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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024119117
(43)【公開日】2024-09-03
(54)【発明の名称】保持部材および保持部材の製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/683 20060101AFI20240827BHJP
   C04B 35/111 20060101ALI20240827BHJP
【FI】
H01L21/68 P
C04B35/111
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023025777
(22)【出願日】2023-02-22
(71)【出願人】
【識別番号】000004547
【氏名又は名称】日本特殊陶業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100160691
【弁理士】
【氏名又は名称】田邊 淳也
(74)【代理人】
【識別番号】100195659
【弁理士】
【氏名又は名称】木村 祐介
(72)【発明者】
【氏名】上松 秀樹
(72)【発明者】
【氏名】南端 友哉
【テーマコード(参考)】
5F131
【Fターム(参考)】
5F131AA02
5F131AA03
5F131AA32
5F131AA33
5F131BA00
5F131CA12
5F131EA02
5F131EA03
5F131EA04
5F131EA05
5F131EB01
5F131EB11
5F131EB54
5F131EB78
5F131EB79
5F131EB84
(57)【要約】
【課題】パーティクルの発生を抑制することができる技術を提供する。
【解決手段】αアルミナを主成分とし、対象物を保持する保持部材であって、前記保持部材は、前記対象物を保持する側の面である保持面を有し、前記保持面には、凸部と、凹部と、が形成されており、前記凹部の底部を画定している底面に含まれるγアルミナの割合は5%よりも小さいことを特徴とする。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
αアルミナを主成分とし、対象物を保持する保持部材であって、
前記保持部材は、前記対象物を保持する側の面である保持面を有し、
前記保持面には、凸部と、凹部と、が形成されており、
前記凹部の底部を画定している底面に含まれるγアルミナの割合は5%よりも小さいことを特徴とする、保持部材。
【請求項2】
請求項1に記載の保持部材であって、
前記底面に含まれるγアルミナの割合は、前記凸部の頂部を画定している頂面に含まれるγアルミナの割合以上であることを特徴とする、保持部材。
【請求項3】
保持部材の製造方法であって、
αアルミナを主成分とする部材の加工対象面に超短パルスレーザーを照射することにより凸部および凹部を形成する面加工工程と、
前記加工対象面のうち少なくとも前記凹部が形成された領域を含む一部に対して、前記面加工工程の際の強度よりも低い強度で前記超短パルスレーザーを再照射する再照射工程と、を備えることを特徴とする、保持部材の製造方法。
【請求項4】
請求項3に記載の保持部材の製造方法であって、
前記再照射工程には、
前記面加工工程の際の強度よりも低い第1強度で前記超短パルスレーザーを再照射する第1再照射工程と、
前記第1再照射工程の後に前記第1強度よりも低い第2強度で前記超短パルスレーザーを再照射する第2再照射工程と、が含まれることを特徴とする、保持部材の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、保持部材および保持部材の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
対象物を静電引力により保持する保持部材が知られている。例えば、特許文献1には、保持部材であるセラミックス部材のうち対象物を保持する側の保持面にブラスト加工により凹部が形成された静電チャックが開示されている。ブラスト加工は、メディアを衝突させて保持面を研磨する加工である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2020-129632号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、特許文献1に記載の静電チャックでは、メディアの衝突によって保持部材に凹部が形成されていることから、凹部にマイクロクラックが発生したり、凹部表面に歪が蓄積したりする虞がある。凹部にマイクロクラックが発生していると、対象物保持時の保持部材への加熱および冷却(熱サイクル)の過程で保持部材に発生する熱応力によって、マイクロクラックを起点としたパーティクルが発生することがある。また、凹部に歪が蓄積していると、保持部材の使用時にクラックの発生が誘発されて、そのクラックを起点としてパーティクルが発生することがある。このため、パーティクルの発生を抑制することについては、なお改善の余地があった。
【0005】
本発明は、上述した課題の少なくとも一部を解決するためになされたものであり、パーティクルの発生を抑制することができる技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、上述の課題の少なくとも一部を解決するためになされたものであり、以下の形態として実現できる。
(1)本発明の一形態によれば、保持部材が提供される。この保持部材は、αアルミナを主成分とし、対象物を保持する保持部材であって、前記保持部材は、前記対象物を保持する側の面である保持面を有し、前記保持面には、凸部と、凹部と、が形成されており、前記凹部の底部を画定している底面に含まれるγアルミナの割合は5%よりも小さいことを特徴とするとする。
【0007】
γアルミナはαアルミナよりもヤング率が低いことから、凹部の底面に適量含まれることで熱サイクルの過程で保持部材に発生する熱応力の緩和に寄与する。一方、γアルミナはαアルミナよりも耐プラズマ性が低いことから、凹部の底面に過剰に含まれるとγアルミナ自身がパーティクルの発生源となり得る。この構成によれば、凹部の底面にγアルミナが5%よりも小さい割合で含まれていることから、γアルミナがパーティクルの発生源となるのを抑制しつつ、熱サイクルの過程で保持部材に発生する熱応力のうち凹部の底面に発生する熱応力を緩和することができる。したがって、凹部の底面において熱応力に起因したマイクロクラックの発生を抑制できることから、パーティクルの発生を抑制することができる。
【0008】
(2)上記形態の保持部材において、前記底面に含まれるγアルミナの割合は、前記凸部の頂部を画定している頂面に含まれるγアルミナの割合以上であってもよい。
この構成によれば、保持面のうち特に凹部の底面において、熱応力に起因したマイクロクラックの発生を抑制できる。したがって、保持面のうち特に凹部の底面において、パーティクルの発生を抑制することができる。
【0009】
(3)本発明の別の一形態によれば、保持部材の製造方法が提供される。この保持部材の製造方法は、αアルミナを主成分とする部材の加工対象面に対して、超短パルスレーザーを照射することにより、前記加工対象面に凸部および凹部を形成する面加工工程と、前記加工対象面のうち少なくとも前記凹部が形成された領域を含む一部に対して、前記面加工工程の際の強度よりも小さい強度で前記超短パルスレーザーを再照射する再照射工程と、を備えることを特徴とする。
面加工工程の際、αアルミナを主成分とする部材の加工対象面に対して超短パルスレーザーを照射することによって形成された凹部の表面には、γアルミナや非晶質となっている部分が含まれることになる。この構成によれば、凹部が形成された領域を含む少なくとも一部の加工対象面に対して、更に、再照射工程として、面加工工程の際の強度よりも小さい強度で超短パルスレーザーが照射される。超短パルスレーザーの強度が低いほど、その照射領域に含まれるγアルミナの量や非晶質の量は少なくなる傾向にあることから、面加工工程によって凹部が形成された領域に含まれるγアルミナの一部や非晶質の一部を、再照射工程によって除去することができる。その結果、保持部材が対象物を保持する際に対象物に付着する凹部由来のバックサイドパーティクルの発生を抑制することができる。
【0010】
(4)上記形態の保持部材の製造方法において、前記再照射工程には、前記面加工工程の際の強度よりも低い第1強度で前記超短パルスレーザーを再照射する第1再照射工程と、前記第1再照射工程の後に前記第1強度よりも低い第2強度で前記超短パルスレーザーを再照射する第2再照射工程と、が含まれていてもよい。
この構成によれば、加工対象面のうち少なくとも凹部が形成された領域を含む一部に対して、第1再照射工程時に第1強度の超短パルスレーザーが照射されたのち、第2再照射工程時に第1強度よりも弱い第2強度の超短パルスレーザーが照射される。したがって、超短パルスレーザーの照射部分に含まれるγアルミナの量や非晶質の量を段階的に除去することができる。
【0011】
(5)本発明の一形態によれば、保持部材が提供される。この保持部材は、セラミックを主成分とし、対象物を保持する保持部材であって、前記保持部材は、前記対象物を保持する側の面である保持面を有し、前記保持面のうち少なくとも一部の表面は、第1セラミック結晶粒子で構成され、前記保持面よりも内側の部分は、第2セラミック結晶粒子で構成され、前記第1セラミック結晶粒子の粒子径である第1粒子径は、前記第2セラミック結晶粒子の粒子径である第2粒子径よりも小さいことを特徴とする。
【0012】
この構成によれば、保持面のうち少なくとも一部の表面は、第1セラミック結晶粒子で構成され、保持部材のうち保持面よりも内側の部分は、第2セラミック結晶粒子で構成されている。そして、第1セラミック結晶粒子の粒子径である第1粒子径は、第2セラミック結晶粒子の粒子径である第2粒子径よりも小さい。このため、保持面のうち少なくとも一部の表面は、第2粒子径よりも小さい第1粒子径の第1セラミック結晶粒子で構成されていることから、保持部材の使用時に保持面から発生するパーティクルサイズを低減することができる。また、第1セラミック結晶粒子は、第2セラミック結晶粒子の一部が削れたセラミック結晶粒子に相当することから、第1セラミック結晶粒子で構成された表面には、その表面に向けて粒内(結晶粒子のうち粒界より内側の部分)を露出させたセラミック結晶粒子が含まれている。すなわち、そのような表面においては、表面に露出している粒界が少なっていることから、そのような表面を含んだ保持面の耐プラズマ性を向上させることができる。
【0013】
(6)上記形態の保持部材において、前記保持面には、凸部と、凹部と、が形成されており、前記表面は、前記凹部を画定する底面であってもよい。
この構成によれば、凹部を画定している底面は、第1セラミック結晶粒子で構成されている。このため、保持部材が対象物を保持している際に、対象物と凹部との間を不活性ガスが流れることによって保持面から発生するパーティクルサイズを低減することができる。
【0014】
(7)上記形態の保持部材において、前記表面は、レーザー加工面であってもよい。
この構成によれば、レーザー加工が施された面であるレーザー加工面は、各々の結晶粒子を粒界から粒内に向けて微細に削り進められた面であることから、第1セラミック結晶粒子の第1粒子径は、第2粒子径よりも小さくなっている。したがって、第2粒子径よりも第1粒子径が小さい保持部材を精度良く提供することができる。また、粒界に沿って結晶粒子を粒子ごと脱離させるブラスト加工を施されたブラスト加工面と比べて、レーザー加工面は、表面粗さを小さくすることができる。すなわち、表面粗さに起因する表面積の増大を小さくすることができる。その結果、プラズマ腐食される表面積が小さくなることから、プラズマ腐食によるパーティクルの発生を抑制することができる。
【0015】
なお、本発明は、種々の態様で実現することが可能であり、例えば、保持部材、保持部材および保持部材の保持面に静電引力を発生させる静電電極を備える静電チャック、真空チャック、セラミックスヒータ、半導体製造装置、およびこれらを備える部品、およびこれらの製造方法等の形態で実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】第1実施形態の静電チャックの断面構成を模式的に示す説明図である。
図2】凹部の形成過程を示した説明図である。
図3】セラミック結晶粒子の形状を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
<第1実施形態>
図1は、第1実施形態の静電チャック1の断面構成を模式的に示す説明図である。静電チャック1は、対象物である半導体ウエハWを静電引力により吸着して保持する装置である。図1に示した矢印は、静電チャック1に対して、半導体ウエハWが吸着される方向を示している。静電チャック1は、例えば、半導体製造装置の真空チャンバー内で半導体ウエハWを固定するために使用される。静電チャック1は、保持部材10と、静電電極30と、を備える。
【0018】
保持部材10は、対象物である半導体ウエハWを保持する円盤状の部材であり、αアルミナを主成分としている。主成分とは、体積含有率の最も多い成分のことをいう。保持部材10は、保持面10fと、裏面10bと、を有する。保持面10fは、半導体ウエハWを保持する側の円形状の面である。裏面10bは、保持面10fの反対側に位置する円形状の面である。
【0019】
保持面10fには、環状凸部12と、複数の凸部14と、複数の凹部16と、が形成されている。環状凸部12は、保持面10fの外縁に沿って形成されている。凸部14の各々は、環状凸部12の内側に形成されている。凹部16の各々は、凸部14の間に形成されている。換言すれば、凹部16の形成位置は、環状凸部12の内側において、凸部14の形成されていない位置にあたる。本実施形態では、保持面10fと向き合う方向から保持面10fを見たとき(平面視したとき)、円形状の保持面10f上に凹部16の各々が点在して配置されているとともに、保持面10fに占める凹部16の割合は9割以上である。
【0020】
保持部材10の内側には、複数の貫通流路22が形成されている。貫通流路22の各々は、保持面10fと裏面10bとの間を貫通する流路であり、裏面10bの側から供給されるヘリウムガス等の不活性ガスを保持面10fの側に供給するための流路である。貫通流路22は、保持面10fの側において凹部16に接続している。
【0021】
静電電極30は、保持部材10の内部に設けられた円盤状の部材であり、タングステンやモリブデン等の導電性材料によって形成されている。静電電極30は、図示しない外部電源から電力が供給されることによって、保持面10fに静電引力を発生させる。半導体ウエハWは、この静電引力で保持面10fに向けて吸着されることによって、保持面10fに保持される。
【0022】
保持面10fに静電引力が発生している際、半導体ウエハWは、環状凸部12や凸部14と接触することによって、保持面10fに保持される。このような保持面10fに半導体ウエハWが保持された状態において、半導体ウエハWと保持面10fとの間の熱伝導性を高めるために、半導体ウエハWと保持面10fとの間に不活性ガスが供給される。詳細には、不活性ガスは、裏面10bの側から貫通流路22を経て、凹部16から保持面10fの側に供給される。保持面10fの側に供給された不活性ガスは、半導体ウエハWと凹部16との間の空間を流れて、その空間全体に拡散する。
【0023】
図2(A)(B)は、凹部16の形成過程を示した説明図である。図2(A)は、保持部材10の基となる加工対象部材10pの一部を示している。加工対象部材10pは、加工対象面10fpを有する。加工対象面10fpは、図1の保持部材10において保持面10fとなる面であり、環状凸部12、複数の凸部14および複数の凹部16が形成される前の保持面10fにあたる。加工対象面10fpのうち凹部16が形成される凹部形成領域(不図示)の各々にレーザー加工が施されることにより、凹部形成領域に凹部16の各々が形成される。レーザー加工は、加工対象に向けてレーザーを照射する加工である。図2(A)に示す矢印は、レーザー加工の際に照射されるレーザーを表している。そして、後述する図2(B)に示すように、凹部形成領域に凹部16の各々が形成されることにより、凹部16の各々に隣接する部分が環状凸部12および複数の凸部14となる。
【0024】
本実施形態において、レーザー加工に用いられるレーザーは、超短パルスレーザーである。超短パルスレーザーは、パルス幅がフェムト秒領域(10―15)からピコ秒領域(10―10)の範囲にあるレーザーであり、エネルギー密度が高い。この超短パルスレーザーを凹部16の形成に用いた場合、レーザー照射された加工対象部分から熱が拡散する時間よりパルス幅が短く、加工対象部分の周囲に熱が伝わる前に加工対象部分を構成している材料を瞬時に蒸発させることから、熱影響の少ない精密な加工が可能となる。
【0025】
図2(B)は、保持部材10の一部を示している。凹部16は、底面16Bと、側面16Sと、によって画定されている。底面16Bは、凹部16の底部を画定している面である。側面16Sは、凹部16の側部を画定している面である。また、側面16Sは、凸部14の側部を画定している面でもあることから、凸部14は、側面16Sと、頂面14Tと、によって画定されている。頂面14Tは、凸部14の頂部を画定している面である。
【0026】
上述したように、保持部材10はαアルミナを主成分としていることから、レーザー加工を施す対象である加工対象部材10p(図2(A))も同様に、αアルミナを主成分としている。このような加工対象部材10pが有する加工対象面10fpにレーザー加工が施されて形成された底面16Bおよび側面16Sのうち、少なくとも底面16Bには、レーザー加工により溶融したαアルミナが冷却されて転移したγアルミナが含まれている。また、底面16Bには、さらに、非晶質となっている部分が含まれている。非晶質となっている部分では、αアルミナやγアルミナと比べて結晶構造が乱れている。このような非晶質となっている部分は、溶融したαアルミナがγアルミナに転移する際の冷却と比べて、より急速にαアルミナが冷却されることで生成されると考えられる。なお、加工対象面10fpにブラスト加工が施されて凹部16が形成された場合、αアルミナがγアルミナに転移することはないため、その凹部16の底部を画定している底面16Bにγアルミナは含まれていない。
【0027】
底面16Bにγアルミナが含まれていることは、薄膜XRDによって保持面10fを測定した際のXRDパターンにおいて、γアルミナのピーク位置付近で相対強度が強くなっていることから確認される。薄膜XRDは、測定対象の表面に対してX線の入射角度を低角度(例えば1°以下)で入射させるXRDである。本実施形態では、入射角度2°でX線を底面16Bに入射させて得られた測定結果において、γアルミナのピーク位置付近で相対強度が強くなっていることを確認できた場合、底面16Bにγアルミナが含まれているとみなす。また、底面16Bに非晶質となっている部分が含まれていることは、薄膜XRDによって保持面10fを測定した際のXRDパターンにおいて、ハローパターンが存在していることから確認される。なお、加工対象面10fpにブラスト加工が施されて形成された凹部16の底面16Bにγアルミナが含まれていないことは、その底面16Bを薄膜XRDによって測定した際のXRDパターンにおいて、γアルミナのピーク位置付近で相対強度が強くなっていないことから確認することができる。
【0028】
また、保持部材10において、底面16Bに含まれるγアルミナの割合は5%よりも小さく、0%よりも大きい。なお、底面16Bに含まれるγアルミナの割合は、0.1%以上であることが好ましい。ここでいう割合とは、αアルミナに対するγアルミナの強度比のことである。この強度比は、薄膜XRDによって測定したピークのうちγアルミナを示すピークの中でγアルミナの(400)面のピークの強度を、αアルミナを示すピークの中でαアルミナの(113)面のピークの強度で除することによって算出される。
【0029】
また、保持部材10において、底面16Bに含まれるγアルミナの割合は、頂面14Tに含まれるγアルミナの割合以上である。頂面14Tに含まれるγアルミナの割合は、凹部16形成時に照射されるレーザーの発散角および照射位置の精度に応じて決まる。すなわち、加工対象面10fp(図2(A)参照)のうち凹部形成領域のみにレーザーが照射された場合(頂面14Tとなる領域にはレーザーが照射されなかった場合)には、頂面14Tに含まれるγアルミナの割合は、0%である。一方、レーザーの発散角が比較的大きい、もしくは、レーザーによる照射位置の精度が低い場合には、加工対象面10fpのうち凹部形成領域だけでなく頂面14Tとなる領域にもレーザーが照射され、頂面14Tに含まれるγアルミナの割合は、0%より大きくなる。
【0030】
図2(A)(B)にて説明したように、保持部材10の製造時には、加工対象面10fpに超短パルスレーザーを照射することにより、複数の凸部14および複数の凹部16を形成する面加工工程が実施される。そして、面加工工程後には、加工対象面10fpのうち少なくとも凹部16が形成された領域を含む一部に対して、面加工工程の際の強度よりも低い強度で超短パルスレーザーを再照射する再照射工程が実施される。
【0031】
超短パルスレーザーの強度が低いほど、その照射領域に含まれるγアルミナの量や非晶質の量は少なくなる傾向にある。例えば、主成分であるαアルミナを99.5%以上含む部材に対して、強度A(上述の面加工工程の際の強度に相当)で超短パルスレーザーを照射した場合には、その照射領域に含まれるγアルミナの割合は、0.9%となり、強度B(上述の面加工工程の際の強度よりも低い強度に相当)で超短パルスレーザーを照射した場合には、その照射領域に含まれるγアルミナの割合は、0.6%となる。また、主成分であるαアルミナを92%含む部材に対して、強度A(上述の面加工工程の際の強度に相当)で超短パルスレーザーを照射した場合には、その照射領域に含まれるγアルミナの割合は、1.6%となり、強度B(上述の面加工工程の際の強度よりも低い強度に相当)で超短パルスレーザーを照射した場合には、その照射領域に含まれるγアルミナの割合は、1.0%となる。このように、超短パルスレーザーの強度が低いほど、その照射領域に含まれるγアルミナの量は少なくなる傾向にあり、同照射領域に含まれる非晶質の量についても、同様の傾向にあると推定される。
【0032】
凹部16は、比較的高い強度の超短パルスレーザーの照射によって形成されることから、凹部16を画定している側面16Sや底面16Bに含まれるγアルミナの量や非晶質の量も比較的多くなっている。このため、保持部材10の製造時には、再照射工程を実施することによって、それら側面16Sや底面16Bに含まれるγアルミナの一部や非晶質の一部を除去する。詳細には、最後に照射された超短パルスレーザーの強度に応じて、その照射領域に含まれるγアルミナの量が決まることから、面加工工程時よりも低い強度の超短パルスレーザーを側面16Sや底面16Bに照射することによって、側面16Sや底面16Bに含まれるγアルミナの量や非晶質の量を少なくしている。その結果、保持部材10において、底面16Bに含まれるγアルミナの割合は5%よりも小さくなっている。
【0033】
図3(A)~(C)は、セラミック結晶粒子の形状を示す模式図である。ここでいうセラミック結晶粒子とは、アルミナの結晶粒子を指す。図3(A)は、加工対象面10fp近傍を構成するセラミック結晶粒子の形状を示している。結晶粒子P1~P4を画定している各々の線は、粒界を表している。図3(B)は、図3(A)に示された加工対象面10fpに対して、ブラスト加工が施された場合のセラミック結晶粒子の形状を示している。ブラスト加工は、加工対象に向けて研掃材を投射する加工である。図3(B)の加工後面10fbは、ブラスト加工で加工対象面10fpが削られたことにより露出した面である。図3(C)は、図3(A)に示された加工対象面10fpに対して、レーザー加工が施された場合のセラミック結晶粒子の形状を示している。図3(C)の加工後面10fcは、レーザー加工で加工対象面10fpが削られたことにより露出した面である。図3(A)~(C)において、加工対象面10fp、加工後面10fbおよび加工後面10fcは、太線で示されている。
【0034】
図3(A)~(C)を用いて、加工対象面10fpを加工する際の加工の種類によって、加工後の面を構成するセラミック結晶粒子の粒子径が異なることを説明する。図3(B)において、加工後面10fbのうち露出部分Ebは、加工対象面10fpへのブラスト加工で結晶粒子P1,P2が脱離したことにより、粒界が露出した部分である。ブラスト加工は、研掃材の投射により、粒界に沿って結晶粒子を粒子ごと脱離させることから、図3(B)に示すように、加工後面10fbの表面粗さが大きくなりやすいとともに加工後面10fbに露出する粒界の面積も大きくなりやすい。一方、図3(C)において、加工後面10fcのうち露出部分Ecは、加工対象面10fpへのレーザー加工で結晶粒子P1,P2の一部が削られたことにより、粒内(粒界より内側の部分)が露出した部分である。図3(C)に示す結晶粒子p1,p2は、一部が削られた結晶粒子P1,P2にあたる。レーザー加工は、各々の結晶粒子を粒界から粒内に向けて微細に削り進めることから、図3(C)に示すように、加工後面10fcの表面粗さは大きくなりにくく、加工後面10fcに露出する粒界の面積も大きくなりにくい。また、加工後面10fcには粒内が露出しやすいことから、加工後面10fcの表面を構成するセラミック結晶粒子の粒子径は、加工対象面10fpや加工後面10fbと比べて、小さくなりやすい。
【0035】
上述したように、複数の凹部16は、加工対象面10fpにレーザー加工が施されることによって形成されており、側面16Sおよび底面16Bのうち少なくとも底面16Bは、レーザー加工面に相当する。このため、底面16Bを構成するセラミック結晶粒子の粒子径は、図3(C)で説明したように、レーザー加工により少なくとも一部が削られていることから(例えば図3(C)の結晶粒子p1,p2)、保持面10fよりも内側の部分を構成するセラミック結晶粒子(例えば図3(C)の結晶粒子P3,P4)の粒子径と比べて小さくなっている。以降の説明において、底面16Bを構成しているセラミック結晶粒子を第1セラミック結晶粒子と呼ぶとともに、第1セラミック結晶粒子の粒子径を第1粒子径と呼ぶ。また、保持部材10のうち保持面10fよりも内側の部分を構成しているセラミック結晶粒子を第2セラミック結晶粒子と呼ぶとともに、第2セラミック結晶粒子の粒子径を第2粒子径と呼ぶ。すなわち、保持部材10において、底面16Bは、第1セラミック結晶粒子で構成された面であり、その第1粒子径は、第2粒子径よりも小さい。なお、第1セラミック結晶粒子および第2セラミック結晶粒子は、ともに保持部材10を構成している粒子である。すなわち、保持面10fの上にコーティングが施されていた場合でも、そのコーティングにより形成された層を構成している結晶粒子は、第1セラミック結晶粒子にはあたらないということである。また、第1セラミック結晶粒子および第2セラミック結晶粒子は、同じセラミック材質の材料から構成されている。すなわち、第1粒子径と第2粒子径との大小の比較は、同一材料の結晶粒子の間で行われるものとする。
【0036】
第1粒子径が第2粒子径よりも小さいことは、薄膜XRDによって保持面10fを測定した際の結果(XRDパターン)と、通常のXRDによって保持部材10の内部を測定した際の結果(XRDパターン)と、を比較することによって確認できる。通常のXRDは、測定対象の内部に向けてX線を入射させるXRDである。比較には、薄膜XRDおよびXRDにて測定された半価幅の値が用いられる。具体的には、第1粒子径が第2粒子径よりも小さいことは、薄膜XRDの測定結果における半価幅の値が、XRDの測定結果における半価幅の値よりも大きいことで確認される。また、第1粒子径の値および第2粒子径の値は、それら半価幅の値から、下記の式(1)で表されるScherrerの式を用いて算出することができる。
r=(K・λ)/βcosθ …(1)
r:粒子径、K:Scherrer定数、λ:測定に用いたX線の波長、β:半価幅、θ:ブラッグ角
【0037】
本実施形態において、レーザー加工を施す対象であるセラミック部材10p(図2(A))は、αアルミナで構成されていることから、保持部材10のうち保持面10fよりも内側の部分についても、αアルミナで構成されている。一方、側面16Sおよび底面16Bのうち少なくとも底面16Bの近傍は、レーザー加工によりαアルミナが冷却されて転移したγアルミナで構成されている。γアルミナの存在は、薄膜XRDによって保持面10fを測定した際のXRDパターンにおいて、γアルミナのピーク位置付近で相対強度が強くなっていることから確認される。
【0038】
また、第1セラミック結晶粒子は、第2セラミック結晶粒子の一部がレーザー加工により削れたセラミック結晶粒子に相当するため、凹部16を画定している側面16Sおよび底面16Bのうち少なくとも底面16Bを構成するセラミック結晶粒子の中には、底面16Bの表面に向けて粒内を露出させたセラミック結晶粒子が含まれている(例えば図3(C)の結晶粒子p1,p2)。
【0039】
また、SEMによる保持部材10の断面の観察において、底面16Bの付近に、複数の微小なポア(空洞)が確認された。また、底面16Bを構成するセラミック結晶粒子の形状は、ブラスト加工で形成された凹部底面と比べて、丸みを帯びている傾向にあった。また、保持部材10の内部から底面16Bに至るクラックの長さは、ブラスト加工で形成された凹部底面と比べて、短い傾向にあった。また、保持部材10の内部から底面16Bに至るクラックの数は、ブラスト加工で形成された凹部底面と比べて、少ない傾向にあった。また、図3(B)(C)で説明したように、底面16Bの表面粗さは、ブラスト加工で形成された凹部底面と比べて、小さい傾向にあった。
【0040】
以上説明したように、本実施形態の静電チャック1が備える保持部材10において、保持面10fに形成された凹部16の底面16Bには、5%よりも小さい割合でγアルミナが含まれている。γアルミナはαアルミナよりもヤング率が低いことから、凹部16の底面16Bに適量含まれることで熱サイクルの過程で保持部材10に発生する熱応力の緩和に寄与する。一方、γアルミナはαアルミナよりも耐プラズマ性が低いことから、凹部16の底面16Bに過剰に含まれるとγアルミナ自身がパーティクルの発生源となり得る。保持部材10においては、凹部16の底面16Bにγアルミナが5%よりも小さい割合で含まれていることから、γアルミナがパーティクルの発生源となるのを抑制しつつ、熱サイクルの過程で保持部材10に発生する熱応力のうち凹部16の底面16Bに発生する熱応力を緩和することができる。したがって、凹部16の底面16Bにおいて熱応力に起因したマイクロクラックの発生を抑制できることから、パーティクルの発生を抑制することができる。
【0041】
また、保持部材10において、底面16Bに含まれるγアルミナの割合は、頂面14Tに含まれるγアルミナの割合以上である。このため、保持面10fのうち特に凹部16の底面16Bにおいて、熱応力に起因したマイクロクラックの発生を抑制できる。したがって、保持面10fのうち特に凹部16の底面16Bにおいて、パーティクルの発生を抑制することができる。
【0042】
また、保持部材10の製造時には、加工対象面10fpに超短パルスレーザーを照射することにより、複数の凹部16を形成する面加工工程が実施される。したがって、メディアの衝突(ブラスト加工)によって凹部16を形成する場合と比べて、凹部16にマイクロクラックが発生する可能性を低減するとともに歪が蓄積することを回避することができるため、パーティクルの発生を抑制することができる。
【0043】
上述の面加工工程の際、加工対象面10fpに対して超短パルスレーザーを照射することによって形成された凹部16の表面には、γアルミナや非晶質となっている部分が含まれることになる。この点に関して、保持部材10の製造時には、凹部16が形成された領域を含む少なくとも一部の加工対象面10fpに対して、更に、再照射工程として、面加工工程の際の強度よりも小さい強度で超短パルスレーザーが照射される。したがって、面加工工程によって凹部16が形成された領域に含まれるγアルミナの一部や非晶質の一部を、再照射工程によって除去することができる。その結果、保持部材10が対象物を保持する際に対象物に付着する凹部16由来のバックサイドパーティクルの発生を抑制することができる。
【0044】
また、保持部材10において、保持面10fのうち少なくとも底面16Bは、第1セラミック結晶粒子で構成され、保持面10fよりも内側の部分は、第2セラミック結晶粒子で構成されている。そして、第1セラミック結晶粒子の粒子径である第1粒子径は、第2セラミック結晶粒子の粒子径である第2粒子径よりも小さい。このため、保持面10fのうち少なくとも底面16Bは、第2粒子径よりも小さい第1粒子径の第1セラミック結晶粒子で構成されていることから、保持部材10の使用時に保持面10fから発生するパーティクルサイズを低減することができる。また、第1セラミック結晶粒子は、第2セラミック結晶粒子の一部が削れたセラミック結晶粒子に相当することから、第1セラミック結晶粒子で構成された底面16Bには、その底面16Bに向けて粒内(結晶粒子のうち粒界より内側の部分)を露出させたセラミック結晶粒子が含まれている。すなわち、底面16Bに露出している粒界が少なくなっていることから、そのような底面16Bを含んだ保持面10fの耐プラズマ性を向上させることができる。
【0045】
また、保持部材10において、保持面10fよりも内側の部分を構成するセラミック結晶粒子の粒子径(第2粒子径)は、底面16Bを構成するセラミック結晶粒子の粒子径(第1粒子径)と比べて大きくなっている。結晶粒子の粒子径が小さいと、粒子間の接触が増えて熱損失が増える傾向にある。保持部材10では、保持面10fよりも内側の部分を構成するセラミック結晶粒子の粒子径は、第1粒子径よりも大きい第2粒子径であることから、同部分における粒子間の接触が低減されていることにより、同部分における熱損失を低減することができる。
【0046】
また、保持部材10において、凹部16を画定している底面16Bは、第1セラミック結晶粒子で構成されている。このため、保持部材10が対象物である半導体ウエハWを保持している際に、半導体ウエハWと凹部16との間を不活性ガスが流れることによって保持面10fから発生するパーティクルサイズを低減することができる。
【0047】
また、保持部材10において、側面16Sおよび底面16Bのうち少なくとも底面16Bは、レーザー加工面に相当する。このため、レーザー加工面である底面16Bは、各々のセラミック結晶粒子を粒界から粒内に向けて微細に削り進められた面であることから、第1セラミック結晶粒子の第1粒子径は、第2粒子径よりも小さくなっている。したがって、第2粒子径よりも第1粒子径が小さい保持部材10を精度良く提供することができる。また、粒界に沿って結晶粒子を粒子ごと脱離させるブラスト加工を施されたブラスト加工面と比べて、レーザー加工面は、表面粗さを小さくすることができる。すなわち、表面粗さに起因する表面積の増大を小さくすることができる。その結果、プラズマ腐食される表面積が小さくなることから、プラズマ腐食によるパーティクルの発生を抑制することができる。
【0048】
また、保持部材10を備える静電チャック1によれば、静電電極30に対して電力が供給されることによって、静電引力(吸着力)が発生し、この静電引力により半導体ウエハWを保持面10fの側に保持することができる。また、第2粒子径よりも第1粒子径は小さいことから、保持部材10の使用時に保持面10fから発生するパーティクルサイズを低減しつつ、耐プラズマ性を向上させた静電チャック1を提供することができる。
【0049】
<第2実施形態>
第2実施形態の静電チャックが備える保持部材は、面加工工程から再照射工程を経て製造される点は第1実施形態と同じであるが、再照射工程において段階的に強度を低くした超短パルスレーザーを照射する点が第1実施形態と異なる。
【0050】
第2実施形態の保持部材の製造時において、面加工工程後に実施される再照射工程には、第1再照射工程と、第2再照射工程と、が含まれる。第1再照射工程は、面加工工程の際の強度よりも低い第1強度で超短パルスレーザーを再照射する工程である。第2再照射工程は、第1再照射工程の後に第1強度よりも低い第2強度で超短パルスレーザーを再照射する工程である。第1再照射工程および第2再照射工程で超短パルスレーザーが照射される領域は、同じであるとする。すなわち、第2実施形態の再照射工程においては、加工対象面10fpのうち凹部16が形成された領域等に対して、2段階で強度を低くして超短パルスレーザーを照射する。上述したように、最後に照射された超短パルスレーザーの強度に応じて、その照射領域に含まれるγアルミナの量が決まることから、凹部16の側面16Sや底面16Bに含まれるγアルミナの量や非晶質の量は、第2強度に応じた量となる。
【0051】
以上説明した第2実施形態においても、第1実施形態と同様に、パーティクルの発生を抑制することができる。また、第2実施形態では、第1再照射工程時に第1強度の超短パルスレーザーが照射されたのち、第2再照射工程時に第1強度よりも弱い第2強度の超短パルスレーザーが照射される。したがって、超短パルスレーザーの照射部分に含まれるγアルミナの量や非晶質の量を段階的に除去することができる。
【0052】
<本実施形態の変形例>
本発明は上記の実施形態に限られるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において種々の態様において実施することが可能であり、例えば次のような変形も可能である。
【0053】
上記実施形態では、保持面10fには、環状凸部12と、複数の凸部14と、複数の凹部16と、が形成されていたが、これに限られない。例えば、保持面10fには、環状凸部12は形成されておらず、複数の凸部14と、複数の凹部16と、が形成されていてもよい。
【0054】
上記実施形態では、保持部材10の内側には、複数の貫通流路22が形成されていたが、これに限られない。例えば、保持部材10の内側には、複数の貫通流路22に加えて、保持部材10の内部において貫通流路22同士を接続する流路や、その流路から分岐して凹部16に接続する流路が形成されていてもよい。
【0055】
上記実施形態では、凹部16は、超短レーザーを照射することによって形成されていたが、これに限られない。例えば、凹部16にγアルミナが含まれる限り、超短パルスレーザーとは異なるレーザーを用いたレーザー加工や、レーザー加工とは異なる他の任意の加工が施されることによって、凹部16形成されてもよい。
【0056】
上記実施形態において、さらに、保持部材10の内部に、タングステンやモリブデン等の導電性材料によって形成された複数のヒータ電極を備えていてもよい。このような形態の場合、保持部材10に対象物が保持されている際、外部電源から供給される電力でヒータ電極が発熱することによって、対象物を温めることができる。
【0057】
上記実施形態において、さらに、保持部材10の裏面に、板状のベース部材が接合されていてもよい。このベース部材の内部に冷媒流路が形成されている場合には、保持部材10に対象物が保持されている際に、冷媒流路内を冷媒が流れることによって、ベース部材から保持部材を介して、対象物を冷却することができる。
【0058】
第2実施形態において、再照射工程時には、2段階で強度を低くして超短パルスレーザーを照射するとしていたが、これに限られない。再照射工程時には、3段階以上で強度を低くして超短パルスレーザーを照射してもよい。
【0059】
第2実施形態において、第1再照射工程および第2再照射工程で超短パルスレーザーが照射される領域は、同じであるとしていたが、これに限られない。第1再照射工程および第2再照射工程で超短パルスレーザーが照射される領域は、異なっていてもよい。例えば、第1再照射工程で超短パルスレーザーが照射される領域と比べて、第2再照射工程で超短パルスレーザーが照射される領域は狭くてもよい。
【0060】
以上、実施形態、変形例に基づき本態様について説明してきたが、上記した態様の実施の形態は、本態様の理解を容易にするためのものであり、本態様を限定するものではない。本態様は、その趣旨並びに特許請求の範囲を逸脱することなく、変更、改良され得ると共に、本態様にはその等価物が含まれる。また、その技術的特徴が本明細書中に必須なものとして説明されていなければ、適宜、削除することができる。
【0061】
本発明は、以下の形態としても実現することが可能である。
[適用例1]
αアルミナを主成分とし、対象物を保持する保持部材であって、
前記保持部材は、前記対象物を保持する側の面である保持面を有し、
前記保持面には、凸部と、凹部と、が形成されており、
前記凹部の底部を画定している底面に含まれるγアルミナの割合は5%よりも小さいことを特徴とする、保持部材。
[適用例2]
適用例1に記載の保持部材であって、
前記底面に含まれるγアルミナの割合は、前記凸部の頂部を画定している頂面に含まれるγアルミナの割合以上であることを特徴とする、保持部材。
[適用例3]
保持部材の製造方法であって、
αアルミナを主成分とする部材の加工対象面に超短パルスレーザーを照射することにより凸部および凹部を形成する面加工工程と、
前記加工対象面のうち少なくとも前記凹部が形成された領域を含む一部に対して、前記面加工工程の際の強度よりも低い強度で前記超短パルスレーザーを再照射する再照射工程と、を備えることを特徴とする、保持部材の製造方法。
[適用例4]
適用例3に記載の保持部材の製造方法であって、
前記再照射工程には、
前記面加工工程の際の強度よりも低い第1強度で前記超短パルスレーザーを再照射する第1再照射工程と、
前記第1再照射工程の後に前記第1強度よりも低い第2強度で前記超短パルスレーザーを再照射する第2再照射工程と、が含まれることを特徴とする、保持部材の製造方法。
【符号の説明】
【0062】
1…静電チャック
10…保持部材
10b…裏面
10f…保持面
12…環状凸部
14…凸部
14T…頂面
16…凹部
16B…底面
16S…側面
22…貫通流路
30…静電電極
図1
図2
図3