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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024119105
(43)【公開日】2024-09-03
(54)【発明の名称】基板処理装置および基板処理方法
(51)【国際特許分類】
   C25D 17/00 20060101AFI20240827BHJP
   C25D 17/08 20060101ALI20240827BHJP
   C25D 21/04 20060101ALI20240827BHJP
【FI】
C25D17/00 C
C25D17/08 S
C25D21/04
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023025750
(22)【出願日】2023-02-22
(71)【出願人】
【識別番号】000207551
【氏名又は名称】株式会社SCREENホールディングス
(74)【代理人】
【識別番号】100105935
【弁理士】
【氏名又は名称】振角 正一
(74)【代理人】
【識別番号】100136836
【弁理士】
【氏名又は名称】大西 一正
(72)【発明者】
【氏名】絹野 敦士
(57)【要約】
【課題】作用部が大きく移動する構成であっても、その移動を妨げず動作に必要な流体の流路を確実に形成する。
【解決手段】本発明に係る基板処理装置及び基板処理方法は、作用部を、移動機構により互いに異なる第1位置と第2位置との間で移動させ、第1位置に位置決めした作用部が、流体を用いて所定の動作を実行する。作用部には、移動機構により作用部と一体的に移動する移動配管が設けられる一方、移動機構による作用部の移動に追随しないように、流体の流通源に接続される固定配管が設けられる。作用部が第1位置に位置決めされているときには、接続機構が移動配管と固定配管とを接続し、作用部が第1位置から離間するときには、該接続を接続機構が解除する。
【選択図】図10
【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定の第1位置に位置決めされて、流体を用いて基板に対する所定の動作を行う作用部と、
前記作用部を、互いに異なる前記第1位置と第2位置との間で移動させる移動機構と、
前記第1位置に位置決めされた前記作用部に接続されて前記流体が流通する流路を形成する流路形成部と
を備え、
前記流路形成部は、
前記移動機構により前記作用部と一体的に移動する移動配管と、
前記流体の流通源に接続され、前記移動機構による前記作用部の移動に追随しない固定配管と、
前記作用部が前記第1位置に位置決めされているときに前記移動配管と前記固定配管とを接続し、前記作用部が前記第1位置から離間するときには該接続を解除する接続機構と
を有する、基板処理装置。
【請求項2】
前記移動配管および前記固定配管は、前記流体が流通する内部空間をそれぞれ有し、
前記作用部が前記第1位置にあるとき、前記移動配管の前記内部空間と前記固定配管の前記内部空間とが直接接続される、請求項1に記載の基板処理装置。
【請求項3】
前記移動配管および前記固定配管は、前記作用部が前記第1位置にあるときに互いに係合する係合部位をそれぞれ有し、
前記接続機構は、前記係合部位で係合された前記移動配管と前記固定配管との間を固定する、請求項2に記載の基板処理装置。
【請求項4】
前記作用部は、前記基板に作用する状態と該作用を解除した状態とを切り替える可動部と、前記可動部を覆うカバーとを有し、
前記流路形成部は、前記固定配管が排気源に接続されて、前記流体として前記カバーからの排気を流通させる、請求項1に記載の基板処理装置。
【請求項5】
前記流路形成部は、前記作用部に対して前記流体を供給する流体供給源に接続される、請求項1に記載の基板処理装置。
【請求項6】
前記作用部は、前記基板に作用する状態と該作用を解除した状態とを切り替える可動部と、前記可動部を覆うカバーとを有し、前記流体として前記カバー内に供給されるパージ用ガスを流通させる、請求項5に記載の基板処理装置。
【請求項7】
前記作用部は、前記流体供給源から供給される前記流体により駆動される可動部を有する、請求項5に記載の基板処理装置。
【請求項8】
前記流路形成部は、前記固定配管の少なくとも一部を、前記作用部の移動方向と平行な方向に所定の揺動範囲内で揺動可能に支持する支持機構を有する、請求項1に記載の基板処理装置。
【請求項9】
めっき液を貯留するめっき槽をさらに備え、
前記作用部は、前記第1位置において、前記めっき槽内で前記基板に当接して前記基板を保持する保持部と、前記保持部を駆動して前記基板を保持する状態と該保持を解除した状態とを切り替える切替部とを有する、請求項1ないし8のいずれかに記載の基板処理装置。
【請求項10】
基板に対し所定の動作を行う作用部を、移動機構により互いに異なる第1位置と第2位置との間で移動させる工程と、
前記第1位置に位置決めした前記作用部が、流体を用いて前記所定の動作を実行する工程と
を備え、
前記作用部には前記移動機構により前記作用部と一体的に移動する移動配管が設けられる一方、前記流体の流通源に接続され、前記移動機構による前記作用部の移動に追随しない固定配管が設けられ、
前記作用部が前記第1位置に位置決めされているときには、接続機構が前記移動配管と前記固定配管とを接続し、前記作用部が前記第1位置から離間するときには、該接続を前記接続機構が解除する、基板処理方法。
【請求項11】
めっき液を貯留するめっき槽を設け、
前記作用部は、前記第1位置において、前記めっき槽内で前記基板に当接して前記基板を保持する、請求項10に記載の基板処理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、例えばプリント配線基板やガラス基板等の基板に対し流体を用いて所定の動作を実行する基板処理装置および基板処理方法に関するものである。なお、ここでいう「流体を用いて」とは、流体を基板に対して直接作用させるものに限定されず、動作に何らかの形で流体が関与することを指す包括的な概念である。
【背景技術】
【0002】
半導体基板、プリント配線基板、ガラス基板等の各種基板の表面に対し、基板に対して所定の動作を行う作用部が装置内で移動するように構成されたものがある。例えば特許文献1には、基板をめっき液に浸漬してめっき処理を行う装置が記載されている。このめっき装置では、めっき液を貯留する処理槽に搬送されてくる基板の一端部を、カソード電極が設けられたクランプにより把持し、該クランプが移動することで基板を処理槽内で搬送しながらめっき処理が施される。
【0003】
また、特許文献2に記載のめっき装置では、カソード電極が設けられ中央部が開口する環状の基板ホルダで基板の周縁部が把持される。そして、基板ホルダが吊り下げられた状態でめっき液を貯留する処理槽に浸漬されることにより、基板がめっき液により処理される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第4268874号公報
【特許文献2】特開2021-031718号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
このような基板処理技術においては、基板に対して流体を用いた処理動作を行うことがある。例えば上記の従来技術においては、作用部に該当するクランプやホルダに付随する機構部品をめっき液から生じる腐食性雰囲気から保護するために、それらの部品をカバー内に収容し、カバー内を排気、またはカバー内にパージ用ガスを供給することが考えられる。ただしこれらの作用部は移動しており、特に移動距離が大きくなる場合には、それに追随する流体の流路を確保することが難しくなる。
【0006】
例えば電気系統の配線に比べて、流体の配管は太くなりがちで柔軟性にも乏しい。このため、作用部が大きく動く場合であっても、その動きを妨げることなく、かつ動作に必要な流体を確実に流通させることのできる流路を確保する技術が求められる。しかしながら、そのような技術が確立されているとはいえない。
【0007】
この発明は上記課題に鑑みなされたものであり、流体を用いて動作が実現される基板処理装置および基板処理方法において、作用部が大きく移動する構成であっても、その移動を妨げることなく、動作に必要な流体の流路を確実に形成することのできる技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一の態様は、所定の第1位置に位置決めされて、流体を用いて基板に対する所定の動作を行う作用部と、前記作用部を、互いに異なる前記第1位置と第2位置との間で移動させる移動機構と、前記第1位置に位置決めされた前記作用部に接続されて前記流体が流通する流路を形成する流路形成部とを備える、基板処理装置である。ここで、前記流路形成部は、前記移動機構により前記作用部と一体的に移動する移動配管と、前記流体の流通源に接続され、前記移動機構による前記作用部の移動に追随しない固定配管と、前記作用部が前記第1位置に位置決めされているときに前記移動配管と前記固定配管とを接続し、前記作用部が前記第1位置から離間するときには該接続を解除する接続機構とを有している。
【0009】
また、本発明の一の態様は、基板に対し所定の動作を行う作用部を、移動機構により互いに異なる第1位置と第2位置との間で移動させる工程と、前記第1位置に位置決めした前記作用部が、流体を用いて前記所定の動作を実行する工程とを備える基板処理方法である。ここで、前記作用部には、前記移動機構により前記作用部と一体的に移動する移動配管が設けられる一方、前記流体の流通源に接続され、前記移動機構による前記作用部の移動に追随しない固定配管が設けられ、前記作用部が前記第1位置に位置決めされているときには、接続機構が前記移動配管と前記固定配管とを接続し、前記作用部が前記第1位置から離間するときには、該接続を前記接続機構が解除する。
【0010】
このように構成された発明では、流体の流路を構成する配管が、移動配管と固定配管とに分割されている。そして、移動配管は作用部の移動に伴って移動する一方、固定配管は流体の流通源に接続されており、作用部の移動に追随しない。このため、作用部の移動に対して、配管がこれを妨げることは避けられる。その一方で、作用部の動作のために流体の流路が必要となる第1位置に作用部があるときには、移動配管と固定配管とが接続機構によって接続され、これにより流体の流路が形成される。その結果、作用部による流体を用いた動作が実現可能となる。
【発明の効果】
【0011】
上記のように、本発明では、流体の流路となる配管を常時接続するのではなく、流体が動作に必要な第1位置にあるときに、作用部と一体に移動する移動配管と、これに追随せず流体の流通源に接続された固定配管とが一時的に接続される。したがって、配管が作用部の移動を妨げることもなく、また動作時には必要な流体の流路を確実に形成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明の第1実施形態に係るめっき装置の概略構成を示す図である。
図2】このめっき装置の電気的構成を示すブロック図である。
図3】チャック機構の概略構成を示す図である。
図4】チャック機構の主要部を側面から見た状態を模式的に示す図である。
図5】めっき処理を示すフローチャートである。
図6】処理中の各部の動きを模式的に示す図である。
図7】処理中の各部の動きを模式的に示す図である。
図8】カバーの構造を示す三面図である。
図9】カバーにおける気流制御を説明する図である。
図10】排気系におけるジョイント機構を説明する図である。
図11】給気系におけるジョイント機構を説明する図である。
図12】本発明の第2実施形態に係るめっき装置の概略構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
図1は本発明の第1実施形態に係るめっき装置の概略構成を示す図である。また、図2はこのめっき装置の電気的構成を示すブロック図である。このめっき装置1は、半導体基板、プリント配線基板、ガラス基板等の各種基板S(以下、単に「基板」という)の少なくとも一方主面に、金属(例えば金)の皮膜を電解めっきにより形成する装置である。以下の説明のために、XYZ直交座標系を図1に示すように定義する。図1はめっき装置1の側面視を示す図であり、水平かつ図1紙面に垂直な方向をX方向、これと直交する水平かつ図1紙面に沿った方向をY方向とする。また、鉛直方向をZ方向とする。また、各図において、各部材の近傍に付した破線矢印は、当該部材の移動方向を表すものとする。
【0014】
なお、本願出願人が先に開示した特願2022-094449の明細書および図面には、本実施形態のめっき装置1と基本的な構成が類似するめっき装置が開示されており、装置各部の構造やその機能、装置の動作等についても詳しい記載がある。
【0015】
めっき装置1は、複数のフレーム部材を組み合わせて構成された筐体10に、後述する各部が組み付けられた構成を有している。なお、図1および以下の各図においては、図面が煩雑になるのを避けるために、一部構成の記載を適宜省略することがある。具体的には、部品を保持するための保持機構、部品を覆うカバー、それらを筐体10に取り付けるための機構など、発明の成立に対する寄与度が比較的低く、またその構造について適宜の公知技術を適用可能であり特段の説明を要しないと考えられる構成については、図示を省略することがある。
【0016】
図1(a)はめっき装置1の正面図である。めっき装置1には、基板SをY方向に沿って搬送する搬送部2が設けられている。搬送部2は、図示しない支持機構により各々がX方向を軸方向として回転自在に支持され、Y方向に沿って並べられた複数の搬送ローラー21を備えている。搬送ローラー21の回転軸には回転モーター23が結合されている。制御部9からの制御指令に応じ搬送駆動部22が回転モーター23を回転させることで、搬送部2は、基板Sを水平姿勢でY方向に搬送する。矩形の基板Sは、周囲の4辺のうち1辺を先頭にして搬送される。以下では、基板Sの搬送方向を符号Dtにより表す。この実施形態では、基板Sは水平姿勢を維持したままY方向へ一直線に搬送される。したがって、搬送方向DtはY方向に等しい。なお、搬送ローラー21のうち一部のローラーについては、駆動源が接続されない従動ローラーであってもよい。
【0017】
めっき装置1はさらに、搬入部3、めっき処理部4、リンス処理部5、搬出部6、電源部7および制御部9を備えている。搬入部3、めっき処理部4、リンス処理部5および搬出部6は、搬送部2による基板の搬送方向Dt(Y方向)に沿ってこの順番で並べられている。すなわち、このめっき装置1では、基板Sは、搬送部2によりY方向に搬送されながら、上記各処理部において必要な処理を施される。
【0018】
搬入部3は、外部から搬送されてくる未処理の基板Sを受け取って一時的に保持し、必要なタイミングで該基板Sをめっき処理部4へ供給する。めっき処理部4は、本発明に係るめっき方法を実行する処理主体となるものであり、基板Sをめっき液に浸漬してめっき処理を行う。
【0019】
リンス処理部5は、リンス槽51と、バット52と、リンス液給排部59とを備えている。リンス槽51は、基板Sを収容するのに必要十分なサイズの内部空間を有し、該内部空間には基板Sの上面および下面に向けてリンス液を吹き付けるノズル(図示省略)が配置されている。リンス槽51のY方向側側面のうち搬送経路Pと重なる部分には開口部が設けられ、該開口部に対してシャッター51a,51bが開閉自在に設けられている。
【0020】
バット52は、リンス槽51の下方に配置され、リンス槽51からこぼれたリンス液を受ける。リンス液給排部59は、必要に応じてリンス槽51内のノズルにリンス液を供給しまたリンス槽51からリンス液を排出する。リンス処理部5は、めっき処理部4でめっき液に浸漬された基板Sに対しリンス処理を施す。リンス液としては例えば水が用いられる。搬出部6は、リンス処理後にリンス処理部6から送出される基板Sが外部の搬送装置により後処理工程へ払い出されるまでの間、基板Sを一時的に留置する。
【0021】
電源部7は、装置各部に必要な電力を供給する。制御部9は、上記のように構成された装置各部を制御し、めっき装置1に所定の処理を行わせる。制御部9のハードウェア構成としては、例えば一般的なコンピューター装置と同様のものを用いることができる。すなわち、制御部9としては、CPU(Central Processing Unit)91、メモリー92、ストレージ93、入力部94、表示部95、インターフェース部96等を備えたものを用いることができる。
【0022】
メモリー92は、処理の過程で生じた各種のデータを一時的に記憶する。ストレージ93は、各種データおよび制御プログラム931を長期的に記憶する。入力部94および表示部95は、ユーザーインターフェース機能を担う。インターフェース部96は、外部機器等の通信を担う。
【0023】
CPU91は、予めストレージ93に記憶されている制御プログラム931を読み出して実行し、これに基づき装置各部を制御して所定の動作を行わせることにより、後述する各種の動作を実現する。この目的のために、CPU91は、搬送部2の動作を制御する搬送制御部911、チャック部40の動作を制御するチャック制御部912、各種流体の供給源を制御してその供給および排出を司る給排制御部913、配管上のバルブを制御して流通する流体の流量を調整する流量制御部914等の機能ブロックをソフトウェア的に実現する。なお、これらの機能ブロックのうち少なくとも一部は、例えば専用ハードウェアとして構成されてもよい。
【0024】
図1(b)はめっき処理部の概略構成を示す正面図である。めっき処理部4は、めっき槽41と、バット42,44と、チャック部40と、洗浄機構48と、めっき液給排部49とを備えている。めっき槽41は、基板Sを収容するのに十分なサイズを有する内部空間にめっき液を貯留可能となっている。バット42は、めっき槽41の下方に配置され、こぼれためっき液を受ける。チャック部40は、めっき槽41の上方に配置され、めっき処理を受ける基板Sを保持する。バット44は、めっき槽41の下方のバット42に対し(-Y)側に隣接して配置されている。洗浄機構48は、適宜の洗浄液(例えば水)によりチャック部40を洗浄する。この目的のために、洗浄機構48は、バット44内に設けられた洗浄ノズル481と、洗浄ノズル481に洗浄液を供給する洗浄液給排部482とを備えている。めっき液給排部49は、制御部9の給排制御部913からの制御指令に応じてめっき槽41にめっき液を供給し、まためっき槽41からめっき液を排出する。
【0025】
図1(b)に示すように、めっき槽41の(-Y)側側面および(+Y)側側面のうち搬送経路Pと重なる部分には開口部が設けられ、該開口部には開閉自在のシャッター41a,41bがそれぞれ設けられている。シャッター41a,41bの開状態では、めっき槽41の側面に設けられた開口部を介して、搬送部2により搬送経路Pを搬送される基板Sを通過させることができる。これにより、めっき槽41への未処理基板Sの搬入およびめっき槽41からの処理済み基板Sの搬出が可能となる。
【0026】
一方、閉状態ではめっき槽41の側面に設けられた開口部が閉塞される。このとき基板Sの搬送経路Pは遮断されるが、めっき槽41の内部には、開口部の高さを超えてめっき液を貯留することが可能となる。(-Y)側のシャッター41aの開状態でめっき槽41に基板Sが収容された後、シャッター41aが閉じられ、めっき槽41の内部空間がめっき液Lで満たされることにより、基板Sがめっき液Lに浸漬されめっき処理される。その後、シャッター41a,41bおよびめっき槽41の図示しない排出口が開かれてめっき液が排出され、めっき処理後の基板Sがリンス部5へ搬出される。シャッター41a,41bの動作については、互いに独立して開閉してもよく、また一体的に開閉してもよい。
【0027】
めっき槽41内で搬送経路Pの上方には、アノード電極45が配置されている。アノード電極45は電源部7と電気的に接続される。めっき液Lはアノード電極45が接液するのに十分な量、めっき槽41に貯留される。後述するように、めっき槽41内で基板Sを保持するチャック機構にカソード電極が設けられており、これらの電極間に電源部7から直流電圧が印加されることで、基板Sの表面に電解めっきによる皮膜が形成されることになる。
【0028】
めっき槽41に収容される基板SのX方向両端部のそれぞれに対応して、2組のチャック部40が配置されている。図1では、それらのうち(+X)側の1組のみが図示されている。2組のチャック部40はYZ平面に対して対称に配置されているが、基本的な構造は同一である。すなわち、各チャック部40は、少なくとも1つのチャック機構400と、チャック機構400を支持する支持フレーム430と、支持フレーム430をY方向に移動させる移動機構43とを備えている。
【0029】
支持フレーム430は、筐体10を構成するフレーム部材のうち上部フレーム11に取り付けられた移動機構43によりY方向に移動自在に支持される。より具体的には、移動機構43は、めっき処理部4の上方で上部フレーム11に固定されY方向に延設されたガイドレール431と、ガイドレール431に係合されたスライダー432と、ガイドレール431に沿ってスライダー432をY方向に移動させる、図示しない駆動源とを備えている。これらの構成としては、適宜の直動機構、例えばリニアモーター、直動ガイド機構、チェーン駆動機構、ベルト駆動機構等を適用可能である。例えば、これらの構成が予め一体化された単軸ロボットを好適に適用することができる。
【0030】
スライダー432の下端に支持フレーム430が結合され、支持フレーム430にチャック機構400が固定されている。したがって、スライダー432がガイドレール431に沿ってY方向に移動するとき、支持フレーム430およびこれに取り付けられたチャック機構400が一体的にY方向に移動する。つまり、制御部9からの制御指令に応じて移動機構43が作動しスライダー432を走行させることにより、チャック機構400はY方向に移動する。
【0031】
この実施形態では、1つの支持フレーム430に対して3組のチャック機構400がY方向に並べて取り付けられており、これらは支持フレーム430の移動に伴い、一体的にY方向に移動する。これにより、各チャック機構400は、めっき槽41の上方に位置する「めっき位置」P1と、バット44の上方に位置する「洗浄位置」P2との間をY方向に往復移動可能となっている。図1(b)では、めっき位置P1にあるときのチャック機構400を実線により、また洗浄位置P2にあるときのチャック機構400を点線により、それぞれ示している。
【0032】
チャック機構400は基板Sを把持してめっき槽41内での基板Sの姿勢を安定的に維持するとともに、内蔵されたカソード電極を基板Sの一方主面に電気的に接触させる。そして、アノード電極45とカソード電極との間に直流電圧が印加されることで、当該一方主面に電解めっきによる皮膜を形成させる。ここでは基板Sの上面に皮膜が形成されるものとする。
【0033】
チャック機構400は、基板SのX方向両端部、つまり、搬送方向Dtに直交する幅方向の両端部において基板Sを把持する。そして、Y方向、つまり基板Sの搬送方向Dtに沿って複数設けられたチャック機構400により、基板SのX方向両端部ではその大部分が把持されている。チャック機構400は、基板Sを把持することでその姿勢を安定的に維持することに資するほか、Y方向に延びるカソード電極412を基板Sに接触させることで広い範囲に均一な電位を付与することができる。このため、このめっき装置1は、基板Sに対し均一性の良好なめっき皮膜を形成することが可能である。
【0034】
図3はチャック機構の概略構成を示す図である。また、図4はチャック機構の主要部を側面から見た状態を模式的に示す図である。より具体的には、図3(a)はチャック機構400の構造を模式的に示す斜視図であり、図3(b)はチャック機構400による基板Sの把持状態を示す図である。また、図4(a)は基板Sを把持する前のチャック機構400を示す側面図であり、図4(b)は基板Sを把持したときのチャック機構400を示す側面図である。
【0035】
なお、以下においてチャック機構400の構造および作用について説明する際、主として基板Sの(-X)側端部を保持するチャック機構400を例示して説明を行うが、同じ構造をZ軸回りに反転させて考えることにより、基板Sの(+X)側端部を保持するチャック機構の構造および動作を理解することが可能である。チャック機構400の動作は、制御部9のチャック制御部912により制御される。
【0036】
チャック機構400は、互いに独立して昇降可能な上側チャック411と下側チャック421とで基板SのX方向端部を把持する。具体的には、上側チャック411および下側チャック421はそれぞれY方向を長手方向として細長く延びる平板状部材であり、上側チャック411の下面411bが基板Sの上面Saのうち(-X)側端部に当接し、下側チャック421の上面421aが基板Sの下面Sbのうち(-X)側端部に当接することで、基板Sを把持する。
【0037】
実際には、上側チャック411の下面411bにはカソード電極412が取り付けられており、カソード電極412が基板Sの上面Saに接触することとなる。めっき液L中でカソード電極412が接液するのを抑制するため、上側チャック411の下面411bには、弾性材料で環状に形成されたシール部材415が、カソード電極412の周囲を取り囲むように設けられている。
【0038】
図3(b)に示すように、下側チャック421は、高さ方向(Z方向)における基板Sの位置を規定する作用を有するとともに、上側チャック411に設けられたカソード電極412を基板Sに接触させるのに際してそのバックアップとしての作用をも有する。これにより、基板Sの高さ方向位置が安定的に維持され、またカソード電極412と基板上面Saとの電気的接触を確実にすることができる。
【0039】
上側チャック411の上面411aには、Z方向に延びるシャフト部材413が取り付けられており、シャフト部材413は昇降機構414により昇降自在に支持されている。上側チャック411は例えばねじを用いてシャフト部材413に固結され着脱自在(すなわち交換可能)となっている。昇降機構414は、エアシリンダー、ソレノイド、リニアモーター、ボールねじ機構等の適宜の直動機構を有しており、シャフト部材413を昇降させる。これにより、シャフト部材413の下端に取り付けられた上側チャック411が昇降する。ここでは、上側チャック411、シャフト部材413、昇降機構414等を含んで一体的に構成されたユニットを「上側チャックユニット410」と称する。
【0040】
同様に、下側チャック421の上面421aには、Z方向に延びるシャフト部材423が取り付けられており、シャフト部材423は昇降機構424により昇降自在に支持されている。下側チャック421は例えばねじを用いてシャフト部材423に固結され着脱自在となっている。昇降機構424は、例えばエアシリンダー、ソレノイド、リニアモーター、ボールねじ機構等の適宜の直動機構を有しており、シャフト部材423を昇降させる。これにより、シャフト部材423の下端に取り付けられた下側チャック421が昇降する。ここでは、下側チャック421、シャフト部材423、昇降機構424等を含んで一体的に構成されたユニットを「下側チャックユニット420」と称する。
【0041】
上側チャックユニット410は、支持部材401に取り付けられている。具体的には、上側チャックユニット410は、固定部材404を介して支持部材401に固定されている。したがって、上側チャック411は、支持部材401に対しては昇降移動のみが可能である。一方、下側チャックユニット420は、進退機構402を介して支持部材401に取り付けられている。具体的には、下側チャックユニット420が取り付けられた支持部材403が、X方向を可動方向とする進退機構402の可動部に結合されている。進退機構402は、例えばエアシリンダー、ソレノイド、エアシリンダー、リニアモーター、ボールねじ機構等の適宜の直動機構を有しており、その本体部が支持部材401に固定されている。支持部材401の下部にはガイドレール405が設けられ、ガイドレール405に係合されたスライダー406が下側チャックユニット420に結合されている。
【0042】
このため、進退機構402の作動により、下側チャックユニット420は、図示しないストッパーにより規定される可動範囲内でX方向に移動可能となっている。したがって、下側チャック421は、支持部材401に対し、昇降機構424の作動による昇降移動と、進退機構402によるX方向の進退移動とが可能となっている。
【0043】
下側チャック421が可動範囲内で最も(+X)側まで進出した状態では、図3(b)に実線で示すように、下側チャック421の(+X)側先端部が基板Sの端面よりも(+X)側に位置し、下側チャック421の上面421aが基板Sの下面Sbを支持することができる。一方、図3(b)に点線で示すように、下側チャック421が可動範囲内で最も(-X)側まで後退した状態では、下側チャック421の(+X)側先端部は基板Sの端面よりも(-X)側に退避している。このため、下側チャック421が昇降する際に基板Sに接触することが回避される。
【0044】
チャック機構400では、上側チャック411と下側チャック421とが協働してめっき槽41内で基板Sを把持する。具体的には、めっき位置に位置決めされたチャック部40のチャック機構400から上側チャック411と下側チャック421とがめっき槽41内まで下降し(図4(a))、搬送ローラー21により支持され静止する基板Sの高さと同じ高さで基板Sの端部を把持する(図4(b))。このため、めっき槽41内において基板Sは、上面が平坦な水平姿勢で保持されることになる。図4(b)に示される、このときの上側チャック411および下側チャック421のZ方向位置を、以下では「下部位置」と称することとする。
【0045】
図3(a)に点線で示すように、チャック機構400の要部、特に可動機構についてはカバー460の内部に収容されている。カバー460は概略直方体の箱型形状を有しており、その内部空間に、昇降機構414,424、進退機構402等の可動機構(チャック駆動機構)を収容している。カバー460の下面には開口461が設けられており、ここから下方へシャフト部材413,423が突き出して、その下端に上側および下側チャック411,421がそれぞれ取り付けられている。
【0046】
このカバー460は、めっき槽41に貯留されためっき液から発生する腐食性ガスから可動機構を保護するとともに、可動機構から発生する微粉等がめっき槽41に落下するのを防止するために設けられている。その詳しい構造およびその機能については後述することとし、先に上記のように構成された本実施形態のめっき装置1が実行するめっき処理について、図5ないし図7を参照しつつ説明する。このめっき処理は、制御部9のCPU91が所定の制御プログラムを実行することにより実現される。
【0047】
図5はめっき処理を示すフローチャートである。また、図6および図7は処理中の各部の動きを模式的に示す図である。めっき装置1が所定の初期状態、すなわち図6(a)に示すように、各チャック機構400がめっき位置に位置決めされ、めっき槽41のシャッター41a,41bが開かれ、かつ搬送経路Pが露出する程度のめっき液Lがめっき槽41に貯留された状態で、未処理基板Sが受け入れられる。図6(b)に示すように、搬送部2が該基板Sを搬送方向Dtへ搬送してめっき槽41へ搬入する(ステップS101)。
【0048】
基板Sがめっき槽41に搬入されるとシャッター41a,41bは閉じられる。めっき槽41に収容された基板Sに向けてチャック機構400の上側チャック411および下側チャック421が下降し、図6(d)に示すように基板Sを把持する(ステップS102)。
【0049】
この状態で、めっき液給排部49からめっき槽41にめっき液Lが供給され、基板Sが浸漬された状態で電極間に電圧が印加されることで(ステップS103)、基板Sがめっき処理される。基板Sの上面SaのうちX方向の両端部に、Y方向に長く延びるカソード電極を接触させることで、基板Sの上面Saにおける電界強度のばらつきが抑えられ、均一性の良好なめっき皮膜を形成することが可能となる。このとき、チャック機構400と搬送ローラー21とが連動して基板Sをめっき槽41内で揺動させることで(ステップS104)、めっき皮膜の均一性をより向上させることができる。
【0050】
図7に示すように、移動機構43の作動により、チャック機構400を支持する支持フレーム430が図7上図に示す(+Dt)方向への移動と、図7下図に示す(-Dt)方向への移動とを交互に繰り返すことで、支持フレーム430に取り付けられたチャック機構400が一体的にY方向に往復移動し、チャック機構400に保持された基板Sがめっき液L内でY方向に揺動する。
【0051】
このとき、搬送ローラー21は支持フレーム430と連動する。すなわち、図7上図に示すように支持フレーム430が(+Y)方向へ移動しチャック機構400が基板Sを(+Y)方向に移動させるとき、搬送ローラー21は正転、つまり基板Sを搬送方向Dtに搬送する方向に回転する。一方、図7下図に示すように支持フレーム430が(-Y)方向へ移動しチャック機構400が基板Sを(-Y)方向に移動させるとき、搬送ローラー21は逆転、つまり基板Sを搬送方向Dtとは反対の方向(-Dt)に搬送するように回転する。
【0052】
このようにめっき液L中で基板Sを揺動させることで、めっき液Lを撹拌して液中イオン濃度の偏りを低減させ、めっき皮膜の均一性を高めることができる。めっき槽41内での基板Sの揺動は、基板Sの端部を把持するチャック機構400と、基板Sの中央部を下面側から支持する搬送ローラー21との連動によって実現される。このため、基板Sに局所的な応力が加わるのを防止し、水平姿勢を維持しつつ基板Sを揺動させることが可能となる。
【0053】
基板Sをめっき液Lに浸漬し、電極間に電圧を印加しつつ基板Sを揺動させる状態を一定時間継続した後、電圧印加が停止されめっき液Lが排出されることで(ステップS105)、めっき処理が停止される。そして、チャック機構400による基板Sの把持が解除され(ステップS106)、シャッター41bが開かれて、搬送部2は基板Sをめっき処理部4からリンス処理部5へ移送する(ステップS107)。
【0054】
リンス処理部5では、リンス槽51に基板Sが収容されるとシャッター51a,51bが閉じられ、リンス液給排部59からリンス液が供給されて、基板Sがリンス処理される(ステップS108)。リンス処理が所定時間行われた後、リンス液の供給が停止されシャッター51bが開かれて、基板Sは搬出部6に払い出される(ステップS109)。
【0055】
なお、めっき槽41からのめっき液の排出においては、槽内の液体を完全に排出することを要しない。すなわち、槽内で支持される基板Sが液体から露出し搬出可能となる程度まで液体が排出されている限りにおいて、槽内に液体が残留していることは問題ない。むしろ、液体を残留させておくことで、次の基板Sに対する処理の際に槽内を満たすのに必要な液体の量を低減させることが可能となる。このことは、液体の消費量を少なくし環境負荷を低減させることに資する。
【0056】
一方、基板Sの把持を解除した後のチャック機構400は、上側チャック411および下側チャック421に付着しためっき液を除去するための洗浄処理を受ける(ステップS110)。洗浄処理の内容は任意であるが、例えばその一例は次の通りである。すなわち、支持機構43が支持フレーム430を(-Y)方向へ移動させて、各チャック機構400を、バット44上方の洗浄位置へ位置決めする。この状態で、洗浄機構48が適宜の洗浄液供給やエア噴射により、チャック機構400、より具体的には上側チャック411および下側チャック421を洗浄する。
【0057】
めっき位置と洗浄位置との間におけるチャック機構400の移動では、図1(b)に点線で示すように、上側チャック411および下側チャック421は、昇降機構412,422により上方に退避した状態となる。これにより、移動の際に上側チャック411および下側チャック421がめっき槽41の壁面に接触することが未然に防止されている。このときの上側チャック411および下側チャック421のZ方向位置を、以下では「上部位置」と称することとする。
【0058】
洗浄後のチャック機構400はめっき位置へ戻される(ステップS111)。こうしてチャック機構400が洗浄されることで、次の基板Sに対する処理を実行する際に、残留付着しためっき液が基板Sに付着するのを防止することができる。さらに処理すべき基板Sがある場合には、ステップS101に戻って上記処理が繰り返される。
【0059】
なお、図5では、チャック機構400の洗浄処理がリンス処理よりも後の工程として示されているが、実際にはチャック機構400が基板Sの把持を解除して以降、任意のタイミングでチャック機構400を洗浄位置へ移動させることが可能である。つまり、基板Sをリンス処理部5へ移送してリンス処理し搬出部6へ払い出すまでの動作と、チャック機構400を洗浄位置へ移動させ洗浄してめっき位置へ戻すまでの処理とは、時間的に並行して実施することが可能である。
【0060】
次に、チャック機構400に設けられたカバー460の構造およびその機能について詳しく説明する。前記したように、この実施形態のチャック機構400は、めっき槽41に貯留されためっき液から発生する腐食性ガスから可動機構を保護するとともに、可動機構から発生する微粉等がめっき槽41に落下するのを防止するために、可動機構を覆うカバー460を備えている。
【0061】
図8はカバーの構造を示す三面図である。このうち正面図および側面図ではカバー460を断面図として示している。図8に示すように、カバー460は二重箱構造となっている。具体的には、カバー460は、内部空間ISにチャック機構400の主要部を収容する略箱型の内側カバー461と、上部が開口し内側カバー461の側面および底面を覆う外側カバー462とを有しており、これらはスペーサー463を介して互いに結合されている。したがって、内側カバー461と外側カバー462とでは、それらの側面同士および底面同士が所定の距離を隔てて略平行に対向しており、内側カバー461と外側カバー462との間には間隙空間GSが形成されている。
【0062】
また、内側カバー461の底面には開口4611が設けられる一方、外側カバー462の底面のうち開口4611に対応する位置にも開口4621が設けられている。これらの開口を通じて、カバー460の内部から下向きにシャフト部材413,423が突出しており、その下端にそれぞれ上側チャック411、下側チャック421が取り付けられている。図8の下面図に示すように、底面に設けられた開口4611,4621は概ね矩形形状であるが、その四隅が部分的に塞がれており、開口形状は八角形となっている。なお、開口形状はこれに限定されない。チャック機構400の動作に支障がない限りにおいて開口4611,4621はできるだけ小さいことが望ましく、このために開口形状についても他の部品形状に応じて適宜改変可能である。
【0063】
支持部材401は内側カバー461に結合されており、また図示を省略しているが内側カバー461の上部は支持フレーム430に固定されている。このようにして、チャック機構400は支持フレーム430に支持される。
【0064】
内側カバー461の上面には、その内部空間ISを後述する排気ダクトと連通させるための開口4612が設けられ、該開口4612には排気管4613が接続されている。一方、外側カバー462の側面には複数の比較的小さな開口4622が設けられ、各開口4622には適宜のバルブ機構4623が接続されている。バルブ機構4623としては流量の調整が可能な、例えばゲートバルブやスロットルバルブを好適に適用可能である。これらのバルブ機構4623には、後述するように、外部のエア供給源から加圧エアが供給される。
【0065】
このような構造により、チャック機構400のうち機械的な可動部分はカバー460の内部空間ISに収容され、周囲雰囲気からは隔離されている。特にめっき槽41の上方に当たるめっき位置では、めっき液Lから発生する腐食性ガス、例えば酸性ガスが比較的高濃度に存在している。可動機構の部品類をカバー460で覆うことで、このような腐食性ガスから部品を保護することができる。また、可動部での摩擦により発塵が生じたとしても、それによる微粉がめっき槽41や基板Sに落下することが抑制される。
【0066】
これらの効果をより確実なものとするために、この実施形態では、カバー460内における気流の制御を行っている。これにより、底面の開口からの外気の流入を防止するとともに、カバー460内部で発生した微粉を装置外へ排出しめっき槽41に向けて落下するのを防止する。
【0067】
図9はカバーにおける気流制御を説明する図である。気流を制御するため、外側カバー462のバルブ機構4623は適宜の配管を介してエア供給源ASと接続されており、このエア供給源ASから送出される加圧エアが間隙空間GSに供給される。したがって、実線矢印で示すように、送り込まれた加圧エアは間隙空間GSを通って底面の開口の周縁部から中央部に向けて噴射される。これにより形成されるエアカーテンが、外気、特にめっき液Lの表面から発生する酸性雰囲気AAの流入を防止するように作用する。
【0068】
一方、内側カバー461の上部に取り付けられた排気管4613は、支持フレーム430の上方に設けられた排気ダクト464に接続されている。排気ダクト464は適宜の排気装置ESに接続されている。排気装置ESの作動により、点線矢印で示すように、カバー460内部の雰囲気は上方へ流れ、排気管4613から排気ダクト464を介して外部へ排出される。こうして形成される上昇気流が、内部空間ISで発生した微粉を上方へ押し流し外部へ排出させる。これにより、微粉がめっき槽41に落下することが防止される。排気管4613には、排気される気体の流量を調整するためのスロットルバルブ4614が配置されている。
【0069】
排気装置ESおよびエア供給源ASは、めっき装置1内の構成として設けられてもよく、また外部装置としてめっき装置1とは別途設けられてもよい。例えば、めっき装置1が設置される工場設備の用力を利用してもよい。
【0070】
エア供給源ASから供給されるエア供給量と、排気装置ESにより排気される排気量とに関する本願発明者の知見は以下の通りである。まず排気量については、間隙空間GSからの吹き出しがない場合にカバー460の底部開口から吸い込まれる気流の流速(制御風速)を、粉じん障害防止規則の規定に基づき例えば1.0m/sec以上とすることが好ましい。こうすることで、カバー外への微粉の漏れ出しをほぼ完全に抑えることが可能である。
【0071】
一方、エア供給量については、カバー460の底部において噴射される気体の総量が、排気管4613を介して排出される気体の量よりも大きいことが望ましい。このようにすると、カバー460の底部開口から上向きに流れ上部から排出される気体は、ほぼ全てがエア供給源ASから供給されたものとなり、外部の酸性雰囲気AAがカバー460内に入り込むのを効果的に抑制することができる。
【0072】
この場合、カバー460の底部において噴射され内部空間ISに流れ込む気体は、内部空間ISに残留する微粉等をパージするパージ用ガスとしての機能を有する。これに対して、カバー460内に引き込まれなかった気体はカバー460の底部から下方へ噴射され、これは酸性雰囲気AAが開口部に近づくのを防ぐエアカーテンとしての機能を有する。これらの給気および排気における流量調整は、制御部9の流量制御部914がバルブ4614,4623を制御することで実現可能である。
【0073】
また、内側カバー461の底面における開口4611と、外側カバー462の底面における開口4621との関係については以下の通りである。図8および図9に示されるように、内側カバー461の開口4611の開口サイズよりも、外側カバー462の開口4621の開口サイズの方が少し大きいことが好ましい。すなわち、図8の正面図および側面図に示すように、開口4621の周縁部よりも、開口4611の周縁部の方が内側まで延びており、底面側からカバー460の内部を見たとき、外側カバー462の開口4621から内側カバー461の開口4611の周縁部が遮蔽されることなく見えている状態が好ましい。
【0074】
このような構成によれば、図9に実線矢印で示すように、噴射される気体の方向が水平より少し下向きの成分を多く持つようになる。これにより、めっき液Lの液面から上昇してくる酸性雰囲気AAを遮断する効果がさらに高くなり、カバー460内部の部品に対する保護をより確実に行うことが可能になる。
【0075】
外気の流入を防ぐためには、開口面積はできるだけ小さいことが好ましい。しかしながら、スムーズなチャック昇降のため、シャフト部材413,423の周囲にはある程度の隙間を設けておく必要がある。このための開口4611,4621の形状としては例えば矩形とすることができるが、本願発明者の知見によれば、矩形の開口ではその四隅から外気の流入が起きやすい。図8下面図に示したように、この実施形態では、開口4611,4621を矩形の四隅を塞いだ八角形とすることにより、外気の流入を効果的に抑制することができる。
【0076】
このように、チャック機構400に対して給気および排気を行う構成においては、エア供給源ASおよび排気装置ESとチャック機構400とを接続する配管が必要である。その一方、これまで説明してきたように、このめっき装置1では、めっき位置と洗浄位置とを往復する必要があるため、チャック機構400を含むチャック部40がY方向に大きく移動する。したがって、配管はこの動きを阻害するものであってはならない。
【0077】
機械装置の可動部に電気配線やチューブを接続するのに当たっては、例えばケーブルキャリアまたはケーブルチェーン等と呼ばれる屈伸可能な保護管(以下では代表的に「ケーブルキャリア」と称する)の内部にこれらを収容することが行われる。本実施形態においても、給気および排気のための配管をケーブルキャリアに収容することも考えられる。
【0078】
しかしながら、特に排気のための配管は大径であり、また機械的強度も必要であるため必ずしも柔軟性は高くない。そのため、この配管を収容するためには大型のケーブルキャリアが必要となり、またケーブルキャリアの動きを阻害しやすい。また、給気のための配管はより細くてよいものの、この実施形態のように使用本数が多くなるとやはり同様の問題を生じる。本実施形態のめっき装置1では、次のようにしてこの問題を解消している。
【0079】
本実施形態においては、チャック機構400がめっき位置にあるときに給気および排気が必要である。これに対して、チャック機構400が洗浄位置にあるときには、これらは必ずしも必要ではない。そこで、この実施形態では、給気および排気のための配管に着脱可能なジョイント機構を設け、チャック機構400がめっき位置にあるときにはジョイント機構を介して配管の接続を確立させる一方、チャック機構400が洗浄位置にあるときには配管の分断を許容するようにしている。
【0080】
エア供給源ASとカバー460とを接続する給気系と、排気装置ESとカバー460とを接続する排気系とでは、ジョイント機構に対する基本的な考え方は同じである。ただし、配置上の制約に起因して、それらのジョイント機構を同時に図示すると図が煩雑となるため、ここでは排気系におけるジョイント機構と給気系におけるジョイント機構とを図を分けて説明する。
【0081】
図10は排気系におけるジョイント機構を説明する図である。排気系配管は、チャック部40に設けられたチャック側配管と、筐体10に設けられた筐体側配管とに分かれており、それらがジョイント機構により接続される。より具体的には、チャック側配管は主として、支持フレーム430に取り付けられ、各チャック機構400のカバー460内部空間ISと連通する排気ダクト464により構成される。排気ダクト464の(+Y)側端部4641は外部空間へ開放されている。端部4641の近傍の外面にはフランジ状の拡径部位4642が形成されている。
【0082】
移動機構43によりチャック機構400がY方向に移動されるとき、チャック機構400と共に支持フレーム430に取り付けられた排気ダクト464も、チャック機構400と一体的にY方向に移動する。したがって、排気ダクト464はチャック機構400の移動を阻害しない。
【0083】
一方、筐体側配管は、中空の配管12と、これを上部フレーム11に取り付けるための支持機構13とを備えている。配管12のうち(-Y)側の一部区間は、例えば塩化ビニル樹脂やポリエチレン樹脂等の樹脂材料またはステンレス等の金属材料で構成された第1配管121となっており、この部分については可撓性が必要とされない。第1配管121の内径は排気ダクト464の外径とほぼ同じに形成され、排気ダクト464と互いの中心軸が一致するように配置されている。また、その(-Y)側端部にはフランジ状の拡径部位1211が形成され、拡径部位1211の(-Y)側端面には、例えばゴム製のシール部材123が取り付けられている。
【0084】
第1配管121は支持機構13により支持されている。具体的には、支持機構13は、上部フレーム11に取り付けられた直動機構130を備えている。直動機構130はガイドレール131がY方向に延びるように配置されている。ガイドレール131にはスライダー132およびクランパー(リニアクランプ)133が取り付けられ、スライダー132およびクランパー133をまたぐようにベース部材134が取り付けられている。
【0085】
したがって、スライダー132がガイドレール131に沿ってY方向に移動すると、ベース部材134もY方向に移動する。また、クランパー133は該移動を規制するロック機構として機能する。ベース部材134には1つまたは複数(この例で2個)の結合部材135が取り付けられ、結合部材135は第1配管121をベース部材134と機械的に結合する。これにより、第1配管121は、Y方向に所定の範囲で移動可能に支持されている。
【0086】
第1配管121の(+Y)側端部には、例えば蛇腹管のような可撓性を有するフレキシブル配管である第2配管122が接続され、第1配管121と共に筐体側配管を構成している。第1配管121のY方向への移動は第2配管122の伸縮により吸収することが可能であるので、第2配管122と排気装置ESとの間は適宜の配管材料を用いて接続することができる。
【0087】
チャック機構400をめっき位置に位置決めするべく支持フレーム430が(+Y)方向へ移動してくると、最終的には排気ダクト464の(+Y)側端部4641が第1配管121の内部に挿通されてこれらが係合する。このとき、クランパー133はベース部材134の移動を規制している。排気ダクト464が最も(+Y)側まで進出した状態では、排気ダクト464の拡径部位4642と、第1配管121の拡径部位1211とが、シール部材123を挟んで近接対向する。
【0088】
この状態でロック機構14が作動すると、排気ダクト464と第1配管121とが機械的に結合される。これによりチャック側配管と筐体側配管との接続が確立されてそれぞれの内部空間同士が直接接続されることで、カバー460から排気装置ESに至る排気経路が形成される。
【0089】
ロック機構14は、上下方向から拡径部位1211,4642を挟み付けるロック部材141,142と、これらを近接・離間方向に移動させるロック駆動部143(図2)とを備えている。図10右下に示すように、排気ダクト464と第1配管121とが係合した状態で、駆動部143がロック部材141,142を近接方向に移動させることで、排気ダクト464と第1配管121とが強固に結合される。反対に、駆動部143がロック部材141,142を離間方向に移動させた状態では、排気ダクト464と第1配管121との結合を解除することができる。
【0090】
チャック機構400をめっき位置に位置決めするときには、このように排気ダクト464と第1配管121とが結合され、こうして形成される排気経路を通して、カバー460内の雰囲気を外部へ排出することができる。言い換えれば、チャック機構400がめっき位置にあるときに排気ダクト464と第1配管121との結合が確立されるように、これらの寸法および位置関係が設定されている。このように、この実施形態では、主として支持機構13とロック機構14とが、チャック側配管(排気ダクト464)と筐体側配管(第1配管121)とを着脱自在に結合する「ジョイント機構」として機能している。
【0091】
上記しためっき処理では、めっき液L内の基板Sを保持するチャック機構400がY方向に往復移動することで基板Sを揺動させる。このとき、クランパー133による規制を解除することで、第1配管121は、排気ダクト464と結合したまま、これに追随してY方向に往復移動することができる。第1配管121の往復移動は第2配管122により吸収することができる。すなわち、本実施形態のジョイント機構は、チャック機構400による基板Sの揺動にも対応することが可能である。
【0092】
図11は給気系におけるジョイント機構を説明する図である。図が見にくくなるのを避けるため、図11では排気系における筐体側配管およびジョイント機構の図示を省略している。なお、同じ理由で、図10においては給気系における配管およびジョイント機構の図示が省略されている。
【0093】
給気系では、大径のダクト464に代えてフレキシブルチューブによって各部が接続されて給気経路が確立されるが、ジョイント機構の構成は概ね同じである。すなわち、支持フレーム430にはチャック側コネクター465が取り付けられており、チャック側コネクター465の(-Y)側端部から適宜の継手466を介して、各カバー460のバルブ機構4623へつながるフレキシブルチューブ467が接続されている。特にチューブの本数が多い場合には、チャック側コネクター465は支持フレーム430上に複数設けられてもよい。
【0094】
一方、筐体10側には、筐体側コネクター151が設けられている。筐体側コネクター151は、チャック側コネクター465と互いに係合する形状に形成され、チャック機構400がめっき位置に移動してきたときにチャック側コネクター465と互いに係合する位置に配置されている。筐体側コネクター151には例えばゴム製のシール部材152が取り付けられている。
【0095】
筐体側コネクター151は支持機構16により支持されている。具体的には、支持機構16は、適宜の支持部材18を介して筐体11に取り付けられた直動機構160を備えている。直動機構160はガイドレール161がY方向に延びるように配置されている。ガイドレール161にはスライダー162およびクランパー(リニアクランプ)163が取り付けられ、スライダー162およびクランパー163をまたぐようにベース部材164が取り付けられている。
【0096】
したがって、スライダー162がガイドレール161に沿ってY方向に移動すると、ベース部材164もY方向に移動する。クランパー163は該移動を規制するロック機構として機能する。ベース部材134には保持部材135が取り付けられ、保持部材135は筐体側コネクター151を保持している。筐体側コネクター151の(+Y)側端部には、適宜の継手153を介してフレキシブルチューブ154が接続され、フレキシブルチューブ154は筐体側コネクター151とエア供給源ASとを接続する。
【0097】
チャック機構400をめっき位置に位置決めするべく支持フレーム430が(+Y)方向へ移動してくると、最終的にはチャック側コネクター465の(+Y)側端部がシール部材152を介して筐体側コネクター151と係合する。このとき、クランパー163はベース部材164の移動を規制している。この状態でロック機構17が作動すると、チャック側コネクター465と筐体側コネクター151とが機械的に結合され、これによりチャック側配管と筐体側配管との接続が確立されて、エア供給源ASからカバー460に至る給気経路が形成される。
【0098】
ロック機構17は、チャック側コネクター465および筐体側コネクター151に設けられた拡径部位を上下方向から挟み付けるロック部材171,172と、これらを近接・離間方向に移動させるロック駆動部173(図2)とを備えている。図11右下に示すように、チャック側コネクター465と筐体側コネクター151とが係合した状態で、駆動部173がロック部材171,172を近接方向に移動させることで、チャック側コネクター465と筐体側コネクター151とが強固に結合される。反対に、駆動部173がロック部材171,172を離間方向に移動させた状態では、チャック側コネクター465と筐体側コネクター151との結合を解除することができる。
【0099】
チャック機構400をめっき位置に位置決めするときには、このようにチャック側コネクター465と筐体側コネクター151とが結合され、こうして形成される給気経路を通して、カバー460の間隙空間GSへ加圧エアを供給し、カバー460底面の開口部にエアカーテンを形成することができる。このように、この実施形態では、主として支持機構16とロック機構17とが、チャック側配管(チャック側コネクター465)と筐体側配管(筐体側コネクター151)とを着脱自在に結合する「ジョイント機構」として機能している。
【0100】
なお、ここではカバー460の間隙空間GSに供給される加圧エアの供給経路について説明したが、チャック機構400の可動部のアクチュエーターとして例えばエアシリンダーを用いている場合には、その駆動用エアを供給するための配管(図11に点線で示す)についても、同様にすることができる。
【0101】
図12は本発明の第2実施形態に係るめっき装置の概略構成を示す図である。この実施形態のめっき装置1Aは、第1実施形態のめっき装置1では記載を省略していた可動部への電気配線を、ケーブルキャリア900を用いて実装したものである。この点を除く各部の構成および動作は第1実施形態と同じであるため、同一構成には同一符号を付して説明を省略する。
【0102】
この実施形態では、電気配線を収容するためのケーブルキャリア900が用いられているが、給気系および排気系については第1実施形態のものと同じである。このため、給気および排気のための配管がケーブルキャリア900の容量を圧迫するという問題は生じない。また上記した通り、チャック機構400のめっき位置と洗浄位置との往復移動、およびめっき処理時の揺動に対しても、配管がこれらを阻害するという問題は生じない。
【0103】
なお、必要に応じ、ケーブルキャリア900の容量を圧迫しない限りにおいて、一部の配管がケーブルキャリア900内に収容されていても構わない。
【0104】
以上説明したように、上記各実施形態において、めっき装置1,1Aがそれぞれ本発明の「基板処理装置」の一実施形態に相当しており、その処理対象となる基板Sが本発明の「基板」に相当している。また、チャック部40および移動機構430がそれぞれ本発明の「作用部」および「移動機構」として機能しており、めっき位置P1が本発明の「第1位置」に、洗浄位置P2が本発明の「第2位置」にそれぞれ相当している。
【0105】
また、上記実施形態では、排気ダクト464が本発明の「移動配管」として、配管12が本発明の「固定配管」として、ロック機構14が本発明の「接続機構」として、それぞれ機能している。そして、これらが一体として本発明の「流路形成部」を構成している。ここで、拡径部位1211,4641は、本発明の「係合部位」に相当している。
【0106】
また、フレキシブルチューブ467が本発明の「移動配管」として、フレキシブルチューブ154が本発明の「固定配管」として、ロック機構17が本発明の「接続機構」としてそれぞれ機能しており、これらが一体として本発明の「流路形成部」を構成している。ここで、チャック側および筐体側コネクター465,151は、本発明の「係合部位」に相当している。
【0107】
また、上記実施形態では、エア供給源ASが本発明の「流体供給源」に、排気装置ESが本発明の「排気源」に、それぞれ相当している。また、上側チャック411と下側チャック421とが一体として本発明の「保持部」として機能しており、直動機構402,414,424が本発明の「可動部」および「切替部」としての機能を兼備している。
【0108】
なお、本発明は上記した実施形態に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない限りにおいて上述したもの以外に種々の変更を行うことが可能である。例えば、上記実施形態では、カバー460に対して気体を供給する吸気系と、カバー460から気体を排出する排気系との両方が、「ジョイント機構」を介して分断可能な構成とされている。しかしながら、給気系と排気系とのうち一方だけがこのような構造であっても構わない。特に、給気系の配管については、比較的小径かつ柔軟なものを用いることができることから、チャック機構400の移動を妨げることなく配管の引き回しを行うことが可能であると考えられる。
【0109】
また例えば、上記実施形態では、カバー部材460を内側カバー461と外側カバー462との二重構造として、その間の間隙空間GSをエアカーテン用エアの流路としている。しかしながら、カバー底部の開口部に対し、その周縁部から中央部に向けて気体を噴射するための構成としては、このようにカバー自体を二重構造とする以外にも、各種の構造が考えられる。例えば、カバーの底部に、スリット状に開口し略水平方向に気体を吐出する吐出口を有する気体ノズルが設けられてもよい。また、スリット状の開口に代えて、例えば多数の吐出口が水平方向に並べて設けられてもよい。
【0110】
また例えば、上記実施形態は、搬送ローラー21により処理槽41内に搬送されてくる基板Sをチャック機構400が把持する構成となっている。しかしながら、搬送手段はローラーに限定されず任意である。一方、チャック機構により把持した状態で基板を搬送するとの態様も考えられる。この場合、搬送手段は必須の構成ではないが、大型の基板の姿勢を安定的に維持するためには、基板Sの中央部を下方から支持する何らかのバックアップ手段が設けられることが望ましい。
【0111】
また例えば、上記実施形態のチャック機構400は、水平方向に搬送されてくる基板Sを上側チャック411と下側チャック421とで基板Sを把持した状態と、これらのチャックが互いに離間することで該把持が解除された状態とを切り替えるものである。しかしながら、本発明の適用対象はこのような切り替え態様のものに限定されない。
【0112】
例えば、保持部が基板Sを保持した状態で該基板をめっき液に向かって進行させ浸漬させる構成においては、保持部が基板をめっき液中で保持する状態と、基板をめっき液外で保持する状態との間での切り替えが行われることになる。例えば保持部が基板を保持しながら昇降することで基板をめっき液に浸漬するような構成がこれに該当する。このような構成に対しても、本発明を好適に適用することが可能である。
【0113】
また、上記実施形態は、基板Sを1対のチャック部材で挟み込んで把持するものである。しかしながら、基板の保持態様はこれに限定されるものではなく、例えば真空吸着の原理によるもの、磁力を利用するもの、額縁状のフレームで基板の周縁部を保持するもの等、種々の保持態様のめっき装置に対して、本発明を適用することが可能である。
【0114】
また例えば、上記実施形態ではカバー460の内部空間を、その上部に設けた開口から排気ダクトに接続することで、内部空間に上向きの気流を生じさせ、発塵による微粉をこの気流により外部へ排出している。しかしながら、排気のための開口の位置はこれに限定されず、例えばカバーの側面から排気する構成であってもよい。
【0115】
また例えば、上記実施形態では、めっき槽41内で基板Sを揺動させる際、チャック機構400の往復移動と連動させて搬送ローラー21の回転方向を切り替えている。このとき、搬送ローラー21の駆動方向を切り替えるのに代えて、搬送ローラー21を駆動源から切り離し、チャック機構400による揺動に対して搬送ローラー21が従動回転するように構成されてもよい。
【0116】
また例えば、上記実施形態では、カバー460に供給される加圧エアを流通させる配管およびカバー460からの排気を流通させる配管に対して、ジョイント機構による分断可能な構成を採用している。しかしながら、このような構成は気体の流通のみならず、例えば液体、または液体を含む気体等の各種流体を流通させる目的に、適用可能である。
【0117】
また例えば、上記実施形態における装置各部の構成、特にチャック機構の構成およびカバーの形状等は、原理説明のため簡略化された記載となっている。しかしながら、これらの具体的構成については種々のものが考えられ、本発明の趣旨に反するものでなければその範疇に包含されるものと考えるべきである。
【0118】
また、上記実施形態は、本発明をめっき装置としての基板処理装置に適用したものであるが、本発明の適用対象はこれに限定されず、各種の基板処理にも適用可能である。例えば、基板を電解エッチングする装置、基板表面の露光された感光層を現像する装置等に、本発明を好適に適用することができる。
【0119】
以上、いくつかの具体的態様を例示して説明してきたように、本発明に係る基板処理装置において、移動配管および固定配管は、流体が流通する内部空間をそれぞれ有し、作用部が第1位置にあるとき、移動配管の内部空間と固定配管の内部空間とが直接接続される構成であってもよい。このような構成によれば、動配管の内部空間と固定配管の内部空間とが互いに連通することで、流体の流路を形成することができる。また、この場合の接続機構は単に、こうして移動配管の内部空間と固定配管の内部空間とが接続された状態を維持できればよい。
【0120】
具体的には、例えば、移動配管および固定配管は、作用部が前記第1位置にあるときに互いに係合する係合部位をそれぞれ有し、接続機構は、係合部位で係合された移動配管と固定配管との間を固定するように構成されてもよい。このような構成によれば、移動配管と固定配管とが、それらの係合部位同士が係合することで流体の流路を形成するので、接続機構がそれらを互いに固定することで、安定した流路を維持することができる。
【0121】
また例えば、作用部は、基板に作用する状態と該作用を解除した状態とを切り替える可動部と、可動部を覆うカバーとを有し、流路形成部は、固定配管が排気源に接続されて、流体としてカバーからの排気を流通させるように構成されてもよい。このような構成によれば、可動部で生じる発塵を排気とともに外部へ排出し、基板への影響を回避することができる。このような排気流路としては大径の配管が必要となるが、本発明を適用すれば、作用部の移動に影響を及ぼすことなく、そのような大径の配管を使用することが可能である。
【0122】
また例えば、流路形成部は、作用部に対して流体を供給する流体供給源に接続されてもよい。すなわち、形成された流路を流通する流体は、流体供給源から作用部へ向けて流れるものであってもよい。具体的には、例えば、作用部は、基板に作用する状態と該作用を解除した状態とを切り替える可動部と、可動部を覆うカバーとを有し、流体としてカバー内に供給されるパージ用ガスを流通させる構成であってもよい。また例えば、作用部は、流体供給源から供給される流体により駆動される可動部を有する構成であってもよい。これらのいずれの構成においても、作用部が第1位置にあるときに流体を供給し可動部を動作させることが可能となる。
【0123】
また例えば、流路形成部は、固定配管の少なくとも一部を、作用部の移動方向と平行な方向に所定の揺動範囲内で揺動可能に支持する支持機構を有していてもよい。このような構成によれば、移動配管が固定配管と結合した状態であっても、固定配管の揺動範囲内で作用部を第1位置から揺動させることが可能となる。
【0124】
また、この発明に係る基板処理装置は、めっき液を貯留するめっき槽をさらに備え、作用部は、第1位置においてめっき槽内で基板に当接して基板を保持する保持部と、保持部を駆動して基板を保持する状態と該保持を解除した状態とを切り替える切替部とを有する構成であってもよい。このように構成された基板処理装置は、基板をめっき液に浸漬してめっき処理を行う、めっき処理装置として機能することが可能である。
【産業上の利用可能性】
【0125】
この発明は、プリント配線基板やガラス基板等の各種基板に対し流体を用いて所定の動作を実行する基板処理装置および基板処理方法全般に適用することができる。例えば、基板をめっき液に浸漬することでめっき処理して皮膜を形成する技術に好適に適用可能である。
【符号の説明】
【0126】
1,1A めっき装置(基板処理装置)
12 配管(固定配管、流路形成部)
13,16 支持機構
14,17 ロック機構(接続機構)
40 チャック部(作用部)
41 めっき槽
43 移動機構
151 筐体側コネクター(係合部位)
154 フレキシブルチューブ(固定配管、流路形成部)
402,414,424 直動機構(可動部、切替部)
411 上側チャック(保持部)
421 下側チャック(保持部)
460 カバー
464 排気ダクト(移動配管、流路形成部)
465 チャック側コネクター(係合部位)
467 フレキシブルチューブ(移動配管、流路形成部)
1211,4641 拡径部位(係合部位)
AS エア供給源(流体供給源)
ES 排気装置(排気源)
P1 めっき位置(第1位置)
P2 洗浄位置(第2位置)
S 基板
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12