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特開2024-119083HMGB1の免疫学的測定時にHMGB2の測りこみを抑制する方法及びHMGB1を特異的に測定する免疫学的測定方法及びHMGB1を特異的に測定する免疫学的測定試薬
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024119083
(43)【公開日】2024-09-03
(54)【発明の名称】HMGB1の免疫学的測定時にHMGB2の測りこみを抑制する方法及びHMGB1を特異的に測定する免疫学的測定方法及びHMGB1を特異的に測定する免疫学的測定試薬
(51)【国際特許分類】
   G01N 33/53 20060101AFI20240827BHJP
【FI】
G01N33/53 D
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023025707
(22)【出願日】2023-02-22
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.TWEEN
(71)【出願人】
【識別番号】000131474
【氏名又は名称】株式会社シノテスト
(72)【発明者】
【氏名】小野 幸恵
(57)【要約】
【課題】HMGB2の測り込みを抑制しHMGB1を測定する方法及びHMGB2の測り込みを抑制したHMGB1測定試薬を提供する。
【解決手段】試料に含まれるHMGB1を抗HMGB1抗体との抗原抗体反応を利用して測定を行う免疫学的測定方法及び免疫学的測定試薬において、試料に含まれていたHMGB1と抗HMGB1抗体との抗原抗体反応時にホウ素及びその化合物からなる群から選ばれる少なくとも1種の化合物を共存させることを特徴とするものである。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
試料に含まれるHMGB1を抗HMGB1抗体との抗原抗体反応を利用して測定を行う免疫学的測定方法において、試料に含まれていたHMGB1と抗HMGB1抗体との抗原抗体反応時にホウ素及びその化合物からなる群から選ばれる少なくとも1種の化合物を共存させることを特徴とする、HMGB2の測り込みを抑制しHMGB1を測定する方法。
【請求項2】
ホウ素及びその化合物が、ホウ酸若しくはその塩又はホウ酸の無水物である請求項1記載のHMGB2の測り込みを抑制しHMGB1を測定する方法。
【請求項3】
試料に含まれるHMGB1を抗HMGB1抗体との抗原抗体反応を利用して測定を行う免疫学的測定方法において、試料に含まれていたHMGB1と抗HMGB1抗体との抗原抗体反応時にホウ素及びその化合物からなる群から選ばれる少なくとも1種の化合物を共存させることを特徴とする、HMGB1を測定する方法。
【請求項4】
ホウ素及びその化合物が、ホウ酸若しくはその塩又はホウ酸の無水物である請求項3記載のHMGB1を測定する方法。
【請求項5】
試料に含まれるHMGB1を抗HMGB1抗体との抗原抗体反応を利用して測定を行うための免疫学的測定試薬において、ホウ素及びその化合物からなる群から選ばれる少なくとも1種の化合物を含有させることを特徴とする、HMGB1測定試薬。
【請求項6】
ホウ素及びその化合物が、ホウ酸若しくはその塩又はホウ酸の無水物である請求項5記載のHMGB1測定試薬。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、敗血症等の疾患のマーカーとなりうる試料中のHMGB1(ハイモビリティーグループプロテイン-1;High Mobility Group Protein-1;HMG-1)の免疫学的測定方法及び免疫学的測定試薬並びにHMGB2の測り込みを抑制しHMGB1を測定する方法に関するものである。
本発明は、臨床検査、臨床病理学及び医学などの生命科学分野等において有用なものである。
【背景技術】
【0002】
ハイモビリティーグループプロテイン(High Mobility Group Protein)は、クロマチン構造に含まれる大量の非ヒストンタンパク質として1964年に発見され、すべての高等動植物に普遍的に含まれるタンパク質であり、種族間で一次構造の保存性は極めて高い。
また、核内ばかりではなく、細胞質内にも豊富に存在することが分かっている。
生理作用ははっきりとは分かっていないが、HMGB1はDNAと結合する際に二重螺旋構造を緩めることから、転写反応の際にDNAの高次構造を最適構造に変化させて転写活性を高めるという、極めて広範囲の転写促進因子及びヌクレオソーム弛緩因子として機能すると考えられている。
【0003】
ハイモビリティーグループプロテインには、いくつかの種類が存在する。例えば、ハイモビリティーグループプロテイン-1(HMGB1)、ハイモビリティーグループプロテイン-2(HMGB2)、ハイモビリティーグループプロテイン-3(HMGB3)、ハイモビリティーグループプロテイン-8(HMGB8)、ハイモビリティーグループプロテイン-17(HMGB17)、ハイモビリティーグループプロテイン-I(HMGBI)、ハイモビリティーグループプロテイン-Y(HMGBY)、ハイモビリティーグループプロテイン-I(Y)(HMGBI(Y))、ハイモビリティーグループプロテイン I-C(HMGB I-C)等を挙げることができる。
【0004】
ワングらは1999年に、HMGB1自体を免疫原として調製したポリクローナル抗体を使用したウエスタンブロット法により、初めて血清中(血液中)のHMGB1の定量測定を行った。
その結果、ワングらは、HMGB1が敗血症のマーカーとなりうることを示した。
そして、敗血症の患者において、生き残る患者と、死に至る患者を判別することが、精密に血液中のHMGB1を測定することによって可能であることを示した。
【0005】
即ち、ただ単に血液中でのHMGB1の存在を確認するだけではなく、精密に定量することの有用性が明らかにされた(非特許文献1参照)。
【0006】
なお、先に、HMGB1の測定に用いる抗体、即ちHMGB1に特異的に結合する抗体(抗HMGB1抗体)については、パーキネンらや、レップらによって調製可能なことが示されていた(非特許文献2、非特許文献3参照。)。
この抗体を用いてレップらはHMGB1に関して固相酵素免疫測定法(Solid-phase Enzyme Immunoassay)が可能であることを述べている。(なお、この固相酵素免疫測定法は、精製したHMGB1をマイクロプレート(マイクロタイタープレート)のウェルに固相化し、これに酵素標識したHMGB1に結合する抗体を接触させ、作用させて、HMGB1に結合する抗体が精製したHMGB1に結合することを確かめたものである。)
また、ルーヒアイネンらは2000年に、遺伝子工学によって組換えDNAより調製したラットのHMGB1自体を免疫原として調製したポリクローナル抗体と、HMGB1のアミノ酸配列の一部「Lys Phe Lys Asp Pro Asn Ala Pro Lys Arg Pro Pro Ser Ala」よりなるペプチドを免疫原として調製したポリクローナル抗体を各々使用して、ELISA法のサンドイッチ法により、ヒト血液中のHMGB1を測定した(非特許文献4参照)。
【0007】
また、本願出願人は、HMGB1には結合するがHMGB2には結合しない抗体、並びにこの抗体を用いるHMGB2は測定せずHMGB1のみを測定するHMGB1の測定方法及び測定試薬を開示した(特許文献1。)。
【0008】
更に、本願出願人は、陽イオン及び陰イオンを各々、それぞれのモル濃度にイオンの価数の絶対値を乗じた値が150mM以上となるような濃度で共存させることを特徴とする、試料中に含まれるHMGB1及び/又はHMGB2の測定方法及び測定試薬を開示した(特許文献2。)。
この測定方法及び測定試薬により測定の感度を高めることができるものである。
【0009】
更に、本願出願人は、ヒトHMGB1の次式(I):Lys Pro Asp Ala Ala Lys Lys Gly Val Val Lys Ala Glu Lys Ser(I)で表されるアミノ酸配列に特異的に結合する鳥類由来の抗体よりなる、鳥類由来抗ヒトHMGB1ポリクローナル抗体等を開示した(特許文献3。)。
この鳥類由来抗ヒトHMGB1ポリクローナル抗体は、ヒトHMGB1との結合能力が高い高力価の抗体を高い確率で取得し得る、その生産性が高いものである。
【0010】
しかしながら、この鳥類由来抗ヒトHMGB1ポリクローナル抗体は高力価のため測定の感度は高いものの、ポリクローナル抗体のため、測定の特異性は低いものであった。
【0011】
更に、本願出願人は、抗HMGB1抗体を固定化した担体を用いる試料中のHMGB1の測定方法及び測定試薬において、受託番号がNITE P-02843であるハイブリドーマ181208 2H6株より産生される抗HMGB1モノクローナル抗体と受託番号がNITE P-02842であるハイブリドーマ181212 2D4株より産生される抗HMGB1モノクローナル抗体とを同じ担体に固定化したことを特徴とする、試料中のHMGB1の測定方法及び測定試薬を開示した(特許文献4。)。
この測定方法及び測定試薬より、多量のシグナルを得ることができ、試料中のHMGB1を高感度に測定を行えるものであり、その結果として、再現性よく、そして、低濃度域も正確に測定することができるものである。
【0012】
なお、本願出願人が、遺伝情報処理ソフトウェア「GENETYX」(Software Development社)を使用してアミノ酸配列の相同性の解析を行ったところ、ヒトのHMG1に対して、ヒトのHMGB2の相同性は81.2%であった。
【0013】
このように、HMGB1とHMGB2のアミノ酸配列の相同性は高いので、HMGB1又はその一部を免疫源として抗HMGB1抗体を作成し、試料に含まれるHMGB1を抗HMGB1抗体との抗原抗体反応を利用して測定を行う免疫学的測定方法及び免疫学的測定試薬においては、試料に含まれるHMGB1のみならず、試料に含まれるHMGB2も測り込んでしまうものであった。
すなわち、試料に含まれるHMGB1を抗HMGB1抗体との抗原抗体反応を利用して測定を行う免疫学的測定方法及び免疫学的測定試薬においては、試料に含まれるHMGB2も測り込んでしまうものであったため、その測定値には正の誤差が生じるものであった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0014】
【特許文献1】特開2003-96099号公報
【特許文献2】特開2004-144728号公報
【特許文献3】WO2008/075788号公報
【特許文献4】特開2020-148557号公報
【非特許文献】
【0015】
【非特許文献1】H.Wangら,SCIENCE,285巻,9号,248~251頁,1999年発行
【非特許文献2】J.Parkkinenら,The Journal of Biological Chemistry,268巻,26号,19726~19738頁,1993年発行
【非特許文献3】W.A.Leppら,Journal of Immunoassay,10巻,4号,449~465頁,1989年発行
【非特許文献4】A.Rouhiainenら,Thromb Haemost,84巻,1087~1094頁,2000年発行
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
前述のとおり、HMGB1とHMGB2のアミノ酸配列の相同性は高いため、HMGB1又はその一部を免疫源として抗HMGB1抗体を作成し、試料に含まれるHMGB1を抗HMGB1抗体との抗原抗体反応を利用して測定を行う免疫学的測定方法及び免疫学的測定試薬においては、試料に含まれるHMGB1のみならず、試料に含まれるHMGB2も測り込んでしまうものであった。
これに対して、本発明の課題は、HMGB2の測り込みを抑制しHMGB1を測定する方法及びHMGB2の測り込みを抑制したHMGB1測定試薬を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0017】
本発明者らは、HMGB2の測り込みを抑制しHMGB1を測定する方法及びHMGB2の測り込みを抑制したHMGB1測定試薬について検討を重ねたところ、試料に含まれていたHMGB1と抗HMGB1抗体との抗原抗体反応時にホウ素及びその化合物からなる群から選ばれる少なくとも1種の化合物を共存させることにより、上記課題を解決できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0018】
すなわち、本発明は、以下の発明よりなる。
(1) 試料に含まれるHMGB1を抗HMGB1抗体との抗原抗体反応を利用して測定を行う免疫学的測定方法において、試料に含まれていたHMGB1と抗HMGB1抗体との抗原抗体反応時にホウ素及びその化合物からなる群から選ばれる少なくとも1種の化合物を共存させることを特徴とする、HMGB2の測り込みを抑制しHMGB1を測定する方法。
(2) ホウ素及びその化合物が、ホウ酸若しくはその塩又はホウ酸の無水物である前記(1)記載のHMGB2の測り込みを抑制しHMGB1を測定する方法。
(3) 試料に含まれるHMGB1を抗HMGB1抗体との抗原抗体反応を利用して測定を行う免疫学的測定方法において、試料に含まれていたHMGB1と抗HMGB1抗体との抗原抗体反応時にホウ素及びその化合物からなる群から選ばれる少なくとも1種の化合物を共存させることを特徴とする、HMGB1を測定する方法。
(4) ホウ素及びその化合物が、ホウ酸若しくはその塩又はホウ酸の無水物である前記(3)記載のHMGB1を測定する方法。
(5) 試料に含まれるHMGB1を抗HMGB1抗体との抗原抗体反応を利用して測定を行うための免疫学的測定試薬において、ホウ素及びその化合物からなる群から選ばれる少なくとも1種の化合物を含有させることを特徴とする、HMGB1測定試薬。
(6) ホウ素及びその化合物が、ホウ酸若しくはその塩又はホウ酸の無水物である前記(5)記載のHMGB1測定試薬。
【発明の効果】
【0019】
本発明のHMGB2の測り込みを抑制しHMGB1を測定する方法は、試料に含まれるHMGB2の測り込みを抑制することができ、HMGB1の測定値に正の誤差が生じるのを低減することができる方法である。
【0020】
本発明のHMGB1を測定する方法は、試料に含まれるHMGB2の測り込みを抑制することができ、HMGB1の測定値に正の誤差が生じるのを低減することができる方法である。
【0021】
本発明のHMGB1測定試薬は、試料に含まれるHMGB2の測り込みを抑制することができ、HMGB1の測定値に正の誤差が生じるのを低減することができる測定試薬である。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】試料に含まれていたHMGB1と抗HMGB1抗体との抗原抗体反応時に各種化合物をそれぞれ共存させた場合のHMGB2測り込み(%)を各々示した図である。
【0023】
図2】試料に含まれていたHMGB1と抗HMGB1抗体との抗原抗体反応時に各種濃度のホウ酸をそれぞれ共存させた場合のHMGB2測り込み(%)を各々示した図である。
【0024】
図3】試料に含まれていたHMGB1と抗HMGB1抗体との抗原抗体反応時に各種のホウ素及びその化合物をそれぞれ共存させた場合のHMGB2測り込み(%)を各々示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明を詳細に説明する。
【0026】
〔1〕 HMGB2の測り込みを抑制しHMGB1を測定する方法
(1) 総論
本発明における「HMGB2の測り込みを抑制しHMGB1を測定する方法」は、「試料に含まれるHMGB1を抗HMGB1抗体との抗原抗体反応を利用して測定を行う免疫学的測定方法において、試料に含まれていたHMGB1と抗HMGB1抗体との抗原抗体反応時にホウ素及びその化合物からなる群から選ばれる少なくとも1種の化合物を共存させることを特徴とする、HMGB2の測り込みを抑制しHMGB1を測定する方法」である。
【0027】
前記の本発明は、その技術的構成より、試料に含まれるHMGB2の測り込みを抑制することができ、HMGB1の測定値に正の誤差が生じるのを低減することができる方法である。
【0028】
(2) ホウ素及びその化合物
本発明においては、試料に含まれるHMGB1を抗HMGB1抗体との抗原抗体反応を利用して測定を行う免疫学的測定方法において、試料に含まれていたHMGB1と抗HMGB1抗体との抗原抗体反応時に「ホウ素及びその化合物」からなる群から選ばれる少なくとも1種の化合物を共存させることを特徴とするものである。
【0029】
「ホウ素及びその化合物」としては、特に限定はないが、例えば、ホウ酸若しくはその塩又はホウ酸の無水物等を挙げることができる。
【0030】
ホウ酸の塩としては、特に限定はないが、例えば、メタホウ酸ナトリウム四水和物、ホウ酸アンモニウム、八ホウ酸二ナトリウム四水和物、又はポリホウ酸ナトリウム等を挙げることができる。
【0031】
ホウ酸の無水物としては、特に限定はないが、例えば、三酸化二ホウ素(無水ホウ酸)等を挙げることができる。
【0032】
「試料に含まれていたHMGB1と抗HMGB1抗体との抗原抗体反応時にホウ素及びその化合物からなる群から選ばれる少なくとも1種の化合物を共存させる」際の「ホウ素及びその化合物からなる群から選ばれる少なくとも1種の化合物」の濃度の下限値としては、42.4mM以上が好ましく、71.7mM以上がより好ましく、そして130.4mM以上が特に好ましい。
【0033】
「試料に含まれていたHMGB1と抗HMGB1抗体との抗原抗体反応時にホウ素及びその化合物からなる群から選ばれる少なくとも1種の化合物を共存させる」際の「ホウ素及びその化合物からなる群から選ばれる少なくとも1種の化合物」の濃度の上限値としては、特に限定はないが、516.4mM[溶解度から算出したホウ酸溶解量上限値]以下が好ましく、高濃度共存させるとコストもかかるので、260.8mM以下がより好ましい。
【0034】
「試料に含まれていたHMGB1と抗HMGB1抗体との抗原抗体反応時にホウ素及びその化合物からなる群から選ばれる少なくとも1種の化合物を共存させる」際の「ホウ素及びその化合物からなる群から選ばれる少なくとも1種の化合物」の濃度域としては、それぞれ次の濃度域を好ましい濃度域として挙げることができる。
【0035】
42.4mM~516.4mM、42.4mM~260.8mM、71.7mM~516.4mM、71.7mM~260.8mM、130.4mM~516.4mM、又は130.4mM~260.8mM。
【0036】
(3) 免疫学的測定方法
本発明における免疫学的測定方法としては、試料に含まれるHMGB1を抗HMGB1抗体との抗原抗体反応を利用して測定を行うものであれば特に限定はないが、例えば、酵素免疫測定法(ELISA、EIA)、蛍光免疫測定法(FIA)、放射免疫測定法(RIA)、発光免疫測定法(LIA)、化学発光酵素免疫測定法、酵素抗体法、蛍光抗体法、イムノクロマトグラフィー法、ラテックス比濁法、ラテックス凝集反応測定法、赤血球凝集反応法、及び粒子凝集反応法等を挙げることができる。
【0037】
そして、前記の免疫学的測定方法においては、サンドイッチ法、競合法又は均一系法(ホモジニアス系法)等のいずれの手法においても、本発明の測定方法を適用することができる。
また、本発明の測定方法における測定は、用手法により行ってもよいし、又は分析装置等の装置を用いて行ってもよい。
【0038】
(4) 抗HMGB1抗体
本発明における抗HMGB1抗体は、ポリクローナル抗体、ポリクローナル抗体よりなる抗血清又はモノクローナル抗体のいずれのタイプのものであってもよく、また、これらの抗体のフラグメント(Fab、F(ab’)2又はFab’等)又は一本鎖抗体(scFv)であってもよい。
なお、本発明における抗HMGB1抗体は、モノクローナル抗体であることが、その調製操作において吸収操作などを省略できること等から好ましい。
【0039】
本発明における抗HMGB1抗体の調製方法について、以下詳述する。
【0040】
[1] 免疫原
抗HMGB1抗体を調製する際の免疫原であるが、HMGB1のアミノ酸配列の全部又は一部を含むタンパク質又はペプチドを免疫原として用いることができる。
【0041】
なお、この抗HMGB1抗体を産生させるための免疫原は、HMGB1のアミノ酸配列の全部又は一部のアミノ酸配列に1ないし数個(通常1~8個、好ましくは1~6個、より好ましくは1~4個、特に好ましくは1~2個)のアミノ酸残基の欠失、置換、挿入、付加若しくは修飾を施すことにより得られるアミノ酸配列を含むペプチド又はタンパク質等であってもよい。
【0042】
また、抗体は、3個のアミノ酸からなるアミノ酸配列を認識できるとの報告(F.Hudeczら,J.Immunol.Methods,147巻,201~210頁,1992年発行)がある。
【0043】
よって、本発明における抗HMGB1抗体の免疫原のアミノ酸配列の最小単位としては、HMGB1のアミノ酸配列の全部若しくは一部のアミノ酸配列、又はこれらのアミノ酸配列の全部若しくは一部のアミノ酸配列に1ないし数個(通常1~8個、好ましくは1~6個、より好ましくは1~4個、特に好ましくは1~2個)のアミノ酸残基の欠失、置換、挿入、付加若しくは修飾を施すことにより得られるアミノ酸配列の内、連続する3つのアミノ酸残基よりなるアミノ酸配列を考えることができるので、これらの連続する3つのアミノ酸残基よりなるアミノ酸配列よりなるトリペプチド、又はこれに他のアミノ酸若しくはペプチドが付加したもの等を、本発明における抗HMGB1抗体の免疫原の最小単位として考えることができる。
【0044】
前記の免疫原としての、HMGB1のアミノ酸配列の全部若しくは一部のアミノ酸配列を含むペプチド又はタンパク質等、又はHMGB1のアミノ酸配列の全部若しくは一部のアミノ酸配列に1ないし数個(通常1~8個、好ましくは1~6個、より好ましくは1~4個、特に好ましくは1~2個)のアミノ酸残基の欠失、置換、挿入、付加若しくは修飾を施すことにより得られるアミノ酸配列を含むペプチド又はタンパク質等は、ヒトの体液、細胞、組織若しくは臓器等より、公知の方法等により抽出、精製等して、取得することができる。
なお、本発明において、HMGB1のアミノ酸配列の全部若しくは一部のアミノ酸配列を含むペプチド又はタンパク質を取得する方法としては特に限定はなく、如何なる方法によるものでもよく、例えば、公知の方法により取得することができる。
【0045】
なお、前記の免疫原は、液相法及び固相法等のペプチド合成の方法により合成することができ、更にペプチド自動合成装置を用いてもよく、日本生化学会編「生化学実験講座1 タンパク質の化学IV」,東京化学同人,1975年、泉屋ら「ペプチド合成の基礎と実験」,丸善,1985年、日本生化学会編「続生化学実験講座2 タンパク質の化学 下」,東京化学同人,1987年等に記載された方法に従い合成することができ、前記のアミノ酸配列に、欠失、置換、挿入又は付加を施した変異体を作製することも容易である。
また、非天然型アミノ酸の導入、各アミノ酸残基の化学修飾やシステイン残基を導入することにより分子内を環化させて構造を安定化させる等の修飾を施してもよい。
【0046】
更に、前記の免疫原は、対応する核酸塩基配列を持つDNA又はRNAより遺伝子工学技術を用いて調製してもよく、日本生化学会編「続生化学実験講座1 遺伝子研究法I」,東京化学同人,1986年、日本生化学会編「続生化学実験講座1 遺伝子研究法II」,東京化学同人,1986年、日本生化学会編「続生化学実験講座1 遺伝子研究法III」,東京化学同人,1987年等を参照して調製すればよい。
【0047】
ところで、免疫原が低分子物質の場合には、免疫原に担体(キャリア)を結合させたものを動物等に免疫するのが一般的ではあるが、アミノ酸数5のペプチドを免疫原としてこれに対する特異抗体を産生させたとの報告(木山ら,「日本薬学会第112回年会講演要旨集3」,122頁,1992年発行)もあるので、担体を使用することは必須ではない。
【0048】
なお、抗体を産生させる際に担体(キャリア)を使用する場合の担体としては、スカシガイのヘモシアニン(KLH)、ウシ血清アルブミン(BSA)、ニワトリ血清アルブミン、ポリ-L-リシン、ポリアラニルリシン、ジパルミチルリシン、破傷風トキソイド又は多糖類等の担体として公知なものを用いることができる。
【0049】
免疫原と担体の結合法は、グルタルアルデヒド法、1-エチル-3-(3-ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド法、マレイミドベンゾイル-N-ヒドロキシサクシニミドエステル法、ビスジアゾ化ベンジジン法又はN-サクシミジル-3-(2-ピリジルジチオ)プロピオン酸法等の公知の結合法を用いることができる。
また、ニトロセルロース粒子、ポリビニルピロリドン又はリポソーム等の担体に免疫原を吸着させたものを免疫原とすることもできる。
【0050】
また、ニトロセルロース粒子、ポリビニルピロリドン又はリポソーム等の免疫原結合用担体に免疫原を吸着させたものを免疫原とすることもできる。
【0051】
[2] ポリクローナル抗体、抗血清
本発明における抗HMGB1抗体において、ポリクローナル抗体又は抗血清は、以下の操作により取得することができる。
まず、前記の免疫原、又は前記の免疫原と担体の結合物を哺乳動物(マウス、ウサギ、ラット、ヒツジ、ヤギ、ウマ等)又は鳥類(ニワトリ等)等に免疫する。
【0052】
この前記の免疫原、又は前記の免疫原と担体の結合物の免疫量は、免疫動物の種類、免疫注射部位等により決められるものであるが、マウスの場合には約5~10週齢のマウス一匹当り一回につき0.1μg~数mg、好ましくは50μg~1mgの前記免疫原、又は前記免疫原と担体の結合物を免疫注射する。また、ウサギの場合はウサギ一匹当り一回につき10μg~数十mgの前記免疫原、又は前記免疫原と担体の結合物を免疫注射する。
【0053】
なお、この前記の免疫原、又は前記の免疫原と担体の結合物は、アジュバントと添加混合して免疫注射することが好ましい。アジュバントとしては、フロイント完全アジュバント、フロイント不完全アジュバント、水酸化アルミニウムアジュバント又は百日咳菌アジュバント等の公知のものを用いることができる。
免疫注射は、皮下、静脈内、腹腔内又は背部等の部位に行えばよい。
【0054】
初回免疫後、2~3週間間隔で皮下、静脈内、腹腔内又は背部等の部位に、前記の免疫原、又は前記の免疫原と担体の結合物を追加免疫注射する。この場合も、前記の免疫原、又は前記の免疫原と担体の結合物は、アジュバントを添加混合して追加免疫注射することが好ましい。
初回免疫の後、免疫動物の血清中の抗体価の測定をELISA法等により繰り返し行い、抗体価がプラトーに達したら全採血を行い、血清を分離して本発明の抗体を含む抗血清を得る。
【0055】
この抗血清を、硫酸アンモニウム、硫酸ナトリウム等による塩析法、イオン交換クロマトグラフィー、ゲル濾過法又はアフィニティークロマトグラフィー等の方法、あるいはこれらの方法を組み合わせて抗体の精製を行い、ポリクローナル抗体を得る。
【0056】
なお、ここで得られたポリクローナル抗体は、HMGB1には結合するが、HMGB2には結合しないポリクローナル抗体と、HMGB1及びHMGB2のいずれにも結合するポリクローナル抗体の両方よりなるものである。
【0057】
なお、免疫原と担体の結合物を用いて動物等に免疫した場合には、得られた抗血清又はポリクローナル抗体中に、この担体に対する抗体が存在するので、このような担体に対する抗体の除去処理を行うことが好ましい。この除去処理方法としては、担体を、得られたポリクローナル抗体又は抗血清の溶液中に添加して生成した凝集物を取り除くか、担体を不溶化固相に固定化してアフィニティークロマトグラフィーにより除去する方法等を用いることができる。
【0058】
[3] モノクローナル抗体
本発明における抗HMGB1抗体において、モノクローナル抗体は、以下の操作により取得することができる。
モノクローナル抗体は、ケラーらの細胞融合法(G.Koehlerら,Nature,256巻,495~497頁,1975年発行)によるハイブリドーマ、又はエプスタン-バーウイルス等のウイルスによる腫瘍化細胞等の抗体産生細胞により得ることができる。
細胞融合法によるモノクローナル抗体の調製は、以下の操作により行うことができる。
【0059】
まず、前記の免疫原、又は前記の免疫原と担体の結合物を、哺乳動物(マウス、ヌードマウス、ラットなど、例えば近交系マウスのBALB/c)又は鳥類(ニワトリなど)等に免疫する。この前記の免疫原、又は前記の免疫原と担体の結合物の免疫量は、免疫動物の種類、免疫注射部位等により適宜決められるものであるが、例えば、マウスの場合には一匹当り一回につき0.1μg~5mgの前記の免疫原、又は前記の免疫原と担体の結合物を免疫注射するのが好ましい。
【0060】
なお、前記の免疫原、又は前記の免疫原と担体の結合物は、アジュバントを添加混合して免疫注射することが好ましい。アジュバントとしては、フロイント完全アジュバント、フロイント不完全アジュバント、水酸化アルミニウムアジュバント又は百日咳菌アジュバント等の公知なものを用いることができる。
免疫注射は、皮下、静脈内、腹腔内又は背部等の部位に行えばよい。
【0061】
初回免疫後、1~2週間間隔で皮下、静脈内、腹腔内又は背部等の部位に、前記の免疫原、又は前記の免疫原と担体の結合物を追加免疫注射する。この追加免疫注射の回数としては2~6回が一般的である。この場合も前記の免疫原、又は前記の免疫原と担体の結合物は、アジュバントを添加混合して追加免疫注射することが好ましい。
【0062】
初回免疫の後、免疫動物の血清中の抗体価の測定をELISA法等により繰り返し行い、抗体価がプラトーに達したら、前記の免疫原、又は前記の免疫原と担体の結合物を生理食塩水(0.9%塩化ナトリウム水溶液)に溶解したものを静脈内又は腹腔内に注射し、最終免疫とする。この最終免疫の3~5日後に、免疫動物の脾細胞、リンパ節細胞又は末梢リンパ球等の抗体産生能を有する細胞を取得する。
【0063】
この免疫動物より得られた抗体産生能を有する細胞と哺乳動物等(マウス、ヌードマウス、ラットなど)の骨髄腫細胞(ミエローマ細胞)とを細胞融合させるのであるが、ミエローマ細胞としてはヒポキサンチン・グアニン・ホスホリボシル・トランスフェラーゼ(HGPRT)又はチミジンキナーゼ(TK)等の酵素を欠損した細胞株のものが好ましく、例えば、BALB/cマウス由来のHGPRT欠損細胞株である、P3-X63-Ag8株(ATCC TIB9)、P3-X63-Ag8-U1株(癌研究リサーチソースバンク(JCRB)9085)、P3-NS1-1-Ag4-1株(JCRB 0009)、P3-X63-Ag8・653株(JCRB 0028)又はSP2/O-Ag-14株(JCRB 0029)等を用いることができる。
【0064】
細胞融合は、各種分子量のポリエチレングリコール(PEG)、リポソームもしくはセンダイウイルス(HVJ)等の融合促進剤を用いて行うか、又は電気融合法により行うことができる。
ミエローマ細胞がHGPRT欠損株又はTK欠損株のものである場合には、ヒポキサンチン・アミノプテリン・チミジンを含む選別用培地(HAT培地)を用いることにより、抗体産生能を有する細胞とミエローマ細胞の融合細胞(ハイブリドーマ)のみを選択的に培養し、増殖させることができる。
【0065】
このようにして得られたハイブリドーマの培養上清を、前記の免疫原、前記の免疫原と担体の結合物、又はHMGB1等を用いてELISA法やウエスタンブロット法等の免疫学的測定法により測定することにより、HMGB1等に結合する抗体を産生するハイブリドーマを選択することができる。
【0066】
このハイブリドーマ選択方法と限界希釈法等の公知のクローニングの方法を組み合わせて行うことにより、抗HMGB1抗体(モノクローナル抗体)、即ちHMGB1に結合する抗体(モノクローナル抗体)の産生細胞株を単離して得ることができる。
【0067】
このモノクローナル抗体産生細胞株を適当な培地で培養して、その培養上清から抗HMGB1抗体(モノクローナル抗体)を得ることができるが、培地としては無血清培地又は低濃度血清培地等を用いてもよく、この場合は抗体の精製が容易となる点で好ましく、DMEM培地、RPMI1640培地又はASF培地103等の培地を用いることができる。
また、モノクローナル抗体産生細胞株を、これに適合性がありプリスタン等であらかじめ刺激した哺乳動物の腹腔内に注入し、一定期間の後、腹腔にたまった腹水より抗HMGB1抗体(モノクローナル抗体)を得ることもできる。
【0068】
このようにして得られたモノクローナル抗体は、硫酸アンモニウム、硫酸ナトリウムなどによる塩析法、イオン交換クロマトグラフィー、ゲル濾過法又はアフィニティークロマトグラフィーなどの方法、あるいはこれらの方法を組み合わせること等により、精製された抗HMGB1抗体(モノクローナル抗体)を得ることができる。
【0069】
(5) 測定試料
本発明における試料としては、血液、血清、血漿、尿、髄液、唾液、汗、涙、腹水若しくは羊水などの体液;大便;血管若しくは肝臓などの臓器;組織;細胞;又は大便、臓器、組織若しくは細胞などの抽出液等、HMGB1が含まれる可能性のある生体試料であれば対象となる。
【0070】
(6) 標識抗体を用いた免疫学的測定方法
本発明における免疫学的測定方法を酵素免疫測定法、蛍光免疫測定法、放射免疫測定法、発光免疫測定法、又はイムノクロマトグラフィー法等の標識抗体を用いた免疫学的測定方法により実施する場合には、サンドイッチ法又は競合法等により行うことができるが、サンドイッチ法により実施する時には、固相化抗体及び標識抗体の両方が抗HMGB1抗体である必要がある。
【0071】
前記測定方法に用いる固相担体としては、ポリスチレン、ポリカーボネート、ポリビニルトルエン、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリ塩化ビニル、ナイロン、ポリメタクリレート、ポリアクリルアミド、ラテックス、リポソーム、ゼラチン、アガロース、セルロース、セファロース、ガラス、金属、セラミックス又は磁性体等の材質よりなるマイクロカプセル、ビーズ、マイクロプレート(マイクロタイタープレート)、試験管、スティック又は試験片等の形状の固相担体を用いることができる。
固相化抗体は、抗HMGB1抗体と固相担体とを物理的吸着法、化学的結合法又はこれらの併用等の公知の方法により吸着、結合させて調製することができる。
【0072】
物理的吸着法による場合は、公知の方法に従い、抗HMGB1抗体と固相担体を緩衝液などの溶液中で混合し接触させたり、又は緩衝液などに溶解した抗HMGB1抗体と固相担体を接触させること等により行うことができる。また、化学的結合法により行う場合は、日本臨床病理学会編「臨床病理臨時増刊特集第53号 臨床検査のためのイムノアッセイ-技術と応用-」,臨床病理刊行会,1983年発行;日本生化学会編「新生化学実験講座1 タンパク質IV」,東京化学同人,1991年発行等に記載の公知の方法に従い、抗HMGB1抗体と固相担体をグルタルアルデヒド、カルボジイミド、イミドエステル又はマレイミド等の二価性の架橋試薬と混合、接触させ、抗HMGB1抗体と固相担体のそれぞれのアミノ基、カルボキシル基、チオール基、アルデヒド基又は水酸基等と反応させること等により行うことができる。
【0073】
また、更に非特異的反応や固相担体の自然凝集等を抑制するために処理を行う必要があれば、抗HMGB1抗体を固相化させた固相担体の表面又は内壁面に、ウシ血清アルブミン(BSA)、カゼイン、ゼラチン、卵白アルブミン若しくはその塩などのタンパク質、界面活性剤又は脱脂粉乳等を接触させ被覆させること等の公知の方法により処理して、固相担体のブロッキング処理(マスキング処理)を行ってもよい。
【0074】
標識物質としては、酵素免疫測定法の場合には、パーオキシダーゼ(POD)、アルカリホスファターゼ(ALP)、β-ガラクトシダーゼ、ウレアーゼ、カタラーゼ、グルコースオキシダーゼ、乳酸脱水素酵素又はアミラーゼ等を用いることができる。また、蛍光免疫測定法の場合には、フルオレセインイソチオシアネート、テトラメチルローダミンイソチオシアネート、置換ローダミンイソチオシアネート又はジクロロトリアジンイソチオシアネート等を用いることができる。そして、放射免疫測定法の場合には、トリチウム、ヨウ素125又はヨウ素131等を用いることができる。また、発光免疫測定法においては、NADH-FMNH2-ルシフェラーゼ系、ルミノール-過酸化水素-POD系、アクリジニウムエステル系又はジオキセタン化合物系等を用いることができる。更に、イムノクロマトグラフィー法においては、金コロイド粒子、パーオキシダーゼ(POD)、アルカリホスファターゼ(ALP)、β-ガラクトシダーゼ、ウレアーゼ、カタラーゼ、グルコースオキシダーゼ、乳酸脱水素酵素又はアミラーゼ等を用いることができる。
【0075】
抗HMGB1抗体等の抗体と酵素等の標識物質との結合法は、日本臨床病理学会編「臨床病理臨時増刊特集第53号 臨床検査のためのイムノアッセイ-技術と応用-」,臨床病理刊行会,1983年発行;日本生化学会編「新生化学実験講座1 タンパク質IV」,東京化学同人,1991年発行等に記載の公知の方法に従い、抗体と標識物質をグルタルアルデヒド、カルボジイミド、イミドエステル又はマレイミド等の二価性の架橋試薬と混合、接触させ、抗体と標識物質のそれぞれのアミノ基、カルボキシル基、チオール基、アルデヒド基又は水酸基等と反応させることにより結合を行うことができる。
【0076】
測定の操作法は公知の方法等(日本臨床病理学会編「臨床病理臨時増刊特集第53号 臨床検査のためのイムノアッセイ-技術と応用-」,臨床病理刊行会,1983年発行;石川榮治ら編「酵素免疫測定法」,第3版,医学書院,1987年発行;北川常廣ら編「蛋白質核酸酵素別冊No.31 酵素免疫測定法」,共立出版,1987年発行)により行うことができる。
【0077】
例えば、固相化抗体と試料を反応させ、同時に標識抗体を反応させるか、又は洗浄の後に標識抗体を反応させることにより、「固相担体=固相化抗体=HMGB1=標識抗体」の複合体を形成させる。そして、未結合の標識抗体を洗浄分離して、「固相化抗体=HMGB1」を介して固相担体に結合した標識抗体の量又は未結合の標識抗体の量より試料中に含まれていたHMGB1の量(濃度)のみを測定することができる。
【0078】
具体的には、酵素免疫測定法の場合は、抗体に標識した酵素に、その至適条件下で基質を反応させ、その酵素反応生成物の量を光学的方法等により測定する。また、蛍光免疫測定法の場合には蛍光物質標識による蛍光強度を、放射免疫測定法の場合には放射性物質標識による放射線量を測定する。そして、発光免疫測定法の場合は発光反応系による発光量を測定する。更に、イムノクロマトグラフィー法の場合は検出箇所における呈色等を測定する。
【0079】
(7) 凝集反応法による免疫学的測定方法
本発明における免疫学的測定方法を、免疫比濁法、ラテックス比濁法、ラテックス凝集反応法、赤血球凝集反応法又は粒子凝集反応法等の免疫複合体凝集物の生成を、その透過光や散乱光を光学的方法により測るか、又は目視的に測る測定法により実施する場合には、溶媒としてリン酸緩衝液、グリシン緩衝液、トリス緩衝液又はグッド緩衝液等を用いることができ、更にポリエチレングリコール等の反応促進剤や非特異的反応抑制剤を含ませてもよい。
【0080】
抗HMGB1抗体を固相担体に感作させて用いる場合には、固相担体としては、ポリスチレン、スチレン-スチレンスルホン酸塩共重合体、アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン共重合体、塩化ビニル-アクリル酸エステル共重合体、酢酸ビニル-アクリル酸共重合体、ポリアクロレイン、スチレン-メタクリル酸共重合体、スチレン-グリシジル(メタ)アクリル酸共重合体、スチレン-ブタジエン共重合体、メタクリル酸重合体、アクリル酸重合体、ラテックス、ゼラチン、リポソーム、マイクロカプセル、赤血球、シリカ、アルミナ、カーボンブラック、金属化合物、金属、セラミックス又は磁性体等の材質よりなる粒子を使用することができる。
抗HMGB1抗体を固相担体に感作させる方法としては、物理的吸着法、化学的結合法又はこれらの併用等の公知の方法により行うことができる。
【0081】
物理的吸着法による場合は、公知の方法に従い、抗HMGB1抗体と固相担体を緩衝液等の溶液中で混合し接触させたり、又は緩衝液等に溶解した抗HMGB1抗体と固相担体を接触させること等により行うことができる。また、化学的結合法により行う場合は、日本臨床病理学会編「臨床病理臨時増刊特集第53号 臨床検査のためのイムノアッセイ-技術と応用-」,臨床病理刊行会,1983年発行;日本生化学会編「新生化学実験講座1 タンパク質IV」,東京化学同人,1991年発行等に記載の公知の方法に従い、抗HMGB1抗体と固相担体をグルタルアルデヒド、カルボジイミド、イミドエステル又はマレイミド等の二価性の架橋試薬と混合、接触させ、抗HMGB1抗体と固相担体のそれぞれのアミノ基、カルボキシル基、チオール基、アルデヒド基又は水酸基等と反応させること等により行うことができる。
【0082】
また、更に非特異的反応や固相担体の自然凝集等を抑制するために処理を行う必要があれば、抗HMGB1抗体を固相化させた固相担体の表面又は内壁面に、ウシ血清アルブミン(BSA)、カゼイン、ゼラチン、卵白アルブミンもしくはその塩などのタンパク質、界面活性剤又は脱脂粉乳等を接触させ被覆させること等の公知の方法により処理して、固相担体のブロッキング処理(マスキング処理)を行ってもよい。
【0083】
なお、ラテックス比濁法を測定原理とする場合、固相担体として用いるラテックス粒子の粒径については、特に制限はないものの、ラテックス粒子が測定対象物質(HMGB1)を介して結合し、凝集塊を生成する程度、及びこの生成した凝集塊の測定の容易さ等の理由より、ラテックス粒子の粒径は、その平均粒径が、0.04~1μmであることが好ましい。
【0084】
また、ラテックス比濁法を測定原理とする場合、抗HMGB1抗体を固相化させたラテックス粒子を含ませる濃度については、試料中のHMGB1の濃度、本発明の抗体のラテックス粒子表面上での分布密度、ラテックス粒子の粒径、試料と測定試薬の混合比率等の各種条件により最適な濃度は異なるので一概にいうことはできない。
【0085】
しかし、通常は、試料と測定試薬が混合され、ラテックス粒子に固相化された抗HMGB1抗体と試料中に含まれていたHMGB1との抗原抗体反応が行われる測定反応時に、抗HMGB1抗体を固相化させたラテックス粒子の濃度が、反応混合液中において0.005~1%(w/v)となるようにするのが一般的であり、この場合、反応混合液中においてこのような濃度になるような濃度の「抗HMGB1抗体を固相化させたラテックス粒子」を測定試薬に含ませる。
【0086】
また、ラテックス凝集反応法、赤血球凝集反応法又は粒子凝集反応法等の間接凝集反応法を測定原理とする場合、固相担体として用いる粒子の粒径については、特に制限はないものの、その平均粒子径が0.01~100μmの範囲内にあることが好ましく、0.5~10μmの範囲内にあることがより好ましい。そして、これらの粒子の比重は、1~10の範囲内にあることが好ましく、1~2の範囲内にあることがより好ましい。
【0087】
なお、ラテックス凝集反応法、赤血球凝集反応法又は粒子凝集反応法等の間接凝集反応法を測定原理とする場合の測定に使用する容器としては、例えば、ガラス、ポリスチレン、ポリ塩化ビニル又はポリメタクリレートなどからなる、試験管、マイクロプレート(マイクロタイタープレート)又はトレイ等を挙げることができる。これらの容器の溶液収容部分(マイクロプレートのウェル等)の底面は、U型、V型又はUV型等の底面中央から周辺にかけて傾斜を持つ形状であることが好ましい。
【0088】
測定の操作法は公知の方法等により行うことができるが、例えば、光学的方法により測定する場合には、試料と抗HMGB1抗体、又は試料と固相担体に感作させた抗HMGB1抗体を反応させ、エンドポイント法又はレート法により、透過光や散乱光を測定する。また、目視的に測定する場合には、プレートやマイクロプレート等の前記容器中で、試料と固相担体に感作させた抗HMGB1抗体を反応させ、凝集の状態を目視的に判定する。なお、この目視的に測定する代わりにマイクロプレートリーダー等の機器を用いて測定を行ってもよい。
【0089】
〔2〕 HMGB1を測定する方法
(1) 総論
本発明における「HMGB1を測定する方法」は、「試料に含まれるHMGB1を抗HMGB1抗体との抗原抗体反応を利用して測定を行う免疫学的測定方法において、試料に含まれていたHMGB1と抗HMGB1抗体との抗原抗体反応時にホウ素及びその化合物からなる群から選ばれる少なくとも1種の化合物を共存させることを特徴とする、HMGB1を測定する方法」である。
【0090】
前記の本発明は、その技術的構成より、試料に含まれるHMGB2の測り込みを抑制することができ、HMGB1の測定値に正の誤差が生じるのを低減することができる方法である。
【0091】
(2) ホウ素及びその化合物
ホウ素及びその化合物については、前記「〔1〕 HMGB2の測り込みを抑制しHMGB1を測定する方法」の「(2) ホウ素及びその化合物」に記載したとおりである。
【0092】
(3) 本発明の免疫学的測定方法
本発明の測定方法については、前記「〔1〕 HMGB2の測り込みを抑制しHMGB1を測定する方法」の「(3) 免疫学的測定方法」に記載したとおりである。
【0093】
(4) 抗HMGB1抗体
抗HMGB1抗体については、前記「〔1〕 HMGB2の測り込みを抑制しHMGB1を測定する方法」の「(4) 抗HMGB1抗体」に記載したとおりである。
【0094】
(5) 測定試料
測定試料については、前記「〔1〕 HMGB2の測り込みを抑制しHMGB1を測定する方法」の「(5)測定試料」に記載したとおりである。
【0095】
(6) 標識抗体を用いた免疫学的測定方法
標識抗体を用いた免疫学的測定方法については、前記「〔1〕 HMGB2の測り込みを抑制しHMGB1を測定する方法」の「(6)標識抗体を用いた免疫学的測定方法」に記載したとおりである。
【0096】
(7) 凝集反応法による免疫学的測定方法
凝集反応法による測定方法については、前記「〔1〕 HMGB2の測り込みを抑制しHMGB1を測定する方法」の「(7)凝集反応法による免疫学的測定方法」に記載したとおりである。
【0097】
〔3〕 HMGB1測定試薬
(1) 総論
本発明における「HMGB1測定試薬」は、「試料に含まれるHMGB1を抗HMGB1抗体との抗原抗体反応を利用して測定を行うための免疫学的測定試薬において、ホウ素及びその化合物からなる群から選ばれる少なくとも1種の化合物を含有させることを特徴とする、HMGB1測定試薬」である。
【0098】
前記の本発明は、その技術的構成より、試料に含まれるHMGB2の測り込みを抑制することができ、HMGB1の測定値に正の誤差が生じるのを低減することができる測定試薬である。
【0099】
(2) ホウ素及びその化合物
本発明においては、試料に含まれるHMGB1を抗HMGB1抗体との抗原抗体反応を利用して測定を行うための免疫学的測定試薬において、「ホウ素及びその化合物」からなる群から選ばれる少なくとも1種の化合物を含有させることを特徴とするものである。
【0100】
「ホウ素及びその化合物」としては、特に限定はないが、例えば、ホウ酸若しくはその塩又はホウ酸の無水物等を挙げることができる。
【0101】
ホウ酸の塩としては、特に限定はないが、例えば、メタホウ酸ナトリウム四水和物、ホウ酸アンモニウム、八ホウ酸二ナトリウム四水和物、又はポリホウ酸ナトリウム等を挙げることができる。
【0102】
ホウ酸の無水物としては、特に限定はないが、例えば、三酸化二ホウ素(無水ホウ酸)等を挙げることができる。
【0103】
「試料に含まれていたHMGB1と抗HMGB1抗体との抗原抗体反応時にホウ素及びその化合物からなる群から選ばれる少なくとも1種の化合物を共存させる」際の「ホウ素及びその化合物からなる群から選ばれる少なくとも1種の化合物」の濃度の下限値としては、42.4mM以上が好ましく、71.7mM以上がより好ましく、そして130.4mM以上が特に好ましい。
【0104】
「試料に含まれていたHMGB1と抗HMGB1抗体との抗原抗体反応時にホウ素及びその化合物からなる群から選ばれる少なくとも1種の化合物を共存させる」際の「ホウ素及びその化合物からなる群から選ばれる少なくとも1種の化合物」の濃度の上限値としては、特に限定はないが、516.4mM[溶解度から算出したホウ酸溶解量上限値]以下が好ましく、高濃度共存させるとコストもかかるので、260.8mM以下がより好ましい。
【0105】
「試料に含まれていたHMGB1と抗HMGB1抗体との抗原抗体反応時にホウ素及びその化合物からなる群から選ばれる少なくとも1種の化合物を共存させる」際の「ホウ素及びその化合物からなる群から選ばれる少なくとも1種の化合物」の濃度域としては、それぞれ次の濃度域を好ましい濃度域として挙げることができる。
【0106】
42.4mM~516.4mM、42.4mM~260.8mM、71.7mM~516.4mM、71.7mM~260.8mM、130.4mM~516.4mM、又は130.4mM~260.8mM。
【0107】
なお、試料に含まれていたHMGB1と抗HMGB1抗体との抗原抗体反応時に「ホウ素及びその化合物からなる群から選ばれる少なくとも1種の化合物」を共存させる際の「ホウ素及びその化合物からなる群から選ばれる少なくとも1種の化合物」の濃度が前記の濃度となるよう、本発明のHMMGB1測定試薬に「ホウ素及びその化合物からなる群から選ばれる少なくとも1種の化合物」を含有させることが好ましい。
【0108】
本発明のHMMGB1測定試薬が一つの構成試薬からなる場合、本発明のHMMGB1測定試薬に「ホウ素及びその化合物からなる群から選ばれる少なくとも1種の化合物」を含有させる濃度をXmMとし、測定に用いる本発明のHMMGB1測定試薬の容量をAmLとし、測定に用いる試料の容量をBmLとし、試料に含まれていたHMGB1と抗HMGB1抗体との抗原抗体反応時における「ホウ素及びその化合物からなる群から選ばれる少なくとも1種の化合物」の濃度をCmMとすると、次の式が成り立つ。
C=(X×A)÷(A+B)
よって、X=[C×(A+B)]÷Aとなる。
【0109】
本発明のHMMGB1測定試薬が第1試薬と第2試薬の二つの構成試薬からなり、「ホウ素及びその化合物からなる群から選ばれる少なくとも1種の化合物」が当該第1試薬のみに含有される場合、当該第1試薬に「ホウ素及びその化合物からなる群から選ばれる少なくとも1種の化合物」を含有させる濃度をX1mMとし、測定に用いる当該第1試薬の容量をA1mLとし、測定に用いる当該第2試薬の容量をA2mLとし、測定に用いる試料の容量をBmLとし、試料に含まれていたHMGB1と抗HMGB1抗体との抗原抗体反応時における「ホウ素及びその化合物からなる群から選ばれる少なくとも1種の化合物」の濃度をCmMとすると、次の式が成り立つ。
C=(X1×A1)÷(A1+A2+B)
よって、X1=[C×(A1+A2+B)]÷A1となる。
【0110】
本発明のHMMGB1測定試薬が第1試薬と第2試薬の二つの構成試薬からなり、「ホウ素及びその化合物からなる群から選ばれる少なくとも1種の化合物」が当該第2試薬のみに含有される場合、当該第2試薬に「ホウ素及びその化合物からなる群から選ばれる少なくとも1種の化合物」を含有させる濃度をX2mMとし、測定に用いる当該第1試薬の容量をA1mLとし、測定に用いる当該第2試薬の容量をA2mLとし、測定に用いる試料の容量をBmLとし、試料に含まれていたHMGB1と抗HMGB1抗体との抗原抗体反応時における「ホウ素及びその化合物からなる群から選ばれる少なくとも1種の化合物」の濃度をCmMとすると、次の式が成り立つ。
C=(X2×A2)÷(A1+A2+B)
よって、X2=[C×(A1+A2+B)]÷A2となる。
【0111】
本発明のHMMGB1測定試薬が第1試薬と第2試薬の二つの構成試薬からなり、「ホウ素及びその化合物からなる群から選ばれる少なくとも1種の化合物」が当該第1試薬及び当該第2試薬に含有される場合、当該第1試薬に「ホウ素及びその化合物からなる群から選ばれる少なくとも1種の化合物」を含有させる濃度をX1mMとし、当該第2試薬に「ホウ素及びその化合物からなる群から選ばれる少なくとも1種の化合物」を含有させる濃度をX2mMとし、測定に用いる当該第1試薬の容量をA1mLとし、測定に用いる当該第2試薬の容量をA2mLとし、測定に用いる試料の容量をBmLとし、試料に含まれていたHMGB1と抗HMGB1抗体との抗原抗体反応時における「ホウ素及びその化合物からなる群から選ばれる少なくとも1種の化合物」の濃度をCmMとすると、次の式が成り立つ。
C=[(X1×A1)+(X2×A2)]÷(A1+A2+B)
よって、X1={[C×(A1+A2+B)]-(X2×A2)}÷A1となる。
また、X2={[C×(A1+A2+B)]-(X1×A1)}÷A2となる。
【0112】
(3) 本発明における免疫学的測定試薬の測定原理
本発明における免疫学的測定試薬の測定原理としては、試料に含まれるHMGB1を抗HMGB1抗体との抗原抗体反応を利用して測定を行うものであれば特に限定はないが、例えば、酵素免疫測定法(ELISA、EIA)、蛍光免疫測定法(FIA)、放射免疫測定法(RIA)、発光免疫測定法(LIA)、酵素抗体法、蛍光抗体法、イムノクロマトグラフィー法、ラテックス比濁法、ラテックス凝集反応測定法、赤血球凝集反応法、粒子凝集反応法等を挙げることができる。
【0113】
そして、前記の本発明における免疫学的測定試薬の測定原理においては、サンドイッチ法、競合法又は均一系法(ホモジニアス系法)等のいずれの手法においても、本発明の測定試薬を適用することができる。
また、本発明の免疫学的測定試薬における測定は、用手法により行ってもよいし、又は分析装置等の装置を用いて行ってもよい。
【0114】
(4) 抗HMGB1抗体
抗HMGB1抗体については、前記「〔1〕 HMGB2の測り込みを抑制しHMGB1を測定する方法」の「(4) 抗HMGB1抗体」に記載したとおりである。
【0115】
(5) 測定試料
測定試料については、前記「〔1〕 HMGB2の測り込みを抑制しHMGB1を測定する方法」の「(5)測定試料」に記載したとおりである。
【0116】
(6) 標識抗体を用いた免疫学的測定試薬
本発明における免疫学的測定試薬を酵素免疫測定法、蛍光免疫測定法、放射免疫測定法、発光免疫測定法、又はイムノクロマトグラフィー法等の標識抗体を用いた免疫学的測定方法を測定原理とする場合には、サンドイッチ法又は競合法等により行うことができるが、サンドイッチ法により実施する時には、固相化抗体及び標識抗体の両方が抗HMGB1抗体である必要がある。
【0117】
前記測定試薬に用いる固相担体としては、ポリスチレン、ポリカーボネート、ポリビニルトルエン、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリ塩化ビニル、ナイロン、ポリメタクリレート、ポリアクリルアミド、ラテックス、リポソーム、ゼラチン、アガロース、セルロース、セファロース、ガラス、金属、セラミックス又は磁性体等の材質よりなるマイクロカプセル、ビーズ、マイクロプレート(マイクロタイタープレート)、試験管、スティック又は試験片等の形状の固相担体を用いることができる。
固相化抗体は、抗HMGB1抗体と固相担体とを物理的吸着法、化学的結合法又はこれらの併用等の公知の方法により吸着、結合させて調製することができる。
【0118】
物理的吸着法による場合は、公知の方法に従い、抗HMGB1抗体と固相担体を緩衝液などの溶液中で混合し接触させたり、又は緩衝液などに溶解した抗HMGB1抗体と固相担体を接触させること等により行うことができる。また、化学的結合法により行う場合は、日本臨床病理学会編「臨床病理臨時増刊特集第53号 臨床検査のためのイムノアッセイ-技術と応用-」,臨床病理刊行会,1983年発行;日本生化学会編「新生化学実験講座1 タンパク質IV」,東京化学同人,1991年発行等に記載の公知の方法に従い、抗HMGB1抗体と固相担体をグルタルアルデヒド、カルボジイミド、イミドエステル又はマレイミド等の二価性の架橋試薬と混合、接触させ、抗HMGB1抗体と固相担体のそれぞれのアミノ基、カルボキシル基、チオール基、アルデヒド基又は水酸基等と反応させること等により行うことができる。
【0119】
また、更に非特異的反応や固相担体の自然凝集等を抑制するために処理を行う必要があれば、抗HMGB1抗体を固相化させた固相担体の表面又は内壁面に、ウシ血清アルブミン(BSA)、カゼイン、ゼラチン、卵白アルブミン若しくはその塩などのタンパク質、界面活性剤又は脱脂粉乳等を接触させ被覆させること等の公知の方法により処理して、固相担体のブロッキング処理(マスキング処理)を行ってもよい。
【0120】
標識物質としては、酵素免疫測定法を測定原理とする場合には、パーオキシダーゼ(POD)、アルカリホスファターゼ(ALP)、β-ガラクトシダーゼ、ウレアーゼ、カタラーゼ、グルコースオキシダーゼ、乳酸脱水素酵素又はアミラーゼ等を用いることができる。また、蛍光免疫測定法を測定原理とする場合には、フルオレセインイソチオシアネート、テトラメチルローダミンイソチオシアネート、置換ローダミンイソチオシアネート又はジクロロトリアジンイソチオシアネート等を用いることができる。そして、放射免疫測定法を測定原理とする場合には、トリチウム、ヨウ素125又はヨウ素131等を用いることができる。また、発光免疫測定法を測定原理とする場合には、NADH-FMNH2-ルシフェラーゼ系、ルミノール-過酸化水素-POD系、アクリジニウムエステル系又はジオキセタン化合物系等を用いることができる。更に、イムノクロマトグラフィー法においては、金コロイド粒子、パーオキシダーゼ(POD)、アルカリホスファターゼ(ALP)、β-ガラクトシダーゼ、ウレアーゼ、カタラーゼ、グルコースオキシダーゼ、乳酸脱水素酵素又はアミラーゼ等を用いることができる。
【0121】
抗HMGB1抗体等の抗体と酵素等の標識物質との結合法は、日本臨床病理学会編「臨床病理臨時増刊特集第53号 臨床検査のためのイムノアッセイ-技術と応用-」,臨床病理刊行会,1983年発行;日本生化学会編「新生化学実験講座1 タンパク質IV」,東京化学同人,1991年発行等に記載の公知の方法に従い、抗体と標識物質をグルタルアルデヒド、カルボジイミド、イミドエステル又はマレイミド等の二価性の架橋試薬と混合、接触させ、抗体と標識物質のそれぞれのアミノ基、カルボキシル基、チオール基、アルデヒド基又は水酸基等と反応させることにより結合を行うことができる。
【0122】
本発明の測定試薬を使用する試料中のHMGB1測定の操作法は公知の方法等(日本臨床病理学会編「臨床病理臨時増刊特集第53号 臨床検査のためのイムノアッセイ-技術と応用-」,臨床病理刊行会,1983年発行;石川榮治ら編「酵素免疫測定法」,第3版,医学書院,1987年発行;北川常廣ら編「蛋白質核酸酵素別冊No.31 酵素免疫測定法」,共立出版,1987年発行)により行うことができる。
【0123】
例えば、固相化抗体と試料を反応させ、同時に標識抗体を反応させるか、又は洗浄の後に標識抗体を反応させることにより、「固相担体=固相化抗体=HMGB1=標識抗体」の複合体を形成させる。そして、未結合の標識抗体を洗浄分離して、「固相化抗体=HMGB1」を介して固相担体に結合した標識抗体の量又は未結合の標識抗体の量より試料中に含まれていたHMGB1の量(濃度)のみを測定することができる。
【0124】
具体的には、酵素免疫測定法を測定原理とする場合は、抗体に標識した酵素に、その至適条件下で基質を反応させ、その酵素反応生成物の量を光学的方法等により測定する。また、蛍光免疫測定法を測定原理とする場合には蛍光物質標識による蛍光強度を、放射免疫測定法を測定原理とする場合には放射性物質標識による放射線量を測定する。そして、発光免疫測定法を測定原理とする場合は発光反応系による発光量を測定する。更に、イムノクロマトグラフィー法の場合は検出箇所における呈色等を測定する。
【0125】
(7) 凝集反応法による免疫学的測定試薬
本発明における免疫学的測定試薬を、免疫比濁法、ラテックス比濁法、ラテックス凝集反応法、赤血球凝集反応法又は粒子凝集反応法等の免疫複合体凝集物の生成を、その透過光や散乱光を光学的方法により測るか、又は目視的に測る測定法を測定原理とする場合には、溶媒としてリン酸緩衝液、グリシン緩衝液、トリス緩衝液又はグッド緩衝液等を用いることができ、更にポリエチレングリコール等の反応促進剤や非特異的反応抑制剤を含ませてもよい。
【0126】
抗HMGB1抗体を固相担体に感作させて用いる場合には、固相担体としては、ポリスチレン、スチレン-スチレンスルホン酸塩共重合体、アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン共重合体、塩化ビニル-アクリル酸エステル共重合体、酢酸ビニル-アクリル酸共重合体、ポリアクロレイン、スチレン-メタクリル酸共重合体、スチレン-グリシジル(メタ)アクリル酸共重合体、スチレン-ブタジエン共重合体、メタクリル酸重合体、アクリル酸重合体、ラテックス、ゼラチン、リポソーム、マイクロカプセル、赤血球、シリカ、アルミナ、カーボンブラック、金属化合物、金属、セラミックス又は磁性体等の材質よりなる粒子を使用することができる。
抗HMGB1抗体を固相担体に感作させる方法としては、物理的吸着法、化学的結合法又はこれらの併用等の公知の方法により行うことができる。
【0127】
物理的吸着法による場合は、公知の方法に従い、抗HMGB1抗体と固相担体を緩衝液等の溶液中で混合し接触させたり、又は緩衝液等に溶解した抗HMGB1抗体と固相担体を接触させること等により行うことができる。また、化学的結合法により行う場合は、日本臨床病理学会編「臨床病理臨時増刊特集第53号 臨床検査のためのイムノアッセイ-技術と応用-」,臨床病理刊行会,1983年発行;日本生化学会編「新生化学実験講座1 タンパク質IV」,東京化学同人,1991年発行等に記載の公知の方法に従い、抗HMGB1抗体と固相担体をグルタルアルデヒド、カルボジイミド、イミドエステル又はマレイミド等の二価性の架橋試薬と混合、接触させ、抗HMGB1抗体と固相担体のそれぞれのアミノ基、カルボキシル基、チオール基、アルデヒド基又は水酸基等と反応させること等により行うことができる。
【0128】
また、更に非特異的反応や固相担体の自然凝集等を抑制するために処理を行う必要があれば、抗HMGB1抗体を固相化させた固相担体の表面又は内壁面に、ウシ血清アルブミン(BSA)、カゼイン、ゼラチン、卵白アルブミンもしくはその塩などのタンパク質、界面活性剤又は脱脂粉乳等を接触させ被覆させること等の公知の方法により処理して、固相担体のブロッキング処理(マスキング処理)を行ってもよい。
【0129】
なお、ラテックス比濁法を測定原理とする場合、固相担体として用いるラテックス粒子の粒径については、特に制限はないものの、ラテックス粒子が測定対象物質(HMGB1)を介して結合し、凝集塊を生成する程度、及びこの生成した凝集塊の測定の容易さ等の理由より、ラテックス粒子の粒径は、その平均粒径が、0.04~1μmであることが好ましい。
【0130】
また、ラテックス比濁法を測定原理とする場合、抗HMGB1抗体を固相化させたラテックス粒子を含ませる濃度については、試料中のHMGB1の濃度、本発明の抗体のラテックス粒子表面上での分布密度、ラテックス粒子の粒径、試料と測定試薬の混合比率等の各種条件により最適な濃度は異なるので一概にいうことはできない。
【0131】
しかし、通常は、試料と測定試薬が混合され、ラテックス粒子に固相化された抗HMGB1抗体と試料中に含まれていたHMGB1との抗原抗体反応が行われる測定反応時に、抗HMGB1抗体を固相化させたラテックス粒子の濃度が、反応混合液中において0.005~1%(w/v)となるようにするのが一般的であり、この場合、反応混合液中においてこのような濃度になるような濃度の「抗HMGB1抗体を固相化させたラテックス粒子」を測定試薬に含ませる。
【0132】
また、ラテックス凝集反応法、赤血球凝集反応法又は粒子凝集反応法等の間接凝集反応法を測定原理とする場合、固相担体として用いる粒子の粒径については、特に制限はないものの、その平均粒子径が0.01~100μmの範囲内にあることが好ましく、0.5~10μmの範囲内にあることがより好ましい。そして、これらの粒子の比重は、1~10の範囲内にあることが好ましく、1~2の範囲内にあることがより好ましい。
【0133】
なお、ラテックス凝集反応法、赤血球凝集反応法又は粒子凝集反応法等の間接凝集反応法を測定原理とする場合の測定に使用する容器としては、例えば、ガラス、ポリスチレン、ポリ塩化ビニル又はポリメタクリレートなどからなる、試験管、マイクロプレート(マイクロタイタープレート)又はトレイ等を挙げることができる。これらの容器の溶液収容部分(マイクロプレートのウェル等)の底面は、U型、V型又はUV型等の底面中央から周辺にかけて傾斜を持つ形状であることが好ましい。
【0134】
測定の操作法は公知の方法等により行うことができるが、例えば、光学的方法により測定する場合には、試料と抗HMGB1抗体、又は試料と固相担体に感作させた抗HMGB1抗体を反応させ、エンドポイント法又はレート法により、透過光や散乱光を測定する。また、目視的に測定する場合には、プレートやマイクロプレート等の前記容器中で、試料と固相担体に感作させた抗HMGB1抗体を反応させ、凝集の状態を目視的に判定する。なお、この目視的に測定する代わりにマイクロプレートリーダー等の機器を用いて測定を行ってもよい。
【0135】
(8) その他の試薬成分
本発明の測定試薬において、溶媒としては、各種の水系溶媒を用いることができる。この水系溶媒としては、例えば、精製水、生理食塩水、又は、トリス緩衝液、リン酸緩衝液もしくはリン酸緩衝生理食塩水などの各種緩衝液等を挙げることができる。
この緩衝液のpHについては、適宜適当なpHを選択して用いればよく、特に制限はないものの、通常は、pH3~12の範囲内のpHを選択して用いることが一般的である。
【0136】
また、本発明の測定試薬には、前記の抗HMGB1抗体などの抗体を固相化した固相担体、前記の抗HMGB1抗体などの抗体を感作した固相担体、及び/又は前記の抗HMGB1抗体などの抗体と酵素などの標識物質を結合させた標識抗体等の試薬成分の他に、ウシ血清アルブミン(BSA)、ヒト血清アルブミン(HSA)、カゼイン若しくはその塩などのタンパク質;各種塩類;各種糖類;脱脂粉乳;正常ウサギ血清などの各種動物血清;アジ化ナトリウム若しくは抗生物質などの各種防腐剤;活性化物質;反応促進物質;ポリエチレングリコールなどの感度増加物質;非特異的反応抑制物質;又は、非イオン性界面活性剤、両性界面活性剤若しくは陰イオン性界面活性剤などの各種界面活性剤等の1種又は2種以上を適宜含有させてもよい。そして、これらを測定試薬に含有させる際の濃度は特に限定されるものではないが、0.001~10%(W/V)が好ましく、特に0.01~5%(W/V)が好ましい。
【0137】
なお、前記の界面活性剤としては、例えば、ソルビタン脂肪酸エステル、グリセリン脂肪酸エステル、デカグリセリン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレングリセリン脂肪酸エステル、ポリエチレングリコール脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンフィトステロール、フィトスタノール、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンヒマシ油、硬化ヒマシ油若しくはポリオキシエチレンラノリンなどの非イオン性界面活性剤;酢酸ベタインなどの両性界面活性剤;又は、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸塩若しくはポリオキシエチレンアルキルエーテル酢酸塩などの陰イオン性界面活性剤等を挙げることができる。
【0138】
(9) 測定試薬の構成
本発明の測定試薬は、そのもの単独にて、試料中のHMGB1の測定に使用することができる。そして、そのもの単独にて、販売することができる。また、本発明の測定試薬は、他の試薬と組み合わせて、試料中のHMGB1の測定に使用することもできる。そして、他の試薬と組み合わせて、販売することもできる。前記の他の試薬としては、例えば、緩衝液、試料希釈液、試薬希釈液、標識物質を含有する試薬、発色などのシグナルを生成する物質を含有する試薬、発色などのシグナルの生成に関与する物質を含有する試薬、校正(キャリブレーション)を行うための物質を含有する試薬、又は精度管理を行うための物質を含有する試薬等を挙げることができる。そして、前記の他の試薬を第1試薬とし、本発明の測定試薬を第2試薬としたり、又は本発明の測定試薬を第1試薬とし、前記の他の試薬を第2試薬としたりして、適宜様々な組合せにて使用、及び販売を行うことができる。
【0139】
なお、本発明のHMGB1測定試薬は、測定試薬キットであってもよい。
【実施例0140】
以下、実施例により本発明をより具体的に詳述するが、本発明はこれらの実施例によって限定されるものではない。
【0141】
〔参考例1〕(ウシHMGB1及びウシHMGB2の調製)
ウシHMGB1及びウシHMGB2を調製した。
(1) まず、ウシの胸腺500gを、140mMの塩化ナトリウム及び0.5mMのPMSFを含む600mLの緩衝液中で破砕を行った。
【0142】
(2) 次に、この破砕物を遠心分離機で遠心分離を行い、その上澄み液を除去した。
【0143】
(3) これに、140mMの塩化ナトリウム及び0.5mMのPMSFを含む緩衝液を加えて撹拌した後、遠心分離機で遠心分離を行い、その上澄み液を除去した。
この洗浄操作を2回繰り返して行った。
【0144】
(4) 次に、得られた沈殿物に、0.75Mの過塩素酸の300mLを加えた。
そして、遠心分離機で遠心分離した後、上澄み液を分取した。
残った沈殿物に0.75Mの過塩素酸の400mLを加えた。
これについても、遠心分離機で遠心分離した後、上澄み液を分取した。
この上澄み液と先に分取した上澄み液とを合わせた。
なお、沈殿物は廃棄した。
【0145】
(5) 前記の合わせた上澄み液に0.75Mの過塩素酸を加えて、全体の容量を1,000mLとした。
次に、遠心分離機で遠心分離した後、上澄み液をグラスフィルター(グレード4)で濾過した。
【0146】
(6) 前記の濾過の濾液に、3,500mLのアセトンと21mLの濃塩酸の混合液を加えた。
濁りが生じてくるので、遠心分離機で遠心分離して、上澄み液を分取した。
この上澄み液に、アセトン2,500mLを加えた。
そして、再度、濁りが生じてくるので、これを遠心分離機で遠心分離して、上澄み液を分離し、残った沈殿物を集めた。
【0147】
(7) この集めた沈殿物を室温で自然乾燥させた。
以上の操作により、ウシHMGB1及びウシHMGB2を含むタンパク質画分が、およそ200mg得られた。
【0148】
(8) 前記のウシHMGB1及びウシHMGB2を含むタンパク質画分を、200mM塩化ナトリウムを含む7.5mMホウ酸ナトリウム緩衝液(pH9.0)の10mLに溶解した後、この200mM塩化ナトリウムを含む7.5mMホウ酸ナトリウム緩衝液(pH9.0)で充分に透析を行った。
【0149】
(9) この透析の後、7.5mMホウ酸ナトリウム緩衝液(pH9.0)で平衡化しておいたCM-セファデックスC25のカラムに添加した。
そしてその後、200mM塩化ナトリウムを含む7.5mMホウ酸ナトリウム緩衝液(pH9.0)により溶出させて、陽イオン交換クロマトグラフィーを行った。
【0150】
(10) ここで溶出した各画分を、SDS-ポリアクリルアミド電気泳動にかけ、その易動度よりウシHMGB1を含む画分、及びウシHMGB2を含む画分を各々特定した。
以上の操作により、ウシHMGB1及びウシHMGB2それぞれを分取した。
【0151】
〔参考例2〕(抗体(2H6)の調製)
(1) 前記参考例1により調製したウシHMGB1(全体長のもの)を免疫原として用いた。
【0152】
なお、このウシHMGB1(全体長のもの)は、ヒトHMGB1(全体長のもの)とアミノ酸配列の相同性が99.5%であり、ヒトHMGB1の替りに用いても問題ないものである。
【0153】
この免疫原としての前記参考例1で調製したウシHMGB1(全体長のもの)の1容量に対して、化学合成アジュバントとしてのFREUNDアジュバント(DIFCO LABORATORIES社)を1容量の割合で混合した。
【0154】
(2) 次に、マウス(BALB/c)の腹腔内に免疫原として、300~500μg/匹/回の前記のHMGB1溶液とFREUND完全アジュバントとの混合物を注射し、2週間後及び4週間後に、マウスの腹腔内に前記のHMGB1溶液とFREUND不完全アジュバントとの混合物を注射した。
【0155】
(3) 最終免疫より4週間後に、前記参考例1で調製したウシHMGB1(全体長のもの)の原液を300μg/匹によりブースターを行い、その翌日に、免疫したマウスの脾臓の細胞と、ミエローマ細胞(P3U1)を1対1から10対1の割合で混合し、一般的な方法でポリエチレングリコール〔PEG1500;Roche社(スイス国)〕を加えて細胞融合させ、生育したハイブリドーマコロニーを選別した。
【0156】
なお、具体的には、細胞融合は次のように行った。
混合した前記脾臓細胞とミエローマ細胞(P3U1)を遠心して上清を除き、室温でポリエチレングリコール〔PEG1500;Roche社(スイス国)〕1mLに1分間かけて懸濁した後、37℃で1分間撹拌した。
【0157】
血清不含培地1mLを1分間かけて加える作業を2回行い、その後、血清不含培地7mLを2分間かけて加えた。
【0158】
細胞を数回洗浄した後、ヒポキサンチン、アミノプテリン、チミジン含有培地に懸濁して96穴マイクロタイタープレートに分注して、37℃において5%CO存在下で培養した。
【0159】
生育したモノクローナル抗体産生細胞株(融合細胞株)の選別の方法としては、細胞融合から7~14日後、ウシHMGB1(全体長のもの)を固相化し、融合細胞培養上清を一次抗体としたELISA法の系にて行った。
【0160】
なお、このELISA法は具体的には、次のように行った。
(i) 前記の参考例1で調製したウシHMGB1、及びウシHMGB2(ヒトHMGB2とのアミノ酸配列の相同性100.0%)のそれぞれをリン酸緩衝生理食塩水(0.9%塩化ナトリウム水溶液)により1μg/mLの濃度となるように調製したもの、又は対照としてのリン酸緩衝生理食塩水(0.9%塩化ナトリウム水溶液)を、各々96穴マイクロタイタープレート〔Thermo Fisher Scientific Inc社(米国・イリノイ州)〕のウェルに100μL注入し、5℃、16~24時間(又は37℃2時間)静置し、前記のHMGB1、及びHMGB2のそれぞれを、前記マイクロタイタープレートのウェルに固相化し、更に1%BSAを含むリン酸緩衝生理食塩水にて5℃で16~24時間(又は37℃2時間)静置し、ブロッキングした。
【0161】
(ii) 次に、前記(i)のマイクロタイタープレートの各ウェルを洗浄液〔0.05%のTween20を含有するリン酸緩衝生理食塩水〕で3回洗浄した。
【0162】
(iii) 次に、前記(ii)で洗浄を行ったマイクロタイタープレートのウェルに、これらの融合細胞培養上清溶液のそれぞれを試料として100μL注入し、37℃で2時間静置し、前記マイクロタイタープレートのウェルに固相化された前記のHMGB1、及びHMGB2のそれぞれと、前記の各融合細胞培養上清溶液に含まれるモノクローナル抗体とを各々反応させた。
【0163】
(iv) 次に、前記(iii)のマイクロタイタープレートの各ウェルを前記の洗浄液で3回洗浄した。
【0164】
(v) 次に、前記(iv)で洗浄を行ったマイクロタイタープレートの各ウェルに、1%BSAを含むリン酸緩衝生理食塩水によって1000倍希釈したPOD標識抗マウスIgG抗体〔DakoCytomation社(デンマーク国)〕を100μL注入し、37℃で2時間静置し、反応を行わせた。
【0165】
(vi) 次に、前記(v)のマイクロタイタープレートの各ウェルを前記の洗浄液で3回洗浄した。
【0166】
(vii) 次に、0.2mMのEDTA・2ナトリウムを含む0.045%の3,3’,5,5’-テトラメチルベンジジン塩酸塩水溶液(pH2.0)よりなる発色液と、5mM過酸化水素、41mMクエン酸、0.2mMのEDTA・2ナトリウムを含む60mMリン酸二ナトリウム水溶液(pH4.3)よりなる基質液とを、1:1で混合して調製した発色基質液の100μLを、前記(vi)で洗浄を行ったマイクロタイタープレートの各ウェルに注入し、室温にて30分間静置し、反応を行わせ、発色させた。
【0167】
その後、0.7N硫酸よりなる反応停止液を各ウェルに100μL分注し、発色反応を停止させた。
【0168】
(viii) 次に、前記(vii)のマイクロタイタープレートの各ウェルについて、分光光度計を用いて、主波長450nm及び副波長550nmにおける吸光度を測定した。
【0169】
上記の測定により、HMGB1に結合する抗体を産生する融合細胞株を選別し、そして、生育した融合細胞株の中から1つのクローンを確立し、2H6株と命名した。
【0170】
(4) この選別したモノクローナル抗体産生細胞株からIgG(免疫グロブリンG)を次のように精製した。
【0171】
このモノクローナル抗体産生細胞株を、PFHM-II(GIBCO社)を用いてCOインキュベータ内37℃で培養した。
【0172】
培養後、上清中のIgGをプロテインAカラム〔GE Healthcare Bio-Sciences社(スウェーデン国)〕に結合させた。
【0173】
結合させたIgGを、100mMクエン酸水溶液(pH3.0)で溶出した。
【0174】
溶出液1容量に対して、0.5Mリン酸緩衝液(pH7.5)緩衝液1容量を添加し、精製IgGとして、HMGB1に結合する抗体をモノクローナル抗体産生細胞株(2H6)より取得した。
【0175】
このモノクローナル抗体を抗体(2H6)と名付けた。
【0176】
「抗体(2H6)」のモノクローナル抗体産生細胞株である181208 2H6株は、独立行政法人製品評価技術基盤機構の特許微生物寄託センター[NPMD](日本国千葉県木更津市かずさ鎌足二丁目5番8号)に、「受託番号:NITE P-02843」として2018年12月20日付けにて寄託されている。
【0177】
〔参考例3〕(抗体(2D4)の調製)
前記参考例2とは別の時に、前記参考例2の(1)~(4)の記載の通りに操作を行い、再度、抗HMGB1モノクローナル抗体の調製を行った。
【0178】
その結果、生育した融合細胞株の中から一つのクローンを確立し、2D4株と命名した。
【0179】
そして、2D4株のモノクローナル抗体産生細胞株から抗HMGB1モノクローナル抗体を得ることができた。
【0180】
このモノクローナル抗体を抗体(2D4)と名付けた。
【0181】
「抗体(2D4)」のモノクローナル抗体産生細胞株である181212 2D4株は、独立行政法人製品評価技術基盤機構の特許微生物寄託センター[NPMD](日本国千葉県木更津市かずさ鎌足二丁目5番8号)に、「受託番号:NITE P-02842」として2018年12月20日付けにて寄託されている。
【0182】
〔参考例4〕(抗HMGB1,2モノクローナル抗体(5D1)の調製)
前記参考例2及び参考例3とは別の時に、前記参考例2の(1)~(4)の記載の通りに操作を行い、HMGB1及びHMGB2に結合するモノクローナル抗体の調製を行った。
【0183】
その結果、生育した融合細胞株の中から一つのクローンを確立し、5D1株と命名した。
【0184】
そして、5D1株のモノクローナル抗体産生細胞株からHMGB1とHMGB2に結合するモノクローナル抗体を得ることができた。
【0185】
このモノクローナル抗体を抗HMGB1,2モノクローナル抗体(5D1)(以下、「抗体(5D1)」と記載することがある。)と名付けた。
【0186】
「抗体(5D1)」のモノクローナル抗体産生細胞株である181212 5D1株は、独立行政法人製品評価技術基盤機構の特許微生物寄託センター[NPMD](日本国千葉県木更津市かずさ鎌足二丁目5番8号)に、「受託番号:NITE P-02844」として2018年12月20日付けにて寄託されている。
【0187】
〔実施例1〕(本発明の効果の確認-1)
ラテックス比濁法により、本発明の効果の確認を行った。
より詳細には、ラテックス比濁法により、各種化合物を含む第1試薬を用いてHMGB1及びHMGB2の測定を行い、HMGB2の測り込み量を求め、本発明の効果の確認を行った。
【0188】
1.試薬
i)第1試薬
(I)第1試薬-1(PIPES)
400mMのPIPESを含む、400mMPIPES水溶液(pH8.0)を「第1試薬-1(PIPES)」とした。
【0189】
(II)第1試薬-2(イミダゾール)
400mMのイミダゾールを含む、400mMイミダゾール水溶液(pH8.0)を「第1試薬-2(イミダゾール)」とした。
【0190】
(III)第1試薬-3(トリス)
400mMのトリス[トリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン]を含む、400mMトリス水溶液(pH8.0)を「第1試薬-3(トリス)」とした。
【0191】
(IV)第1試薬-4(ホウ酸)
400mMのホウ酸を含む、400mMホウ酸水溶液(pH8.0)を「第1試薬-4(ホウ酸)」とした。
【0192】
ii)第2試薬
(a) 前記参考例2で取得した抗体(2H6)と前記参考例3で取得した抗体(2D4)の等量混合物を、緩衝液を加えて、2000μg/mLに希釈した。
【0193】
(b) 次に、前記の希釈物の1.0mLを、ラテックス粒子〔藤倉化成社(日本国)〕の1.0mLと混合して、接触させて、2~8℃で16時間静置し、各モノクローナル抗体をラテックス粒子に感作した。
【0194】
(c) 次に、これらの各モノクローナル抗体を感作したラテックス粒子を、2%BSAを含むトリス緩衝液(pH7.0)6.0mLに添加混合し、ブロッキング処理を行った。
このようにして抗体(2H6)及び抗体(2D4)を感作させたラテックス粒子液(40μg/mL)を調製した。
【0195】
(d) 別途、前記参考例4で取得した抗体(5D1)を、緩衝液を加えて、1000μg/mLに希釈した。
【0196】
(e) 次に、前記の希釈物の1.0mLを、ラテックス粒子〔藤倉化成社(日本国)〕の1.0mLと混合して、接触させて、2~8℃で16間静置し、前記モノクローナル抗体をラテックス粒子に感作した。
【0197】
(f) 次に、このモノクローナル抗体を感作したラテックス粒子を、2%BSAを含むトリス緩衝液(pH7.0)6.0mLに添加混合し、ブロッキング処理を行った。
このようにして抗体(5D1)を感作させたラテックス粒子液(20μg/mL)を調製した。
【0198】
(g) 次に、前記(c)で調製した抗体(2H6)及び抗体(2D4)を感作させたラテックス粒子液の50mLと、前記(f)で調製した抗体(5D1)を感作させたラテックス粒子液の50mLとを、混合し、第2試薬を調製した。
【0199】
2.試料
i)試料(HMGB1)
精製ブタHMGB1(胸腺由来)[ヒトHMGB1とのアミノ酸配列の相同性99.1%]を、80ng/mLになるように希釈液(市販のHMGB1測定試薬「HMGB1 ELISA Kit II」〔シノテスト社(日本国)〕の「検体希釈液」)にて希釈して「試料(HMGB1)」を調製した。
【0200】
ii)試料(HMGB2)
精製ブタHMGB2(胸腺由来)[ヒトHMGB2とのアミノ酸配列の相同性87.9%]を、80ng/mLになるように希釈液(市販のHMGB1測定試薬「HMGB1 ELISA Kit II」〔シノテスト社(日本国)〕の「検体希釈液」)にて希釈して「試料(HMGB2)」を調製した。
【0201】
iii)試料(生理食塩水)
生理食塩水[0.9%(w/v)塩化ナトリウム水溶液]を、「試料(生理食塩水)」とした。
【0202】
3.測定
i) 測定は日立7180形自動分析装置〔日立ハイテクノロジーズ社(日本国)〕を使用して行った。
【0203】
ii) 試料として前記2のi)試料(HMGB1)、前記2のii)試料(HMGB2)及び前記2のiii)試料(生理食塩水)のそれぞれの24μLを用い、第1試薬として前記1のi)の(I)第1試薬-1(PIPES)の120μLを用い、そして、第2試薬として前記1のii)の第2試薬の40μLを用い、2ポイント-エンド法にて前記試料に前記第1試薬-1(PIPES)を添加、混合し、37℃で5分間静置後、前記第2試薬を添加、混合し、37℃で5分間静置し、前記第2試薬添加後5分間の吸光度変化量の測定を行った。反応時間は計10分間、測定波長は800nmにて行った。
前記の試料(生理食塩水)の吸光度変化量を、試薬ブランク(試薬盲検)とした。
【0204】
次の計算式によりHMGB2測り込み(%)を算出した。
HMGB2測り込み(%)=[試料(HMGB2)測定時の吸光度変化量-試薬ブランク]÷[試料(HMGB1)測定時の吸光度変化量-試薬ブランク]
【0205】
なお、この場合の試料に含まれていたHMGB1と抗HMGB1抗体との抗原抗体反応時に共存するPIPESの濃度は、261mMである。
【0206】
iii) 第1試薬として前記1のi)の(I)第1試薬-1(PIPES)に替えて前記1のi)の(II)第1試薬-2(イミダゾール)を用いる他は、前記ii)の記載のとおりに実施し、第1試薬-2(イミダゾール)使用時のHMGB2測り込み(%)を求めた。
【0207】
なお、この場合の試料に含まれていたHMGB1と抗HMGB1抗体との抗原抗体反応時に共存するイミダゾールの濃度は、261mMである。
【0208】
iv) 第1試薬として前記1のi)の(I)第1試薬-1(PIPES)に替えて前記1のi)の(III)第1試薬-3(トリス)を用いる他は、前記ii)の記載のとおりに実施し、第1試薬-3(トリス)使用時のHMGB2測り込み(%)を求めた。
【0209】
なお、この場合の試料に含まれていたHMGB1と抗HMGB1抗体との抗原抗体反応時に共存するトリス[トリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン]の濃度は、261mMである。
【0210】
v) 第1試薬として前記1のi)の(I)第1試薬-1(PIPES)に替えて前記1のi)の(IV)第1試薬-4(ホウ酸)を用いる他は、前記ii)の記載のとおりに実施し、第1試薬-4(ホウ酸)使用時のHMGB2測り込み(%)を求めた。
【0211】
なお、この場合の試料に含まれていたHMGB1と抗HMGB1抗体との抗原抗体反応時に共存するホウ酸の濃度は、261mMである。
【0212】
4.測定結果
前記3における測定の結果を、図1に示した。
【0213】
この図1において、縦軸はHMGB2測り込み(%)の数値を示し、横軸は左側から順に第1試薬として、第1試薬-1(PIPES)を用いた場合、第1試薬-2(イミダゾール)を用いた場合、第1試薬-3(トリス)を用いた場合、そして第1試薬-4(ホウ酸)を用いた場合をそれぞれ示す。
【0214】
(1)第1試薬として第1試薬-1(PIPES)を用いた場合
図1において、第1試薬として第1試薬-1(PIPES)を用いた場合のHMGB2測り込み(%)は、16.5%に達していた。
【0215】
(2)第1試薬として第1試薬-2(イミダゾール)を用いた場合
図1において、第1試薬として第1試薬-2(イミダゾール)を用いた場合のHMGB2測り込み(%)は、11.0%に達していた。
【0216】
(3)第1試薬として第1試薬-3(トリス)を用いた場合
図1において、第1試薬として第1試薬-3(トリス)を用いた場合のHMGB2測り込み(%)は、9.4%に達していた。
【0217】
(4)第1試薬として第1試薬-4(ホウ酸)を用いた場合
図1において、第1試薬として第1試薬-4(ホウ酸)を用いた場合のHMGB2測り込み(%)は、1.9%に抑えられていた。
【0218】
以上の測定結果から、試料に含まれるHMGB1を抗HMGB1抗体との抗原抗体反応を利用して測定を行う免疫学的測定方法又は免疫学的測定試薬において、試料に含まれていたHMGB1と抗HMGB1抗体との抗原抗体反応時にホウ素及びその化合物からなる群から選ばれる少なくとも1種の化合物を共存又は含有させることにより、HMGB2の測り込みを抑制することができることが確かめられた。
【0219】
〔実施例2〕(本発明の効果の確認-2)
ラテックス比濁法により、本発明の効果の確認を行った。
より詳細には、ラテックス比濁法により、各種濃度のホウ酸を含む第1試薬を用いてHMGB1及びHMGB2の測定を行い、HMGB2の測り込み量を求め、本発明の効果の確認を行った。
【0220】
1.試薬
i)第1試薬
(I)第1試薬-1(42.4mMホウ酸)
65mMのホウ酸を含む、65mMホウ酸水溶液(pH8.0)を「第1試薬-1(42.4mMホウ酸)」とした。
【0221】
なお、後記の「3.測定」に記載のとおり、日立7180形自動分析装置で測定を行った場合の試料に含まれていたHMGB1と抗HMGB1抗体との抗原抗体反応時に共存するホウ酸の濃度は、42.4mMであった。
【0222】
(II)第1試薬-2(71.7mMホウ酸)
110mMのホウ酸を含む、110mMホウ酸水溶液(pH8.0)を「第1試薬-2(71.7mMホウ酸)」とした。
【0223】
なお、後記の「3.測定」に記載のとおり、日立7180形自動分析装置で測定を行った場合の試料に含まれていたHMGB1と抗HMGB1抗体との抗原抗体反応時に共存するホウ酸の濃度は、71.7mMであった。
【0224】
(III)第1試薬-3(101.1mMホウ酸)
155mMのホウ酸を含む、155mMホウ酸水溶液(pH8.0)を「第1試薬-3(101.1mMホウ酸)」とした。
【0225】
なお、後記の「3.測定」に記載のとおり、日立7180形自動分析装置で測定を行った場合の試料に含まれていたHMGB1と抗HMGB1抗体との抗原抗体反応時に共存するホウ酸の濃度は、101.1mMであった。
【0226】
(IV)第1試薬-4(130.4mMホウ酸)
200mMのホウ酸を含む、200mMホウ酸水溶液(pH8.0)を「第1試薬-4(130.4mMホウ酸)」とした。
【0227】
なお、後記の「3.測定」に記載のとおり、日立7180形自動分析装置で測定を行った場合の試料に含まれていたHMGB1と抗HMGB1抗体との抗原抗体反応時に共存するホウ酸の濃度は、130.4mMであった。
【0228】
ii)第2試薬
前記実施例1の1の「ii)第2試薬」の記載のとおりに行い、第2試薬を調製した。
【0229】
2.試料
i)試料(HMGB1)
前記実施例1の2の「i)試料(HMGB1)」の記載のとおりに行い、「試料(HMGB1)」を調製した。
【0230】
ii)試料(HMGB2)
前記実施例1の2の「ii)試料(HMGB2)」の記載のとおりに行い、「試料(HMGB1)」を調製した。
【0231】
iii)試料(生理食塩水)
生理食塩水[0.9%(w/v)塩化ナトリウム水溶液]を、「試料(生理食塩水)」とした。
【0232】
3.測定
i) 測定は日立7180形自動分析装置〔日立ハイテクノロジーズ社(日本国)〕を使用して行った。
【0233】
ii) 試料として前記2のi)試料(HMGB1)、前記2のii)試料(HMGB2)及び前記2のiii)試料(生理食塩水)のそれぞれの24μLを用い、第1試薬として前記1のi)の(I)第1試薬-1(42.4mMホウ酸)の120μLを用い、そして、第2試薬として前記1のii)の第2試薬の40μLを用い、2ポイント-エンド法にて前記試料に前記第1試薬-1(42.4mMホウ酸)を添加、混合し、37℃で5分間静置後、前記第2試薬を添加、混合し、37℃で5分間静置し、前記第2試薬添加後5分間の吸光度変化量の測定を行った。反応時間は計10分間、測定波長は800nmにて行った。
前記の試料(生理食塩水)の吸光度変化量を、試薬ブランク(試薬盲検)とした。
【0234】
次の計算式によりHMGB2測り込み(%)を算出した。
HMGB2測り込み(%)=[試料(HMGB2)測定時の吸光度変化量-試薬ブランク]÷[試料(HMGB1)測定時の吸光度変化量-試薬ブランク]
【0235】
なお、この場合の試料に含まれていたHMGB1と抗HMGB1抗体との抗原抗体反応時に共存するホウ酸の濃度は、42.4mMである。
【0236】
iii) 第1試薬として前記1のi)の(I)第1試薬-1(42.4mMホウ酸)に替えて前記1のi)の(II)第1試薬-2(71.7mMホウ酸)を用いる他は、前記ii)の記載のとおりに実施し、第1試薬-2(71.7mMホウ酸)使用時のHMGB2測り込み(%)を求めた。
【0237】
なお、この場合の試料に含まれていたHMGB1と抗HMGB1抗体との抗原抗体反応時に共存するホウ酸の濃度は、71.7mMである。
【0238】
iv) 第1試薬として前記1のi)の(I)第1試薬-1(42.4mMホウ酸)に替えて前記1のi)の(III)第1試薬-3(101.1mMホウ酸)を用いる他は、前記ii)の記載のとおりに実施し、第1試薬-3(101.1mMホウ酸)使用時のHMGB2測り込み(%)を求めた。
【0239】
なお、この場合の試料に含まれていたHMGB1と抗HMGB1抗体との抗原抗体反応時に共存するホウ酸の濃度は、101.1mMである。
【0240】
v) 第1試薬として前記1のi)の(I)第1試薬-1(42.4mMホウ酸)に替えて前記1のi)の(IV)第1試薬-4(130.4mMホウ酸)を用いる他は、前記ii)の記載のとおりに実施し、第1試薬-4(130.4mMホウ酸)使用時のHMGB2測り込み(%)を求めた。
【0241】
なお、この場合の試料に含まれていたHMGB1と抗HMGB1抗体との抗原抗体反応時に共存するホウ酸の濃度は、130.4mMである。
【0242】
4.測定結果
前記3における測定の結果を、図2に示した。
【0243】
この図2において、縦軸はHMGB2測り込み(%)の数値を示し、横軸は左側から順に第1試薬として、第1試薬-1(42.4mMホウ酸)を用いた場合、第1試薬-2(71.7mMホウ酸)を用いた場合、第1試薬-3(101.1mMホウ酸)を用いた場合、そして第1試薬-4(130.4mMホウ酸)を用いた場合をそれぞれ示す。
【0244】
(1)第1試薬として第1試薬-1(42.4mMホウ酸)を用いた場合
図2において、第1試薬として第1試薬-1(42.4mMホウ酸)を用いた場合のHMGB2測り込み(%)は、8.0%に抑えられていた。
【0245】
(2)第1試薬として第1試薬-2(71.7mMホウ酸)を用いた場合
図2において、第1試薬として第1試薬-2(71.7mMホウ酸)を用いた場合のHMGB2測り込み(%)は、7.4%に抑えられていた。
【0246】
(3)第1試薬として第1試薬-3(101.1mMホウ酸)を用いた場合
図2において、第1試薬として第1試薬-3(101.1mMホウ酸)を用いた場合のHMGB2測り込み(%)は、6.6%に抑えられていた。
【0247】
(4)第1試薬として第1試薬-4(130.4mMホウ酸)を用いた場合
図2において、第1試薬として第1試薬-4(130.4mMホウ酸)を用いた場合のHMGB2測り込み(%)は、6.3%に抑えられていた。
【0248】
以上の測定結果からも、試料に含まれるHMGB1を抗HMGB1抗体との抗原抗体反応を利用して測定を行う免疫学的測定方法又は免疫学的測定試薬において、試料に含まれていたHMGB1と抗HMGB1抗体との抗原抗体反応時にホウ素及びその化合物からなる群から選ばれる少なくとも1種の化合物を共存又は含有させることにより、HMGB2の測り込みを抑制することができることが確かめられた。
【0249】
〔実施例3〕(本発明の効果の確認-3)
ラテックス比濁法により、本発明の効果の確認を行った。
より詳細には、ラテックス比濁法により、各種のホウ素及びその化合物を含む第1試薬を用いてHMGB1及びHMGB2の測定を行い、HMGB2の測り込み量を求め、本発明の効果の確認を行った。
【0250】
1.試薬
i)第1試薬
(I)第1試薬-1(71.7mMホウ酸)
110mMのホウ酸を含む、110mMホウ酸水溶液(pH8.0)を「第1試薬-1(71.7mMホウ酸)」とした。
【0251】
なお、後記の「3.測定」に記載のとおり、日立7180形自動分析装置で測定を行った場合の試料に含まれていたHMGB1と抗HMGB1抗体との抗原抗体反応時に共存するホウ酸の濃度は、71.7mMであった。
【0252】
(II)第1試薬-2(71.7mM三酸化二ホウ素)
110mMの三酸化二ホウ素(無水ホウ酸)を含む、110mM三酸化二ホウ素水溶液(pH8.0)を「第1試薬-2(71.7mM三酸化二ホウ素)」とした。
【0253】
なお、後記の「3.測定」に記載のとおり、日立7180形自動分析装置で測定を行った場合の試料に含まれていたHMGB1と抗HMGB1抗体との抗原抗体反応時に共存する三酸化二ホウ素(無水ホウ酸)の濃度は、71.7mMであった。
【0254】
(III)第1試薬-3(71.7mMメタホウ酸ナトリウム四水和物)
110mMのメタホウ酸ナトリウム四水和物を含む、110mMメタホウ酸ナトリウム四水和物水溶液(pH8.0)を「第1試薬-3(71.7mMメタホウ酸ナトリウム四水和物)」とした。
【0255】
なお、後記の「3.測定」に記載のとおり、日立7180形自動分析装置で測定を行った場合の試料に含まれていたHMGB1と抗HMGB1抗体との抗原抗体反応時に共存するメタホウ酸ナトリウム四水和物の濃度は、71.7mMであった。
【0256】
(IV)第1試薬-4(71.7mMホウ酸アンモニウム)
110mMのホウ酸アンモニウムを含む、110mMホウ酸アンモニウム水溶液(pH8.0)を「第1試薬-4(71.7mMホウ酸アンモニウム)」とした。
【0257】
なお、後記の「3.測定」に記載のとおり、日立7180形自動分析装置で測定を行った場合の試料に含まれていたHMGB1と抗HMGB1抗体との抗原抗体反応時に共存するホウ酸アンモニウムの濃度は、71.7mMであった。
【0258】
ii)第2試薬
前記実施例1の1の「ii)第2試薬」の記載のとおりに行い、第2試薬を調製した。
【0259】
2.試料
i)試料(HMGB1)
前記実施例1の2の「i)試料(HMGB1)」の記載のとおりに行い、「試料(HMGB1)」を調製した。
【0260】
ii)試料(HMGB2)
前記実施例1の2の「ii)試料(HMGB2)」の記載のとおりに行い、「試料(HMGB1)」を調製した。
【0261】
iii)試料(生理食塩水)
生理食塩水[0.9%(w/v)塩化ナトリウム水溶液]を、「試料(生理食塩水)」とした。
【0262】
3.測定
i) 測定は日立7180形自動分析装置〔日立ハイテクノロジーズ社(日本国)〕を使用して行った。
【0263】
ii) 試料として前記2のi)試料(HMGB1)、前記2のii)試料(HMGB2)及び前記2のiii)試料(生理食塩水)のそれぞれの24μLを用い、第1試薬として前記1のi)の(I)第1試薬-1(71.7mMホウ酸)の120μLを用い、そして、第2試薬として前記1のii)の第2試薬の40μLを用い、2ポイント-エンド法にて前記試料に前記第1試薬-1(71.7mMホウ酸)を添加、混合し、37℃で5分間静置後、前記第2試薬を添加、混合し、37℃で5分間静置し、前記第2試薬添加後5分間の吸光度変化量の測定を行った。反応時間は計10分間、測定波長は800nmにて行った。
前記の試料(生理食塩水)の吸光度変化量を、試薬ブランク(試薬盲検)とした。
【0264】
次の計算式によりHMGB2測り込み(%)を算出した。
HMGB2測り込み(%)=[試料(HMGB2)測定時の吸光度変化量-試薬ブランク]÷[試料(HMGB1)測定時の吸光度変化量-試薬ブランク]
【0265】
なお、この場合の試料に含まれていたHMGB1と抗HMGB1抗体との抗原抗体反応時に共存するホウ酸の濃度は、71.7mMである。
【0266】
iii) 第1試薬として前記1のi)の(I)第1試薬-1(71.7mMホウ酸)に替えて前記1のi)の(II)第1試薬-2(71.7mM三酸化二ホウ素)を用いる他は、前記ii)の記載のとおりに実施し、第1試薬-2(71.7mM三酸化二ホウ素)使用時のHMGB2測り込み(%)を求めた。
【0267】
なお、この場合の試料に含まれていたHMGB1と抗HMGB1抗体との抗原抗体反応時に共存する三酸化二ホウ素(無水ホウ酸)の濃度は、71.7mMである。
【0268】
iv) 第1試薬として前記1のi)の(I)第1試薬-1(71.7mMホウ酸)に替えて前記1のi)の(III)第1試薬-3(71.7mMメタホウ酸ナトリウム四水和物)を用いる他は、前記ii)の記載のとおりに実施し、第1試薬-3(71.7mMメタホウ酸ナトリウム四水和物)使用時のHMGB2測り込み(%)を求めた。
【0269】
なお、この場合の試料に含まれていたHMGB1と抗HMGB1抗体との抗原抗体反応時に共存するメタホウ酸ナトリウム四水和物の濃度は、71.7mMである。
【0270】
v) 第1試薬として前記1のi)の(I)第1試薬-1(71.7mMホウ酸)に替えて前記1のi)の(IV)第1試薬-4(71.7mMホウ酸アンモニウム)を用いる他は、前記ii)の記載のとおりに実施し、第1試薬-4(71.7mMホウ酸アンモニウム)使用時のHMGB2測り込み(%)を求めた。
【0271】
なお、この場合の試料に含まれていたHMGB1と抗HMGB1抗体との抗原抗体反応時に共存するホウ酸アンモニウムの濃度は、71.7mMである。
【0272】
4.測定結果
前記3における測定の結果を、図3に示した。
【0273】
この図3において、縦軸はHMGB2測り込み(%)の数値を示し、横軸は左側から順に第1試薬として、第1試薬-1(71.7mMホウ酸)を用いた場合、第1試薬-2(71.7mM三酸化二ホウ素)を用いた場合、第1試薬-3(71.7mMメタホウ酸ナトリウム四水和物)を用いた場合、そして第1試薬-4(71.7mMホウ酸アンモニウム)を用いた場合をそれぞれ示す。
【0274】
(1)第1試薬として第1試薬-1(71.7mMホウ酸)を用いた場合
図3において、第1試薬として第1試薬-1(71.7mMホウ酸)を用いた場合のHMGB2測り込み(%)は、7.4%に抑えられていた。
【0275】
(2)第1試薬として第1試薬-2(71.7mM三酸化二ホウ素)を用いた場合
図3において、第1試薬として第1試薬-2(71.7mM三酸化二ホウ素)を用いた場合のHMGB2測り込み(%)は、6.5%に抑えられていた。
【0276】
(3)第1試薬として第1試薬-3(71.7mMメタホウ酸ナトリウム四水和物)を用いた場合
図3において、第1試薬として第1試薬-3(71.7mMメタホウ酸ナトリウム四水和物)を用いた場合のHMGB2測り込み(%)は、7.0%に抑えられていた。
【0277】
(4)第1試薬として第1試薬-4(71.7mMホウ酸アンモニウム)を用いた場合
図3において、第1試薬として第1試薬-4(71.7mMホウ酸アンモニウム)を用いた場合のHMGB2測り込み(%)は、6.2%に抑えられていた。
【0278】
以上の測定結果からも、試料に含まれるHMGB1を抗HMGB1抗体との抗原抗体反応を利用して測定を行う免疫学的測定方法又は免疫学的測定試薬において、試料に含まれていたHMGB1と抗HMGB1抗体との抗原抗体反応時にホウ素及びその化合物からなる群から選ばれる少なくとも1種の化合物を共存又は含有させることにより、HMGB2の測り込みを抑制することができることが確かめられた。
図1
図2
図3