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特開2024-119113円弧状ドア装置におけるドア体の緊急開放構造
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024119113
(43)【公開日】2024-09-03
(54)【発明の名称】円弧状ドア装置におけるドア体の緊急開放構造
(51)【国際特許分類】
   E05D 15/06 20060101AFI20240827BHJP
【FI】
E05D15/06 122
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023025770
(22)【出願日】2023-02-22
(71)【出願人】
【識別番号】307038540
【氏名又は名称】三和シヤッター工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100085394
【弁理士】
【氏名又は名称】廣瀬 哲夫
(74)【代理人】
【識別番号】100128392
【弁理士】
【氏名又は名称】服部 秀一
(74)【代理人】
【識別番号】100165456
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 佑子
(72)【発明者】
【氏名】脇坂 京嗣
(72)【発明者】
【氏名】松原 可菜子
【テーマコード(参考)】
2E034
【Fターム(参考)】
2E034AA02
2E034CA04
2E034DA01
(57)【要約】
【課題】トイレブースBの出入り口Eに設けられる円弧状のドア体1を緊急開放する場合に、戸先側ハンガーローラ具4に設けられるロック手段10のロック体11が、ドア体1の開閉移動時の振動等によって不用意にロック解除姿勢に変姿しないようにする。
【解決手段】前後方向に抜き差し操作できるロック体11に、太径のロック部11bと細径のロック解除部11aとが形成されたものとし、そしてロック孔溝9d位置に、ロック開口部9dbから抜け出ることのない太径のロック部11bから細径のロック解除部11aが移動してロック解除されることを、ロック体11を押し込み操作することでできるようにする。
【選択図】図10
【特許請求の範囲】
【請求項1】
戸先側、戸尻側のパネル体間に形成される出入り口部の開閉をする円弧状をしたハンガー式のドア体と、該ドア体の戸先側、戸尻側の上端縁部に設けられる一対のハンガーローラ具と、ドア体の円弧軌跡に沿った開閉案内をする円弧状のハンガーレールとを備えて構成される円弧状ドア装置において、
前記ハンガーローラ具を、ドア体の上端縁部に設けられる筒状のブラケット部と、該ブラケット部に対して上下方向抜き差し自在に嵌入組み込みされるローラ支持部と、ハンガーレールを転動する状態でローラ支持部に設けられるローラ部と、前記ブラケット部に嵌入組み込みされたローラ支持部の抜き差し移動のロックをするロック手段とが備えられ、
ドア体の緊急開放を、ロック手段のロック解除状態でドア体を下動せしめることに基づいて行うように構成するにあたり、
ロック手段は、
ブラケット部に形成されるロック孔と、
ローラ支持部に形成され、該ローラ支持部がロック位置に位置する状態で前記ロック孔と前後方向に連通する孔溝部、および該孔溝部の孔幅よりも幅狭状態でローラ支持部の下端縁を開口する孔溝開口部が形成されたロック孔溝と、
前記連通状態のロック孔、ロック孔溝に前後方向進退移動自在な状態で挿入組み込みされ、孔溝開口部の開口幅よりも太径となって孔溝開口部から抜け出ることが規制されるロック部、および孔溝開口部の開口幅よりも細径となって孔溝開口部から抜け出ることが許容されるロック解除部が前後に並設された棒状のロック体と、を備えて構成され、
該ロック体を、ロック部が孔溝開口部に位置するロック位置と、ロック解除部が孔溝開口部に位置するロック解除位置とに前後方向何れか一方の押し引き操作をすることでロック手段のロック、ロック解除の切り換えができるように構成したことを特徴とする円弧状ドア装置におけるドア体の緊急開放構造。
【請求項2】
ロック体は、ロック位置に位置する状態ではロック解除部がロック孔溝よりも前側に位置し、後方に押し込み操作することでロック解除部がロック孔溝位置に移動してロック解除されることを特徴とする請求項1記載の円弧状ドア装置におけるドア体の緊急開放構造。
【請求項3】
ロック体の前端部に設けられる操作部とドア体の表面板とのあいだには、ロック体をロック解除位置に押し込み操作するための押し込みスペースが設けられ、
ロック体の押し込みスペース部位に、ロック体のロック解除位置への押し込み操作を規制する規制具が着脱自在に設けられていることを特徴とする請求項2記載の円弧状ドア装置におけるドア体の緊急開放構造。
【請求項4】
ロック体は、ロック位置に位置する状態ではロック解除部がロック孔溝よりも後側に位置し、前方に引き出し操作することでロック解除部がロック孔溝位置に移動してロック解除されることを特徴とする請求項1記載の円弧状ドア装置におけるドア体の緊急開放構造。
【請求項5】
ロック体の前端部に設けられる操作部は、ロック体がロック位置に位置する状態ではドア体の表面板に面接触または近接対向する状態で設けられ、
ロック体は、操作部とドア体表面板とのあいだに工具を差し込むことで前方のロック解除位置に移動するように構成されることを特徴とする請求項4記載の円弧状ドア装置におけるドア体の緊急開放構造。
【請求項6】
ロック部のロック解除部に隣接する周縁部には、ロック体がロック位置からロック解除位置に切り換え操作される際に孔溝部の周縁部が乗り越えることで操作抵抗を付与する突状部が形成されていることを特徴とする請求項1記載の円弧状ドア装置におけるドア体の緊急開放構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、トイレブースやシャワーブース等の仕切られたブース(小部屋)の出入り口に設けられる円弧状ドア装置におけるドア体の緊急開放構造の技術分野に関するものである。
【背景技術】
【0002】
今日、トイレブース等の仕切られたブースの出入り口に設けられるドア装置のなかには、円弧状のドア体を円弧軌跡に沿ってスライド移動させることで出入り口の開閉をするようにした所謂円弧状のドア装置が知られている。このような円弧状のドア装置は、左右方向に開き操作する引き戸方式でありながら、ドア体の開閉スペースを、左右直線軌跡に沿って開閉移動させるものに比して狭くできるという利点があり、トイレブース等の狭いブースに採用されることが多い。
ところがこのようなドア装置において、ドア体を開閉するための円弧軌跡がブース内に入り込むように構成されることが一般的であり、このようなものでは、ブース内にいる人が何らかの理由により倒れたりした等の緊急事態が発生したとき、ドア体を緊急開放することになるが、該倒れた人が障害物になる等して邪魔になってドア体の緊急開放ができなくなる惧れがある。
そこでこのような円弧状ドア装置では、ドア体がハンガー方式のものである場合、ハンガーレールを転動するローラ部が設けられたハンガーローラ具を、ドア体上端縁部の戸先側と戸尻側との左右二か所に設けたものとしているが、該ハンガーローラ具を、ドア体に対して上下方向抜き差し自在に組み込む構成にし、かつ該ドア体に組み込まれたハンガーローラ具の抜け止めをするロック機構を設けたものにして、緊急事態が発生した場合にロック機構のロック解除操作をした後、左右のハンガーローラ具をドア体から抜き出すことでドア体を取り外せる構成にし、これによってドア体の緊急開放をしてブース内にいる人を救助できるようにしたものが知られている(例えば特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第4343331号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところが前記従来のものは、ドア体を緊急開放するため、ロック手段を構成するロック体を、ロック姿勢からロック解除姿勢に回動操作することになるが、ロック体は、単純にドア体側に設けられる丸孔状のロック孔に挿入されたものをドア体の開閉移動方向を向いた回動操作する構成になっているため、ロック姿勢のロック体が、開閉移動時の振動等によって不用意な回動をしてロック解除姿勢に変姿してしまうことが想定され、平常時にこの様になった場合、ドア体の通常の開閉操作ができなくなってしまう等の問題があり、これらに本発明の解決すべき課題がある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、上記の如き実情に鑑みこれらの課題を解決することを目的として創作されたものであって、請求項1の発明は、戸先側、戸尻側のパネル体間に形成される出入り口部の開閉をする円弧状をしたハンガー式のドア体と、該ドア体の戸先側、戸尻側の上端縁部に設けられる一対のハンガーローラ具と、ドア体の円弧軌跡に沿った開閉案内をする円弧状のハンガーレールとを備えて構成される円弧状ドア装置において、前記ハンガーローラ具を、ドア体の上端縁部に設けられる筒状のブラケット部と、該ブラケット部に対して上下方向抜き差し自在に嵌入組み込みされるローラ支持部と、ハンガーレールを転動する状態でローラ支持部に設けられるローラ部と、前記ブラケット部に嵌入組み込みされたローラ支持部の抜き差し移動のロックをするロック手段とが備えられ、ドア体の緊急開放を、ロック手段のロック解除状態でドア体を下動せしめることに基づいて行うように構成するにあたり、ロック手段は、ブラケット部に形成されるロック孔と、ローラ支持部に形成され、該ローラ支持部がロック位置に位置する状態で前記ロック孔と前後方向に連通する孔溝部、および該孔溝部の孔幅よりも幅狭状態でローラ支持部の下端縁を開口する孔溝開口部が形成されたロック孔溝と、前記連通状態のロック孔、ロック孔溝に前後方向進退移動自在な状態で挿入組み込みされ、孔溝開口部の開口幅よりも太径となって孔溝開口部から抜け出ることが規制されるロック部、および孔溝開口部の開口幅よりも細径となって孔溝開口部から抜け出ることが許容されるロック解除部が前後に並設された棒状のロック体と、を備えて構成され、該ロック体を、ロック部が孔溝開口部に位置するロック位置と、ロック解除部が孔溝開口部に位置するロック解除位置とに前後方向何れか一方の押し引き操作をすることでロック手段のロック、ロック解除の切り換えができるように構成したことを特徴とする円弧状ドア装置におけるドア体の緊急開放構造である。
請求項2の発明は、ロック体は、ロック位置に位置する状態ではロック解除部がロック孔溝よりも前側に位置し、後方に押し込み操作することでロック解除部がロック孔溝位置に移動してロック解除されることを特徴とする請求項1記載の円弧状ドア装置におけるドア体の緊急開放構造である。
請求項3の発明は、ロック体の前端部に設けられる操作部とドア体の表面板とのあいだには、ロック体をロック解除位置に押し込み操作するための押し込みスペースが設けられ、ロック体の押し込みスペース部位に、ロック体のロック解除位置への押し込み操作を規制する規制具が着脱自在に設けられていることを特徴とする請求項2記載の円弧状ドア装置におけるドア体の緊急開放構造である。
請求項4の発明は、ロック体は、ロック位置に位置する状態ではロック解除部がロック孔溝よりも後側に位置し、前方に引き出し操作することでロック解除部がロック孔溝位置に移動してロック解除されることを特徴とする請求項1記載の円弧状ドア装置におけるドア体の緊急開放構造である。
請求項5の発明は、ロック体の前端部に設けられる操作部は、ロック体がロック位置に位置する状態ではドア体の表面板に面接触または近接対向する状態で設けられ、ロック体は、操作部とドア体表面板とのあいだに工具を差し込むことで前方のロック解除位置に移動するように構成されることを特徴とする請求項4記載の円弧状ドア装置におけるドア体の緊急開放構造である。
請求項6の発明は、ロック部のロック解除部に隣接する周縁部には、ロック体がロック位置からロック解除位置に切り換え操作される際に孔溝部の周縁部が乗り越えることで操作抵抗を付与する突状部が形成されていることを特徴とする請求項1記載の円弧状ドア装置におけるドア体の緊急開放構造である。
【発明の効果】
【0006】
請求項1の発明とすることにより、円弧状をしたドア体に設けられ、ドア体の緊急開放をするため設けられたロック手段において、該ロック手段をロック姿勢からロック解除姿勢にするための操作が、ロック体をドア体の左右の開閉方向とは直行する前後方向に押し引き操作することでできるものとなり、この結果、ロック体が開閉移動するドア体の振動等を受けて不用意にロック解除方向に移動してロック解除姿勢になってしまうことが回避されることになる。
請求項2の発明とすることにより、ロック体のロック解除姿勢への操作が、後方に向けて押し込み操作する簡単な操作でできることになって、緊急事態が発生した際のドア体の緊急開放を迅速にすることができる。
請求項3の発明とすることにより、ロック体をドア体の前面側から後方に押し込み操作することでロック解除姿勢にできるものである場合に、ロック体の押し込みスペース部位に規制具が着脱自在に設けられている結果、平常時において不用意にロック体を押し込み操作されることが回避されることになる。
請求項4の発明とすることにより、ロック体のロック解除姿勢への操作が、前方に向けて引き出し操作する簡単な操作でできることになって、緊急時においてのドア体の緊急開放を迅速にすることができる。
請求項5の発明とすることにより、ロック体を前方に引き出し操作することでロック解除姿勢にできるものである場合に、ロック体の引き出し操作が、ロック体の操作部とドア体表面板とのあいだに工具を差し込むことでできる結果、平常時において不用意にロック体の引き出し操作が回避されながら、緊急時においてのドア体の緊急開放を迅速にすることができる。
請求項6の発明とすることにより、ロック体をロック姿勢からロック解除姿勢に向けて押し引き操作する場合に、ロック体に設けた突状部を乗り越えることで発生する操作抵抗に抗した操作が必要になり、この結果、ロック体が不用意に押し引き操作されてロック解除姿勢になることがより一層回避されることになる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】トイレブースの正面図である。
図2】トイレブースの平面図である。
図3】トイレブースの拡大平面図である。
図4】ドア体を緊急開放位置まで移動した状態を示す平面図である。
図5】ドア体を緊急開放した状態を示す平面図である。
図6】(A)(B)(C)はドア体のハンガーローラ具部位の平面図、正面図、斜視図である。
図7】(A)(B)(C)(D)はドア体のハンガーローラ具部位のロック状態の正面図、規制具を取り外した状態の正面図、ロック解除状態の正面図、ローラ支持部が取り外された状態の正面図である。
図8】(A)(B)(C)はドア体のハンガーローラ具部位のロック状態の斜視図、規制具を取り外した状態の斜視図、ローラ支持部が取り外された状態の斜視図である。
図9】(A)(B)(C)(D)(E)はロック体の側面図、平面図、正面図、斜視図、分解した状態の斜視図である。
図10】(A)(B)(C)はドア体のハンガーローラ具部位のロック状態の断面側面図、規制具を取り外した状態の断面側面図、ロック解除した状態の断面側面図である。
図11】(A)(B)はドア体のハンガーローラ具部位のローラ支持部が抜け出ようとする過程の断面側面図、ローラ支持部が取り外された状態の断面側面図である。
図12】第二の実施の形態を示すものであって、(A)(B)(C)はドア体のハンガーローラ具部位のロック状態の断面側面図、ロック解除をした状態の断面側面図、ローラ支持部が取り外された状態の断面側面図である。
図13】第三の実施の形態を示すものであって、(A)(B)(C)(D)(E)はドア体のハンガーローラ具部位のロック状態の断面側面図、ドア体の前面側の規制具を取り外した状態の断面側面図、ロック体をドア体の前面側から押し込んだ状態を示す断面側面図、ドア体の後面側の規制具を取り外した状態の断面側面図、ロック体を後面側から押し込んだ状態を示す断面側面図である。
図14】第四の実施の形態を示すものであって、(A)(B)はドア体のハンガーローラ具部位のロック状態の断面側面図、ロック解除状態に移行する過程の断面側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本発明の実施の形態について、図面に基づいて説明する。図面において、1は円弧状をしたハンガー式のドア体(戸体)であって、該ドア体1は、トイレ用のブースBの正面に設けられる戸先側、戸尻側のパネル体(正面パネル体)2、3間に形成される出入り口部Eの開閉をする引き戸方式のものであって、ドア体1の上端縁部1cには、戸先側、戸尻側に一対のハンガーローラ具4、5が設けられ、該ハンガーローラ具4、5に設けたハンガーローラ6が、ブースBの上部に設けた円弧状のハンガーレール7のレール部7aに走行案内されることで、ドア体1が円弧軌跡に沿って左右方向(戸尻方向、戸先方向)に移動して出入り口部Eの開閉をするようになっていること等は何れも従来通りである。尚、図中、Tは便器、Wは壁面、13は前記正面の戸先側、戸尻側パネル体2、3と壁面Wとのあいだに設けられる袖パネル体(奥行きパネル体)である。
【0009】
前記ドア体1は、出入り口部Eを全閉する閉鎖姿勢では、戸先側端縁部1aが戸先側パネル体2よりもブースB内側に位置する状態で、該戸先側パネル体2に設けた戸当り体2aに当接する一方、戸尻側端縁部1bが戸尻側パネル体3よりもブースB内側に位置する状態で、該戸尻側パネル体3に近接対向する状態となっている。そしてこの閉鎖姿勢で、戸先側、戸尻側ハンガーローラ具4、5は、何れも戸先側、戸尻側パネル体2、3より出入り口部E側(左右方向内側)に位置するよう設定されている。
因みにドア体1は、閉鎖姿勢から出入り口部Eを全開する開放姿勢に操作した場合に、ハンガーレール7に案内されてブースB内の戸尻側部位に移動するよう設定されている。
【0010】
前記戸先側、戸尻側のハンガーローラ具4、5は、本実施の形態においては何れも同じ構造のものを採用しているが、ドア体1の上端縁部1cに設けた凵字形の嵌合溝1caに組み込みされるブラケット部8と、該ブラケット部8に上側から抜き差し自在に嵌入取り付けされるローラ支持部9とを備えて構成される。
【0011】
前記ブラケット部8は、前後(ブースBの外側、内側)片部8aa、左右片部8ab、底片部8acを有し、天面(上面)が開口部8bとなった有底角筒形状をしたブラケット本体部8aと、左右片部8abの上端縁部から左右方向外方に延出した取り付け片部8cとを備えて構成される。そしてブラケット部8は、ドア体1の戸先側、戸尻側の各上端縁部1cに設けた嵌合溝1caにブラケット本体部8aを嵌入し、取り付け片部8cをビス8dを介してドア体1の上端面に締結することで取り付けられる。
【0012】
一方、ローラ支持部9は、前後片部9aa、上片部9abを備えた冂字形をした支持本体部9aと、上片部9abから立設される縦軸9bと、該縦軸9bの上端縁部に該縦軸9bを軸心として揺動自在に軸支されるローラ軸支部9cとを備え、該ローラ軸支部9cに前記ハンガーローラ6が回転自在に設けられ、そして前述したようにハンガーローラ6がハンガーレール7のレール部7aを転動することでドア体1の開閉移動がなされるように構成されている。
【0013】
次に、ブラケット本体部8aに支持本体部9aが嵌入組み込みされたローラ支持部9の支持本体部9aに対する抜き差し移動のロックをするロック手段10の構成について説明する。
ドア体1の上端縁部1c、ブラケット本体部8aの前後片部8aa、そして支持本体部9aの前後片部9aaには、前記ブラケット本体部8aに支持本体部9aが嵌入組み込みされた状態で前後方向に一連状に連通するよう設定されたドア側貫通孔1d、ブラケット側貫通孔8e、そしてロック孔溝9dがそれぞれ形成されている。
そしてこれらドア側貫通孔1d、ブラケット側貫通孔8e、ロック孔溝9dは、後述するロック体11が嵌入して前後方向に押し引き移動できるよう略同径の孔径を有したものとなっているが、特にロック孔溝9dについては、ドア側貫通孔1dおよびブラケット側貫通孔8eと略同様の円弧形状をしたロック孔部9daと、該ロック孔部9daよりも幅狭となる状態で支持本体部9aの前後片部9aaの下端縁を開口するよう形成されたロック開口部9dbとを備えて構成されたものになっており、このように構成されることでロック孔溝9dは、下側のロック開口部9dbが幅狭で、溝奥側(上側)のロック孔部9daが幅広となった蟻溝形状となっている。
そしてロック孔溝9dは、前記ブラケット本体部8aに支持本体部9aが嵌入組み込みされた状態では、ロック孔部9daが、ドア側貫通孔1d、ブラケット側貫通孔8eと共に前後方向に一連状態で連通し、ロック開口部9dbが該連通部位の下側に位置するよう配置される設定になっている。
【0014】
一方、ロック手段10は円柱状のロック体11を備えるが、該ロック体11は、前記一連状に連通するロック孔部9da、ドア側貫通孔1d、ブラケット側貫通孔8eに対して前後方向押し引き自在に貫通するが、ロック開口部9dbの開口幅よりは大きい外径を有したものとなっている。
さらにロック体11には、ロック開口部9dbの開口幅よりは小さい(細い)外径となるよう切り欠き溝が形成されており、これによってロック体11には、切り欠き形成されていない太径のロック部11bと、切り欠き溝が形成されることで細径になったロック解除部11aとが形成されるが、該ロック解除部11aは、前記支持本体部9aの前後片部9aaの対向間の寸法に対応して一対が形成されている。
【0015】
またロック体11の前後両端縁部には、ドア側貫通孔1dよりも太径になった円板状の前後側鍔状部11c、11dが形成されるが、前側鍔状部11cはロック体11の前端縁に一体的に設けられ、後側鍔状部11dは、ロック体11の後端縁にビス11eを介して着脱自在に取り付けられる構成になっており、これによってロック体11は、後側鍔状部11dを取り外した状態でドア体1に抜き差し自在に取り付けられるように構成されている。
【0016】
そして前記ブラケット本体部8aに対して支持本体部9aが嵌入組み込みされた状態、つまりロック姿勢となった状態で、ロック体11は、前後方向一連状になったロック孔部9da、ドア側貫通孔1d、ブラケット側貫通孔8eに前後方向押し引き自在に貫通組み込みされている。この貫通状態のロック体11を、ロック部11bが該前側片部9aa位置に位置し、ロック解除部11aが支持本体部9aの前後片部9aaよりも前側に位置するようセットされるロック位置に位置せしめた状態では、ロック体11の太径部位であるロック部11bがロック孔溝9dを貫通している状態となっており、この結果、ローラ支持部9は、太径のロック部11bが細幅のロック開口部9dbから抜け出ることが規制されたロック状態となってブラケット部8から抜け出ることがロックされる。
【0017】
これに対し、ロック体11をブースB内側(後方側)に向けて押し込み操作して、ロック解除部11aが支持本体部9aの前後片部9aa位置に位置し、ロック部11bが前後片部9aaから位置ずれしたロック解除位置に変位せしめると、ローラ支持部9は、細径のロック解除部11aが細径のロック開口部9dbから抜け出ることができるロック解除状態となってブラケット部8から抜け出ることになる。
【0018】
このロック体11のロック位置からロック解除位置への押し込み操作は、前側鍔状部11cを押し込み操作することで実行されることになり、このためロック体11は、前記ロック位置に位置する状態では、前記押し込み操作を可能とするべく、前側鍔状部11cとドア体1の前面板1eとのあいだに押し込みスペースSが設けられているが、該押し込みスペースSが隙間のある状態のままの場合、手を突く等して不用意にロック体11の押し込み操作がなされることが想定され、そこで前記押し込みスペースSを封止するべく、前側鍔状部11cと前面板1eとのあいだに嵌入してロック体11に着脱自在に取り付けられる規制具12が設けられたものとなっている。そして常時は規制具12が取り付けられた状態として、ロック体11の押し込み操作ができないよう規制されたものとしておき、そして緊急事態が発生した場合、規制具12を取り外した状態にして前側鍔状部11cを押し込み操作することでローラ支持部9をブラケット部8から抜き取ることができるように構成される。
【0019】
そして本実施の形態においては、ブースB内において人が倒れる等の緊急事態が発生してドア体1を緊急開放する場合に、閉鎖姿勢のドア体を僅か(例えばドア体1の戸先側端縁部1aが戸先側パネル体2に設けた戸当り体2aとのあいだに指1本が入るくらいの状態)だけ開放側に操作し、この状態で戸先側ハンガーローラ具4について、ロック手段10に設けられる規制具12を取り外した後、前側鍔状部11cを押し込み操作してロック手段10をロック姿勢からロック解除姿勢にすると、該戸先側ハンガーローラ具4は、ドア体1の自重を受ける状態でローラ支持部9がブラケット部8から抜け出る相対的な上下移動をすることになってローラ支持部9とブラケット部8とが離間する一方で、戸尻側ハンガーローラ具5はロック姿勢のままの非離間状態となり、ドア体1は、戸尻側ハンガーローラ具5k縦軸9bによる片持ち支持状態となる。
この戸先側の離間状態で、ドア体1の戸先側部位をブースBの外側に向けて引き操作(開き操作)すると、ドア体1は、戸尻側ハンガーローラ具5の縦軸9bを軸心としてブースB外側に開き作動することになってドア体1の緊急開放ができるように構成される。
因みに本実施の形態においては、戸尻側ハンガーローラ具5についても、戸先側ハンガーローラ具4と同じ構成のものを採用しているため、戸尻側ハンガーローラ具5についても、ロック手段10をロック解除姿勢にしてローラ支持部9をブラケット部8から抜き出すようにしても勿論良い。
【0020】
叙述の如く構成された本実施の形態において、戸先側、戸尻側のパネル体2、3間に形成される出入り口部Eの開閉をする円弧状をしたハンガー式のドア体1を緊急開放する場合に、戸先側のハンガーローラ具4に設けられるロック手段10をロック姿勢からロック解除姿勢に操作することで、該戸先側ハンガーローラ具4は、自重を受けて下動するドア体1側のブラケット部8からハンガーレール7に支持されるローラ支持部9側が抜け出ることになり、これによってドア体1は、戸尻側ハンガーローラ具5の縦軸9bによって片持ち支持された傾斜状態になる。
この片持ち支持された状態のドア体1を、該戸尻側縦軸9bを揺動支軸として手前側に開き操作することで、該ドア体1の緊急開放ができることになる。
【0021】
このようにしてドア体1の緊急開放ができることになるが、前記ロック手段10をロック姿勢からロック解除姿勢に変姿する操作としては、まず規制具12をロック体11から取り外すことで、前側鍔状部11cとドア体1の前面板1eとのあいだの押し込みスペースSに規制具12のない空隙が確保された状態となり、この状態でドア体1の前面から前側鍔状部11cを後方側、つまりブースB内側に向けて押し込み操作してロック解除姿勢に操作することになる。
この場合にロック体11は、ロック姿勢となっている場合には、ロック孔溝9dのロック孔部9daの内周縁に太径のロック部11bが当接することでロック開口部9dbからは抜け止めされた状態になっているが、このロック姿勢の状態から前記ロック体11の押し込み操作をすると、ロック孔溝9d位置には細径のロック解除部11aが移動してくることになる。
この結果、ロック体11は、ロック解除部11aがロック開口部9dbから抜け出ることができることになり、ドア体1は、戸先側のハンガーローラ具4のブラケット部8からローラ支持部9が相対的に抜け出ることを受けて下動して前述したように戸尻側ハンガーローラ具5の縦軸9bによって片持ち支持された状態となる。
【0022】
このように本発明が実施されたものでは、戸先側のハンガーローラ具4に設けたロック手段10をロック解除姿勢に操作することを受けてドア体1が下動したことに基づいてドア体1の緊急開放ができることになるが、ロック体11をロック姿勢からロック解除姿勢への変姿操作が、従来のように前後軸を軸心とする回転操作ではなく、ドア体1の移動方向とは直行する前後方向の押し込み操作となり、この結果、ロック体11が開閉移動するドア体1の振動等を受けて不用意にロック解除方向に移動してロック解除姿勢になってしまうことが回避されることになる。
【0023】
しかもこの場合に、ロック体11のロック解除姿勢への操作が、ブースB内側である後方に向けての押し込み操作という簡単な操作でできることになって、緊急事態が発生した際のドア体1の緊急開放を迅速にすることができる。
そのうえこのものでは、ロック体11を後方に押し込み操作することでロック解除姿勢にできるが、そのためロック体11の前端部に操作部となって機能する前側鍔状部11cとドア体1の前面板1eとのあいだに押し込みスペースSが必要になるが、この押し込みスペースSは、規制体12が着脱自在に設けられたものとなっている結果、平常時において不用意にロック体11を押し込み操作されることが回避されることになる。
【0024】
本発明は、前記実施の形態に限定されないものであることは勿論であり、例えばロック体11としては、前記実施の形態においては押し込み操作をすることでロック姿勢からロック解除姿勢にするものでなく、逆にロック体11を手前に引き出す操作をすることでロック姿勢からロック解除姿勢に操作できるようにすることもできる。
この場合には、図12に示す第二の実施の形態のように、操作部となる前側鍔状部11cとドア体1の前面板1eとは当接した状態(隙間のない状態)としたものとする一方、ドア体1の後面板1fと後側鍔状部11dとのあいだに引き出しスペースSaが設けられたものとしておき、そしてドア体1を緊急開放したい場合には、前側鍔状部11cを適宜工具を用いて引っ張るか、前側鍔状部11cとドア体1の前面板1eとのあいだに適宜工具を挿入して引き出し操作することでロック体11がドア体1の前側に引き出し移動することになり、この移動によって、ロック解除部11bがロック孔溝9d位置に移動することになってロック解除姿勢になるように構成されている。
【0025】
さらに本発明を実施するにあたり、前記実施の形態では、ドア体1の前側からロック解除ができるようにしたものについて説明をしたが、場合によってはブースB内側からロック解除できるようにすることが要求されることが想定され、この場合には、図13に示す第三の実施の形態のように、ロック体11に形成される太径のロック部11bの前後両側に細径のロック解除部11aa、11abが形成されたものとする一方、ロック体11の前側鍔状部11cとドア体1の前面板11eとのあいだに押し込みスペースSが形成され、後側鍔状部11dと後面板1fとのあいだに押し込みスペースSaが形成されたものとし、そしてこれらスペースS、Saにそれぞれ規制具12が設けられたものとしておく。
【0026】
そしてドア体1を緊急開放する場合に、ドア体1の前側からのロック解除操作は、前側の規制具12を取り外し、該前側鍔状部11cの後方への押し込み操作をすることで、前記同様、前側のロック解除部11aaがロック孔溝9d位置に移動してロック解除がなされる。
一方、ドア体1の後側(ブースB内側)からのロック解除操作は、後側の規制具12を取り外し、該後側鍔状部11dを前方に押し込み操作をすることで、後側のロック解除部11abがロック孔溝9d位置に移動してロック解除がなされるように構成したものであり、このようにすることで、前後何れの側からもロック解除をして緊急的なドア体1の開放操作をすることができることになる。
【0027】
さらにまた、図14に示す第四の実施の形態のように、ロック体11を、ロック部11bのロック解除部11aに隣接する周縁部に、ロック体11をロック位置からロック解除位置に操作する際にロック孔溝9dの周縁部が乗り越えることで操作抵抗を付与する突状部11fが形成されたものとすることができ、このようにすることで、ロック体11が不用意にロック解除姿勢になることの防止がより確実なものとなる。
【産業上の利用可能性】
【0028】
本発明は、トイレブースやシャワーブース等の仕切られたブース(小部屋)の出入り口に設けられる円弧状ドア装置におけるドア体の緊急開放構造として利用することができる。
【符号の説明】
【0029】
1 ドア体
1c上端縁部
1ca 嵌合溝
1e 前面板
1f 後面板
2 戸先側パネル体
3 戸尻側パネル体
4 戸先側ハンガーローラ具
5 戸尻側ハンガーローラ具
6 ハンガーローラ
7 ハンガーレール
8 ブラケット部
8a ブラケット本体部
8e ブラケット側貫通孔
9 ローラ支持部
9a 支持本体部
9b 縦軸
9c ローラ軸支部
9d ロック孔溝
9da ロック孔部
9db ロック開口部
10 ロック手段
11 ロック体
11a ロック解除部
11b ロック部
11c 前側鍔状部
11d 後側鍔状部
12 規制具
B ブース
E 出入り口部
S、Sa 押し込みスペース
図1
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図14