(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024119128
(43)【公開日】2024-09-03
(54)【発明の名称】継電連動装置
(51)【国際特許分類】
B61L 19/16 20060101AFI20240827BHJP
【FI】
B61L19/16
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023025799
(22)【出願日】2023-02-22
(71)【出願人】
【識別番号】000221616
【氏名又は名称】東日本旅客鉄道株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000207470
【氏名又は名称】大同信号株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001254
【氏名又は名称】弁理士法人光陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】奈良 圭祐
(72)【発明者】
【氏名】谷本 智
(72)【発明者】
【氏名】藤井 志晴
(72)【発明者】
【氏名】柏村 政臣
(57)【要約】
【課題】短期間に設計を完了することができる継電連動装置を提供する。
【解決手段】駅ごとに設けられ、てこ、軌道回路および転てつ機からの信号に基づいて信号機および踏切の連動制御を実行可能な継電連動装置において、てこリレー回路と信号制御リレー回路と出発現示時素回路を少なくとも有し、所定の線形の線路を備えた複数の駅に共通する論理を有する連動論理回路(21)と、軌道回路および転てつ機からの信号に基づいて前記連動論理回路に対して連動制御のための照査条件を与える条件(リレー)回路(22)と、各駅の現場設備の増設に備えた論理回路(23)と、前記連動論理回路からの信号に基づいて踏切制御のための信号を生成する信号生成回路(24)と、現場設備の制御のための条件(リレー)回路(25)と、を備えるようにした。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
駅ごとに設けられ、てこ、軌道回路および転てつ機からの信号に基づいて信号機および踏切の連動制御を実行可能な継電連動装置であって、
てこリレー回路と信号制御リレー回路と出発現示時素回路を少なくとも有し、所定の線形の線路を備えた複数の駅に共通する論理を有する連動論理回路と、
軌道回路および転てつ機からの信号に基づいて前記連動論理回路に対して連動制御のための照査条件を与える第1条件回路と、
各駅の現場設備の増設に備えた論理回路と、
前記連動論理回路からの信号に基づいて踏切制御のための信号を生成する信号生成回路と、
現場設備の制御のための第2条件回路と、
を備えていることを特徴とする継電連動装置。
【請求項2】
前記現場設備の増設に備えた論理回路は、転てつ表示リレー回路および転てつ表示チェックリレー回路であり、
前記転てつ表示リレー回路は、少なくとも1つの転てつ表示リレーを備え、該転てつ表示リレーと並列に、増設した設備に対応した転てつ表示リレーが設けられ、
前記転てつ表示チェックリレー回路は、チェック用リレーを備え、当該チェック用リレーの信号線路上には当該チェック用リレーと対をなすリレーの接点および前記少なくとも1つの転てつ表示リレーの接点と増設した現場設備の転てつ表示リレーの接点が直列に設けられ、
前記転てつ表示リレー回路からの信号が入力される信号制御リレー回路を構成する信号制御リレーの信号線路上には前記チェック用リレーの接点が設けられていることを特徴とする請求項1に記載の継電連動装置。
【請求項3】
前記てこリレー回路および前記信号制御リレー回路には、前記出発現示時素回路を構成する継電器により導通/非導通にされる接点がそれぞれ設けられ、
前記連動論理回路が実装される架台には、前記継電器が挿入されるソケットが設けられ、
前記ソケットに、前記継電器の代わりに挿入されることで、前記てこリレー回路および前記信号制御リレー回路内の前記接点を常に導通状態に切り替えるための論理切替えユニットを備えることを特徴とする請求項1または2に記載の継電連動装置。
【請求項4】
前記論理切替えユニットは、連動論理回路を構成する継電器のケースと同一のケースと、当該継電器の接点端子を有するベースと同一のベースとから構成され、
前記出発現示時素回路を構成する継電器の、前記てこリレー回路と前記信号制御リレー回路に設けられる接点に対応した端子間には、短絡用の導線がそれぞれ接続されていることを特徴とする請求項3に記載の継電連動装置。
【請求項5】
前記現場設備の増設に備えた論理回路に照査条件を与える現場設備増設用の第3条件回路と、
前記信号生成回路からの信号を受けて踏切設備へ供給する制御信号を生成し出力する踏切制御論理回路と、
前記第2条件回路からの信号を受けて現場設備へ供給する制御信号を生成し出力する現場設備制御論理回路と、
をさらに備え、前記第3条件回路と前記踏切制御論理回路と前記現場設備制御論理回路が実装される架台には、現場設備が増設された際に追加される継電器を装着するために使用される予備のソケットが複数設けられていることを特徴とする請求項3に記載の継電連動装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鉄道路線において駅ごとに設けられる継電連動装置に関し、特に線形が同一の複数の駅の継電連動装置を設計する際に利用して有効な技術に関する。
【背景技術】
【0002】
鉄道路線においては、軌道回路や「てこ」と呼ばれるスイッチからの信号に基づいて信号機の現示を制御したり、転てつ機の定位/反位を制御したりする継電連動装置が駅や停車場等の単位で構成されている。
なお、上記のように駅単位で構成されている継電連動装置に関する発明としては、例えば特許文献1や2に開示されているものがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2010-228576号公報
【特許文献2】特開2021-24349号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来、鉄道路線において駅単位で継電連動装置を設計する場合、線形が同一であっていても信号機や転てつ機等の数が異なるなど、連動制御が全く同一の駅はほぼ存在しないため、駅ごとに継電連動装置を設計することが行われている。また、継電連動装置を設計する場合、駅構内および駅近傍の踏切の制御は、駅の継電連動装置からの信号に基づいて行われており、継電連動装置の制御対象となる踏切の数も駅ごとに異なっていることも、継電連動装置の設計を駅ごとに行う要因となっていた。なお、特許文献1や2に開示されている発明は、継電連動装置における機能の改良や追加に関するもので、継電連動装置全体の設計手法に関連した装置構成を提供するものではない。
【0005】
本発明者らは、経年劣化した既存の継電連動装置を更新するため、複数の駅の継電連動装置を設計しようとしたが、従来の設計手法では多くの時間と労力を必要とする。また、従来の手法で設計した継電連動装置は、駅ごとにリレー架の構成が大幅に異なるため、施工期間や現地試験期間が長くなる。また、駅ごとに継電連動装置の構成が異なることから、各駅の継電連動装置の保守点検が複雑となり作業員の負担が大きいという課題があった。
【0006】
本発明は上記のような課題に着目してなされたもので、その目的とするところは、多くの時間と労力を必要とすることなく、短期間に設計を完了することができる継電連動装置を提供することにある。
本発明の他の目的は、施工期間および現地試験期間を短縮することができる継電連動装置を提供することにある。
本発明のさらに他の目的は、保守点検が容易になり作業員の負担を軽減することができる継電連動装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するため、この発明は、
駅ごとに設けられ、てこ、軌道回路および転てつ機からの信号に基づいて信号機および踏切の連動制御を実行可能な継電連動装置において、
てこリレー回路と信号制御リレー回路と出発現示時素回路を少なくとも有し、所定の線形の線路を備えた複数の駅に共通する論理を有する連動論理回路(21)と、
軌道回路および転てつ機からの信号に基づいて前記連動論理回路に対して連動制御のための照査条件を与える第1条件回路(22)と、
各駅の現場設備の増設に備えた論理回路(23)と、
前記連動論理回路からの信号に基づいて踏切制御のための信号を生成する信号生成回路(24)と、
現場設備の制御のための第2条件回路(25)と、を備えているようにしたものである。
【0008】
上記手段によれば、継電連動装置の一部を共通論理として構成するとともに各駅の現場設備増設用の論理回路を設けているので、従来のように、駅ごとに継電連動装置全体を設計し構築する必要がない。そのため、多くの時間と労力を必要とすることなく、短期間に継電連動装置を構築し施工期間を短縮することができる。また、複数の駅の継電連動装置間で論理が共通であるため、現地試験期間を短縮するとともに、駅ごとに確保する予備品の種類や数を減らすことができる。さらに、保守点検が容易になり作業員の負担を軽減することができる。
【0009】
ここで、望ましくは、前記現場設備の増設に備えた論理回路は、転てつ表示リレー回路および転てつ表示チェックリレー回路であり、
前記転てつ表示リレー回路は、少なくとも1つの転てつ表示リレーを備え、該転てつ表示リレーと並列に、増設した設備に対応した転てつ表示リレーが設けられ、
前記転てつ表示チェックリレー回路は、チェック用リレーを備え、当該チェック用リレーの信号線路上には当該チェック用リレー(定位または反位)と対をなすリレー(反位または定位)の接点および前記少なくとも1つの転てつ表示リレーの接点と増設した現場設備の転てつ表示リレーの接点が直列に設けられ、
前記転てつ表示リレー回路からの信号が入力される信号制御リレー回路を構成する信号制御リレーの信号線路上には前記チェック用リレーの接点が設けられているように構成する。
かかる構成によれば、現場設備が増設された場合にも、信号制御リレー回路の構成を変更する必要がなく、回路設計に要する時間と労力を低減することができる。
【0010】
また、望ましくは、前記てこリレー回路および前記信号制御リレー回路には、前記出発現示時素回路を構成する継電器により導通/非導通にされる接点がそれぞれ設けられ、
前記連動論理回路が実装される架台には、前記継電器が挿入されるソケットが設けられ、
前記ソケットに、前記継電器の代わりに挿入されることで、前記てこリレー回路および前記信号制御リレー回路内の前記接点を常に導通状態に切り替えるための論理切替えユニットを備えるように構成する。
かかる構成によれば、踏切がないあるいは信号現示の遅延の必要のない駅の場合には、出発現示時素回路を構成するリレーを継電連動リレー架上のソケットから引き抜いて論理切替えユニットを当該ソケットに差し込むことによって、何ら連動論理回路を変更することなく論理を切り替えることができ、回路設計に要する時間と労力を低減することができる。
【0011】
さらに、望ましくは、前記論理切替えユニットは、連動論理回路を構成する継電器のケースと同一のケースと、当該継電器の接点端子を有するベースと同一のベースとから構成され、
前記出発現示時素回路を構成する継電器の、前記てこリレー回路と前記信号制御リレー回路に設けられる接点に対応した端子間には、短絡用の導線がそれぞれ接続されているように構成する。
かかる構成によれば、新規の部品を作成することなく、既存の汎用品の部品を利用して論理切替えユニットを作成することができ、それによってコストアップを回避することができる。
【0012】
また、望ましくは、前記現場設備の増設に備えた論理回路に照査条件を与える現場設備増設用の第3条件回路と、
前記信号生成回路からの信号を受けて踏切設備へ供給する制御信号を生成し出力する踏切制御論理回路と、
前記第2条件回路からの信号を受けて現場設備へ供給する制御信号を生成し出力する現場設備制御論理回路と、
をさらに備え、前記第3条件回路と前記踏切制御論理回路と前記現場設備制御論理回路が実装される架台には、現場設備が増設された際に追加される継電器を装着するために使用される予備のソケットが複数設けられているようにする。
これにより、架台も共通化することができ、現場設備の多い駅の継電連動装置を構築する際に、架台を変更する必要がなくなり、短期間に継電連動装置を構築することができる。
【発明の効果】
【0013】
本発明に係る継電連動装置によれば、多くの時間と労力を必要とすることなく、短期間に設計を完了することができる。また、施工期間および現地試験期間を短縮するとともに、駅ごとに確保する予備品の種類や数を減らすことができる。さらに、保守点検が容易になり作業員の負担を軽減することができるという効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本発明に係る継電連動装置が適用される鉄道の線路の基本的な構成(線形)を示す概略線路構成図である。
【
図2】本発明に係る継電連動装置の一実施形態を示す概略構成図である。
【
図3】(A)は実施形態の継電連動装置を構成する論理切替えユニットの一例を示す斜視図、(B)は論理切替えユニットの底面図である。
【
図4】論理切替えユニットが接続される出発現示時素回路の具体的な構成例を示す回路構成図である。
【
図5】(A)はてこリレー回路の一部の構成例を示す回路図、(B)は論理切替えユニットを挿入した場合のてこリレー回路の等価回路を示す回路図である。
【
図6】(A)は信号制御リレー回路の一部の構成例を示す回路図、(B)は論理切替えユニットを挿入した場合の信号制御リレー回路の等価回路を示す回路図である。
【
図7】(A)は従来の継電連動装置における現場設備に対応した転てつ表示リレー回路の構成例を示す回路図、(B)は従来の継電連動装置における転てつ表示リレーに関連する信号制御リレー回路の一部の構成を示す回路図である。
【
図8】(A)は本発明の実施形態の継電連動装置における現場設備に対応した転てつ表示リレー回路および転てつ表示チェックリレー回路の構成例を示す回路図、(B)は実施形態の継電連動装置における転てつ表示リレーに関連する信号制御リレー回路の一部の構成を示す回路図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、図面を参照しつつ、本発明に係る継電連動装置の実施形態について説明する。
本発明は、線路の基本的な構成が、
図1に示すようなモデル線形(単線、4進路)である駅における継電連動装置の設計を容易にすることに向けてなされたものである。
図1において、符号11A~11Dは線路、符号12A~12Dは信号機、符号13A,13Bは転てつ機、符号14は踏切を示している。
なお、踏切14の数は、駅によって異なっており、踏切のない駅もある。また、信号機12と踏切14の他、出発反応標識など図示しない現場設備があり、それらの数も駅ごとに異なっている。さらに、信号機や転てつ機の数は駅によってばらつきが比較的小さいが、駅ごとの踏切の数の差異は大きい。このことが、従来、継電連動装置の設計を駅ごとに行なっている原因の1つであった。
【0016】
図2には、本実施形態の継電連動装置20の概略構成が示されている。
図2に示すように、本実施形態の継電連動装置20は、軌道リレー回路21Aや信号制御リレー回路21B、てこリレー回路21C、踏切の遮断に必要な時間を確保するため信号現示を遅延させる時間の不足分の時間を補うための出発現示時素回路21Dなどを備えた連動論理回路21と、軌道回路からの信号や転てつ機の状態検出スイッチからの信号等を入力とし信号機や踏切の連動制御のための照査条件を与える連動制御のための条件(リレー)回路22、現場設備の増設に備えた論理回路23、踏切制御のための条件信号を生成し出力する条件信号生成回路24、現場設備の制御のための条件を与える現場設備制御のための条件(リレー)回路25が、共通論理CLとして構成されている。
【0017】
そして、上記共通論理CLに対して、設計対象の駅に特有の現場設備増設用の条件を与える現場設備増設用の条件(リレー)回路26、駅ごとに設計され踏切を制御する信号を出力する踏切制御論理回路27、ATS(自動列車停止)装置や列車接近警報装置、出発反応標識など現場設備を制御する信号を出力する現場設備制御論理回路28が接続されることによって、継電連動装置20が構成されるようになっている。
さらに、特に限定されるものでないが、本実施形態においては、一点鎖線Aで囲まれた回路部分が、複数のリレー用ソケットが実装された1つの架台の上に上記軌道リレー回路21A、信号制御リレー回路21B、てこリレー回路21C、出発現示時素回路21D等を構成する所定のリレーをソケットに挿入することによって、継電連動リレー架として構成されている。
【0018】
また、一点鎖線Bで囲まれた回路部分が、上記と同様に、複数のリレー用ソケットが実装された1つの架台の上に、上記条件(リレー)回路22、現場設備増設用の論理回路23、踏切制御用の信号生成回路24、現場設備用の条件(リレー)回路25、現場設備増設用の条件(リレー)回路26、踏切制御論理回路27、現場設備制御論理回路28を構成するリレーを装着することによって、入出力インターフェースリレー架として構成されている。
なお、この入出力インターフェースリレー架には、一般的な駅の継電連動装置にとっては予備の部品となるリレー用ソケットが実装またはソケットの実装スペースが設けられており、現場設備の多い駅の継電連動装置においては、これらの予備のリレー用ソケットを使用して、現場設備用のリレーを実装できるように構成されている。これにより、架台も共通化することができ、現場設備の多い駅の継電連動装置を構築する際に、架台を変更する必要がなくなる。
【0019】
また、
図2においては、連動論理回路21を構成する回路として、軌道リレー回路21A、信号制御リレー回路21B、てこリレー回路21C、出発現示時素回路21Dが示されているが、これらの回路は一部であってこれらの回路以外に、例えば転てつ制御回路や転てつ鎖錠回路、時間鎖錠回路、進路鎖錠リレー回路、接近鎖錠リレー回路、停現(停止現示)てこリレー回路、運転方向リレー回路などが連動論理回路21に含まれているが、すべての回路ブロックとそれらの間で伝送される信号の線を図示すると図面が複雑になるので、図示を省略しているが、図示しないそれらの回路を構成するリレーも上記の継電連動リレー架に装着されている。
【0020】
上記のように本実施形態の継電連動装置20は、継電連動装置の一部を共通論理CLとして構成するとともに現場設備増設用の論理回路23を設けているので、従来のように、駅ごとに継電連動装置全体を設計する必要がない。そのため、設計に要する期間および労力を減らすことができるとともに、施工期間および現地試験期間を短縮することができる。また、連動論理を共通化することで、駅ごとに確保する予備品の種類や数を減らすこともできる。
また、上記回路21~25を含む共通論理CLの部分を記述した回路データを、各駅に共通の設計資源としてパッケージ化して、設計者同士で共有したり、利用を希望する第3者に有償で提供したりするようにしても良い。これにより、着目する駅用の継電連動装置を設計する際に、パッケージ化された設計資源を利用することで、多くの時間と労力を必要とすることなく、短期間に設計を完了することができる。
【0021】
さらに、本実施形態の継電連動装置20においては、上記共通論理CLを構成する出発現示時素回路21Dの一部のリレーをソケットから引き抜いて、代わりに論理切替えユニット30を差し込むことによって、踏切のない駅のように出発現示時素回路21Dが不要な駅の継電連動装置に対応できるように構成されている。
また、本実施形態の継電連動装置20においては、現場設備増設用の論理回路23を設けるとともに、現場設備増設用のリレーを増やしても信号制御リレー回路の論理(リレーの接点)を変更する必要がないように工夫している。以下、上記論理切替えユニット30の構成および現場設備増設用論理回路23における上記工夫点について詳しく説明する。
【0022】
図3(A)には論理切替えユニット30の一構成例の斜視図が、また
図3(B)には論理切替えユニット30の底面図が示されている。
図3(A)に示すように、論理切替えユニット30は、一般的な継電器(リレー)と同様な箱形をなす透明なケース31と、該ケース31の開口側(図では下側)を閉塞するように結合されたベース32と、ケース31およびベース32を固定するためのローレットねじ33などから構成されている。一般的な継電器とは異なり、ケース31内にはコイルや鉄心、ヨーク、接点を有する可動片および固定片などの部品は設けられていない。
【0023】
一方、ベース32には、一般的な継電器と同様に、複数の接続端子34が縦方向と横方向に整列して配設されている。つまり、本実施形態における論理切替えユニット30は、見かけ上、継電器と同一の形態を有している。このようにすることで、既存の継電器を改造して論理切替えユニット30を構成することができ、それによってコストアップを抑制することができるようになっている。また、誤挿入や未挿入になるのを防止し易くなる。
なお、本実施形態の論理切替えユニット30においては、一般的な継電器とは異なり、
図3(B)に示すように、接点端子N8-C8間と接点端子C12-R12間に、それぞれジャンパー線の機能を有する導線35A,35Bが接続されて上記接点端子間が短絡され、常に通電可能な状態になるように構成されている。
【0024】
ここで、一般的な継電器では、例えばN1接点端子とC1接点端子にそれぞれ配線を接続すると、リレーが扛上状態であるときに通電し、R1接点端子とC1接点端子に配線をそれぞれ接続すると、リレーが落下状態であるときに通電するようになっている。また、N2~N11とC2~C11、R2~R11は、条件照査に必要な接点数に柔軟に対応できるようにするために用意されている接点の数を増やしたい場合に使用する予備の接点端子である。次に、接点端子N8-C8間と接点端子C12-R12間を短絡している理由について説明する。
【0025】
図4には、論理切替えユニット30が接続される
図2の出発現示時素回路21Dの具体的な回路構成例が示されている。また、
図5(A)には
図2のてこリレー回路21Cの一部の回路構成例が、
図6(A)には信号制御リレー回路21Bの一部の回路構成例が示されている。なお、
図4~
図6において、符号RLYが付されているのは、継電器のコイルであるが、以下単にリレーと称する。
【0026】
また、vの記号はリレーが励磁(扛上)されると通電状態になりリレーが落下されると非通電状態になる接点、逆vの記号はリレーが励磁(扛上)されると非通電状態になる接点であり、リレーRLYとそのリレーに対応する接点には、例えば102LURや102LRのように、同一の符号が付記されている。なお、信号線路の一方の端部の符号B24は直流電源の正側端子、他方の端部の符号C24は直流電源の負側端子に繋がることを意味している。さらに、
図5および
図6においては、破線D1,D2が付された円で囲まれた部位に、一般的な継電論理の照査条件を与える複数の接点が回路の機能に応じて設けられるが、すべての接点を表示すると回路が複雑になるので図示を省略している。
【0027】
図5(A)に示すように、てこリレー回路21Cには、
図4の出発現示時素回路21Dを構成するリレー102LURと102LUPRの接点が設けられ、
図6(A)に示すように、信号制御リレー回路21Bには
図4の出発現示時素回路21Dを構成するリレー102LUPRの接点Pが設けられている。一方、出発現示時素回路21Dは、前述したように、設計対象の駅に、踏切の遮断に必要な時間を確保するため信号現示を遅延させる時間の不足分の時間を補う必要のある踏切がある場合に設けられる回路である。
そのため、そのような踏切あるいは踏切が1つもない駅の継電連動装置においては、出発現示時素回路21Dが不要であるが、本実施形態においては、連動論理部分を共通論理として構成しているので、出発現示時素回路21Dが不要でも回路としては存在する。従って、踏切がない駅では出発現示時素回路21Dは動作しないが、上記のようにてこリレー回路21Cと信号制御リレー回路21Bに出発現示時素回路21Dを構成するリレー102LURと102LUPRの接点があると、それらの接点が動作しないことによって、てこリレー回路21Cと信号制御リレー回路21Bが正常に条件照査を行うことができない。
【0028】
そこで、本実施形態の継電連動装置においては、踏切がない駅の場合には、出発現示時素回路21Dを構成するリレー102LURと102LUPRを継電連動リレー架上のソケットから引き抜いて、
図3に示されている論理切替えユニット30を空いたソケットに差し込むようにしている。そして、リレー102LURと102LUPRの代わりに論理切替えユニット30を差し込むと、
図5(A)のてこリレー回路21C内のリレー102LURと102LUPRに対応する接点が、
図5(B)に示すように、常に導通状態となり、論理が切り替わる。また、同様に、
図6(A)の信号制御リレー回路21B内のリレー102LUPRに対応する接点が、
図6(B)に示すように、常に導通状態となり、論理が切り替わる。そのため、踏切がない駅と踏切がある駅とで、同一の連動論理回路21を使用することができる。
【0029】
次に、現場設備増設用のリレーを増やしても信号制御リレー回路21Bの論理(リレーの接点)を変更する必要がないように工夫した上記論理回路23について説明する。
図7(A)には従来の継電連動装置における現場設備に対応した転てつ表示リレー回路の構成例が、
図7(B)には従来の継電連動装置における転てつ表示リレーに関連する信号制御リレー回路の一部の構成が示されている。また、
図8(A)には本実施形態の継電連動装置における現場設備増設に備えた論理回路23の具体例としての転てつ表示リレー回路および転てつ表示チェックリレー回路の構成例が、
図8(B)には本実施形態における転てつ表示リレーに関連する信号制御リレー回路21Bの一部の構成が示されている。
【0030】
なお、転てつ表示リレー回路は、転てつ機の開通方向(定位/反位)を示すためのリレー回路であり、
図7(A)および
図8(A)において、符号111KNP1Rは定位側の転てつ表示リレーを示している。111KRP1Rは111KNP1Rと対をなす反位側の転てつ表示リレーである。また、転てつ表示リレー111KNP1Rの信号線路にある111KRは、転てつ機によって転換される分岐器のトングレールの転換を検知するスイッチからの信号によって励磁/非励磁されるリレーの接点、111KRP1R,111KRP2Rは転てつ機の反位側の転てつ表示リレーの接点であり、これらの接点がすべて導通状態になると、転てつ表示リレー111KNP1Rに電流が流れて励磁され、
図7(B),
図8(B)の信号制御リレー回路にある対応する接点が導通状態にされる。なお、上記リレー111KRは、
図2の連動制御のための条件(リレー)回路22に設けられている。
【0031】
連動制御システムにおいては、信号機は、転てつ機が所定の開通方向に向いていることを確認(条件照査)して、進行を指示する現示(停止を示す赤以外)を行う。転てつ表示リレー回路は、転てつ機の開通方向を示しており、信号機を制御するため信号制御リレー回路は、
図7(B),
図8(B)に示すように信号制御リレー102RHRで条件照査を行っている。
図7(B)において、符号E1が付された破線で囲まれた部位の接点が、
図7(A)の転てつ表示リレー回路で増設された転てつ表示リレー111KNP2R、111KNP3Rの接点、
図8(B)において、符号E2が付された破線で囲まれた部位の接点が、
図8(A)の転てつ表示チェックリレー回路を構成するチェック用のリレー111KNCRの接点である。
【0032】
現場設備が増える状況では、転てつ表示リレーを現場制御論理に使用する場合が多いとともに、1つの転てつ表示リレーで制御可能な現場設備には限りがあるため、必要により転てつ表示リレーの増設を行う。従来、増設したリレーには、
図7(A)に示すように、111KNP2R、111KNP3R…と符号を付けていた。この際、増設したリレーは、元のリレー111KNP1Rと同一の挙動をしなければ安全を担保できない。
そこで、従来の継電連動装置では、
図7(B)に示すように、増設したものを含めてすべての転てつ表示リレーを信号制御リレー回路で条件照査するため、増設した転てつ表示リレー111KNP2R、111KNP3R…の接点を信号線路上に追加していた。そのため、現場設備が多い駅では信号制御リレー回路の照査条件を変更、すなわち連動論理を変更する必要があった。
【0033】
これに対して、本実施形態の継電連動装置においては、現場設備に応じて例えば転てつ機が増加した場合に論理回路23の既論理を変更せずに対応できるようにするため、
図8(A)に示すように、転てつ表示リレー回路23Aと並列にチェック用リレー111KNCRを有する転てつ表示チェックリレー回路23Bを設けている。そして、この転てつ表示チェックリレー回路23Bの信号線路上には、チェック用リレー111KNCRの接点と転てつ表示リレー111KNP1Rの接点が設けられ、転てつ表示チェックリレー1111KNCRで条件照査を行うように構成している。
ここで、転てつ表示リレー111KNP2Rを増設した場合には、転てつ表示チェックリレー1111KNCRの信号線路上に、増設した転てつ表示リレー111KNP2Rの接点が追加される。さらに、転てつ表示リレー111KNP3Rを増設した場合には、転てつ表示チェックリレー1111KNCRの信号線路上に、増設した転てつ表示リレー111KNP3Rの接点を追加する。これにより、転てつ表示チェックリレー1111KNCRは、増設したリレーの状態が条件に一致していることを照査する。
【0034】
一方、信号制御リレー回路では、従来(
図7(B))は接点111KNP1Rとしていた条件を、
図8(B)に符号E2で示すように、接点111KNCRに変更している。そのため、転てつ表示リレー111KNP2Rを増設した場合も転てつ表示リレー111KNP2Rおよび111KNP3Rを増設した場合も、信号制御リレー回路では、
図8(B)に示す回路のままでよく、回路を変更する必要がない。その結果、転てつ表示リレーを増設した場合でも、従来の条件照査の考え方を踏襲したまま、信号制御リレー回路(連動論理)の条件変更を回避することができるようになる。
なお、
図8(A)において、同一の回路構成の転てつ表示リレー回路およぴ転てつ表示チェックリレー回路が上下に2つ示されているのは、転てつ機の定位側の開通方向表示の他、転てつ機の反位側の開通方向表示を可能とするとともに、それらの条件照査を行えるようにした回路を示しているためである。
【0035】
図8(B)に示されている信号制御リレー回路は、信号機に進行を指示する現示(停止を示す赤以外)を出すための条件照査を行う回路であり、転てつ機の開通方向が所定の方向を向いていること、転てつ機が動かないように電気的に固定(いわゆる鎖錠)されていること、進路上に列車がいないことなどを、信号制御リレー102RHRによって照査する。
具体的には、
図8(B)において、信号制御リレー102RHRの線路上に設けられている接点S1~S14は、
図2の連動論理回路21を構成する軌道リレー回路21A、信号制御リレー回路21B、てこリレー回路21C、出発現示時素回路21D、転てつ鎖錠回路、時間鎖錠回路、進路鎖錠リレー回路、接近鎖錠リレー回路、停止現示てこリレー回路、運転方向リレー回路に設けられているリレーの接点である。
図8(B)の回路は、リレー102RHRの信号線路上のすべての接点S1~S14が導通状態になると、リレー102RHRに電流が流れて、条件(リレー)回路25内の該リレー102RHRの接点が扛上されることによって、対応する信号機の現示を切り替えるように動作する。
【0036】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、種々の変形や変更が可能である。例えば、上記実施形態では、論理切替えユニット30として、一般的な継電器と同様な箱形のケース31と複数の接点端子を有するベース32とを備え、見かけ上、継電器と同一の形態を有するものを使用すると説明したが、論理切替えユニット30はそのように構成されたものに限定されず、例えば
図3に示されているベース32のみにより構成しても良い。
【0037】
また、継電器と同一の形態を有する論理切替えユニット30を使用する代わりに、論理切替えユニット30の接点端子N8,C8,C12およびR12に相当する端子のみを有するプラグ状の部品を別途作成して、それをソケットの対応する部位に挿入して論理を切り替えるように構成しても良い。
さらに、
図2に示されている共通論理CLに、信号機の現示を切り替えるためのてこや進行方向を指定するための方向てこ、各種表示灯を備えた制御盤を含ませるようにしても良い。
【符号の説明】
【0038】
11A~11D 線路
12A~12D 信号機
13A,13B 転てつ機
14 踏切
20 継電連動装置
21 連動論理回路
22 連動制御のための照査条件を与える条件リレー(第1条件回路)
23 現場設備の増設に備えた論理回路
23A 転てつ表示リレー回路
23B 転てつ表示チェックリレー回路
24 踏切制御のための信号生成回路
25 現場設備の制御のための条件を与える条件リレー(第2条件回路)
30 論理切替えユニット
31 ケース
32 ベース
33A,33B 導線(ジャンパー線)
CL パッケージ化され共通論理