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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024119107
(43)【公開日】2024-09-03
(54)【発明の名称】磁気検出システム
(51)【国際特許分類】
   G01R 33/09 20060101AFI20240827BHJP
   G01R 33/02 20060101ALI20240827BHJP
【FI】
G01R33/09
G01R33/02 W
G01R33/02 V
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023025752
(22)【出願日】2023-02-22
(71)【出願人】
【識別番号】000003067
【氏名又は名称】TDK株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100115738
【弁理士】
【氏名又は名称】鷲頭 光宏
(74)【代理人】
【識別番号】100121681
【弁理士】
【氏名又は名称】緒方 和文
(72)【発明者】
【氏名】山地 勇一郎
(72)【発明者】
【氏名】上 正史
(72)【発明者】
【氏名】笠島 多聞
【テーマコード(参考)】
2G017
【Fターム(参考)】
2G017AA01
2G017AC01
2G017AC07
2G017AD55
2G017BA05
2G017BA09
(57)【要約】
【課題】金属異物が非磁性材料であっても検出可能な磁気検出システムを提供する。
【解決手段】磁気検出システム100は、励磁コイル250と、励磁コイル250から見てコイル軸方向における互いに反対側に配置された磁気センサ40A,40Bと、励磁コイル250と磁気センサ40Aの間に試料を保持する試料ステージ300と、磁気センサ40A,40Bから出力される出力信号Pa,Pbの差に基づいて検出信号OUTを生成する検出回路と、測定空間230を囲む磁気シールドS1~S3とを備える。これにより、試料310に含まれる金属異物が非磁性材料からなる場合であっても、渦電流に起因する磁界を高感度に検出することが可能となる。
【選択図】図10
【特許請求の範囲】
【請求項1】
励磁コイルと、
前記励磁コイルから見てコイル軸方向における互いに反対側に配置された第1及び第2の磁気センサと、
前記励磁コイルと前記第1の磁気センサの間に試料を保持する試料ステージと、
前記第1の磁気センサから出力される第1の出力信号と、前記第2の磁気センサから出力される第2の出力信号の差に基づいて検出信号を生成する検出回路と、
前記励磁コイル、前記第1及び第2の磁気センサ、並びに、前記試料ステージが配置される測定空間を囲む磁気シールドと、
を備え、
前記磁気シールドは、前記測定空間を前記コイル軸方向における両側及び前記コイル軸方向に対して垂直な第1の方向における両側から覆う筒状の第1の磁気シールドと、前記測定空間を前記コイル軸方向における両側、並びに、前記コイル軸方向及び前記第1の方向に対して垂直な第2の方向における一方側から覆う第2の磁気シールドとを含み、
前記試料ステージは、前記測定空間内に前記第2の方向における他方側から挿入される、磁気検出システム。
【請求項2】
前記磁気シールドは、前記第2の磁気シールドを前記コイル軸方向における両側及び前記第1の方向における両側から覆う筒状の第3の磁気シールドをさらに含む、請求項1に記載の磁気検出システム。
【請求項3】
前記試料ステージと前記シールドボックスの相対的な位置関係を変化させる駆動機構をさらに備える、請求項1に記載の磁気検出システム。
【請求項4】
前記駆動機構は、前記試料ステージと前記シールドボックスの相対的な位置関係を前記第1の方向に変化させる第1の駆動機構と、前記試料ステージと前記シールドボックスの相対的な位置関係を前記第2の方向に変化させる第2の駆動機構と、前記試料ステージと前記シールドボックスの相対的な位置関係を前記コイル軸方向に変化させる第3の駆動機構とを含む、請求項3に記載の磁気検出システム。
【請求項5】
前記第1及び第2の磁気センサにそれぞれ磁束を集める第1及び第2の集磁体をさらに備え、
前記第1及び第2の磁気センサは、いずれも感磁素子が形成された素子形成面が前記コイル軸と平行となるよう配置され、
前記第1の集磁体は、前記第1の磁気センサの前記素子形成面上に配置され、
前記第2の集磁体は、前記第2の磁気センサの前記素子形成面上に配置され、
前記コイル軸の中心は、前記第1の磁気センサの前記素子形成面と前記第1の集磁体の間に位置し、且つ、前記第2の磁気センサの前記素子形成面と前記第2の集磁体の間に位置する、請求項1に記載の磁気検出システム。
【請求項6】
前記励磁コイルに供給される励磁信号を生成する信号生成回路と、
前記信号生成回路と前記励磁コイルの間に接続され、入力インピーダンスよりも出力インピーダンスが低いバッファ回路と、
をさらに備える、請求項1に記載の磁気検出システム。
【請求項7】
前記バッファ回路は、並列接続された複数のボルテージフォロア回路を含む、請求項6に記載の磁気検出システム。
【請求項8】
前記第1の出力信号と前記第2の出力信号の位相を調整する位相調整回路をさらに備える、請求項1に記載の磁気検出システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は磁気検出システムに関し、特に、異物検知システムとして利用可能な磁気検出システムに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、流路の上流側に配置された帯磁装置によって流路を流れる金属異物を磁化し、磁化された金属異物を流路の下流側に配置された磁気センサによって検出する装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2010-276588号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載された装置では、金属異物がアルミニウムや銅などの非磁性材料からなる場合には検出不可能である。
【0005】
したがって、本開示は、金属異物が非磁性材料であっても検出可能な磁気検出システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の一実施形態による磁気検出システムは、励磁コイルと、励磁コイルから見てコイル軸方向における互いに反対側に配置された第1及び第2の磁気センサと、励磁コイルと第1の磁気センサの間に試料を保持する試料ステージと、第1の磁気センサから出力される第1の出力信号と第2の磁気センサから出力される第2の出力信号の差に基づいて検出信号を生成する検出回路と、励磁コイル、第1及び第2の磁気センサ、並びに、試料ステージが配置される測定空間を囲む磁気シールドとを備え、磁気シールドは、測定空間をコイル軸方向における両側及びコイル軸方向に対して垂直な第1の方向における両側から覆う筒状の第1の磁気シールドと、測定空間をコイル軸方向における両側、並びに、コイル軸方向及び第1の方向に対して垂直な第2の方向における一方側から覆う第2の磁気シールドとを含み、試料ステージは、測定空間内に第2の方向における他方側から挿入される。
【発明の効果】
【0007】
本開示によれば、金属異物が非磁性材料であっても検出可能な磁気検出システムが提供される。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1図1は、本開示の一実施形態による磁気検出システム100の外観を示す略斜視図である。
図2図2は、シールドボックス200の構造を説明するための略斜視図である。
図3図3は、シールドボックス200の構造を説明するための略斜視図である。
図4図4は、試料ステージ300の構造を説明するための略斜視図である。
図5図5は、センサホルダー400Aの構造を説明するための略斜視図である。
図6図6は、センサ本体部10A,10Bの構造を説明するための略斜視図である。
図7図7は、センサ本体部10A,10Bの構造を説明するための略分解斜視図である。
図8図8は、磁気センサ40A,40Bから磁性ヨークM1~M3を取り除いた状態を示す略斜視図である。
図9図9は、センサ本体部10Aによる試料310のスキャン方法を説明するための模式図である。
図10図10は、磁気検出システム100の回路ブロック図である。
図11図11は、バッファ回路503の一例による回路図である。
図12図12は、金属異物311によって生じる磁界を説明するための模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、添付図面を参照しながら、本開示に係る技術の実施形態について詳細に説明する。
【0010】
図1は、本開示の一実施形態による磁気検出システム100の外観を示す略斜視図である。
【0011】
図1に示すように、本実施形態による磁気検出システム100は、フレーム110と、フレーム110に支持されたシールドボックス200及び試料ステージ300とを備えている。フレーム110は、X方向に延在するガイド111と、Z方向に延在するガイド113と、ガイド111に沿ってX方向に移動可能に構成された可動ビーム120とを備えている。シールドボックス200はガイド113に連結されており、試料ステージ300は可動ビーム120に連結されている。
【0012】
可動ビーム120は、モーターなどからなる駆動機構141によってX方向に移動可能に構成されている。可動ビーム120にはY方向に延在するガイド112が設けられており、試料ステージ300は、ガイド112に沿ってY方向に移動可能に構成されている。ガイド112に沿った試料ステージ300のY方向における移動は、モーターなどからなる駆動機構142によって行われる。一方、シールドボックス200は、ガイド113に沿ってZ方向に移動可能に構成されている。ガイド113に沿ったシールドボックス200のZ方向における移動は、モーターなどからなる駆動機構143によって行われる。これにより、シールドボックス200と試料ステージ300のX方向、Y方向及びZ方向における相対的な位置関係は、駆動機構141~143によって変化させることが可能となる。
【0013】
図2及び図3は、シールドボックス200の構造を説明するための略斜視図であり、互いに異なる方向から見た状態を示している。
【0014】
図2及び図3に示すように、シールドボックス200は、樹脂などからなる本体部210と、本体部210をガイド113に連結する連結部220とを有している。本体部210には、パーマロイなどの高透磁率材料からなる磁気シールドS1~S3が設けられている。磁気シールドS1~S3は、測定空間230を囲むように配置されており、磁気シールドS1が最も内側、磁気シールドS3が最も外側に位置する。本体部210は複数のパーツを含んでおり、このうちパーツ211A,211Bは磁気シールドS1の内壁側に位置し、パーツ212は磁気シールドS1と磁気シールドS2の間に位置し、パーツ213は磁気シールドS2と磁気シールドS3の間に位置し、パーツ214は磁気シールドS3の外壁側に位置する。パーツ211A,211Bには、それぞれセンサ本体部10A,10Bを保持するセンサホルダー400A,400Bが固定されており、これによりセンサ本体部10A,10Bが測定空間230内においてシールドボックス200に固定される。
【0015】
センサ本体部10A,10Bは、Z方向に対向するよう配置される。センサ本体部10Aとセンサ本体部10BのXY平面方向における位置は互いに一致している。センサ本体部10Aとセンサ本体部10Bの間には、基板240が設けられている。基板240には、励磁コイル250が形成されている。励磁コイル250のコイル軸はZ方向であり、コイル軸の中心はセンサ本体部10A,10Bを通過する。これにより、励磁コイル250から見てコイル軸方向における互いに反対側にセンサ本体部10A,10Bが配置されることになる。励磁コイル250とセンサ本体部10A,10BのZ方向における距離は同じである。したがって、励磁コイル250に電流を流した場合、センサ本体部10Aに印加される磁界強度とセンサ本体部10Bに印加される磁界強度は一致する。
【0016】
磁気シールドS1は、測定空間230をY方向における両側及びZ方向における両側から覆う筒状体であり、XY平面を構成する一対の平面部と、一対の平面部を円弧状に繋ぐ湾曲部を有している。本体部210のパーツ211Aは、磁気シールドS1の一方の平面部の内壁をZ方向から覆い、本体部210のパーツ211Bは、磁気シールドS1の他方の平面部の内壁をZ方向から覆っている。磁気シールドS2は磁気シールドS1の外側に位置し、測定空間230をX方向における一方側及びZ方向における両側から覆うようC字型に湾曲した板状体である。磁気シールドS3は磁気シールドS2のさらに外側に位置し、測定空間230をY方向における両側及びZ方向における両側から覆う筒状体である。
【0017】
これにより、測定空間230は、磁気シールドS1~S3によってY方向及びZ方向から2重又は3重にシールドされるとともに、磁気シールドS2によってX方向からシールドされる。測定空間230のX方向における他方側は開放されており、この部分から試料ステージ300の一部が測定空間230内に挿入される。測定時においては、試料ステージ300の一部が励磁コイル250とセンサ本体部10Aの間に挿入される。
【0018】
図4は、試料ステージ300の構造を説明するための略斜視図である。
【0019】
図4に示すように、試料ステージ300は、検査対象である試料310が載置されるテーブル301と、テーブル301と駆動機構142を連結する連結部302とを有している。テーブル301は、測定空間230内の励磁コイル250とセンサ本体部10Aの間に挿入される部分であり、その表面はXY平面を構成している。特に限定されるものではないが、図4に示す例では試料310が平板状である。このように、試料310が載置されるテーブル301は、測定空間230内の励磁コイル250とセンサ本体部10Aの間に挿入されることから、試料310とセンサ本体部10AのZ方向における距離は、試料310とセンサ本体部10BのZ方向における距離よりも大幅に短くなる。
【0020】
図5は、センサホルダー400Aの構造を説明するための略斜視図である。
【0021】
センサホルダー400Aは樹脂などからなる成形品であり、図5に示すように、XY平面を構成する板状部401と、板状部401からZ方向に突出するセンサ収容部402とを有している。板状部401のXY平面は、シールドボックス200のパーツ211AのXY平面に固定される。センサ収容部402には、磁気センサを含むセンサ本体部10Aが保持される。図示しないが、センサホルダー400Bもセンサホルダー400Aと同じ構造を有しており、そのセンサ収容部402には、磁気センサを含むセンサ本体部10Bが保持される。
【0022】
図6及び図7は、センサ本体部10A,10Bの構造を説明するための図であり、図6は略斜視図、図7は略分解斜視図である。
【0023】
図6及び図7に示すように、センサ本体部10Aは、センサ基板30の表面に搭載されたチップ状の磁気センサ40Aと集磁体51~53を備えている。同様に、センサ本体部10Bは、センサ基板30の表面に搭載されたチップ状の磁気センサ40Bと集磁体51~53を備えている。磁気センサ40A,40Bは略直方体形状であり、YZ平面を構成する素子形成面41及び裏面42、XY面を構成する上面43及び下面44、XZ面を構成する側面45,46を有している。素子形成面41は、感磁素子が形成される面である。磁気センサ40A,40Bは、下面44がセンサ基板30と向かい合い、素子形成面41がセンサ基板30の表面と直交するよう、センサ基板30に搭載される。磁気センサ40A,40Bの素子形成面41には、パーマロイなどからなる磁性ヨークM1~M3が形成されており、磁性ヨークM1と磁性ヨークM2,M3によって形成される磁気ギャップの近傍に感磁素子が配置される。これにより、磁気ギャップを通過する磁束が感磁素子に印加される。
【0024】
図8は、磁気センサ40A,40Bから磁性ヨークM1~M3を取り除いた状態を示す略斜視図である。
【0025】
図8に示すように、磁気センサ40A,40Bの素子形成面41には、感磁素子R1~R4が形成されている。感磁素子R1~R4は、いずれもY方向を感磁方向とする。そして、感磁素子R1,R2は、磁性ヨークM1と磁性ヨークM2によって形成される磁気ギャップの近傍に配置され、感磁素子R1,R2は、磁性ヨークM1と磁性ヨークM3によって形成される磁気ギャップの近傍に配置される。感磁素子R1~R4は端子電極61,62間にブリッジ接続され、磁界に応じた差動信号が端子電極63,64に現れる。
【0026】
集磁体51~53は、フェライトなどの磁性体材料からなるブロックであり、いずれも試料310から発せられる磁界を磁気センサ40A,40Bに集める役割を果たす。集磁体51~53は、X方向から見てそれぞれ磁性ヨークM1~M3と重なりを有している。つまり、集磁体51~53は素子形成面41上においてY方向に配列され、X方向から見て集磁体51,52間に感磁素子R3,R4が配置され、X方向から見て集磁体51,53間に感磁素子R1,R2が配置される。
【0027】
集磁体51はX方向が長手方向であり、主にX方向の磁界を磁性ヨークM1に集める役割を果たす。集磁体52は、磁気センサ40A,40Bの側面45及び裏面42を覆う部分を有しており、集磁体53は、磁気センサ40A,40Bの側面46及び裏面42を覆う部分を有している。これにより、集磁体51によって集められたX方向の磁界は、磁性ヨークM1によってY方向に曲げられ、磁性ヨークM2,M3を介して集磁体52,53に流れる。そして、磁性ヨークM1と磁性ヨークM2,M3の間の磁気ギャップを通過する磁界が感磁素子R1~R4によって検出される。図6及び図7に示す例では、集磁体51に補償コイルCが巻回されている。補償コイルCには、感磁素子R1~R4に印加される磁界が打ち消されるよう、キャンセル電流が流れる。
【0028】
このような構成を有するセンサ本体部10Aは、駆動機構143を用いてシールドボックス200ごとZ方向に移動させることにより、テーブル301の表面に載置された試料310に近づけられる。試料310とセンサ本体部10AのZ方向における距離は、両者が干渉しない範囲でできるだけ近いことが好ましい。そして、駆動機構143を用いてセンサ本体部10AのZ方向における位置を調整した後、図9に示すように、駆動機構141,142を用いて試料ステージ300をXY方向に変位させることにより、試料310をセンサ本体部10Aによってスキャンする。試料310には、金属異物311が混入していることがある。
【0029】
図10は、本実施形態による磁気検出システム100の回路ブロック図である。
【0030】
図10に示すように、本実施形態による磁気検出システム100は、所定の周波数を有する励磁信号Pを生成する信号生成回路501を備えている。励磁信号Pは、デジタルフィルタ502及びバッファ回路503を介して、励磁コイル250の一端に供給される。励磁コイル250の他端は、抵抗504を介して接地される。励磁信号Pは、正弦波であっても構わないし、矩形波であっても構わない。デジタルフィルタ502は、励磁信号Pに含まれる不要な周波数成分を除去するための回路であり、バンドパスフィルタ機能を有している。バッファ回路503は、励磁信号Pの電圧波形を変化させることなく、電流量を増加させる回路であり、入力インピーダンスよりも出力インピーダンスが低い。
【0031】
図11は、バッファ回路503の一例による回路図である。図11に示す例では、並列接続された複数のボルテージフォロア回路510によってバッファ回路503が構成されている。これにより、出力される励磁信号Poutの電圧波形を入力された励磁信号Pinと同じ波形に維持しつつ、励磁コイル250により多くの電流を流すことが可能となる。励磁コイル250に流す電流量は、ボルテージフォロア回路510の並列接続数によって調整することができる。
【0032】
そして、励磁コイル250に励磁信号Pが流れると、励磁コイル250の周囲には磁界が生じ、これが2つの磁気センサ40A,40Bに印加される。上述の通り、励磁コイル250から生じる磁界は、磁気センサ40A,40Bに対して均等に与えられる。したがって、試料310が存在しない場合、磁気センサ40Aから出力される出力信号Paと、磁気センサ40Bから出力される出力信号Pbのレベルは一致する。
【0033】
出力信号Pa,Pbは、位相調整回路505を介して差動アンプ506に入力される。ここで、励磁コイル250と磁気センサ40A,40BのZ方向における距離は同じであることから、出力信号Paと出力信号Pbの位相は一致するはずであるが、製造ばらつきなどにより位相差が生じている場合には、位相調整回路505を用いて出力信号Paと出力信号Pbの位相が一致するよう調整される。
【0034】
差動アンプ506は、出力信号Paと出力信号Pbの差分を抽出する回路であり、これにより得られる差分信号Vaは、ロックインアンプ507に供給される。試料310が存在しない場合、出力信号Paと出力信号Pbのレベルは一致するため、差動アンプ506から出力される差分信号Vaはゼロとなる。
【0035】
ロックインアンプ507は、励磁信号Pをリファレンスとして、差分信号Vaに含まれる励磁信号Pと同じ周波数成分を抽出し、検出信号OUTを生成する回路である。検出信号OUTの波形は、オシロスコープ508に表示される。差動アンプ506とロックインアンプ507は、出力信号Paと出力信号Pbの差に基づいて検出信号OUTを生成する検出回路を構成する。図10に示す例では、検出回路が差動アンプ506とロックインアンプ507によって構成されているが、本発明がこれに限定されるものではない。
【0036】
そして、試料310に金属異物が混入している場合、励磁コイル250からの磁界によって、金属異物に渦電流が生じる。この渦電流は新たな磁界を発生させ、これが磁気センサ40Aによって検出される。ここで、試料310は励磁コイル250と磁気センサ40Aの間に配置されており、試料310と磁気センサ40Bの距離は十分に離れていることから、渦電流によって生じる磁界は磁気センサ40Bにはほぼ印加されない。このため、試料310に金属異物が混入している場合、渦電流によって生じる磁界成分によって出力信号Paと出力信号Pbに差が生じ、これが検出信号OUTとなって現れる。
【0037】
このように、本実施形態による磁気検出システム100を用いれば、試料310に金属異物が混入している場合、これを高感度に検出することが可能となる。しかも、磁気センサ40Aは、渦電流に起因する磁界を検出していることから、金属異物がアルミニウムや銅などの非磁性材料からなる場合であっても検出が可能となる。また、本実施形態においては、信号生成回路501から出力される励磁信号Pをそのまま励磁コイル250に供給するのはなく、駆動能力の高いバッファ回路503を介して励磁コイル250に供給していることから、励磁コイル250に流す電流量が大きい場合であっても、励磁コイル250によって生じる磁界に不必要な変動が生じにくい。これにより、磁界の不必要な変動に起因する測定誤差が低減されることから、試料310に金属異物が微小サイズであっても、これを高感度に検出することが可能となる。
【0038】
また、金属異物311とセンサ本体部10Aの位置関係はZ方向であるが、試料310とセンサ本体部10AのZ方向における距離を十分に近づけることにより、模式図である図12に示すように、金属異物311によって生じる磁界のX方向成分を集磁体51~53によって集磁し、感磁素子R1~R4に印加することができる。図12において、符号312は金属異物311によって生じる磁界の向き及び強さを表している。このように、集磁体51の長手方向(X方向)を試料310とセンサ本体部10Aの離間方向(Z方向)に対して垂直に設定することにより、試料310と感磁素子R1~R4の距離をより近くすることができ、これにより高い検出感度を得ることが可能となる。特に、磁気センサ40Aの素子形成面41と集磁体51の間を励磁コイル250のコイル軸の中心が通り、且つ、磁気センサ40Bの素子形成面41と集磁体51の間を励磁コイル250のコイル軸の中心が通るようレイアウトすれば、より高い検出感度を得ることが可能となる。
【0039】
以上説明したように、本実施形態による磁気検出システム100は、励磁コイル250から見てコイル軸方向における互いに反対側に磁気センサ40A,40Bを配置し、励磁コイル250と磁気センサ40Aの間に試料310を配置していることから、試料310に金属異物が混入している場合、金属異物に生じる渦電流を検出することが可能となる。これにより、金属異物が非磁性材料からなる場合であっても、これを高感度に検出することが可能となる。
【0040】
また、試料310及び磁気センサ40A,40Bが配置される測定空間230が3重の磁気シールドS1~S3によってシールドされていることから、駆動機構141~143などから発せられる外乱磁場の影響が低減される。特に、磁気センサ40A,40Bから見て駆動機構141~143が配置されるYZ方向側が磁気シールドS1~S3によって2重又は3重にシールドされていることから、駆動機構141~143による磁気的な影響を大幅に抑制することが可能となる。
【0041】
しかも、磁気シールドS1~S3が円弧状の湾曲部を有していることから、平板状の部材を用いた箱形形状である場合よりも高いシールド効果を得ることが可能となる。より高いシールド効果を得るためには、磁気シールドS1~S3を全体的に円形とすればよいが、この場合、磁気センサ40A,40Bを測定空間230内に固定することが困難となる。これに対し、本実施形態による磁気検出システム100では、磁気シールドS1~S3の一部を平板状とし、他の部分を円弧状としていることから、高いシールド効果を確保しつつ、測定空間230内における磁気センサ40A,40Bの固定が容易となる。
【0042】
以上、本開示に係る技術の実施形態について説明したが、本開示に係る技術は、上記の実施形態に限定されることなく、その主旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能であり、それらも本開示に係る技術の範囲内に包含されるものであることはいうまでもない。
【0043】
本開示に係る技術には、以下の構成例が含まれるが、これに限定されるものではない。
【0044】
本開示の一実施形態による磁気検出システムは、励磁コイルと、励磁コイルから見てコイル軸方向における互いに反対側に配置された第1及び第2の磁気センサと、励磁コイルと第1の磁気センサの間に試料を保持する試料ステージと、第1の磁気センサから出力される第1の出力信号と第2の磁気センサから出力される第2の出力信号の差に基づいて検出信号を生成する検出回路と、励磁コイル、第1及び第2の磁気センサ、並びに、試料ステージが配置される測定空間を囲む磁気シールドとを備え、磁気シールドは、測定空間をコイル軸方向における両側及びコイル軸方向に対して垂直な第1の方向における両側から覆う筒状の第1の磁気シールドと、測定空間をコイル軸方向における両側、並びに、コイル軸方向及び第1の方向に対して垂直な第2の方向における一方側から覆う第2の磁気シールドとを含み、試料ステージは、測定空間内に第2の方向における他方側から挿入される。これによれば、試料に含まれる金属異物が非磁性材料からなる場合であっても、渦電流に起因する磁界を高感度に検出することが可能となる。しかも、試料ステージが挿入される測定空間の開口部を除いた全面がシールドされることから、外乱ノイズの影響を低減することが可能となる。
【0045】
上記の磁気検出システムにおいて、磁気シールドは、第2の磁気シールドをコイル軸方向における両側及び第1の方向における両側から覆う筒状の第3の磁気シールドをさらに含んでいても構わない。これによれば、より高いシールド効果を得ることが可能となる。
【0046】
上記の磁気検出システムは、試料ステージとシールドボックスの相対的な位置関係を変化させる駆動機構をさらに備えていても構わない。試料を広範囲に亘って磁気測定することが可能となる。
【0047】
上記の磁気検出システムにおいて、駆動機構は、試料ステージとシールドボックスの相対的な位置関係を第1の方向に変化させる第1の駆動機構と、試料ステージとシールドボックスの相対的な位置関係を第2の方向に変化させる第2の駆動機構と、試料ステージとシールドボックスの相対的な位置関係をコイル軸方向に変化させる第3の駆動機構とを含んでいても構わない。これによれば、試料と第1の磁気センサの平面的な位置関係のみならず、両者間の距離についても可変とすることができる。
【0048】
上記の磁気検出システムは、第1及び第2の磁気センサにそれぞれ磁束を集める第1及び第2の集磁体をさらに備え、第1及び第2の磁気センサは、いずれも感磁素子が形成された素子形成面がコイル軸と平行となるよう配置され、第1の集磁体は第1の磁気センサの素子形成面上に配置され、第2の集磁体は第2の磁気センサの素子形成面上に配置され、コイル軸の中心は、第1の磁気センサの素子形成面と第1の集磁体の間に位置し、且つ、第2の磁気センサの素子形成面と第2の集磁体の間に位置しても構わない。これによれば、より高感度な検出が可能となる。
【0049】
上記の磁気検出システムは、励磁コイルに供給される励磁信号を生成する信号生成回路と、信号生成回路と励磁コイルの間に接続され、入力インピーダンスよりも出力インピーダンスが低いバッファ回路とをさらに備えていても構わない。これによれば、励磁コイルに流す電流量が大きい場合であっても、励磁コイルによって生じる磁界に不必要な変動が生じにくくなる。
【0050】
上記の磁気検出システムにおいて、バッファ回路は、並列接続された複数のボルテージフォロア回路を含んでいても構わない。これによれば、励磁コイルに流す電流量を容易に調整することが可能となる。
【0051】
上記の磁気検出システムは、第1の出力信号と第2の出力信号の位相を調整する位相調整回路をさらに備えていても構わない。これによれば、製造ばらつきなどに起因する位相差をキャンセルすることが可能となる。
【符号の説明】
【0052】
10A,10B センサ本体部
30 センサ基板
40A,40B 磁気センサ
41 素子形成面
42 裏面
43 上面
44 下面
45,46 側面
51~53 集磁体
61~64 端子電極
100 磁気検出システム
110 フレーム
111~113 ガイド
120 可動ビーム
141~143 駆動機構
200 シールドボックス
210 本体部
211A,211B,212~214 パーツ
220 連結部
230 測定空間
240 基板
250 励磁コイル
300 試料ステージ
301 テーブル
302 連結部
310 試料
311 金属異物
312 磁界
400A,400B センサホルダー
401 板状部
402 センサ収容部
501 信号生成回路
502 デジタルフィルタ
503 バッファ回路
504 抵抗
505 位相調整回路
506 差動アンプ
507 ロックインアンプ
508 オシロスコープ
510 ボルテージフォロア回路
C 補償コイル
M1~M3 磁性ヨーク
R1~R4 感磁素子
S1~S3 磁気シールド
図1
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