(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024119116
(43)【公開日】2024-09-03
(54)【発明の名称】蓄電デバイスの製造方法ならびに蓄電デバイス用セパレータ
(51)【国際特許分類】
H01M 50/46 20210101AFI20240827BHJP
H01M 50/449 20210101ALI20240827BHJP
H01M 50/463 20210101ALI20240827BHJP
H01M 10/04 20060101ALI20240827BHJP
H01M 10/0525 20100101ALI20240827BHJP
H01M 10/0587 20100101ALI20240827BHJP
H01G 11/52 20130101ALI20240827BHJP
H01G 11/86 20130101ALI20240827BHJP
H01M 50/414 20210101ALI20240827BHJP
H01M 6/10 20060101ALN20240827BHJP
H01M 6/16 20060101ALN20240827BHJP
【FI】
H01M50/46
H01M50/449
H01M50/463 B
H01M10/04 W
H01M10/0525
H01M10/0587
H01G11/52
H01G11/86
H01M50/414
H01M6/10 Z
H01M6/16 D
【審査請求】有
【請求項の数】14
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023025775
(22)【出願日】2023-02-22
(71)【出願人】
【識別番号】520184767
【氏名又は名称】プライムプラネットエナジー&ソリューションズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100117606
【弁理士】
【氏名又は名称】安部 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100121186
【弁理士】
【氏名又は名称】山根 広昭
(74)【代理人】
【識別番号】100130605
【弁理士】
【氏名又は名称】天野 浩治
(72)【発明者】
【氏名】伊勢田 泰助
(72)【発明者】
【氏名】西田 晶
【テーマコード(参考)】
5E078
5H021
5H024
5H028
5H029
【Fターム(参考)】
5E078AB02
5E078AB13
5E078BA27
5E078BA44
5E078BA53
5E078CA01
5E078CA06
5E078CA07
5E078CA10
5E078CA12
5E078DA03
5E078DA06
5H021AA06
5H021BB11
5H021EE32
5H021HH01
5H021HH03
5H021HH04
5H021HH10
5H024BB05
5H024BB09
5H024BB14
5H024CC02
5H024CC07
5H024CC12
5H024CC17
5H024DD09
5H024HH01
5H024HH13
5H024HH15
5H028AA05
5H028BB00
5H028BB04
5H028BB07
5H028CC07
5H028CC08
5H028HH01
5H028HH05
5H029AJ14
5H029AK03
5H029AL07
5H029AM03
5H029AM07
5H029BJ02
5H029BJ14
5H029CJ03
5H029CJ05
5H029CJ07
5H029DJ04
5H029HJ04
5H029HJ07
5H029HJ12
(57)【要約】
【課題】巻回電極体を備えた蓄電デバイスを生産性高く得ることができる技術を提供すること。
【解決手段】ここで開示される蓄電デバイス(例えば、電池)の製造方法の一態様では、正極22と、負極24とを、セパレータ26を介して巻回し、巻回体20Aを製造する巻回工程S2と、巻回工程S2の後、巻回体20Aをプレス成形し扁平状の巻回電極体20a,20b,20cとするプレス工程S3と、を包含し、巻回工程S2において、少なくとも一方の表面に部分的に接着層6を有するセパレータを用い、接着層6は、第1接着領域6Aと、第2接着領域6Bと、を含み、第1接着領域6Aの厚みT1は、第2接着領域6Bの厚みT2の1.5倍以上である。また、ここでは、巻回工程S2の前に、形成工程S1をさらに包含する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
帯状の第1電極と、帯状の第2電極とが、帯状のセパレータを介して巻回された扁平状の巻回電極体を備えた蓄電デバイスの製造方法であって、
前記第1電極と、前記第2電極とを、前記セパレータを介して巻回し、巻回体を製造する巻回工程と、
前記巻回工程の後、前記巻回体をプレス成形し扁平状の巻回電極体とするプレス工程と、
を包含し、
前記巻回工程において、少なくとも一方の表面に部分的に接着層を有するセパレータを用い、
前記接着層は、第1接着領域と、第2接着領域と、を含み、
前記第1接着領域の厚みT1は、前記第2接着領域の厚みT2の1.5倍以上である、蓄電デバイスの製造方法。
【請求項2】
帯状の第1電極と、帯状の第2電極とが、帯状のセパレータを介して巻回された扁平状の巻回電極体を備えた蓄電デバイスの製造方法であって、
前記第1電極と、前記第2電極とを、前記セパレータを介して巻回し、巻回体を製造する巻回工程と、
前記巻回工程の後、前記巻回体をプレス成形し扁平状の巻回電極体とするプレス工程と、
を包含し、
前記巻回工程において、少なくとも一方の表面に部分的に接着層を有するセパレータを用い、
前記接着層は、第1接着領域と、第2接着領域と、を含み、
前記第1接着領域の厚みは、前記第2接着領域の厚みよりも大きく、
前記巻回工程において、前記第1接着領域と前記第1電極とが接着され、
前記プレス工程において、前記第2接着領域と前記第1電極とが接着される、蓄電デバイスの製造方法。
【請求項3】
平面視において、前記接着層はドット状に配置されている、請求項1または2に記載の蓄電デバイスの製造方法。
【請求項4】
平面視において、前記接着層は線状に配置されている、請求項1または2に記載の蓄電デバイスの製造方法。
【請求項5】
平面視において、前記セパレータの片面の面積に対する、該セパレータの片面における前記接着層の形成面積の比は、0.005~0.5である、請求項1または2に記載の蓄電デバイスの製造方法。
【請求項6】
平面視において、前記接着層の面積に対する、前記第1接着領域の形成面積の比は、0.2~0.8である、請求項1または2に記載の蓄電デバイスの製造方法。
【請求項7】
前記第1接着領域を構成する樹脂のうち主体となる成分と、前記第2接着領域を構成する樹脂のうち主体となる成分とが同じである、請求項1または2に記載の蓄電デバイスの製造方法。
【請求項8】
前記巻回工程の前に、前記セパレータの表面のうち少なくとも一方の表面に前記接着層を形成する形成工程を有する、請求項1または2に記載の蓄電デバイスの製造方法。
【請求項9】
少なくとも一方の表面に部分的に接着層を有するセパレータであって、
前記接着層は、第1接着領域と、第2接着領域とを含み、
前記第1接着領域の厚みT1は、前記第2接着領域の厚みT2の1.5倍以上である、蓄電デバイス用セパレータ。
【請求項10】
平面視において、前記接着層はドット状に配置されている、請求項9に記載の蓄電デバイス用セパレータ。
【請求項11】
平面視において、前記接着層は線状に配置されている、請求項9に記載の蓄電デバイス用セパレータ。
【請求項12】
平面視において、前記セパレータの片面の面積に対する、該セパレータの片面における前記接着層の形成面積の比は、0.005~0.5である、請求項9または10に記載の蓄電デバイス用セパレータ。
【請求項13】
平面視において、前記接着層の面積に対する、前記第1接着領域の形成面積の比は、0.2~0.8である、請求項9または10に記載の蓄電デバイス用セパレータ。
【請求項14】
前記第1接着領域を構成する樹脂のうち主体となる成分と、前記第2接着領域を構成する樹脂のうち主体となる成分とが同じである、請求項9または10に記載の蓄電デバイス用セパレータ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、蓄電デバイスの製造方法ならびに蓄電デバイス用セパレータに関する。
に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、特許第5328034号公報には、正極、負極、およびセパレータを有する巻回電極体を備えた電池であって、該セパレータの表面に接着性樹脂を含む耐熱多孔質層を有する電池が開示されている。かかる巻回電極体は、正極と負極とを、セパレータを介して配置して重ね、巻回し、扁平状に押しつぶすことによって作製する旨、記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、本発明者らの検討によると、各部材を巻回する際に、上述したような接着性樹脂を有するセパレータと電極とが強く接着すると、巻回体を押しつぶして変形する際に、該セパレータと該電極との位置関係が適切に変化しないことがあり、これによって、該セパレータに歪みやしわ等が生じるおそれがあることが分かった。一方、セパレータがかかる接着性樹脂を有さない場合、巻回体に巻きずれが生じるおそれがある。こららは、生産性等の観点から好ましくない。即ち、上述したような接着層を有する巻回電極体を備えた蓄電デバイス(例えば、電池)の製造において、生産性の向上という観点から、まだまだ改善の余地があることがわかった。
【0005】
本開示は、かかる事情に鑑みてなされたものであり、その主な目的は、巻回電極体を備えた蓄電デバイスを生産性高く得ることができる技術を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
かかる目的を実現すべく、ここで開示される蓄電デバイスの製造方法は、帯状の第1電極と、帯状の第2電極とが、帯状のセパレータを介して巻回された扁平状の巻回電極体を備えた蓄電デバイスの製造方法であって、上記第1電極と、上記第2電極とを、上記セパレータを介して巻回し、巻回体を製造する巻回工程と、上記巻回工程の後、上記巻回体をプレス成形し扁平状の巻回電極体とするプレス工程と、を包含し、上記巻回工程において、少なくとも一方の表面に部分的に接着層を有するセパレータを用い、上記接着層は、第1接着領域と、第2接着領域と、を含む。そして、上記第1接着領域の厚みT1は、上記第2接着領域の厚みT2の1.5倍以上である。詳細については後述するが、かかる構成の蓄電デバイスの製造方法によると、巻回電極体を備えた蓄電デバイスを生産性高く得ることができる。
【0007】
また、かかる目的を実現すべく、ここで開示される他の蓄電デバイスの製造方法は、帯状の第1電極と、帯状の第2電極とが、帯状のセパレータを介して巻回された扁平状の巻回電極体を備えた蓄電デバイスの製造方法であって、上記第1電極と、上記第2電極とを、上記セパレータを介して巻回し、巻回体を製造する巻回工程と、上記巻回工程の後、上記巻回体をプレス成形し扁平状の巻回電極体とするプレス工程と、を包含し、上記巻回工程において、少なくとも一方の表面に部分的に接着層を有するセパレータを用い、上記接着層は、第1接着領域と、第2接着領域と、を含み、上記第1接着領域の厚みは、上記第2接着領域の厚みよりも大きい。そして、上記巻回工程において、上記第1接着領域と上記第1電極とが接着され、上記プレス工程において、上記第2接着領域と上記第1電極とが接着される、蓄電デバイスの製造方法を提供する。詳細については後述するが、かかる構成の蓄電デバイスの製造方法によると、巻回電極体を備えた蓄電デバイスを生産性高く得ることができる。
【0008】
また、他の側面から、本開示は、少なくとも一方の表面に部分的に接着層を有するセパレータであって、上記接着層は、第1接着領域と、第2接着領域とを含み、上記第1接着領域の厚みT1は、上記第2接着領域の厚みT2の1.5倍以上である、蓄電デバイス用セパレータを提供する。詳細については後述するが、かかる構成の蓄電デバイス用セパレータによると、巻回電極体を備えた蓄電デバイスを生産性高く得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】第1の実施形態および第2の実施形態に係る電池の製造方法について説明するためのフローチャートである。
【
図2】一実施形態に係る巻回電極体の製造方法について説明するための説明図である。
【
図3】一実施形態に係る接着層形成後のセパレータを上面から視たときの模式図である。
【
図4】一実施形態に係るプレス工程前の巻回体を示す模式図である。
【
図5】一実施形態に係るプレス工程後の巻回体を示す模式図である。
【
図6】一実施形態に係る巻回工程前のセパレータの態様を示す模式図である。
【
図7】一実施形態に係る巻回工程後におけるセパレータの態様を示す模式図である。
【
図8】一実施形態に係るプレス工程後におけるセパレータの態様を示す模式図である。
【
図9】一実施形態に係る電池を模式的に示す斜視図である。
【
図10】
図9中のX-X線に沿う模式的な縦断面図である。
【
図11】
図9中のXI-XI線に沿う模式的な縦断面図である。
【
図12】
図9中のXII-XII線に沿う模式的な横断面図である。
【
図13】封口板に取り付けられた巻回電極体を模式的に示す斜視図である。
【
図14】正極第2集電部と負極第2集電部が取り付けられた巻回電極体を模式的に示す斜視図である。
【
図15】一実施形態に係る電池の巻回電極体の構成を示す模式図である。
【
図16】一実施形態に係る正極と負極とセパレータとの界面を模式的に示す拡大図である。
【
図18】
図17中のXVIII-XVIII線に沿う模式的な縦断面図である。
【
図20】
図19中のXX-XX線に沿う模式的な縦断面図である。
【
図22】
図21中のXXII-XXII線に沿う模式的な縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、ここで開示される技術のいくつかの実施形態について図面を参照しながら説明する。以下の説明は、当然のことながら、ここで開示される技術を以下の実施形態に限定することを意図したものではない。以下の図面においては、同じ作用を奏する部材・部位には同じ符号を付して説明している。また、各図における寸法関係(長さ、幅、厚さ等)は実際の寸法関係を反映するものではない。なお、本明細書において特に言及している事項以外の事柄であって、ここで開示される技術の実施に必要な事柄(例えば、本発明を特徴付けない電池の一般的な構成および製造プロセス)は、当該分野における従来技術に基づく当業者の設計事項として把握され得る。ここで開示される技術は、本明細書に開示されている内容と当該分野における技術常識とに基づいて実施することができる。なお、本明細書において範囲を示す「A~B」の表記は、「A以上B以下」を意味する。また、「Aを超える」および「B未満」の意を包含するものとする。
【0011】
なお、本明細書において「蓄電デバイス」とは、充電と放電とを行うことができるデバイスをいう。蓄電デバイスには、一次電池、二次電池(例えば、リチウムイオン二次電池等の非水電解質二次電池、ニッケル水素電池)等の電池と、電気二重層キャパシタ等のキャパシタ(物理電池)とが包含される。また、電解質は、液状電解質(電解液)、ゲル状電解質、固体電解質のいずれであってもよい。
【0012】
以下、ここで開示される蓄電デバイスの一実施形態であるリチウムイオン二次電池(以下、単に「電池100」ともいう)の製造方法を例に本技術について説明する。なお、以下では、第1電極を正極22、第2電極を負極24とした場合について説明するが、ここで開示される技術は、例えば第1電極を負極24、第2電極を正極22とした場合についても適用することができる。ここで開示される電池の製造方法は、任意の段階でさらに他の工程を含んでもよいし、その工程が必須なものとして説明されていなければ適宜削除することも可能である。また、ここで開示される技術の効果が発揮される限りにおいて、工程の順序を入れ替えることもできる。
【0013】
<概要>
ここで開示される電池の製造方法は、帯状の第1電極(ここでは、正極22)と、帯状の第2電極(ここでは、負極24)とが、帯状のセパレータ26(ここでは、第1セパレータ26S1および第2セパレータ26S2)を介して巻回された扁平状の巻回電極体(ここでは、巻回電極体20a,20b,20c)を備えた電池100の製造方法である。また、第1電極(ここでは、正極22)と、第2電極(ここでは、負極24)とを、セパレータ26(ここでは、第1セパレータ26S1および第2セパレータ26S2)を介して巻回し、巻回体20Aを製造する巻回工程(ステップS2)と、上記巻回工程の後、巻回体20Aをプレス成形し扁平状の巻回電極体(ここでは、巻回電極体20a,20b,20c)とするプレス工程(ステップS3)と、を包含する。そして、上記巻回工程において、少なくとも一方の表面に部分的に接着層6を有するセパレータを用い、接着層6は、第1接着領域6Aと、第2接着領域6Bと、を含み、第1接着領域6Aの厚みT1は、第2接着領域6Bの厚みT2よりも大きい。
【0014】
上述したように、例えばプレス工程において電極とセパレータとの位置関係が変化する際に、該電極と該セパレータとが強く接着されていると、該電極と該セパレータとの位置関係が適切に変化しないことがある。これによって、セパレータに歪みやしわ等が生じるおそれがあることが分かった。これに対して、上述したような電池100の製造方法によると、上記巻回工程において、電極(ここでは、正極22)とセパレータ26とが強く接着されない状態とし、上記プレス工程においてはじめて、それぞれが強く接着されるようにすることができる。より詳細には、上記巻回工程において、セパレータ26が有する厚みの大きな第1接着領域6Aと電極とが接触し、上記プレス工程において、さらに上記巻回工程において電極と接触しなかった厚みの小さな第2接着領域6Bと電極とが接触する。かかる構成によると、上記巻回工程において、電極とセパレータ26とが強く接着されない状態とし、上記プレス工程においてはじめて、それぞれが強く接着されるようにすることができる。したがって、上記プレス工程において、電極とセパレータ26との位置関係が変化する際に、該位置関係を適切に変化させることができる。これによって、セパレータ26に歪みやしわ等が生じることを好適に抑制することができる。また、上記巻回工程において第1接着領域6Aを有するセパレータ26と電極(ここでは、正極22)とが接着されるため、巻回体20Aの巻きずれ(例えば、巻回体20Aにおけるセパレータ26および電極の位置ずれ。特に、巻き芯3から巻回体20Aを抜く際に生じ易い。)を好適に抑制することができる。即ち、上述したような電池100の製造方法によると、巻回電極体20a,20b,20cを備えた電池100を生産性高く得ることができる。以下、具体的な2つの実施形態を例に挙げて説明する。
【0015】
<第1の実施形態>
先ず、第1の実施形態に係る電池の製造方法について、
図1のフローチャートを参照しつつ説明する。先ず、第1の実施形態に係る電池100の製造方法は、帯状の第1電極(ここでは、正極22)と、帯状の第2電極(ここでは、負極24)とが、帯状のセパレータ26(ここでは、第1セパレータ26S
1および第2セパレータ26S
2)を介して巻回された扁平状の巻回電極体(ここでは、巻回電極体20a,20b,20c)を備えた電池100の製造方法である。
図1に示すように、第1の実施形態に係る電池100の製造方法は、第1電極(ここでは、正極22)と、第2電極(ここでは、負極24)とを、セパレータ26を介して巻回し、巻回体20Aを製造する巻回工程(ステップS2)と、上記巻回工程の後、巻回体20Aをプレス成形し扁平状の巻回電極体(ここでは、巻回電極体20a,20b,20c)とするプレス工程(ステップS3)と、を包含する。上記巻回工程において、少なくとも一方の表面に部分的に接着層6を有するセパレータ26を用いる。また、接着層6は、第1接着領域6Aと、第2接着領域6Bと、を含む。そして、第1接着領域6Aの厚みT1は、第2接着領域6Bの厚みT2の1.5倍以上である。
【0016】
上述したように、例えばプレス工程において電極とセパレータとの位置関係が変化する際に、該電極と該セパレータとが強く接着されていると、該電極と該セパレータとの位置関係が適切に変化しないことがある。これによって、セパレータに歪みやしわ等が生じるおそれがあることが分かった。これに対して、上述したような電池100の製造方法によると、上記巻回工程において、電極(ここでは、正極22)とセパレータ26とが強く接着されない状態とし、上記プレス工程においてはじめて、それぞれが強く接着されるようにすることができる。より詳細には、上記巻回工程において、セパレータ26が有する厚みの大きな第1接着領域6Aと電極とが接触し(
図7を参照)、上記プレス工程において、第1接着領域6Aに加えて、厚みの小さな第2接着領域6Bと電極とが接触する(
図8を参照)。かかる構成によると、上記巻回工程において、電極とセパレータ26とが強く接着されない状態とし、上記プレス工程においてはじめて、それぞれが強く接着されるようにすることができる。したがって、上記プレス工程において、電極とセパレータ26との位置関係が変化する際に、該位置関係を適切に変化させることができる。これによって、セパレータ26に歪みやしわ等が生じることを好適に抑制することができる。また、上記巻回工程において第1接着領域6Aを有するセパレータ26と電極(ここでは、正極22)とが接着されるため、巻回体20Aの巻きずれを好適に抑制することができる。即ち、上述したような電池100の製造方法によると、巻回電極体20a,20b,20cを備えた電池100を生産性高く得ることができる。
【0017】
以下、本実施形態に係る電池100の製造方法について、電池100の製造方法を具現化する電極体製造装置1を交えて説明する。また、以下では、第1セパレータ26S
1および第2セパレータ26S
2の片面にドット状の接着層6が配置されている場合について説明する。なお、ここで開示される技術では、予め接着層6が配置されたセパレータ26を用いることもできるが、以下では、接着剤塗布部4によってセパレータ26の表面に接着層6を形成する場合について説明する。これに伴い、
図1に示すように、本実施形態に係る電池100の製造方法は、上述した巻回工程(ステップS2)の前に、さらに形成工程(ステップS1)を含む。ただし、他の実施形態では、かかる工程は含まれていなくてもよい。
【0018】
図2は、本実施形態に係る電極体製造装置1の構成を示す模式図である。
図2に示すように、本実施形態に係る電極体製造装置1は、複数(ここでは6個)のローラ2と、巻き芯3と、接着剤塗布部4と、乾燥部5とを備えている。また、本実施形態では、電極体製造装置1は、図示されないカッターと、押え治具と、制御装置とを備えている。ここで、カッターは、第1セパレータ26S
1および第2セパレータ26S
2を切断するカッターである。また、押え治具は、第1セパレータ26S
1および第2セパレータ26S
2を巻き芯3に押し付ける治具である。電極体製造装置1の各構成要素は、それぞれ所要のアクチュエータを適宜に有している。制御装置は、予め設定されたプログラムに沿って所定のタイミングで所要の動作が実行されるように、電極体製造装置1の各構成要素を制御するように構成されている。制御装置は、例えば、マイクロコントローラのようなコンピュータによって具現化され得る。
【0019】
正極22と負極24と第1セパレータ26S1と第2セパレータ26S2とは、それぞれリール(図示省略)などに巻かれた状態で用意されている。正極22と負極24と第1セパレータ26S1と第2セパレータ26S2とは、それぞれ、予め定められた搬送経路k1~k4に沿って搬送される。搬送経路k1は、図示されないリールから巻き芯3に向けて負極24が送り出される経路である。搬送経路k2は、図示されないリールから巻き芯3に向けて第2セパレータ26S2が送り出される経路である。搬送経路k3は、図示されないリールから巻き芯3に向けて正極22が送り出される経路である。搬送経路k4は、図示されないリールから巻き芯3に向けて第1セパレータ26S1が送り出される経路である。搬送経路k1~k4には、送り出される正極22、負極24、第1セパレータ26S1および第2セパレータ26S2の緩みを取り除くためのダンサロール機構や、テンションを調整するためのテンションナーなどがそれぞれ適宜に配置されていてもよい。
【0020】
複数のローラ2は、正極22、負極24、第1セパレータ26S1および第2セパレータ26S2の搬送経路k1~k4にそれぞれ配置されている。複数のローラ2は、搬送装置の一例である。複数のローラ2は、各搬送経路k1~k4を定めるために所定位置に配置されている。正極22、負極24、第1セパレータ26S1および第2セパレータ26S2は、それぞれ、複数のローラ2によって搬送される。なお、本実施形態では、ローラ2の数を6個としているが、他の実施形態では、ローラ2の数を6個以外としてもよい。
【0021】
巻き芯3は、側周面に巻き付けられる正極22、負極24、第1セパレータ26S1および第2セパレータ26S2を保持する機能を有する。巻き芯3はここでは略円筒状の部材であるが、扁平な形状に巻回する場合には、扁平な巻き芯が用いられてもよい。巻き芯3としては、ここでは分割されていない巻き芯を用いているが、径方向に沿って分割された巻き芯や、径が可変である巻き芯を用いてもよい。
【0022】
また、巻き芯3は、さらに吸引孔や溝等を有していてもよい。吸引孔は、例えば、側周面に巻き付けられる第1セパレータ26S1や第2セパレータ26S2を吸着させるための孔である。吸引孔の平面視における形状は、円形状であってもよいし、方形状であってもよい。あるいは、吸引孔は、スリット状であってもよい。吸引孔は、典型的には、巻き芯3の内部に形成され吸引孔に通じた流路である吸引流路を備えている。吸引経路は、吸引孔に負圧を形成するための流路である。吸引経路は、例えば、外部に設置される真空ラインに適宜に接続されて負圧が形成されるように構成されているとよい。そして、溝は、第1セパレータ26S1および第2セパレータ26S2が切断される際に、カッターの刃が降ろされる受け部として機能し得る。これにより、巻き芯3とカッターの刃が接触することにより、巻き芯またはカッターが損傷することを抑制する。
【0023】
接着剤塗布部4は、セパレータ26(ここでは、第1セパレータ26S1および第2セパレータ26S2)の少なくとも一方の表面に、搬送方向に沿って接着層スラリーを付与する。接着剤塗布部4は、接着層スラリーを第1セパレータ26S1および第2セパレータ26S2の所望の領域に所望の量だけ塗布することができるように構成されている。上記接着層スラリーは、例えば後述するような接着層バインダー(接着剤)と、溶媒および分散媒の少なくとも一方と、を含む。なお、「スラリー」は、インクやペースト等を包含し得る。
【0024】
上記接着層スラリーが含有する溶媒は、上記接着層バインダー(接着剤)を溶解可能な液であればよい。また、上記接着層スラリーが含有する分散媒は、上記接着層バインダー(接着剤)を分散可能な液であればよい。かかる溶媒、分散媒としては、水、水系溶媒、有機溶媒、これらの混合溶媒等が挙げられる。例えば、環境負荷を軽減するとの観点からは、いわゆる水系溶媒が好適に用いられる。この場合、水または水を主体とする混合溶媒を用いることができる。かかる混合溶媒を構成する水以外の溶媒成分としては、水と均一に混合し得る有機溶媒(低級アルコール、低級ケトン等)の1種または2種以上を適宜選択して用いることができる。例えば、水系溶媒の80質量%以上(より好ましくは90質量%以上、さらに好ましくは95質量%以上)が水である水系溶媒の使用が好ましい。特に好ましい例として、実質的に水からなる水系溶媒が挙げられる。また、上記接着層スラリーの溶媒は、いわゆる水系の溶媒に限定されず、いわゆる有機溶媒であってもよい。有機溶媒としては、例えばアルコール系溶媒、ケトン系溶媒、エステル系溶媒、ハロゲン系溶媒、炭化水素系溶媒、窒素含有系溶媒等が挙げられる。これらは、1種類を単独で用いてもよいし、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。また、上記溶媒、上記分散媒の沸点は、上記接着層スラリー塗布後の乾燥において該溶媒を除去し易くするという観点から、例えば50℃~200℃程度や100℃~150℃程度であることが好ましい。かかる沸点を低くしすぎると、塗布前に上記接着層スラリーが乾いてしまう等、塗布の安定性が損なわれる場合もあるため、塗布方法によって適宜選択することが好ましい。なお、上記接着層スラリー中の溶媒/分散媒の比率は、塗布方法によって適宜調整されるが、例えば、グラビア印刷、インクジェット印刷といった塗布方法の場合、重量比率で50~99%程度であることが好ましく、80~95%程度であることがより好ましい。また、上記接着層バインダー(接着剤)は、上記接着層スラリー中に溶解していてもよいし、分散していてもよい。そして、上記接着層スラリーが、上記接着剤が溶解した溶液である場合、後述する耐熱層28の内部に該接着剤が過度に染み込む場合があるため、上記接着層スラリーは、上記接着剤の分散液であることが好ましい。特に限定されるものではないが、上記接着層スラリー中の上記溶媒および上記分散媒の含有量は、該接着層スラリーの全体を100質量%としたとき、例えば50~99質量%程度(好ましくは、80~95質量%程度)とすることができる。
【0025】
また、上記接着層バインダー(接着剤)の一例としては、アクリル系樹脂、フッ素系樹脂、ゴム系樹脂、ウレタン系樹脂、シリコーン系樹脂、エポキシ系樹脂等が挙げられる。これらは、1種類を単独で用いてもよいし、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。ゴム系樹脂の一例としては、スチレンブタジエンゴム(SBR)が挙げられる。また、高い柔軟性を有し、電極(ここでは、正極22)に対する接着性をより好適に発揮できることから、フッ素系樹脂やアクリル系樹脂が好ましい。フッ素系樹脂としては、ポリフッ化ビニリデン(PVdF)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)等が挙げられる。上記接着層バインダーの種類は、後述する耐熱層バインダーと同じであってもよく、異なっていてもよい。また、上記接着層バインダーは、取り扱い易さという観点から、常温(例えば、25℃程度)で粘着性(接着性)を発現することが好ましい。一方で、加熱あるいは加圧等によって粘着性(接着性)を発現するものであってもよい。ここで、粘着性(接着性)とは、例えばJIS Z 0237:2009に基づく90°剥離試験による剥離強度が、0.00001N/20mm~0.1N/20mm(好ましくは、0.0001N/20mm~0.01N/20mm)であることを意味し得る。特に限定されるものではないが、上記接着層スラリー中の上記接着層バインダーの含有量は、該接着層スラリーの全体を100質量%としたとき、例えば1~50質量%程度(好ましくは、5~20質量%程度)とすることができる。
【0026】
また、例えば、上記接着層バインダー(接着剤)として、常温(例えば、25℃程度)および/または低圧力(例えば、0.1MPa以下、好ましくは、0.05MPa以上)で電極(ここでは、正極22)とセパレータ26とが接着するような樹脂を用いてもよい。かかる樹脂としては、例えばガラス転移点が常温以下であるものが好ましく、0℃以下であるものがより好ましく、-10℃以下であるものがさらに好ましい。また、かかる樹脂のガラス転移点は、例えば-20℃以上であってもよい。かかる樹脂の一例としては、上述したような低いガラス転移点を有するPVdF、SBR、アクリル系樹脂等が挙げられる。あるいは、上記接着層バインダー(接着剤)として、常温においては接着性(粘着性)が小さく、加熱(例えば、50℃以上、70℃以上、好ましくは150℃以下、100℃以下の加熱)および/または加圧(例えば、0.1MPa以上、1MPa以上、好ましくは20MPa以下、10MPa以下の圧力)で電極(ここでは、正極22)とセパレータ26とが接着するような樹脂を用いてもよい。かかる樹脂としては、例えばガラス転移点が常温以上であるものが好ましく、30℃以上であるものがより好ましく、40℃以上、50℃以上であるものがさらに好ましい。また、かかる樹脂のガラス転移点は、例えば60℃以下であってもよい。かかる樹脂の一例としては、PVdF、上述したような高いガラス転移点を有するアクリル系樹脂、エポキシ樹脂等が挙げられる。なお、ガラス転移点とは、例えばJIS K 7121に規定の方法に基づいて測定することができる。
また、光等のエネルギー照射によって電極(ここでは、正極22)とセパレータ26とが接着するような樹脂を用いてもよい。
【0027】
また、特に限定されるものではないが、電極(ここでは、正極22)と接着層6(第1接着領域6A,第2接着領域6B)を有するセパレータ26との間の90°剥離強度は、例えば0.00001N/20mm~0.1N/20mm(好ましくは、0.0001N/20mm~0.01N/20mm)であるとよい。かかる90°剥離試験は、例えば以下の方法によって測定することができる。先ず、接着層6を有するセパレータ26および電極(ここでは、正極22)を、それぞれ縦:2.0cm、横:7.0cmのサイズに切り出し、該切り出したセパレータ26および電極を重ねる。次に、セパレータ26と電極とを、これらの角度が90°になるように折り曲げる。そして、引張試験機等を用いて、90°に開いたセパレータ26の片側と電極の片側とを把持し、引張速度50mm/minで引張り、両者が剥離したときの強度を測定する。このようにして、剥離強度を測定することができる。
【0028】
なお、上記接着層スラリーは、ここに開示される技術の効果を妨げない限り、公知の増粘剤や界面活性剤、無機フィラー(例えば、アルミナ、チタニア、ベーマイト)等の添加剤を1種または2種以上含むことができる。上記接着層スラリーがかかる無機フィラーを含む場合、上記接着層スラリーの質量全体を100%としたとき、例えば無機フィラーは、5~20質量%程度(好ましくは、10~15質量%程度)含まれていることが好ましい。上記接着層スラリーの粘度は、ここで開示される技術の効果が発揮される限りにおいて特に制限されないが、概ね10~100mPa・s程度(例えば、20~50mPa・s程度)とすることができる。かかる粘度は、例えば市販の粘度計によって測定することができる。
【0029】
接着剤塗布部4としては、例えばインクジェット印刷、グラビアロールコーター、スプレーコーター等の各種の凹版印刷機、スリットコーター、コンマコーター、キャップコーター(Capillary Coater:CAPコーター)等のダイコーター、リップコーター、カレンダー機等の各種の接着剤塗布部を使用することができる。
【0030】
乾燥部5は、上記接着層スラリーから上記溶媒および上記分散媒の少なくとも一方を除去する。乾燥部5によって、上記溶媒および上記分散媒の少なくとも一方をセパレータ26から揮発させることができる。乾燥部5による乾燥の方法は特に限定されず、例えば通風乾燥、加熱乾燥、真空乾燥等の方法を用いることができる。例えば、加熱乾燥の場合、加熱温度は40℃~300℃程度(例えば50℃~200℃程度)であってもよい。
【0031】
続いて、本実施形態に係る電池100の製造方法について説明する。上述したように、本実施形態に係る電池100の製造方法は、形成工程(ステップS1)と、巻回工程(ステップS2)と、プレス工程(ステップS3)を包含する。以下、各工程について説明する。
【0032】
(ステップS1:形成工程)
本工程は、巻回工程前に行われ、セパレータ26の表面のうち少なくとも一方の表面に前記接着層を形成する。本工程では、接着剤と、溶媒(溶剤)および分散媒の少なくとも一方を含む接着層スラリーを、セパレータ26の表面のうち少なくとも一方の表面に配置(塗布)する。
図2に示すように、本実施形態では、第1セパレータ26S
1および第2セパレータ26S
2の片面に、上記接着層スラリーを配置している。ここで、
図3は、本実施形態に係る接着層6形成後のセパレータ26を上面から視たときの模式図である。
図3に示すように、本実施形態では、最終的にセパレータ26の表面に、第1接着領域6Aと、第2接着領域6Bと、を有する一つの連続した接着層6を形成する。接着層6は、ここでは、セパレータ26の平面視において円形状のドット状であり、外周領域に相当する第1接着領域6Aと、中央領域に相当する第2接着領域6Bとを有している。また、第1接着領域6Aの厚み(
図6のMD方向の長さ)は、前記第2接着領域の厚み(
図6のMD方向の長さ)と異なる。例えばインクジェット印刷機能を有し、さらにノズルの径を二重構造とした接着剤塗布部4を用いて、セパレータ26の表面にかかるドット状の接着層6を形成することができる。ただし、これはあくまでも一例であり、他の方法によってセパレータ26の表面に上記接着層スラリーを配置してもよい。
【0033】
また、好適な一態様では、上記接着層スラリーから上記溶媒および上記分散媒の少なくとも一方を除去する除去工程を含む。
図2に示すように、本実施形態では、上記形成工程においてセパレータ26の表面に配置された接着層6を、乾燥部5によって乾燥している。かかる溶媒や分散媒の除去によって、電極体作製時に接着層6に残存する溶媒や分散媒の量を好適に低減させることができる。なお、「上記接着層スラリーから上記溶媒および上記分散媒のうち少なくとも一方を除去する」とは、上記接着層スラリー中の上記溶媒および上記分散媒の全体を100質量%としたとき、上記溶媒および上記分散媒を例えば70質量%以上、80質量%以上、好ましくは90質量%以上、95質量%以上、99質量%以上(特に好ましくは、100質量%)除去することを意味し得る。ここで開示される技術では、本工程において、上記溶媒や上記分散媒を完全に除去する必要はなく、若干残存していてもよい。
【0034】
上記形成工程によって、少なくとも一方の表面に部分的に接着層6を有するセパレータ26であって、接着層6は、第1接着領域6Aと、第2接着領域6Bとを含み、第1接着領域6Aの厚みT1は、第2接着領域6Bの厚みT2の1.5倍以上である、蓄電デバイス用セパレータを得ることができる。なお、
図3に示すように、本実施形態では、セパレータ26(ここでは、第1セパレータ26S
1および第2セパレータ26S
2)の片面にかかる接着層6が配置されている。かかる構成によると、上記巻回工程において、セパレータ26が有する厚みの大きな第1接着領域6Aと電極(ここでは、正極22)とが接触し、上記プレス工程において、第1接着領域6Aに加えて、厚みの小さな第2接着領域6Bと電極(ここでは、正極22)とが接触する。そして、上記巻回工程において、電極とセパレータ26とが強く接着されない状態とし、上記プレス工程においてはじめて、それぞれが強く接着されるようにすることができる。したがって、上記プレス工程において、電極とセパレータ26との位置関係が変化する際に、該位置関係を適切に変化させることができる。これによって、セパレータ26に歪みやしわ等が生じることを好適に抑制することができる。また、上記巻回工程において第1接着領域6Aを有するセパレータ26と電極(ここでは、正極22)とが接着されるため、巻回体20Aの巻きずれを好適に抑制することができる。即ち、上述したような電池100の製造方法によると、巻回電極体20a,20b,20cを備えた電池100を生産性高く得ることができる。接着層6がセパレータ26の表面に部分的に配置されているとは、セパレータ26の表面に接着層6が配置されていない領域が存在することを意味し、接着層6はセパレータ26の広域に渡ってパターン形成されていることが好ましい。
【0035】
なお、
図3に示すように、本実施形態では、セパレータ26の平面視において、接着層6はドット状に配置されている。ここで、上記ドット状の接着層6(詳しくは、第1接着領域6Aの外形)の平面視の形状を円形状としているが、これに限定されない。他の実施形態では、上記ドット状の接着層6の平面視の形状は、楕円形状、矩形状、多角形状、これらの組み合わせ等とすることができる。また、本実施形態では、帯状のセパレータ26の短辺方向(
図3のY方向)において2個ずつ接着層6が配置されているが、これに限定されない。他の実施形態では、接着層6は、セパレータ26の短辺方向(
図3のY方向)において1個ずつ配置されていてもよいし、3個以上ずつ配置されていてもよい。また、本実施形態では、セパレータ26の平面視において、第2接着領域6Bの形状を円形状としているが、これに限定されない。他の実施形態では、第2接着領域6Bの形状を楕円形状、矩形状、その他種々の形状としてもよい。あるいは、他の実施形態では、セパレータ26の平面視において、接着層6が線状に配置されていてもよい。例えば、後述する第3実施形態および第4実施形態は、接着層が線状に配置されている場合の一例である。また、本実施形態のように、中央側に第2接着領域6B、外周側に第1接着領域6Aを配置してもよいし、他の実施形態では、中央側に第1接着領域6A、外周側に第2接着領域6Bを配置してもよい。
【0036】
接着層6が有する第1接着領域6Aおよび第2接着領域6Bは、上述したような接着層バインダーを主体として構成されていることが好ましい。ここで、「接着層バインダーを主体として構成されている」とは、接着層6の全体を100体積%としたとき、接着層バインダーを、例えば50体積%以上、60体積%以上、好ましくは70体積%以上、80体積%以上、より好ましくは90体積%以上、95体積%以上(100体積%であってもよい)含むことを意味し得る。これにより、電極(ここでは、正極22)に対して所定の接着性が的確に発揮され得る。また、好適な一態様では、第1接着領域6Aを構成する樹脂のうち主体となる成分と、第2接着領域6Bを構成する樹脂のうち主体となる成分とが同じである。かかる構成によると、上記形成工程において、接着層6を形成し易くなるため、好ましい。なお、他の実施形態では、第1接着領域6Aを構成する樹脂のうち主体となる成分と、第2接着領域6Bを構成する樹脂のうち主体となる成分とが異なっていてもよい。ここで、「第1接着領域(第2接着領域)を構成する樹脂のうち主体となる成分」とは、第1接着領域(第2接着領域)を構成する樹脂の全体を100体積%としたとき、例えば50体積%以上、60体積%以上、好ましくは70体積%以上、80体積%以上、より好ましくは90体積%以上、95体積%以上(100体積%であってもよい)含まれる樹脂のことを意味し得る。
【0037】
また、上述したように、接着層6が有する第1接着領域6Aおよび第2接着領域6Bは、上記接着層バインダーに加えて、他の材料(例えば、アルミナ、チタニア、ベーマイト等の無機フィラー等)を含んでいてもよい。接着層6が無機フィラーを含む場合、接着層6の全体を100質量%としたとき、無機フィラーは、例えば10~90質量%程度(好ましくは、20~80質量%程度)含まれていることが好ましい。
【0038】
また、平面視において、セパレータ26の片面の面積に対する、該セパレータ26の片面における接着層6の形成面積の比(セパレータの片面における接着層の形成面積/セパレータの片面の面積)は、ここで開示される技術の効果が発揮される限りにおいて特に制限されない。上記比の上限は、例えば0.8以下であり、電池100の入出力特性の観点から、好ましくは0.5以下であり、0.3以下、0.2以下、0.1以下であってもよい。また、上記比の下限は、例えば0.001以上であり、セパレータ26と電極との接着力を好適に担保し、巻回電極体の厚みの膨化を好適に抑制するという観点から、好ましくは0.005以上、0.01以上、0.03以上であり、より好ましくは0.05以上である。つまり、例えば(セパレータの片面における接着層の形成面積/セパレータの片面の面積)が0.005~0.5であると、上記効果を好適に得ることができる。
【0039】
また、セパレータ26の平面視において、接着層6の面積(ここでは、第1接着領域6Aおよび第2接着領域6Bの合計面積)に対する、第1接着領域6Aの形成面積の比(第1接着領域6Aの形成面積/接着層の面積)は、ここで開示される技術の効果が発揮される限りにおいて、特に制限されない。上記比の下限は、例えば0.1以上であり、巻きずれ等を好適に抑制するという観点から、好ましくは0.2以上であり、0.3以上、0.4以上、0.5以上であってもよい。また、上記比の上限は、例えば0.9以下である、後述するプレス工程における第2接着領域6Bと電極との接着力を好適に担保し、巻きずれ等を好適に抑制するという観点から、好ましくは0.8以下であり、0.7以下、0.6以下であってよい。つまり、例えば(第1接着領域6Aの形成面積/接着層の面積)が0.2~0.8であると、上記効果を好適に得ることができる。
【0040】
また、一つの上記ドット状の接着層6の径(直径。
図3のdに対応。)は、ここで開示される技術の効果が発揮される限りにおいて特に制限されない。上記dの下限は、例えば10μm以上であり、セパレータ26と電極との接着力を好適に担保するという観点から、好ましくは50μm以上であり、より好ましくは75μm以上であり、特に好ましくは100μm以上である。また、かかるdの上限は、例えば600μm以下であり、電池100の充放電反応の均一化や、Li析出抑制等の観点から、好ましくは500μm以下であり、より好ましくは300μm以下、200μm以下である。つまり、上記巻回工程において、一つの上記ドット状の接着層6の径(直径)は、例えば50μm~500μmであることが好ましい。
【0041】
ここで、
図6は、一実施形態に係る巻回工程前のセパレータの態様を示す模式図である。
図6は、
図3中のVI-VI線に沿う模式的な縦断面図であるということもできる。なお、本実施形態では、第1セパレータ26S
1および第2セパレータ26S
2の正極22と対向する側に接着層6が配置されているが、
図6では説明し易くするために、第1セパレータ26S
1および正極22のみを記載している。ただし、第2セパレータ26S
2および正極22についても同様である。後述する巻回工程において(換言すると、後述する巻回工程において用いられるセパレータ26において。あるいは、上記形成工程後において。)、一つの上記ドット状の接着層6の厚み(
図6のMD方向における長さ。
図6中のT1に対応。)は、ここで開示される技術の効果が発揮される限りにおいて特に制限されない。上記T1の下限は、0.1μm以上であることが好ましく、0.2μm以上がより好ましく、0.5μm以上がさらに好ましい。また、上記T1の上限は、10μm以下が好ましく、5μm以下が好ましく、3μm以下がより好ましい。即ち、上記T1は、例えば、0.1μm~10μmの範囲内であることが好ましい。上記T1の範囲内とすることで、接着層6の接着性の担保、電池100の充放電反応の均一化、Li析出の抑制等の観点から好ましい。
【0042】
ここで、上述したように、第1接着領域6Aの厚みT1は、第2接着領域6Bの厚みT2の1.5倍以上である。つまり、接着層6における外周領域と中央領域とで、中央領域の少なくとも一部の厚みと外周領域の少なくとも一部の厚みとを比較したとき、1.5倍以上である。また、上述したような効果をより好適に得るという観点から、好ましくは、第1接着領域6Aの厚みT1は、第2接着領域6Bの厚みT2の2倍以上であり、2.5倍以上、3倍以上であってもよい。また、第1接着領域6Aの厚みT1は、第2接着領域6Bの厚みT2の、例えば5倍以下であり、4倍以下であってもよい。
【0043】
特に限定されるものではないが、セパレータ26の平面視において、一つのドット状の接着層6の外周に囲まれた領域の面積は、例えば、0.5mm2以下であり、好ましくは0.25mm2以下であり、より好ましくは0.1mm2以下である。また、かかる一つのドット状の接着層6の面積の下限は、例えば0.01mm2以上であり、好ましくは0.05mm2以上である。
【0044】
特に限定されるものではないが、セパレータ26の片面における接着層6の目付は、例えば0.005g/m2以上であり、好ましくは0.01g/m2以上であり、より好ましくは0.02g/m2以上である。また、接着層6の目付の上限は、例えば2.0g/m2以下であり、好ましくは1.0g/m2以下であり、より好ましくは0.05g/m2以下である。なお、「目付」とは、接着層の質量を形成領域の面積で割った値(接着層の質量/形成領域の面積)をいう。
【0045】
(ステップS2:巻回工程)
上述したように、本工程では、本実施形態では、電極体として巻回電極体を製造するため、上記巻回工程は、帯状の第1電極(ここでは、正極22)と、帯状の第2電極(ここでは、負極24)と、帯状のセパレータ26(ここでは、第1セパレータ26S
1および第2セパレータ26S
2)を介して巻回し、巻回体20Aを作製する。
図2に示すように、本実施形態では、負極24、第2セパレータ26S
2、正極22、および第1セパレータ26S
1を、それぞれ搬送経路k1~k4によって巻き芯3まで搬送し、巻き芯3に巻きつけることによって巻回体20Aを作製する。巻き芯3としては、ここでは円筒状のものを用いているが、これに限定されず、例えば扁平形状のものを用いてもよい。また、巻回体20Aの断面形状は、本実施形態のように扁平形状であってもよいし、真円形状、楕円形状、トラック形状等その他の形状であってもよい。幅方向Yの一方(
図15の左側)の側縁から正極22の正極タブ22tのみが突出し、かつ、他方(
図15の右側)の側縁から負極24の負極タブ24tのみが突出するように、各々のシートを巻回する。なお、巻回数は、目的とする電池100の性能や製造効率などを考慮して適宜調節することが好ましい。いくつかの態様において、かかる巻回数は20以上や30以上とすることができる。上記巻回工程における温度は、好ましくは50℃以下であり、より好ましくは40℃以下であり、さらに好ましくは35℃以下である。また、上記巻回工程は、10℃以上で実施されることが好ましい。なお、第1接着領域6Aおよび第2接着領域6Bとして、上記巻回工程における温度条件下において、例えば粘着性(接着性)を有するものを用いることができる。
【0046】
(ステップS3:プレス工程)
上述したように、本工程では、上記巻回工程の後、巻回体20Aをプレス成形し扁平状の巻回電極体20aとする。かかる構成によると、セパレータ26と電極とをより好適に接着させることができる。また、かかる構成によると、上記プレス工程後の巻回電極体20a(20b,20c)の厚みの増加を好適に抑制することができるため、該巻回電極体のケース10への挿入性を好適に向上させることができる。なお、本実施形態では、上記巻回工程で得られた巻回体20Aをプレス成形し扁平状の巻回電極体20aとしている。ここで、
図4は、本実施形態に係るプレス工程前の巻回体20Aを示す模式図である。また、
図5は、本実施形態に係るプレス工程後の巻回体20Aを示す模式図である。先ず、
図4に示すように、対向する一対の押圧面を有するプレス機200に巻回体20Aを配置した後、白抜き矢印方向にプレスすることで、扁平状の巻回電極体20aを得る。ここで、プレス圧は、例えば0.1MPa~20MPa(好ましくは、5MPa~10MPa)の範囲内とすることができる。また、かかるプレスは、加熱無しのプレスであってもよいし、加熱プレスであってよいし、両方を行ってもよい。加熱プレスの場合、加熱温度は、例えば50℃~100℃(好ましくは、70℃~90℃)の範囲内とすることができる。
図11に示すように、プレス成形後の扁平形状の電極体20aは、外表面が湾曲した一対の湾曲部20rと、当該一対の湾曲部20rを連結する外表面が平坦な平坦部20fとを有している。また、プレス成形後の扁平形状の巻回電極体20aの幅方向Yにおける一方の端部には、正極タブ22tが積層された正極タブ群23が形成され、他方の端部には、負極タブ24tが積層された負極タブ群25が形成される。そして、巻回電極体の幅方向Yの中央部には、正極活物質層22aと負極活物質層24aとが対向したコア部が形成される。
【0047】
好適な一態様では、上記形成工程は、上記巻回工程の直前に行われる。上記形成工程後に、セパレータ26をセパレータロール等に巻き取ることなく(換言すると、セパレータ26が展開された状態で)、上記巻回工程を連続的に行うことが好ましい。
図2に示すように、本実施形態では、正極22と、負極24と、セパレータ26(ここでは、第1セパレータ26S
1および第2セパレータ26S
2)を介して巻回し、巻回体20Aを作製する巻回工程の直前に、接着層6の配置および形成を行っている。かかる構成によると、接着層6中で副反応が生じにくく、かつ、接着層6に粉塵等が付着しにくいため、好ましい。上記形成工程から上記巻回工程までの時間は、例えば60分以下(好ましくは、60分未満)、好ましくは30分以内、20分以下(例えば、20分未満)であり、より好ましくは10分以内であり、特に好ましくは5分以内(例えば、5分未満)である。また、上記形成工程が実施される位置(例えば、
図2では接着剤塗布部4の位置)から上記巻回工程が実施される位置(例えば、
図2では巻き芯3の位置)の最短距離は、例えば50m以下(好ましくは、50m未満)、好ましくは30m以下であり、より好ましくは10m以下(例えば、10m未満)であり、特に好ましくは5m以下、3m以下(例えば、3m未満)である。ただし、これらに限られるものではない。
【0048】
また、好適な一態様では、上記巻回工程において、第1接着領域6Aによりセパレータ26と第1電極(ここでは、正極22)とが接着され、上記巻回工程において、第2接着領域6Bと第1電極(ここでは、正極22)とが、第1接着領域6Aと第1電極(ここでは、正極22)との接着力よりも弱い力で接着され、あるいは、第2接着領域6Bと第1電極(ここでは、正極22)とが接着されない。そして、上記プレス工程において、第2接着領域6Bと第1電極(ここでは、正極22)とが、上記プレス工程の前の状態よりも強く接着される。かかる構成によると、ここで開示される効果を好適に得ることができる。なお、特に限定されるものではないが、上記巻回工程において、第2接着領域6Bと第1電極とが、第1接着領域6Aと第1電極との接着力よりも弱い力で接着される場合、上記巻回工程における押圧力(例えば、0.01MPa~0.1MPa程度)を印加したときの、第1接着領域6Aの第1電極に対する接着力(剥離強度)は、例えば0.00001N/20mm~0.1N/20mm(好ましくは、0.0001N/20mm~0.01N/20mm)とすることができる。また、第2接着領域6Bの第1電極(ここでは、正極22)に対する接着力(剥離強度)は、例えば0N/20mm~0.00001N/20mm(好ましくは、0N/20mm~0.000001N/20mm)とすることができる。そして、上記巻回工程における、第1接着領域6Aの第1電極に対する接着力(剥離強度)と、第2接着層1Bの第1電極に対する接着力(剥離強度)の差は、例えば0.00001N/20mm~0.1N/20mm(好ましくは、0.0001N/20mm~0.01N/20mm)とすることができる。また、特に限定されるものではないが、第2接着領域6Bの上記プレス工程前後の剥離強度の差は、例えば0.00001N/20mm~0.1N/20mm(好ましくは、0.0001N/20mm~0.06N/20mm)とすることができる。
【0049】
また、図示は省略しているが、本実施形態では、上記プレス工程後の巻回電極体20aの最外周の面にセパレータ26が配置されており、かかるセパレータ26の巻き終わりの端部に巻止めテープを貼り付けることで、巻回電極体20aの形状を保持する。巻止めテープとしては、巻回電極体に使用される従来公知のものを特に制限なく用いることができる。図示していないが、本実施形態では、正極22の巻き終わりの端部が電極体20aの湾曲部20rに配置されている。以上のようにして、本実施形態に係る電極体20a,20b,20cを作製することができる。
【0050】
次に、封口板14と一体化された電極体群20を作製する。具体的には先ず、
図13に示すように、正極第2集電部52および負極第2集電部62の付設された巻回電極体20aを3つ用意し、巻回電極体20a,20b,20cとして、短辺方向Xに並べて配置する。このとき、巻回電極体20a,20b,20cは、いずれも、正極第2集電部52が長辺方向Yの一方側(
図13の左側)に配置され、負極第2集電部62が長辺方向Yの他方側(
図13の右側)に配置されるように、並列に並べてもよい。
【0051】
次に、
図12に示すように複数の正極タブ22tを湾曲させた状態で、封口板14に固定された正極第1集電部51と、巻回電極体20a,20b,20cの正極第2集電部52と、をそれぞれ接合する。また、複数の負極タブ24tを湾曲させた状態で、封口板14に固定された負極第1集電部61と、巻回電極体20a,20b,20cの負極第2集電部62と、をそれぞれ接合する。接合方法としては、例えば、超音波溶接、抵抗溶接、レーザ溶接等の溶接を用いることができる。特に、レーザ等の高エネルギー線の照射による溶接を用いることが好ましい。このような溶接加工によって、正極第2集電部52の凹部および負極第2集電部62の凹部に、それぞれ接合部を形成する。
【0052】
続いて、上記のとおり作製した合体物を、外装体12の内部空間に収容する。具体的には先ず、例えば、ポリエチレン(PE)等の樹脂材料からなる絶縁性の樹脂シートを、袋状または箱状に折り曲げて、電極体ホルダ29を用意する。次に、電極体ホルダ29に電極体群20を収容する。そして、電極体ホルダ29で覆われた電極体群20を、外装体12に挿入する。電極体群20の重量が重い場合、概ね1kg以上、例えば1.5kg以上、さらには2~3kgである場合は、外装体12の長側壁12bが重力方向と交差するように(外装体12を横向きに)配置して、電極体群20を外装体12に挿入するとよい。
【0053】
最後に、外装体12の開口部12hの縁部に封口板14を接合して、開口部12hを封止する。そして、外装体12と封口板14とが溶接接合する。外装体12と封口板14との溶接接合は、例えばレーザ溶接等で行うことができる。その後、注液孔15から電解液を注入し、注液孔15を封止部材15aで塞ぐことによって、電池100を密閉する。以上のようにして、電池100を製造することができる。
【0054】
<第2の実施形態>
続いて、第2の実施形態に係る電池の製造方法について、
図1のフローチャートを参照しつつ説明する。先ず、第2の実施形態に係る電池100の製造方法は、帯状の第1電極(ここでは、正極22)と、帯状の第2電極(ここでは、負極24)とが、帯状のセパレータ26(ここでは、第1セパレータ26S
1および第2セパレータ26S
2)を介して巻回された扁平状の巻回電極体(ここでは、巻回電極体20a,20b,20c)を備えた電池100の製造方法である。
図1に示すように、第2の実施形態に係る電池100の製造方法は、第1電極(ここでは、正極22)と、第2電極(ここでは、負極24)とを、セパレータ26を介して巻回し、巻回体20Aを製造する巻回工程(ステップS2)と、上記巻回工程の後、巻回体20Aをプレス成形し扁平状の巻回電極体(ここでは、巻回電極体20a,20b,20c)とするプレス工程(ステップS3)と、を包含する。上記巻回工程において、少なくとも一方の表面に部分的に接着層6を有するセパレータ26を用いる。また、接着層6は、第1接着領域6Aと、第2接着領域6Bと、を含む。そして、第1接着領域6Aの厚みT1は、第2接着領域6Bの厚みT2よりも大きい。また、第1接着領域6Aと第1電極(ここでは、正極22)とが接着され、上記プレス工程において、第2接着領域6Bと第1電極(ここでは、正極22)とが接着される。
【0055】
上述したように、上記巻回工程において、第1接着領域6Aと第1電極(ここでは、正極22)とが接着され(
図7を参照)、上記プレス工程において、第1接着領域6Aに加えて、さらに第2接着領域6Bと第1電極(ここでは、正極22)とが接着されることで(
図8を参照)、上記巻回工程において、電極とセパレータ26とが強く接着されない状態とし、上記プレス工程においてはじめて、それぞれが強く接着されるようにすることができる。したがって、上記プレス工程において、電極とセパレータ26との位置関係が変化する際に、該位置関係を適切に変化させることができる。これによって、セパレータ26に歪みやしわ等が生じることを好適に抑制することができる。また、上記巻回工程において第1接着領域6Aを有するセパレータ26と電極(ここでは、正極22)とが接着されるため、巻回体20Aの巻きずれを好適に抑制することができる。即ち、上述したような電池100の製造方法によると、巻回電極体20a,20b,20cを備えた電池100を生産性高く得ることができる。
【0056】
なお、第2の実施形態に係る電池の製造方法に関して、各工程、接着層の形状や配置態様等のその他種々については、上記第1の実施形態の欄において説明した事項を適宜参照することができる。
【0057】
<電池の構成>
続いて、ここで開示される電池の製造方法によって得られる電池の一例について説明する。
【0058】
図9は、電池100の斜視図である。
図10は、
図9のX-X線に沿う模式的な縦断面図である。
図11は、
図9のXI-XI線に沿う模式的な縦断面図である。
図12は、
図9のXII-XII線に沿う模式的な横断面図である。以下の説明において、図面中の符号L、R、F、Rr、U、Dは、左、右、前、後、上、下を表し、図面中の符号X、Y、Zは、電池100の短辺方向、短辺方向と直交する長辺方向、上下方向を、それぞれ表すものとする。ただし、これらは説明の便宜上の方向に過ぎず、電池100の設置形態を何ら限定するものではない。
【0059】
図10に示すように、電池100は、電池ケース(ケース)10と、電極体群20と、を備えている。また、本実施形態に係る電池100は、電池ケース10と電極体群20の他に、正極端子30と、正極外部導電部材32と、負極端子40と、負極外部導電部材42と、外部絶縁部材92と、正極集電部50と、負極集電部60と、正極内部絶縁部材70と、負極内部絶縁部材80と、を備えている。また、図示は省略するが、本実施形態に係る電池100は、さらに電解液を備えている。電池100は、ここではリチウムイオン二次電池である。
【0060】
電池ケース10は、電極体群20を収容する筐体である。電池ケース10は、ここでは扁平かつ有底の直方体形状(角形)の外形を有する。電池ケース10の材質は、従来から使用されているものと同じでよく、特に制限はない。電池ケース10は、所定の強度を有する金属製であることが好ましい。電池ケース10を構成する金属材料の一例として、アルミニウム、アルミニウム合金、鉄、鉄合金等が挙げられる。
【0061】
そして、電池ケース10は、外装体12と、封口板14と、ガス排出弁17を備えている。外装体12は、一つの面が開口部12hとなった扁平な角型の容器である。具体的には、外装体12は、
図9に示すように、略矩形状の底壁12aと、底壁12aの短辺から上方Uに延びて相互に対向する一対の第2側壁12cと、底壁12aの長辺から上方Uに延びて相互に対向する一対の第1側壁12bと、を備えている。第2側壁12cの面積は、第1側壁12bの面積よりも小さい。そして、開口部12hは、上記一対の第1側壁12bと一対の第2側壁12cに囲まれた外装体12の上面に形成されている。封口板14は、外装体12の開口部12hを塞ぐように外装体12に取り付けられている。封口板14は、平面視において略矩形状の板材である。封口板14は、外装体12の底壁12aと対向している。電池ケース10は、外装体12の開口部12hの周縁に封口板14が接合(例えば、溶接接合)されることによって形成される。封口板14の接合は、例えばレーザ溶接等の溶接によって行うことができる。具体的には、一対の第2側壁12cの各々は、封口板14の短辺と接合され、一対の第1側壁12bの各々は、封口板14の長辺と接合される。
【0062】
図9および
図10に示すように、ガス排出弁17は、封口板14に形成されている。ガス排出弁17は、電池ケース10内の圧力が所定値以上になった際に開口して、電池ケース10内のガスを排出するように構成される。本実施形態におけるガス排出弁17は、封口板14の外面から電極体群20側に向って窪んだ平面略円形の凹部である。かかるガス排出弁17の底面には、封口板14の厚みよりも薄い薄肉部が形成される。このガス排出弁17は、ケース内圧が所定値以上になった際に薄肉部が破断する。これによって、電池ケース10内のガスを外部に排出し、上昇したケース内圧を低減できる。
【0063】
また、封口板14には、上記ガス排出弁17の他に、注液孔15と、2つの端子挿入穴18、19と、が設けられている。注液孔15は、外装体12の内部空間と連通しており、電池100の製造工程において電解液を注液するために設けられた開口である。注液孔15は、封止部材15aにより封止されている。かかる封止部材15aとしては、例えば、ブラインドリベットが好適である。これによって、電池ケース10の内部で封止部材15aを強固に固定できる。また、端子挿入穴18、19は、封口板14の長辺方向Yの両端部にそれぞれ形成されている。端子挿入穴18、19は、封口板14を上下方向Zに貫通している。
図9に示すように、長辺方向Yの一方(左側)の端子挿入穴18には正極端子30が挿入される。また、長辺方向Yの他方(右側)の端子挿入穴19には負極端子40が挿入される。
【0064】
図13は、封口板14に取り付けられた巻回電極体を模式的に示す斜視図である。本実施形態では、複数個(ここでは3個)の巻回電極体20a,20b,20cが電池ケース10の内部に収容される。なお、1つの電池ケース10の内部に収容される巻回電極体の数は特に限定されず、1つであってもよいし、2つ以上(複数)であってもよい。なお、
図10に示すように、各々の巻回電極体の長辺方向Yの一方側(
図10の左側)には正極集電部50が配置され、長辺方向Yの他方(
図10の右側)には負極集電部60が配置される。そして、巻回電極体20a,20b,20cの各々は、並列に接続されている。ただし、巻回電極体20a,20b,20cは、直列に接続されていてもよい。各々の巻回電極体は、ここでは樹脂製シートからなる電極体ホルダ29(
図11参照)に覆われた状態で電池ケース10の外装体12の内部に収容される。
【0065】
図14は、巻回電極体20aを模式的に示す斜視図である。
図15は、巻回電極体20aの構成を示す模式図である。ここで、
図15では、見易くするために、セパレータ26の表面に形成されている接着層6の記載を省略している。なお、以下では巻回電極体20aを例として詳しく説明するが、巻回電極体20b、20cについても同様の構成とすることができる。
【0066】
図15に示すように、巻回電極体20aは、正極22と負極24とセパレータ26とを有する。巻回電極体20aは、ここでは、帯状の正極22と帯状の負極24とが2枚の帯状のセパレータ26を介して積層され、巻回軸WLを中心として巻回された巻回電極体である。
【0067】
巻回電極体20aは、扁平形状を有している。巻回電極体20aは、巻回軸WLが長辺方向Yと略平行になる向きで、外装体12の内部に配置されている。具体的には、
図11に示すように、巻回電極体20aは、外装体12の底壁12aおよび封口板14と対向する一対の湾曲部(R部)20rと、一対の湾曲部20rを連結し、外装体12の第2側壁12cに対向する平坦部20fとを有している。平坦部20fは、第2側壁12cに沿って延びている。
【0068】
正極22は、
図15に示すように、正極集電体22cと、当該正極集電体22cの少なくとも一方の表面上に固着された正極活物質層22aおよび正極保護層22pと、を有する。ただし、正極保護層22pは必須ではなく、他の実施形態において省略することもできる。正極集電体22cは、帯状である。正極集電体22cは、例えばアルミニウム、アルミニウム合金、ニッケル、ステンレス鋼等の導電性金属からなっている。正極集電体22cは、ここでは金属箔、具体的にはアルミニウム箔である。
【0069】
正極集電体22cの長辺方向Yの一方の端部(
図15の左端部)には、複数の正極タブ22tが設けられている。複数の正極タブ22tは、帯状の正極22の長手方向に沿って間隔を置いて(間欠的に)設けられている。複数の正極タブ22tは、巻回軸WLの軸方向の一方側(
図15の左側)に向かって、セパレータ26よりも外側に突出している。なお、正極タブ22tは、巻回軸WLの軸方向の他方(
図15で示すと右側)に設けられていてもよいし、巻回軸WLの軸方向の両側の各々に設けられていてもよい。正極タブ22tは、正極集電体22cの一部であり、金属箔(アルミニウム箔)からなっている。ただし、正極タブ22tは、正極集電体22cとは別の部材であってもよい。正極タブ22tの少なくとも一部には、正極活物質層22aおよび正極保護層22pが形成されずに、正極集電体22cが露出した領域が形成される。
【0070】
図12に示すように、複数の正極タブ22tは、巻回軸WLの軸方向の一方の端部(
図12の左端部)で積層され、正極タブ群23を構成する。そして、複数の正極タブ22tの各々は、外方側の端が揃うように折り曲げられている。これにより、電池ケース10への収容性を向上して電池100を小型化することができる。
図10に示すように、正極タブ群23は、正極集電部50を介して正極端子30と電気的に接続される。具体的には、正極タブ群23と正極第2集電部52とは接続部Jにおいて接続される(
図12参照)。そして、正極第2集電部52は、正極第1集電部51を介して正極端子30と電気的に接続される。なお、複数の正極タブ22tのサイズ(長辺方向Yに沿った長さおよび長辺方向Yに直交する幅、
図15参照)は、正極集電部50に接続される状態を考慮し、例えばその形成位置等によって、適宜調整することができる。ここでは、湾曲させたときに外方側の端が揃うように、複数の正極タブ22tの各々のサイズが相互に異なっている。
【0071】
図15に示すように、正極活物質層22aは、帯状の正極集電体22cの長手方向に沿って、帯状に設けられている。正極活物質層22aは、電荷担体を可逆的に吸蔵および放出可能な正極活物質(例えば、リチウムニッケルコバルトマンガン複合酸化物等のリチウム遷移金属複合酸化物)を含んでいる。正極活物質層22aの固形分全体を100質量%としたときに、正極活物質は、概ね80質量%以上、典型的には90質量%以上、例えば95質量%以上を占めていてもよい。正極活物質層22aは、正極活物質以外の任意成分、例えば、導電材、バインダー、各種添加成分等を含んでいてもよい。導電材としては、例えばアセチレンブラック(AB)等の炭素材料を使用し得る。バインダーとしては、例えばポリフッ化ビニリデン(PVdF)等を使用し得る。
【0072】
正極保護層22pは、
図15に示すように、長辺方向Yにおいて正極集電体22cと正極活物質層22aとの境界部分に設けられている。正極保護層22pは、ここでは正極集電体22cの巻回軸WLの軸方向の一方の端部(
図15の左端部)に設けられている。ただし、正極保護層22pは、軸方向の両端部に設けられていてもよい。正極保護層22pは、正極活物質層22aに沿って、帯状に設けられている。正極保護層22pは、無機フィラー(例えば、アルミナ)を含んでいる。正極保護層22pの固形分全体を100質量%としたときに、無機フィラーは、概ね50質量%以上、典型的には70質量%以上、例えば80質量%以上を占めていてもよい。正極保護層22pは、無機フィラー以外の任意成分、例えば、導電材、バインダー、各種添加成分等を含んでいてもよい。導電材およびバインダーは、正極活物質層22aに含み得るとして例示したものと同じであってもよい。
【0073】
負極24は、
図15に示すように、負極集電体24cと、負極集電体24cの少なくとも一方の表面上に固着された負極活物質層24aと、を有する。負極集電体24cは、帯状である。負極集電体24cは、例えば銅、銅合金、ニッケル、ステンレス鋼等の導電性金属からなっている。負極集電体24cは、ここでは金属箔、具体的には銅箔である。
【0074】
負極集電体24cの巻回軸WLの軸方向の一方の端部(
図15の右端部)には、複数の負極タブ24tが設けられている。複数の負極タブ24tは、帯状の負極24の長手方向に沿って間隔を置いて(間欠的に)設けられている。複数の負極タブ24tの各々は、軸方向の一方側(
図15の右側)に向かって、セパレータ26よりも外側に突出している。ただし、負極タブ24tは、軸方向の他方の端部(
図15の左端部)に設けられていてもよいし、軸方向の両端部の各々に設けられていてもよい。負極タブ24tは、負極集電体24cの一部であり、金属箔(銅箔)からなっている。ただし、負極タブ24tは、負極集電体24cとは別の部材であってもよい。負極タブ24tの少なくとも一部には、負極活物質層24aが形成されずに、負極集電体24cが露出した領域が設けられている。
【0075】
図12に示すように、複数の負極タブ24tは、軸方向の一方の端部(
図12の右端部)で積層されて負極タブ群25を構成する。負極タブ群25は、軸方向において、正極タブ群23と対称的な位置に設けられていることが好ましい。そして、複数の負極タブ24tの各々は、外方側の端が揃うように折り曲げられている。これにより、電池ケース10への収容性を向上して、電池100を小型化することができる。
図10に示すように、負極タブ群25は、負極集電部60を介して負極端子40と電気的に接続されている。具体的には、負極タブ群25と負極第2集電部62とは接続部Jにおいて接続される(
図12参照)。そして、負極第2集電部62は、負極第1集電部61を介して負極端子40と電気的に接続される。複数の正極タブ22tと同様に、ここでは、湾曲させたときの外方側の端が揃うように、複数の負極タブ24tの各々サイズが相互に異なっている。
【0076】
図15に示すように、負極活物質層24aは、帯状の負極集電体24cの長手方向に沿って、帯状に設けられている。負極活物質層24aは、電荷担体を可逆的に吸蔵および放出可能な負極活物質(例えば、黒鉛等の炭素材料)を含んでいる。負極活物質層24aの固形分全体を100質量%としたときに、負極活物質は、概ね80質量%以上、典型的には90質量%以上、例えば95質量%以上を占めていてもよい。負極活物質層24aは、負極活物質以外の任意成分、例えば、バインダー、分散剤、各種添加成分等を含んでいてもよい。バインダーとしては、例えばスチレンブタジエンゴム(SBR)等のゴム類を使用し得る。分散剤としては、例えばカルボキシメチルセルロース(CMC)等のセルロール類を使用し得る。
【0077】
セパレータ26は、
図15および
図3に示すように、帯状の部材である。セパレータ26は、電荷担体が通過し得る微細な貫通孔が複数形成された絶縁シートである。セパレータ26の幅は、負極活物質層24aの幅よりも大きい。正極22と負極24との間にセパレータ26を介在させることによって、正極22と負極24との接触を防止すると共に、正極22と負極24との間に電荷担体(例えば、リチウムイオン)を移動させることができる。特に限定されるものではないが、セパレータ26の厚み(
図16の積層方向MDの長さ。以下同じ)は、3μm以上が好ましく、5μm以上がより好ましい。また、セパレータ26の厚みは、25μm以下が好ましく、18μm以下がより好ましく、14μm以下がさらに好ましい。
【0078】
セパレータ26は、ここでは1つの巻回電極体20aに2枚使用されている。セパレータ26は、本実施形態のように1つの巻回電極体20aに2枚、すなわち、第1セパレータおよび第2セパレータを含むことが好ましい。また、ここでは2枚のセパレータがそれぞれ同じ構成であるが、それぞれ異なっていてもよい。そして、他の実施形態では、セパレータは1枚であってもよく、例えば電極体として積層電極体を製造する場合は、帯状のセパレータを九十九折りしたものを用いてもよい。
【0079】
ここで、
図16は、本実施形態に係る正極22と負極24とセパレータ26との界面を模式的に示す拡大図である。
図16に示すように、本実施形態に係るセパレータ26は、基材層27と、基材層27一方の表面上に設けられる耐熱層28(Heat Resistance Layer:HRL)と、を有している。また、耐熱層28の表面上には、接着層6が存在している。
【0080】
基材層27としては、従来公知の電池のセパレータに用いられる微多孔膜を特に制限なく使用できる。基材層27は、多孔質のシート状部材であることが好ましい。基材層27は、単層構造であってもよく、2層以上の構造、例えば3層構造であってもよい。基材層27は、ポリオレフィン樹脂からなることが好ましい。基材層27は、全体がポリオレフィン樹脂からなることがより好ましい。基材層27は、例えばポリオレフィン製の微多孔膜、好ましくはポリエチレン製の微多孔膜であるとよい。これによって、セパレータ26の柔軟性を充分に確保し、巻回電極体20aの作製(巻回およびプレス成形)を容易に実施できる。ポリオレフィン樹脂としては、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、またはこれらの混合物が好ましく、PEからなることがさらに好ましい。
【0081】
特に限定されるものではないが、基材層27の厚み(積層方向MDの長さ。以下同じ)は、3μm以上が好ましく、5μm以上がより好ましい。また、基材層27の厚みは、25μm以下が好ましく、18μm以下がより好ましく、14μm以下がさらに好ましい。基材層27の透気度は、30sec/100cc~500sec/100ccが好ましく、30sec/100cc~300sec/100ccがより好ましく、50sec/100cc~200sec/100ccがさらに好ましい。
【0082】
耐熱層28は、基材層27の上に設けられている。耐熱層28は、基材層27の上に形成されていることが好ましい。耐熱層28は、基材層27の表面に直接設けられていてもよいし、他の層を介して基材層27の上に設けられていてもよい。また、耐熱層28は、基材層27の片面または両面に形成されていることが好ましい。ただし、耐熱層28は必須ではなく、他の実施形態において省略することもできる。耐熱層28は、ここでは基材層27の正極22と対向する面全体に設けられている。これにより、セパレータ26の熱収縮をより的確に抑え、電池100の安全性の向上に貢献できる。耐熱層28の目付は、ここではセパレータ26の長手方向LDおよび巻回軸方向WDに均質である。特に限定されるものではないが、耐熱層28の厚み(積層方向MDの長さ。以下同じ)は、0.3μm以上が好ましく、0.5μm以上がより好ましく、1μm以上がさらに好ましい。また、耐熱層28の厚みは、6μm以下が好ましく、4μm以下がより好ましい。耐熱層28は、無機フィラーと耐熱層バインダーとを含むことが好ましい。
【0083】
無機フィラーとしては、従来公知この種の用途で使用されているものを特に制限なく使用できる。無機フィラーは、絶縁性のセラミック粒子を含むことが好ましい。なかでも、耐熱性、入手容易性等を考慮すると、アルミナ、ジルコニア、シリカ、チタニア等の無機酸化物や、水酸化アルミニウム等の金属水酸化物、ベーマイト等の粘土鉱物が好ましく、アルミナ、ベーマイトがより好ましい。また、セパレータ26の熱収縮を抑制する観点からは、特にアルミニウムを含む化合物が好ましい。耐熱層28の総質量に対する無機フィラーの割合は、85質量%以上が好ましく、90質量%以上、さらには95質量%以上がより好ましい。
【0084】
耐熱層バインダーとしては、従来公知この種の用途で使用されているものを特に制限なく使用できる。具体例として、アクリル系樹脂、フッ素系樹脂(例えば、PVdF)、エポキシ系樹脂、ウレタン樹脂、エチレン酢酸ビニル樹脂等が挙げられる。なかでもアクリル系樹脂が好ましい。
【0085】
接着層6は、ここでは、正極22と対向する面に設けられ、正極22と当接している。接着層6は、
図16に示すように、少なくともセパレータ26の正極22側の面に形成されていることが好ましい。接着層6は、ここでは耐熱層28の上に設けられている。接着層6は、耐熱層28の上に形成されていることが好ましい。接着層6は、耐熱層28の表面に直接設けられていてもよいし、他の層を介して耐熱層28の上に設けられていてもよい。また、接着層6は、基材層27の表面に直接設けられていてもよいし、耐熱層28以外の層を介して基材層27の上に設けられていてもよい。接着層6は、電解液との親和性が、例えば耐熱層28と比べて相対的に高く、電解液を吸収して膨潤する層であり得る。特に限定されるものではないが、巻回電極体20aにおける接着層6の厚み(
図16の積層方向MDの長さ。
図16のTに対応。上記プレス工程後の接着層6の厚みということもできる。)は、0.1μm以上が好ましく、0.2μm以上がより好ましく、0.5μm以上がさらに好ましい。また、接着層6の厚みは、10μm以下が好ましく、5μm以下が好ましく、3μm以下がより好ましい。即ち、巻回電極体20aにおける接着層6の厚みは、例えば、0.1μm~10μmの範囲内であることが好ましい。かかる範囲内とすることで、接着層6の接着性、電池100の充放電反応の均一化、および、Li析出抑制等を好適に実現することができる。
【0086】
また、巻回電極体20aにおける接着層6の直径(
図16のDに対応。上記プレス工程後の接着層6の直径ということもできる。)は、例えば10μm以上であり、50μm以上が好ましく、75μm以上がより好ましく、100μm以上がさらに好ましい。また、接着層6の厚みは、例えば600μm以下であり、500μm以下が好ましく、300μm以下が好ましく、200μm以下がより好ましい。即ち、巻回電極体20aにおける接着層6の厚みは、例えば、50μm~500μmの範囲内であることが好ましい。かかる範囲内とすることで、接着層6の接着性、電池100の充放電反応の均一化、および、Li析出抑制等を好適に実現することができる。
【0087】
接着層6を構成する樹脂等に関しては、<電池の製造方法>における対応する箇所を参照されたい。
【0088】
電解液は従来と同様でよく、特に制限はない。電解液は、例えば、非水系溶媒と支持塩とを含有する非水電解液である。非水系溶媒は、例えば、エチレンカーボネート、ジメチルカーボネート、エチルメチルカーボネート等のカーボネート類を含んでいる。支持塩は、例えば、LiPF6等のフッ素含有リチウム塩である。ただし、電解液は固体状(固体電解質)で、電極体群20と一体化されていてもよい。
【0089】
正極端子30は、
図10に示すように、封口板14の長辺方向Yの一方の端部(
図10の左端部)に形成された端子挿入穴18に挿入されている。正極端子30は、金属製であることが好ましく、例えばアルミニウムまたはアルミニウム合金からなることがより好ましい。一方、負極端子40は、封口板14の長辺方向Yの他方の端部(
図10の右端部)に形成された端子挿入穴19に挿入されている。なお、負極端子40は、金属製であることが好ましく、例えば銅または銅合金からなることがより好ましい。これらの電極端子(正極端子30、負極端子40)は、ここでは、電池ケース10の同じ面(具体的には封口板14)からそれぞれ突出している。ただし、正極端子30および負極端子40は、電池ケース10の異なる面からそれぞれ突出していてもよい。また、端子挿入穴18、19に挿入された電極端子(正極端子30、負極端子40)は、カシメ加工などによって封口板14に固定されていることが好ましい。
【0090】
上述した通り、正極端子30は、
図10に示すように、外装体12の内部で正極集電部50(正極第1集電部51、正極第2集電部52)を介して、各々の巻回電極体20a,20b,20cの正極22(
図13参照)と電気的に接続される。正極端子30は、正極内部絶縁部材70およびガスケット90によって、封口板14と絶縁される。なお、正極内部絶縁部材70は、正極第1集電部51と封口板14との間に介在するベース部70aと、当該ベース部70aから巻回電極体20a側に突出する突出部70bとを備えている。そして、端子挿入穴18を通じて電池ケース10の外部に露出した正極端子30は、封口板14の外部において正極外部導電部材32と接続される。一方、負極端子40は、
図10に示すように、外装体12の内部で負極集電部60(負極第1集電部61、負極第2集電部62)を介して、各々の巻回電極体20aの負極24(
図13参照)と電気的に接続される。負極端子40は、負極内部絶縁部材80およびガスケット90によって、封口板14と絶縁される。なお、正極内部絶縁部材70と同様に、負極内部絶縁部材80も、負極第1集電部61と封口板14との間に介在するベース部80aと、当該ベース部80aから巻回電極体20a側に突出する突出部80bとを備えている。そして、端子挿入穴19を通じて電池ケース10の外部に露出した負極端子40は、封口板14の外部において負極外部導電部材42と接続される。そして、上述した外部導電部材(正極外部導電部材32、負極外部導電部材42)と封口板14の外面14dとの間には、外部絶縁部材92が介在している。かかる外部絶縁部材92によって外部導電部材32、42と封口板14とを絶縁できる。
【0091】
また、上述した内部絶縁部材(正極内部絶縁部材70、負極内部絶縁部材80)の突出部70b、80bは、封口板14と巻回電極体20aとの間に配置される。かかる内部絶縁部材の突出部70b、80bによって、上方への巻回電極体20aの移動が規制され、封口板14と巻回電極体20aとの接触を防止できる。
【0092】
<電池の用途>
電池100は各種用途に利用可能であるが、例えば、乗用車、トラック等の車両に搭載されるモータ用の動力源(駆動用電源)として好適に用いることができる。車両の種類は特に限定されないが、例えば、プラグインハイブリッド自動車(PHEV;Plug-in Hybrid Electric Vehicle)、ハイブリッド自動車(HEV;Hybrid Electric Vehicle)、電気自動車(BEV;Battery Electric Vehicle)等が挙げられる。電池100は、電池反応のバラつきが低減されているため、組電池の構築に好適に用いることができる。
【0093】
以上、本開示の一実施形態について説明したが、上記実施形態は一例に過ぎない。本開示は、他にも種々の形態にて実施することができる。本開示は、本明細書に開示されている内容と当該分野における技術常識とに基づいて実施することができる。請求の範囲に記載の技術には、上記に例示した実施形態を様々に変形、変更したものが含まれる。例えば、上記した実施形態の一部を他の変形態様に置き換えることも可能であり、上記した実施形態に他の変形態様を追加することも可能である。また、その技術的特徴が必須なものとして説明されていなければ、適宜削除することも可能である。
【0094】
例えば、上記実施形態では、セパレータ26の正極22と対向する側の表面に、接着層6が形成されているが、これに限定されない。他の実施形態では、セパレータ26の負極22と対向する側の表面に接着層6が形成されていてもよい。あるいは、セパレータ26の正極22に対向する側の表面およびセパレータ26の負極24に対向する側の表面に、接着層6が形成されていてもよい。また、電極体がセパレータを2枚有する場合、いずれか一方のセパレータの表面のみに接着層が配置されていてもよい。
【0095】
例えば、上記実施形態では、接着層6は第1接着領域6Aおよび第2接着領域6Bを有しているが、これに限定されない。他の実施形態では、接着層6は、これらの領域に加えて、さらに他の接着領域を有していてもよい。
【0096】
例えば、
図17は、第3実施形態に係る
図3対応図である。また、
図18は、
図17中のXVIII-XVIII線に沿う模式的な縦断面図である。
図17および
図18に示すように、第3実施形態では、セパレータ126は、平面視において、円形状のドット状に配置された複数の接着層106を有する。接着層106は、第2接着領域106B(外周領域)と、第1接着領域106A(中央領域)とを有している。第1接着領域106Aの厚み(
図18のMD方向における長さ)は、第2接着領域106Bの厚み(
図18のMD方向における長さ)よりも大きくしている。かかる構成によると、上記巻回工程においてセパレータ126と電極とが弱く接着し、上記プレス工程においてはじめて、セパレータ126と電極とが強く接着する。第3実施形態は、接着層の形状を変更すること以外は、上述した第1実施形態と同様であってよい。なお、第1接着領域106Aの厚みおよび第2接着領域106Bの厚みの比は、上述したT1,T2の比を参照することができる。
【0097】
例えば、
図19は、第4実施形態に係る
図3対応図である。また、
図20は、
図19中のXX-XX線に沿う模式的な縦断面図である。
図19および
図20に示すように、第4実施形態では、セパレータ226は、平面視において、線状に配置された複数の接着層206を有する。接着層206は、第1接着領域206Aと、第2接着領域206Bとを有している。第1接着領域206Aの厚み(
図20のMD方向における長さ)は、第2接着領域206Bの厚み(
図20のMD方向における長さ)よりも大きくしている。かかる構成によると、上記巻回工程においてセパレータ226と電極とが弱く接着し、上記プレス工程においてはじめて、セパレータ226と電極とが強く接着する。第4実施形態は、接着層の形状を変更すること以外は、上述した第1実施形態と同様であってよい。なお、第1接着領域206Aの厚みおよび第2接着領域206Bの厚みの比は、上述したT1,T2の比を参照することができる。
【0098】
例えば、
図21は、第5実施形態に係る
図3対応図である。また、
図22は、
図21中のXXII-XXII線に沿う模式的な縦断面図である。
図21および
図22に示すように、第5実施形態では、セパレータ326は、平面視において、線状に配置された複数の接着層306を有する。接着層306は、第2接着領域306Bと、第2接着領域306Bの両側に存在する第1接着領域306Aを有している。かかる構成によると、上記巻回工程においてセパレータ326と電極とが弱く接着し、上記プレス工程においてはじめて、セパレータ326と電極とが強く接着する。第5実施形態は、接着層の形状を変更すること以外は、上述した第1実施形態と同様であってよい。なお、第1接着領域306Aの厚みおよび第2接着領域306Bの厚みの比は、上述したT1,T2の比を参照することができる。
【0099】
以上のとおり、ここで開示される技術の一態様として、以下の各項(item)に記載のものが挙げられる。
項1:帯状の第1電極と、帯状の第2電極とが、帯状のセパレータを介して巻回された扁平状の巻回電極体を備えた蓄電デバイスの製造方法であって、上記第1電極と、上記第2電極とを、上記セパレータを介して巻回し、巻回体を製造する巻回工程と、上記巻回工程の後、上記巻回体をプレス成形し扁平状の巻回電極体とするプレス工程と、を包含し、上記巻回工程において、少なくとも一方の表面に部分的に接着層を有するセパレータを用い、上記接着層は、第1接着領域と、第2接着領域と、を含み、上記第1接着領域の厚みは、上記第2接着領域の厚みよりも大きい、蓄電デバイスの製造方法。
また、ここで開示される技術の具体的な態様として、以下の各項(item)に記載のものが挙げられる。
項2:上記第1接着領域の厚みT1は、上記第2接着領域の厚みT2の1.5倍以上である、項1に記載の蓄電デバイスの製造方法。
項3:上記巻回工程において、上記第1接着領域と上記第1電極とが接着され、上記プレス工程において、上記第2接着領域と上記第1電極とが接着される、項1に記載の蓄電デバイスの製造方法。
項4:平面視において、上記接着層はドット状に配置されている、項1~項3のいずれか一つに記載の蓄電デバイスの製造方法。
項5:平面視において、上記接着層は線状に配置されている、項1~項3のいずれか一つに記載の蓄電デバイスの製造方法。
項6:平面視において、上記セパレータの片面の面積に対する、該セパレータの片面における上記接着層の形成面積の比は、0.005~0.5である、項1~項5のいずれか一つに記載の蓄電デバイスの製造方法。
項7:平面視において、上記接着層の面積に対する、上記第1接着領域の形成面積の比は、0.2~0.8である、項1~項6のいずれか一つに記載の蓄電デバイスの製造方法。
項8:上記第1接着領域を構成する樹脂のうち主体となる成分と、上記第2接着領域を構成する樹脂のうち主体となる成分とが同じである、項1~項7のいずれか一つに記載の蓄電デバイスの製造方法。
項9:上記巻回工程の前に、上記セパレータの表面のうち少なくとも一方の表面に上記接着層を形成する形成工程を有する、項1~項8のいずれか一つに記載の蓄電デバイスの製造方法。
項10:少なくとも一方の表面に部分的に接着層を有するセパレータであって、上記接着層は、第1接着領域と、第2接着領域とを含み、上記第1接着領域の厚みT1は、上記第2接着領域の厚みT2の1.5倍以上である、蓄電デバイス用セパレータ。
項11:平面視において、上記接着層はドット状に配置されている、項10に記載の蓄電デバイス用セパレータ。
項12:平面視において、上記接着層は線状に配置されている、項10に記載の蓄電デバイス用セパレータ。
項13:平面視において、上記セパレータの片面の面積に対する、該セパレータの片面における上記接着層の形成面積の比は、0.005~0.5である、項10~項12のいずれか一つに記載の蓄電デバイス用セパレータ。
項14:平面視において、上記接着層の面積に対する、上記第1接着領域の形成面積の比は、0.2~0.8である、項10~項13のいずれか一つに記載の蓄電デバイス用セパレータ。
項15:上記第1接着領域を構成する樹脂のうち主体となる成分と、上記第2接着領域を構成する樹脂のうち主体となる成分とが同じである、項10~項14のいずれか一つに記載の蓄電デバイス用セパレータ。
【符号の説明】
【0100】
1 電極体製造装置
2 ローラ
3 巻き芯
4 接着剤塗布部
5 乾燥部
6 接着層
6A 第1接着領域
6B 第2接着領域
10 電池ケース
12 外装体
14 封口板
15 注液孔
15a 封止部材
17 ガス排出弁
18,19 端子挿入穴
20 電極体群
20a~20c 電極体
22 正極
23 正極タブ群
24 負極
25 負極タブ群
26 セパレータ
27 基材層
28 耐熱層
30 正極端子
32 正極外部導電部材
40 負極端子
42 負極外部導電部材
50 正極集電部
60 負極集電部
70 正極内部絶縁部材
80 負極内部絶縁部材
90 ガスケット
92 外部絶縁部材
100 電池
200 プレス機