IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 日本製粉株式会社の特許一覧

特開2024-119121粒状α化澱粉質原料ゲルを含むブレッダーミックスを使用する揚げ物の製造方法
<>
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024119121
(43)【公開日】2024-09-03
(54)【発明の名称】粒状α化澱粉質原料ゲルを含むブレッダーミックスを使用する揚げ物の製造方法
(51)【国際特許分類】
   A23L 7/157 20160101AFI20240827BHJP
   A23L 5/10 20160101ALI20240827BHJP
   A23L 13/50 20160101ALI20240827BHJP
【FI】
A23L7/157
A23L5/10 E
A23L13/50
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023025786
(22)【出願日】2023-02-22
(71)【出願人】
【識別番号】000231637
【氏名又は名称】株式会社ニップン
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100103610
【弁理士】
【氏名又は名称】▲吉▼田 和彦
(74)【代理人】
【識別番号】100109070
【弁理士】
【氏名又は名称】須田 洋之
(74)【代理人】
【識別番号】100123777
【弁理士】
【氏名又は名称】市川 さつき
(74)【代理人】
【識別番号】100111796
【弁理士】
【氏名又は名称】服部 博信
(74)【代理人】
【識別番号】100183379
【弁理士】
【氏名又は名称】藤代 昌彦
(72)【発明者】
【氏名】豊島 大智
(72)【発明者】
【氏名】曽田 晋介
【テーマコード(参考)】
4B025
4B035
4B042
【Fターム(参考)】
4B025LB06
4B025LG02
4B025LG04
4B025LG07
4B025LG28
4B025LP03
4B025LP10
4B025LP20
4B035LC03
4B035LE17
4B035LG21
4B035LG42
4B035LK15
4B035LP07
4B035LP16
4B035LP27
4B042AC05
4B042AD18
4B042AG07
4B042AH01
4B042AK06
4B042AK09
4B042AK12
4B042AP05
4B042AP10
4B042AP19
(57)【要約】
【課題】本発明は、保存しても衣のサクサクとした食感が劣化し難く、更には、電子レンジ再加熱しても衣のサクサクとした食感を有する揚げ物を提供することを課題とする。
【解決手段】ブレッダーに粒状α化澱粉質原料ゲルを配合することにより上記課題を解決する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
水分含有量が25質量%以上である、揚げ物衣材用の粒状α化澱粉質原料ゲル。
【請求項2】
タピオカ澱粉、馬鈴薯澱粉、小麦澱粉、とうもろこし澱粉、米粉および小麦粉からなる群から選択される1種以上の澱粉質原料に由来する、請求項1に記載の粒状α化澱粉質原料ゲル。
【請求項3】
請求項1に記載の粒状α化澱粉質原料ゲルと、粉末状の澱粉質原料とを含む、揚げ物衣材用ブレッダーミックス。
【請求項4】
前記粒状α化澱粉質原料ゲルの含有量が、前記粒状α化澱粉質原料ゲルと前記粉末状の澱粉質原料との合計に対して5質量%以上である、請求項3に記載のブレッダーミックス。
【請求項5】
請求項1若しくは2に記載の粒状α化澱粉質原料ゲル又は請求項3若しくは4に記載のブレッダーミックスを使用する、揚げ物の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、揚げ物の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、揚げ物は、油ちょう直後はサクミを有する良好な食感が得られるが、経時的にサクミの低下が生じ、ひきが強く、歯切れが悪くなり、食感が低下することが知られている。これは、調理後の経時によって具材の水分が衣に移行し、具材のジューシーさが失われると共に衣が柔らかくなって、食感が失われやすいことが一つの原因である。特に近年は、調理済みの揚げ物が流通販売され、消費者がこれを購入してそのまま喫食するか又は電子レンジなどで加熱調理してから喫食するスタイルが普及しているが、斯かる食事スタイルにおいては、揚げ物が製造されてから喫食されるまでに比較的長時間を要するため、前記の水分移行に起因する衣の品質低下が問題となりやすく、特に、喫食前に揚げ物を電子レンジで加熱調理すると、電子レンジのマイクロ波によって具材の水分が加熱蒸散して衣に移行しやすくなるため、衣の品質低下はより一層深刻なものとなる。
【0003】
このような問題を解決するために種々検討されているが、更なる改良が求められていた。
【0004】
特許文献1では、小麦粉と、カルボキシル基含量0.1~1.1%である酸化澱粉と、加熱溶解度が3~40%である膨潤抑制澱粉とを特定の比率で含む揚げ物用衣材が開示されており、サクミがある揚げ物用衣材ができることが記載されている。
【0005】
特許文献2では、カルボキシル基含量が0.1~1.1%である酸化サゴ澱粉、及び/又は酸処理サゴ澱粉を含有することを特徴とする揚げ物用ミックスが開示されており、油調後、経時的に食感が低下することを抑制できることが記載されている。
【0006】
特許文献3では、食物繊維含有量60質量%以上の食物繊維高含有難消化性澱粉を20質量%以上含有する揚げ物用ミックスが開示されており、サクミがあり、製造後ある程度の時間が経過した場合や電子レンジなどで再加熱した場合でも維持され得ることが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2011-254785号公報
【特許文献2】特開2019-041717号公報
【特許文献3】再公表特許第2018/193655号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の目的は、保存しても衣のサクサクとした食感が劣化し難く、更には、電子レンジ再加熱しても衣のサクサクとした食感を有する揚げ物を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者は、ブレッダーに粒状α化澱粉質原料ゲルを配合することで、揚げ物にサクサクとした食感を付与することができ、時間がたってもサクサクとした食感が維持できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0010】
すなわち、本発明は、以下の態様を包含する。
〔1〕水分含有量が25質量%以上である、揚げ物衣材用の粒状α化澱粉質原料ゲル。
〔2〕タピオカ澱粉、馬鈴薯澱粉、小麦澱粉、とうもろこし澱粉、米粉および小麦粉からなる群から選択される1種以上の澱粉質原料に由来する、〔1〕に記載の粒状α化澱粉質原料ゲル。
〔3〕〔1〕または〔2〕に記載の粒状α化澱粉質原料ゲルと粉末状の澱粉質原料とを含む、揚げ物衣材用ブレッダーミックス。
〔4〕前記粒状α化澱粉質原料ゲルの含有量が、前記粒状α化澱粉質原料ゲルと前記粉末状の澱粉質原料との合計に対して5質量%以上である、〔3〕に記載のブレッダーミックス。
〔5〕〔1〕若しくは〔2〕に記載の粒状α化澱粉質原料ゲル又は〔3〕若しくは〔4〕に記載のブレッダーミックスを使用する、揚げ物の製造方法。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、サクサクとした食感の衣を有する揚げ物を得ることができ、その食感は常温保持しても劣化し難く、更には、電子レンジ再加熱においてもサクサクとした食感が維持される揚げ物を得ることができる。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明は、水分含有量が25質量%以上である、揚げ物衣材用の粒状α化澱粉質原料ゲルに関する。
【0013】
本発明において、「澱粉質原料」は、澱粉類及び/又は穀粉類からなる。「澱粉類」とは、穀物、塊茎、塊根、樹幹等及びそれらのワキシー種又はハイアミロース種から分離精製された澱粉(小麦澱粉、米澱粉、とうもろこし澱粉、タピオカ澱粉、馬鈴薯澱粉、甘藷澱粉、緑豆澱粉、サゴ澱粉等、及びそれらのワキシー澱粉並びにハイアミロース澱粉)、及び、前記分離精製された澱粉をエーテル化、エステル化、アセチル化、架橋、酸化処理、熱処理、酵素処理等並びにそれらを組合せて処理を行った変性澱粉などをいう。「穀粉類」とは、普通小麦、デュラム小麦、米、ライ麦、大麦、とうもろこし、そば、大豆、ひえ、あわ、アマランサス等の穀物由来の穀粉;馬鈴薯、里芋、キャッサバあるいは甘藷、山芋等の穀物に準ずる主食となる農作物である塊茎粉あるいは塊根粉などをいう。「澱粉質原料」は粉末状であるが、本明細書においては、「粒状」に成形されたものと区別するために、「粉末状の澱粉質原料」という場合もある。
【0014】
澱粉は、アミロースとアミロペクチンが水素結合により規則正しく配列したミセル構造を有する。澱粉に加水した澱粉懸濁液を加熱すると、アミロースとアミロペクチンのミセル構造が緩んで吸水し(「膨潤」)、更に加熱を続けるとミセル構造が壊れて澱粉の粒子が崩壊してアミロースが溶出する(この一連の流れを「α化」という)。このようにα化されてミセル構造が緩んだ又は壊れた状態の澱粉を「α化澱粉」という。加熱する澱粉懸濁液における澱粉密度が低いと、粘性のある「α化澱粉糊液」となり、澱粉密度が高いと弾性のある「α化澱粉ゲル」となる。α化澱粉糊液やα化澱粉ゲルを急速乾燥すると、ミセル構造が緩んだ又は壊れたままの乾燥物(「乾燥α化澱粉」)となる。乾燥α化澱粉に加水することで、α化澱粉糊液やα化澱粉ゲルに復元することができる。一方、α化澱粉糊液やα化澱粉ゲルを緩やかに乾燥すると、アミロースとアミロペクチンが水素結合によって不規則なミセル構造を形成し(「β化」)、硬く弾性のない「β化澱粉」となる。
【0015】
本明細書において「α化澱粉」とは、α化度が80質量%以上である澱粉を意味する。α化度はジアスターゼ法により測定することができる。α化履歴のない澱粉を「生澱粉」として「α化澱粉」及び「β化澱粉」と区別する場合もある。また、含有される澱粉がα化されている穀粉を「α化穀粉」という。例えば、澱粉がα化されている米粉を「α化米粉」といい、単に「米粉」という場合には澱粉のα化履歴がないものをいう。澱粉質材料についても同様に、含有される澱粉がα化されているものを「α化澱粉質原料」といい、単に「澱粉質原料」という場合には澱粉のα化履歴がないものをいう。
【0016】
(1)粒状α化澱粉質原料ゲル
本発明において「粒状α化澱粉質原料ゲル」とは、粒状に成形されたα化澱粉質原料のゲルである。好ましくは、タピオカ澱粉、馬鈴薯澱粉、とうもろこし澱粉、小麦澱粉、米粉および小麦粉からなる群から選択される1種以上の澱粉質原料に由来する。
【0017】
α化澱粉質原料ゲルは、澱粉質原料を適量の水性液体原料と混合し加熱して澱粉をα化させることにより調製することができる。加熱手段には特に制限は無く、茹で処理、蒸し処理、マイクロ波処理等を挙げることができる。あるいは、α化澱粉質原料ゲルは、乾燥α化澱粉質原料を適量の水性液体原料と混合して又は水性液体原料に浸漬させることにより調製してもよい。時間を短縮するために、加熱した水性液体原料と乾燥α化澱粉質原料を混合してもよく、水性液体原料を加熱しながら乾燥α化澱粉質原料を浸漬させてもよい。
【0018】
α化澱粉質原料ゲルを調製するための原料としては市販品を使用することができる。例えば、「GABAN パールタピオカ」(株式会社GABAN社製)、「タピオカ150g」(ユウキ食品株式会社製)、「コーンアルファーY」(三和澱粉工業株式会社製)、「タピオカアルファーTP-2」(三和澱粉工業株式会社製)、「北海道産 ばれいしょでんぷん」(西田澱粉工業株式会社製)、「小麦澱粉 白雪」(籠島澱粉株式会社製)等が挙げられる。
【0019】
水性液体原料としては、飲食に適するものであれば何れも適用することができ、ミネラルウォーター、水道水等の飲用水;牛乳等の畜乳;醤油、醸造酢、清酒等の醗酵液;昆布出汁、鰹出汁、椎茸出汁、豆乳等の煮汁;オレンジジュース、パイナップルジュース等の搾り汁;塩化ナトリウム、塩化カリウム、硫酸ナトリウム等の無機塩の水溶液;クエン酸、アスコルビン酸、グルタミン酸、イノシン酸等の有機酸及びその塩の水溶液;ショ糖、果糖、麦芽糖等の糖類の水溶液などが挙げられる。煮汁や搾り汁を用いる場合には、遠心分離や濾過などの固液分離方法により水不溶性成分を除去することが好ましい。好ましくは飲用水であるが、嗜好性に合わせて他の水性液体原料を適宜用いて着味してもよい。また、アントシアニン等の色素成分を含む食用色素を用いて着色してもよい。
【0020】
粒状に成形するための手段は特に限定されるものではなく、公知の手段によればよい。
【0021】
澱粉質原料(澱粉はα化されていない)を用いる場合、α化する前に粒状に成形してもよく、α化してから粒状に成形してもよい。α化する前に粒状に成形する場合、例えば、澱粉質原料100質量部と水30~150質量部との可塑性ペースト状混合物を、押出し機を用いて粒状に押出し成形して粒状澱粉質原料ペースト(澱粉はα化されていない)を得てもよく、あるいは可塑性ペースト状混合物を適度な大きさに分割し、熱板上で回転させて表面の澱粉を加熱しながら球状に成形して粒状澱粉質原料ペースト(表面付近の澱粉はα化されているが、内部の大半の澱粉はα化されていない)を得てもよい。また、澱粉質原料100質量部と水200~300質量部を混合したスラリー状混合物にマンナンやペクチン等のゲル化剤を添加して粘稠な液になるまで撹拌し、水酸化カルシウム等の二価金属塩を加えてゲル化させて澱粉質原料ゲルとし、押出し機を用いて押出し成形して粒状澱粉質原料ゲル(澱粉はα化されていない)を得てもよい。あるいは、シート状にした澱粉質原料ゲルを型抜き成形して粒状澱粉質原料ゲルを得ることもできる。粒状澱粉質原料ペースト又は粒状澱粉質原料ゲルは、α化処理に供するまで、乾燥させて保存しておくこともできる。このようにして得られた粒状澱粉質原料ペースト、粒状澱粉質原料ゲル又はそれらの乾燥物を茹で処理や蒸し処理等の加熱手段に供してα化することにより粒状α化澱粉質原料ゲルを得ることができる。加熱条件は、使用する澱粉質原料の種類や粒状澱粉質原料ペースト、粒状澱粉質原料ゲル又は乾燥物の大きさや形状にもよるが、例えば、茹で処理であれば沸騰湯浴中で5~60分間、蒸し処理であれば80℃以上の飽和蒸気中で5~60分間加熱処理すればよい。α化してから粒状に成形する場合、例えば、澱粉質原料に水を加えて加熱して得たα化澱粉質原料ゲルを押出し成形して粒状に成形してもよく、シート状にしたα化澱粉質原料ゲルを型抜き成形して粒状α化澱粉質原料ゲルを得ることもできる。
【0022】
α化澱粉質原料を用いる場合、例えば、粉末状の乾燥α化澱粉質原料100質量部と水30~400質量部とをゲル状になるまで混合してα化澱粉質原料ゲルとし、押出し機を用いて押出し成形するか、板上で回転成形することにより粒状α化澱粉質原料ゲルを得ることができる。
【0023】
このようにして得られた粒状α化澱粉質原料ゲルは、水分含有量が10質量%以下になるように急速乾燥させて粒状の乾燥α化澱粉質原料として保存しておいて、使用前に加水して粒状α化澱粉質原料ゲルに復元してもよい。
【0024】
粒状α化澱粉質原料ゲルの形状は特に制限されるものではなく、回転成形であれば略球状、押出し成形であればそのダイスの形状に応じて略球状、略角柱状、略円柱状、略星柱状、略リング状等の形状に成形することができる。粒状α化澱粉質原料ゲルの大きさは200μmより大きければ特に制限されるものではなく、略球状であれば直径1~10mm、略立方体状であれば一辺1~10mm、略円柱状であれば半径1~10mmかつ高さ1~10mm、略リング状であれば外径1~10mmかつ内径0.5~9mmかつ高さ1~10mmであってもよい。粒状α化澱粉質原料ゲルは大きさが10mmを超えるものであってもよいが、自重で揚げ種から脱落する恐れがあるため、揚げ種の上面のみに配置すればよく、このような場合には上面にサクサク感が付与されて食感差のある揚げ物を製造できることから、嗜好性に合わせて使い分ければよい。
【0025】
本発明の粒状α化澱粉質原料ゲルは、その水分含有量が25質量%以上であり、好ましくは30~90質量%であり、より好ましくは35~85質量%であり、更に好ましくは45~80質量%であり、より更に好ましくは55~75質量%である。水分含有量は、例えば、赤外線水分計FD-660(ケット化学研究所製)を用いて測定することができる。水分含有量がこの範囲内であれば、サクサクとした食感の揚げ物を得ることができる。澱粉質原料(澱粉はα化されていない)を用いる場合には、水性液体原料の量や加熱条件を調節することで、乾燥α化澱粉質原料を用いる場合には、混合する水溶性液体原料の量や水溶性液体原料への浸漬時間を調節することで、得られる粒状α化澱粉質原料ゲルの水分含有量を調整することができる。
【0026】
(2)粉末状の澱粉質原料
本発明において「粉末状」とは、平均粒径が200μm以下であることを意味する。平均粒径は、マイクロトラック・ベル社製の粒子径分布測定装置を用いて測定できる。本発明における「粉末状の澱粉質原料」は、粉末状のα化履歴のない澱粉質原料を意味する。前記澱粉質原料は、好ましくは澱粉類からなるが、所望する食味や食感あるいは製造における作業性を考慮して小麦粉等の穀粉類を使用することができる。そのような場合、澱粉質原料における澱粉類の含有率は50質量%以上が好ましく、60質量%以上がより好ましく、70質量%以上であることが更に好ましい。粉末状の澱粉質原料は、好ましくはタピオカ澱粉、馬鈴薯澱粉、とうもろこし澱粉、小麦澱粉、小麦粉および米粉からなる群から選択される1種以上である。
【0027】
(3)揚げ物衣材用ブレッダーミックス
本発明の揚げ物衣材用ブレッダーミックスは、粒状α化澱粉質原料ゲルと粉末状の澱粉質原料とを含む。揚げ物衣材用ブレッダーミックスにおける粒状α化澱粉質原料ゲルの量は、粒状α化澱粉質原料ゲルと粉末状の澱粉質原料との合計に対し、好ましくは5質量%以上であり、より好ましくは15~85質量%であり、更に好ましくは20~75質量%であり、より更に好ましくは25~55質量%である。この範囲内であれば、サクサクとした食感の揚げ物を得ることができる。
【0028】
本発明の効果を損なわない範囲で揚げ物衣材用ブレッダーミックスに通常使用される各種の成分を任意に用いることができる。そのような成分として、卵粉、食塩、調味料、増粘剤、香辛料、香料、着色料等の添加剤を添加してもよい。
【0029】
(4)揚げ物の製造方法
本発明の揚げ物の製造方法は、本発明の粒状α化澱粉質原料ゲルまたはブレッダーミックスを用いる以外は通常の揚げ物の製造方法に準じて製造することができる。
【0030】
(4-1)揚げ種を準備する工程
使用できる揚げ種は、特に限定されず、例えば、肉類、魚介類、野菜類、豆類、きのこ類等を挙げることができる。これらは、生でも加熱処理されていてもよい。
【0031】
(4-2)揚げ物衣材用バッターを被覆する工程
フライ製品の製造の際には、任意に、衣材用バッター(衣液)を揚げ種表面の少なくとも一部に付着させてもよい。すなわち、揚げ種の種類や所望するフライ製品の外観に応じて、揚げ種の表面全体を衣材用バッターで覆ってもよく、又は揚げ種表面の一部に衣材用バッターを付着させてもよい。衣材用バッターを揚げ種に付着させる際は、衣材用バッター中に揚げ種を浸したり、揚げ種に衣材用バッターを塗布するかまたは噴きつければよい。衣材用バッターとしては、通常の揚げ物の製造方法に使用されているものを特に制限なく使用することができる。
【0032】
(4-3)揚げ物衣材用ブレッダーミックスを付着させる工程
揚げ物衣材用ブレッダーミックスは、揚げ種に直接まぶす、または揚げ種を衣材用バッターで被覆した後にまぶすなどして使用することができる。
【0033】
(4-4)フライする工程
本発明のフライは公知の方法と同様でよく、ブレッダーミックスを付着させた揚げ種を160~200℃に予熱した油槽に投入してフライする手法等が挙げられる。
【実施例0034】
以下に、実施例に基づいて本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例によって限定されるものではない。
【0035】
<製造例1 粉末状の澱粉質原料の製造>
小麦粉(ニップン製 ダイヤ)と馬鈴薯澱粉を下表1の割合で混合して粉末状の澱粉質原料(平均粒径45μm)を得た。
【表1】
【0036】
<製造例2 粒状α化タピオカ澱粉ゲルを含む揚げ物衣材用ブレッダーミックスの製造>
(1)粒状のタピオカ澱粉乾燥物(株式会社GABAN社製 パールタピオカ)を水分含有量70質量%になるまで沸騰水中で茹でて粒状α化タピオカ澱粉ゲルを調製した。
(2)製造例1に従って製造した粉末状の澱粉質原料70質量部に、(1)で得られた粒状α化タピオカ澱粉ゲル30質量部を加え、ミキサーで均一に分散するよう混合し、揚げ物衣材用ブレッダーミックスを調製した。
【0037】
<製造例3 粒状α化タピオカ澱粉ゲルを含む揚げ物衣材用ブレッダーミックスの製造>
(1)粉末状の乾燥α化タピオカ澱粉40質量部に水60質量部を加えて、水分含有量60質量%のα化タピオカ澱粉ゲルを得た。
(2)(1)で得られたゲルを押出機により粒径5mmの粒状に成形し、粒状α化タピオカ澱粉ゲルを得た。
(3)製造例1に従って製造した粉末状の澱粉質原料70質量部に、(2)で得られた粒状α化タピオカ澱粉ゲル30質量部を加え、ミキサーで均一に分散するよう混合し、揚げ物衣材用ブレッダーミックスを調製した。
【0038】
<製造例4 粒状α化とうもろこし澱粉ゲルを含む揚げ物衣材用ブレッダーミックスの製造>
(1)粉末状の乾燥α化とうもろこし澱粉40質量部に水60質量部を加えて、水分含有量60質量%のα化とうもろこし澱粉ゲルを得た。
(2)(1)で得られたゲルを押出機により粒径5mmの粒状に成形し、粒状α化とうもろこし澱粉ゲルを得た。
(3)製造例1に従って製造した粉末状の澱粉質原料70質量部に、(2)で得られた粒状α化とうもろこし澱粉ゲル30質量部を加え、ミキサーで均一に分散するよう混合し、揚げ物衣材用ブレッダーミックスを調製した。
【0039】
<製造例5 粒状α化小麦澱粉ゲルを含む揚げ物衣材用ブレッダーミックスの製造>
(1)粉末状の乾燥α化小麦澱粉40質量部に水60質量部を加えて、水分含有量60質量%のα化小麦澱粉ゲルを得た。
(2)(1)で得られたゲルを押出機により粒径5mmの粒状に成形し、粒状α化小麦澱粉ゲルを得た。
(3)製造例1に従って製造した粉末状の澱粉質原料70質量部に、(2)で得られた粒状α化小麦澱粉ゲル30質量部を加え、ミキサーで均一に分散するよう混合し、揚げ物衣材用ブレッダーミックスを調製した。
【0040】
<製造例6 粒状α化馬鈴薯澱粉ゲルを含む揚げ物衣材用ブレッダーミックスの製造>
(1)粉末状の乾燥α化馬鈴薯澱粉40質量部に水60質量部を加えて、水分含有量60質量%のα化馬鈴薯澱粉ゲルを得た。
(2)(1)で得られたゲルを押出機により粒径5mmの粒状に成形し、粒状α化馬鈴薯澱粉ゲルを得た。
(3)製造例1に従って製造した粉末状の澱粉質原料70質量部に、(2)で得られた粒状α化馬鈴薯澱粉ゲル30質量部を加え、ミキサーで均一に分散するよう混合し、揚げ物衣材用ブレッダーミックスを調製した。
【0041】
<製造例7 粒状α化米粉ゲルを含む揚げ物衣材用ブレッダーミックスの製造>
(1)粉末状の乾燥α化米粉40質量部に水60質量部を加えて、水分含有量60質量%のα化米粉ゲルを得た。
(2)(1)で得られたゲルを押出機により粒径5mmの粒状に成形し、粒状α化米粉ゲルを得た。
(3)製造例1に従って製造した粉末状の澱粉質原料70質量部に、(2)で得られた粒状α化米粉ゲル30質量部を加え、ミキサーで均一に分散するよう混合し、揚げ物衣材用ブレッダーミックスを調製した。
【0042】
<製造例8 タピオカ澱粉と小麦粉に由来する粒状α化澱粉質原料ゲルを含む揚げ物衣材用ブレッダーミックスの製造>
(1)タピオカ澱粉50質量部と小麦粉50質量部に水50質量部を加えて、可塑性ペースト状混合物を得た。
(2)(1)で得られた混合物を押出機により粒径5mmの粒状に成形して100℃の湯中へ連続して投下し、30分浸漬させた後、容器より掬い出して自然冷却し、タピオカ澱粉と小麦粉に由来する水分含有量60質量%の粒状α化澱粉質原料ゲルを得た。
(3)製造例1に従って製造した粉末状の澱粉質原料70質量部に、(2)で得られた粒状α化澱粉質原料ゲル30質量部を加え、ミキサーで均一に分散するよう混合し、揚げ物衣材用ブレッダーミックスを調製した。
【0043】
<製造例9 揚げ物(鶏から揚げ)の製造>
(1)鶏もも肉を約80g片にぶつ切りにした。
(2)薄力小麦粉50質量部、とうもろこし粉20質量部、小麦澱粉23質量部、塩5質量部、グルタミン酸ナトリウム2質量部に170質量部の水を加え、撹拌して揚げ物衣材用バッターを調製した。
(3)前記カットした鶏もも肉100質量部に対して20質量部の揚げ物衣材用バッターを練り込んだ。
(4)揚げ物衣材用バッターを練り込んだ鶏もも肉に、製造例3で得られた揚げ物衣材用ブレッダーミックスを満遍なく付着させた。
(5)得られた未油ちょう鶏から揚げを170℃に予熱した油浴に投入し、6分間油ちょうを行い、金属製の油切りバットに重ならないように並べ、油切りし、鶏から揚げを得た。
【0044】
<評価例1揚げ物(鶏から揚げ)の官能評価>
得られた鶏から揚げの衣の食感について、10名の熟練パネラーにより下記評価基準表1に従って官能評価を行った。官能評価は、鶏から揚げの室温で静置し粗熱をとったもの(フライ直後)、3時間室温静置したもの(経時3時間後)、3時間室温静置した後に600Wの電子レンジで5個を1分間温めたもの(レンジアップ)について行った。
なお、製造例1の粉末状の澱粉質原料のみからなるブレッダーミックスを使用した揚げ物のフライ直後のサクサク感を3点とした。
【0045】
評価基準表1
【表2】
【0046】
<試験例1 粒状α化タピオカ澱粉ゲルの水分含有量の検討>
製造例2-(1)に従って、タピオカ澱粉乾燥物の茹で時間を調整することで、水分含有量が20~90質量%になるように粒状α化タピオカ澱粉ゲルを調製した。製造例2-(2)に従い、表3の配合で揚げ物衣材用ブレッダーミックスを調製し、製造例9に従って揚げ物を製造し、評価基準表1に従って食感の違いを評価した。
【0047】
実施例1~8において、比較例1と比べて、フライ直後、経時3時間後、レンジアップのいずれにおいても食感が優れており、フライ直後と比較した経時3時間後、レンジアップでの食感の劣化も抑制されていた。特に実施例4(水分60質量%)、実施例5(水分70質量%)では、サクサクと歯切れのよい食感が得られた。なお、実施例8(水分90質量%)の粒状α化タピオカ澱粉ゲルは非常に柔らかかったため、形状が安定しなかった。比較例2(水分20質量%)では、食感が硬く、不適であった。この結果から、粒状α化澱粉ゲルの水分含有量は、25質量%以上であればサクサク感を向上させ且つ経時および電子レンジ再加熱での食感の劣化を抑制することができ、90質量%未満であれば外観も良好となり、60~70質量%が好ましいことがわかった。
【0048】
【表3】
【0049】
<試験例2 粒状α化澱粉質原料ゲルの原材料の種類の検討>
製造例3-(2)、製造例4―(2)、製造例5-(2)、製造例6-(2)、製造例7―(2)、製造例8-(2)に従って製造した粒状α化澱粉質原料ゲルを、製造例3-(3)、製造例4-(3)、製造例5-(3)、製造例6-(3)、製造例7-(3)、製造例8-(3)に従って表4の割合で製造例1の粉末状の澱粉質原料と混合して揚げ物衣材用ブレッダーミックスを調製し、製造例9に従って揚げ物を製造し、評価基準表1に従って食感の違いを評価した。なお、比較例3では、粒状α化澱粉質原料ゲルの替わりに粉末状のタピオカ澱粉(生澱粉)を用いた。
【0050】
サクミは、実施例9~12において、比較例1と比べて、フライ直後、経時3時間後、レンジアップのいずれにおいても優れており、フライ直後と比較した経時3時間後、レンジアップでの食感の劣化も抑制されていた。特に実施例9、12では、サクサクと歯切れのよい食感となった。実施例10、11では、経時3時間後及びレンジアップにおいて、実施例9、12と比較するとやや硬い傾向があったが、比較例1よりもサクサクとした食感であった。粉末状のタピオカ澱粉を使用した比較例3は、比較例1と同等であった。
【0051】
【表4】
【0052】
<試験例3 配合割合の検討>
製造例2-(1)に従って調製した水分含有量70質量%の粒状α化タピオカ澱粉ゲルを、製造例2-(2)に従って表5の割合で製造例1の粉末状の澱粉質原料と混合して揚げ物衣材用ブレッダーミックスを調製し、製造例9に従って揚げ物(鶏から揚げ)を製造し、評価基準表1に従って食感の違いを評価した。
【0053】
サクミは、実施例5、15~22において、比較例1と比べて、フライ直後、経時3時間後、レンジアップのいずれにおいても優れており、フライ直後と比較した経時3時間後、レンジアップでの食感の劣化も抑制されていた。特に実施例5、17、18では、サクサクと歯切れのよい食感となった。実施例15では粒状α化タピオカ澱粉ゲルの量が少ないため、実施例22では粒状α化タピオカ澱粉ゲルの量が多いため、粒状α化タピオカ澱粉ゲルの付着ムラが生じてサクミにやや影響を与えたが、比較例1よりも食感が良好であった。
【0054】
この結果から、揚げ物衣材用ブレッダーミックス中、20~80質量%の粒状α化澱粉質原料ゲルの配合量が好ましく、30~50質量%が最も好ましかった。
【0055】
【表5】