。なお、負荷L
1,L
2,・・・,L
nは、インバータ回路などの高調波電流の発生源となり得る回路を有している機器、例えば、エレベータやファン、ポンプ、エスカレータ、三相電源で駆動する照明などが考えられる。
【0054】
電圧計Volおよび電流計Ampは、それぞれ受電点Prpにおける電圧Vrpおよび電流Irpを検出する。電圧計Volおよび電流計Ampは、それぞれ本発明における「検出器」に対応する実施構成の一例である。
【0055】
進相コンデンサSC
1,SC
2,・・・,SC
nは、
図1に示すように、それぞれ電磁開閉器MC
1,MC
2,・・・,MC
nを介して配電線PCに接続されている。本実施の形態では、進相コンデンサSC
1,SC
2,・・・,SC
nの容量は、全て等しい構成とした。
【0056】
自動力率調整器APFCは、電流計Ampおよび電圧計Volにより検出された受電点Prpにおける電圧Vrpおよび電流Irpに基づき、受電点Prpにおける無効電力(以下、「受電点無効電力」という)Qrpを算出して、当該受電点無効電力Qrpに応じて進相コンデンサSC1,SC2,・・・,SCnを順次投入および開放する制御を実行する。具体的には、自動力率調整器APFCは、算出した受電点無効電力Qrpが投入閾値Qth1、例えば、値0(Qth1=0(kvar))よりも遅れ位相になったときに、進相コンデンサSC1,SC2,・・・,SCnを選択的に順次投入するように電磁開閉器MC1,MC2,・・・,MCnにスイッチング信号を出力し、算出した受電点無効電力Qrpが開放閾値Qth2、例えば、進相コンデンサSC1,SC2,・・・,SCn一台分の容量QSC*に所定の安全率を乗じた値の逆極性のもの(例えば、Qth2=-1.2・QSC*)よりも進み位相となったときに、進相コンデンサSC1,SC2,・・・,SCnを選択的に順次開放するように電磁開閉器MC1,MC2,・・・,MCnにスイッチング信号を出力する。ここで、本実施の形態では、開放閾値Qth2として、進相コンデンサSC1,SC2,・・・,SCn一台分の容量QSC*ではなく、進相コンデンサSC1,SC2,・・・,SCn一台分の容量QSC*に所定の安全率を乗じた値を用いる構成であるため、進相コンデンサSC1,SC2,・・・,SCnのいずれかが開放された後、すぐに進相コンデンサSC1,SC2,・・・,SCnのいずれかが投入される動作を繰り返す、所謂、進相コンデンサSC1,SC2,・・・,SCnのハンチング現象を防止することができる。なお、自動力率調整器APFCは、本実施の形態では、負荷L1,L2,・・・,Lnによる無効電力(以下、「負荷無効電力」という)QLTが所定値QLT*よりも小さいとき(軽負荷時)には、進相コンデンサSC1,SC2,・・・,SCnを投入しない構成とした。これは、軽負荷時における受電点Prpにおける力率が進み過ぎとなることを防止するためである。自動力率調整器APFCは、本発明における「進相コンデンサ制御部」に対応する実施構成の一例である。また、投入閾値Qth1は、本発明における「第1電力値」および「第3電力値」に対応し、開放閾値Qth2は、本発明における「第2電力値」および「第4電力値」に対応する実施構成の一例である。さらに、進相コンデンサSC1,SC2,・・・,SCn一台分の容量は、本発明における「進相コンデンサの単機容量」に対応する実施構成の一例である。
【0057】
アクティブフィルタAFは、
図2に示すように、電流源CSと、アクティブフィルタAF全体をコントロールする制御部CUと、を備えている。アクティブフィルタAFは、空調機Acや負荷L
1,L
2,・・・,L
nから受電点Prpに流出する高調波電流を打ち消すことが可能な補償電流(当該高調波電流とは逆位相の電流)を生成して出力すると共に、受電点Prpにおける受電点無効電力Qrpを補償可能(受電点Prpにおける力率改善可能)な補償無効電力Q
AFを生成して出力する。なお、本実施の形態では、アクティブフィルタAFは、進相コンデンサSC
1,SC
2,・・・,SC
n一台分の容量Q
SC*の半分を限度とする補償無効電力Q
AFを出力する構成とした(-1/2・Q
SC*≦Q
AF≦1/2・Q
SC*)。ここで、補償無効電力Q
AFは、本発明における「第1補償無効電力」に対応する実施構成の一例である。
【0058】
電流源CSは、高調波電流の低減および受電点Prpにおける力率改善を行うための補償電流を生成して出力する。電流源CSの出力端子は、配電線PCに接続されており、生成された補償電流は配電線PCに出力される。電流源CSは、例えば、インバータ回路を用いて構成され、制御部CUからのスイッチング信号に応じてスイッチングすることにより、補償電流を生成し出力する。
【0059】
制御部CUは、CPUを中心とするマイクロプロセッサとして構成されており、CPUの他に処理プログラムを記憶するROMと、データを一時的に記憶するRAMと、図示しない入出力ポートと、を備えている。制御部CUには、電圧計Volからの電圧Vrpや、電流計Ampからの電流Irp、図示しないタイマー(例えば、制御部CU内の時刻演算機能)からの時間(補償無効電力QAFの反転を判定するための経過時間Tや、補償無効電力QAFの反転を維持するための時間TAFh)などが図示しない入力ポートを介して入力される。また、制御部CUからは、電流源CSへの制御信号、具体的には、電流源CSが有する図示しないインバータ回路のスイッチング素子の切り替えを指示するスイッチング信号などが図示しない出力ポートを介して出力されている。なお、タイマー(図示せず)は、制御部CU内の時刻演算機能ではなく、専用タイマーとしてアクティブフィルタAFが備える構成としても良いことは言うまでもない。制御部CUは、本発明における「分担率設定部」に対応する実施構成の一例である。
【0060】
次に、こうして構成された本発明の実施の形態に係る力率改善装置1の動作、特に、受電点Prpにおける力率を目標値に維持する(受電点無効電力Qrpを目標値に維持する)際の動作について説明する。
図3は、本発明の実施の形態に係る力率改善装置1の自動力率調整器APFCにより実行される進相コンデンサ制御ルーチンの一例を示すフローチャートであり、
図4は、補償無効電力出力処理の一例を示すメインフローチャートであり、
図5は、
図4のメインフローチャートから分岐したサブフローチャートである。ここで、進相コンデンサ制御ルーチンは、進相コンデンサSC
1,SC
2,・・・,SC
nを投入および開放するために自動力率調整器APFCによって実行される処理であり、補償無効電力出力処理は、補償無効電力Q
AFを出力するためにアクティブフィルタAFの制御部CUによって実行される処理であるため、進相コンデンサ制御ルーチンと補償無効電力出力処理とは、それぞれ独立して実行される。換言すれば、自動力率調整器APFCとアクティブフィルタAFとは、互いに通信等による情報のやり取りは行わない。なお、本実施の形態では、受電点Prpにおける力率の目標値の一例として、受電点Prpの力率を100%に維持する構成、即ち、受電点Prpにおける受電点無効電力Qrpを0(kvar)に維持する構成とした。また、以下説明において、受電点無効電力Qrpが遅れ位相にある場合を「正」、当該受電点無効電力Qrpが進み位相にある場合を「負」と規定する。以下、まず、進相コンデンサ制御ルーチンについて説明し、続いて、アクティブフィルタ制御ルーチンについて説明する。
【0061】
[進相コンデンサ制御ルーチン]
進相コンデンサ制御ルーチンが実行されると、
図3に示すように、自動力率調整器APFCは、まず、負荷L
1,L
2,・・・,L
nによるトータルの負荷無効電力Q
LTを読み込むと共に、受電点無効電力Qrpを算出する処理を実行する(ステップS100)。続いて、自動力率調整器APFCは、負荷無効電力Q
LTが所定値Q
LT*よりも大きいか否か、即ち、負荷L
1,L
2,・・・,L
nが軽負荷状態にあるか否かの判定を行う(ステップS102)。負荷無効電力Q
LTが所定値Q
LT*よりも大きい場合、即ち、負荷L
1,L
2,・・・,L
nが軽負荷状態でない場合、自動力率調整器APFCは、受電点無効電力Qrpが投入閾値Qth1よりも大きいか否か、即ち、受電点無効電力Qrpが投入閾値Qth1よりも遅れ位相であるか否かの判定を行う(ステップS104)。一方、負荷無効電力Q
LTが所定値Q
LT*以下である場合、即ち、負荷L
1,L
2,・・・,L
nが軽負荷状態である場合は、何もせずに本ルーチンを終了する。ここで、投入閾値Qth1は、本実施の形態では、値0(kvar)とした。
【0062】
受電点無効電力Qrpが投入閾値Qth1=0(kvar)よりも大きい場合、即ち、受電点無効電力Qrpが投入閾値Qth1=0(kvar)よりも遅れ位相である場合、自動力率調整器APFCは、受電点無効電力Qrpを投入閾値Qth1=0(kvar)にするべく、進相コンデンサSC1,SC2,・・・,SCnを順次投入する処理(ステップS106)、具体的には、電磁開閉器MC1,MC2,・・・,MCnにスイッチング信号を出力する処理を実行して、本ルーチンを終了する。
【0063】
一方、ステップS104において、受電点無効電力Qrpが投入閾値Qth1=0(kvar)以下、即ち、受電点無効電力Qrpが投入閾値Qth1=0(kvar)と等しいか、あるいは、進み位相である場合、自動力率調整器APFCは、受電点無効電力Qrpが開放閾値Qth2よりも小さいか否か、即ち、受電点無効電力Qrpが開放閾値Qth2よりも進み位相であるか否かの判定を行う(ステップS108)。そして、受電点無効電力Qrpが開放閾値Qth2よりも小さい場合、即ち、受電点無効電力Qrpが開放閾値Qth2よりも進み位相である場合(Qrp<-1.2・Qsc*)、自動力率調整器APFCは、受電点無効電力Qrpを投入閾値Qth1=0(kvar)にするべく、投入されている進相コンデンサSC1,SC2,・・・,SCnを開放する処理(ステップS110)、具体的には、電磁開閉器MC1,MC2,・・・,MCnの一つにスイッチング信号を出力する処理を実行して、本ルーチンを終了する。一方、ステップS108において、受電点無効電力Qrpが開放閾値Qth2より大きい場合、即ち、受電点無効電力Qrpが開放閾値Qth2よりも遅れ位相である場合には、何もせずに本ルーチンを終了する。
【0064】
[アクティブフィルタ制御ルーチン]
アクティブフィルタ制御ルーチンが実行されると、
図4に示すように、制御部CUのCPUは、まず、受電点無効電力Qrpを算出すると共に(ステップS200)、当該算出された受電点無効電力Qrpに基づき、補償無効電力Q
AFを算出する処理を実行する(ステップS202)。ここで、受電点無効電力Qrpは、電圧Vrpから検出した位相と電流Irpとに基づいて算出される。なお、本実施の形態では、受電点Prpにおける力率を100%に維持する構成、即ち、受電点無効電力Qrpを値0(kvar)に維持する構成としたため、補償無効電力Q
AFは、受電点無効電力Qrpと大きさが同じで逆位相となる(Q
AF=-Qrp)。
【0065】
続いて、制御部CUのCPUは、算出した補償無効電力Q
AFが出力制限値以内であるか否かの判定を行う処理を実行する(ステップS204)。補償無効電力Q
AFが出力制限値以内であるか否かの判定は、本実施の形態では、算出した補償無効電力Q
AFと、進相コンデンサSC
1,SC
2,・・・,SC
n一台分の容量Q
SC*の半分と、を比較することにより行う構成とした。算出した補償無効電力Q
AFが出力制限値以内、即ち、算出した補償無効電力Q
AFが進相コンデンサSC
1,SC
2,・・・,SC
n一台分の容量Q
SC*の半分以内であれば(-1/2・Q
SC*≦Q
AF≦1/2・Q
SC*)、算出した補償無効電力Q
AFを出力するように電流源CSにスイッチング信号を出力する(ステップS206)。一方、算出した補償無効電力Q
AFが出力制限値を超えている、即ち、算出した補償無効電力Q
AFが進相コンデンサSC
1,SC
2,・・・,SC
n一台分の容量Q
SC*の半分を超えていれば(Q
AF<-1/2・Q
SC*、または、Q
AF>1/2・Q
SC*)、
図5に示すように、算出した補償無効電力Q
AFが負(進み位相)であるか否かの判定行い(ステップS208)、当該補償無効電力Q
AFが負(進み位相)であれば(Q
AF<0)、補償無効電力Q
AFを「-1/2・Q
SC*」に設定し(ステップS210)、当該補償無効電力Q
AFが正(遅れ位相)であれば(Q
AF>0)、補償無効電力Q
AFを「1/2・Q
SC*」に設定して(ステップS212)、設定した補償無効電力Q
AFを出力するように電流源CSにスイッチング信号を出力する(ステップS206)。このように、本実施の形態では、補償無効電力Q
AFを進相コンデンサSC
1,SC
2,・・・,SC
n一台分の容量Q
SC*の半分以内に制限するため、アクティブフィルタAFから出力する補償無効電力Q
AFの最適化を図ることができると共に、アクティブフィルタAFの大型化を抑制することができる。ここで、補償無効電力Q
AFは、本発明における「第1補償無効電力」に対応する実施構成の一例である。
【0066】
次に、
図4に戻って、制御部CUのCPUは、補償無効電力Q
AFを反転するか否かの判定を行う処理を実行する(ステップS214)。補償無効電力Q
AFを反転するか否かの判定は、本実施の形態では、受電点無効電力Qrpと補償無効電力Q
AFを2倍した値との差(Qrp-2・Q
AFn、以下、「電力差」という)と、開放閾値Qth2(-1.2・Q
SC*)と、を比較することにより行う構成とした。具体的には、電力差が開放閾値Qth2(-1.2・Q
SC*)よりも小さい(Qrp-2・Q
AF<-1.2・Q
SC*)、即ち、電力差が開放閾値Qth2(-1.2・Q
SC*)よりも進み位相であれば、補償無効電力Q
AFを反転すると判定し、電力差が開放閾値Qth2(-1.2・Q
SC*)以上(Qrp-2・Q
AF≧-1.2・Q
SC*)、即ち、電力差が開放閾値Qth2(-1.2・Q
SC*)と同値あるいは開放閾値Qth2(-1.2・Q
SC*)よりも遅れ位相であれば、補償無効電力Q
AFを反転しないと判定する。換言すれば、制御部CUのCPUは、補償無効電力Q
AFを反転させると、受電点無効電力Qrpが開放閾値Qth2(-1.2・Q
SC*)よりも進み位相となる場合にのみ、補償無効電力Q
AFを反転すると言うことができる。
【0067】
ステップS214において、補償無効電力QAFを反転すると判定した場合、制御部CUのCPUは、補償無効電力反転フラグfが値0であるか否かの判定を行う処理を実行する(ステップS216)。ここで、補償無効電力反転フラグfは、補償無効電力QAFが反転されているか否かの判定に用いられるものであり、補償無効電力QAFが反転されていないときに値0が設定され、補償無効電力QAFが反転されているときに値1が設定される。
【0068】
補償無効電力反転フラグfが値0のとき、即ち、補償無効電力QAFが反転されていないときには、補償無効電力反転フラグfを値1に設定すると共に(ステップS218)、補償無効電力QAFを反転してからの経過時間Tを読み込む処理を実行する(ステップS220)。一方、補償無効電力反転フラグfが値1のとき、即ち、補償無効電力QAFが既に反転されているときには、補償無効電力QAFを反転してからの経過時間Tを読み込む処理を実行する(ステップS220)。
【0069】
そして、制御部CUのCPUは、経過時間Tと閾値TAFdとの比較を行う処理を実行する(ステップS222)。ここで、閾値TAFdは、電力差が開放閾値Qth2(-1.2QSC*)よりも進み位相である状態が安定して継続しているか否かの判断を行うために設定されるものであり、例えば、30秒などのように設定される。このように、本実施の形態では、電力差が開放閾値Qth2(-1.2QSC*)よりも進み位相である状態が閾値TAFd以上継続した場合にのみ補償無効電力QAFを反転する構成であるため、補償無効電力QAFの反転が繰り返し発生する、補償無効電力QAFのハンチング現象を防止することができる。
【0070】
ステップS222において、経過時間Tが閾値TAFd以上である場合は、制御部CUのCPUは、補償無効電力QAFを-QAFに置き換えると共に(ステップS224)、置き換えた補償無効電力QAF(-QAF)を出力するように、電流源CSに出力指示する(ステップS226)。即ち、経過時間Tが閾値TAFd以上である場合は、制御部CUのCPUは、補償無効電力QAFと同じ大きさで逆位相の補償無効電力QAF(-QAF)を出力するように、電流源CSに出力指示する。一方、ステップS222において、経過時間Tが閾値TAFd未満である場合は、経過時間Tが閾値TAFd以上となるまで、ステップS214~ステップS222の処理を繰り返し実行する。ここで、閾値TAFdは、本発明における「第2所定時間」に対応し、置き換えた補償無効電力QAF(-QAF)は、本発明における「第2補償無効電力」に対応する実施構成の一例である。
【0071】
続いて、制御部CUのCPUは、反転維持時間TAFhを読み込む処理を実行すると共に(ステップS228)、反転維持時間TAFhと閾値TAFh*とを比較する処理を実行する(ステップS230)。ここで、反転維持時間TAFhは、進相コンデンサSC1,SC2,・・・,SCnの開放指示がなされてから(電磁開閉器MC1,MC2,・・・,MCnにスイッチング信号が出力されてから)、進相コンデンサSC1,SC2,・・・,SCnの開放が確実に完了するまでの時間として設定されるものであり、例えば、2分などのように設定することができる。このように、本実施の形態では、反転した補償無効電力QAF(-QAF)の出力を反転維持時間TAFh維持する構成であるため、進相コンデンサSC1,SC2,・・・,SCnを確実に開放することができる。閾値TAFh*は、本発明における「第1所定時間」に対応する実施構成の一例である。
【0072】
ステップS230において、反転維持時間TAFhが閾値TAFh*以上である場合には、経過時間Tおよび反転維持時間TAFhを値0にリセットすると共に(ステップS232)、補償無効電力反転フラグfを値0にリセットして(ステップS234)、本ルーチンを終了する。
【0073】
なお、ステップS214において、補償無効電力QAFを反転しないと判定した場合、即ち、電力差が開放閾値Qth2(-1.2・QSC*)と同値あるいは開放閾値Qth2(-1.2・QSC*)よりも遅れ位相である場合(Qrp-2・QAFn≧-1.2・QSC*)には、制御部CUのCPUは、補償無効電力反転フラグfが値1であるか否かの判定、即ち、補償無効電力QAFが反転されているか否かの判定を行う処理を実行し(ステップS236)、補償無効電力反転フラグfが値1であるとき、即ち、補償無効電力QAFが既に反転されているときには、補償無効電力反転フラグfを値0にリセットして(ステップS234)、本ルーチンを終了する。一方、補償無効電力反転フラグfが値1でないとき、即ち、補償無効電力QAFが反転されていないときには、何もせずに、本ルーチンを終了する。
【0074】
図6は、実施例1の力率改善装置1を作動させた際の、負荷無効電力Q
LTと、アクティブフィルタAFから出力される補償無効電力Q
AFと、進相コンデンサSC
1,SC
2,・・・,SC
nによる補償無効電力Q
SCと、受電点無効電力Qrpの時間変化を示す説明図である。電力需要家による負荷L
1,L
2,・・・,L
nの使用に起因して、負荷無効電力Q
LTが増加する(遅れ位相となる)。これに伴って、受電点無効電力Qrpは、遅れ位相になる。しかしながら、実施例1の力率改善装置1では、当該受電点無効電力Qrpと大きさが同じで逆位相(進み位相)の補償無効電力Q
AFが、アクティブフィルタAFから出力されるため(ステップS202,S206)、受電点無効電力Qrpは0(kvar)に維持される。なお、負荷無効電力Q
LTが所定値Q
LT*以下である時間t1までは、進相コンデンサSC
1,SC
2,・・・,SC
nは投入されない(ステップS102)。
【0075】
ここで、補償無効電力QAFは、進相コンデンサSC1,SC2,・・・,SCn一台分の容量QSC*の半分に制限されるため(ステップS204,S208,S210,S212)、負荷無効電力QLTが増加し続けると、補償無効電力QAFのみでは受電点無効電力Qrpを0(kvar)に維持できなくなり、受電点無効電力Qrpが遅れ位相になる(Qrp>0)。このとき、負荷無効電力QLTが所定値QLT*を超えていれば(ステップS102,S104)、進相コンデンサSC1,SC2,・・・,SCnが投入される(ステップS106、補償無効電力QSCは、進み位相)。これにより、受電点無効電力Qrpが進み位相になろうとするが、当該受電点無効電力Qrpと大きさが同じで逆位相(遅れ位相)の補償無効電力QAFが、アクティブフィルタAFから出力されるため(ステップS206)、受電点無効電力Qrpは0(kvar)に維持される。
【0076】
このように、負荷無効電力QLTが増加する際には、アクティブフィルタAFから出力される補償無効電力QAFによって、受電点無効電力Qrpを0(kvar)に維持しながら、補償無効電力QAFのみでは受電点無効電力Qrpを0(kvar)に維持できなくなり、受電点無効電力Qrpが遅れ位相になるときに(Qrp>0)、進相コンデンサSC1,SC2,・・・,SCnを投入し、進相コンデンサSC1,SC2,・・・,SCnの投入によって、受電点無効電力Qrpが進み位相になるのをアクティブフィルタAFからの補償無効電力QAFによって、受電点無効電力Qrpを0(kvar)に維持するとう動作を繰り返す。
【0077】
一方、負荷無効電力QLTが減少し始めてから時間t2になると、アクティブフィルタAFから出力される補償無効電力QAF(遅れ位相)では、受電点無効電力Qrpを0(kvar)に維持できなくなり、受電点無効電力Qrpが進み位相になる。ここで、進相コンデンサSC1,SC2,・・・,SCnは、受電点無効電力Qrpが開放閾値Qth2=-1.2・QSC*になるまでは開放されないため、従来では、受電点無効電力Qrpが進み位相になる状態が、当該受電点無効電力Qrpが開放閾値Qth2=-1.2・QSC*になるまで継続するという不都合が生じていた。しかしながら、実施例1の力率改善装置1では、アクティブフィルタAFから出力される補償無効電力QAF(遅れ位相)を反転(-QAF、進み位相に)するとの判定が時間TAFd継続した時間t3において(受電点無効電力Qrpが開放閾値Qth2=-1.2・QSC*よりも小さい、即ち、受電点無効電力Qrpが開放閾値Qth2よりも進み位相となる状態が時間TAFd継続した時間t3において)、遅れ位相の補償無効電力QAFを反転(進み位相に)する。これにより、受電点無効電力Qrpが開放閾値Qth2=-1.2・QSC*よりも小さくなる。そして、受電点無効電力Qrpが開放閾値Qth2=-1.2・QSC*よりも小さい状態が時間TAFh継続した時間t4において、進相コンデンサSC1,SC2,・・・,SCnが開放される(ステップS108、S110)。これにより、受電点無効電力Qrpは、開放閾値Qth2=-1.2・QSC*よりも遅れ位相となる。これに応じて、アクティブフィルタAFから出力される補償無効電力QAFも変更されて、受電点無効電力Qrpが0(kvar)に維持される。このように、負荷無効電力QLTが減少する際には、アクティブフィルタAFから出力される補償無効電力QAFを反転させて、進相コンデンサSC1,SC2,・・・,SCnを積極的に開放して、アクティブフィルタAFから出力される補償無効電力QAFによって、受電点無効電力Qrpが0(kvar)に維持可能な状態とする動作を繰り返す。
【0078】
以上説明した実施例1の力率改善装置1によれば、負荷無効電力QLTが増加して、受電点無効電力Qrpが投入閾値Qth1(値0(kvar))よりも遅れ位相になると、進相コンデンサSC1,SC2,・・・,SCnを投入すると共に、投入された進相コンデンサSC1,SC2,・・・,SCnで補正しきれなかった残りの負荷無効電力QLTを、補償無効電力QAFとしてアクティブフィルタAFから出力するため、負荷無効電力QLTが増加した場合の受電点Prpにおける力率を改善することができる。一方、負荷無効電力QLTが減少して、電力差が開放閾値Qth2(-1.2QSC*)よりも進み位相である状態が閾値TAFd以上継続した場合には、補償無効電力QAFを反転する、即ち、現在出力している補償無効電力QAFと同じ大きさ,かつ,逆位相の補償無効電力QAF(-QAF)を出力して、進相コンデンサSC1,SC2,・・・,SCnを開放可能な大きさまで受電点無効電力Qrpを進み位相にする。換言すれば、負荷無効電力QLTが減少して、電力差が開放閾値Qth2(-1.2QSC*)よりも進み位相である状態が閾値TAFd以上継続した場合に、補償無効電力QAFを反転して、進相コンデンサSC1,SC2,・・・,SCnを積極的に開放する。これにより、アクティブフィルタAFの容量を増大することなく、進相コンデンサSC1,SC2,・・・,SCnが開放されるまで受電点無効電力Qrp率が進み位相に維持されるという不都合を回避することができる。この結果、負荷無効電力QLTが減少した場合においても、受電点Prpにおける力率を改善することができる。なお、現在出力している補償無効電力QAFと同じ大きさ,かつ,逆位相の補償無効電力QAF(-QAF)を反転維持時間TAFh継続して出力するため、進相コンデンサSC1,SC2,・・・,SCnを確実に開放することができる。もとより、反転維持時間TAFh経過後には、受電点無効電力Qrpが目標値である値0(kvar)となるように、アクティブフィルタAFが補償無効電力QAFを出力するため、進相コンデンサSC1,SC2,・・・,SCnが強制的に開放されることによって受電点無効電力Qrpが遅れ位相となることを防止することができる。また、電力差が開放閾値Qth2(-1.2QSC*)よりも進み位相である状態が閾値TAFd以上継続した場合にのみ、補償無効電力QAFを反転する構成であるため、一時的に受電点無効電力Qrpが進み位相かつ進相コンデンサSC1,SC2,・・・,SCnを開放可能な大きさとなった場合に、補償無効電力QAFが反転されること、即ち、補償無効電力QAFのハンチング現象を防止することができるため、進相コンデンサSC1,SC2,・・・,SCnが開放された後、すぐに進相コンデンサSC1,SC2,・・・,SCnが投入される動作を繰り返す、所謂、進相コンデンサSC1,SC2,・・・,SCnのハンチング現象を防止することができる。この結果、装置の動作の安定化を図ることができる。さらに、アクティブフィルタAFは、補償無効電力QAFとして、進相コンデンサSC1,SC2,・・・,SCn一台分の容量QSC*の半分を限度として出力する構成であるため、アクティブフィルタAFから出力する補償無効電力QAFの最適化と、アクティブフィルタAFの大型化抑制と、の両立を図ることができる。
次に、こうして構成された実施例2の力率改善装置100の動作、特に、受電点Prpにおける力率を目標値に維持する(受電点無効電力Qrpを目標値に維持する)際の動作について説明する。なお、進相コンデンサ制御ルーチンについては、実施例1の力率改善装置1と同様であるため、その詳細な説明は省略する。