(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024119161
(43)【公開日】2024-09-03
(54)【発明の名称】駆動システム
(51)【国際特許分類】
B60W 20/00 20160101AFI20240827BHJP
B60K 6/485 20071001ALI20240827BHJP
B60K 6/26 20071001ALI20240827BHJP
B60K 6/24 20071001ALI20240827BHJP
B60K 6/40 20071001ALI20240827BHJP
B60W 10/06 20060101ALI20240827BHJP
B60W 10/08 20060101ALI20240827BHJP
B60W 10/30 20060101ALI20240827BHJP
F02B 37/00 20060101ALI20240827BHJP
F02B 37/18 20060101ALI20240827BHJP
B60L 50/60 20190101ALI20240827BHJP
B60L 50/16 20190101ALI20240827BHJP
B60L 58/10 20190101ALI20240827BHJP
H02P 4/00 20060101ALI20240827BHJP
【FI】
B60W20/00 900
B60K6/485 ZHV
B60K6/26
B60K6/24
B60K6/40
B60W10/06 900
B60W10/08 900
B60W10/30 900
F02B37/00 302B
F02B37/18 D
B60L50/60
B60L50/16
B60L58/10
H02P4/00
【審査請求】有
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023025874
(22)【出願日】2023-02-22
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2024-08-14
(71)【出願人】
【識別番号】000000170
【氏名又は名称】いすゞ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110004222
【氏名又は名称】弁理士法人創光国際特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100166006
【弁理士】
【氏名又は名称】泉 通博
(74)【代理人】
【識別番号】100154070
【弁理士】
【氏名又は名称】久恒 京範
(74)【代理人】
【識別番号】100153280
【弁理士】
【氏名又は名称】寺川 賢祐
(74)【代理人】
【識別番号】100167793
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 学
(72)【発明者】
【氏名】伊東 光
【テーマコード(参考)】
3D202
3G005
5H125
5H501
【Fターム(参考)】
3D202AA09
3D202BB00
3D202BB01
3D202BB11
3D202BB18
3D202BB43
3D202CC51
3D202DD18
3D202DD20
3D202DD24
3D202DD44
3D202EE01
3D202EE17
3D202EE23
3G005EA04
3G005EA16
3G005GB27
3G005GD14
3G005GD18
3G005JA39
5H125AA01
5H125AC08
5H125AC12
5H125BD17
5H125EE31
5H125FF01
5H501AA20
5H501CC04
5H501CC07
5H501DD04
(57)【要約】
【課題】車両のエネルギー効率を向上させつつ、エンジン回転数を上昇させる。
【解決手段】永久磁石を有するロータ42と、ステータコイル41a~41cとを有するモータ4と、モータ4のステータコイル41a~41cに電力を供給するためのバッテリ10と、ロータ42に接続された駆動軸43を回転して車両100の駆動力を発生させるエンジン1と、エンジン1の排気を利用して電力を発生させる発電機8と、ステータコイル41a~41cに供給する電力の電力源を制御する制御部と、を有し、エンジン1の動作状態が所定の条件を満たす場合、発電機8が発生した電力をステータコイル41a~41cに供給することを特徴とする。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
永久磁石を有するロータと、ステータコイルとを有するモータと、
前記モータの前記ステータコイルに電力を供給するためのバッテリと、
前記ロータに接続された駆動軸を回転して車両の駆動力を発生させるエンジンと、
前記エンジンの排気を利用して電力を発生させる発電機と、
前記ステータコイルに供給する電力の電力源を制御する制御部と、を有し、
前記制御部は、前記エンジンの動作状態が所定の条件を満たす場合、前記発電機が発生した電力を前記ステータコイルに供給する、
ことを特徴とする駆動システム。
【請求項2】
前記エンジンからの排気をターボチャージャのタービンを通過させずに外部へ排出するための迂回路へ前記排気を案内する切替部をさらに備え、
前記発電機は前記迂回路に設けられており、
前記制御部は、前記エンジンの回転数が回転閾値以上であり、且つ、エンジントルクがトルク閾値以上である状態において前記切替部により前記排気を前記迂回路へ案内する、
請求項1に記載の駆動システム。
【請求項3】
前記制御部は、前記エンジンの回転数が回転閾値以上であり、前記エンジントルクが前記トルク閾値未満である状態において前記切替部により前記排気を前記迂回路へ案内せず、前記バッテリから電力を前記ステータコイルに供給する、
請求項2に記載の駆動システム。
【請求項4】
前記発電機は、ターボチャージャのタービンと同じ軸上に設けられており、前記タービンとともに回転することにより発電し、
前記制御部は、前記エンジンの回転数が回転閾値以上であり、且つ、エンジントルクがトルク閾値以上である状態において前記発電機が発生した電力を前記ステータコイルに供給し、前記エンジンの回転数が前記回転閾値以上であり、且つ、前記エンジントルクが前記トルク閾値未満である状態において前記発電機が発生した電力を前記ステータコイルに供給しない、
請求項1に記載の駆動システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電力を利用して走行可能な車両を駆動する駆動システムに関する。
【背景技術】
【0002】
モータ及び内燃機関を組み合わせて車両性能を向上させることが広く行われている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載された技術では、車両が高速で走行している状態では、モータにおいて逆起電力が発生することに起因して回転抵抗が増大する。このため、エンジン回転数が上昇しなくなるという問題があった。モータの逆起電力を低下させるため、モータの磁石が発生する磁界と反対向きの磁束を発生させることにより、モータを無負荷に近い状態にして回転抵抗を減少させることが考えられる。しかしながら、このような磁束を発生させるためにモータの電磁石へバッテリから電力を供給するとすれば、車両のエネルギー効率が悪化するという問題があった。
【0005】
本発明はこの点に鑑みてなされたものであり、車両のエネルギー効率を向上させつつ、エンジン回転数を上昇させることができる駆動システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の第1の態様の駆動システムは、永久磁石を有するロータと、ステータコイルとを有するモータと、前記モータの前記ステータコイルに電力を供給するためのバッテリと、前記ロータに接続された駆動軸を回転して車両の駆動力を発生させるエンジンと、前記エンジンの排気を利用して電力を発生させる発電機と、前記ステータコイルに供給する電力の電力源を制御する制御部と、を有し、前記制御部は、前記エンジンの動作状態が所定の条件を満たす場合、前記発電機が発生した電力を前記ステータコイルに供給する、ことを特徴とする。
【0007】
前記駆動システムは、前記エンジンからの排気をターボチャージャのタービンを通過させずに外部へ排出するための迂回路へ前記排気を案内する切替部をさらに備え、前記発電機は前記迂回路に設けられており、前記制御部は、前記エンジンの回転数が回転閾値以上であり、且つ、エンジントルクがトルク閾値以上である状態において前記切替部により前記排気を前記迂回路へ案内してもよい。
【0008】
前記制御部は、前記エンジンの回転数が回転閾値以上であり、前記エンジントルクが前記トルク閾値未満である状態において前記切替部により前記排気を前記迂回路へ案内せず、前記バッテリから電力を前記ステータコイルに供給してもよい。
【0009】
前記発電機は、ターボチャージャのタービンと同じ軸上に設けられており、前記タービンとともに回転することにより発電し、前記制御部は、前記エンジンの回転数が回転閾値以上であり、且つ、エンジントルクがトルク閾値以上である状態において前記発電機が発生した電力を前記ステータコイルに供給し、前記エンジンの回転数が前記回転閾値以上であり、且つ、前記エンジントルクが前記トルク閾値未満である状態において前記発電機が発生した電力を前記ステータコイルに供給しなくてもよい。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、車両のエネルギー効率を向上させつつ、エンジン回転数を上昇させるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図3】制御部による排気の経路の切替えのタイミングを説明するための図である。
【
図5】制御装置によるモータの制御の処理手順を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
[車両の概要]
図1は、本実施形態の駆動システムSの一例である車両100の構成を示す。車両100は、エンジン1、エアクリーナ2、ターボチャージャ3、モータ4、クラッチ5、トランスミッション6、差動装置7、発電機8、切替部9、バッテリ10及び制御装置11を備える。
図1の例では、外部からエアクリーナ2を介して吸入された空気は、ターボチャージャ3のコンプレッサ31、エンジン1、ターボチャージャ3のタービン32の順に通過し、外部へ排出される。
【0013】
エンジン1は、車両100の駆動軸と接続し、駆動軸を回転させて、車両100を推進させる駆動力を発生させる。エアクリーナ2は、外部から吸入された空気からごみを除去するフィルタである。ターボチャージャ3は、互いに連動して回転するコンプレッサ31及びタービン32を備える。ターボチャージャ3は、エンジン1からの排気の流れを利用してタービン32を回転させる。コンプレッサ31は、タービン32とともに回転することにより、エアクリーナ2を介して吸入された空気をエンジン1へ押し込む。
【0014】
モータ4は、車両100を推進させる駆動力を発生させる。モータ4は、例えば、エンジン1のフライホイール又はその周辺に設けられる。モータ4は、エンジン1の駆動力を補助する。モータ4は、発電機としても動作する。例えば、モータ4は、制動時に回生ブレーキとして動作し、電力を発生させる。モータ4は、固定子として3相のステータコイルを有し、回転子に永久磁石を有するロータを有する。モータ4は、例えば、永久磁石式同期電動機(PMモータ)である。モータ4は、ステータコイルに交流電流が流れることにより、磁束が発生し、ロータを回転させる。ロータは、駆動軸と接続する。モータ4は、駆動力を発生させてエンジン1により発生された駆動力を補助する。
【0015】
クラッチ5は、エンジン1又はモータ4が発生させた駆動力をトランスミッション6へ伝達するか否かを切り替える。トランスミッション6は、ギヤの組み合わせを変更することにより、エンジン1が発生させたトルクを増大させてタイヤ側に伝達させる。差動装置7は、車両100の旋回時に外側のタイヤを比較的早く回転させ、内側のタイヤを比較的ゆっくり回転させる。
【0016】
発電機8は、例えば、マイクロタービン発電機である。発電機8は、エンジン1からの排気をタービン32を通過させずに外部へ排出するための迂回路Wに設けられている。発電機8は、エンジン1からの排気を利用して電力を発生させる。発電機8は、排気が迂回路Wを通過する際にそのタービンが回転することにより、電力を発生させる。発電機8は、迂回路Wに設けられる例に限定されない。例えば、発電機8は、ターボチャージャ3のタービン32と同じ軸上に設けられており、タービン32とともに回転することにより発電してもよい。
【0017】
切替部9は、エンジン1からの排気をターボチャージャ3のタービン32へ案内するか、排気を迂回路Wへ案内するかを切り替える。切替部9は、例えば、タービン32への排気の流入量を調整するためのウェイストゲートバルブである。
【0018】
バッテリ10は、モータ4のステータコイルに供給するための電力を蓄える。バッテリ10は、モータ4が発電機として動作する場合に、モータ4が発電させた電力を蓄える。制御装置11は、プロセッサを有する。制御装置11は、例えば、HEV(Hybrid Electric Vehicle)コントローラを有する。制御装置11は、例えば、モータ4によるエンジン1のアシスト処理又は発電処理と、発電機8による発電処理と、を実行する。
【0019】
エンジン1の回転数が高い状態では、エンジン1と接続する駆動軸の回転数が上がり、モータ4の回転数が上がる。言い換えると、エンジン1がモータ4を連れまわり回転させる。モータ4では、ロータの永久磁石が回転することにより、ステータコイルの近傍に回転磁束が発生し、その結果ステータコイルに電流が流れる。すなわち、モータ4において逆起電力が発生する。モータ4では、発生した逆起電力により、ロータによる回転磁束を打ち消す方向の磁束が、ステータコイルから発生する。ステータコイルにより発生した磁束は、ロータの回転に対して抵抗力として作用する。したがって、エンジン1の駆動に対して車両100の駆動効率を低下させてしまう。また、モータ4を駆動するために印加する電圧とモータ4において発生する逆起電力との差が小さくなるので、モータ4の回転数が上昇しにくくなる。
【0020】
上述したようなモータ4の高回転時に発生する逆起電力の影響を抑制するため、「弱め界磁制御(弱め磁界制御)」が知られている。弱め界磁制御は、永久磁石が作る回転磁束を打ち消す位相でモータ電流を与えることによって、磁束を制御する。具体的には、モータ4に発生した磁束と反対向きの磁束を発生させてモータ4のエアギャップの磁束密度を低下させる。制御装置11は、モータ4のエアギャップの磁束密度を低下させることによって逆起電力が発生することを抑制する。制御装置11は、逆起電力と反対方向に電力を印加することにより、逆起電力によるステータコイルへの印加電圧の低下を抑制する。しかしながら、弱め界磁制御は、ステータコイルへ電力を供給する必要があり、エンジン1が高速で回転するたびにバッテリから電力を供給するとバッテリ残量の消費が促進されてしまうという課題がある。
【0021】
本発明に係る制御装置11は、発電機8が発生させた電力をモータ4に供給することにより、バッテリ10からの電力消費を抑制しつつ、モータ4の回転抵抗が大きくなることを抑制することを実現する。制御装置11は、エンジン1からの排気を発電機8が利用して発生させた電力をモータ4に供給するので、バッテリ10からの電力をモータ4に供給する場合に比べて、車両100のエネルギー効率を向上させることができる。
【0022】
[車両100の要部の構成]
図2は、車両100の要部の構成を示す。車両100は、エンジン1、モータ4、発電機8、切替部9、バッテリ10、制御装置11、回転速度計21を備える。発電機8モータ4は、3相のステータコイル41a~41c及びロータ42を備える。制御装置11は、第1スイッチ(
図2中のSW1)111、第2スイッチ(
図2中のSW2)112、3相インバータ(
図2中の3相INV)113、メモリ114及び制御部115を備える。
図2中の白抜きの太矢印は、エンジン1の排気が迂回路W(
図1参照)を切替部9により案内されて発電機8のタービンを回転させることを示す。
【0023】
回転速度計21は、エンジン1の回転数を測定する。回転速度計21は、測定した回転数を制御部115へ入力する。ステータコイル41a~41cは、モータ4の固定子に設けられた電磁石である。ロータ42は、モータ4の回転子に設けられた永久磁石である。ロータ42は、駆動軸43を中心に回転する。この駆動軸43は、エンジン1に接続されており、エンジン1とともに回転する。
【0024】
第1スイッチ111は、3相インバータ113を介して、バッテリ10からの電力をモータ4へ供給するか否かを切り替える。第2スイッチ112は、3相インバータ113を介して、発電機8が発生させた電力をモータ4へ供給するか否かを切り替える。メモリ114は、例えば、ROM(Read Only Memory)及びRAM(Random Access Memory)等により構成される。
【0025】
3相インバータ113は、3相のステータコイル41a~41cに電力を供給することにより回転磁界を発生させ、ロータ42を回転させる。メモリ114は、制御部115を機能させるための各種プログラムや各種データを記憶する。
【0026】
制御部115は、例えば、制御装置11に搭載されたプロセッサである。制御部115は、メモリ114に記憶されたプログラムを実行することにより、各種の機能を実行する。制御部115は、回転速度計21が測定したエンジン1の回転数を取得する。制御部115は、取得したエンジン1の回転数に基づいて、エンジントルクを特定する。
【0027】
制御部115は、切替部9を制御することにより、エンジン1の排気の一部を迂回路Wへ案内するか否かを切り替える。
図3は、制御部115による排気の経路の切替えの条件を説明するための図である。
図3の縦軸は、エンジントルクを示す。エンジントルクの単位は、ニュートンメートル(Nm)である。
図3の横軸は、エンジン1の回転数を示す。エンジン1の回転数の単位は、rpm(revolutions per minute)である。
【0028】
制御部115は、
図3中の楕円A1により示すように、エンジン1の回転数が回転閾値R以上であり、且つ、エンジントルクがトルク閾値T以上である状態では、タービン32の過回転又は過給圧力が許容値を超えて上昇することを抑制するため、切替部9により排気の一部を迂回路Wへ案内する。このとき、迂回路Wへ案内された排気が通過する際に、発電機8が電力を発生させる。一方、制御部115は、
図3中の楕円A2により示すように、エンジン1の回転数が回転閾値R以上であり、かつ、エンジントルクがトルク閾値T未満である状態において切替部9により排気を迂回路Wへ案内しない。このとき、発電機8は、電力を発生させない。
【0029】
エンジン1の回転数が比較的高い状態では、連れまわりによりモータ4が回転するため、ロータ42が発生させる磁束により逆起電力が発生する。この逆起電力に起因してモータ4が回転抵抗として作用するので、エンジン1の回転数が上昇しにくくなる。制御部115は、逆起電力の発生を抑制するため、エンジン1の動作状態が所定の条件を満たす場合、発電機8が発生した電力をステータコイルに供給する。制御部115は、発電機8が発生した電力をモータ4のステータコイル41a~41cに供給することにより、モータ4のロータ42が発生させる磁束の磁束密度を弱め界磁制御により低下させる。
【0030】
図4は、弱め界磁制御の一例を示す。制御部115は、120°間隔で配置されたステータコイル41a~41cに流れる電流をロータ42の回転に応じて切り替えることにより、回転磁界を発生させ、ロータ42を回転させる。ロータ42が受けるトルクは、ステータコイル41a~41cのいずれかに流れる電流の強さに比例する。モータ4のベクトル制御では、ステータコイル41a~41cに流れる電流をそれぞれのステータコイル41a~41cの軸方向に延びるベクトルとして扱う。
【0031】
図4に示すように、N極及びS極を有するロータ42の永久磁石の磁束方向をd軸とし、d軸に垂直な方向をq軸とする。制御部115は、モータ4のベクトル制御において弱め界磁制御を行っていない状態では、d軸電流を0アンペアで維持したまま、q軸電流を制御することにより、ロータトルクを制御する。制御部115は、弱め界磁制御においてd軸電流をマイナス方向に流すことにより、磁束密度を低下させる。制御部115は、このd軸電流及びq軸電流に基づいて、3相のステータコイル41a~41cに印加する電圧を算出する。制御部115は、算出した電圧を3相のステータコイル41a~41cに3相インバータ113を介して印加する。
【0032】
本明細書の例では、制御部115は、エンジン1の回転数が回転閾値R以上である状態では、ステータコイル41a~41cに電力を供給して弱め界磁制御を行うことにより、モータ4のロータ42が発生させる磁束の密度を低下させる。このとき、制御部115は、ステータコイル41a~41cに供給する電力の電力源を制御する。制御部115は、エンジントルクがトルク閾値T以上である状態では、発電機8が発生させた電力をステータコイル41a~41cに供給する。
【0033】
一方、制御部115は、エンジントルクがトルク閾値T未満である状態では、発電機8が電力を発生させないため、車両100に搭載されたバッテリ10からの電力をステータコイル41a~41cに供給する。このため、制御部115は、エンジントルクが比較的低い状態においてもエンジン1の回転数を上昇させることができる。
【0034】
上述のように、制御部115は、エンジン1もしくはロータの回転速度が回転閾値R以上である場合に、弱め界磁制御を実行する。制御部115は、エンジン1もしくはロータ42の回転速度が回転閾値R以上であり、かつ、エンジントルクがトルク閾値T以上である場合、発電機8の出力電圧を3相インバータ113を介して、ステータコイル41a~41cに供給する。このとき、制御部115は、切替部9を制御してエンジン1の排気を発電機8に導入して発電機8が電力を発生するように制御する。
【0035】
より詳しくは、制御部115は、第1スイッチ111を非接続状態、第2スイッチ112を接続状態にそれぞれ制御する。このようにして、制御部115は、発電機8が発生した電力をステータコイル41a~41cへ供給する。このため、制御部115は、バッテリ10の電力消費を抑制しながら、モータ4の回転抵抗を抑制することが可能となる。
【0036】
一方で、制御部115は、エンジン1もしくはロータ42の回転速度が回転閾値R以上であり、かつ、エンジントルクがトルク閾値T未満である場合、3相インバータ113を介して、バッテリ10の出力電圧をステータコイル41a~41cに供給する。具体的には、制御部115は、第1スイッチ111を接続状態、第2スイッチを非接続状態にそれぞれ制御する。このようにして、制御部115は、発電機8が発生した電力をステータコイル41a~41cに供給しない。なお、制御部115は、エンジン1もしくはロータ42の回転速度が回転閾値R未満である場合、回転磁束による抵抗の影響が小さいことから弱め界磁制御を実行しない。弱め界磁制御における電流の決定方法は、公知の手法を利用可能である。
【0037】
制御部115は、ターボチャージャ3のタービン32と同じ軸上に発電機8が設けられている場合等には、発電機8による発電を行うか否かを切替部9により切り替えることはできない。このとき、制御部115は、第2スイッチ112の接続状態と、第2スイッチ112の非接続状態とを切り替えることにより、発電機8が発生した電力をステータコイル41a~41cへ供給するか否かを切り替えてもよい。
【0038】
制御部115は、第2スイッチ112の接続状態と第2スイッチ112の非接続状態とを切り替えることにより、発電機8が発生した電力をステータコイル41a~41cへ供給するか否かを切り替える例に限定されない。制御部115は、第2スイッチ112の代わりに、3相インバータ113とは別の補助インバータ(不図示)を発電機8と3相インバータ113との間に設けてもよい。
【0039】
制御部115は、この補助インバータが動作している状態と、補助インバータが動作していない状態とを切り替えることにより、発電機8が発生した電力をステータコイル41a~41cへ供給するか否かを切り替えてもよい。
【0040】
[制御装置11によるモータ4の制御の処理手順]
図5は、制御装置11によるモータ4の制御の処理手順を示すフローチャートである。この処理手順は、例えば、車両100の走行中に開始される。まず、制御部115は、回転速度計21が測定したエンジン1の回転数を取得する(S101)。制御部115は、取得したエンジン1の回転数に基づいて、エンジントルクを特定する。
【0041】
制御部115は、取得したエンジン1の回転数が回転閾値R以上であるか否かを判定する(S102)。制御部115は、エンジン1の回転数が回転閾値R以上である場合に(S102のYES)、特定したエンジントルクがトルク閾値T以上であるか否かを判定する(S103)。制御部115は、エンジントルクがトルク閾値T以上である場合に(S103のYES)、切替部9により排気の一部を迂回路Wへ案内する。迂回路Wへ案内された排気が通過する際に発電機8のタービンが回転することにより、発電機8が電力を発生させ、発電機8からステータコイル41a~41cへ電力を供給する(S104)。
【0042】
制御部115は、発電機8が発生させた電力をステータコイル41a~41cに供給することにより、モータ4のエアギャップの磁束密度を低下させる弱め界磁制御を実行する(S105)。制御部115は、車両100の走行が終了したか否かを判定する(S106)。制御部115は、車両100の走行が終了したと判定した場合(S106のYES)、処理を終了する。
【0043】
制御部115は、S102の判定においてエンジン1の回転数が回転閾値R未満である場合に(S102のNO)、S106の判定に移る。制御部115は、S103の判定においてエンジントルクがトルク閾値T未満である場合に(S103のNO)、バッテリ10からステータコイル41a~41cへ電力を供給することにより(S107)、モータ4のエアギャップの磁束密度を低下させる弱め界磁制御を実行し(S105)、S106の判定に移る。制御部115は、S106の判定において車両100の走行が終了していないと判定した場合(S106のNO)、S101の処理に戻る。
【0044】
[本実施形態の制御装置11による効果]
制御部115は、発電機8が発生させた電力をモータ4に供給することにより、モータ4のエアギャップの磁束密度を低下させる磁束を発生させる。このようにして、制御部115は、モータ4において回転子の回転により逆起電力が発生することを抑制するので、モータ4の回転抵抗が大きくなることを抑制することができる。このとき、制御部115は、エンジン1からの排気を発電機8が利用して発生させた電力をステータコイル41a~41cに供給するので、バッテリ10からの電力をステータコイル41a~41cに供給する場合に比べて、車両100のエネルギー効率を向上させることができる。
【0045】
以上、本発明を実施の形態を用いて説明したが、本発明の技術的範囲は上記実施の形態に記載の範囲には限定されず、その要旨の範囲内で種々の変形及び変更が可能である。例えば、装置の全部又は一部は、任意の単位で機能的又は物理的に分散・統合して構成することができる。また、複数の実施の形態の任意の組み合わせによって生じる新たな実施の形態も、本発明の実施の形態に含まれる。組み合わせによって生じる新たな実施の形態の効果は、もとの実施の形態の効果を併せ持つ。
【符号の説明】
【0046】
1 エンジン
2 エアクリーナ
3 ターボチャージャ
4 モータ
5 クラッチ
6 トランスミッション
7 差動装置
8 発電機
9 切替部
10 バッテリ
11 制御装置
21 回転速度計
31 コンプレッサ
32 タービン
41a~41c ステータコイル
42 ロータ
100 車両
111 第1スイッチ
112 第2スイッチ
113 3相インバータ
114 メモリ
115 制御部
【手続補正書】
【提出日】2024-03-25
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
永久磁石を有するロータと、ステータコイルとを有するモータと、
前記モータの前記ステータコイルに電力を供給するためのバッテリと、
前記ロータに接続された駆動軸を回転して車両の駆動力を発生させるエンジンと、
前記エンジンの排気を利用して電力を発生させる発電機と、
前記ステータコイルに供給する電力の電力源を制御する制御部と、
前記エンジンからの排気をターボチャージャのタービンを通過させずに外部へ排出するための迂回路へ前記排気を案内する切替部と、を備え、
前記発電機は前記迂回路に設けられており、
前記制御部は、前記エンジンの回転数が回転閾値以上であり、且つ、エンジントルクがトルク閾値以上である状態において前記切替部により前記排気を前記迂回路へ案内し、前記エンジンの動作状態が所定の条件を満たす場合、前記発電機が発生した電力を前記ステータコイルに供給する、
ことを特徴とする駆動システム。
【請求項2】
永久磁石を有するロータと、ステータコイルとを有するモータと、
前記モータの前記ステータコイルに電力を供給するためのバッテリと、
前記ロータに接続された駆動軸を回転して車両の駆動力を発生させるエンジンと、
前記エンジンの排気を利用して電力を発生させる発電機と、
前記ステータコイルに供給する電力の電力源を制御する制御部と、を有し、
前記発電機は、ターボチャージャのタービンと同じ軸上に設けられており、前記タービンとともに回転することにより発電し、
前記制御部は、前記エンジンの回転数が回転閾値以上であり、且つ、エンジントルクがトルク閾値以上である状態において前記発電機が発生した電力を前記ステータコイルに供給し、前記エンジンの回転数が前記回転閾値以上であり、且つ、前記エンジントルクが前記トルク閾値未満である状態において前記発電機が発生した電力を前記ステータコイルに供給しない、
ことを特徴とする駆動システム。
【請求項3】
前記制御部は、前記エンジンの回転数が回転閾値以上であり、前記エンジントルクが前記トルク閾値未満である状態において前記切替部により前記排気を前記迂回路へ案内せず、前記バッテリから電力を前記ステータコイルに供給する、
請求項1に記載の駆動システム。