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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024119135
(43)【公開日】2024-09-03
(54)【発明の名称】ペクチンの製造方法
(51)【国際特許分類】
   C08B 37/06 20060101AFI20240827BHJP
【FI】
C08B37/06
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023025817
(22)【出願日】2023-02-22
(71)【出願人】
【識別番号】390015004
【氏名又は名称】株式会社サナス
(74)【代理人】
【識別番号】110003524
【氏名又は名称】弁理士法人愛宕綜合特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】川上 拓也
(72)【発明者】
【氏名】米盛 裕希子
【テーマコード(参考)】
4C090
【Fターム(参考)】
4C090AA04
4C090BA50
4C090BC10
4C090CA10
4C090CA13
4C090CA43
4C090CA46
4C090DA03
4C090DA27
(57)【要約】
【課題】澱粉粕を原料とするペクチンの製造方法において、加熱した水溶液中であってもペクチンを効率よく抽出することにより、低コストでペクチンを得ることを可能とするペクチンの製造方法を提供すること。
【解決手段】澱粉粕に含まれる澱粉を除去した後に、一旦乾燥することにより乾燥物を得て、前記乾燥物からペクチンを抽出することを特徴とする。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
澱粉粕を原料とするペクチンの製造方法であって、澱粉粕に含まれる澱粉を除去した後に、一旦乾燥することにより乾燥物を得て、前記乾燥物からペクチンを抽出することを特徴とするペクチンの製造方法。
【請求項2】
前記澱粉粕が甘藷澱粉粕である請求項1に記載されたペクチンの製造方法。
【請求項3】
前記澱粉粕に含まれる澱粉を除去する手段が、澱粉分解酵素を用いて分解後に除去する手段である請求項1または2に記載されたペクチンの製造方法。
【請求項4】
前記澱粉粕に含まれる澱粉を除去する手段が、粉砕処理後に分級して除去する手段である請求項1または2に記載されたペクチンの製造方法。
【請求項5】
前記ペクチンを抽出する手段が、キレート効果を有する酸の水溶液を用い、65℃以上の温度で抽出処理を行う手段である請求項1または2に記載されたペクチンの製造方法。
【請求項6】
前記ペクチンを抽出する手段が、前記抽出処理を行った後、イオン交換樹脂を用いたキレート効果を有する酸の除去処理を含む手段である請求項5に記載されたペクチンの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、澱粉粕を原料とするペクチンの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ペクチンは水溶性の食物繊維の1種であり、レモン、オレンジなどの柑橘類やりんご、バナナ等の果実に多く含まれていることが知られている。また、ペクチンはポリガラクツロン酸を主成分とする複合多糖類であり、食品分野において、ゲル化剤、増粘剤、および安定剤等の食品添加物として幅広い用途で使用されている。
【0003】
甘藷、馬鈴薯、及びタピオカ等の澱粉製造原料から、澱粉を製造した際に発生する残渣は、それぞれ甘藷澱粉粕、馬鈴薯澱粉粕、及びタピオカ澱粉粕等の澱粉粕であり、これらの澱粉粕には、回収しきれなかった澱粉と共に多量のペクチンが含まれていることが知られている。そして、甘藷澱粉粕を原料として、キレート剤を用いるペクチンの製造方法も知られている(特許文献1を参照)。
【0004】
上記特許文献1に記載されたペクチンの製造方法は、産業廃棄物として廃棄されることもある甘藷澱粉粕を原料としていることから、低コストでペクチンを製造することが可能である。しかし、ペクチン沈殿物を得るための精製溶媒としてエタノール等の有機溶媒を使用することからコスト低減に限界がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第5076889号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、上記事情に鑑み、澱粉粕を原料とするペクチンの製造方法において、加熱した水溶液中であってもペクチンを効率よく抽出することにより、低コストでペクチンを得ることを可能とするペクチンの製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明によれば、澱粉粕を原料とするペクチンの製造方法であって、澱粉粕に含まれる澱粉を除去した後に、一旦乾燥することにより乾燥物を得て、前記乾燥物からペクチンを抽出することを特徴とするペクチンの製造方法が提供される。
【0008】
前記澱粉粕が甘藷澱粉粕であることが好ましい。
【0009】
前記澱粉粕に含まれる澱粉を除去する手段が、澱粉分解酵素を用いて分解後に除去する手段であることが好ましい。
【0010】
前記澱粉粕に含まれる澱粉を除去する手段が、粉砕処理後に分級して除去する手段であることが好ましい。
【0011】
前記ペクチンを抽出する手段が、キレート効果を有する酸の水溶液を用い、65℃以上の温度で抽出処理を行う手段であることが好ましい。
【0012】
前記ペクチンを抽出する手段が、前記抽出処理を行った後、イオン交換樹脂を用いたキレート効果を有する酸の除去処理を含む手段であることが好ましい。
【発明の効果】
【0013】
本発明は、澱粉粕を原料とするペクチンの製造方法において、澱粉粕に含まれる澱粉を除去した後に、一旦乾燥することにより乾燥物を得て、前記乾燥物からペクチンを抽出することを特徴とするペクチンの製造方法である。澱粉粕は、水分を多量に含み、非常に腐敗しやすいことから、長期保存が困難であるため、ペクチン製造の原料とするためには、澱粉粕を乾燥して乾燥物とすることが必要である。そして、本発明における澱粉を除去した後の澱粉粕は、澱粉粕の重量を低減できることから、乾燥にかかるコストを低減することが可能となる。また、ペクチンをゲル化剤として用いた場合、カルシウム等を介したイオン結合によりゲル化を行うが、ペクチン中にキレート剤が残存していると、当該キレート剤がカルシウム等を取込み、ゲル化を阻害するため、ペクチンがキレート剤を含まない方が好ましいことは当業者における技術常識である。しかし、特許文献1に記載された発明は、ペクチン抽出に用いたキレート剤について、ペクチン沈殿物を得た後、酸性極性溶媒を用いてキレート剤除去を行っているが、キレート剤の除去が不十分となる可能性があるのに対し、本発明は、キレート効果を有する酸の水溶液を用いてペクチンの抽出処理後、好ましくはイオン交換樹脂を用いてキレート効果を有する酸の除去処理を含むことから、確実にキレート剤を除去することが可能である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明を説明する。本発明における澱粉粕は、乾燥前に澱粉粕に含まれる澱粉を除去する必要がある。澱粉を除去する方法は特に限定されるものではないが、以下のように澱粉分解酵素を用いて分解後に除去する方法、粉砕処理後に分級して除去する方法等が挙げられる。澱粉粕に含まれる澱粉の除去量については、特に限定されるものではないが、澱粉粕固形分の25重量%以上が好ましく、30重量%以上がさらに好ましく、35重量%以上が特に好ましい。25重量%未満の場合、食品添加物としてのペクチンの成分規格を満たさない可能性がある。
【0015】
<澱粉分解酵素を用いて分解後に除去する方法>
澱粉分解酵素を用いて澱粉を生化学的に分解した後、乾燥前に水洗することにより澱粉粕から澱粉を除去する方法である。澱粉分解酵素としては、ペクチナーゼ及びヘミセルラーゼが混入していない市販の酵素であれば、何れも使用することができ、具体的には、α-アミラーゼ、β-アミラーゼ、グルコアミラーゼ、α-グルコシダーゼ、イソアミラーゼ、プルラナーゼ等が挙げられる。澱粉分解酵素はそれぞれの至適作用温度で用いることができるが、澱粉が糊化し、溶液の粘度が増大する60℃以上の比較的高温においても、酵素活性を失活しにくいことから、耐熱性の液化型α-アミラーゼが特に好ましい。具体的には、例えば、スピターゼHKS/R(ナガセケムテックス製)、Lphera(ノボザイムズ製)、クライスターゼT10S(天野エンザイム製)などが例示される。澱粉分解酵素を用いて分解された澱粉は、乾燥前に水洗することにより除去する。
【0016】
<粉砕処理後に分級して除去する方法>
澱粉粕を物理的に粉砕する粉砕処理を行う。粉砕手段は、澱粉粕を粉砕できるものであれば特に制限はないが、例えば振動ミルを用いることができる。振動ミルによる粉砕後、澱粉の粒径以上の開口径のある篩等を用いて、分級操作を行うことで、澱粉を除去した澱粉粕を得ることができる。例えば、甘藷澱粉粕であれば、含まれる甘藷澱粉の粒径は、最大30μm程度であることが知られていることから、開口径30μmより大きい篩を用いて分級することで、澱粉を除去した澱粉粕を得ることができる(例えば、日本応用糖質科学会誌第47巻第1号67-72頁参照)。
【0017】
澱粉を除去した後の澱粉粕は、非常に水分が高く、腐敗しやすいため、一旦乾燥することが必要となる。澱粉粕の乾燥に用いる乾燥機は、乾燥が行えれば、特に設備に制限はなく、公知の乾燥機を用いることができるが、熱効率の高さから気流乾燥機を用いることが好ましい。澱粉粕の乾燥後の含水率は、保管中における腐敗を防ぐため、10%以下とすることが好ましく、5%以下とすることがさらに好ましく、3%以下とすることが特に好ましい。
【0018】
乾燥物とした澱粉粕から、ペクチンを抽出する際は、前記澱粉粕に蒸留水を加え、澱粉懸濁液を調製した後、ペクチン抽出に一般的に用いられるキレート効果を有する酸を添加して、加熱抽出する。前記キレート効果を有する酸は、食品に利用でき、ペクチンが抽出できるものであれば、特に制限はないが、澱粉粕の種類に応じて、適したものを選択する必要がある。具体的なキレート効果を有する酸の種類として、リン酸、クエン酸等の酸及びその塩類等が挙げられる。
【0019】
例えば、甘藷澱粉粕を用いた甘藷澱粉製造において、粕と澱粉の分離を容易にするために、石灰溶液が添加される場合があり、ペクチンのカルボキシル基のほとんどが、カルシウム塩になっている場合があることから、一般的な酸を用いたとしてもほとんどペクチンが抽出されない場合があるため、キレート効果を有する酸を用いることが好ましく、具体的には、リン酸水素二ナトリウム、リン酸水素二カリウム、リン酸三ナトリウム、リン酸三カリウム、クエン酸三ナトリウム、炭酸ナトリウムを用いることが好ましい。
【0020】
また、加熱抽出する際の温度も、ペクチンが抽出できる条件であれば問題はなく、あらかじめ澱粉粕から澱粉を除去されていることから、澱粉の糊化を気にする必要がないため、澱粉が糊化する65℃以上の温度でも容易にペクチンを抽出することができる。好ましくはペクチンが効率よく可溶化する75℃以上の温度を用いることができる。
【0021】
ペクチン抽出処理後の澱粉懸濁液について、遠心分離又は濾過による固液分離を行い、ペクチン抽出液を回収する。ペクチン抽出液は、抽出に使用したキレート効果を有する酸を除去することが好ましく、除去には、比較的容易に実施することのできるイオン交換樹脂や限界ろ過膜(UF膜)等を用いることができるが、キレート効果を有する酸の除去効率のよいイオン交換樹脂を用いることが好ましい。ペクチン粉末中に残存するキレート効果を有する酸の量は、0.35mg/g以下にすることが好ましく、0.10mg/g以下とすることが更に好ましく、0.05mg/g以下にすることが特に好ましい。0.35mg/gを超えると、ペクチンによるゲル化が阻害される可能性がある。
【0022】
イオン交換樹脂は、ペクチンが吸着せず、キレート効果を有する酸を除去できるものであれば特に制限なく使用することができる。イオン交換樹脂には、大別すると陽イオン交換樹脂及び陰イオン交換樹脂の2種類があり、両樹脂を混合して使用する混床式を用いること、または、先に陰イオン交換樹脂、次に陽イオン交換樹脂の順でそれぞれ独立して用いることが好ましい。それぞれ独立して用いる場合、先に陽イオン交換樹脂を反応させるとペクチン抽出液のpHが酸性になり、ペクチンがゲル化する可能性があるため、先に陰イオン交換樹脂を反応させる必要がある。また、キレート効果を有する酸の除去効率が高いことから、陽イオン交換樹脂では、水素イオン型の強酸性陽イオン交換樹脂、陰イオン交換樹脂では、強塩基性陰イオン交換樹脂を用いることが好ましい。さらに、イオン交換樹脂によってキレート効果を有する酸を除去する前に、活性炭や疎水性樹脂を用いた脱色処理を行ってもよい。
【実施例0023】
以下に本発明を実施例により詳細に説明する。なお、実施例における測定方法は以下のとおりである。
【0024】
(1)含水率
実施例1におけるアミラーゼ処理前後の甘藷澱粉粕等の含水率について、赤外線水分計FD-800(ケツト科学研究所製)を用いて測定した。
【0025】
(2)ペクチンのガラクツロン酸含量
第9版食品添加物公定書に記載された方法にしたがって測定し、下記式(1)を用いて、ペクチンのガラクツロン酸(GalUA)含量(%)を算出した。
[19.41×{V1+V2+(B-S)}]/M×100 (1)
V1:カルボキシル基が修飾されていないGalUAのモル量を表す
V2:カルボキシル基がエステル化されたGalUAのモル量を表す
(B-S):カルボキシル基がアミド化されたGalUAのモル量を表す
M:乾燥重量(灰分を除く)
【0026】
(3)キレート効果を有する酸の残存量
キレート効果を有する酸の残存量について、以下に示すイオンクロマトグラフィー法を用いて測定した。
イオンクロマトグラフ装置:Dionex ICS5000+
(サーモフィッシャーサイエンティフィック株式会社製)
分離カラム:DionexIonPac AS18
(サーモフィッシャーサイエンティフィック株式会社製)
溶離液:50mM 水酸化ナトリウム
流量:1mL/分
カラム温度:30℃
検出器:電気伝導度検出器
注入量:25μL
キレート効果を有する酸の残存量は、上記のイオンクロマトグラフ測定により得られたクロマトグラムにおけるリン酸のピーク面積を用い、標準試料を用いて事前に作成した検量線から求めた。また、キレート効果を有する酸の残存量は、調製したペクチン1gに含まれるキレート効果を有する酸の量を示す。
【0027】
(実施例1:甘藷澱粉粕のアミラーゼ処理による甘藷澱粉の除去)
甘藷澱粉工場で発生した甘藷澱粉粕30重量部を蒸留水70重量部に懸濁した。甘藷澱粉粕の重量に対して、0.1重量%のアミラーゼ(スピターゼHKS/R、ナガセケムテックス製)を添加して、80℃で2時間、澱粉の分解を行った。澱粉分解後の甘藷澱粉粕について、吸引濾過器を用い、大量の蒸留水を用いて水洗しながら脱水を行うことにより澱粉分解物を除去した。濾別した甘藷澱粉粕の重量(α)及び含水率(β)の測定を行った。
【0028】
表1にアミラーゼ処理前後における濾別後の甘藷澱粉粕の重量(α)及び含水率(β)の測定値を示した。また、それぞれの甘藷澱粉粕中の水分重量(α×β/100=γ)と固形分重量(α-γ)を算出した。アミラーゼ処理を用いた澱粉の除去による固形分重量の減少量は1.9gとわずかだが、固形分が抱え込む水分が除去されることによって、甘藷澱粉粕の重量の減少量が11.3gと大きく減少することが明らかとなった。甘藷澱粉粕重量が大きく減少することにより、甘藷澱粉粕の乾燥に要するエネルギーコストを大きく低減することが可能となる。
【0029】
【表1】
【0030】
(実施例2:澱粉除去後の甘藷澱粉粕由来ペクチン(A)の調製)
実施例1で得られた澱粉除去後の甘藷澱粉粕について、気流乾燥機を用いて乾燥処理を実施した。乾燥処理後の甘藷澱粉粕の含水率は3%であった。乾燥した甘藷澱粉粕4重量部をキレート効果を有する酸の水溶液(75mMリン酸水素二ナトリウム水溶液)96重量部に添加し、撹拌を行い懸濁液とした後、90℃で4.5時間、ペクチンの加熱抽出を行った。室温に冷却後、遠心分離機を用いて3,500Gで30分間、遠心分離を行い、前記懸濁液中の不溶物を分離除去した。前記不溶物を分離除去後のペクチン抽出液に対して、1/4重量のイオン交換樹脂を添加し、30分間攪拌してキレート効果を有する酸を吸着した後、吸引濾過器を用いてイオン交換樹脂を取り除いた。濾液として得られたペクチン溶液を濃縮乾燥し、粉砕することでペクチン粉末を得た。ここで、前記イオン交換樹脂は、陽イオン交換樹脂(200CT(H)-HG、オルガノ製)と陰イオン交換樹脂(IRA900(OH)-HG、オルガノ製)を1対3の割合で混合したものを使用した。
【0031】
(比較例1:澱粉を未除去の甘藷澱粉粕由来ペクチン(B)の調製)
澱粉を除去せずに乾燥した甘藷澱粉粕を用いたこと以外は、実施例2のペクチン(A)の調製と同様の方法を用いてペクチン粉末(B)を調製した。
【0032】
(比較例2:特許文献1に記載の方法に準拠した甘藷澱粉粕由来ペクチン(C)の調製)
特許文献1に記載の方法に準拠して、甘藷澱粉粕由来ペクチン(C)を調製した。すなわち、澱粉の除去を行っていない乾燥甘藷澱粉粕5重量部にリン酸水素二ナトリウム水溶液95重量部を加え、撹拌を行い懸濁液とした後、120℃で60分間加熱抽出を行った。室温に冷却後、遠心分離機を用いて10,000Gで30分間、遠心分離を行い、前記懸濁液中の不溶物を分離除去した。上澄み液の澱粉に対して1重量%相当のアミラーゼ水溶液を添加して、60℃で3時間澱粉を分解し、沸騰湯浴中で10分間加熱して酵素を失活させた。続いて、最終濃度が50重量%になるようにエタノールを添加してペクチンを沈殿させ、この沈殿物を3倍量の1W/V%塩酸を含む80容量%エタノールで洗浄してペクチンを精製した。3倍量の水酸化ナトリウムを含む80容量%エタノールでpH6に調整した後、99容量%エタノールで3回洗浄を行い、乾燥させて甘藷澱粉粕由来ペクチン(C)を得た。
【0033】
表2に実施例2、比較例1、2で調製した甘藷澱粉粕由来ペクチンのガラクツロン酸(GalUA)含量及びキレート効果を有する酸の残存量の測定結果を示す。
【0034】
【表2】
【0035】
表2に示すように、澱粉の除去を行った甘藷澱粉粕由来ペクチン(A)、(C)が、共に第9版食品添加物公定書に記載されたペクチンの成分規格における「GalUA含量:65%以上」を満たすことから、食品添加物として用いる場合、澱粉除去を行う必要があることが明らかとなった。また、イオン交換樹脂を用いて精製(キレート効果を有する酸の除去)を行った甘藷澱粉粕由来ペクチン(A)(B)は、有機溶剤を用いて精製を行った甘藷澱粉粕由来ペクチン(C)と比較して、キレート効果を有する酸の残存量の低いペクチンを得ることができた。