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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024119110
(43)【公開日】2024-09-03
(54)【発明の名称】車両整備用リフトのアーム装置
(51)【国際特許分類】
   B66F 7/28 20060101AFI20240827BHJP
【FI】
B66F7/28 D
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023025764
(22)【出願日】2023-02-22
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.テレスコ
(71)【出願人】
【識別番号】390018326
【氏名又は名称】株式会社スギヤス
(74)【代理人】
【識別番号】100110744
【弁理士】
【氏名又は名称】藤川 敬知
(72)【発明者】
【氏名】中村 健二
(57)【要約】
【課題】受具の昇降機構におけるロック解除の安全性向上を図ることができる車両整備用リフトのアーム装置を提供する。
【解決手段】車両整備用リフトのアーム装置1は、受具5を支持する台座部としてのアタッチメント用台座39をアーム2に対して水平姿勢で昇降する昇降機構としてのリンク機構3と、アタッチメント用台座39の昇降高さが第1高さLV1となる状態でリンク機構3をロックするロック機構34と、アタッチメント用台座39が第1高さLV1とは異なる第2高さLV2に位置する状態で作動可能とされてリンク機構3のロック状態を解除する解除レバー37と、を備え、解除レバー37は、アタッチメント用台座39の第1高さLV1から第2高さLV2への移動方向(矢印U方向)とは反対方向(矢印D方向)へ作動されることでロック状態を解除する。
【選択図】図19
【特許請求の範囲】
【請求項1】
アーム長手方向に延在し且つ昇降移動可能なアームと、前記アームの先端部で車体を受けるための受具と、を備える車両整備用リフトのアーム装置であって、
前記受具を支持する台座部を前記アームに対して水平姿勢で昇降する昇降機構と、
前記台座部の昇降高さが第1高さとなる状態で前記昇降機構をロックするロック機構と、
前記台座部が前記第1高さとは異なる第2高さに位置する状態で作動可能とされて前記昇降機構のロック状態を解除する解除部材と、
を備え、
前記解除部材は、前記台座部の前記第1高さから前記第2高さへの移動方向とは反対方向へ作動されることで前記ロック状態を解除する、車両整備用リフトのアーム装置。
【請求項2】
前記第2高さは、前記第1高さよりも上方に位置し、
前記解除部材は、下向きに作動されることよって前記ロック状態を解除する、請求項1に記載の車両整備用リフトのアーム装置。
【請求項3】
前記昇降機構は、複数のリンクからなるリンク機構によって構成される、請求項2に記載の車両整備用リフトのアーム装置。
【請求項4】
前記リンク機構は、平行リンク機構からなり、
前記平行リンク機構は、起立姿勢から倒伏姿勢への変形に伴って前記アーム長手方向先端側へ伸長する、請求項3に記載の車両整備用リフトのアーム装置。
【請求項5】
前記受具が上端に設けられ且つ前記受具を垂直に昇降する受金装置を備え、
前記台座部は、前記受金装置を介して前記受具を支持する、請求項4に記載の車両整備用リフトのアーム装置。
【請求項6】
前記ロック機構は、前記リンク機構の昇降部に回動自在に軸支される一端及び開放端である他端を有して前記他端に爪部が設けられるロック片と、前記アームの先端部に設けられる被係合部とを備え、
前記リンク機構が起立姿勢のとき、前記ロック片の前記爪部は前記被係合部に係合して前記ロック状態とされ、
前記台座部が前記第2高さに位置するとき、前記ロック片の前記爪部は前記被係合部から離間すると共に、前記解除部材が下向きに作動されることよって前記ロック片が回動して前記ロック状態が解除される、請求項3乃至5の何れか一項に記載の車両整備用リフトのアーム装置。
【請求項7】
前記被係合部は、円筒状の外周面を有し、
前記ロック片の前記爪部は、前記被係合部の前記円筒状の外周面に整合する湾曲凹状の端面を有する、請求項6に記載の車両整備用リフトのアーム装置。
【請求項8】
前記被係合部は、前記リンク機構を構成する前記複数のリンクの一部を前記アームの先端部に対して軸支するシャフトからなる、請求項7に記載の車両整備用リフトのアーム装置。
【請求項9】
前記解除部材は、前記台座部の近傍且つ同等の高さに設けられる、請求項1乃至5の何れか一項に記載の車両整備用リフトのアーム装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両整備用リフトのアーム装置に関し、特に受具の昇降機構におけるロック解除の安全性向上に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、車両整備用リフトにおいては、車体の4つのジャッキポイントをアーム先端の受具で支持して自動車を持ち上げる。これらのジャッキポイントは、タイヤ交換等に際しジャッキを当てる箇所であるが、ジャッキポイントまでの高さは車種により異なるため、受具の高さを調整する必要があるという課題がある。
【0003】
このような課題に鑑みて、従来、アームと、アームの先端部で車体を受ける受具と、受具を水平な姿勢でアームに対し昇降する昇降機構と、受具を所望の高さに保持するためのロック機構と、を備えるアーム装置が提案されている(特許文献1、2参照。)。このような従来技術によれば、ジャッキポイントが低い車両から高い車両まで広範囲に適用できるとともに、受具の高さを簡単な操作で短時間に調整できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】実開平2-87000号公報
【特許文献2】特許第3759848号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、昇降機構のロックを解除するためのレバーやノブが作業者の意図しない接触によって作動してしまった場合、昇降機構のロック解除によりアーム先端の受具が突然下降し、作業者が受具に手を挟まれる等の事故の発生が懸念されるという課題がある。
【0006】
本発明は、上述した課題に鑑みてなされたものであり、受具の昇降機構におけるロック解除の安全性向上を図ることができる車両整備用リフトのアーム装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る車両整備用リフトのアーム装置は、アーム長手方向に延在し且つ昇降移動可能なアームと、前記アームの先端部で車体を受けるための受具と、を備える車両整備用リフトのアーム装置であって、前記受具を支持する台座部を前記アームに対して水平姿勢で昇降する昇降機構と、前記台座部の昇降高さが第1高さとなる状態で前記昇降機構をロックするロック機構と、前記台座部が前記第1高さとは異なる第2高さに位置する状態で作動可能とされて前記昇降機構のロック状態を解除する解除部材と、を備え、前記解除部材は、前記台座部の前記第1高さから前記第2高さへの移動方向とは反対方向へ作動されることで前記ロック状態を解除する。
【0008】
この構成によれば、昇降機構は、台座部の昇降高さが第1高さとなる状態でロック機構によりロックされる一方、台座部を外力によって第1高さから第2高さへ移動させると共に、その移動方向とは反対方向に解除部材が作動されることによって昇降機構のロック状態が解除される。つまり、昇降機構のロック状態解除のために、台座部と解除部材とは互いに反対方向へ外力を与えることが必要とされ、解除部材のみに外力が加えられたり、台座部と解除部材とが同一方向に外力が与えられたりしてもロック状態は解除されない。よって、解除部材に作業者の手等が偶発的に接触することによるロック状態の誤解除を効果的に防止でき、ロック解除の安全性向上を図ることが可能となる。
【0009】
また、前記第2高さは、前記第1高さよりも上方に位置し、前記解除部材は、下向きに作動されることよって前記ロック状態を解除する。
【0010】
この構成によれば、台座部を外力によって第1高さから第2高さへ上方移動させた状態で、解除部材が下向きに作動されることよって、昇降機構のロック状態が解除される。よって、昇降機構のロック状態が解除される条件として、作業者が手等で解除部材を押し下げる操作と、台座部を第2高さまで持ち上げる操作との両方が必要とされるので、ロック状態の偶発的な誤解除を効果的に防止できる。
【0011】
また、前記昇降機構は、複数のリンクからなるリンク機構によって構成される。
【0012】
この構成によれば、複数のリンクからなる簡単な構造の昇降機構によって、台座部をアームに対して水平姿勢で昇降させることができる。また、ロック状態の解除によって、受具を支持する台座部が瞬時に下降するリンク機構において、確実に安全性向上を図ることができる。
【0013】
また、前記リンク機構は、平行リンク機構からなり、前記平行リンク機構は、起立姿勢から倒伏姿勢への変形に伴って前記アーム長手方向先端側へ伸長する。
【0014】
平行リンク機構は、ロック状態の解除によって、受具を支持する台座部が下降する際、起立姿勢から倒伏姿勢への変形に伴ってアーム長手方向先端側へ伸長して作業者に接近するが、本実施形態によれば、解除部材への偶発的接触によるロック状態の誤解除が防止されるので、作業者の身体に台座部が衝突したり手を挟まれたりする等の事故の防止を図ることが可能となる。
【0015】
また、前記受具が上端に設けられ且つ前記受具を垂直に昇降する受金装置を備え、前記台座部は、前記受金装置を介して前記受具を支持する。
【0016】
この構成によれば、台座部は、受具が上端に設けられた受金装置を介して受具を支持し、受金装置は受具を垂直に昇降するので、昇降機構及び受金装置を併用して全体で大きな昇降ストロークを実現することができる。
【0017】
また、前記ロック機構は、前記リンク機構の昇降部に回動自在に軸支される一端及び開放端である他端を有して前記他端に爪部が設けられるロック片と、前記アームの先端部に設けられる被係合部とを備え、前記台座部が第1高さに位置するとき、前記ロック片の前記爪部は前記被係合部に係合して前記ロック状態とされ、前記台座部が前記第2高さに位置するとき、前記ロック片の前記爪部は前記被係合部から離間すると共に、前記解除部材が下向きに作動されることよって前記ロック片が回動して前記ロック状態が解除される。
【0018】
この構成によれば、台座部が第1高さに位置するとき、ロック片の爪部は被係合部に係合してロック状態とされてリンク機構が起立姿勢に保持される。一方、台座部が外力によって持ち上げられて第2高さに位置するとロック片の爪部は被係合部から離間し、この状態で解除部材が下向きに作動されることによってロック片が回動して爪部が被係合部に対して非対向状態とされることで、ロック状態を確実に解除することができる。
【0019】
また、前記被係合部は、円筒状の外周面を有し、前記ロック片の前記爪部は、前記被係合部の前記円筒状の外周面に整合する湾曲凹状の端面を有する。
【0020】
この構成によれば、台座部が第1高さに位置するときに、ロック片の爪部に設けられる湾曲凹状の端面が被係合部に設けられる円筒状の外周面に整合状態で係合することで強固にロック状態が維持される。一方、台座部が第2高さに位置するときに、爪部の湾曲凹状の端面が被係合部の円筒状の外周面から離間し且つ解除部材が下向きに作動されることよってロック片が回動してロック状態が確実に解除される。
【0021】
また、前記被係合部は、前記リンク機構を構成する前記複数のリンクの一部を前記アームの先端部に対して軸支するシャフトからなる。
【0022】
この構成によれば、被係合部を別部材で設けることなく、ロック機構を簡単且つコンパクトな構造としつつ、ロック片によりリンク機構のロックと解除とを確実に行うことができる。
【0023】
また、前記解除部材は、前記台座部の近傍且つ同等の高さに設けられる。
【0024】
この構成によれば、解除部材が台座部の近傍且つ同等の高さに設けられるので、台座部の移動と解除部材の操作とを作業者が片手で同時に行うことができ、作業効率の向上を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
図1】本発明の実施形態に係る車両整備用リフトのアーム装置(リンク機構起立、調整ラック上限)の全体構成を示す斜視図である。
図2図1においてアーム先端部周辺を示す斜視図である。
図3図1においてアーム先端部周辺を示す側面図である。
図4図1において受金アタッチメントを取り外した状態のアーム先端部周辺を示す斜視図である。
図5】受金アタッチメント(調整ラック上限)を示す側面図である。
図6図5の受金アタッチメントにおける断面図である。
図7】受金アタッチメント(調整ラック下限)を示す側面図である。
図8図7の受金アタッチメントにおける断面図である。
図9】車両整備用リフトのアーム装置(リンク機構倒伏、調整ラック下限)においてアーム先端部周辺を示す斜視図である。
図10図9においてアーム先端部周辺を示す側面図である。
図11】車両整備用リフトのアーム装置(リンク機構倒伏、調整ラック上限)においてアーム先端部周辺を示す斜視図である。
図12図11においてアーム先端部周辺を示す側面図である。
図13】車両整備用リフトのアーム装置(リンク機構起立、調整ラック下限)においてアーム先端部周辺を示す斜視図である。
図14図13においてアーム先端部周辺を示す側面図である。
図15】受具の位置決め方法の流れを示すフローチャートである。
図16】アーム先端部周辺(リンク機構倒伏/最下位置)を示す断面図である。
図17】アーム先端部周辺(リンク機構起立/第1高さ、ロック状態)を示す断面図である。
図18】アーム先端部周辺(リンク機構起立/第2高さ、ロック片爪部離間)を示す断面図である。
図19】アーム先端部周辺(リンク機構起立/第2高さ、ロック片回動/ロック解除)を示す断面図である。
図20】アタッチメント用台座の高さとリンク機構及びロック機構の状態変化との関係を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、本発明に係る車両整備用リフトのアーム装置を具体化した一実施形態について図面を参照しつつ説明する。
【0027】
<車両整備用リフトのアーム装置1の構成>
最初に、本発明の実施形態に車両整備用リフトのアーム装置1の構成について、図1乃至図8を参照しつつ説明する。図1は車両整備用リフトのアーム装置1(リンク機構3起立、調整ラック42上限)の全体構成を示す斜視図、図2はアーム先端部2a周辺を示す斜視図、図3はその側面図、図4は受金アタッチメント4を取り外した状態のアーム先端部2a周辺を示す斜視図である。図5は受金アタッチメント4(調整ラック42上限)を示す側面図、図6はその断面図である。図7は受金アタッチメント4(調整ラック42下限)を示す側面図、図8はその断面図である。
【0028】
車両整備用リフトのアーム装置1は、整備対象である車両の昇降を行う車両整備用リフトに設けられるスイングアーム等と称される装置である。車両整備用リフトには、1柱式、2柱式又はXリンク式等の各種があり、これらの車両整備用リフトには、アーム装置1が図示しない昇降台の4カ所に装備され、4つのジャッキポイントで車体を支持するようになっている。
【0029】
車両整備用リフトのアーム装置1(以下、単にアーム装置1とも称する)は、図1乃至図8に示すように、アーム2と、リンク機構3と、受金アタッチメント4と、を備えて構成される。
【0030】
アーム2は、アーム長手方向に延在して基端側が垂直な回動軸回りに昇降台に取付けられて水平方向に旋回可能である。また、アーム2は、複数のアーム部材がテレスコ式に重ねて配置されてアーム長手方向に伸縮可能に構成されている。また、アーム2は、長手方向先端から所定長さに亘って、長手方向と直交する幅方向の長さが他の部位よりも幅狭に形成されたアーム先端部2aを備える。
【0031】
リンク機構3は、一対の固定リンク30,30と、一対の第1揺動リンク31,31と、一対の第2揺動リンク32,32と、一対の中間リンク33,33と、ロック機構34と、アタッチメント用台座39と、を備えて構成される。尚、一対の固定リンク30,30と、一対の第1揺動リンク31,31と、一対の第2揺動リンク32,32と、一対の中間リンク33,33とは、一対の中間リンク33,33を固定リンク30,30に対して昇降可能に連結するものであって、本発明の平行リンク機構を構成している。リンク機構3において、第1揺動リンク31及び第2揺動リンク32が平行リンク機構の駆動リンク又は従動リンクとして、一対の固定リンク30,30が同じく固定リンクとして、一対の中間リンク33,33が同じく中間リンクとしてそれぞれ作用する。また、アタッチメント用台座39が本発明の台座部を構成するものである。
【0032】
一対の固定リンク30,30は、アーム先端部2aにおいて幅方向の外側両側面にそれぞれ固定されるリンク部材であって、アーム長手方向先端側に向かって水平に延設されている。
【0033】
一対の第1揺動リンク31,31は、一対の固定リンク30,30と一対の中間リンク33,33とを連結するリンク部材である。一対の第1揺動リンク31,31は、基端が一対の固定リンク30,30のアーム長手方向中央上部で幅方向内側の両側面に、幅方向に沿って配置されるシャフト31aを介して連結され、先端が一対の中間リンク33,33の基端側端部で、幅方向に沿って配置されるシャフト31bを介して連結される。
【0034】
一対の第2揺動リンク32,32は、一対の第1揺動リンク31,31よりもアーム長手方向先端側へ所定間隔離れた位置で、一対の固定リンク30,30と一対の中間リンク33,33とを連結するリンク部材であって、支点間距離は一対の第1揺動リンク31,31と同一に設定されている。一対の第2揺動リンク32,32は、基端が一対の固定リンク30,30のアーム長手方向先端近傍の下部で幅方向外側の両側面に、幅方向に沿って配置されるシャフト32aを介して連結され、先端が一対の中間リンク33,33の先端側端部でシャフト32b,32bを介して連結される。
【0035】
一対の中間リンク33,33は、一対の第1揺動リンク31,31と一対の第2揺動リンク32,32とを連結するリンク部材である。一対の中間リンク33,33は、アーム長手方向基端側でシャフト31bを介して一対の第1揺動リンク31,31の先端に連結され、アーム長手方向先端側でシャフト32b,32bを介して一対の第2揺動リンク32,32の先端に連結されている。一対の中間リンク33,33間には、アタッチメント用台座39が固定されている。
【0036】
そして、4つのシャフト31a,31b,32a,32bは、平行四辺形を形成し、一対の固定リンク30,30と一対の中間リンク33,33とを常に平行関係に保持する。これにより、一対の中間リンク33,33間に設けられるアタッチメント用台座39並びに、これに装着される受金アタッチメント4及び受具5が、アーム2の水平状態で第1揺動リンク31及び第2揺動リンク32の揺動に伴い水平な姿勢で昇降するようになっている。平行リンク機構からなるリンク機構3は、起立姿勢から倒伏姿勢への変形に伴ってアーム長手方向先端側へ伸長するので、倒伏姿勢ではアタッチメント用台座39が先端側へ大きく張り出した状態となる。
【0037】
ロック機構34は、リンク機構3を所定の起立姿勢に保持したり解除したりするための機構であって、ロック片35と、ねじりバネ36と、解除レバー37とを備えて構成される。
【0038】
ロック片35は、アーム長手方向に延在する略角柱片であって、一端がリンク機構3の昇降部であるシャフト31bと同軸に回動自在に取付けられ、他端が開放端となっている。開放端には、シャフト32aの円筒状の外周面に整合する湾曲凹状の端面を有する爪部35aが形成されている。
【0039】
ねじりバネ36は、シャフト31bに同軸に取付けられてロック片35の開放端側を下回りにアーム長手方向先端側へ付勢する。
【0040】
解除レバー37は、本発明の解除部材を構成する側面視クランク状の部材であって、ピン37aを介して中間リンク33に回動可能に軸支されている。解除レバー37において一方の中間リンク33の上方に位置するアーム長手方向先端側の一端を押し下げるとピン37aを中心に回動し、他端がロック片35をねじりバネ36の付勢力に抗してアーム長手方向基端側へ押圧することで爪部35aとシャフト32a外周面との係合を解消し、リンク機構3における起立姿勢のロック状態を解除する作用をする。解除レバー37は、アタッチメント用台座39の近傍且つ同等の高さに設けられる。
【0041】
リンク機構3が所定の起立姿勢のとき、爪部35aが設けられる開放端側が斜め下向きとなってシャフト32aの外周面に爪部35aが係合することで、リンク機構3が所定の起立姿勢に保持、すなわちロックされる。一方、リンク機構3が倒伏姿勢のとき、ロック片35は略水平となって一対の第1揺動リンク31,31間に形成された空間内に収容される。
【0042】
アタッチメント用台座39は、受金アタッチメント4を着脱自在に装着するための台座部材であって、平面視で四隅が丸みを帯びた長方形状を呈するブロック体からなる。アタッチメント用台座39は、装着穴39aが平面視中央に形成されている。装着穴39aは、上下方向に貫通する円筒状の穴であって、受金アタッチメント4のベース41における小径の下半部が上方から挿入される。そして、ベース41の大径の上半部において、下半部より径外方向に張り出した部分の下面がアタッチメント用台座39の上面に載置されることで、受金アタッチメント4が着脱自在に装着される。アタッチメント用台座39は、一対の中間リンク33,33間に配置され、幅方向外側の両側面において一対の中間リンク33,33の幅方向内側の両側面に固定される。
【0043】
受金アタッチメント4は、受具5を垂直方向に(すなわち垂直軸に沿って)昇降させるテレスコ式の受金装置であって、アタッチメント用台座39に着脱自在に装着される。受金アタッチメント4は、ベース41と、調整ラック42と、ガイド部材43と、係止爪レバー44と、を備えて構成される。
【0044】
ベース41は、アタッチメント用台座39に対して取付け可能な筒状体である。ベース41は、第1開口部41aと、第1開口部41aより内径の狭い第2開口部41bとが設けられており、これらの間に段部41cが形成されている。第2開口部41bの上端側には、レバー用溝41dがアーム長手方向に設けられている。このレバー用溝41d 内には、後述する係止爪レバー44を回動自在に軸支する軸41eが設けられている。
【0045】
調整ラック42は、ベース41内で上下移動する部材であって、上端に受具5を備える。調整ラック42は、軸部分の外径がベース41の第2開口部41bの内径とほぼ同じ大きさで、外周に多条の鋸歯42aが形成されており、内側には中空部42bが形成された筒状の部材である。
【0046】
この調整ラック42の先端部42cには、ボルト45が螺合するネジ孔42dを設けた凹部が形成されており、この先端部42cを受具用台座46の孔46aに差し込んだ状態で固着され、受具用台座46と一体になっている。
【0047】
ガイド部材43は、軸部分の外径が調整ラック42の中空部42bの内径とほぼ同じ大きさの筒状の部材で、軸部分の内部には、ボルト45の軸部が、ガイド部材43の軸心を貫通するように保持され、他端である頭部が係止する係止部43aが設けられている。
【0048】
また、係止爪レバー44は、鋸歯42aに係止する係止爪44aと、軸41eを挿入する軸孔44bとで構成され、軸41eに取り付けられる巻きバネ44cの一方を係止爪レバー44に係止し、他方をベース41のレバー用溝41dに係止することで、係止爪レバー44を押し上げる力が常に付勢される。
【0049】
受具用台座46は、受具5を固定する板材である。受具用台座46は、受具5を取り付けた後、四隅の孔51,51・・に対応する位置に図示しないネジ孔が設けられており、図示しないネジが螺合される。
【0050】
ここで、受金アタッチメント4(具体的には調整ラック42)の昇降ストロークをA、リンク機構3の昇降ストロークをBとしたとき、AはB以上(A≧B)に設定される。このように設定されることで、リンク機構3が所定の倒伏姿勢にあるときの受金アタッチメント4による昇降範囲と、リンク機構3が所定の起立姿勢にあるときの受金アタッチメント4による昇降範囲とが切れ目無く連続することになる。尚、A=Bの場合は、リンク機構3が所定の倒伏姿勢にあるときの受金アタッチメント4による昇降範囲と、リンク機構3が所定の起立姿勢にあるときの受金アタッチメント4による昇降範囲とが重複無く連続し、A>Bの場合は、AとBとの差分(A-B)だけ重複部分を挟んで連続することになる。
【0051】
<受具5の位置決め方法>
次に、車両整備用リフトのアーム装置1における受具5の位置決め方法について、図1図8に加え、図9図20をさらに参照しつつ説明する。図9は車両整備用リフトのアーム装置1(リンク機構3倒伏姿勢、調整ラック42下限)においてアーム先端部2a周辺を示す斜視図、図10はその側面図である。図11はアーム装置1(リンク機構3倒伏姿勢、調整ラック42上限)においてアーム先端部2a周辺を示す斜視図、図12はその側面図である。図13はアーム装置1(リンク機構3起立姿勢、調整ラック42下限)においてアーム先端部2a周辺を示す斜視図、図14はその側面図である。
【0052】
図15は受具5の位置決め方法の流れを示すフローチャートである。図16はアーム先端部2a周辺(リンク機構3倒伏/最下位置LV0)を示す断面図、図17は同じくアーム先端部2a周辺(リンク機構3起立/第1高さLV1、ロック状態)を示す断面図、図18はアーム先端部2a周辺(リンク機構3起立/第2高さLV2、ロック片35の爪部35a離間)を示す断面図、図19はアーム先端部2a周辺(リンク機構3起立/第2高さLV2、ロック片35回動/ロック解除)を示す断面図である。図20はアタッチメント用台座39の高さとリンク機構3及びロック機構34の状態変化との関係を示す説明図である。尚、図16図19では、受金アタッチメント4の図示を省略している。また、最下位置LV0はリンク機構3倒伏姿勢におけるアタッチメント用台座39上端を基準とする昇降高さ、第1高さLV1はリンク機構3起立姿勢且つロック状態におけるアタッチメント用台座39上端の昇降高さであり、第2高さLV2は第1高さLV1よりも数mm~2cm程度上方に設定されたアタッチメント用台座39上端の昇降高さである。
【0053】
最初に、受具5の位置決め方法の流れについて、図15のフローチャートを参照しつつ説明する。初期状態において、リンク機構3が倒伏姿勢であり且つ受金アタッチメント4の調整ラック42が下限位置であるとする(図9図10参照)。ベース41内では、鍔部43bが第1開口部41a内壁に当接する一方、第2開口部41b内壁には鋸歯42aが当接している。調整ラック42内の中空部42b内壁には、ガイド部材43の軸部分が当接している。これらによって、調整ラック42(受具5)が、ベース41内で保持された状態となっている。
【0054】
まず、第1工程S1(Sはステップを表す。他のステップも同様。)では、車体のジャッキポイントの高さに応じて、リンク機構3を所定の倒伏姿勢及び所定の起立姿勢のいずれかに設定する(姿勢設定工程)。すなわち、作業者の目視で、リンク機構3起立姿勢且つ調整ラック42下限時における受具5の高さよりもジャッキポイントの高さの方が高いと判断される場合は、リンク機構3を所定の起立姿勢に設定する。尚、上記の場合に該当する車両を、以下の説明では「高床車両」と称することとする。
【0055】
一方、受具5の高さとジャッキポイントの高さとが同等又はジャッキポイントの高さの方が低いと判断される場合は、リンク機構3を所定の倒伏姿勢に設定(つまり、初期状態を維持)する。尚、上記の場合に該当する車両を、以下の説明では「低床車両」と称することとする。
【0056】
さらに、第1工程S1では、アーム2の水平回動及び伸縮の両方又は一方を行うことにより受具5をジャッキポイントの真下へ水平移動させる(移動工程)。ここで、移動工程は、アーム2を所定の待機位置から受具5がジャッキポイントの真下位置まで一度に大きく移動させる場合だけでなく、受具5がジャッキポイントの真下以外の周辺(真下から数cm程度離れた位置)にある状態からジャッキポイントの真下へ僅かな距離を移動させる場合をも含む。
【0057】
尚、姿勢設定工程及び移動工程を行う順番は任意であって何れを先に行ってもよく、両工程を同時に行っても構わない。好ましくは、第1工程S1では、姿勢設定工程を行った後、移動工程を行う。この場合、リンク機構3を所定の倒伏姿勢又は所定の起立姿勢のいずれかに設定した後、アーム2により受具5をジャッキポイントの真下へ水平移動させるので、ジャッキポイントの真下でリンク機構3の姿勢設定をやり直すことなく効率的に位置決め作業をすることができる。
【0058】
続いて、第2工程S2では、受具5がジャッキポイントの下面に近接する高さとなるように受金アタッチメント4を高さ調整する。
【0059】
最後に、第3工程S3では、アーム2を上昇させて受具5をジャッキポイントの下面に当接させる。以上により、受具5のジャッキポイントへの位置決めが完了する。
【0060】
以下、低床車両の場合と高床車両の場合とに分けて、各工程における具体的な作業と各部の作用について説明する。低車両の場合、第3工程S3において、リンク機構3が倒伏姿勢の状態で(図9図10)、受具5をジャッキポイントの高さまで引き出す(図11図12)。
【0061】
この時、受具5の昇降を規制する係止爪44aが鋸歯42aに接触するものの、鋸歯42aの歯の方向が調整ラック42の上昇方向に傾斜していることから、引き出し時に係止爪44aが鋸歯42aに係止することはなく、受具5をそのまま引き出すことが可能となっている。そして、所定の高さまで受具5を引き出したところで反対に押し下げると、係止爪44aが鋸歯42aの溝部分に係止して調整ラック42が固定され、図11及び図12に示す状態となる。この状態で、第4工程S4で、アーム2を上昇させると、受具5がジャッキポイントに当接して車両のリフトアップが行われる。
【0062】
ここで、ベース41内では、ボルト45の軸部が係止部43aに保持されており、軸部の先端はネジ孔42dに螺合され、さらにネジ孔42dから突出した部分には、ナット42eが螺合して抜け止め固定されていることから、調整ラック42がベース41内を上方に移動すると、それに従ってボルト45も係止部43a内を移動することとなる。
【0063】
そして、さらに受具5を引き出すと、ボルト45の頭部が係止部43aに当接し、ガイド部材43が連動して引き上げられることから、第1開口部41a内を移動することとなる。この時、図6に示すように、鍔部43bの段部41cに当接する位置が、受具5を引き出せる高さの上限であり、ベース41からのガイド部材43の上方への脱却を防止する。
【0064】
一方、受具5を降下させる場合には、まずアーム2を下降(車両をリフトダウン)させて受具5がジャッキポイントから離れた状態にする。そして、受具5を僅かに上昇させて、係止爪レバー44が鋸歯42aから離れた状態にした後、係止爪レバー44を押し下げる。すると、係止爪レバー44が軸41eを中心に回転し、係止爪44aがレバー用溝41d内を上方側に移動することとなる。これにより、係止爪レバー44と鋸歯42aとの係止が解除され、調整ラック42を下方へ移動させても、係止爪44aが鋸歯42aに係止することなく、受具5の降下が可能となる。
【0065】
次に、受具5を降下させると、ベース41内では、図6に示す状態から、鋸歯42aが第2開口部41b内壁とガイド部材43外周との間を下方へ移動し、この鋸歯42a の下端がガイド部材43の鍔部43bに当接すると、ガイド部材43も鍔部43bが第1開口部41a内壁に沿って下方へ移動することとなる。
【0066】
そして、図8に示すように、受具5が最も下降した位置では、受具用台座46がガイド部材43の上端縁に当接するが、この時には、第1開口部41aの内壁側下端に抜け止めリング41rが取り付けられており、ガイド部材43が第1開口部41aの外に出ることはない。
【0067】
係止爪レバー44の押し下げを解除すると、巻きバネ44cによって係止爪レバー44を押し上げる力が常に付勢されていることから、係止爪レバー44が鋸歯42aに再度係止し、調整ラック42がベース41内に固定され、図7に示す状態となる。
【0068】
一方、高床車両の場合、まず、受金アタッチメント4の調整ラック42を下限位置とした状態で、第2工程S2でリンク機構3を倒伏姿勢(図9図10図16)から起立姿勢(図13図14図17)へ変化させる(図20参照)。
【0069】
具体的には、アタッチメント用台座39が最下位置LV0にある状態で(図15)、中間リンク33,33に固定されたアタッチメント用台座39を手で持ち上げると、第1揺動リンク31と第2揺動リンク32とが平行な位置関係を保ちながら、それぞれシャフト31b、シャフト32bが設けられるアーム長手方向の先端側が上回りに回動して起立していく。そして、第1揺動リンク31及び第2揺動リンク32が水平姿勢から30度を超える角度まで回動してアタッチメント用台座39が第1高さLV1に達すると、ロック片35がねじりバネ36の付勢力で下回りにアーム長手方向先端側へ回動して、先端の爪部35aの湾曲凹状の端面がシャフト32aの円筒状の外周面に係合する。このようにして、リンク機構3が所定の起立姿勢で自動的にロックされ、作業者が手を離してもアタッチメント用台座39が第1高さLV1に保持される(図13図14図17図20)。
【0070】
続いて、第3工程S3で、受具5をジャッキポイントの高さまで引き出す(図2図3)。受具5を引き出す際の手順や各部の作用は、上記低床車両の場合で述べたとおりであるので、詳細な説明の繰り返しを省略する。同様に、受具5を降下させる際の手順や各部の作用も、上記低床車両の場合で述べたとおりであるので、詳細な説明の繰り返しを省略する。
【0071】
一方、リンク機構3を起立姿勢(図13図14図17)から倒伏姿勢(図9図10図16)へ変化させる場合には(図20参照)、まずアーム2を下降(車両をリフトダウン)させて、受具5がジャッキポイントから離れた状態とする。そして、リンク機構3が所定の起立姿勢でロックされた状態(図17)のアタッチメント用台座39を第1高さLV1から手でさらに上方へ第2高さLV2まで持ち上げる。すると、突起部31cがアーム先端部2aに設けられたブロック状の規制片2bに当接し(図18参照)、第1揺動リンク31の回動が規制されることによりリンク機構3がそれ以上に起立できない状態となる。この時、爪部35aの湾曲凹状の端面は、シャフト32aの円筒状の外周面から上方へ離間している。
【0072】
この状態で、解除レバー37のアーム長手方向先端側の一端を押し下げると、解除レバー37はピン37aを中心に下回りに回動し、他端がロック片35をねじりバネ36の付勢力に抗してアーム長手方向基端側へ押圧する。これにより、ロック片35の爪部35aがシャフト32aよりもアーム長手方向基端側に位置する非対向状態となってロック状態が解除される(図19)。つまり、解除レバー37は、アタッチメント用台座39の第1高さLV1から第2高さLV2への移動方向(矢印Uで示す上方向)とは反対方向(矢印Dで示す下方向)へ作動されることでロック状態を解除する。よって、解除レバー37に作業者の手等が偶発的に接触することによるロック状態の誤解除を効果的に防止できる。そして、アタッチメント用台座39を手で掴んで最下位置LV0まで下降させることによりリンク機構3が倒伏姿勢に変化する(図16図20)。
【0073】
<実施形態のまとめ>
以上詳述したことから明らかなように、本実施形態に係る車両整備用リフトのアーム装置1は、アーム長手方向に延在し且つ昇降移動可能なアーム2と、アーム2のアーム先端部2aで車体を受けるための受具5と、を備えるものであって、受具5を支持する台座部としてのアタッチメント用台座39をアーム2に対して水平姿勢で昇降する昇降機構としてのリンク機構3と、アタッチメント用台座39の昇降高さが第1高さLV1となる状態でリンク機構3をロックするロック機構34と、アタッチメント用台座39が第1高さLV1とは異なる第2高さLV2に位置する状態で作動可能とされてリンク機構3のロック状態を解除する解除部材としての解除レバー37と、を備え、解除レバー37は、アタッチメント用台座39の第1高さLV1から第2高さLV2への移動方向(図19の矢印U方向)とは反対方向(図19の矢印D方向)へ作動されることでロック状態を解除する。
【0074】
この構成によれば、リンク機構3は、アタッチメント用台座39の昇降高さが第1高さLV1となる状態でロック機構34によりロックされる一方、アタッチメント用台座39を外力によって第1高さLV1から第2高さLV2へ移動させると共に、その移動方向(図19の矢印U方向)とは反対方向(図19の矢印D方向)に解除レバー37が作動されることによってリンク機構3のロック状態が解除される。つまり、リンク機構3のロック状態解除のために、アタッチメント用台座39と解除レバー37とは互いに反対方向へ外力を与えることが必要とされ、解除レバー37のみに外力が加えられたり、アタッチメント用台座39と解除レバー37とが同一方向に外力が与えられたりしてもロック状態は解除されない。よって、解除レバー37に作業者の手等が偶発的に接触することによるロック状態の誤解除を効果的に防止でき、安全性向上を図ることが可能となる。
【0075】
また、第2高さLV2は、第1高さLV1よりも上方に位置し、解除レバー37は、下向きに作動されることよってロック状態を解除する。
【0076】
この構成によれば、アタッチメント用台座39を外力によって第1高さLV1から第2高さLV2(図19の矢印U方向)へ上方移動させた状態で、解除レバー37が下向き(図19の矢印D方向)に作動されることよって、リンク機構3のロック状態が解除される。よって、リンク機構3のロック状態が解除される条件として、作業者が手等で解除レバー37を押し下げる操作と、アタッチメント用台座39を第2高さLV2まで持ち上げる操作との両方が必要とされるので、ロック状態の偶発的な誤解除を効果的に防止できる。
【0077】
また、本発明の昇降機構は、複数のリンクからなるリンク機構3によって構成される。
【0078】
この構成によれば、複数のリンクからなる簡単な構造の昇降機構であるリンク機構3によって、アタッチメント用台座39をアーム2に対して水平姿勢で昇降させることができる。また、ロック状態の解除によって、受具5を支持するアタッチメント用台座39が瞬時に下降するリンク機構3において、確実に安全性向上を図ることができる。
【0079】
また、リンク機構3は、平行リンク機構からなり、起立姿勢から倒伏姿勢への変形に伴ってアーム長手方向先端側へ伸長する。
【0080】
平行リンク機構からなるリンク機構3は、ロック状態の解除によって、受具5を支持するアタッチメント用台座39が下降する際、起立姿勢から倒伏姿勢への変形に伴ってアーム長手方向先端側へ伸長して作業者に接近するが、本実施形態によれば、解除レバー37への偶発的接触によるロック状態の誤解除が防止されるので、作業者の身体にアタッチメント用台座39が衝突したり手を挟まれたりする等の事故の防止を図ることが可能となる。
【0081】
また、受具5が上端に設けられ且つ受具5を垂直に昇降する受金装置としての受金アタッチメント4を備え、アタッチメント用台座39は、受金アタッチメント4を介して受具5を支持する。
【0082】
この構成によれば、アタッチメント用台座39は、受具5が上端に設けられた受金アタッチメント4を介して受具5を支持し、受金アタッチメント4は受具5を垂直に昇降するので、リンク機構3及び受金アタッチメント4を併用して全体で大きな昇降ストロークを実現することができる。
【0083】
また、ロック機構34は、リンク機構3の昇降部(シャフト31b)に回動自在に軸支される一端及び開放端である他端を有して他端に爪部35aが設けられるロック片35と、アーム2のアーム先端部2aに設けられる被係合部としてのシャフト32aを備え、アタッチメント用台座39が第1高さLV1に位置するとき、ロック片35の爪部35aはシャフト32aに係合してロック状態とされ、アタッチメント用台座39が第2高さLV2に位置するとき、ロック片35の爪部35aはシャフト32aから離間すると共に、解除レバー37が下向きに作動されることよってロック片35が回動してロック状態が解除される。
【0084】
この構成によれば、アタッチメント用台座39が第1高さLV1に位置するとき、ロック片35の爪部35aはシャフト32aに係合してロック状態とされてリンク機構3が起立姿勢に保持される。一方、アタッチメント用台座39が外力によって持ち上げられて第2高さLV2に位置するとロック片35の爪部35aはシャフト32aから離間し、この状態で解除レバー37が下向きに作動されることよってロック片35が回動して爪部35aがシャフト32aに対して非対向状態とされることで、ロック状態を確実に解除することができる。
【0085】
また、シャフト32aは、円筒状の外周面を有し、ロック片35の爪部35aは、シャフト32aの円筒状の外周面に整合する湾曲凹状の端面を有する。
【0086】
この構成によれば、アタッチメント用台座39が第1高さLV1に位置するときに、ロック片35の爪部35aに設けられる湾曲凹状の端面がシャフト32aに設けられる円筒状の外周面に整合状態で係合することで強固にロック状態が維持される。一方、アタッチメント用台座39が第2高さLV2に位置するときに、爪部35aの湾曲凹状の端面がシャフト32aの円筒状の外周面から離間し且つ解除レバー37が下向きに作動されることよってロック片35が回動してロック状態が確実に解除される。
【0087】
また、本発明の被係合部は、リンク機構3を構成する複数のリンクの一部である一対の第2揺動リンク32,32をアーム2のアーム先端部2aに対して軸支するシャフト32aからなる。
【0088】
この構成によれば、被係合部を別部材で設けることなく、ロック機構34を簡単且つコンパクトな構造としつつ、ロック片35によりリンク機構3のロックと解除とを確実に行うことができる。
【0089】
また、解除レバー37は、アタッチメント用台座39の近傍且つ同等の高さに設けられる。
【0090】
この構成によれば、解除レバー37がアタッチメント用台座39の近傍且つ同等の高さに設けられるので、アタッチメント用台座39の移動と解除レバーの操作とを作業者が片手で同時に行うことができ、作業効率の向上を図ることができる。
【0091】
<変形例>
本発明は、上述した実施の形態に限定されるものではなく、本発明の主旨を逸脱しない範囲で種々に変更を施すことが可能である。例えば、上記実施形態では、ロック片35の一端をシャフト31bと同軸に回動自在に軸支し、爪部35aを有する他端をシャフト32aの外周に係合することでリンク機構3における所定の起立姿勢をロックする構成を示したが、これには限られない。例えば、ロック片35の一端を中間リンク33の他の部位に軸支し、他端を固定リンク30の他の部位に係止する構成としてもよい。
【0092】
また、上記実施形態では、アタッチメント用台座39を外力によって第1高さLV1から第2高さLV2へ上方移動させた状態で、解除レバー37が下向きに作動されることよって、リンク機構3のロック状態が解除される構成としたが、第2高さLV2が第1高さLV1よりも下方に位置する設定とした場合、解除レバー37が上向きに作動されることよって、リンク機構3のロック状態が解除される構成とすれば上記実施形態と同様の効果を奏する。また、上記実施形態では、本発明の解除部材をレバー状の部材である解除レバー37により構成したが、押ボタン等によって構成してもよい。
【0093】
また、上記実施形態では、リンク機構3を平行リンク機構により構成した例を示したが、Xリンク機構等の他のリンク機構を採用してもよいし、リンク機構以外のテレスコ機構等の他の機構による昇降機構を採用してもよい。
【符号の説明】
【0094】
1 車両整備用リフトのアーム装置
2 アーム
3 リンク機構(平行リンク機構)
4 受金アタッチメント(受金装置)
5 受具
30 固定リンク(リンク)
31 第1揺動リンク(リンク)
31b シャフト(リンク機構の昇降部)
32 第2揺動リンク(リンク)
32a シャフト(被係合部)
33 中間リンク(リンク)
34 ロック機構
35 ロック片
35a 爪部
37 解除レバー(解除部材)
39 アタッチメント用台座(台座部)
LV1 第1高さ
LV2 第2高さ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20