(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024119125
(43)【公開日】2024-09-03
(54)【発明の名称】めっき析出状況の測定装置
(51)【国際特許分類】
C23C 18/40 20060101AFI20240827BHJP
C23C 18/34 20060101ALI20240827BHJP
C23C 18/31 20060101ALI20240827BHJP
【FI】
C23C18/40
C23C18/34
C23C18/31 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】25
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023025796
(22)【出願日】2023-02-22
(71)【出願人】
【識別番号】000189327
【氏名又は名称】上村工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100092956
【弁理士】
【氏名又は名称】古谷 栄男
(74)【代理人】
【識別番号】100101018
【弁理士】
【氏名又は名称】松下 正
(72)【発明者】
【氏名】山本 久光
(72)【発明者】
【氏名】中山 智晴
【テーマコード(参考)】
4K022
【Fターム(参考)】
4K022AA02
4K022BA08
4K022BA14
4K022DA01
4K022DB29
(57)【要約】
【課題】 めっき槽でのめっき工程中であってもめっきの析出速度などの析出状況を測定することのできる装置を提供する。
【解決手段】 制御装置20の金属被膜析出制御手段22は、めっき液導入機構6を制御し、めっき槽2のめっき液を反応容器4に導入する。導入されためっき液により、反応容器4に設けられた析出部材12に金属被膜が析出される。つぎに、制御装置20の金属被膜溶解制御手段24は、エッチング液導入機構8を制御し、反応容器4にめっき液に代えてエッチング液を導入する。導入されたエッチング液により、析出部材12に析出した金属被膜が溶解される。測定部10は、金属被膜が溶解した処理後のエッチング液の金属濃度関連値(金属濃度または金属濃度に関連する値)を測定する。制御装置20の推定手段26は、測定部10によって測定された金属濃度関連値に基づいて、めっき槽2におけるめっき析出速度などの析出状況を推定する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
析出部材を有する反応容器と、
前記析出部材をめっき液に浸漬させて金属皮膜を析出させるために、めっき槽のめっき液を前記反応容器に導入するめっき液導入機構と、
前記析出部材をエッチング液に浸漬させて金属皮膜を溶解させるために、エッチング液を前記反応容器に導入するエッチング液導入機構と、
前記金属皮膜を溶解したエッチング液の金属濃度関連値を測定する測定部と、
測定のための制御を行う制御部と、
を備えた析出状況推定装置において、
前記制御部は、
前記めっき液導入機構により前記反応容器内にめっき液を導入して、前記析出部材に金属皮膜を析出させる金属皮膜析出制御手段と、
前記反応容器内のめっき液の排出後、前記エッチング液導入機構により前記反応容器内にエッチング液を導入して、前記析出部材に析出された金属皮膜を溶解させる金属皮膜溶解制御手段と、
前記測定部により前記金属被膜を溶解したエッチング液の金属濃度関連値を測定し、当該金属濃度関連値に基づいて、前記めっき槽における金属被膜の析出状況を推定する推定手段と、
を備えた析出状況推定装置。
【請求項2】
めっき液導入機構により反応容器内にめっき槽のめっき液を導入して、反応容器内の析出部材に金属皮膜を析出させる金属皮膜析出制御手段と、
前記反応容器内のめっき液の排出後、エッチング液導入機構により前記反応容器内にエッチング液を導入して、前記析出部材に析出された金属皮膜を溶解させる金属皮膜溶解制御手段と、
測定部により前記金属被膜を溶解したエッチング液の金属濃度関連値を測定し、当該金属濃度関連値に基づいて、前記めっき槽における金属被膜の析出状況を推定する推定手段と、
を備えた制御装置。
【請求項3】
制御装置をコンピュータによって実現するための制御プログラムであって、コンピュータを、
めっき液導入機構により反応容器内にめっき槽のめっき液を導入して、反応容器内の析出部材に金属皮膜を析出させる金属皮膜析出制御手段と、
前記反応容器内のめっき液の排出後、エッチング液導入機構により前記反応容器内にエッチング液を導入して、前記析出部材に析出された金属皮膜を溶解させる金属皮膜溶解制御手段と、
測定部により前記金属被膜を溶解したエッチング液の金属濃度関連値を測定し、当該金属濃度関連値に基づいて、前記めっき槽における金属被膜の析出状況を推定する推定手段として機能させるための制御プログラム。
【請求項4】
請求項1~3のいずれかの装置またはプログラムにおいて、
前記金属皮膜析出制御手段は、前記析出部材に金属皮膜を析出させる際に、めっき槽のめっき液を反応容器に導入しつつめっき液を反応容器から排出するよう制御することを特徴とする装置またはプログラム。
【請求項5】
請求項1~3のいずれかの装置またはプログラムにおいて、
前記金属皮膜析出制御手段は、前記析出部材に金属皮膜を析出させる際に、めっき槽のめっき液を反応容器に導入して析出部材が浸漬されると導入を停止するよう制御することを特徴とする装置またはプログラム。
【請求項6】
請求項1~3のいずれかの装置またはプログラムにおいて、
前記推定手段は、前記めっき槽における析出速度を析出状況として推定することを特徴とする装置またはプログラム。
【請求項7】
請求項1~3のいずれかの装置またはプログラムにおいて、
前記推定手段は、記録されているまたはセンサによって計測した前記めっき槽のめっき液の温度と、前記反応容器内のめっき液の温度との差を考慮して、前記めっき槽における金属被膜の析出状況を推定することを特徴とする装置またはプログラム。
【請求項8】
請求項1~3のいずれかの装置またはプログラムにおいて、
前記反応容器は、反応容器内に導入されためっき液の温度を、前記めっき槽のめっき液の温度に近づけるためのヒータを備えていることを特徴とする装置またはプログラム。
【請求項9】
請求項1~3のいずれかの装置またはプログラムにおいて、
前記測定部は、前記金属被膜を溶解したエッチング液を前記反応容器から排出する経路中に設けられていることを特徴とする装置またはプログラム。
【請求項10】
請求項1~3のいずれかの装置またはプログラムにおいて、
前記金属皮膜は、銅またはニッケルであり、
前記析出部材は、金またはプラチナであることを特徴とする装置またはプログラム。
【請求項11】
請求項1~3のいずれかの装置またはプログラムにおいて、
前記エッチング液は過硫酸ソーダ(SPS)または硝酸であることを特徴とする装置またはプログラム。
【請求項12】
液体を保持可能であり、めっき槽からめっき液を導入するためのめっき液導入口、めっき液を排出するためのめっき液排出口、エッチング液を導入するためのエッチング液導入口、エッチング液を排出するためのエッチング液排出口を有する筐体と、
前記筐体に固定され、筐体に導入されためっき液によって金属皮膜を析出し、当該金属皮膜をエッチング液によって溶解することで繰り返し使用できるよう構成された析出部材と、
を備えた反応容器。
【請求項13】
請求項12の反応容器において、
前記析出部材の上部は、めっき液に反応しないようにコーティングされていることを特徴とする反応容器。
【請求項14】
めっき槽のめっき液の一部を採取するステップと、
前記採取しためっき液に析出部材の少なくとも一部を浸漬し、析出部材に金属皮膜を形成するステップと、
前記金属皮膜の形成された析出部材をエッチング液によってエッチングし、金属皮膜を溶解させるステップと、
前記金属皮膜が溶解したエッチング液の金属濃度関連値に基づいて、前記めっき槽における金属皮膜の析出状況を推定するステップと、
を備えた析出状況推定方法。
【請求項15】
析出部材を有する反応容器と、
前記析出部材をめっき液に浸漬させて金属皮膜を析出させるために、めっき槽のめっき液を前記反応容器に導入するめっき液導入機構と、
前記析出部材に析出された金属皮膜量を測定する測定部と、
測定のための制御を行う制御部と、
を備えた析出状況推定装置において、
前記制御部は、
前記めっき液導入機構により、前記反応容器内にめっき液を導入して、前記析出部材に金属皮膜を析出させる金属皮膜析出制御手段と、
前記測定部により、析出された金属皮膜量を測定し、当該金属皮膜量に基づいて、前記めっき槽における金属被膜の析出状況を推定する推定手段と、
を備えた析出状況推定装置。
【請求項16】
めっき液導入機構により、反応容器内にめっき槽からめっき液を導入して、析出部材に金属皮膜を析出させる金属皮膜析出制御手段と、
測定部により、析出された金属皮膜量を測定し、当該金属皮膜量に基づいて、前記めっき槽における金属被膜の析出状況を推定する推定手段と、
を備えた制御装置。
【請求項17】
制御装置をコンピュータによって実現するための制御プログラムであって、コンピュータを、
めっき液導入機構により、反応容器内にめっき槽からめっき液を導入して、析出部材に金属皮膜を析出させる金属皮膜析出制御手段と、
測定部により、析出された金属皮膜量を測定し、当該金属皮膜量に基づいて、前記めっき槽における金属被膜の析出状況を推定する推定手段として機能させるための制御プログラム。
【請求項18】
請求項15~17のいずれかの装置またはプログラムにおいて、
前記測定部は、下記(1)~(x)のいずれかの方法に基づいて析出部材に析出した金属皮膜の量を測定するものであることを特徴とする装置またはプログラム。
(1)析出部材の金属皮膜を逆電解によって溶解し、この逆電解に要した電流に基づいて金属皮膜量を算出する
(2)析出部材の金属皮膜形成前後の重量を計測し、その差に基づいて金属皮膜量を算出する
(3)金属皮膜の析出された析出部材に高周波電流を流し、表面に生じた渦電流量に基づいて金属皮膜量を算出する
(4)析出部材を含む磁気回路を形成し、金属皮膜形成前後の磁気抵抗の変化に基づいて金属皮膜量を算出する
(5)金属皮膜の形成された析出部材にX線を照射し、放出される蛍光X線の量に基づいて金属皮膜量を算出する
(6)金属皮膜の形成された析出部材にベータ線を照射し、後方散乱するベータ線の量に基づいて金属皮膜量を算出する
(7)金属皮膜を形成する際にマスキングを行って段差を生成し、金属皮膜形成後にマスキングを除去し、その段差を測定し、当該段差に基づいて金属皮膜量を算出する
(8)金属皮膜の形成された析出部材を切断し、その断面における金属皮膜厚を測定し、当該金属皮膜厚に基づいて金属皮膜量を算出する
【請求項19】
液体を保持可能であり、めっき槽からめっき液を導入するためのめっき液導入口、めっき液を排出するためのめっき液排出口を有する筐体と、
前記筐体に固定され、筐体に導入されためっき液によって金属皮膜を析出し、当該金属皮膜をエッチング液によって溶解することで繰り返し使用できるよう構成された析出部材と、
を備えた反応容器。
【請求項20】
請求項19の反応容器において、
前記析出部材の上部は、めっき液に反応しないようにコーティングされていることを特徴とする反応容器。
【請求項21】
めっき槽のめっき液の一部を採取するステップと、
前記採取しためっき液に析出部材の少なくとも一部を浸漬し、析出部材に金属皮膜を形成するステップと、
前記析出部材に形成された金属皮膜の析出量を測定し、当該析出量に基づいてめっき槽における金属皮膜の析出状況を推定するステップと、
を備えた析出状況推定方法。
【請求項22】
析出部材を有する反応容器と、
前記析出部材をめっき液に浸漬させて金属皮膜を析出させるために、めっき槽のめっき液を前記反応容器に導入するめっき液導入機構と、
前記めっき液の金属濃度関連値を測定する測定部と、
測定のための制御を行う制御部と、
を備えた析出状況推定装置において、
前記制御部は、
前記めっき液導入機構により前記反応容器内にめっき液を導入して、前記析出部材に金属皮膜を析出させる金属皮膜析出制御手段と、
前記測定部により、前記反応容器内に導入する前または直後のめっき液の金属濃度関連値を測定するめっき前濃度測定制御手段と、
前記測定部により、前記反応容器内に導入されて前記析出部材に金属皮膜を析出した後のめっき液の金属濃度関連値を測定するめっき後濃度測定制御手段と、
前記めっき前濃度測定手段と、前記めっき後濃度測定手段によって測定された金属濃度関連値に基づいて、前記めっき槽における金属被膜の析出状況を推定する推定手段と、
を備えた析出状況推定装置。
【請求項23】
めっき液導入機構により反応容器内にめっき槽のめっき液を導入して、析出部材に金属皮膜を析出させる金属皮膜析出制御手段と、
測定部により、前記反応容器内に導入する前または直後のめっき液の金属濃度関連値を測定するめっき前濃度測定制御手段と、
前記測定部により、前記反応容器内に導入されて前記析出部材に金属皮膜を析出した後のめっき液の金属濃度関連値を測定するめっき後濃度測定制御手段と、
前記めっき前濃度測定手段と、前記めっき後濃度測定手段によって測定された金属濃度関連値に基づいて、前記めっき槽における金属被膜の析出状況を推定する推定手段と、
を備えた制御装置。
【請求項24】
制御装置をコンピュータによって実現するための制御プログラムであって、コンピュータを、
めっき液導入機構により反応容器内にめっき槽のめっき液を導入して、析出部材に金属皮膜を析出させる金属皮膜析出制御手段と、
測定部により、前記反応容器内に導入する前または直後のめっき液の金属濃度関連値を測定するめっき前濃度測定制御手段と、
前記測定部により、前記反応容器内に導入されて前記析出部材に金属皮膜を析出した後のめっき液の金属濃度関連値を測定するめっき後濃度測定制御手段と、
前記めっき前濃度測定手段と、前記めっき後濃度測定手段によって測定された金属濃度関連値に基づいて、前記めっき槽における金属被膜の析出状況を推定する推定手段として機能させるための制御プログラム。
【請求項25】
めっき槽のめっき液の一部を採取する第1ステップと、
前記採取しためっき液の金属濃度関連値を測定する第2ステップと、
前記採取しためっき液に析出部材の少なくとも一部を浸漬し、析出部材に金属皮膜を形成する第3ステップと、
前記析出部材に金属皮膜を形成した後のめっき液の金属濃度関連値を測定する第4ステップと、
前記第2ステップと前記第4ステップにおいて測定した金属濃度関連値に基づいて、前記めっき槽における金属皮膜の析出状況を推定するステップと、
を備えた析出状況推定方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、めっき析出状況を測定するための装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
無電解金属めっきを行う際、めっきの析出状況に応じて、めっき液における金属イオンの濃度、めっき液の温度、めっき時間などを調整し、所望のめっきが行えるようにしている。このためには、めっき金属の析出速度などの析出状況を、正確かつ迅速に測定することが重要である。
【0003】
特許文献1には、めっき槽のめっき液をサンプルとして採取し、採取しためっき液に含まれる添加剤などを分析計によって分析する装置が開示されている。これにより、めっき金属の析出速度に影響を与えるめっき液の性状を計測することができる。
【0004】
特許文献2には、めっき槽のめっき液に白金板を浸漬して、無電解銅めっき反応により銅を析出させ、次に、銅が析出した白金板を陽極、銅板を陰極として一定電流で析出した銅を溶解させ、完全溶解するまでの時間により、めっき速度を測定する方法が開示されている。これにより、めっきの析出速度を測定することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開昭61-276978
【特許文献2】特開平3-240968
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1のような従来技術では、めっき金属の析出速度などに影響のある一要因としてのめっき液の性状を得ることはできるが、析出速度などの析出状況を正確に推定することは困難であった。析出速度などは、めっき液の性状以外の要因によっても影響を受けるためである。
【0007】
また特許文献2のような従来技術では、めっき金属の析出速度を測定することはできるものの、めっき槽に白金板や銅板を浸漬し、電流を流すようにしているので、めっき槽において実際に行われているめっき工程に対して悪影響を与える可能性があった。
【0008】
この発明は、上記のような問題点を解決して、めっき槽でのめっき工程中であってもめっきの析出速度などの析出状況を測定することのできる装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
この発明の独立して適用可能な特徴を以下に列挙する。
【0010】
(1)(2)(3)この発明に係る析出状況推定装置は、析出部材を有する反応容器と、前記析出部材をめっき液に浸漬させて金属皮膜を析出させるために、めっき槽のめっき液を前記反応容器に導入するめっき液導入機構と、前記析出部材をエッチング液に浸漬させて金属皮膜を溶解させるために、エッチング液を前記反応容器に導入するエッチング液導入機構と、前記金属皮膜を溶解したエッチング液の金属濃度関連値を測定する測定部と、測定のための制御を行う制御部と、を備えた析出状況推定装置において、
前記制御部は、前記めっき液導入機構により前記反応容器内にめっき液を導入して、前記析出部材に金属皮膜を析出させる金属皮膜析出制御手段と、前記反応容器内のめっき液の排出後、前記エッチング液導入機構により前記反応容器内にエッチング液を導入して、前記析出部材に析出された金属皮膜を溶解させる金属皮膜溶解制御手段と、前記測定部により前記金属被膜を溶解したエッチング液の金属濃度関連値を測定し、当該金属濃度関連値に基づいて、前記めっき槽における金属被膜の析出状況を推定する推定手段とを備えている。
【0011】
したがって、めっき槽における処理中であってもリアルタイムに析出状況を推定することができる。
【0012】
(4)この発明に係る析出状況推定装置は、金属皮膜析出制御手段が、前記析出部材に金属皮膜を析出させる際に、めっき槽のめっき液を反応容器に導入しつつめっき液を反応容器から排出するよう制御することを特徴としている。
【0013】
したがって、析出部材に対して常に新しいめっき液が供給されるので、安定した金属析出を行うことができる。
【0014】
(5)この発明に係る析出状況推定装置は、金属皮膜析出制御手段が、前記析出部材に金属皮膜を析出させる際に、めっき槽のめっき液を反応容器に導入して析出部材が浸漬されると導入を停止するよう制御することを特徴としている。
【0015】
したがって、めっき液の液面高さが一定し、安定した金属析出を行うことができる。
【0016】
(6)この発明に係る析出状況推定装置は、推定手段が、前記めっき槽における析出速度を析出状況として推定することを特徴としている。
【0017】
したがって、析出速度を推定することができる。
【0018】
(7)この発明に係る析出状況推定装置は、推定手段が、記録されているまたはセンサによって計測した前記めっき槽のめっき液の温度と、前記反応容器内のめっき液の温度との差を考慮して、前記めっき槽における金属被膜の析出状況を推定することを特徴としている。
【0019】
したがって、より正確にめっき槽の析出状況を推定することができる。
【0020】
(8)この発明に係る析出状況推定装置は、反応容器が、反応容器内に導入されためっき液の温度を、前記めっき槽のめっき液の温度に近づけるためのヒータを備えていることを特徴としている。
【0021】
したがって、より正確にめっき槽の析出状況を推定することができる。
【0022】
(9)この発明に係る析出状況推定装置は、測定部が、前記金属被膜を溶解したエッチング液を前記反応容器から排出する経路中に設けられていることを特徴としている。
【0023】
したがって、エッチング液を排出するとともに測定を行うことができる。
【0024】
(10)この発明に係る析出状況推定装置は、金属皮膜が、銅またはニッケルであり、析出部材が、金またはプラチナであることを特徴としている。
【0025】
したがって、析出部材への析出を迅速に開始することができる。
【0026】
(11)この発明に係る析出状況推定装置は、エッチング液は過硫酸ソーダ(SPS)または硝酸であることを特徴とする装置またはプログラム。
【0027】
したがって、析出部材には影響を与えず金属被膜をエッチングできる。
【0028】
(12)この発明に係る反応容器は、液体を保持可能であり、めっき槽からめっき液を導入するためのめっき液導入口、めっき液を排出するためのめっき液排出口、エッチング液を導入するためのエッチング液導入口、エッチング液を排出するためのエッチング液排出口を有する筐体と、前記筐体に固定され、筐体に導入されためっき液によって金属皮膜を析出し、当該金属皮膜をエッチング液によって溶解することで繰り返し使用できるよう構成された析出部材とを備えている。
【0029】
したがって、繰り返して処理に用いることができる。
【0030】
(13)この発明に係る反応容器は、析出部材の上部が、めっき液に反応しないようにコーティングされていることを特徴としている。
【0031】
したがって、めっき液の液面が上下しても、析出部材の反応領域とめっき液が接触する面積が変化せず、安定した析出が行われる。
【0032】
(14)この発明に係る析出状況推定方法は、めっき槽のめっき液の一部を採取するステップと、前記採取しためっき液に析出部材の少なくとも一部を浸漬し、析出部材に金属皮膜を形成するステップと、前記金属皮膜の形成された析出部材をエッチング液によってエッチングし、金属皮膜を溶解させるステップと、前記金属皮膜が溶解したエッチング液の金属濃度関連値に基づいて、前記めっき槽における金属皮膜の析出状況を推定するステップとを備えている。
【0033】
したがって、めっき槽における処理中であってもリアルタイムに析出状況を推定することができる。
【0034】
(15)(16)(17)この発明に係る析出状況推定装置は、析出部材を有する反応容器と、前記析出部材をめっき液に浸漬させて金属皮膜を析出させるために、めっき槽のめっき液を前記反応容器に導入するめっき液導入機構と、前記析出部材に析出された金属皮膜量を測定する測定部と、測定のための制御を行う制御部とを備えた析出状況推定装置において、
前記制御部は、前記めっき液導入機構により、前記反応容器内にめっき液を導入して、前記析出部材に金属皮膜を析出させる金属皮膜析出制御手段と、前記測定部により、析出された金属皮膜量を測定し、当該金属皮膜量に基づいて、前記めっき槽における金属被膜の析出状況を推定する推定手段とを備えている。
【0035】
したがって、めっき槽における処理中であってもリアルタイムに析出状況を推定することができる。
【0036】
(18)この発明に係る析出状況推定装置は、測定部が、下記(1)~(x)のいずれかの方法に基づいて析出部材に析出した金属皮膜の量を測定するものであることを特徴とする装置またはプログラム。1)析出部材の金属皮膜を逆電解によって溶解し、この逆電解に要した電流に基づいて金属皮膜量を算出する(2)析出部材の金属皮膜形成前後の重量を計測し、その差に基づいて金属皮膜量を算出する(3)金属皮膜の析出された析出部材に高周波電流を流し、表面に生じた渦電流量に基づいて金属皮膜量を算出する(4)析出部材を含む磁気回路を形成し、金属皮膜形成前後の磁気抵抗の変化に基づいて金属皮膜量を算出する(5)金属皮膜の形成された析出部材にX線を照射し、放出される蛍光X線の量に基づいて金属皮膜量を算出する(6)金属皮膜の形成された析出部材にベータ線を照射し、後方散乱するベータ線の量に基づいて金属皮膜量を算出する(7)金属皮膜を形成する際にマスキングを行って段差を生成し、金属皮膜形成後にマスキングを除去し、その段差を測定し、当該段差に基づいて金属皮膜量を算出する(8)金属皮膜の形成された析出部材を切断し、その断面における金属皮膜厚を測定し、当該金属皮膜厚に基づいて金属皮膜量を算出する。
【0037】
したがって、金属皮膜量に基づいて析出速度を推定することができる。
【0038】
(19)この発明に係る反応容器は、液体を保持可能であり、めっき槽からめっき液を導入するためのめっき液導入口、めっき液を排出するためのめっき液排出口を有する筐体と、前記筐体に固定され、筐体に導入されためっき液によって金属皮膜を析出し、当該金属皮膜をエッチング液によって溶解することで繰り返し使用できるよう構成された析出部材とを備えている。
【0039】
したがって、繰り返して処理に用いることができる。
【0040】
(20)この発明に係る反応容器は、析出部材の上部が、めっき液に反応しないようにコーティングされていることを特徴としている。
【0041】
したがって、めっき液の液面が上下しても、析出部材の反応領域とめっき液が接触する面積が変化せず、安定した析出が行われる。
【0042】
(21)この発明に係る析出状況推定方法は、めっき槽のめっき液の一部を採取するステップと、前記採取しためっき液に析出部材の少なくとも一部を浸漬し、析出部材に金属皮膜を形成するステップと、前記析出部材に形成された金属皮膜の析出量を測定し、当該析出量に基づいてめっき槽における金属皮膜の析出状況を推定するステップとを備えている。
【0043】
したがって、めっき槽における処理中であってもリアルタイムに析出状況を推定することができる。
【0044】
(22)(23)(24)この発明に係る析出状況推定装置は、析出部材を有する反応容器と、前記析出部材をめっき液に浸漬させて金属皮膜を析出させるために、めっき槽のめっき液を前記反応容器に導入するめっき液導入機構と、前記めっき液の金属濃度関連値を測定する測定部と、測定のための制御を行う制御部とを備えた析出状況推定装置において、
前記制御部は、前記めっき液導入機構により前記反応容器内にめっき液を導入して、前記析出部材に金属皮膜を析出させる金属皮膜析出制御手段と、前記測定部により、前記反応容器内に導入する前または直後のめっき液の金属濃度関連値を測定するめっき前濃度測定制御手段と、前記測定部により、前記反応容器内に導入されて前記析出部材に金属皮膜を析出した後のめっき液の金属濃度関連値を測定するめっき後濃度測定制御手段と、前記めっき前濃度測定手段と、前記めっき後濃度測定手段によって測定された金属濃度関連値に基づいて、前記めっき槽における金属被膜の析出状況を推定する推定手段とを備えている。
【0045】
したがって、めっき槽における処理中であっても析出状況を推定することができる。
【0046】
(25)この発明に係る析出状況推定方法は、めっき槽のめっき液の一部を採取する第1ステップと、前記採取しためっき液の金属濃度関連値を測定する第2ステップと、前記採取しためっき液に析出部材の少なくとも一部を浸漬し、析出部材に金属皮膜を形成する第3ステップと、前記析出部材に金属皮膜を形成した後のめっき液の金属濃度関連値を測定する第4ステップと、前記第2ステップと前記第4ステップにおいて測定した金属濃度関連値に基づいて、前記めっき槽における金属皮膜の析出状況を推定するステップとを備えている。
【0047】
したがって、めっき槽における処理中であっても析出状況を推定することができる。
【0048】
「金属皮膜析出制御手段」は、実施形態においては、ステップS1がこれに対応する。
【0049】
「金属皮膜溶解制御手段」は、実施形態においては、ステップS8がこれに対応する。
【0050】
「推定手段」は、実施形態においては、ステップS16がこれに対応する。
【0051】
「装置」とは、1台のコンピュータによって構成されるものだけでなく、ネットワークなどを介して接続された複数のコンピュータによって構成されるものも含む概念である。したがって、本発明の手段(あるいは手段の一部でもよい)が複数のコンピュータに分散されている場合、これら複数のコンピュータが装置に該当する。
【0052】
「プログラム」とは、CPUにより直接実行可能なプログラムだけでなく、ソース形式のプログラム、圧縮処理がされたプログラム、暗号化されたプログラム、オペレーティングシステムと協働してその機能を発揮するプログラム等を含む概念である。
【図面の簡単な説明】
【0053】
【
図1】この発明の一実施形態による析出状況推定装置の機能構成図である。
【
図5】析出状況推定プログラム48のフローチャートである。
【
図6】析出状況推定プログラム48のフローチャートである。
【
図7】めっき膜厚と温度との関係を示すグラフである。
【
図9】他の例による析出状況推定装置の機能構成図である。
【
図11】析出状況推定プログラム48のフローチャートである。
【
図12】析出状況推定プログラム48のフローチャートである。
【
図13】一般化した析出状況推定装置の機能構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0054】
1.全体構成
図1に、この発明の一実施形態による析出状況推定装置の機能構成を示す。制御装置20の金属被膜析出制御手段22は、めっき液導入機構6を制御し、めっき槽2のめっき液を反応容器4に導入する。導入されためっき液により、反応容器4に設けられた析出部材12に金属被膜が析出される。つぎに、制御装置20の金属被膜溶解制御手段24は、エッチング液導入機構8を制御し、反応容器4にめっき液に代えてエッチング液を導入する。導入されたエッチング液により、析出部材12に析出した金属被膜が溶解される。
【0055】
測定部10は、金属被膜が溶解した処理後のエッチング液の金属濃度関連値(金属濃度または金属濃度に関連する値)を測定する。制御装置20の推定手段26は、測定部10によって測定された金属濃度関連値に基づいて、めっき槽2におけるめっき析出速度などの析出状況を推定する。
【0056】
上記のように、めっき槽2のめっき液の一部を反応容器4に導き、析出部材12に金属を析出させ、析出した金属を溶解して濃度を測定することで、析出量や析出速度などの析出状況を推定するようにしているので、めっき槽2においてめっき工程を行っている時であっても、リアルタイムに析出状況を推定することができる。
【0057】
2.システム構成及び構造
以下では、無電解銅めっきを例として説明を行う。
図2に、析出状況推定装置のシステム構成を示す。めっき槽2は、めっき液3によってめっき処理を行うための本槽である。めっき槽2からは、めっき液導入機構である導入ポンプ6を介して、反応容器4に流路が設けられている。また、反応容器4からは、反応容器4のめっき液3をめっき槽2に循環させるための循環ポンプ7を介して、めっき槽2に流路が設けられている。
【0058】
また、エッチング液タンク19からは、エッチング液導入機構である導入ポンプ8を介して、反応容器4に流路が設けられている。反応容器4内のめっき液3またはエッチング液21を、排出するための排出弁11が設けられている。
【0059】
反応容器4からは、排出弁13、測定ポンプ9を介して、測定部である吸光計10に流路が設けられている。吸光計10内のエッチング液21を排出するための排出弁15が設けられている。エッチング液としては、めっきによって形成された金属被膜を溶解し、析出部材12を溶解しないものが好ましい。この実施形態では、過硫酸ソーダ(SPS)や硝酸をエッチング液として用いている。
【0060】
制御装置20は、各ポンプ、各弁を制御するとともに、吸光計10の出力を受けとって推定処理を行う。
【0061】
図3に、反応容器4の断面を示す。有底の円筒状の本体27の上部開口部を覆うように蓋29が設けられている。蓋29には、析出部材である円柱部材12が固定されている。円柱部材12は、少なくともその表面が金(Au)によって構成されている(全てが金であってもよい)。円柱部材12の上部表面には、めっき液との反応を避けるためのコーティング25(たとえば、めっきレジストインク)がされている。したがって、反応面23は、このコーティング25部分を除いた領域となる。
【0062】
反応容器4の下部には、めっき槽2からのめっき液3を導入するための導入ポンプ6が設けられている。反応容器4の上部には、めっき槽2へめっき液3を循環させるための循環ポンプ7が設けられている。
【0063】
また、反応容器4の上部には、エッチング液タンク19からのエッチング液を導入するための導入ポンプ8が設けられている。反応容器4の下部には、排出弁13が設けられ、反応容器4内のエッチング液21を吸光計10に導くための測定ポンプ9が設けられている。
【0064】
反応容器4の中央部には、めっき液3の温度を計測するための温度センサ17が設けられている。
【0065】
図4に、制御装置20のハードウエア構成を示す。CPU30には、メモリ32、タッチパネルディスプレイ34、通信回路36、フラッシュメモリ38、USBドライブ40、入力端子台42、出力端子台44が接続されている。通信回路36は、LANやインターネットなどのネットワークに接続するための回路である。
【0066】
入力端子台42には、吸光計10、温度センサ17が接続されている。CPU30は、入力端子台42を介して、吸光計10からの計測データ、温度センサ17の出力を取得する。
【0067】
出力端子台44には、導入ポンプ6、循環ポンプ7、導入ポンプ8、測定ポンプ9、排出弁11、13、15が接続されている。CPU30は、出力端子台44を介して、これら機器を制御する。
【0068】
フラッシュメモリ38には、リアルタイムオペレーティングシステム46、析出状況推定プログラム48が記録されている。析出状況推定プログラム48は、リアルタイムオペレーティングシステム46と協働してその機能を発揮するものである。これらプログラムは、USB50に記録されていたものを、USBドライブ40を介して、フラッシュメモリ38にインストールしたものである。
【0069】
3.析出速度推定処理
図5、
図6に、析出状況推定プログラム48のフローチャートを示す。制御装置20のCPU30は、導入ポンプ6、循環ポンプ7を駆動し、反応容器4にめっき槽2の無電解銅めっき液3を導入する(ステップS1)。続いて、CPU30は、反応容器4に導入された無電解銅めっき液3の温度を計測した温度センサ17から、計測温度データを取得し記録する(ステップS2)。
【0070】
反応容器4には金による円柱部材12が設けられているので、その表面に無電解銅めっき液3によって銅が析出される。金は、前処理をしなくとも金属の析出が行われるので、直ちに銅の析出が開始される。
【0071】
反応容器4には、めっき槽2から無電解銅めっき液3が供給され、めっき槽2へ無電解銅めっき液3が循環されるので、常に新しい無電解銅めっき液3が円柱部材12に触れて安定した析出が行われることになる。この実施形態では、反応容器4に保持される無電解銅めっき液3の量は、1~100ml程度としている。また、めっき槽2の無電解銅めっき液3は、常温よりも高い温度であるので、徐々に温度が低下する可能性があるが、循環をさせることにより、温度低下を抑えることができる。
【0072】
なお、円柱部材12の上部にはコーティング25がされているので、この部分において銅は析出されない。したがって、円柱部材12のコーティングされていない反応領域23が、完全に無電解銅めっき液3に浸漬されるようにしておけば、無電解銅めっき液3の液面が多少上下したとしても、無電解銅めっき液3と接触する面積は変化せず、安定した銅の析出を行うことができる。
【0073】
CPU30は、所定時間、上記の状態を続けて、円柱部材12への銅の析出を継続させる。CPU30は、内部タイマにより、予め定めた析出のための所定時間(たとえば5分~30分)が経過したと判断すると(ステップS3)、再び、温度センサ17の計測温度データを取得し記録する(ステップS4)。
【0074】
次に、CPU30は、導入ポンプ6、循環ポンプ7を停止し、排出弁11を開いて、無電解銅めっき液3を、反応容器4から排出する(ステップS5)。無電解銅めっき液3が、反応容器4から排出されるに十分な時間(排出所定時間)が経過すると(ステップS6)、CPU30は、排出弁11を閉じる(ステップS7)。なお、反応容器4にレベルセンサを設けて排出完了をCPU30が検知できるようにしてもよいし、排出弁11の排出流路に、流量計を設けて排出完了をCPU30が検知できるようにしてもよい。
【0075】
次に、CPU30は、導入ポンプ8を駆動し、エッチング液21を反応容器4に導入する(ステップS8)。エッチング液21が反応容器4に満たされるに十分な時間(導入所定時間)が経過すると(ステップS9)、CPU30は、導入ポンプ8を停止する(ステップS10)。この実施形態では、1~100ml程度のエッチング液21を導入するようにしている。なお、反応容器4にレベルセンサを設けて充填完了をCPU30が検知できるようにしてもよいし、導入ポンプ8の供給流路に、流量計を設けて充填完了をCPU30が検知できるようにしてもよい。
【0076】
上記のようにして、円柱部材12の反応領域23に析出された銅を、エッチング液21によって全て溶解してエッチングする。これにより、析出していた銅は、エッチング液21に溶解し、エッチング液21の銅の濃度が銅の析出量に応じて上昇することになる。また、円柱部材12の反応領域23に析出した銅が取り除かれて金が露出し、再び、無電解銅めっきを行うことができる状態に復元される。
【0077】
CPU30は、エッチングによって析出していた銅を完全に溶解できるための所定時間(エッチング所定時間)(この実施形態では、0.5分~10分)が経過したことを検知すると(ステップS11)、排出弁13を開き、計測ポンプ9を駆動する(ステップS12)。これにより、銅の溶解したエッチング液21は、吸光計10に送出される。
【0078】
エッチング液21が、反応容器4から排出されるに十分な時間(排出所定時間)が経過すると(ステップS13)、CPU30は、排出弁13を閉じる(ステップS14)。なお、反応容器4にレベルセンサを設けて排出完了をCPU30が検知できるようにしてもよいし、排出弁13の排出流路に、流量計を設けて排出完了をCPU30が検知できるようにしてもよい。
【0079】
吸光計10は、エッチング液21に溶解している銅の吸光度(濃度関連値)を計測する。CPU30は、吸光計10から銅の吸光度を取得する。一般に、吸光度と濃度との関係は既知(直線的に比例)であるので、CPU30は、吸光度に基づいて銅の濃度(mol/m3)を算出する(ステップS15)。CPU30は、吸光計10から銅の吸光度を得ると、排出弁15を開いて、吸光計10からエッチング液21を排出する。
【0080】
続いて、CPU30は、銅濃度、エッチング液の体積に基づいて銅の析出量を算出する。さらに、円柱部材12の反応領域23の面積、銅の析出量、ステップS3のめっき時間に基づいて、反応容器4内における銅の析出速度(μm/min)を算出する。
【0081】
このようにして算出された析出速度は、反応容器4内における無電解めっき液3の温度に基づくものである。前述のように、反応容器4における無電解めっき液3の温度は、本槽であるめっき槽2における無電解めっき液3の温度よりも低くなってしまう。
【0082】
図7に示すように、温度と析出速度(膜厚)との関係は、直線的であることが知られている。したがって、CPU30は、めっき槽2における無電解めっき液3の温度と、反応容器4における無電解めっき液3の温度の差に基づいて、先に算出した析出速度を補正し、めっき槽2における析出速度を算出し、SSD38に記録する(ステップS16)。以上のようにして、めっき槽2における銅の析出速度を推定する。CPU30は、推定した析出速度を、タッチパネルディスプレイ34に表示する。
【0083】
なお、上記推定において、反応容器4における無電解銅めっき液3の温度は、無電解銅めっき液3によるめっき開始時と終了時の温度(ステップS2、S4)の平均を用いる。また、めっき槽2における無電解銅めっき液3の温度は、予め定められた設定温度を用いてもよいし、めっき槽2に設けた温度センサから取得するようにしてもよい。後者の場合、ステップS2、S4と同じタイミングにて取得し、その平均を用いることが好ましい。
【0084】
上記の処理が終了すると、CPU30は、再びステップS1以下を実行し、無電解銅めっき液3の導入、銅の析出、エッチング、濃度算出、析出速度算出を繰り返す。このようにして、本槽であるめっき槽2におけるめっき中においても、リアルタイムに析出速度を得ることができる。
【0085】
析出速度の変化をモニタすることで、その異常を検知(析出速度の絶対値によって判断してもよいし、過去の正常時の析出速度との比較において判断してもよい)し、アラーム(図示せず)やタッチパネルディスプレイ34への表示することで報知することができる。また、実際のめっき作業の前に析出速度を算出して、めっき作業におけるめっき液の濃度、所要時間、温度などを設定することも可能である。
【0086】
4.その他変形例
(1)上記実施形態では、めっき槽2の析出状況として析出速度を推定するようにしている。しかし、析出膜厚など他の析出状況を推定するようにしてもよい。
【0087】
(2)上記実施形態では、測定する濃度関連値として吸光度を用いているが、透過度など他の濃度に関連する値を測定するようにしてもよい。また、濃度関連値として濃度を測定するようにしてもよい。
【0088】
(3)上記実施形態では、析出部材として円柱部材を用いているが、角柱など他の形状の物を用いてもよい。また、上記実施形態では、金を析出部材として用いているが、プラチナなどを用いてもよい。
【0089】
(4)上記実施形態では、無電解銅めっきの場合について説明したが、無電解ニッケルなど他の金属にも適用することができる。
【0090】
(5)上記実施形態では、反応容器4にヒータを設けていないが、ヒータを設けてめっき液の温度低下を防いで、めっき槽2のめっき液3との温度差が生じにくいようにしてもよい。この場合、めっき槽2、反応容器4のめっき液3の温度をセンサによって計測し、反応容器4のめっき液3の温度が、めっき槽2のめっき液3の温度と等しくなるように、ヒータによる加熱を制御するようにしてもよい。この場合には、温度差による析出速度の補正は不要である。
【0091】
(6)上記実施形態では、めっき開始時とめっき終了時のめっき液3の温度を計測するようにしている(ステップS2、S4)。しかし、いずれか一方だけでもよいし、めっき開始時と終了時との間において1度だけ計測するようにしてもよい。あるいは、めっき開始時から終了時まで連続して計測し、平均値を算出するようにしてもよい。
【0092】
(7)上記実施形態では、循環ポンプ7を設けて、めっき液3をめっき槽2に戻すようにしている。しかし、めっき槽2には戻さずに排出するようにしてもよい。
【0093】
(8)上記実施形態では、円柱部材12に析出を行う間、めっき槽2からめっき液3を供給するようにしている。しかし、反応容器4がめっき液3で満たされた時点で供給ポンプ6を停止するようにしてもよい。
【0094】
(9)上記実施形態では、円柱部材12を上から保持して固定するようにしている。しかし、下や横から固定するようにしてもよい。この場合、円柱部材12がめっき液3に完全に浸漬されるようであれば、コーティング25は設けなくともよい。
【0095】
(10)上記実施形態では、吸光計10に処理済みのエッチング液21を導入して計測を行うようにしている。しかし、反応容器4に吸光計10を設けて測定を行うようにしてもよい。
【0096】
(11)上記実施形態では、導入機構としてポンプを用いている。しかし、液の自然落下を制御する弁などを導入機構として用いてもよい。
【0097】
(12)上記実施形態では、
図1の金属被膜析出制御手段22、金属被膜溶解制御手段24、推定手段26を、ソフトウエアを用いて実現している。しかし、その一部または全部を、ハードウエアロジックによって構成するようにしてもよい。
【0098】
(13)上記実施形態では、
図5、
図6の処理を繰り返すことで、連続的に析出速度を推定するようにしている。しかし、
図5、
図6の処理に時間を要する場合には、析出速度の推定間隔が長くなってしまうことになる。
【0099】
そこで、短い推定間隔にて析出速度が必要な場合には、
図8に示すように、反応容器を複数個設けるようにしてもよい。反応容器4aにおける析出の開始から所定時間後に反応容器4bにおける析出が開始(めっき液3の導入開始)されるように、制御装置20が制御を行う。同様にして、反応容器4c、4d・・・4nまで、順次、所定時間ずらせて析出が開始されるように制御する。反応容器4nの析出開始から所定時間後に、再び、反応容器4aの析出を開始させる。このためには、反応容器4nの析出開始から所定時間経過までに、反応容器4aにおける
図5、
図6の処理が完了するようにしておく。
【0100】
以上のようにすれば、反応容器を設けた数に応じて、短い間隔で析出速度を推定することができる。
【0101】
なお、
図8では、複数の反応容器4a~4nに対し、一つの制御装置20によって制御を行っているが、それぞれの反応容器4a~4nに対し、制御装置20を設けるようにしてもよい。
【0102】
(14)上記実施形態では、処理済みエッチング液21の金属濃度(吸光度)を計測して析出速度を推定するようにしている。
【0103】
しかし、
図9に示すように、析出前後のめっき液6の金属濃度の差に基づいて、析出速度を推定するようにしてもよい。
図9において、制御装置20の金属被膜析出制御手段22は、めっき液導入機構6を制御し、めっき槽2のめっき液を反応容器4に導入する。測定部210は、導入した際のめっき液の金属濃度関連値を測定し推定手段26に与える。
【0104】
導入されためっき液により、反応容器4に設けられた析出部材12に金属被膜が析出される。測定部10は、金属被膜を形成した後の、めっき液の金属濃度関連値を測定し推定手段26に与える。
【0105】
制御装置20の推定手段26は、測定部10によって測定された金属皮膜形成前の金属濃度関連値と、金属皮膜形成後の金属濃度関連値とに基づいて、めっき槽2におけるめっき析出速度などの析出状況を推定する。
【0106】
この場合のシステム構成は、
図10に示すとおりである。めっき槽2のめっき液3は、導入ポンプ6によって反応容器4に導入される。制御装置20は、吸光計10によって、析出前のめっき液3の金属濃度と、析出後のめっき液3の金属濃度を測定する。制御装置20は、これら2つの金属濃度の差に基づいて、析出速度を推定する。
【0107】
反応容器4の基本的構造、制御装置20の基本的ハードウエア構成などは、上記実施形態と同様である。
【0108】
図11、
図12に、析出状況推定プログラム48のフローチャートを示す。CPU30は、排出弁13を開き、導入ポンプ6、測定ポンプ9を駆動させて、めっき槽2の無電解銅めっき液3を吸光計10に導く(ステップS31)。CPU30は、この時の吸光計10からの吸光度を取得して記録する(ステップS32)。次に、CPU30は、排出弁13を閉じて、反応容器4に無電解銅めっき液3を導入する(ステップS33、S34、S35)。この段階で、CPU30は、温度センサ17の測定温度を取得し記録する(ステップS36)。
【0109】
予め定められた析出所定時間が経過すると(ステップS37)、CPU30は、温度センサ17の測定温度を取得する。あらに、CPU30は、排出弁13を開き、測定ポンプ9を駆動させて、無電解銅めっき液3を吸光計10に送る(ステップS39)。
【0110】
吸光計10は、この時の吸光度を測定し、CPU30はこれを取得する。析出後の無電解銅めっき液3のの銅の濃度は、析出前の無電解銅めっき液3の銅の濃度に比べて、円柱部材12に析出された銅の分だけ少なくなっているはずである。CPU30は、析出前後の無電解銅めっき液3の銅濃度(ステップ32、S42)の差に基づいて、析出速度を算出する。また、析出前の温度(ステップS36)と析出後の温度(ステップS38)の平均値として反応容器4の無電解銅めっき液3の温度を決定し、これとめっき槽2の無電解銅めっき液3の温度との差に基づいて、析出速度を補正して、めっき槽2における析出速度を推定する(ステップS43)。
【0111】
その後、エッチング液21によって円柱部材21に析出された銅を除去し、再び銅めっきができる状態にする(ステップS44~S48)。
【0112】
(15)上記実施形態では、処理済みエッチング液の金属濃度に基づいて金属の析出量を算出するようにしている。
【0113】
しかし、金属の析出量は、その他の方法によって算出するようにしてもよい。たとえば、析出部材の金属皮膜を逆電解によって溶解し、この逆電解に要した電流に基づいて金属皮膜量を算出することができる。反応容器4に逆電解のための電極を設けることで実現可能である。
【0114】
析出部材12の金属皮膜形成前後の重量を計測し、その差に基づいて金属皮膜量を算出する。析出部材12をディジタル重量計を介して反応容器4に固定することでこれを実現することができる。重量計測は、めっき液・エッチング液が充填されていない状態で行う。
【0115】
金属皮膜の析出された析出部材12に高周波電流を流し、表面に生じた渦電流量に基づいて金属皮膜量を算出する。析出部材12に高周波電流を流すための高周波電源を接続し、渦電流を計測する渦電流計を設けることで実現可能である。
【0116】
析出部材12を含む磁気回路を形成し、金属皮膜形成前後の磁気抵抗の変化に基づいて金属皮膜量を算出する。磁気回路を形成するための磁束発生器(電磁石など)と、磁気抵抗測定器を設けることで実現可能である。
【0117】
金属皮膜の形成された析出部材にX線を照射し、放出される蛍光X線の量に基づいて金属皮膜量を算出する。X線照射器と蛍光X線測定器を設けることで実現可能である。
【0118】
金属皮膜の形成された析出部材にベータ線を照射し、後方散乱するベータ線の量に基づいて金属皮膜量を算出する。ベータ線照射器と、ベータ線検出器を設けることで実現可能である。
【0119】
金属皮膜を形成する際にマスキングを行って段差を生成し、金属皮膜形成後にマスキングを除去し、その段差を測定し、当該段差に基づいて金属皮膜量を算出する。マスキングを行う装置と、段差を測定する測定器を設けることで実現可能である。
【0120】
金属皮膜の形成された析出部材12を切断し、その断面における金属皮膜厚を測定し、当該金属皮膜厚に基づいて金属皮膜量を算出する。
【0121】
以上をまとめて抽象化し機能構成にすると、
図13のようになる。めっき液によって析出部材12に析出された金属皮膜の量を、測定部10が測定し、推定手段26がめっき槽2における析出速度を推定する。
【0122】
(16)上記実施形態では、推定した析出速度や警告をタッチパネルディスプレイ34に表示するようにしている。これに代えて、あるいはこれに加えて、通信回路36にて、他のPCやサーバ装置に析出速度や警告を出力するようにしてもよい。
【0123】
(17)上記各変形例は、互いに組み合わせて実施可能である。