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特開2024-119162アルミニウム合金板、及びその製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024119162
(43)【公開日】2024-09-03
(54)【発明の名称】アルミニウム合金板、及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   B23K 20/04 20060101AFI20240827BHJP
   B23K 103/10 20060101ALN20240827BHJP
【FI】
B23K20/04 D
B23K20/04 J
B23K103:10
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023025877
(22)【出願日】2023-02-22
(71)【出願人】
【識別番号】000107538
【氏名又は名称】株式会社UACJ
(71)【出願人】
【識別番号】515214693
【氏名又は名称】株式会社UACJ鋳鍛
(74)【代理人】
【識別番号】110001036
【氏名又は名称】弁理士法人暁合同特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】當山 守人
(72)【発明者】
【氏名】船戸 寧
(72)【発明者】
【氏名】福地 昭
(72)【発明者】
【氏名】岡田 俊哉
【テーマコード(参考)】
4E167
【Fターム(参考)】
4E167AA06
4E167AA25
4E167AA29
4E167BC01
4E167BC13
4E167CA20
4E167CA21
4E167DC08
(57)【要約】
【課題】板面において複数のアルミニウム合金の特性を有したアルミニウム合金板、及びその製造方法を提供する。
【解決手段】アルミニウム合金板100であって、第1アルミニウム合金10と、第1アルミニウム合金10とは化学成分が異なり、第1アルミニウム合金10に接合した第2アルミニウム合金20,21と、を備えた圧延板とされ、第1アルミニウム合金10と第2アルミニウム合金20,21は、当該アルミニウム合金板100の板面方向に隣接して接合されていること。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
アルミニウム合金板であって、
第1アルミニウム合金と、
前記第1アルミニウム合金とは化学成分が異なり、前記第1アルミニウム合金に接合した第2アルミニウム合金と、を備えた圧延板とされ、
前記第1アルミニウム合金と前記第2アルミニウム合金は、当該アルミニウム合金板の板面方向に隣接して接合されている、アルミニウム合金板。
【請求項2】
前記第2アルミニウム合金は、前記第1アルミニウム合金に対し、アルミニウムの純度が異なる、請求項1に記載のアルミニウム合金板。
【請求項3】
前記第2アルミニウム合金は、前記第1アルミニウム合金に対し、添加元素の含有量が異なる、請求項1に記載のアルミニウム合金板。
【請求項4】
前記第2アルミニウム合金は、前記第1アルミニウム合金に対し、アルマイト性に影響がある添加元素の含有量が異なる、請求項3に記載のアルミニウム合金板。
【請求項5】
前記第2アルミニウム合金は、前記第1アルミニウム合金に対し、機械特性に影響がある添加元素の含有量が異なる、請求項3に記載のアルミニウム合金板。
【請求項6】
前記第2アルミニウム合金は、前記第1アルミニウム合金に対し、引張強さに影響がある添加元素の含有量が異なる、請求項5に記載のアルミニウム合金板。
【請求項7】
前記第2アルミニウム合金は、前記第1アルミニウム合金に対し、融点に影響がある添加元素の含有量が異なる、請求項3に記載のアルミニウム合金板。
【請求項8】
前記第2アルミニウム合金は、前記第1アルミニウム合金に対し、結晶の形態に影響がある添加元素の含有量が異なる、請求項3に記載のアルミニウム合金板。
【請求項9】
前記第2アルミニウム合金は、前記第1アルミニウム合金に対し、耐食性に影響がある添加元素の含有量が異なる、請求項3に記載のアルミニウム合金板。
【請求項10】
前記第2アルミニウム合金は、前記第1アルミニウム合金に対し、導電率に影響がある添加元素の含有量が異なる、請求項3に記載のアルミニウム合金板。
【請求項11】
アルミニウム合金板の製造方法であって、
第1アルミニウム合金に対し、前記第1アルミニウム合金とは化学成分が異なる第2アルミニウム合金を接合して接合体を形成する接合工程と、
前記接合体を圧延して板状にする圧延工程と、を含み、
前記接合工程では、前記第1アルミニウム合金と前記第2アルミニウム合金とを、前記アルミニウム合金板の板面方向に隣接するように接合する、アルミニウム合金板の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、アルミニウム合金板、及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、アルミニウム合金板、及びその製造方法として、特許文献1に記載の技術が知られている。具体的に、特許文献1には、アルミニウム合金板(アルミニウム合金クラッド材)の製造方法であって、アルミニウム合金からなる心材と、Al-Zn系合金からなる第1皮材と、を板厚方向に重ね合わせ、クラッド圧延を行うことが開示されている。これにより、心材と第1皮材とが板厚方向に重ね合わさったアルミニウム合金板が得られる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2016-182616号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に開示の技術では、心材と第1皮材がアルミニウム合金板の板厚方向に重ね合わさっており、心材と第1皮材のそれぞれの合金の特性がアルミニウム合金板の板面において表れ難い。
【0005】
本開示は上記のような事情に基づいて完成された技術であって、板面において複数のアルミニウム合金の特性を有したアルミニウム合金板、及びその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示は、アルミニウム合金板であって、第1アルミニウム合金と、前記第1アルミニウム合金とは化学成分が異なり、前記第1アルミニウム合金に接合した第2アルミニウム合金と、を備えた圧延板とされ、前記第1アルミニウム合金と前記第2アルミニウム合金は、当該アルミニウム合金板の板面方向に隣接して接合されている、アルミニウム合金板である。
【0007】
このような構成によると、アルミニウム合金板の板面において、特性の異なる2種類の合金が表れた圧延板とすることができる。
【0008】
上記構成において、前記第2アルミニウム合金は、前記第1アルミニウム合金に対し、アルミニウムの純度が異なっていてもよい。
【0009】
このようなアルミニウム合金板によると、例えば、第1アルミニウム合金の材料として高純度(但し、工業的に比較的低コストで量産可能な範囲の純度)のアルミニウムを採用し、第2アルミニウム合金の材料としてアルミニウム以外の元素を比較的多く含んだ低純度のアルミニウムを採用することで、第2アルミニウム合金の特性を発揮させつつ、第1アルミニウムによってコストダウンを図ることができる。
【0010】
上記構成において、前記第2アルミニウム合金は、前記第1アルミニウム合金に対し、添加元素の含有量が異なっていてもよい。
【0011】
このようなアルミニウム合金板によると、添加元素の含有量に基づいて特性が異なった2種類の合金が、板面に表れた圧延板とすることができる。
【0012】
上記構成において、前記第2アルミニウム合金は、前記第1アルミニウム合金に対し、アルマイト性に影響がある添加元素の含有量が異なっていてもよい。
【0013】
このようなアルミニウム合金板によると、アルマイト性に影響がある添加元素の含有量に基づいて特性が異なった(例えば、アルマイト処理を行った場合に色が異なる)2種類の合金が、板面に表れた圧延板とすることができる。
【0014】
上記構成において、前記第2アルミニウム合金は、前記第1アルミニウム合金に対し、機械特性に影響がある添加元素の含有量が異なっていてもよい。
【0015】
このようなアルミニウム合金板によると、機械特性に影響がある添加元素の含有量に基づいて特性が異なった2種類の合金が、板面に表れた圧延板とすることができる。
【0016】
上記構成において、前記第2アルミニウム合金は、前記第1アルミニウム合金に対し、引張強さに影響がある添加元素の含有量が異なっていてもよい。
【0017】
このようなアルミニウム合金板によると、機械特性のうち、引張強さに影響がある添加元素の含有量に基づいて特性が異なった2種類の合金が、板面に表れた圧延板とすることができる。
【0018】
上記構成において、前記第2アルミニウム合金は、前記第1アルミニウム合金に対し、融点に影響がある添加元素の含有量が異なっていてもよい。
【0019】
このようなアルミニウム合金板によると、融点に影響がある添加元素の含有量に基づいて特性が異なった2種類の合金が、板面に表れた圧延板とすることができる。例えば、第2アルミニウム合金が、第1アルミニウム合金に対し融点が低い場合、第2アルミニウム合金を他の部材と溶融接合する部分とし、第1アルミニウム合金を接合性以外の特性が第2アルミニウム合金よりも優れた部分とすることができる。第1アルミニウム合金の融点を低くしなくてもアルミニウム合金板を他の部材と接合させることができるため、第1アルミニウム合金の材料設計の自由度を高めることができる。結果として、接合性と他の特性とを両立させたアルミニウム合金板を製造することができる。
【0020】
上記構成において、前記第2アルミニウム合金は、前記第1アルミニウム合金に対し、結晶の形態に影響がある添加元素の含有量が異なっていてもよい。
【0021】
このようなアルミニウム合金板によると、結晶の形態(平均粒径や形状)に影響がある添加元素の含有量に基づいて特性が異なった2種類の合金が、板面に表れた圧延板とすることができる。
【0022】
上記構成において、前記第2アルミニウム合金は、前記第1アルミニウム合金に対し、耐食性に影響がある添加元素の含有量が異なっていてもよい。
【0023】
このようなアルミニウム合金板によると、耐食性に影響がある添加元素の含有量に基づいて特性が異なった2種類の合金が、板面に表れた圧延板とすることができる。
【0024】
上記構成において、前記第2アルミニウム合金は、前記第1アルミニウム合金に対し、導電率に影響がある添加元素の含有量が異なっていてもよい。
【0025】
このようなアルミニウム合金板によると、導電率に影響がある添加元素の含有量に基づいて特性が異なった2種類の合金が、板面に表れた圧延板とすることができる。例えば、第2アルミニウム合金が、第1アルミニウム合金に対し導電率が高い場合、第1アルミニウム合金を導電率以外の特性が第2アルミニウム合金よりも優れた部分とすることができる。第1アルミニウム合金の導電率を低くしなくてもよいため、第1アルミニウム合金の材料設計の自由度を高めることができる。結果として、電気伝導度と他の特性とを両立させたアルミニウム合金板を製造することができる。
【0026】
また、本開示は、アルミニウム合金板の製造方法であって、第1アルミニウム合金に対し、前記第1アルミニウム合金とは化学成分が異なる第2アルミニウム合金を接合して接合体を形成する接合工程と、前記接合体を圧延して板状にする圧延工程と、を含み、前記接合工程では、前記第1アルミニウム合金と前記第2アルミニウム合金とを、前記アルミニウム合金板の板面方向に隣接するように接合する、アルミニウム合金板の製造方法である。
【0027】
このような製造方法によると、その板面において、特性の異なる2種類の合金が表れた圧延板であるアルミニウム合金板を製造することができる。また、第1アルミニウム合金に対し第2アルミニウム合金を接合した後に、この接合によってなる接合体を圧延してアルミニウム合金板とするので、第1アルミニウム合金と第2アルミニウム合金との間の接合強度が高められたアルミニウム合金板を製造することができる。
【発明の効果】
【0028】
本開示によれば、板面において複数のアルミニウム合金の特性を有したアルミニウム合金板、及びその製造方法の提供が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
図1】実施形態1に係るアルミニウム合金板の斜視図
図2】アルミニウム合金板をY軸方向から視た図
図3】アルミニウム合金を接合する前の状態を示す斜視図
図4】アルミニウム合金を接合した後の状態を示す斜視図
図5】圧延工程をX軸方向から視た図
図6】2000,3000,4000系の各アルミニウム合金の化学成分を示す表
図7】5000系の各アルミニウム合金の化学成分を示す表
図8】6000,7000系の各アルミニウム合金の化学成分を示す表
図9】実施形態2に係るアルミニウム合金板の板面を上方から視た図
図10】実施形態3に係るアルミニウム合金板の板面を上方から視た図
【発明を実施するための形態】
【0030】
<実施形態1>
本開示の実施形態1に係るアルミニウム合金板100を図1から図8によって説明する。尚、各図面の一部には、X軸、Y軸、及びZ軸を示しており、各軸方向が各図で共通した方向となるように描かれている。Z軸方向は、アルミニウム合金板100の板厚方向である。X軸方向及びY軸方向は、板厚方向に交わる方向である。特に、アルミニウム合金板100の板面100Aにおいて、X軸方向又はY軸方向を、板面方向と呼ぶ。
【0031】
図1及び図2に示すように、アルミニウム合金板100は、後述する接合体30がY軸方向に延びるように圧延されることにより、Y軸方向を長辺としX軸方向を短辺とする長板状をなした圧延板とされる。アルミニウム合金板100は、第1アルミニウム合金10と、第1アルミニウム合金10に接合した2つの第2アルミニウム合金20,21と、を備える。第1アルミニウム合金10は、Z軸方向を板厚方向とし、Y軸方向を長辺とする板状体をなしている。第1アルミニウム合金10は、板面100A側において、3つの凸部11,13,15と、2つの凹部12,14と、を備える。凸部11,13,15及び凹部12,14は、それぞれY軸方向に延びており、X軸方向に並んでいる。X軸方向において隣り合う2つの凸部11,13の間に、凹部12が形成されている。同様に、X軸方向において隣り合う2つの凸部13,15の間に、凹部14が形成されている。凹部12,14には、それぞれ、2つの第2アルミニウム合金20,21が、接合している。
【0032】
第2アルミニウム合金20,21は、Z軸方向を板厚方向とし、Y軸方向を長辺とする板状体をなしている。第2アルミニウム合金20,21の板厚は、第1アルミニウム合金10の板厚よりも薄い。第2アルミニウム合金20,21は、その上面(板面)20A,21Aが、凸部11,13,15の上面11A,13A,15Aと面一になっている。第2アルミニウム合金20,21の上面20A,21Aと、凸部11,13,15の上面11A,13A,15Aは、アルミニウム合金板100の板面(上面)100Aを構成している。
【0033】
第1アルミニウム合金10と第2アルミニウム合金20,21は、アルミニウム合金板100の板面方向のうちの一つであるX軸方向に隣接して接合されている。アルミニウム合金板100の板面100Aでは、凸部11の上面11A、第2アルミニウム合金20の上面20A、凸部13の上面13A、第2アルミニウム合金21の上面21A、及び凸部15の上面15Aが、X軸方向においてこの順で隣接して並んでいる。
【0034】
第2アルミニウム合金20は、X軸方向における両側の側面20B(図3参照)が、凹部12において底壁12Aから立ち上がる立壁12B,12Cに接合されており、Z軸方向における下側の底面が、凹部12の底壁12Aに接合されている。立壁12B,12Cは、底壁12Aに対し垂直に立ち上がっていてもよく、上方に向かうほどX軸方向における両側にテーパ状に広がっていてもよい。具体的には、底壁12Aに垂直に交わる垂直線に対して立壁12B,12CがX軸方向に広がるように傾斜した傾斜角(テーパ角)が、0度以上30度以下でもよく、好ましくは、1度以上30度以下でもよい(この傾斜角が0度の場合、立壁12B,12Cは、底壁12Aに対し垂直に立ち上がっている)。尚、第2アルミニウム合金20は、凹部12の凹形状に倣う形をなしており、凹部12がテーパ状をなしている場合は、第2アルミニウム合金20もこれに倣うように(側面20Bが立壁12B,12Cと同じ傾斜角となるような)テーパ状をなすこととする。
【0035】
同様に、第2アルミニウム合金21は、X軸方向における両側の側面21B(図3参照)が、凹部14において底壁14Aから立ち上がる立壁14B,14Cに接合されており、Z軸方向における下側の底面が、凹部14の底壁14Aに接合されている。立壁14B,14Cは、底壁14Aに対し垂直に立ち上がっていてもよく、上方に向かうほどテーパ状に広がっていてもよい。具体的には、底壁14Aに垂直に交わる垂直線に対して立壁14B,14CがX軸方向に広がるように傾斜した傾斜角(テーパ角)が、0度以上30度以下でもよく、好ましくは、1度以上30度以下でもよい(この傾斜角が0度の場合、立壁14B,14Cは、底壁14Aに対し垂直に立ち上がっている)。尚、第2アルミニウム合金21は、凹部14の凹形状に倣う形をなしており、凹部14がテーパ状をなしている場合は、第2アルミニウム合金21もこれに倣うように(側面21Bが立壁14B,14Cと同じ傾斜角となるような)テーパ状をなすこととする。
【0036】
第1アルミニウム合金10と第2アルミニウム合金20,21の材料としては、アルミニウムを主成分として含む合金であれば、特に限定されない。第2アルミニウム合金20,21の材料としては、第1アルミニウム合金10とは化学成分が異なるものであればよい。第2アルミニウム合金20の材料は、第2アルミニウム合金21と同一の化学成分でもよく、異なる化学成分でもよい。
【0037】
具体的に、第1アルミニウム合金10と第2アルミニウム合金20,21の材料としては、図6から図8に示すように、JIS2014,2017,2117,2024,2030等の2000系のアルミニウム合金、JIS3004,3104,3005,3105等の3000系のアルミニウム合金、JIS4004,4104,4032,4047等の4000系のアルミニウム合金、JIS5005,5021,5041,5042,5050,5052,5154,5454,5754,5056,5456,5082,5182,5083,5086等の5000系のアルミニウム合金、JIS6101,6005,6111,6013,6151,6061,6262,6063,6181,6082等の6000系のアルミニウム合金、及びJIS7003,7005,7020,7075,7178等の7000系のアルミニウム合金からなる群のうち、いずれかを採用することができる。さらに、第1アルミニウム合金10と第2アルミニウム合金20,21の材料としては、上記アルミニウム合金に加えて、JIS1050,1070,1085,1100,1230,1200等の1000系のアルミニウム合金、及びJIS8021,8079等の8000系のアルミニウム合金からなる群のうち、いずれかを採用することも可能である。
【0038】
第2アルミニウム合金20,21は、第1アルミニウム合金10に対し、アルミニウムの純度が異なる。例えば、第2アルミニウム合金20,21は、第1アルミニウム合金10よりもアルミニウムの純度が低くてもよく、高くてもよい。
【0039】
第2アルミニウム合金20,21は、第1アルミニウム合金10に対し、添加元素(アルミニウム以外の元素)の含有量が異なる。例えば、第2アルミニウム合金20,21は、第1アルミニウム合金10に対し、Ag,Au,Co,Cr,Cu,Fe,Mg,Mn,Mo,Sc,Si,Sn,Zn,Ti,Ni,Zr,Li,Be,Bi,Pb,及びBからなる元素群のうち、1種又は2種以上の元素の含有量が異なる。第2アルミニウム合金20,21は、第1アルミニウム合金10に対し、添加元素の含有量が多くてもよく、少なくてもよい。
【0040】
第2アルミニウム合金20,21は、第1アルミニウム合金10に対し、アルマイト性に影響がある添加元素の含有量が異なる。アルマイト性に影響がある添加元素としては、Ag,Au,Co,Cu,Fe,Mo,及びSnからなる群のうち、1種又は2種以上の元素を例示することができる。「アルマイト性に影響がある」とは、アルミニウム合金に対しアルマイト処理を行った場合に、酸化被膜の形成の態様が異なる、としてもよく、アルミニウム合金に対しアルマイト処理を行った場合に、例えば、耐食性、硬度、絶縁性、又は着色等の変化が異なる、としてもよい。着色の変化について、例えば、任意のアルミニウム合金に対し、シュウ酸浴により酸化被膜の厚さを25μm形成するアルマイト処理を行う場合、Mgを5.0質量%、Mnを0.5質量%含んだアルミニウム合金は、当該アルマイト処理により褐色がかった黄色を呈するのに対し、Cuを4.0質量%、Mgを0.6質量%、Mnを0.5質量%含んだアルミニウム合金は、当該アルマイト処理により青白色を呈する。アルマイト性に影響がある別の添加元素として、Mg,Cr,Tiを例示することができる。
【0041】
第2アルミニウム合金20,21は、第1アルミニウム合金10に対し、機械特性に影響がある添加元素の含有量が異なる。機械特性に影響がある添加元素としては、Cu,Mg,Mn,Si,Cr,Fe,Ni,Zr,及びZnからなる群のうち、1種又は2種以上の元素を例示することができる。機械特性(比較的高温な状態での機械特性も含む)とは、展延性、強度、切削性、成形性(曲げ性を含む)、耐摩耗性、耐疲労性、破壊靭性、耐衝撃性、硬さ、ヤング率、引張強さ等からなる群のうち、1つまたは2つ以上の特性のことをいう。例えば、アルミニウム合金にCuが添加されると、強度、切削性等が向上し、Mnが添加されると、強度、耐食性、成形性等が向上し、Siが添加されると、耐摩耗性、耐熱性等が向上し、Mgが添加されると、成形性、溶接性、耐塩性等が向上し、Mg及びSiが添加されると、強度、耐食性等が向上し、Zn及びMgが添加されると、強度等が向上する。例えば、アルミニウム合金にCu,Pb,Sn,Biが添加されると、切削性等が向上する。機械特性に影響がある元素とは、マトリクスの改質(平均粒子径や形状)に寄与する元素であってもよいし、第二相粒子を分布させるための元素であってもよい。
【0042】
第2アルミニウム合金20,21は、第1アルミニウム合金10に対し、引張強さに影響がある添加元素の含有量が異なる。引張強さに影響がある添加元素としては、Cu,Mg,Mn,Si,Zn,Sc,及びFeからなる群のうち、1種又は2種以上の元素を例示することができる。アルミニウム合金にMn,Mg,Feのうち少なくとも1つが含まれる場合、固溶強化や析出強化によって引張強さが向上する。また、アルミニウム合金にCu,Si,Zn,Scのうち少なくとも1つが含まれる場合、析出強化によって引張強さが向上する。
【0043】
第2アルミニウム合金20,21は、第1アルミニウム合金10に対し、融点に影響がある添加元素の含有量が異なる。融点に影響がある添加元素としては、Siを例示することができる。例えば、第2アルミニウム合金20,21は、Siを含むことにより融点が調整された4000系のアルミニウム合金とし、第1アルミニウム合金10は、4000系以外の系統のアルミニウム合金としてもよい。
【0044】
第2アルミニウム合金20,21は、第1アルミニウム合金10に対し、結晶の形態に影響がある添加元素の含有量が異なる。結晶の形態に影響がある添加元素としては、Cr,Mn,Sc,及びZrのうち1種又は2種以上の元素を例示することができる。アルミニウム合金は多結晶であるため、結晶の形態とは、例えば、一つ一つの結晶の平均粒径やその形状等を指す。アルミニウム合金の多結晶は、後述する圧延工程において引き延ばされ、繊維状となるが、中間焼鈍等により加熱されると、その繊維状の形が元の結晶の形に戻ろうとする(再結晶しようとする)。このとき、アルミニウム合金の多結晶が繊維状の形に留まろうとする効果を、ピン止め効果と呼ぶ。例えば、アルミニウム合金のCuの含有量が多いと、ピン止め効果が促進されることにより、再結晶が抑制され(繊維状の形に留まり易くなる)、アルミニウム合金のCuの含有量が少ないと、ピン止め効果が抑制されることにより、再結晶が促進される(繊維状の形に留まり難くなる)。よって、結晶の形態に影響がある添加元素とは、ピン止め効果の促進又は再結晶の抑制に影響のある元素、と呼ぶことができる。また、添加元素とは、アルミニウム合金の母材の結晶の形態に影響がある元素、と呼ぶことができる。
【0045】
第2アルミニウム合金20,21は、第1アルミニウム合金10に対し、耐食性に影響がある添加元素の含有量が異なる。耐食性に影響がある添加元素としては、Cu,Mn,Si,及びZnからなる群のうち、1種又は2種以上の元素を例示することができる。これらの添加元素の添加量を調整することにより、第1アルミニウム合金10と第2アルミニウム合金20との間に電位差を生じさせることができ、第1アルミニウム合金10と第2アルミニウム合金20の一方を犠牲防食することができる。
【0046】
第2アルミニウム合金20,21は、第1アルミニウム合金10に対し、導電率に影響がある添加元素の含有量が異なる。導電率に影響がある添加元素としては、Cu,Mg,Mn,Fe,Si,及びZnからなる群のうち、1種又は2種以上の元素を例示することができる。このような添加元素は、その含有量が多いほど、アルミニウム合金の導電率が低下する。そのなかでも、Mn,Mg,Siは、Cu,Zn,Feよりも導電率の低下の程度が著しい。例えば、第2アルミニウム合金20,21は、Mnの含有量が、第1アルミニウム合金10よりも多い場合、第2アルミニウム合金20,21は、第1アルミニウム合金10よりも導電率が低いといえる。
【0047】
続いて、アルミニウム合金板100の製造方法について説明する。アルミニウム合金板100の製造方法は、図3、及び図4に示すように、第1アルミニウム合金10と第2アルミニウム合金20,21とを準備する準備工程と、第1アルミニウム合金10に対し、第2アルミニウム合金20,21を接合(鍛接)して接合体30を形成する接合工程(鍛接工程)と、図5に示すように、接合体30を圧延して板状にする圧延工程と、を含む。
【0048】
準備工程では、任意の化学成分のアルミニウム合金材料を、例えば連続鋳造により造塊し、必要に応じて均質化処理を行い、例えば熱間圧延することで、第1アルミニウム合金10と第2アルミニウム合金20,21を形成する。第1アルミニウム合金10には、切削等により、2つの凹部12,14を形成する。
【0049】
次に、図3及び図4に示すように、接合工程では、第1アルミニウム合金10と第2アルミニウム合金20,21とを所定温度で加熱し所定圧力で加圧することにより、第2アルミニウム合金20,21を凹部12,14に挿入する。具体的には、第2アルミニウム合金20,21のX軸方向における両側の側面20B,21Bが凹部12,14の立壁12B,12C,14B,14C(図2参照)にそれぞれ当接した状態で、第1アルミニウム合金10と第2アルミニウム合金20,21を加熱し、その後(又は加熱と同時に)、第2アルミニウム合金20,21を凹部12,14に対し押し込むようにして加圧する(これを鍛接と呼ぶ)。このときの加熱温度は、第1アルミニウム合金10及び第2アルミニウム合金20,21を構成するアルミニウム合金の融点以下としてもよく、250度以上500度以下でもよく、300度以上450度以下でもよく、350度以上420度以下でもよい。また、第2アルミニウム合金20,21を押し込む圧力は、第2アルミニウム合金20,21が凹部12,14において塑性変形を起こすことが可能な程度の圧力(熱間変形抵抗以上の圧力)とする。このような範囲によると、第1アルミニウム合金10と第2アルミニウム合金20,21との当接部分の表面において摩擦により酸化被膜が破壊され、当該表面にアルミニウム新生面が露出することで、当接部分(第2アルミニウム合金20,21の側面20B,21Bと凹部12,14の立壁12B,12C,14B,14C)を金属接合させることができる。
【0050】
そして、第2アルミニウム合金20,21の底面(下面)が凹部12,14の底壁12A,14Aに到達するまで第2アルミニウム合金20,21を押し込むことで、図4に示すように、第1アルミニウム合金10と第2アルミニウム合金20,21とを、アルミニウム合金板100の板面方向のうちの一つであるX軸方向に隣接するように接合させてなる接合体30を形成する。接合体30の上面においては、凸部11の上面11A、第2アルミニウム合金20の上面20A、凸部13の上面13A、第2アルミニウム合金21の上面21A、及び凸部15の上面15Aが、X軸方向においてこの順で隣接して並んでいる。
【0051】
次に、圧延工程では、例えば、熱間圧延、冷間圧延、中間焼鈍、冷間圧延を順に行うことにより、接合体30を圧延して板状の圧延板にすることで、アルミニウム合金板100を形成する。熱間圧延や冷間圧延では、図5に示すように、一対の圧延ローラ50,50によって接合体30の上面30A(及び下面)に対しZ軸方向から圧力をかけることで、接合体30がY軸方向に延びるように圧延する。これにより、第2アルミニウム合金20,21の上面20A,21Aと、凸部11,13,15の上面11A,13A,15Aと、により構成される板面100Aを有するアルミニウム合金板100を製造する。
【0052】
尚、上記準備工程や圧延工程は、使用されるアルミニウム合金の種類ごとに、従来の方法と同様の方法を採用してもよい。例えば、JIS1000系のアルミニウム合金を用いる場合、特開2017-172034号に記載の方法を採用してもよい。JIS2000系のアルミニウム合金を用いる場合、特開2013-116474号,又は特開2010-159488号に記載の方法を採用してもよい。JIS3000系のアルミニウム合金を用いる場合、特許第6912886号,特開2020-33632号,特許第6667189号,国際公開第2019/058935号,国際公開第2019/066049号,又は特開2018-3074号等の公報に記載の方法を採用してもよい。JIS4000系のアルミニウム合金を用いる場合、特許第6649889号,特許第5698416号,特許第5602747号,特開2013-116473号,特許第5261214号,特許第4636520号,又は特許第3982849号等の公報に記載の方法を採用してもよい。JIS5000系のアルミニウム合金を用いる場合、特許第6961395号,特許第5944862号,特開2013-12362号,特開2009-148823号,特開2009-209426号,又は特開平8-85880号等の公報に記載の方法を採用してもよい。JIS6000系のアルミニウム合金を用いる場合、特開2019-026876号,特開2019-056163号,特開2019-173118号,特開2020-503428号,国際公開第2018/003709号,国際公開第2018/012597号,国際公開第2019/021899号,特許第6452384号,特許第6467154号,特許第6512963号,特許第6581347号,又は特許第6585435号等の公報に記載の方法を採用してもよい。JIS7000系のアルミニウム合金を用いる場合、国際公開第2021/070900号,特許第6979991号,特許第5431795号,特許第5276341号,特許第4669903号,特許第4736048号,又は特開2010-159489号等の公報に記載の方法を採用してもよい。JIS8000系のアルミニウム合金を用いる場合、特開2016-41831号に記載の方法を採用してもよい。また、第1アルミニウム合金10と第2アルミニウム合金20,21とで用いられるアルミニウム合金の系統が異なる場合(例えば、第1アルミニウム合金10に2000系を採用し、第2アルミニウム合金20,21に3000系を採用する場合)、準備工程や圧延工程における温度、圧力等の製造条件は、中間の値となる製造条件(2000系における製造条件と3000系における製造条件との間で、中間の値となる条件)を採用してもよい。
【0053】
続いて、本実施形態の効果について説明する。本実施形態では、アルミニウム合金板100であって、第1アルミニウム合金10と、第1アルミニウム合金10とは化学成分が異なり、第1アルミニウム合金10に接合した第2アルミニウム合金20,21と、を備えた圧延板とされ、第1アルミニウム合金10と第2アルミニウム合金20,21は、当該アルミニウム合金板100の板面方向に隣接して接合されている、アルミニウム合金板100を示した。
【0054】
このような構成によると、アルミニウム合金板100の板面100Aにおいて、特性の異なる2種類の合金が表れた圧延板とすることができる。
【0055】
第2アルミニウム合金20,21は、第1アルミニウム合金10に対し、アルミニウムの純度が異なる。
【0056】
このようなアルミニウム合金板100によると、例えば、第1アルミニウム合金10の材料として高純度(但し、工業的に比較的低コストで量産可能な範囲の純度)のアルミニウムを採用し、第2アルミニウム合金20,21の材料としてアルミニウム以外の元素を比較的多く含んだ低純度のアルミニウムを採用することで、第2アルミニウム合金20,21の特性を発揮させつつ、第1アルミニウムによってコストダウンを図ることができる。
【0057】
第2アルミニウム合金20,21は、第1アルミニウム合金10に対し、添加元素の含有量が異なる。
【0058】
このようなアルミニウム合金板100によると、添加元素の含有量に基づいて特性が異なった2種類の合金が、板面100Aに表れた圧延板とすることができる。
【0059】
第2アルミニウム合金20,21は、第1アルミニウム合金10に対し、アルマイト性に影響がある添加元素の含有量が異なる。
【0060】
このようなアルミニウム合金板100によると、アルマイト性に影響がある添加元素の含有量に基づいて特性が異なった(例えば、アルマイト処理を行った場合に色が異なる)2種類の合金が、板面100Aに表れた圧延板とすることができる。
【0061】
第2アルミニウム合金20,21は、第1アルミニウム合金10に対し、機械特性に影響がある添加元素の含有量が異なる。
【0062】
このようなアルミニウム合金板100によると、機械特性に影響がある添加元素の含有量に基づいて特性が異なった2種類の合金が、板面100Aに表れた圧延板とすることができる。
【0063】
第2アルミニウム合金20,21は、第1アルミニウム合金10に対し、引張強さに影響がある添加元素の含有量が異なる。
【0064】
このようなアルミニウム合金板100によると、機械特性のうち、引張強さに影響がある添加元素の含有量に基づいて特性が異なった2種類の合金が、板面100Aに表れた圧延板とすることができる。
【0065】
第2アルミニウム合金20,21は、第1アルミニウム合金10に対し、融点に影響がある添加元素の含有量が異なる。
【0066】
このようなアルミニウム合金板100によると、融点に影響がある添加元素の含有量に基づいて特性が異なった2種類の合金が、板面100Aに表れた圧延板とすることができる。例えば、第2アルミニウム合金20,21が、第1アルミニウム合金10に対し融点が低い場合、第2アルミニウム合金20,21を他の部材と溶融接合する部分とし、第1アルミニウム合金10を接合性以外の特性が第2アルミニウム合金20,21よりも優れた部分とすることができる。第1アルミニウム合金10の融点を低くしなくてもアルミニウム合金板100を他の部材と接合させることができるため、第1アルミニウム合金10の材料設計の自由度を高めることができる。結果として、接合性と他の特性とを両立させたアルミニウム合金板100を製造することができる。
【0067】
第2アルミニウム合金20,21は、第1アルミニウム合金10に対し、結晶の形態に影響がある添加元素の含有量が異なる。
【0068】
このようなアルミニウム合金板100によると、結晶の形態に影響がある添加元素の含有量に基づいて特性が異なった2種類の合金が、板面100Aに表れた圧延板とすることができる。
【0069】
第2アルミニウム合金20,21は、第1アルミニウム合金10に対し、耐食性に影響がある添加元素の含有量が異なる。
【0070】
このようなアルミニウム合金板100によると、耐食性に影響がある添加元素の含有量に基づいて特性が異なった2種類の合金が、板面100Aに表れた圧延板とすることができる。
【0071】
第2アルミニウム合金20,21は、第1アルミニウム合金10に対し、導電率に影響がある添加元素の含有量が異なる。
【0072】
このようなアルミニウム合金板100によると、導電率に影響がある添加元素の含有量に基づいて特性が異なった2種類の合金が、板面100Aに表れた圧延板とすることができる。例えば、第2アルミニウム合金20,21が、第1アルミニウム合金10に対し導電率が高い場合、第1アルミニウム合金10を導電率以外の特性が第2アルミニウム合金20,21よりも優れた部分とすることができる。第1アルミニウム合金10の導電率を低くしなくてもよいため、第1アルミニウム合金10の材料設計の自由度を高めることができる。結果として、電気伝導度と他の特性とを両立させたアルミニウム合金板100を製造することができる。
【0073】
また、本実施形態では、アルミニウム合金板100の製造方法であって、第1アルミニウム合金10に対し、第1アルミニウム合金10とは化学成分が異なる第2アルミニウム合金20,21を接合して接合体30を形成する接合工程と、接合体30を圧延して板状にする圧延工程と、を含み、接合工程では、第1アルミニウム合金10と第2アルミニウム合金20,21とを、アルミニウム合金板100の板面方向に隣接するように接合する、アルミニウム合金板100の製造方法を示した。
【0074】
このような製造方法によると、その板面100Aにおいて、特性の異なる2種類の合金が表れた圧延板であるアルミニウム合金板100を製造することができる。また、第1アルミニウム合金10に対し第2アルミニウム合金20,21を接合した後に、この接合によってなる接合体30を圧延してアルミニウム合金板100とするので、第1アルミニウム合金10と第2アルミニウム合金20,21との間の接合強度が高められたアルミニウム合金板100を製造することができる。
【0075】
<実施形態2>
次に、本開示の実施形態2を図9によって説明する。尚、紙面奥手前方向は、アルミニウム合金板200の板厚方向であって、上記実施形態1におけるZ軸方向に相当する。X軸方向及びY軸方向は、板厚方向に交わる方向である。
【0076】
アルミニウム合金板200は、接合体がY軸方向に延びるように圧延されることにより、Y軸方向を長辺としX軸方向を短辺とする長板状をなした圧延板とされる。アルミニウム合金板200は、第1アルミニウム合金210と、第1アルミニウム合金210とは化学成分が異なり、第1アルミニウム合金210に接合した2つの第2アルミニウム合金220,221と、を備える。第1アルミニウム合金210は、Z軸方向を板厚方向とし、Y軸方向を長辺とする板状体をなしている。第2アルミニウム合金220,221は、Z軸方向を板厚方向とし、X軸方向を長辺とする板状体をなしている。第1アルミニウム合金210は、X軸方向に延びた上方視長方形状であって、紙面手前側の方向に凸状をなした3つの凸部211,213,215と、X軸方向に延びた上方視長方形状であって、3つの凸部211,213,215の間にそれぞれ配された2つの凹部(不図示)と、を備える。この2つの凹部の紙面手前側には、第2アルミニウム合金220,221が嵌合する形で鍛接され、接合している(図9では、第2アルミニウム合金220,221の紙面奥側に2つの凹部が配されている)。
【0077】
第2アルミニウム合金220,221は、その上面(板面)220A,221Aが、凸部211,213,215の上面211A,213A,215Aと面一になっている。第2アルミニウム合金220,221の上面220A,221Aと、凸部211,213,215の上面211A,213A,215Aは、アルミニウム合金板200の板面200Aを構成している。第1アルミニウム合金210と第2アルミニウム合金220,221は、アルミニウム合金板200の板面方向のうちの一つであるY軸方向に隣接して接合されている。アルミニウム合金板200の板面200Aでは、凸部211の上面211A、第2アルミニウム合金220の上面220A、凸部213の上面213A、第2アルミニウム合金221の上面221A、及び凸部215の上面215Aが、Y軸方向においてこの順で隣接して並んでいる。
【0078】
<実施形態3>
次に、本開示の実施形態3を図10によって説明する。尚、紙面奥手前方向は、アルミニウム合金板300の板厚方向であって、上記実施形態1におけるZ軸方向に相当する。X軸方向及びY軸方向は、板厚方向に交わる方向である。
【0079】
アルミニウム合金板300は、接合体がY軸方向に延びるように圧延されることにより、Y軸方向を長辺としX軸方向を短辺とする長板状をなした圧延板とされる。アルミニウム合金板300は、第1アルミニウム合金310と、第1アルミニウム合金310とは化学成分が異なり、第1アルミニウム合金310に接合した第2アルミニウム合金320と、を備える。第1アルミニウム合金310は、Z軸方向を板厚方向とし、Y軸方向を長辺とする板状体をなしている。第2アルミニウム合金320は、Z軸方向を板厚方向とし、上方視円形状をなした円板である。第1アルミニウム合金310は、紙面手前側の方向に凸状をなした凸部311と、上方視円形状をなすように紙面奥側に窪んだ凹部(不図示)と、を備える。この凹部の紙面手前側には、第2アルミニウム合金320が嵌合する形で鍛接され、円板状の第2アルミニウム合金320の側面が第1アルミニウム合金310と接合している(図10では、第2アルミニウム合金320の紙面奥側に凹部が配されている)。
【0080】
第2アルミニウム合金320は、その上面(板面)320Aが、凸部311の上面311Aと面一になっている。第2アルミニウム合金320の上面320Aと、凸部311の上面311Aは、アルミニウム合金板300の板面300Aを構成している。第1アルミニウム合金310と第2アルミニウム合金320は、アルミニウム合金板300の板面方向であるX軸方向及びY軸方向に隣接して接合されている。
【0081】
<他の実施形態>
本開示は上記記述及び図面によって説明した実施形態に限定されず、例えば次のような実施形態も本開示の技術的範囲に含まれ、さらに、下記以外にも要旨を逸脱しない範囲内で種々変更して実施することができる。
【0082】
(1)上記実施形態以外にも、第2アルミニウム合金の数や形は適宜変更可能である。例えば、第2アルミニウム合金は、3つでもよく、4つ以上でもよいし、さらに2つ以上の第2アルミニウム合金が化学成分の異なる2種類以上のアルミニウム合金によって構成されていてもよい。また、第2アルミニウム合金は、上方視四角形状等の多角形状、十字状、不定形状等、種々の形状をなしていてもよい。
【0083】
(2)上記実施形態では、第1アルミニウム合金及び第2アルミニウム合金の材料として、JIS2000系から7000系のものを例示したが、これに限定されない。例えば、アルミニウム合金の材料は、JIS1000系のものを採用してもよいし、上記実施形態に挙げられていないJIS1000系から8000系のものを採用してもよい。
【0084】
(3)上記実施形態以外にも、第1アルミニウム合金、第2アルミニウム合金、及びアルミニウム合金板の厚みや長さは適宜変更可能である。例えば、第2アルミニウム合金の厚みは、第1アルミニウム合金の厚みの半分以上であってもよい。また、例えば、アルミニウム合金板は、X軸方向における長さとY軸方向における長さが同じ(上方視方形状)であってもよく、X軸方向における長さがY軸方向における長さよりも長くてもよい。圧延板において、第2アルミニウムが存在するのは一方の面のみに限らず、圧延板の両面に第2アルミニウムが存在してもよい。この場合、接合工程において2つ以上の第2アルミニウム合金を第1アルミニウム合金の両面から接合すればよい。
【符号の説明】
【0085】
10,210,310…第1アルミニウム合金、20,21,220,221,320…第2アルミニウム合金、30…接合体、100,200,300…アルミニウム合金板
図1
図2
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図10