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特開2024-119163判定装置、判定方法および判定プログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024119163
(43)【公開日】2024-09-03
(54)【発明の名称】判定装置、判定方法および判定プログラム
(51)【国際特許分類】
   G08B 21/02 20060101AFI20240827BHJP
   G08B 21/00 20060101ALI20240827BHJP
   G08B 25/04 20060101ALI20240827BHJP
   G08G 1/00 20060101ALI20240827BHJP
【FI】
G08B21/02
G08B21/00 U
G08B25/04 K
G08G1/00 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023025878
(22)【出願日】2023-02-22
(71)【出願人】
【識別番号】000003193
【氏名又は名称】TOPPANホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】河野 寿明
【テーマコード(参考)】
5C086
5C087
5H181
【Fターム(参考)】
5C086AA22
5C086BA22
5C086CA25
5C086CA28
5C086CB36
5C086DA08
5C086DA33
5C087AA02
5C087AA03
5C087DD14
5C087EE08
5C087FF04
5C087GG02
5C087GG06
5C087GG70
5H181AA01
5H181BB04
5H181BB05
5H181BB13
5H181BB20
5H181CC04
5H181EE08
5H181FF04
5H181FF13
5H181FF25
5H181FF27
5H181FF33
5H181FF35
5H181MB12
(57)【要約】
【課題】適切な状況下でのみ車両における生体の置き去りを検知すること。
【解決手段】本開示に係る判定装置は、検出対象が乗車している車両の温度変化データを取得する取得部と、車両が所定時間を超えて駐車された場合の温度変化と、車両が駐車されたことを示すラベルとがセットとなった第1温度変化データと、車両が駐車されていない場合の温度変化と、車両が駐車されてないことを示すラベルとがセットとなった第2温度変化データとに基づく学習データによって学習された学習済モデルを用いて、取得された温度変化データから、検出対象が乗車している車両が駐車しているか否かを判定する判定部と、検出対象が乗車している車両が駐車していると判定されると、車両内の検出対象を検出する処理を実行し、検出対象が乗車している車両が駐車していないと判定されると、車両内の検出対象を検出する処理をスキップする検出部と、を備える。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
検出対象が乗車している車両の温度変化データを取得する取得部と、
前記車両が所定時間を超えて駐車された場合の温度変化と、前記車両が駐車されたことを示すラベルとがセットとなった第1温度変化データと、前記車両が駐車されていない場合の温度変化と、前記車両が駐車されてないことを示すラベルとがセットとなった第2温度変化データとに基づく学習データによって学習された学習済モデルを用いて、前記取得部によって取得された温度変化データから、前記検出対象が乗車している車両が駐車しているか否かを判定する判定部と、
前記判定部によって前記検出対象が乗車している車両が駐車していると判定されると、当該車両内の検出対象を検出する処理を実行し、前記判定部によって前記検出対象が乗車している車両が駐車していないと判定されると、当該車両内の検出対象を検出する処理をスキップする検出部と、
を備える判定装置。
【請求項2】
前記検出部によって前記検出対象が検出された場合に、予め設定された通知先に前記検出対象に関する情報および前記車両の位置情報を通知する通知部、
をさらに備える請求項1に記載の判定装置。
【請求項3】
前記判定部は、
前記学習済モデルとして、季節ごとに観測された前記学習データに基づいて学習された季節別学習済モデルを用いて、前記検出対象が乗車している車両が一時停止しているか駐車しているかを判定する、
請求項1に記載の判定装置。
【請求項4】
前記検出部は、
予め前記検出対象を検出物として学習された、当該検出対象ごとの画像認識モデルを用いて、前記車両内の検出対象を検出する、
請求項1に記載の判定装置。
【請求項5】
コンピュータが、
検出対象が乗車している車両の温度変化データを取得し、
前記車両が所定時間を超えて駐車された場合の温度変化と、前記車両が駐車されたことを示すラベルとがセットとなった第1温度変化データと、前記車両が駐車されていない場合の温度変化と、前記車両が駐車されてないことを示すラベルとがセットとなった第2温度変化データとに基づく学習データによって学習された学習済モデルを用いて、前記取得された温度変化データから、前記検出対象が乗車している車両が駐車しているか否かを判定し、
前記検出対象が乗車している車両が駐車していると判定されると、当該車両内の検出対象を検出する処理を実行し、前記検出対象が乗車している車両が駐車していないと判定されると、当該車両内の検出対象を検出する処理をスキップする、
ことを特徴とする判定方法。
【請求項6】
コンピュータを、
検出対象が乗車している車両の温度変化データを取得する取得部と、
前記車両が所定時間を超えて駐車された場合の温度変化と、前記車両が駐車されたことを示すラベルとがセットとなった第1温度変化データと、前記車両が駐車されていない場合の温度変化と、前記車両が駐車されてないことを示すラベルとがセットとなった第2温度変化データとに基づく学習データによって学習された学習済モデルを用いて、前記取得部によって取得された温度変化データから、前記検出対象が乗車している車両が駐車しているか否かを判定する判定部と、
前記判定部によって前記検出対象が乗車している車両が駐車していると判定されると、当該車両内の検出対象を検出する処理を実行し、前記判定部によって前記検出対象が乗車している車両が駐車していないと判定されると、当該車両内の検出対象を検出する処理をスキップする検出部と、
を備える判定装置として機能させることを特徴とする判定プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、車両に生体が取り残されているか否かを判定する判定装置、判定方法および判定プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
車両内に子どもやペットが置き去りされ、真夏など厳しい環境下にさらされて死亡事故に繋がる事例があり、国内外をとわず社会問題とされている。
【0003】
この問題に関連して、ドライブレコーダ等を利用して車両内に存在する子どもを検知することで、車両への子どもの置き忘れ防止や、車内の子どもの熱中症対策を行う技術が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2022-57088号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来技術によれば、運転者は、降車時に子どもが車内に取り残されていることや、車内に子どもが放置されていることを認知できるので、子どもが熱中症になってしまうこと等を未然に防止できる。
【0006】
しかしながら、単に置き去り検知を行うだけでは、運転者がごく短時間だけ車両を離れる場合にも検知機能が働いてしまい、誤報が生じる可能性がある。一方で、検知判定をユーザが任意に緩く設定してしまうと、置き去り事故を防ぐことができなくなるおそれがある。
【0007】
そこで、本開示では、適切な状況下でのみ車両における生体の置き去りを検知する判定装置、判定方法および判定プログラムを提案する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の課題を解決するために、本開示に係る判定装置は、検出対象が乗車している車両の温度変化データを取得する取得部と、前記車両が所定時間を超えて駐車された場合の温度変化と、前記車両が駐車されたことを示すラベルとがセットとなった第1温度変化データと、前記車両が駐車されていない場合の温度変化と、前記車両が駐車されてないことを示すラベルとがセットとなった第2温度変化データとに基づく学習データによって学習された学習済モデルを用いて、前記取得部によって取得された温度変化データから、前記検出対象が乗車している車両が駐車しているか否かを判定する判定部と、前記判定部によって前記検出対象が乗車している車両が駐車していると判定されると、当該車両内の検出対象を検出する処理を実行し、前記判定部によって前記検出対象が乗車している車両が駐車していないと判定されると、当該車両内の検出対象を検出する処理をスキップする検出部と、を備える。
【発明の効果】
【0009】
実施形態の一態様によれば、適切な状況下でのみ車両における生体の置き去りを検知するので、誤報の発生を防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】実施形態に係る判定処理の概要を示す図である。
図2】実施形態に係る学習済モデルについて説明するための図である。
図3】実施形態に係る温度変化データの一例を示す図である。
図4】実施形態に係る判定処理の手順を示すフローチャートである。
図5】実施形態に係る車両制御装置の構成例を示す図である。
図6】車両制御装置の機能を実現するコンピュータの一例を示すハードウェア構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下に、本開示の実施形態について図面に基づいて詳細に説明する。なお、以下の実施形態において、同一の部位には同一の符号を付することにより重複する説明を省略する。
【0012】
(1.実施形態)
(1-1.実施形態に係る判定処理の概要)
図1は、実施形態に係る判定処理の概要を示す図である。実施形態に係る判定処理は、図1に示す判定システム1により実行される。判定システム1は、本開示に係る判定装置の一例である車両制御装置100と、ユーザ端末200とを含む。判定システム1に含まれる各装置は、無線通信等により相互にデータの送受信が可能である。
【0013】
実施形態では、車両制御装置100は、車両の一例である自動車に搭載された情報処理装置であるものとする。例えば、車両制御装置100は、自動車が備える各種センサ等を制御したり、実施形態に係る判定処理を実行したりする。
【0014】
ユーザ端末200は、自動車の運転者であるユーザ10が利用する情報処理装置である。例えば、ユーザ端末200は、スマートフォンやタブレット端末である。ユーザ端末200は、車両制御装置100と相互に通信することにより、車両制御装置100が発する通知を受信したり、通知内容を表示したりする。
【0015】
ユーザ10は、幼児20の親あるいは保護者等である。幼児20は、ユーザ10によって保護される子供であり、自身では助けを呼んだり、ドアロック解除等を行うことができない年齢の子供である。
【0016】
実施形態では、車両制御装置100が、自動車内に取り残された幼児20に関する判定処理を実行する例を示す。具体的には、図1では、自動車を運転するユーザ10が、幼児20を残したまま降車した際に、車両制御装置100が幼児20の取り残しを検出し、その検出結果をユーザ端末200に通知する例を示す。
【0017】
車両制御装置100は、自動車室内に設置されたカメラ170により取得される画像、および、画像認識を行う学習済モデル等を利用することで、自動車内に検出対象(図1の例では幼児20)が所在するか否かを判定可能である。カメラ170は、例えばToF(Time of Flight)センサを備える深度センサ付きカメラである。カメラ170は、自動車の前方や、天井、後部座席等に備えられることで、自動車内部に所在する生体を死角なく検出可能であるものとする。なお、カメラ170は、画像認識に限られず、例えばミリ波による生体信号検出等の各種機能を備えてもよい。
【0018】
例えば、車両制御装置100は、自動車が停車し、ユーザ10が降車したのち所定時間後に、カメラ170の機能を用いて検出対象を検出し、自動車内に幼児20が取り残されていると判定する。すると、車両制御装置100は、ユーザ端末200に通知を発し、幼児20が取り残されている旨をユーザ10に伝達することができる。例えば、図1に示すように、車両制御装置100は、「子どもが車内に取り残されています!」という旨をユーザ端末200に表示させる通知を発する。車両制御装置100は、通知の際、GPS(Global Positioning System)等の技術を用いて、自動車の位置情報を取得してもよい。車両制御装置100は、位置情報とともに通知を発することで、自動車の現在位置をユーザ10に通知することができる。
【0019】
これにより、車両制御装置100は、降車時に幼児20が車内に取り残されていることや、車内に幼児20が放置されていることを、自動車から離れたユーザ10に伝えることができるので、幼児20が熱中症になってしまうこと等を未然に防止できる。
【0020】
しかしながら、上記処理では、ユーザ10がごく短時間だけ車両を離れる場合(以下、「一時停止」と称する)にも検知機能が働いてしまい、誤報が生じる可能性がある。一方で、検知判定をユーザが任意に緩く設定してしまうと(例えば、生体の検出機能を自動車から離れて30分後に起動させるなど)、置き去り事故を防ぐことができなくなるおそれがある。
【0021】
このため、車両制御装置100は、自動車内に幼児20が置き去られていることを検知しつつ、かつ、適切な状況下でのみ通知を行うことが望ましい。例えば、車両制御装置100は、ユーザ10が一時的に自動車を離れてすぐに自動車に戻る場合や、置き去りにより幼児20の体調が危険にさらされる可能性が低い場合には、ユーザ端末200への通知を控えることが望ましい。一方で、車両制御装置100は、ユーザ10が自動車を駐車させたにもかかわらず幼児20が自動車に残されている場合や、置き去りにより幼児20の体調が危険にさらされる可能性が高い場合には、ユーザ端末200にその旨を通知することが望ましい。
【0022】
そこで、車両制御装置100は、以下に示す処理を実行することにより、上記の課題を解決する。具体的には、車両制御装置100は、自動車が備える温度計160により、検出対象(例えば幼児20)が乗車している自動車内の、所定時間の温度変化を示すデータ(以下、「温度変化データ」と称する)を取得する。そして、車両制御装置100は、取得した温度変化データが、自動車が駐車状態(所定時間を超えてユーザ10が自動車に戻ってくる可能性がない状態、もしくは、自動車内の温度調整機能が動作しない状態等)に該当するか否かを判定する学習済モデルを用いて、自動車が駐車状態であるかを判定する。このとき、車両制御装置100は、自動車が駐車状態、すなわち、ユーザ10が自動車から離れており、幼児20の危険性が高いと判定すると、ユーザ端末200に通知を発する。一方、車両制御装置100は、自動車が一時停止状態である場合など、ユーザ10が一時的に自動車から離れたに過ぎないと判定される場合、自動車内の生体の検出処理をスキップすることで、ユーザ端末200へ通知が発せられないよう処理する。
【0023】
これにより、車両制御装置100は、幼児20が危険にさらされている場合に限り、ユーザ10に通知を発することができるので、ユーザ10が一時的に自動車を離れたに過ぎない場合などに頻繁に通知が発せられることを防止できる。
【0024】
(1-2.実施形態に係る学習済モデル)
図2を用いて、車両制御装置100が利用する学習済モデルについて説明する。図2は、実施形態に係る学習済モデルについて説明するための図である。
【0025】
なお、以下では、学習済モデルの学習段階と実行段階とを分け、いずれの処理も車両制御装置100が実行するものとして説明するが、学習段階(学習済モデルの生成)は、車両制御装置100によって実行されなくてもよい。例えば、学習段階の処理は、車両制御装置100と通信可能なクラウドサーバ等により実行されてもよい。
【0026】
まず、車両制御装置100は、学習用データセットを取得する。かかる学習用データセットは、所定時間(例えば10分間など)の自動車内の温度変化推移を示した温度変化データと、そのデータに付与されるラベルとのセットである。ラベルは、例えば、その温度変化データが「駐車」状態であるか、それ以外の状態であるかを示す情報である。
【0027】
例えば、特に外気温が高い季節では、自動車が駐車して温度制御機能(エアコンディショナー等)が停止した場合、自動車内の温度が時間とともに上昇する傾向を示す温度変化データが取得されると想定される。かかる傾向が、自動車が「駐車」したとラベル付けされた温度変化データの特徴量となる。一方で、自動車の停止後、数分で再び自動車が運転された場合など、一時停止に過ぎない場合には、自動車内の温度が時間とともに上昇するのではなく、数分で温度が低下したり、上昇が抑制される傾向を示す温度変化データが取得されると想定される。このような傾向が観測されるのは、運転者が自動車に戻ってきた際に冷房機能を動作させたり、そもそも冷房機能を停止していなかったりすることによるものである。そして、かかる傾向が、自動車が「一時停止(駐車していない)」であるととラベル付けされた温度変化データの特徴量となる。
【0028】
車両制御装置100は、このような温度変化データと「駐車」状態か否かがラベル付けされた学習データセットを機械学習し、入力される温度変化データが「駐車」状態か否かを判定するための学習済モデルを生成する。学習処理の手法は限定されず、車両制御装置100は、例えば、機械学習により得られるニューラルネットワークや決定木を実装することで、学習済モデルの生成を実現できる。具体的には、機械学習では、例えば学習データセットを用いて、自動車の状況の判定結果の不正解率が最小になるようなニューラルネットワークや決定木の重み等が学習される。
【0029】
例えば、車両制御装置100は、温度変化が一定以上上昇又は下降した後に、その逆の温度変化がある場合は、自動車が一時的な停車であったと判定するように学習する。これは、例えば季節を夏と仮定した場合、走行中には冷房等の温度制御機能が働くため一定の温度が観測される一方、一時停車で冷房が停止した場合、徐々に温度は上昇するが、ごく短時間で運転者が車内に戻り、再び冷房をかけたような状態が学習されるからである。
【0030】
車両制御装置100は、生成した学習済モデルを記憶部に格納する。なお、温度変化データは、外気温の変化に影響を受けることから、季節ごとに異なる傾向を有することが想定される。このため、車両制御装置100は、季節ごとに異なる学習データセットを用いて、季節ごとに異なる学習済モデルを生成してもよい。具体的には、車両制御装置100は、夏季と冬季とで異なる学習済モデルを生成しておき、実行段階における季節に応じて、利用する学習済モデルを選択するようにしてもよい。
【0031】
また、ラベルは、駐車が否かを示すのみならず、例えば、駐車か、一時停止か、自動車が走行中であるかなど、複数の状態を示したものであってもよい。これにより、車両制御装置100は、取得された温度変化データに基づいて、自動車がどのような状態にあるかを、より詳細に判定することができる。
【0032】
実行段階では、車両制御装置100は、自動車内の温度を常時計測可能な温度計160等を用いて、所定時間ごとの温度変化データを取得する。そして、車両制御装置100は、取得された温度変化データを学習済モデルに入力し、自動車が駐車状態にあるか否かを判定する。例えば、車両制御装置100は、自動車が駐車状態にあるか、それとも一時停止状態であったかを判定する。
【0033】
ここで、図3に、取得された温度変化データの例を示す。図3は、実施形態に係る温度変化データの一例を示す図である。なお、図3に示す温度変化データの一例は、外気温が高く、自動車の走行が停止した場合や、温度制御機能が停止した場合に、自動車内の温度が上昇する季節に観測されたものであるものとする。
【0034】
図3に示すテーブル30は、温度計160により計測された温度データの推移と、判定結果との関係を示す。例えば、所定時間にわたって取得された温度変化データが常に「23度」であれば、その変化率は「0」であり、車両制御装置100は、その状態が駐車でない(走行中である)と判定している。その後、所定時間にわたって取得された温度変化データに、「23度」から「24度」に推移したような、わずかに上昇を示す特徴が含まれる場合、車両制御装置100は、自動車の状態が一時停止であると判定している。その後、所定時間にわたって取得された温度変化データに、ごく短い時間で「23度」から「24度」、「24度」から「27度」に推移したような、温度上昇を顕著に示す特徴が含まれる場合、車両制御装置100は、自動車の状態が駐車状態であると判定している。同様に、所定時間にわたって取得された温度変化データに、ごく短い時間で「23度」から「24度」、「24度」から「27度」、「27度」から「30度」に推移したような、温度上昇を顕著に示す特徴が含まれる場合、車両制御装置100は、自動車の状態が駐車状態であると判定している。
【0035】
車両制御装置100は、自動車が駐車状態であると判定すると、カメラ170により取得された画像等を用いて、自動車内に検出対象が所在していないかを検出する。このとき、車両制御装置100は、検出対象ごとに学習された画像認識モデルを用いてもよい。例えば、車両制御装置100は、検出対象が幼児(人間)であれば、人間を検出するために学習された画像認識モデルを用いる。あるいは、車両制御装置100は、検出対象がペット(例えば飼い犬等)であれば、当該ペットを検出するために学習された画像認識モデルを用いる。そして、車両制御装置100は、自動車内に検出対象が所在すると判定すると、ユーザ端末200に通知を発する。これにより、車両制御装置100は、自動車が駐車されたと判定した場合に限り、ユーザ端末200に通知を発することができる。
【0036】
(1-3.実施形態に係る判定処理の手順)
次に、図4を用いて、実施形態に係る判定処理の手順について説明する。図4は、実施形態に係る判定処理の手順を示すフローチャートである。
【0037】
図4に示すように、車両制御装置100は、所定時間ごとの温度変化データを取得する(ステップS101)。車両制御装置100は、取得した温度変化データを学習済モデルに入力し、自動車が駐車状態にあるか否かを判定する(ステップS102)。
【0038】
自動車が駐車状態でない場合(ステップS102;No)、車両制御装置100は、温度変化データの取得を継続する。一方、自動車が駐車状態である場合(ステップS102;Yes)、車両制御装置100は、カメラ170を制御して車内を撮影し、車内の画像を取得する(ステップS103)。車両制御装置100は、取得した画像を画像認識モデルに入力し、画像中に、すなわち車内において、生体が検知されたか否か判定する(ステップS104)。
【0039】
生体が検知されない場合(ステップS104;No)、車両制御装置100は、車内での取り残し等の危険はないとして、温度変化データの取得を継続する。一方、生体が検知された場合(ステップS104;Yes)、車両制御装置100は、通知を行うため、自動車の位置情報を取得する(ステップS105)。
【0040】
そして、車両制御装置100は、取得した自動車の位置情報とともに、幼児20等の生体が自動車内に取り残されている旨をユーザ10に通知する(ステップS106)。
【0041】
(1-4.実施形態に係る車両制御装置の構成)
次に、車両制御装置100の構成について説明する。図5は、実施形態に係る車両制御装置100の構成例を示す図である。
【0042】
図5に示すように、車両制御装置100は、通信部110と、記憶部120と、制御部130と、検知部150とを備える。
【0043】
通信部110は、例えば、ネットワークインタフェースコントローラ(Network Interface Controller)等によって実現される。通信部110は、ネットワークN(例えばインターネットやローカルネットワーク)と有線又は無線で接続され、ネットワークNを介して、ユーザ端末200等との間で情報の送受信を行う。例えば、通信部110は、Wi-Fi(登録商標)、SIM(Subscriber Identity Module)、LPWA(Low Power Wide Area)等の通信規格もしくは通信技術を用いて、情報の送受信を行ってもよい。
【0044】
記憶部120は、例えば、RAM(Random Access Memory)、フラッシュメモリ等の半導体メモリ素子、または、ハードディスク、光ディスク等の記憶装置によって実現される。記憶部120は、モデル記憶部121および計測データ記憶部122を含む。
【0045】
モデル記憶部121は、予め学習された学習済モデルを記憶する。例えば、モデル記憶部121は、温度変化データに基づいて自動車が駐車状態にあるか否かを判定する学習済モデルを記憶する。また、モデル記憶部121は、自動車内で撮影された画像内に検出対象が含まれるか否かを判定する画像認識モデルを記憶する。
【0046】
計測データ記憶部122は、車両制御装置100の検知部150によって検知された各種データを記憶する。例えば、計測データ記憶部122は、温度センサ151によって計測された温度変化データを記憶する。
【0047】
記憶部120に記憶される情報は、必ずしも車両制御装置100自体が保持する必要はなく、例えばクラウド上のデータサーバ等に保持されてもよい。
【0048】
検知部150は、各種情報を検知する。温度センサ151は、図1に示した温度計160に対応し、自動車内外の温度を計測する。画像センサ152は、図1に示したカメラ170に対応し、自動車内外を撮像することで撮影画像を取得する。位置情報センサ153は、GPS等を用いて、自動車の位置情報を取得する。
【0049】
なお、検知部150は、上記の例に限らず、他の種々の情報を検知してもよい。例えば、検知部150は、自動車内外の環境に関する情報として、天候、気温、湿度、明るさ、及び、路面の状態等の情報を検知してもよい。また、検知部150は、ネットワークNを介して各種のサービスサーバに接続し、サービスサーバから、現在日時や天気予報データ(自動車内外の温度の上昇予測等)等を取得してもよい。
【0050】
制御部130は、例えば、CPU(Central Processing Unit)やMPU(Micro Processing Unit)、GPU(Graphics Processing Unit)等によって、車両制御装置100内部に記憶されたプログラムがRAM等を作業領域として実行されることにより実現される。また、制御部130は、コントローラ(controller)であり、例えば、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)やFPGA(Field Programmable Gate Array)等の集積回路により実現される。
【0051】
図5に示すように、制御部130は、取得部131と、判定部132と、検出部133と、通知部134と、学習部135を含む。
【0052】
取得部131は、各種情報を取得する。例えば、取得部131は、検出対象が乗車している車両の温度変化データを取得する。実施形態では、取得部131は、幼児20が乗車している自動車の温度変化データを取得する。
【0053】
判定部132は、所定の学習データによって学習された学習済モデルを用いて、取得部131によって取得された温度変化データから、検出対象が乗車している車両が駐車しているか否かを判定する。学習データは、例えば、車両が所定時間を超えて駐車された場合の温度変化と、車両が駐車されたことを示すラベルとがセットとなった第1温度変化データと、車両が駐車されていない場合の温度変化と、車両が駐車されてないことを示すラベルとがセットとなった第2温度変化データとを含む。
【0054】
このとき、「駐車」の概念については、例えば判定システム1を利用するユーザ10が任意に設定可能である。例えば、ユーザ10は、自動車がエンジンを停止してから10分間、運転者が自動車に戻ってこない状態で、かつ、エアコンディショナー等の温度調整機能が停止した状態を「駐車」と設定してもよい。
【0055】
上述のように、判定部132は、学習済モデルとして、季節ごとに観測された学習データに基づいて学習された季節別学習済モデルを用いて、検出対象が乗車している車両が一時停止しているか駐車しているかを判定してもよい。
【0056】
また、判定部132は、温度変化と各種データとを組み合わせた学習データを用いて生成された学習済モデルを用いてもよい。例えば、判定部132は、第1温度変化データおよび第2温度変化データに紐づけられた湿度データを含めて学習された第2の学習済モデルを用いて、検出対象が乗車している車両が一時停止しているか駐車しているかを判定してもよい。このように、判定部132は、温度と湿度を組み合わせて判定を行うモデルを利用することで、温度のみで判定する場合と比較して、より正確に自動車の状態を判定することができる可能性がある。
【0057】
検出部133は、判定部132によって検出対象が乗車している車両が駐車していると判定されると、車両内の検出対象を検出する処理を実行する。例えば、検出部133は、予め検出対象を検出物として学習された、検出対象ごとの画像認識モデルを用いて、車両内の検出対象を検出する。
【0058】
また、検出部133は、判定部132によって検出対象が乗車している車両が駐車していないと判定されると、車両内の検出対象を検出する処理をスキップする。このように、検出部133は、そもそも車両が駐車状態でない(一時停止の状態等である)場合には、生体の危険性が低いと判定し、検出をスキップする。これにより、検出部133は、後段の通知処理を発生させないので、ユーザ10への誤報を防止することができる。
【0059】
通知部134は、検出部133によって検出対象が検出された場合に、予め設定された通知先に検出対象に関する情報および車両の位置情報を通知する。実施形態では、通知部134は、自動車が駐車状態にあり、かつ、検出対象である幼児20が検出された場合に、予め設定された通知先であるユーザ端末200に通知を発する。
【0060】
学習部135は、判定処理に先立ち、学習データに基づいて学習済モデルを生成する。また、学習部135は、判定処理等が行われたのち、当該判定結果をさらに学習済モデルに反映させるための再学習処理を行ってもよい。これにより、学習部135は、既存の学習済モデルを、実際の事例を反映させた精度の高い学習済モデルに更新することができる。
【0061】
(2.実施形態の変形例)
上記実施形態では、判定システム1は、車両制御装置100とユーザ端末200とが協働して処理を実行する例を示した。しかし、判定システム1の構成はこれに限られない。例えば、判定システム1は、学習処理を行うクラウドサーバ等を含んでもよい。
【0062】
車両制御装置100は、学習済モデルを生成するための学習データとして、検出対象が車両内に所在する場合の温度変化データを用いてもよい。これは、生体によっては、その存在の有無が温度変化データに影響を与える可能性があるからである。
【0063】
実施形態では、車両の一例として自動車を例示しているが、この例に限られず、生体が取り残される可能性のある閉鎖空間を形成する乗り物等であれば、実施形態に係る判定処理が利用可能である。
【0064】
(3.その他の実施形態)
上述した実施形態に係る処理は、上記実施形態以外にも種々の異なる形態にて実施されてよい。
【0065】
例えば、上記実施形態において説明した各処理のうち、自動的に行われるものとして説明した処理の全部または一部を手動的に行うこともでき、あるいは、手動的に行われるものとして説明した処理の全部または一部を公知の方法で自動的に行うこともできる。この他、上記文書中や図面中で示した処理手順、具体的名称、各種のデータやパラメータを含む情報については、特記する場合を除いて任意に変更することができる。例えば、各図に示した各種情報は、図示した情報に限られない。
【0066】
また、図示した各装置の各構成要素は機能概念的なものであり、必ずしも物理的に図示の如く構成されていることを要しない。すなわち、各装置の分散・統合の具体的形態は図示のものに限られず、その全部または一部を、各種の負荷や使用状況などに応じて、任意の単位で機能的または物理的に分散・統合して構成することができる。
【0067】
また、上述してきた実施形態及び変形例は、処理内容を矛盾させない範囲で適宜組み合わせることが可能である。
【0068】
また、本明細書に記載された効果はあくまで例示であって限定されるものでは無く、他の効果があってもよい。
【0069】
(4.本開示に係る判定装置の効果)
上述してきたように、本開示に係る判定装置(実施形態では車両制御装置100)は、取得部(実施形態では取得部131)と、判定部(実施形態では判定部132)と、検出部(実施形態では検出部133)とを備える。取得部は、検出対象が乗車している車両の温度変化データを取得する。判定部は、車両が所定時間を超えて駐車された場合の温度変化と、車両が駐車されたことを示すラベルとがセットとなった第1温度変化データと、車両が駐車されていない場合の温度変化と、車両が駐車されてないことを示すラベルとがセットとなった第2温度変化データとに基づく学習データによって学習された学習済モデルを用いて、取得部によって取得された温度変化データから、検出対象が乗車している車両が駐車しているか否かを判定する。検出部は、判定部によって検出対象が乗車している車両が駐車していると判定されると、当該車両内の検出対象を検出する処理を実行し、判定部によって検出対象が乗車している車両が駐車していないと判定されると、当該車両内の検出対象を検出する処理をスキップする。
【0070】
このように、本開示に係る判定装置は、温度変化データに基づいて車両の駐車状態を判定し、その判定結果に基づいて検出対象を検出するか否かを決定するので、一時停止の場合など検出対象に危険性が低いときには、検出をスキップできる。すなわち、判定装置は、適切な状況下でのみ車両における生体の置き去りを検知するので、誤報の発生を防止できる。
【0071】
また、判定装置は、検出部によって検出対象が検出された場合に、予め設定された通知先に検出対象に関する情報および車両の位置情報を通知する通知部をさらに備える。
【0072】
このように、判定装置は、車両に検出対象が検出された場合に、位置情報とともにその結果を通知することで、置き去りにされた検出対象の存在をユーザに確認させることができる。
【0073】
また、判定部は、学習済モデルとして、季節ごとに観測された学習データに基づいて学習された季節別学習済モデルを用いて、検出対象が乗車している車両が一時停止しているか駐車しているかを判定してもよい。
【0074】
このように、判定装置は、季節ごとに異なる学習済モデルを用いて判定を行うことで、温度変化データに基づく車両の状態判定をより精度よく行うことができる。
【0075】
また、判定部は、学習済モデルとして、第1温度変化データおよび第2温度変化データに紐づけられた湿度データを含めて学習された第2の学習済モデルを用いて、検出対象が乗車している車両が一時停止しているか駐車しているかを判定してもよい。
【0076】
このように、判定装置は、温度とともに湿度データを計測した学習データを用いて学習された学習済モデルを用いることで、判定の精度を上げることができる。
【0077】
また、検出部は、予め検出対象を検出物として学習された、当該検出対象ごとの画像認識モデルを用いて、車両内の検出対象を検出してもよい。
【0078】
このように、判定装置は、検出対象ごとに学習された画像認識モデルを用いて検出を行うことで、対象を検出する精度を上げることができる。
【0079】
(5.ハードウェア構成)
上述してきた実施形態に係る車両制御装置100やユーザ端末200等の情報機器は、例えば図6に示すような構成のコンピュータ1000によって実現される。以下、実施形態に係る車両制御装置100を例に挙げて説明する。図6は、車両制御装置100の機能を実現するコンピュータ1000の一例を示すハードウェア構成図である。コンピュータ1000は、CPU1100、RAM1200、ROM(Read Only Memory)1300、HDD(Hard Disk Drive)1400、通信インターフェイス1500、及び入出力インターフェイス1600を有する。コンピュータ1000の各部は、バス1050によって接続される。
【0080】
CPU1100は、ROM1300又はHDD1400に格納されたプログラムに基づいて動作し、各部の制御を行う。例えば、CPU1100は、ROM1300又はHDD1400に格納されたプログラムをRAM1200に展開し、各種プログラムに対応した処理を実行する。
【0081】
ROM1300は、コンピュータ1000の起動時にCPU1100によって実行されるBIOS(Basic Input Output System)等のブートプログラムや、コンピュータ1000のハードウェアに依存するプログラム等を格納する。
【0082】
HDD1400は、CPU1100によって実行されるプログラム、及び、かかるプログラムによって使用されるデータ等を非一時的に記録する、コンピュータが読み取り可能な記録媒体である。具体的には、HDD1400は、プログラムデータ1450の一例である本開示に係る判定処理を実行するプログラムを記録する記録媒体である。
【0083】
通信インターフェイス1500は、コンピュータ1000が外部ネットワーク1550(例えばインターネット)と接続するためのインターフェイスである。例えば、CPU1100は、通信インターフェイス1500を介して、他の機器からデータを受信したり、CPU1100が生成したデータを他の機器へ送信したりする。
【0084】
入出力インターフェイス1600は、入出力デバイス1650とコンピュータ1000とを接続するためのインターフェイスである。例えば、CPU1100は、入出力インターフェイス1600を介して、キーボードやマウス等の入力デバイスからデータを受信する。また、CPU1100は、入出力インターフェイス1600を介して、ディスプレイやスピーカーやプリンタ等の出力デバイスにデータを送信する。また、入出力インターフェイス1600は、所定の記録媒体(メディア)に記録されたプログラム等を読み取るメディアインターフェイスとして機能してもよい。メディアとは、例えばDVD(Digital Versatile Disc)、PD(Phase change rewritable Disk)等の光学記録媒体、MO(Magneto-Optical disk)等の光磁気記録媒体、テープ媒体、磁気記録媒体、または半導体メモリ等である。
【0085】
例えば、コンピュータ1000が実施形態に係る車両制御装置100として機能する場合、コンピュータ1000のCPU1100は、RAM1200上にロードされた判定プログラムを実行することにより、制御部130等の機能を実現する。また、HDD1400には、本開示に係る判定処理を実行するプログラムや、記憶部120内のデータが格納される。なお、CPU1100は、プログラムデータ1450をHDD1400から読み取って実行するが、他の例として、外部ネットワーク1550を介して、他の装置からこれらのプログラムを取得してもよい。
【0086】
以上、本願の実施形態を図面に基づいて詳細に説明したが、これらは例示であり、発明の開示の欄に記載の態様を始めとして、当業者の知識に基づいて種々の変形、改良を施した他の形態で本発明を実施することが可能である。
【符号の説明】
【0087】
1 判定システム
10 ユーザ
100 車両制御装置
110 通信部
120 記憶部
130 制御部
131 取得部
132 判定部
133 検出部
134 通知部
135 学習部
150 検知部
151 温度センサ
152 画像センサ
153 位置情報センサ
200 ユーザ端末
図1
図2
図3
図4
図5
図6