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特開2024-1191造血細胞移植後の急性移植片対宿主病の発症のリスクを低減する方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024001191
(43)【公開日】2024-01-09
(54)【発明の名称】造血細胞移植後の急性移植片対宿主病の発症のリスクを低減する方法
(51)【国際特許分類】
   A61K 38/57 20060101AFI20231226BHJP
   A61P 37/06 20060101ALI20231226BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20231226BHJP
   A61P 7/00 20060101ALI20231226BHJP
   A61K 31/573 20060101ALI20231226BHJP
   A61K 31/519 20060101ALI20231226BHJP
   A61K 31/706 20060101ALI20231226BHJP
   A61K 38/13 20060101ALI20231226BHJP
   A61K 31/365 20060101ALI20231226BHJP
   A61K 47/54 20170101ALI20231226BHJP
   A61K 39/395 20060101ALI20231226BHJP
   A61K 35/28 20150101ALI20231226BHJP
   A61P 7/06 20060101ALI20231226BHJP
   A61P 17/00 20060101ALI20231226BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20231226BHJP
   A61P 35/02 20060101ALI20231226BHJP
   A61P 3/00 20060101ALI20231226BHJP
   A61K 45/00 20060101ALI20231226BHJP
   A61K 31/58 20060101ALI20231226BHJP
【FI】
A61K38/57
A61P37/06
A61P43/00 121
A61P7/00
A61K31/573
A61K31/519
A61K31/706
A61K38/13
A61K31/365
A61K47/54
A61K39/395 D
A61K39/395 N
A61K35/28
A61P7/06
A61P17/00
A61P35/00
A61P35/02
A61P3/00
A61K45/00
A61K31/58
【審査請求】有
【請求項の数】1
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2023174014
(22)【出願日】2023-10-06
(62)【分割の表示】P 2020529342の分割
【原出願日】2018-11-30
(31)【優先権主張番号】62/593,446
(32)【優先日】2017-12-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】62/729,376
(32)【優先日】2018-09-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】500501443
【氏名又は名称】シーエスエル・ベーリング・エルエルシー
(74)【代理人】
【識別番号】100127926
【弁理士】
【氏名又は名称】結田 純次
(74)【代理人】
【識別番号】100140132
【弁理士】
【氏名又は名称】竹林 則幸
(72)【発明者】
【氏名】マルク・ウークニス
(72)【発明者】
【氏名】クリスティーネ・フォークト
(72)【発明者】
【氏名】ゴータム・バヘティ
(72)【発明者】
【氏名】ジョン・ロバーツ
(57)【要約】      (修正有)
【課題】造血細胞移植(HCT)を受けている患者において、移植片対宿主病(GVHD)の発病のリスクを防止するまたは低減する方法を提供する。
【解決手段】HCT処置の前後両方にてアルファ-1アンチトリプシン(A1ATまたはAAT)を患者に投与する特定の方法によって、移植片対宿主病(GVHD)の発病のリスクを防止するまたは低減する方法に関する。本開示はまた、HCT後の急性GVHD(aGVHD)をA1ATにより治療する、具体的な方法にも関する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
造血細胞移植(HCT)を受けている対象において急性移植片対宿主病(aGVHD)の発症のリスクを低減する方法であって、以下のスケジュール:
(a)HCT処置の少なくとも1日前に、アルファ-1アンチトリプシン(A1AT)少なくとも120mg/kgの用量を対象に投与する工程;および
(b)HCTの後に続いて少なくとも4週間、週に2回、A1AT少なくとも90mg/kgの用量を対象に投与し、場合により、続いて少なくともさらなる4週間、週に1回、A1AT少なくとも90mg/kgの用量を投与する工程、
に従い、
場合により少なくとも1つの免疫抑制剤と組み合わせて、A1ATを投与する工程を含む、
前記方法。
【請求項2】
(b)HCTの後に続いて少なくとも4週間、週に2回、A1AT少なくとも90mg/kgの用量を対象に投与し、続いて少なくともさらなる4週間、週に1回、A1AT少なくとも90mg/kgの用量を投与する工程を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
(a)HCT処置の少なくとも1日前に、A1AT 120、130、140、150、160、170、180、190、200、220、または240mg/kgの用量を対象に投与する工程を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
(a)HCT処置の1日前、2日前、または3日前に、A1AT少なくとも120mg/kgの用量を対象に投与する工程を含む、請求項1、2、または3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
(a)HCT処置の1日前に、A1AT少なくとも120mg/kgの用量を、対象に投与する工程を含む、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
(b)HCTの後に続いて少なくとも4週間、週に2回、A1AT 90、100、110、120、130、140、150、160、180、または200mg/kgの用量を、対象に投与し、場合により、続いて少なくともさらなる4週間、週に1回、A1AT 90、100、110、120、130、140、150、160、180、または200mg/kgの用量を投与する工程を含む、請求項1または3~5のいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
(b)HCTの後に続いて少なくとも4週間、週に2回、A1AT 90、100、110、120、130、140、150、160、180、または200mg/kgの用量を、対象に投与し、続いて少なくともさらなる4週間、週に1回、A1AT 90、100、110、120、130、140、150、160、180、または200mg/kgの用量を投与する工程を含む、請求項2記載の方法。
【請求項8】
造血細胞移植(HCT)を受けている対象において急性移植片対宿主病(aGVHD)の発症のリスクを低減する方法であって、以下のスケジュール:
(a)HCT処置の1日前に、A1AT 120mg/kgの用量を対象に投与する工程;および
(b)HCTの後に続いて少なくとも4週間、週に2回、A1AT 90mg/kgの用量を対象に投与し、場合により、続いて少なくともさらなる4週間、週に1回、A1AT 90mg/kgの用量を投与する工程、
に従い、
場合により少なくとも1つの免疫抑制剤と組み合わせて、アルファ-1アンチトリプシン(A1AT)を投与する工程を含む、
前記方法。
【請求項9】
(b)HCTの後に続いて少なくとも4週間、週に2回、A1AT 90mg/kgの用量を対象に投与し、続いて少なくともさらなる4週間、週に1回、A1AT 90mg/kgの用量を投与する工程を含む、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
造血細胞移植(HCT)を受けている対象において急性移植片対宿主病(aGVHD)の発症のリスクを低減する方法であって、以下のスケジュール:
(a)HCT処置の1日前に、A1AT 180mg/kgの用量を対象に投与する工程;および
(b)HCTの後に続いて少なくとも4週間、週に2回、A1AT 120mg/kgの用量を対象に投与し、場合により、続いて少なくともさらなる4週間、週に1回、A1AT 120mg/kgの用量を投与する工程、
に従い、
場合により少なくとも1つの免疫抑制剤と組み合わせて、アルファ-1アンチトリプシン(A1AT)を投与する工程を含む、
前記方法。
【請求項11】
(b)HCTの後に続いて少なくとも4週間、週に2回、A1AT 120mg/kgの用量を対象に投与し、続いて少なくともさらなる4週間、週に1回、A1AT 120mg/kgの用量を投与する工程、
を含む、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
A1ATの投与は、HCT処置後少なくとも100日間継続する、請求項1~11のいずれか1項に記載の方法。
【請求項13】
対象は、メチルプレドニゾン、メチルプレドニゾロン、または別のステロイド剤を含む、少なくとも1つの免疫抑制剤を投与される、請求項1~12のいずれか1項に記載の方法。
【請求項14】
対象は、HCT処置の後に続いて1日あたりメチルプレドニゾンまたはメチルプレドニゾロン1~2mg/kgを投与される、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
対象は、タクロリムス、シクロスポリン、別のカルシニューリン阻害剤、および/またはメトトレキセートを含む少なくとも1つの免疫抑制剤を投与される、請求項1~14のいずれか1項に記載の方法。
【請求項16】
対象は、ミコフェノール酸モフェチル(MMF)、抗TNF抗体、抗リンパ球グロブリン(ATG)、および/または間葉系幹細胞を投与される、請求項1~15のいずれか1項に記載の方法。
【請求項17】
対象は骨髄破壊的コンディショニングレジメンを受ける、請求項1~16のいずれか1項に記載の方法。
【請求項18】
対象は強度減弱コンディショニングレジメンを受ける、請求項1~17のいずれか1項に記載の方法。
【請求項19】
HCT処置は、(a)少なくとも1つのHLAミスマッチがある血縁ドナー、または(
b)少なくとも1つのHLAミスマッチがあるまたはない非血縁ドナー、由来の細胞を含む同種異系のHCT処置である、請求項1~18のいずれか1項に記載の方法。
【請求項20】
対象は、白血病、リンパ腫、骨髄腫、地中海貧血症、鎌状赤血球貧血、重症複合免疫不全症、再生不良性貧血、もしくは骨髄異形成症候群のような遺伝子性の造血障害に罹患しており、または、
急性骨髄性白血病(AML)、急性リンパ芽球性白血病(ALL)、慢性骨髄性白血病(CML)、慢性リンパ芽球性白血病(CLL)、骨髄増殖性障害、骨髄異形成症候群、多発性骨髄腫、非ホジキンリンパ腫、ホジキン病、再生不良性貧血、赤芽球癆、発作性夜間ヘモグロビン尿症、ファンコニー貧血、重症型地中海貧血、鎌状赤血球貧血、重症複合免疫不全症(SCID)、ウィスコット-アルドリッチ症候群、血球貪食性リンパ組織球症(HLH)、ムコ多糖症のような先天性代謝異常症、ゴーシェ病、異染性白質ジストロフィー、副腎白質ジストロフィー、表皮水疱症、重症先天性好中球減少症、シュワッフマン-ダイヤモンド症候群、ダイヤモンド-ブラックファン貧血、もしくは白血球粘着不全症、
に罹患している、請求項1~19のいずれか1項に記載の方法。
【請求項21】
対象は、HCTの後に続いてステージIIIまたはIVのaGVHDを発病するリスクに晒されている、請求項1~20のいずれか1項に記載の方法。
【請求項22】
対象における中央値の血清A1ATレベルは、HCT処置の当日で3.5mg/mLを上回りおよびHCT処置後少なくとも28日間、3.5mg/mLを依然として上回る、請求項1~7および10~21のいずれか1項に記載の方法。
【請求項23】
対象におけるピークの血清A1ATレベルは、HCT処置の当日で3.5mg/mLを上回りおよびHCT処置後少なくとも28日間、3.5mg/mLを依然として上回る、請求項1~21のいずれか1項に記載の方法。
【請求項24】
造血細胞移植(HCT)処置の後に続いて対象において急性移植片対宿主病(aGVHD)を治療する方法であって、
対象はHCT処置の後に続いてaGVHDと診断されており、
以下のスケジュール:
(a)ステロイドを対象に投与する工程;および
(b)aGVHD診断の後に続いて少なくとも4週間、週に2回、A1AT少なくとも90mg/kgを対象に投与し、場合により、続いて少なくともさらなる4週間、週に1回、A1AT少なくとも90mg/kgの用量を投与する工程、
に従って、ステロイドおよびアルファ-1アンチトリプシン(A1AT)の組合せを投与する工程を含む、
前記方法。
【請求項25】
(b)HCTの後に続いて少なくとも4週間、週に2回、A1AT 90、100、110、120、130、140、150、160、180、または200mg/kgの用量を、対象に投与し、場合により、続いて少なくともさらなる4週間、週に1回、A1AT 90、100、110、120、130、140、150、160、180、または200mg/kgの用量を投与する工程を含む、請求項24に記載の方法。
【請求項26】
(b)HCTの後に続いて少なくとも4週間、週に2回、A1AT少なくとも100mg/kgの用量を、対象に投与し、続いて少なくともさらなる4週間、週に1回、A1AT少なくとも100mg/kgの用量を投与する工程を含む、請求項25に記載の方法。
【請求項27】
(b)HCTの後に続いて少なくとも4週間、週に2回、A1AT 120mg/kgの用量を、対象に投与し、続いて少なくともさらなる4週間、週に1回、A1AT 120mg/kgの用量を投与する工程を含む、請求項25または26に記載の方法。
【請求項28】
(b)HCTの後に続いて少なくとも4週間、週に2回、A1AT少なくとも120mg/kgの用量を、対象に投与し、続いて少なくともさらなる4週間、週に1回、A1AT少なくとも90mg/kgの用量を投与する工程を含む、請求項25に記載の方法。
【請求項29】
(b)HCTの後に続いて少なくとも4週間、週に2回、A1AT少なくとも120mg/kgの用量を、対象に投与し、続いて少なくともさらなる4週間、週に1回、A1AT少なくとも100mg/kgの用量を投与する工程を含む、請求項25に記載の方法。
【請求項30】
A1ATの投与は、HCT処置後少なくとも100日間継続する、請求項24~29のいずれか1項に記載の方法。
【請求項31】
対象におけるピークの血清A1ATレベルは、第1のA1AT投与後少なくとも4週間、3.5mg/mLを上回る、請求項24~30のいずれか1項に記載の方法。
【請求項32】
A1ATの1回またはそれ以上の投与の後に続いて、ピークの血清A1ATレベルが3.5mg/mLを上回るか否かを判定して、該レベルが3.5mg/mL未満の場合、対象に投与されるA1ATの用量を高める工程をさらに含む、請求項24~30のいずれか1項に記載の方法。
【請求項33】
A1ATの第1の投与は、治療の第1の4週間の過程では、その後のA1AT投与よりも高い用量とする、請求項24~26または28~32のいずれか1項に記載の方法。
【請求項34】
A1ATの第1の投与は少なくとも120mg/kgの用量とする、請求項33に記載の方法。
【請求項35】
A1ATの第1の投与は120,130,140,150,160、180、または200mg/kgの用量とする、請求項33に記載の方法。
【請求項36】
ステロイドはプレドニゾン、メチルプレドニゾン、またはメチルプレドニゾロンを含む、請求項24~35のいずれか1項に記載の方法。
【請求項37】
ステロイドはプレドニゾンを含み、該プレドニゾンは、0.5~3mg/kg、1~3mg/kg、1~2mg/kg、0.5mg/kg、1mg/kg、2mg/kg、または3mg/kgの1日用量で投与される、請求項36に記載の方法。
【請求項38】
ステロイドはメチルプレドニゾロンを含み、該メチルプレドニゾロンは、0.5~3mg/kg、1~3mg/kg、1~2mg/kg、0.5mg/kg、1mg/kg、2mg/kg、または3mg/kgの1日用量で投与される、請求項36に記載の方法。
【請求項39】
ステロイドは局所ステロイド製剤を含む、請求項24~38のいずれか1項に記載の方法。
【請求項40】
ステロイドは、ブデソニドまたはベクロメタゾンのような非吸収性ステロイドを含む、請求項24~39のいずれか1項に記載の方法。
【請求項41】
対象は、タクロリムス、シクロスポリン、別のカルシニューリン阻害剤、および/また
はメトトレキセートを含む少なくとも1つの免疫抑制剤をさらに投与される、請求項24~40のいずれか1項に記載の方法。
【請求項42】
対象は、ミコフェノール酸モフェチル(MMF)、抗TNF抗体、抗リンパ球グロブリン(ATG)、および/または間葉系幹細胞をさらに投与される、請求項24~41のいずれか1項に記載の方法。
【請求項43】
対象は骨髄破壊的コンディショニングレジメンを受ける、請求項24~42のいずれか1項に記載の方法。
【請求項44】
対象は強度減弱コンディショニングレジメンを受ける、請求項24~42のいずれか1項に記載の方法。
【請求項45】
HCT処置は同種異系のHCT処置である、請求項24~44のいずれか1項に記載の方法。
【請求項46】
同種異系のHCT処置は、(a)少なくとも1つのHLAミスマッチがある血縁ドナー、または(b)少なくとも1つのHLAミスマッチがあるまたはない非血縁ドナー、由来の細胞を含む、請求項45に記載の方法。
【請求項47】
ステロイドは少なくとも1日に1回投与される、請求項24~46のいずれか1項に記載の方法。
【請求項48】
対象は、白血病、リンパ腫、骨髄腫、地中海貧血症、鎌状赤血球貧血、重症複合免疫不全症、再生不良性貧血、もしくは骨髄異形成症候群のような遺伝子性の造血障害に罹患しており、または、急性骨髄性白血病(AML)、急性リンパ芽球性白血病(ALL)、慢性骨髄性白血病(CML)、慢性リンパ芽球性白血病(CLL)、骨髄増殖性障害、骨髄異形成症候群、多発性骨髄腫、非ホジキンリンパ腫、ホジキン病、再生不良性貧血、赤芽球癆、発作性夜間ヘモグロビン尿症、ファンコニー貧血、重症型地中海貧血、鎌状赤血球貧血、重症複合免疫不全症(SCID)、ウィスコット-アルドリッチ症候群、血球貪食性リンパ組織球症(HLH)、ムコ多糖症のような先天性代謝異常症、ゴーシェ病、異染性白質ジストロフィー、副腎白質ジストロフィー、表皮水疱症、重症先天性好中球減少症、シュワッフマン-ダイヤモンド症候群、ダイヤモンド-ブラックファン貧血、もしくは白血球粘着不全症に罹患している、請求項24~47のいずれか1項に記載の方法。
【請求項49】
対象は、遺伝子性のA1AT欠乏症を有さない、および/またはA1AT欠乏症補充療法を先に受けたことがない、請求項1~48のいずれか1項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、造血細胞移植(HCT)を受けている患者において、HCT処置の前後両方にてアルファ-1アンチトリプシン(A1ATまたはAATまたはA1-PIと略)を患者に投与する特定の方法によって、移植片対宿主病(GVHD)の発病のリスクを低減する方法に関する。本開示はまた、HCT後の急性GVHD(aGVHD)をA1ATにより治療する、具体的な方法にも関する。
【背景技術】
【0002】
急性移植片対宿主病(aGVHD)は、造血細胞移植(HCT)、特に同種異系のHCTを受けている患者において死亡の主な原因である。aGVHDのほとんどのケースがHCT処置の約20~30日後に発生するが、aGVHDは処置の100日後まで発生する場合があり、場合によって症状は100日の目安を超えて残存する場合がある。(例えば、非特許文献1を参照されたい;ステージII~IVのaGVHD症状の発症について、範囲15~88日をもって、中央値34日を報告している)。aGVHDは通常、3つの器官系:皮膚、胃腸(GI)管、および肝臓に関係する。症状には、斑点状丘疹の皮膚の発疹、下痢、嘔吐、吐き気、腹部けいれん、および高ビリルビン血症による黄疸が含まれる。aGVHDは、異なる4つのグレードまたはステージ(I~IV)に段階分けされ、IVが最も重症である。ステージIVのaGVHDの患者は、生存の可能性が10%未満であるが、いっぽう、ステージIIIの患者は生存が約30%であり、ステージIIおよびステージIの患者は生存の可能性がそれぞれ約80%および90%である。(非特許文献2。)
【0003】
HCT処置後にaGVHDを発病するリスクは、ドナーがレシピエントと血縁であるか否か、ドナーとレシピエントの間にヒト白血球抗原(HLA)になんらかのミスマッチがあるか否か、およびHCT処置の前にレシピエントが受けたプレコンディショニングレジメンのタイプを含めて、いくつかの要因に左右される。(例えば、非特許文献3を参照されたい。)aGVHDの生命を脅かす特質に加えて、同種異系のHCT患者の約50%が現在利用可能な治療でもaGVHDを発病するといった状況であり、これはまた治療するのが難しいこともわかっている。(同上;非特許文献4を参照されたい。)現在の治療は、例えば、メチルプレドニゾンおよびメチルプレドニゾロンのようなステロイドならびにメトトレキセートおよびカルシニューリン阻害剤のような免疫抑制剤に焦点を当てている。こういった治療は限られた成功を示すだけでなく、それらのT細胞抑制活性はHCT移植片に悪影響を及ぼすリスクがある。したがって、HCT移植片に悪影響を与えないことが求められるHCT処置後に、aGVHDを治療することおよびその発症も防止することへの他のアプローチが患者には必要である。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】CG Kanakryら、J.Clin.Oncol.32(31):3497~3505頁(2014)
【非特許文献2】MC Pasquini、Best Pract.Res.Clin.Hematol.21(2):193~204頁(2008)
【非特許文献3】DA JacobsohnおよびGB Vogelsang、Orphanet J.Rare Dis.2:35(doi.10.1186/1750-1172-2-35(2007)
【非特許文献4】SZ Pavletic & DH Fowler Hematology Am.Soc.Hematol.Educ.Program 2012:251~65頁(2012)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
アルファ-1アンチトリプシン(A1AT)は、プロテアーゼ阻害剤であり、タンパク質のセルピンファミリーのメンバーである。それは現在、例えば60mg/kgの毎週投薬量で、A1AT欠乏症補充療法に適応されている。A1ATは、好中球エラスターゼのような酵素標的に結合し、抗炎症作用、抗好中球の流入と活性化、および細胞への抗アポトーシス効果を有すると示されてきた。さらに、A1ATはT細胞抑制剤ではなく、代わりに寛容原性造血プロファイルを支える。本開示は、とくに、処置後のaGVHDの発症のリスクを低減するための、HCT処置の前後両方にて比較的高投薬量のA1ATを使用する特定の方法および投薬量レジメに関する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示は、
造血細胞移植(HCT)を受けている対象において急性移植片対宿主病(aGVHD)の発症のリスクを低減する方法であって、以下のスケジュール:(a)HCT処置の少なくとも1日前に、A1AT少なくとも120mg/kgの用量を対象に投与する工程;(b)HCTの後に続いて少なくとも4週間、少なくとも週に2回、A1AT少なくとも90mg/kgの用量を対象に投与する工程、これは、場合により、続いて少なくともさらなる4週間、少なくとも週に1回、A1AT少なくとも90mg/kgの用量が後続する場合がある、に従い、アルファ-1アンチトリプシン(A1AT)を投与する工程を含む、方法を含む。一部の実施形態では、以下のスケジュールが使用される:(a)HCT処置の少なくとも1日前に、A1AT少なくとも120mg/kgの用量を対象に投与する工程;(b)HCTの後に続いて少なくとも4週間、週に2回、A1AT少なくとも90mg/kgの用量を対象に投与する工程、これは、場合により、少なくともさらなる4週間、週に1回、A1AT少なくとも90mg/kgの用量が後続する場合がある。このA1AT投薬量レジメは、一部の実施形態では、少なくとも1つの免疫抑制剤と組み合わせて与えられる。
【0007】
一部の実施形態では、上のパート(a)は、HCT処置の少なくとも1日前に、A1AT 120、130、140、150、160、170、180、190、200、220、240、260、280、または300mg/kgの用量を対象に投与する工程を含む。一部の実施形態では、かかる用量の2つ以上を、HCT処置がおこなわれる3カ月、2カ月、1カ月、14日、または7日以内のように、HCT処置の前に投与することができる。一部の実施形態では、パート(a)は、HCT処置の1日前、2日前、または3日前に、A1AT少なくとも120mg/kgの用量を対象に投与する工程を含む。一部のかかる実施形態では、A1AT少なくとも120mg/kgの用量が、HCT処置の1日前に対象に投与される。
【0008】
一部の実施形態では、上のパート(b)は、HCTの後に続いて少なくとも4週間、週に2回、A1AT 90、100、110、120、130、140、150、160、180、または200mg/kgの用量を、対象に投与する工程を含む。これは、場合により、少なくともさらなる4週間、週に1回、A1AT 90、100、110、120、130、140、150、160、180、または200mg/kgの用量を投与する工程が後続する。
【0009】
本開示はまた、造血細胞移植(HCT)を受けている対象において急性移植片対宿主病(aGVHD)の発症のリスクを低減する方法であって、以下のスケジュール:(a)HCT処置の1日前に、A1AT 120mg/kgの用量を対象に投与する工程;および
(b)HCTの後に続いて少なくとも4週間、週に2回、A1AT 90mg/kgの用量を対象に投与する工程、に従い、アルファ-1アンチトリプシン(A1AT)を投与する工程を含む、方法も企図する。これは、場合により、少なくともさらなる4週間、週に1回、A1AT 90mg/kgの用量が後続する場合がある。上のA1ATレジメは、場合により、少なくとも1つの免疫抑制剤と組み合わせて与えることができる。
【0010】
本開示はさらに、造血細胞移植(HCT)を受けている対象において急性移植片対宿主病(aGVHD)の発症のリスクを低減する方法であって、以下のスケジュール:(a)HCT処置の1日前に、A1AT 180mg/kgの用量を対象に投与する工程;および(b)HCTの後に続いて少なくとも4週間、週に2回、A1AT 120mg/kgの用量を対象に投与する工程、に従い、アルファ-1アンチトリプシン(A1AT)を投与する工程を含む、方法もさらに企図する。これは、場合により、少なくともさらなる4週間、週に1回、A1AT 120mg/kgの用量が後続する場合がある。上のA1ATレジメは、場合により、少なくとも1つの免疫抑制剤と組み合わせて与えることができる。
【0011】
上記の方法のいずれにおいても、A1ATの投与は、HCT処置後少なくとも100日間継続することができる。免疫抑制剤が投与される実施形態では、対象は、メチルプレドニゾン、メチルプレドニゾロン、または別のステロイド剤を含む、少なくとも1つの免疫抑制剤を投与される。場合によっては、対象は、HCT処置の後に続いて1日あたりメチルプレドニゾンまたはメチルプレドニゾロン1~2mg/kgを投与される。一部の実施形態では、対象は、タクロリムス、シクロスポリン、別のカルシニューリン阻害剤、および/またはメトトレキセートを含む少なくとも1つの免疫抑制剤を投与される。一部の実施形態では、対象は、ミコフェノール酸モフェチル(MMF)、抗TNF抗体、抗リンパ球グロブリン(ATG)、および/または間葉系幹細胞を投与される。さらなる実施形態では、対象は、ペントスタチン、ルキソリチニブ、ブレンブキシマブベドチン(抗CD30抗体)、トシリズマブ(抗IL6R抗体)、IL6シグナル伝達阻害剤、ミコフェノール酸モフェチル(MMF)、抗TNF抗体、バシリキシマブ、ダクリズマブ、イノリモマブ、アレムツズマブ、エタネルセプト、インフリキシマブ、ロイコトリエンアンタゴニスト、ウマ抗リンパ球グロブリン(ATG)のような抗リンパ球グロブリン、および間葉系幹細胞のうちの1つまたはそれ以上をさらに投与される。
【0012】
本明細書の一部の実施形態では、対象は骨髄破壊的コンディショニングレジメンを受ける。他の実施形態では、対象は強度減弱コンディショニングレジメンを受ける。さらに他の実施形態では、対象はコンディショニングレジメンを受けない。
【0013】
本明細書の一部の実施形態では、HCT処置は、(a)少なくとも1つのHLAミスマッチがある血縁ドナー、または(b)少なくとも1つのHLAミスマッチがあるまたはない非血縁ドナー、由来の細胞を含む同種異系のHCT処置である。本明細書の一部の実施形態では、対象は、白血病、リンパ腫、または骨髄腫を罹患している。他の実施形態では、患者は、地中海貧血症、鎌状赤血球貧血、重症複合免疫不全症、再生不良性貧血、骨髄異形成症候群のような遺伝子性の造血障害に罹患している。さらに、本明細書の実施形態では、患者は、同種異系のHCTで治療することが可能な以下の疾患または障害の1つまたはそれ以上に罹患している可能性がある:急性骨髄性白血病(AML)、急性リンパ芽球性白血病(ALL)、慢性骨髄性白血病(CML)、慢性リンパ芽球性白血病(CLL)、骨髄増殖性障害、骨髄異形成症候群、多発性骨髄腫、非ホジキンリンパ腫、ホジキン病、再生不良性貧血、赤芽球癆、発作性夜間ヘモグロビン尿症、ファンコニー貧血、重症型地中海貧血、鎌状赤血球貧血、重症複合免疫不全症(SCID)、ウィスコット-アルドリッチ症候群、血球貪食性リンパ組織球症(HLH)、ムコ多糖症のような先天性代謝異常症、ゴーシェ病、異染性白質ジストロフィー、副腎白質ジストロフィー、表皮水疱症
、重症先天性好中球減少症、シュワッフマン-ダイヤモンド症候群、ダイヤモンド-ブラックファン貧血、または白血球粘着不全症
【0014】
本明細書の一部の実施形態では、対象は、HCTの後に続いてステージIIIまたはIVのaGVHDを発病するリスクに晒されている。
【0015】
一部の実施形態では、対象における中央値の血清A1ATレベルは、HCT処置の当日で正常なヒトの生理学的レベルを上回り、HCT処置後少なくとも28日間、このレベルを依然として上回る。一部の実施形態では、対象におけるピークの血清A1ATレベルは、HCT処置の当日で正常な平均ヒト生理学的レベルを上回り、HCT処置後少なくとも28日間、このレベルを依然として上回る。一部の実施形態では、対象における中央値の血清A1ATレベルは、HCT処置の当日でおよびHCT処置後少なくとも28日間、5.0mg/mLを依然として上回る。一部の実施形態では、対象におけるピークの血清A1ATレベルは、HCT処置後少なくとも28日間、5.0mg/mLを依然として上回る。一部の実施形態では、対象における中央値の血清A1ATレベルは、HCT処置の当日でおよびHCT処置後少なくとも28日間、4.0mg/mLを依然として上回る。一部の実施形態では、対象におけるピークの血清A1ATレベルは、HCT処置後少なくとも28日間、4.0mg/mLを依然として上回る。一部の実施形態では、対象における中央値の血清A1ATレベルは、HCT処置の当日で3.5mg/mLを上回りおよびHCT処置後少なくとも28日間、3.5mg/mLを依然として上回る。一部の実施形態では、対象におけるピークの血清A1ATレベルは、HCT処置の当日で3.5mg/mLを上回りおよびHCT処置後少なくとも28日間、3.5mg/mLを依然として上回る。一部の実施形態では、対象における中央値の血清A1ATレベルは、HCT処置の当日でおよびHCT処置後少なくとも28日間、3.0mg/mLを依然として上回る。一部の実施形態では、対象におけるピークの血清A1ATレベルは、HCT処置後少なくとも28日間、3.0mg/mLを依然として上回る。一部の実施形態では、対象における中央値の血清A1ATレベルは、HCT処置の当日でおよびHCT処置後少なくとも28日間、2.5mg/mLを依然として上回る。一部の実施形態では、対象におけるピークの血清A1ATレベルは、HCT処置後少なくとも28日間、2.5mg/mLを依然として上回る。一部の実施形態では、対象における中央値の血清A1ATレベルは、HCT処置の当日でおよびHCT処置後少なくとも28日間、2.0mg/mLを依然として上回る。一部の実施形態では、対象におけるピークの血清A1ATレベルは、HCT処置後少なくとも28日間、2.0mg/mLを依然として上回る。
【0016】
造血細胞移植(HCT)処置の後に続いて対象において急性移植片対宿主病(aGVHD)を治療する方法であって、対象はHCT処置の後に続いてaGVHDと診断されており、以下のスケジュール:(a)ステロイドを対象に投与する工程;および(b)aGVHD診断の後に続いて少なくとも4週間、週に2回、A1AT少なくとも90mg/kgを対象に投与し、場合により、続いて少なくともさらなる4週間、週に1回、A1AT少なくとも90mg/kgの用量を投与する工程、に従って、ステロイドおよびアルファ-1アンチトリプシン(A1AT)の組合せを投与する工程を含む、方法。一部の実施形態では、パート(b)は、HCTの後に続いて少なくとも4週間、週に2回、A1AT 90、100、110、120、130、140、または150mg/kgの用量を対象に投与し、場合により、続いて少なくともさらなる4週間、週に1回、A1AT 90、100、110、120、130、140、または150mg/kgの用量を投与する工程を含む。一部の実施形態では、パート(b)は、HCTの後に続いて少なくとも4週間、週に2回、A1AT少なくとも100mg/kgの用量を対象に投与し、続いて少なくともさらなる4週間、週に1回、A1AT少なくとも100mg/kgの用量を投与する工程を含む。一部の実施形態では、パート(b)は、HCTの後に続いて少なくとも4週間
、週に2回、A1AT 120mg/kgの用量を対象に投与し、続いて少なくともさらなる4週間、週に1回、A1AT 120mg/kgの用量を投与する工程を含む。一部の実施形態では、パート(b)は、HCTの後に続いて少なくとも4週間、週に2回、A1AT少なくとも120mg/kgの用量を対象に投与し、続いて少なくともさらなる4週間、週に1回、A1AT少なくとも90mg/kgの用量を投与する工程を含む。一部の実施形態では、パート(b)は、HCTの後に続いて少なくとも4週間、週に2回、A1AT少なくとも120mg/kgの用量を対象に投与し、続いて少なくともさらなる4週間、週に1回、A1AT少なくとも100mg/kgの用量を投与する工程を含む。上のこれらの実施形態のいずれにおいても、A1ATの投与は、HCT処置後少なくとも100日間継続してもよい。一部の実施形態では、パート(a)は、少なくとも1日1回ステロイドを対象に投与する工程を含む。
【0017】
上の実施形態の一部では、対象におけるピークの血清A1ATレベルは、第1のA1AT投与後少なくとも4週間、3.5mg/mLを上回る。一部の実施形態は、A1ATの1回またはそれ以上の投与の後に続いて、対象におけるピークの血清A1ATレベルが3.5mg/mLを上回るか否かを判定して、レベルが3.5mg/mL未満の場合、対象に投与されるA1ATの用量を増やす工程を、さらに含む。一部の実施形態では、患者に与えられるA1ATの投薬量レベルは、先に試験されている臨床対象の群において、3.5mg/mL以上の平均または中央値のピーク血清A1ATレベルを提供するとわかっている投薬量レベル以上とするように、選択される。一部の実施形態では、対象における中央値の血清A1ATレベルは、HCT処置の当日で正常なヒト生理学的レベルを上回り、HCT処置後少なくとも28日間、このレベルを依然として上回る。一部の実施形態では、対象におけるピークの血清A1ATレベルは、HCT処置の当日で正常な平均ヒト生理学的レベルを上回り、HCT処置後少なくとも28日間、このレベルを依然として上回る。
【0018】
一部の実施形態では、A1ATの第1の投与は、治療の第1の4週間の過程では、その後のA1AT投与よりも高い用量とする。一部のかかる実施形態では、A1ATの第1の投与は少なくとも120mg/kgの用量とする。一部のかかる実施形態では、A1ATの第1の投与は少なくとも180mg/kgの用量とする。一部の実施形態では、A1ATの第1の投与は120、130、140、150、160、170、180、200、または220mg/kgの用量とする。一部の実施形態では、第1のA1ATの投与は120、130、140、または150mg/kgの用量とする。一部の実施形態では、A1ATの第1の投与は120mg/kgとする。一部の実施形態では、A1ATの第1の投与は180mg/kgとする。
【0019】
一部の実施形態では、ステロイドはプレドニゾン、メチルプレドニゾン、またはメチルプレドニゾロンを含む。一部のかかる実施形態では、ステロイドはプレドニゾンを含み、プレドニゾンは、0.5~3mg/kg、1~3mg/kg、1~2mg/kg、0.5mg/kg、1mg/kg、2mg/kg、または3mg/kgの1日用量で投与される。一部のかかる実施形態では、ステロイドはメチルプレドニゾロンを含み、メチルプレドニゾロンは、0.5~3mg/kg、1~3mg/kg、1~2mg/kg、0.5mg/kg、1mg/kg、2mg/kg、または3mg/kgの1日用量で投与される。一部の実施形態では、ステロイドは、患者がステージIのaGVHDを有するか、そうでなければ深刻な斑点状丘疹を有する場合のように、局所ステロイド製剤を含む。一部の実施形態では、ステロイドは、ブデソニドまたはベクロメタゾンのような非吸収性ステロイドを含み、このようなステロイドは、例えば、患者のaGHVD症状がGI管の病変を含む場合は、ステロイドレジメに追加するか、全身性ステロイド剤に取って代わることができる。一部の実施形態では、対象は、タクロリムス、シクロスポリン、別のカルシニューリン阻害剤、および/またはメトトレキセートを含む少なくとも1つの免疫抑制剤をさらに
投与される。一部の実施形態では、対象は、ミコフェノール酸モフェチル(MMF)、抗TNF抗体、抗リンパ球グロブリン(ATG)、および/または間葉系幹細胞をさらに投与される。さらなる実施形態では、対象は、ペントスタチン、ルキソリチニブ、ブレンブキシマブベドチン(抗CD30抗体)、トシリズマブ(抗IL6R抗体)、IL6シグナル伝達阻害剤、ミコフェノール酸モフェチル(MMF)、抗TNF抗体、バシリキシマブ、ダクリズマブ、イノリモマブ、アレムツズマブ、エタネルセプト、インフリキシマブ、ロイコトリエンアンタゴニスト、ウマ抗リンパ球グロブリン(ATG)のような抗リンパ球グロブリン、および間葉系幹細胞のうちの1つまたはそれ以上をさらに投与されてもよい。
【0020】
一部の実施形態では、対象は、骨髄破壊的コンディショニングレジメンを受ける。一部の実施形態では、対象は、強度減弱コンディショニングレジメンを受ける。
【0021】
一部の実施形態では、HCT処置は同種異系のHCT処置である。一部の実施形態では、同種異系のHCT処置は、(a)少なくとも1つのHLAミスマッチがある血縁ドナー、または(b)少なくとも1つのHLAミスマッチがあるまたはない非血縁ドナー、由来の細胞を含む。上の実施形態のいずれにおいても、対象は、白血病、リンパ腫、骨髄腫、地中海貧血症、鎌状赤血球貧血、重症複合免疫不全症、再生不良性貧血、もしくは骨髄異形成症候群のような遺伝子性の造血障害に罹患している可能性があり、または、
急性骨髄性白血病(AML)、急性リンパ芽球性白血病(ALL)、慢性骨髄性白血病(CML)、慢性リンパ芽球性白血病(CLL)、骨髄増殖性障害、骨髄異形成症候群、多発性骨髄腫、非ホジキンリンパ腫、ホジキン病、再生不良性貧血、赤芽球癆、発作性夜間ヘモグロビン尿症、ファンコニー貧血、重症型地中海貧血、鎌状赤血球貧血、重症複合免疫不全症(SCID)、ウィスコット-アルドリッチ症候群、血球貪食性リンパ組織球症(HLH)、ムコ多糖症のような先天性代謝異常症、ゴーシェ病、異染性白質ジストロフィー、副腎白質ジストロフィー、表皮水疱症、重症先天性好中球減少症、シュワッフマン-ダイヤモンド症候群、ダイヤモンド-ブラックファン貧血、もしくは白血球粘着不全症、に罹患している可能性がある。
【0022】
上の方法のいずれにおいても、一部の実施形態では、対象は、遺伝子性のA1AT欠乏症を有さない、および/またはA1AT欠乏症補充療法を先に受けたことがない。
【発明を実施するための形態】
【0023】
本明細書で使用されているセクションの見出しは、単に構成を目的としたものであり、説明されている主題を制限するものと解釈されるべきではない。特許出願および出版物を含めて、本明細書で引用されるすべての文献は、いかなる目的であれその全体が参照によって本明細書に組み入れる。
【0024】
定義
他に定義がない場合、本発明に関連して使用される科学用語および技術用語は、当業者であれば一般的に理解している意味を有するものとする。さらに、文脈上別段の解釈が必要でない限り、単数形の用語は複数形を含むものとし、複数形の用語は単数形を含むものとする。
【0025】
本出願では、特に明記しない限り、「または」の使用は「および/または」を意味する。複数の従属クレームの文脈において、「または」の使用は、先行する2つ以上の独立クレームまたは従属クレームを単に択一形式で参照するものである。また、「要素」または「構成要素」のような用語は、特に明記しない限り、1つのユニットを含む要素および構成要素と、2つ以上のサブユニットを含む要素および構成要素との両方を包含する。
【0026】
本明細書に記載のように、任意の濃度範囲、百分率範囲、比率範囲または整数範囲は、特に示さない限り、列挙範囲内の任意の整数および、適切な場合、その分数(整数の十分の一および百分の一のような)の値を含むと理解すべきである。
【0027】
単位、接頭辞、および記号は、それらの国際単位系(SI)の承認された形式で表される。数値範囲には、その範囲を定義する数字が含まれる。測定値は、有効数字と測定に関連する誤差を考慮して、概算値であると理解される。
【0028】
本明細書において提供される見出しは、本開示の種々の態様を限定するものではなく、これらの態様は、本明細書を参照することにより全体として把握され得るものである。したがって、直下に定義される用語は、本明細書を参照することによってその全体においてさらに十分に定義される。
【0029】
本開示に従って利用する場合、以下の用語は、別途指示がない限り、以下の意味を有すると理解されるものとする。
【0030】
「投与する工程」とは、当業者に知られている種々の方法および送達系のいずれかを使用して、治療剤を含む組成物を対象に物理的に導入することを指す。タンパク質療法向けの一般的な投与経路には、例えば注射または輸注による、静脈内、筋肉内、皮下、腹腔内、脊髄内またはその他の非経口の各投与経路が含まれる。本明細書において使用される「非経口投与」という句は、腸内および局所投与以外の投与様式を意味し、通常注射によるが、限定はせず、これには、静脈内、筋肉内、動脈内、髄腔内、リンパ管内、病巣内、嚢内、眼窩内、心臓内、皮内、腹腔内、経気管、皮下、表皮下、関節内、被膜下、くも膜下、髄腔内、硬膜外および胸骨内の各注射ならびに各輸注とともに、インビボエレクトロポレーションが含まれる。非腸管外経路には、局所、表皮、または粘膜の各投与経路、例えば、経口で、鼻腔内で、経膣で、直腸で、舌下でまたは局所で、が含まれる。投与する工程はまた、例えば、1回、複数回、および/または1回もしくはそれ以上の長時間にわたって、行うことができる。
【0031】
「ポリペプチド」および「タンパク質」という用語は、アミノ酸残基のポリマーを指すのに同義的に使用され、最小長に限定されない。アミノ酸残基のかかるポリマーは、天然または非天然のアミノ酸残基を含有することができ、それらに限定されないが、アミノ酸残基のペプチド、オリゴペプチド、二量体、三量体、および多量体を含むことができる。完全長タンパク質およびそれらの断片の両方が定義に包含される。その用語はまた、例えば、グリコシル化、シアル酸付加、アセチル化、リン酸化等のポリペプチドの発現後修飾も含む。さらに、本発明では、「ポリペプチド」とは、タンパク質が所望の活性を維持する限り、天然型の配列に対する欠失、付加、および置換(一般に本質的に保存的である)のような修飾を含むタンパク質を指す。こういった修飾は、部位特異的突然変異誘発によるような、意図的なものであってもよく、または、タンパク質を産生する宿主の突然変異またはPCR増幅に起因するエラーによるように、偶発的なものであってもよい。
【0032】
本明細書で(A1AT)、(A1-PI)または(AAT)と略される「アルファ-1アンチトリシン」は、プールされたヒト血漿から得てもよく組換えであってもよい、完全長ヒトA1ATを含むポリペプチドを含む。それにはまた、完全長タンパク質のプロテアーゼ阻害のような生物学的機能を保持する、より短いヒトA1AT(W02010/088415)、ならびにヒトA1ATポリペプチドを含む融合分子が、含まれる。一部の実施形態では、それには、顕著なセリンプロテアーゼ阻害活性がないAATが含まれる(WO2010/088415)。一部の実施形態では、A1ATとは、A1ATポリペプチドおよび融合パートナー、場合により、Fc分子(例えば、Fcフラグメント、Fcアナログ等)、PEG、またはアルブミンを含む、WO2013/106589およびWO2
014/160768に記載のA1AT-Fc融合分子のような、融合分子である。対象が非ヒトである場合、ヒトA1ATの代わりに適切な非ヒトA1ATを使用することができる。一部の実施形態では、A1ATは、シグナルポリペプチドを含むが、他の実施形態では、これを含まない。一部の実施形態では、A1ATは、Zemaira(登録商標)(CSL Behring)、Prolastin(登録商標)(Grifols)、Prolastin(登録商標)C(Grifols)、Aralast(登録商標)(Shire)、Aralast NP(登録商標)(Shire)、Glassia(登録商標)(Kamada)、Trypsone(登録商標)(Grifols)、Alfalastin(登録商標)(LFB Biomedicaments)、もしくはその他の市販の製剤またはそれらの任意の組合せ、を含む。
【0033】
「対象」または「患者」という用語は、非ヒトの対象または患畜が意図されていること(例えば、「イヌ対象」等)を文脈が明確にしない限り、本明細書において同義的に使用されて、ヒトを指す。一部の実施形態では、他の哺乳動物を治療する方法も提供され、これには、それらに限定されないが、げっ歯類、サル、ネコ、イヌ、ウマ、ウシ、ブタ、ヒツジ、ヤギ、実験哺乳動物、家畜哺乳動物、競技用哺乳動物、および愛玩哺乳動物が含まれる。
【0034】
本明細書で使用される、「治療」とは、例えば、目的が既存の疾患または障害を減速する(減らす)ことである場合、ならびに、例えば、目的が、疾患または障害を発病するリスクがある患者において疾患または障害の症状の発症を防止することまたは遅延させること、または、いったん始まったら疾患または障害の重症度を低減することである場合、治療的処置を指す。
【0035】
疾患または障害「の発症のリスクを低減すること」とは、疾患または障害を現在有していない対象が、HCTまたは別の非器官移植もしくは細胞移植のようなイベント後のように、将来に疾患または障害を発病することになるリスクを低減することを意図した、疾患または障害に対する治療の一つの種類である。
【0036】
「有効量」または「治療有効量」という用語は、対象において疾患または障害を治療するのに、または疾患または障害の発症のリスクを低減するのに、有効な薬物の量を指す。ある特定の実施形態では、有効量とは、所望の治療結果を達成するのに、必要な投薬量および期間において、有効な量を指す。A1ATの治療的有効量は、例えば、個体の病状、年齢、性別、および体重のような要因、ならびに抗体(単数または複数)が個体において所望の応答を誘発する能力によって異なってもよい。
【0037】
HCTまたはHSCTと略される「造血細胞移植」とは、例えば、免疫細胞機能または骨髄機能を再確立するというゴールで、ドナーからホストまたはレシピエントへの造血幹細胞または前駆細胞の移植を含む処置である。
【0038】
GVHDと略される「移植片対宿主病」は、ドナー移植に際して免疫担当T細胞およびナチュラルキラー(NK)細胞のような免疫細胞が宿主抗原を異物として認識し、それらを標的とする場合に発生する。症状は、皮膚の発疹から、胃腸管や肝臓のような器官に関係する全身性合併症にまで及ぶ場合がある。
【0039】
GVHDは、急性であっても慢性であってもいずれでもよい。aGVHDと略される「急性GVHD」は、移植処置後の最初の100日以内に発生する可能性があるが、いっぽう、慢性GHVD(cGVHD)は、移植処置の後に続いて12カ月までのような後の時点で発生する場合がある。
【0040】
急性GVHDは、その重症度およびステージI、II、III、またはIV(グレードI、II、III、またはIVとも呼ばれる)のような全身性病変の度合いに応じてグレード付けすることができ、ステージIVが最も重症でかつ最も高い死亡リスクを有する。
【0041】
本明細書における「免疫抑制剤」とは、患者において免疫応答を低減することを意図した任意の治療剤を広く指す。
【0042】
GVHDはまた、ステロイド抵抗性の場合がある。本明細書で使用される「ステロイド抵抗性急性GVHD」とは、例えば、メチルプレドニゾンおよびメチルプレドニゾロンのようなステロイドによる治療にもかかわらず改善しないaGVHDを指す。
【0043】
造血細胞移植(HCT)
HCTは、例えば、患者において免疫細胞機能または骨髄機能を再確立するために、ドナーから患者への幹細胞および前駆細胞のような造血細胞の移植を含む。例えば、造血幹細胞および/または前駆細胞は、骨髄、末梢血または臍帯血から収集し、患者に輸注することができる。
【0044】
移植細胞の給源は、治療される患者(「自家HCT」)由来とすることができ、例えば、骨髄破壊療法または化学療法のような、移植細胞を破壊するように作用する可能性のある療法の前に収集し、患者の造血細胞が他の点では健康である場合に使用することができる。このような場合、移植細胞はもともと患者から採取されたものであるので、治療の後に続く免疫応答は比較的まれである。あるいは、患者自身の造血細胞が病的である場合、例えば、ドナー細胞は異なるヒトドナー(「同種異系のHCT」)から採取され、このドナーは患者と血縁関係があってもなくてもよい。同種異系のHCT向けの適切なドナーは、例えば、ドナー細胞対レシピエント細胞のヒト白血球抗原(HLAs)の比較を通して同定することができる。レシピエントとHLAsの同一セットを持つ同胞または親戚が理想的であるが、もちろんいつも利用可能とは限らない。「同系HCT」とは、ドナーがレシピエントの一卵性の双子である場合の処置である。例えば、データベースを通して同定された非血縁のドナーは、理想的には、レシピエントと比較してHLAミスマッチがないか、またはただ1つである。状況がそうではない場合は、より大きな程度のミスマッチが許容される場合がある。場合によっては、それが成人のドナー由来の細胞と比較して免疫学的にナイーブであると考えることができるので、臍帯血をドナーとして使用する場合がある。
【0045】
HCT処置は、免疫起源のがん、例えば白血病、リンパ腫、および骨髄腫、ならびに地中海貧血症、鎌状赤血球貧血、重症複合免疫不全症、再生不良性貧血、骨髄異形成症候群、およびHIV関連リンパ腫のように、異常な造血をもたらすその他の疾患のような様々な病状向けの治療として、ならびに、神経芽細胞腫や生殖細胞腫瘍のような疾患の治療により造血細胞が損傷を受ける可能性がある場合の障害に対して治療(化学療法など)を受けている患者向けの治療として、使用することができる。したがって、本明細書の実施形態では、患者は白血病、リンパ腫、または骨髄腫に罹患している可能性がある。他の実施形態では、患者は、地中海貧血症、鎌状赤血球貧血、重症複合免疫不全症、再生不良性貧血、骨髄異形成症候群のような遺伝子性の造血障害に罹患している可能性がある。さらに、本明細書の実施形態では、患者は、同種異系のHCTで治療が可能な、以下の疾患または障害のうちの1つまたはそれ以上に罹患している可能性がある:急性骨髄性白血病(AML)、急性リンパ芽球性白血病(ALL)、慢性骨髄性白血病(CML)、慢性リンパ芽球性白血病(CLL)、骨髄増殖性障害、骨髄異形成症候群、多発性骨髄腫、非ホジキンリンパ腫、ホジキン病、再生不良性貧血、赤芽球癆、発作性夜間ヘモグロビン尿症、ファンコニー貧血、重症型地中海貧血、鎌状赤血球貧血、重症複合免疫不全症(SCID)、ウィスコット-アルドリッチ症候群、血球貪食性リンパ組織球症(HLH)、ムコ多糖
症のような先天性代謝異常症、ゴーシェ病、異染性白質ジストロフィー、副腎白質ジストロフィー、表皮水疱症、重症先天性好中球減少症、シュワッフマン-ダイヤモンド症候群、ダイヤモンド-ブラックファン貧血、または白血球粘着不全症。一部の実施形態では、上にリストされた疾患または障害のうちの1つを有する患者は、同種異系のHCTを受けることができる。
【0046】
HCT処置の後に続いて合併症を回避することを試みるために、HCT患者は、種々のポスト-HCTの薬物レジメンとともに特定のプレコンディショニング処置を受けてもよい。場合によっては、細胞移植は、免疫適格性T細胞またはGVHDのような有害反応を引き起こすおそれのある細胞を移植するリスクを低減するように、準備することができる。かかる処置について、下でさらに説明する。
【0047】
移植の後に続くGVHD
急性(a)GVHDおよび慢性(c)GVHDの両方が、HCT処置、特に同種異系のHCT処置の潜在的な合併症である。HCT処置の後に続く免疫抑制治療にもかかわらず、同種異系のHCTレシピエントの約20~80%が処置の後に続いてaGVHDを発病する。(例えば、PJ Martinら、Biol.Blood Marrow Transplant.18:1150~63頁(2012)を参照されたい。)一般に、GVHDは、HCT処置の100日以内に発生する場合、急性と見なされることが多い。
【0048】
GVHDのリスクは、移植細胞の給源に関連している。具体的には、GVHDのリスクは、ドナーとレシピエントの間にHLAのミスマッチがある場合に増加する可能性があり、非血縁のドナーの場合は、マッチした同胞ドナーと比較してリスクがより高い。(同上を参照されたい。)おそらく臍帯血中の免疫細胞が未成熟であることに起因して、GVHDのリスクはまた、成人の骨髄または成人の末梢血から採取した移植と比較して、臍帯血からの移植においてより低い。しかし、臍帯血は比較的容量が低いので、その使用が制限される場合がある。
【0049】
HCTの後に続いての急性GVHDは、種々の程度の重症度で発生する可能性があり、様々な程度まで様々な身体器官に関係する可能性がある。aGVHDは、皮膚、肝臓、胃腸(GI)管にしばしば影響を与えることがある。aGVHDは、IMBTRによって設定された基準に従って、例えば、症状の重症度および/または肝臓やGI管に関係するか否かに応じて、グレード付けすることができる。(P.A.Rowlingsら、Br.J.Haematol.97:855~64頁(1997)。)例えば、グレード付けシステムは、さまざまな器官の病変をまずグレード付けすることを含む。皮膚への影響は、皮膚の発疹の度合い(影響を受けた体表面の%)および、広汎性紅皮症が水疱形成の有無にかかわらず存在するか否かによって、4レベルのスケールでグレード付けすることができる。ビリルビンの濃度によって、肝臓の病変の度合いを指摘することができる。下痢および腹痛が発生する度合いを使用して、GI管の病変を表す。一般に、ステージIのaGVHDは、肝臓またはGI管には関係せず、皮膚の発疹を含むが、広汎性紅皮症またはより深刻な症状は伴わない。ステージII以上のaGVHDは、広汎性紅皮症(皮膚の90%以上を伴う剥離性皮膚炎)ならびに/または肝臓および/もしくはGI管への病変の、いずれかを伴う。例えば、ステージIIの患者は、広汎性紅皮症があるが、肝臓またはGI管への病変はない可能性があり、または、高ビリルビン濃度もしくは重大な下痢症状のような肝臓および/またはGI管の症状とともに軽度の皮膚反応を含めて、全身反応を有する可能性がある。ステージIIIのaGVHD患者は、広汎性紅皮症および、より重大な肝臓およびGI管の症状の両方を有する可能性があり、いっぽう、ステージIVのaGVHD患者は、例をあげると、腹痛、重症の下痢、および高ビリルビン濃度とともに水疱を伴う重症の皮膚発疹を有する可能性がある。
【0050】
下の表に、本明細書で、一部の実施形態においてaGVHDをどのようにステージ分類することができるかを要約する。
【0051】
【表1】
【0052】
上部GIのGVHDは、場合によっては、上部GI生検または結腸鏡検査により確認することができる。
【0053】
患者の予後はまた、aGVHDのグレードとともに重大に悪化し、ステージIVのaGVHDを有する患者は10%未満の生存率を有する。(MC Pasquini、2008年。)
【0054】
一部の実施形態では、aGVHDは、ミネソタ大学で開発され、M.L.MacMil
lanら、Biol.Blood Marrow Transplant.、21(4):76~767頁(2015)において所載されている基準によって、スコア化することができる。このスコアリングシステムによると、初期高リスク(HR)aGVHDとは、皮膚ステージ4(上の表を参照されたい)、下部GIステージ3~4(上の表を参照されたい)、もしくは肝臓ステージ3~4(上の表を参照されたい)のいずれか、または、皮膚ステージ3+および下部GIステージ2~4もしくは肝臓ステージ2~4のいずれか、と定義される。これらの基準を満たさない症状は、標準リスク(SR)aGVHDと分類することができる。したがって、このシステムによって、上のIMBTRステージを使用して、aGVHD対象を「高リスク(HR)」カテゴリまたは非高リスクカテゴリ、すなわち、標準リスク(SR)カテゴリに分類する。
【0055】
HCT処置の後に続く免疫抑制治療にもかかわらず、同種異系のHCTレシピエントの約20~80%は、処置の後に続いてaGVHDを発病する。(例えば、PJ Martinら、Biol.Blood Marrow Transplant.18:1150~63頁(2012)を参照されたい。)いずれにしても、HCT後の患者においてGVHDを治療するのにいくつかの免疫抑制治療が通常使用される。例えば、aGVHDの現在の第一選択療法には、メチルプレジゾンまたはメチルプレドニゾロンによるステロイド治療が含まれ、これは、グレードII以上のaGVHDに投与することができる。ステロイド治療に十分に応答しない、したがってステロイド抵抗性である患者については種々の第二選択療法が存在する。これには、ミコフェノール酸モフェチル(MMF)、抗TNF抗体、またはCD3、CD147およびIL-2に結合する抗体のようなその他の抗体薬、抗リンパ球グロブリン(ATG)、間葉系幹細胞、ならびにメトトレキセート(MTX)が含まれる。しかし、より高いグレードのaGVHDの重症度を考慮すると、HCT患者においてaGVHDの発症リスクを低減するさらなる治療オプションならびに処置が必要である。
【0056】
aGVHDの発症リスクを低減する例示的方法
本明細書に包含されるのは、HCT処置の前後の両方でA1ATを投与する工程により、対象においてaGVHDの発症のリスクを低減する方法である。例えば、一部の実施形態では、A1ATの投与は、HCT処置の1、2、または3日前に始まり、HCT処置の後に続いて少なくとも8週間、少なくとも12週間、または少なくとも100日間、または少なくとも120日間のように、処置後少なくとも4週間、継続する。一部の実施形態では、A1ATの投与は、HCT処置の1、2、3、7、10、もしくは14日前またはHCT処置の1カ月、2カ月、もしくは3カ月前のように処置の前に始まり、次いで、処置後少なくとも4週間継続する。A1ATの投与はHCT処置の前に始まるので、一部の実施形態では、対象は、投与期間の開始時にGVHD症状がない。
同様に、一部の実施形態では、HCT処置後にaGVHDを発病する対象の個々のリスクについて、処置前に決定することはできない。
【0057】
一部の実施形態では、対象は、以下のスケジュール:(a)HCT処置の少なくとも1日前に、120、130、140、150、160、170、180、190、200、220、240、260、280、または300mg/kgのような、A1AT少なくとも120mg/kgの用量を対象に投与する工程;および(b)HCTの後に続いて少なくとも4週間、週に2回、A1AT 90、100、110、120、130、140、150、160、180、または200mg/kgのような、A1AT少なくとも90mg/kgの用量を対象に投与する工程、に従って、A1ATを投与される。一部の実施形態では、次いで、このレジメは、少なくともさらなる4週間、週に1回、A1AT 90、100、110、120、130、140、150、160、180、または200mg/kgのような、A1AT少なくとも90mg/kgの用量が後続する。この処置はまた、場合により、少なくとも1つの免疫抑制剤の投与も含むことができる。
【0058】
特定の投与スケジュールには、(a)HCT処置の1日前に、A1AT 120mg/kgの用量を対象に投与する工程;および(b)HCTの後に続いて少なくとも4週間、週に2回、A1AT 90、100、110、または120mg/kgの用量を対象に投与し、場合により、続いて少なくともさらなる4週間、週に1回、A1AT 90、100、110、または120mg/kgの用量を投与する工程;ならびに(a)HCT処置の1日前に、A1AT 180mg/kgの用量を対象に投与する工程;および(b)HCT処置の後に続いて少なくとも4週間、週に2回、A1AT 100、110、120、130、または140mg/kgの用量を対象に投与し、場合により、続いて少なくともさらなる4週間、週に1回、A1AT 100、110、120、130、または140mg/kgの用量を投与する工程;ならびに(a)HCT処置の1日前に、A1AT 150mg/kgの用量を対象に投与する工程;および(b)HCT処置の後に続いて少なくとも4週間、週に2回、A1AT 90、100、110、または120mg/kgの用量を対象に投与し、場合により、続いて少なくともさらなる4週間、週に1回、A1AT 90、100、110、または120mg/kgの用量を投与する工程;ならびに(a)HCT処置の1日前に、A1AT 120mg/kgの用量を対象に投与する工程;および(b)HCTの後に続いて少なくとも4週間、週に2回、A1AT 90mg/kgの用量を対象に投与する工程;ならびに(a)HCT処置の1日前に、A1AT 120mg/kgの用量を対象に投与する工程;および(b)HCTの後に続いて少なくとも4週間、週に2回、A1AT 90mg/kgの用量を、対象に投与し、続いて少なくともさらなる4週間、週に1回、A1AT 90mg/kgの用量を投与する工程;ならびに(a)HCT処置の1日前に、A1AT 150mg/kgの用量を対象に投与する工程;および(b)HCTの後に続いて少なくとも4週間、週に2回、A1AT 100mg/kgの用量を対象に投与する工程;ならびに(a)HCT処置の1日前に、A1AT 150mg/kgの用量を対象に投与する工程;および(b)HCTの後に続いて少なくとも4週間、週に2回、A1AT 100mg/kgの用量を、対象に投与し、続いて少なくともさらなる4週間、週に1回、A1AT 100mg/kgの用量を投与する工程;ならびに(a)HCT処置の1日前に、A1AT 180mg/kgの用量を対象に投与する工程;および(b)HCTの後に続いて少なくとも4週間、週に2回、A1AT 120mg/kgの用量を対象に投与する工程;ならびに(a)HCT処置の1日前に、A1AT 180mg/kgの用量を対象に投与する工程;および(b)HCTの後に続いて少なくとも4週間、週に2回、A1AT 120mg/kgの用量を、対象に投与し、続いて少なくともさらなる4週間、週に1回、A1AT 120mg/kgの用量を投与する工程、が含まれる。これら上のスケジュールいずれも、少なくとも1つの免疫抑制剤と組み合わせて行うことができる。
【0059】
HCTの後に続いて投与される免疫抑制剤としては、現在のところHCTの後に続いてaGVHDを治療するための第一選択療法であるプレドニゾン、メチルプレドニゾンまたはメチルプレドニゾロンのようなステロイド、GI管の病変が存在する場合投与することが可能であるブデソニドおよびベクロメタゾンのようなさらなるステロイドが挙げられ、ならびに、タクロリムス、シロリムス、およびシクロスポリン等のカルシニューリン阻害剤のようなその他の薬剤が挙げられるが、これらの薬剤は、場合によってはメトトレキセートと一緒に投与投することが可能である。ペントスタチン、ルキソリチニブ、ブレンブキシマブベドチン(抗CD30抗体)、トシリズマブ(抗IL6R抗体)、IL6シグナル伝達阻害剤、ミコフェノール酸モフェチル(MMF)、抗TNF抗体、バシリキシマブ、ダクリズマブ、イノリモマブ、アレムツズマブ、エタネルセプト、インフリキシマブ、ロイコトリエンアンタゴニスト、ウマ抗リンパ球グロブリン(ATG)のような抗リンパ球グロブリン、および/または間葉系幹細胞、のようなその他の治療法もまた、一部の実施形態では、A1ATと組み合わせて投与することができる。一部の実施形態では、対象に、A1ATとステロイドおよびトシリズマブのようなIL6シグナル伝達阻害剤または
別のIL6シグナル伝達阻害剤との組合せを投与することができる。一部の実施形態では、メチルプレドニゾンまたはメチルプレドニゾロンが投与される場合、これらは1~3mg/kg/日、または1~2mg/kg/日で投与される。
【0060】
一部の実施形態では、対象はまた、骨髄破壊的コンディショニングレジメンまたは強度減弱コンディショニングレジメンのようなコンディショニングレジメンを受けている場合もある。
【0061】
一部の実施形態では、HCT処置は、(a)少なくとも1つのHLAミスマッチがある血縁ドナー、または(b)少なくとも1つのHLAミスマッチがあるまたはない非血縁ドナー、由来の細胞を含む同種異系のHCT処置である。一部の実施形態では、ドナーは、1つのHLAミスマッチがある血縁ドナーである。一部の実施形態では、ドナーは、HLAミスマッチのない非血縁ドナーである。一部の実施形態では、ドナーは、1つのHLAミスマッチがある非血縁ドナーである。一部の実施形態では、ドナー細胞は、臍帯血由来ではない。一部の実施形態では、ドナー細胞は骨髄に由来する。一部の実施形態では、細胞は末梢血に由来する。
【0062】
一部の実施形態では、対象は、白血病、リンパ腫、または骨髄腫のような疾患または障害に罹患している。他の実施形態では、患者は、地中海貧血症、鎌状赤血球貧血、重症複合免疫不全症、再生不良性貧血、骨髄異形成症候群のような遺伝子性の造血障害に罹患している可能性がある。さらに、本明細書の実施形態では、患者は、同種異系のHCTで治療が可能な、以下の疾患または障害のうちの1つまたはそれ以上に罹患している可能性がある:急性骨髄性白血病(AML)、急性リンパ芽球性白血病(ALL)、慢性骨髄性白血病(CML)、慢性リンパ芽球性白血病(CLL)、骨髄増殖性障害、骨髄異形成症候群、多発性骨髄腫、非ホジキンリンパ腫、ホジキン病、再生不良性貧血、赤芽球癆、発作性夜間ヘモグロビン尿症、ファンコニー貧血、重症型地中海貧血、鎌状赤血球貧血、重症複合免疫不全症(SCID)、ウィスコット-アルドリッチ症候群、血球貪食性リンパ組織球症(HLH)、ムコ多糖症のような先天性代謝異常症、ゴーシェ病、異染性白質ジストロフィー、副腎白質ジストロフィー、表皮水疱症、重症先天性好中球減少症、シュワッフマン-ダイヤモンド症候群、ダイヤモンド-ブラックファン貧血、または白血球粘着不全症。
【0063】
一部の実施形態では、対象は、HCTの後に続いてステージIIIまたはIVのaGVHDを発病するリスクに晒されている。
【0064】
一部の実施形態では、対象における中央値の血清A1ATレベルは、HCT処置の当日で正常なヒトの生理学的レベルを上回り、HCT処置後少なくとも28日間、このレベルを依然として上回る。一部の実施形態では、対象におけるピークの血清A1ATレベルは、HCT処置の当日で正常なヒト生理学的レベルを上回り、HCT処置後少なくとも28日間、このレベルを依然として上回る。遺伝子性の欠乏症がない対象におけるAATレベルは一般に、1.5~3.5mg/mLの範囲であるが、AATは急性期反応物質であるので、このレベルは、例えば、炎症に対して生理学的に応答して、少なくとも2倍またはさらにいっそう一時的に高まることができる。(SilvermanおよびSandhaus、N Engl J Med.2009年6月25日;360(26):2749~57頁。)一部の実施形態では、対象における中央値の血清A1ATレベルは、HCT処置の当日でおよびHCT処置後少なくとも28日間、2.5mg/mLを依然として上回る。一部の実施形態では、対象におけるピークの血清A1ATレベルは、HCT処置後少なくとも28日間、2.5mg/mLを依然として上回る。一部の実施形態では、対象における中央値の血清A1ATレベルは、HCT処置の当日でおよびHCT処置後少なくとも28日間、2.0mg/mLを依然として上回る。一部の実施形態では、対象における
ピークの血清A1ATレベルは、HCT処置後少なくとも28日間、2.0mg/mLを依然として上回る。一部の実施形態では、A1ATの投与は、対象における中央値の血清A1ATレベルがHCT処置の当日で3.0mg/mLを上回り、HCT処置後少なくとも28日間、3.0mg/mLを依然として上回るように行われる。一部の実施形態では、投与は、対象におけるピークの血清A1ATレベルがHCT処置の当日で3.0mg/mLを上回り、HCT処置後少なくとも28日間、3.0mg/mLを依然として上回るように行われる。一部の実施形態では、A1ATの投与は、対象における中央値の血清A1ATレベルがHCT処置の当日で3.5mg/mLを上回り、HCT処置後少なくとも28日間、3.5mg/mLを依然として上回るように行われる。一部の実施形態では、投与は、対象におけるピークの血清A1ATレベルがHCT処置の当日で3.5mg/mLを上回り、HCT処置後少なくとも28日間、3.5mg/mLを依然として上回るように行われる。一部の実施形態では、対象における中央値の血清A1ATレベルは、HCT処置の当日でおよびHCT処置後少なくとも28日間、4.0mg/mLを依然として上回る。一部の実施形態では、対象におけるピークの血清A1ATレベルは、HCT処置後少なくとも28日間、4.0mg/mLを依然として上回る。一部の実施形態では、対象における中央値の血清A1ATレベルは、HCT処置の当日でおよびHCT処置後少なくとも28日間、5.0mg/mLを依然として上回る。一部の実施形態では、対象におけるピークの血清A1ATレベルは、HCT処置後少なくとも28日間、5.0mg/mLを依然として上回る。
【0065】
一部の実施形態では、患者に与えられるA1ATの投薬量レベルは、先に試験されている臨床対象の群において、2.5mg/mL、3.0mg/mL、3.5mg/mL、4.0mg/mL、4.5mg/mL、または5mg/mLのような特定のしきい値以上または特定のしきい値と同等の平均または中央値のピーク血清A1ATレベルを提供するとわかっている投薬量レベル以上とするように、選択される。一部の実施形態では、プレHCTおよびポストHCTのA1AT投薬量は、先に試験されている臨床対象の群において、1.5mg/mLより大きい、2.0mg/mLより大きい、または1.5から3.5mg/mLの間、もしくは2から4mg/mLの間の全体的な平均または中央値の血清A1ATレベルを提供するとわかっている投薬量レベル以上とするように、設計されている。
【0066】
本明細書の他の方法では、プレHCTおよびポストHCTのA1AT投薬量は、HCT処置の当日およびHCT処置後少なくとも28日間の両方で、中央値の血清A1ATレベルが2.0mg/mLを依然として上回ることを確実にするように、設計されている。例えば、一部の実施形態では、HCT処置の後に続いてのA1AT投薬は、A1ATの中央値の血清レベルが処置後少なくとも28日間、2.0mg/mLを依然として上回る限り、毎日、2日毎、3日毎、7日毎、10日毎、または14日毎とすることができる。例を挙げると、一部の実施形態では、患者は、例えば、aGVHD症状を発病する結果として、A1ATのような血清タンパク質の枯渇を経験する場合がある。このような場合、HCT処置の後に続いての投薬量レジメの一部は、HCT処置の後に続いて正常なヒト血清レベルを上回る血清A1ATレベルを維持するように調整する必要があるかもしれない。他の場合では、A1ATレベルは比較的安定している可能性があり、その結果、処置の後に続いて頻度がより少ない投薬を使用することができる。例えば、一部の実施形態では、HCT処置の後に続いてのA1AT投薬は、A1ATの中央値の血清レベルが処置後少なくとも28日間、3.0mg/mLを依然として上回る限り、毎日、2日毎、3日毎、7日毎、10日毎、または14日毎とすることができる。他の実施形態では、HCT処置の後に続いてのA1AT投薬は、A1ATの中央値の血清レベルが処置後少なくとも28日間、3.5mg/mLを依然として上回る限り、毎日、2日毎、3日毎、7日毎、10日毎、または14日毎とすることができる。他の実施形態では、HCT処置の後に続いてのA1AT投薬は、A1ATの中央値の血清レベルが処置後少なくとも28日間、4.0mg
/mLを依然として上回る限り、毎日、2日毎、3日毎、7日毎、10日毎、または14日毎とすることができる。他の実施形態では、HCT処置の後に続いてのA1AT投薬は、A1ATの中央値の血清レベルが処置後少なくとも28日間、5.0mg/mLを依然として上回る限り、毎日、2日毎、3日毎、7日毎、10日毎、または14日毎とすることができる。
【0067】
本明細書の方法では、A1ATは、プールされたヒト血漿に由来してもよく、または組換えであってもよい。A1ATはまた、例えば、アルブミン、Fc、またはポリエチレングリコールの融合パートナーを含む融合タンパク質であってもよい。A1AT-Fc融合タンパク質を含めて、ある特定のA1AT製品は、特許公開WO2013/106589、WO2006/133403、米国特許第9,457,070号、米国特許第9,884,096号、およびWO2013/003641に記載されている。Prolastin(登録商標)、Prolastin(登録商標)C、Glassia(登録商標)、Aralast(登録商標)、Aralast(登録商標)NP、Zemaira(登録商標)/Respreeza(登録商標)、およびAlfalastin(登録商標)(LFB)を含めて、市販のいくつかの治療用A1AT製品が利用可能である。
【0068】
A1ATおよびステロイドによる、HCTの後に続くaGVHDを治療する例示的方法
本明細書の開示はまた、例えば、aGVHDの初期診断の際に、A1ATと少なくとも1つのステロイドとの組合せを用いて、HCT処置の後に続くaGVHDを治療する方法を含む。急性GVHDは、HCT処置の完了から処置より100日までの任意の時点で臨床的に診断することができる。遅発性aGVHDは、HCT後、100日を超えて発生する場合もある。
【0069】
少なくとも1つのステロイドは、例えば、プレドニゾン、メチルプレドニゾンまたはメチルプレドニゾロン、および/またはブデソニドまたはベクロメタゾンのような非吸収性経口ステロイドを含むことができる。A1ATは、ステロイド投与とともに、最初のaGVHD診断の後に続いて少なくとも4週間、週に2回、例えば、A1AT 90、100、110、120、130、140、150、160、170、180、200、220、または240mg/kgの用量で、投与することができる。一部の実施形態では、この週に2回のレジメは、ステロイド投与の継続とともに少なくともさらなる4週間、週1回、例えば、A1AT 90、100、110、120、130、140、150、160、180、または200mg/kgの投与が後続する。一部の実施形態では、A1ATは、ステロイド投与とともに、最初のaGVHD診断の後に続いて少なくとも4週間、週に2回、少なくとも90mg/kgの用量で、投与される。一部の実施形態では、A1ATは、ステロイド投与とともに、最初のaGVHD診断の後に続いて少なくとも4週間、週に2回、少なくとも100mg/kgの用量で、投与される。一部の実施形態では、A1ATは、ステロイド投与とともに、最初のaGVHD診断の後に続いて少なくとも4週間、週に2回、少なくとも110mg/kgの用量で、投与される。一部の実施形態では、A1ATは、ステロイド投与とともに、最初のaGVHD診断の後に続いて少なくとも4週間、週に2回、少なくとも120mg/kgの用量で、投与される。一部の実施形態では、治療の第1の4週間後に少なくとも部分奏功(PR)である場合には、同じ投薬量レベルまたは低減した投薬量レベルのいずれかで投薬量の頻度を週1回に低減する。
【0070】
一部の実施形態では、患者の血液または血漿をモニタリングして、A1ATのピークの血清レベルが、A1AT投与の第1の4週間(または28日)にわたって依然として少なくとも3.5mg/mLにあることを確実にし、ピークのA1ATレベルがそのしきい値を下回る場合、A1ATのより高いまたはより多頻度の用量を投与することができる。一部の実施形態では、A1ATの第1の用量または第1の2回用量は、負荷量、すなわち、その後の用量よりも高い用量レベルとすることができる。一部の実施形態では、負荷量は
、例えば、A1AT 120、130、140、150、160、180、200、または220mg/kgとすることができる。一部の実施形態では、週に2回のA1ATおよびステロイドの組合せは、8、10、12、14、16、もしくは18週間、または60、80、100、120、140、160、もしくは180日間のように、4週間より長い間、継続する。一部のかかる実施形態では、治療の第1の4週間後に少なくとも部分奏功(PR)である場合には、同じ投薬量レベルまたは低減した投薬量レベルのいずれかで、投薬量の頻度を週1回に低減する。一部のかかる実施形態では、少なくともPRである場合には、ステロイド投薬量の頻度もより長くし、および/またはステロイド投薬量を低減して、対象をA1ATおよびステロイドから徐々にやめさせる。一部の実施形態では、全体的な治療レジメは、100、120、140、160、または180日間続く。
【0071】
一部の実施形態では、A1ATの患者のピークの血清レベルが、治療の第1の4週間(または28日)にわたって少なくとも3.0mg/mLのままである。一部の実施形態では、A1ATの患者のピークの血清レベルが、治療の第1の4週間(または28日)の過程で3.0mg/mLを下回る場合、A1ATの用量を、ピークの血清レベルが3.0mg/mLを上回り続けるまで、高める。一部の実施形態では、A1ATのピークの血清レベルが、治療の第1の4週間(または28日)にわたって少なくとも3.5mg/mLのままである。一部の実施形態では、A1ATのピークの血清レベルが、治療の第1の4週間(または28日)の過程で3.5mg/mLを下回る場合、A1ATの用量を、ピークの血清レベルが3.5mg/mLを上回り続けるまで、高める。一部の実施形態では、A1ATのピークの血清レベルが、治療の第1の4週間(または28日)にわたって少なくとも4.0mg/mLのままである。一部の実施形態では、A1ATのピークの血清レベルが、治療の第1の4週間(または28日)の過程で4.0mg/mLを下回る場合、A1ATの用量を、ピークの血清レベルが4.0mg/mLを上回り続けるまで、高める。一部の実施形態では、A1ATのピークの血清レベルが、治療の第1の4週間(または28日)にわたって少なくとも4.5mg/mLのままである。一部の実施形態では、A1ATのピークの血清レベルが、治療の第1の4週間(または28日)の過程で4.5mg/mLを下回る場合、A1ATの用量を、ピークの血清レベルが4.5mg/mLを上回り続けるまで、高める。一部の実施形態では、A1ATのピークの血清レベルが、治療の第1の4週間(または28日)にわたって少なくとも5.0mg/mLのままである。一部の実施形態では、A1ATのピークの血清レベルが、治療の第1の4週間(または28日)の過程で5.0mg/mLを下回る場合、A1ATの用量を、ピークの血清レベルが5.0mg/mLを上回り続けるまで、高める。
【0072】
一部の実施形態では、患者に与えられるA1ATの投薬量レベルは、先に試験されている臨床対象の群において、2.5mg/mL、3.0mg/mL、3.5mg/mL、4.0mg/mL、4.5mg/mL、または5mg/mLのような特定のしきい値以上または特定のしきい値と同等の平均または中央値のピーク血清A1ATレベルを提供するとわかっている投薬量レベル以上とするように、選択される。一部の実施形態では、A1AT投薬量は、先に試験されている臨床対象の群において、1.5mg/mLより大きい、2.0mg/mLより大きい、または1.5から3.5mg/mLの間、もしくは2から4mg/mLの間の全体的な平均または中央値の血清A1ATレベルを提供するとわかっている投薬量レベル以上とするように、設計されている。
【0073】
上のスケジュールのいずれも、少なくとも1つの免疫抑制剤の投与と組み合わせて行うことができる。HCTの後に続いて投与される免疫抑制剤としては、プレドニゾン、メチルプレドニゾン、メチルプレドニゾロン、ブデソニド、またはベクロメタゾンのような第2のステロイドが挙げられ、ならびにタクロリムス、シロリムス、およびシクロスポリン等のカルシニューリン阻害剤のようなその他の薬剤が挙げられ、これらの薬剤は、場合によってはメトトレキセートと一緒に投与投することが可能である。例えば、上のA1AT
投薬スケジュールは、aGVHDの患者のグレードまたはステージおよび症状の場所とタイプ(例えば、GI管の病変が存在するか否か、または症状が主に皮膚に限局しているか否か)に基づいているステロイド治療プランに、加えることができる。例えば、ステージIIのaGVHDを呈する患者は、メチルプレドニゾロンのような全身性ステロイドで治療されることが多い。非吸収性経口ステロイドを、GI管の病変またはGI管の感染の疑いが存在する場合には、局所療法として加えることができ、または全身性ステロイドの代わりとすることができる。対照的に、例えば肝臓またはGI管の病変なくして斑点状丘疹としてほとんどが現れる可能性があるステージIのaGVHDを呈する患者を、局所ステロイドまたは局所および全身性ステロイドの組合せで治療することができる。
【0074】
ステージII~ステージIVのaGVHDのステロイドレジメンには一般に、プレドニゾン、メチルプレドニゾン、メチルプレドニゾロンのような糖質コルチコイドによる治療、および/または、ブデソニドまたはベクロメタゾンのような非吸収性グルココルチコイドによる治療が伴うが、このようなものについてはGI管の病変を有する患者向けにレジメンに加えることができまたはその他のステロイドの代わりとすることができる。しかし、経口ベクロメタゾンは、患者がサイトメガロウイルス(CMV)大腸炎のようなGI感染症を有するまたはかかる感染症の疑いがある場合、一般には与えられない。
【0075】
したがって、本明細書の方法では、少なくとも1つのステロイドは、例えば、単独でまたは組合せで投与される、プレドニゾン、メチルプレドニゾン、またはメチルプレドニゾロン、ブデソニドまたはベクロメタゾンを含むことができる。プレドニゾン、メチルプレドニゾン、またはメチルプレドニゾロンは、例えば、1~2.5mg/kg/日のような、1日あたり0.5から3.0mg/kgの間の用量で投与することができる。例えば、プレドニゾンは、1日あたり1mg/kg、1.5mg/kg、2mg/kg、2.5mg/kg、もしくは3mg/kgで、または、例えば、1日あたり2~2.5mg/kgで、全身投与向けに投薬することができる。メチルプレドニゾロンは、1日あたり1~20mg/kgまたは1~10mg/kgのような中等~高投薬量の範囲で、または、1日当たり、0.5~3mg/kg、0.5mg/kg、1mg/kg、1.5mg/kg、2mg/kg、2.5mg/kg、もしくは3mg/kg、または1日当たり1.5~2.5mg/kgのようなより中等な投薬量または用量範囲で、全身的に投薬することができる。一部の実施形態では、メチルプレドニゾロンは2mg/kg/日で投与することができる。一部の実施形態では、メチルプレドニゾロンは、1.5mg/kg/日で投与することができる。一部の実施形態では、メチルプレドニゾロンは、1mg/kg/日で投与することができる。ベクロメタゾンは、5~10mg/日、または5mg/日、6mg/日、7mg/日、8mg/日、9mg/日、または10mg/日のような投薬量で投与することができる。上記のように、4週間後に少なくとも部分奏功が達成されたら、ステロイドの投薬量および頻度を徐々に減らすことができる。
【0076】
ペントスタチン、ルキソリチニブ、ブレンブキシマブベドチン(抗CD30抗体)、トシリズマブ(抗IL6R抗体)、IL6シグナル伝達阻害剤、ミコフェノール酸モフェチル(MMF)、抗TNF抗体、バシリキシマブ、ダクリズマブ、イノリモマブ、アレムツズマブ、エタネルセプト、インフリキシマブ、ロイコトリエンアンタゴニスト、ウマ抗リンパ球グロブリン(ATG)のような抗リンパ球グロブリン、および/または間葉系幹細胞のような、他の療法を、一部の実施形態においてステロイドプラスA1ATのレジメンに加えることもできる。一部の実施形態では、患者に、A1ATとステロイドとの組合せおよびトシリズマブのようなIL6シグナル伝達阻害剤または別のIL6シグナル伝達阻害剤を投与することができる。
【0077】
一部の実施形態では、対象はまた、骨髄破壊的コンディショニングレジメンまたは強度減弱コンディショニングレジメンのようなコンディショニングレジメンも受けている場合
がある。
【0078】
一部の実施形態では、HCT処置は、(a)少なくとも1つのHLAミスマッチがある血縁ドナー、または(b)少なくとも1つのHLAミスマッチがあるまたはない非血縁ドナー、由来の細胞を含む同種異系のHCT処置である。一部の実施形態では、ドナーは、1つのHLAミスマッチがある血縁ドナーである。一部の実施形態では、ドナーは、HLAミスマッチのない非血縁ドナーである。一部の実施形態では、ドナーは、1つのHLAミスマッチがある非血縁ドナーである。一部の実施形態では、ドナー細胞は、臍帯血由来ではない。一部の実施形態では、ドナー細胞は骨髄に由来する。一部の実施形態では、細胞は末梢血に由来する。
【0079】
一部の実施形態では、対象は、白血病、リンパ腫、または骨髄腫のような疾患または障害を患っている。他の実施形態では、患者は、地中海貧血症、鎌状赤血球貧血、重症複合免疫不全症、再生不良性貧血、骨髄異形成症候群のような遺伝子性の造血障害に罹患している可能性がある。さらに、本明細書の実施形態では、患者は、同種異系のHCTで治療が可能な、以下の疾患または障害のうちの1つまたはそれ以上に罹患している可能性がある:急性骨髄性白血病(AML)、急性リンパ芽球性白血病(ALL)、慢性骨髄性白血病(CML)、慢性リンパ芽球性白血病(CLL)、骨髄増殖性障害、骨髄異形成症候群、多発性骨髄腫、非ホジキンリンパ腫、ホジキン病、再生不良性貧血、赤芽球癆、発作性夜間ヘモグロビン尿症、ファンコニー貧血、重症型地中海貧血、鎌状赤血球貧血、重症複合免疫不全症(SCID)、ウィスコット-アルドリッチ症候群、血球貪食性リンパ組織球症(HLH)、ムコ多糖症のような先天性代謝異常症、ゴーシェ病、異染性白質ジストロフィー、副腎白質ジストロフィー、表皮水疱症、重症先天性好中球減少症、シュワッフマン-ダイヤモンド症候群、ダイヤモンド-ブラックファン貧血、または白血球粘着不全症。
【0080】
一部の実施形態では、対象は、HCTの後に続いてステージIIIまたはIVのaGVHDを発病するリスクに晒されている。
【0081】
本明細書の方法では、A1ATは、プールされたヒト血漿に由来してもよく、または組換えであってもよい。A1ATはまた、例えば、アルブミン、Fc、またはポリエチレングリコールの融合パートナーを含む融合タンパク質であってもよい。Prolastin(登録商標)、Glassia(登録商標)、Aralast(登録商標)、およびZemaira(登録商標)/Respreeza(登録商標)を含めて、市販のいくつかの治療用A1AT製品が利用可能である。
【実施例0082】
下に論議の実施例は、本発明の純粋に例示であることが意図されており、本発明をいかようにも限定するものと見なされるべきではない。実施例は、下の実験が全てであることまたは実行された唯一の実験であることを表すことを意図するものではない。使用した数値(例えば、量、温度等)に関しては正確を期すように努力したが、幾らかの実験誤差および偏差について考慮すべきである。特に記載がなければ、部は重量部であり、分子量は重量平均分子量であり、温度は摂氏度であり、圧力は大気圧であるかまたはこれに近い。
【0083】
実施例1:HCTレシピエントにおいて急性GVHDの発症リスクを低減するための、A1ATの第2/3相非盲検臨床試験および二重盲検臨床試験
HCTレシピエントにおけるA1ATに関するヒト治験を、2つのパーツで計画する、すなわち、20人の患者からなる2つのコホート、コホート1および2に、特定の2つの投薬量レジメが与えられる非盲検部分、これに続いて、治験の非盲検部分において選択された投薬量レジメを使用して、160人の患者でのA1AT対プラセボの二重盲検プラセ
ボ対照治験、である。非盲検部分では、コホート1に、HCT処置の1日前(-1日目)にA1AT(Zemaira(登録商標)/Respreeza(登録商標))120mg/kgを与え、次いで、28日目まで週に2回、A1AT 90mg/kg、次いで、56日目まで週1回、A1AT 90mg/kgを与える。コホート2に、HCT処置の1日前(-1日目)にA1AT(Zemaira(登録商標)/Respreeza(登録商標))180mg/kgを与え、次いで、28日目まで週に2回、A1AT 120mg/kg、次いで、56日目まで週1回、A1AT 120mg/kgを与える。2つのコホートからのデータについては、すべての患者についてHCT処置の少なくとも100日後にレビューし、治験の二重盲検部分の投薬量レジメについては、先にテストされたレジメに基づいて選択されることになる。これらの投薬量レジメによって、患者の中央値またはピークいずれかのA1ATレベルが正常なヒト末梢血のA1ATレベルを上回るように、十分なA1ATを、HCTの前後の両方で与えることができる。
【0084】
治験向けに選択される患者は、非盲検部分については年齢が少なくとも18歳、二重盲検部分については年齢が少なくとも12歳、が必要である。治験は、骨髄破壊的コンディショニングレジメンを受けた患者に制限される。コンディショニングレジメンはaGVHDを発病するリスクに影響を与えることができるので、コンディショニングレジメンの変動を制限することは、結果を評価する助けとなり得る。患者はまた、a)1つまたは2つのHLAミスマッチが存在する血縁ドナー(例えば、6/8または7/8)またはb)HLAマッチまたはミスマッチ(例えば、7/8)いずれかがある非血縁ドナー、のどちらかからHCTを受ける必要がある。臍帯血移植を受けている患者は除外し、抗T細胞抗体療法を受けている患者、および以前にHCTを受けたことがある患者も同様とする。
【0085】
患者はまた、A1ATまたはプラセボに加えて、タクロリムスおよびメトトレキセートの標準的な免疫抑制レジメンで治療されることになる。タクロリムスおよびメトトレキセートを受けている患者で観察されるaGVHDの率は、約40~60%である。(M.Jagasiaら、Blood 119(1):296~307頁(2012);Pavletic&Fowler、2012。)治療レジメンにかかわらずaGVHDを発症する患者は、ステロイドでさらに治療することができる。治験の第2相では、GVHDを発病するプラセボの患者およびステロイドで治療するがステロイド治療に抵抗性である患者は、非盲検となって、A1ATによるさらなる治療を受けることができる。
【0086】
治験の両パーツの主要評価項目は、HCTの後に続く100日以内でのグレードII以上のaGVHDの頻度とする。患者のaGVHDは、本開示で先に提供した表1に従ってグレード付けする。副次的評価項目は、HCTの後に続く100日以内でのグレードII、III、IVそれぞれのaGVHDの頻度、HCT後180日目および365日目での慢性GVHDの発生率、28日目、60日目、180日目、および365日目での全身感染の発生率、非再発死亡までの日数、ならびに180日目および366日目での全死亡率、とする。その他の副次的評価項目には、180日目および365日目での原発性悪性腫瘍の再発の頻度、180日目および365日目での免疫抑制の中止の発生率、好中球の生着までの時間、A1ATによる治療に応答するステロイド抵抗性aGVHD(グレードII~IV)の28日目での頻度、ステロイド抵抗性aGVHDの対象の56日目での全奏効率(ORR)、関連有害事象の発生率、ならびにAUC、Cmax、トラフのような薬物動態パラメータ、が含まれる。
【0087】
実施例2:メチルプレドニゾロンと組み合わせた、HCT後のハイリスクaGVHDの治療のためのA1ATの第III相治験
高リスクaGVHDについてHCT処置の後に続いて初期治療を必要とする患者に対して、A1ATプラスメチルプレドニゾロンまたはプラセボプラスメチルプレドニゾロンの第III相、多施設無作為化プラセボ対照治験を計画する(次のURL:http://
www(の後に続いて)z(ドット)umn(ドット)edu(ドット)MNAcuteGVHDRiskScoreでミネソタ標準に基づく臨床ハイリスクaGVHDの特性を参照されたい)。新たに診断された、同種異系のHCTの後に続く高リスクaGVHDである成人(>12歳)の男性および非妊娠女性の患者を、治験に含める。しかし、A1ATはIgA欠損患者には禁忌である。
【0088】
HCT後のaGVHDと新たに診断された患者は無作為化されて、メチルプレドニゾロン(MP)2mg/kg/日に加えて、週に2回、A1AT(Zemaira(登録商標))120mg/kgまたはプラセボを受けることになる。治療開始後28日目に対象が応答する場合(完全奏効(CR)または部分奏効(PR)のいずれでも)、対象は、週1回、AATによるさらなる4週間の治療を受けることができる。治療開始後28日目に対象が応答する場合(CRまたはPRのいずれでも)、対象はまたメチルプレドニゾロンに関して頻度がより少ない用量を受けることができる。患者は、6カ月(180日)の主要評価項目までフォローアップが継続することになる。患者は、GVHDについて、8週間まで(治療時)、次いで、最低2週間毎に12週間まで(120日)、次いで、毎月で6カ月の評価項目まで評価されることになる。治験には治療群あたり55人で110人の患者が含まれることになる。
【0089】
本治験の場合、A1AT(Zemaira(登録商標))を、Igバイアル中の滅菌、白色凍結乾燥粉末として供給し、50mg/mLでの注射向けに滅菌水中で再構成する。市販のアルブミン製品であるプラセボ製品(AlbuRX(登録商標)5)を、5%デキストロース中の1.2%アルブミン溶液に同様に希釈するが、これは、50mg/mLでのA1AT溶液と視覚的にマッチすることが実証されたものである。非盲検の薬剤師が2つの溶液を調製する。
【0090】
A1ATは、週に2回、120mg/kgで投薬され、続いて、場合により、第1の4週間(28日)後に週1回投薬する。用量モデリングが予測するところでは、週に2回の用量120mg/mLによって血漿A1ATレベル少なくとも3.5mg/mLが得られるはずであり、これは、GVHDの炎症プロセスを減弱するのに十分であるとすることができる。投薬によって、3.5mg/mL以上の標的とされた定常状態AATレベルを達成することが図られている。
【0091】
研究評価には、安全性、臨床活動、薬物動態、および薬力学の評価が含まれる。臨床評価には、例えば、皮膚発疹、下痢、嘔吐、および吐き気のような胃腸管症状、ならびに肝機能の評価を含めて、GVHD症状のスコアリングが含まれる。
【0092】
治験の第1の目的には、新たに診断されたGVHDの患者においてMPと組み合わせたA1ATの効能を評価することが含まれる。第2の目的には、新たに診断されたGVHD患者の治療におけるA1ATの安全性を評価することおよび薬物動態プロファイルを評価することが含まれる。主要評価項目には、治療開始後の28日目での全奏効率(ORR)、完全奏効(CR)、および部分奏効(PR)が含まれ、ならびに、標準のケアMP治療と組み合わせたプラセボと比較した、A1ATを受けている新たに診断されたGVHDの患者における、ケアのMP標準と比較して6カ月目で無GVH無再発生存(GRFS)が25%上昇するような、6カ月目でのGRFSが含まれる。さらなる評価項目には、180日目での非再発死亡率、180日目までの原発性悪性腫瘍の再発の発生率、薬物動態パラメータ、100日目および180日目での慢性GVHDの発生率、28日目、60日目および180日目での免疫抑制中止の発生率、28日目、60日目および180日目での全身感染の発生率、および関連する有害事象の発生率、が含まれる。
【手続補正書】
【提出日】2023-10-31
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
造血細胞移植(HCT)を受けている対象において急性移植片対宿主病(aGVHD)の発症のリスクを低減する方法であって、以下のスケジュール:
(a)HCT処置の少なくとも1日前に、アルファ-1アンチトリプシン(A1AT)少なくとも120mg/kgの用量を対象に投与する工程;および
(b)HCTの後に続いて少なくとも4週間、週に2回、A1AT少なくとも90mg/kgの用量を対象に投与し、場合により、続いて少なくともさらなる4週間、週に1回、A1AT少なくとも90mg/kgの用量を投与する工程、
に従い、
場合により少なくとも1つの免疫抑制剤と組み合わせて、A1ATを投与する工程を含む、
前記方法。
【外国語明細書】