(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024119167
(43)【公開日】2024-09-03
(54)【発明の名称】成形管理システム
(51)【国際特許分類】
B29C 45/76 20060101AFI20240827BHJP
B29C 45/17 20060101ALI20240827BHJP
【FI】
B29C45/76
B29C45/17
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023025882
(22)【出願日】2023-02-22
(71)【出願人】
【識別番号】000002369
【氏名又は名称】セイコーエプソン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100179475
【弁理士】
【氏名又は名称】仲井 智至
(74)【代理人】
【識別番号】100216253
【弁理士】
【氏名又は名称】松岡 宏紀
(74)【代理人】
【識別番号】100225901
【弁理士】
【氏名又は名称】今村 真之
(72)【発明者】
【氏名】厚田 耕佑
(72)【発明者】
【氏名】塩澤 総慈
【テーマコード(参考)】
4F206
【Fターム(参考)】
4F206AM02
4F206AM19
4F206JA07
4F206JL02
4F206JP01
4F206JP13
4F206JP14
4F206JP28
4F206JP30
(57)【要約】
【課題】ユーザーが規格値を超えた値に閾値を変更することを抑制できる技術を提供する。
【解決手段】成形管理システムは、成形品の品目に関する情報、成形品の仕様に関する値である規格値に関する情報、および、成形品の不良の予兆判定に用いられる値である閾値に関する情報を関連付けて記憶する記憶部と、画面を生成する、画面生成部と、画面を表示する表示部と、を備え、画面には、成形品の品目に関する情報、および、成形品の規格値に関する情報が表示され、成形品の閾値に関する情報を更新可能とする第1領域が設けられている。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
成形管理システムであって、
成形品の品目に関する情報、前記成形品の仕様に関する値である規格値に関する情報、および、前記成形品の不良の予兆判定に用いられる値である閾値に関する情報を関連付けて記憶する記憶部と、
画面を生成する、画面生成部と、
前記画面を表示する表示部と、を備え、
前記画面には、
前記成形品の前記品目に関する情報、および、前記成形品の前記規格値に関する情報が表示され、
前記成形品の前記閾値に関する情報を更新可能とする第1領域が設けられている、
成形管理システム。
【請求項2】
請求項1に記載の成形管理システムであって、
前記記憶部は、前記成形品の前記仕様の基準に関する値である基準値に関する情報を記憶し、
前記画面には、前記成形品の前記基準値に関する情報が表示される、
成形管理システム。
【請求項3】
請求項1に記載の成形管理システムであって、
前記第1領域では、前記成形品の前記閾値の上限値および前記成形品の前記閾値の下限値が更新可能である、
成形管理システム。
【請求項4】
請求項1に記載の成形管理システムであって、
前記第1領域に対する、前記成形品の前記閾値に関する情報の入力を受け付ける入力部と、
前記成形品の前記規格値に関する情報に基づいて、前記入力部が受け付けた前記成形品の前記閾値に関する情報の正誤を判定する判定部と、
前記判定部が判定した判定結果を出力する出力部と、を備える、
成形管理システム。
【請求項5】
請求項4に記載の成形管理システムであって、
前記出力部は、前記入力部が受け付けた前記成形品の前記閾値に関する情報が誤っていると前記判定部で判定された場合に、前記表示部に警告情報を出力する、
成形管理システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、成形管理システムに関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、特許文献1には、成形品の検査装置が開示されている。この検査装置では、取り出しアームのチャックに保持された状態の成形品に対して、変位センサが、変位センサと成形品の間の距離を測定することで、成形品のそりの大きさを測定している。そりの大きさが所定のしきい値以内である成形品は良品、そりの大きさがしきい値を超える成形品は不良品と判定される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ユーザーは、検査装置で成形品が不良と判定されることにより、成形機で不良品が成形されていることを認識する。しかし、成形品が成形されてから検査されるまでに時間がかかる場合や、成形のサイクルタイムの短い成形品が生産される場合、成形機で不良品が成形されていることをユーザーが認識した時点では、既に多くの不良品が成形されている場合がある。そのため、ユーザーは、成形不良の予兆を迅速に把握するために、成形品の検査において、成形不良の予兆があるか否かの判定に使用される値を用いて、成形不良の予兆を調査する。しかしながら、ユーザーが、誤って、成形不良の予兆があるか否かの判定に使用される値を、成形品が良品であるか不良品であるかの判定に使用される値を超えた値に変更すると、成形不良の予兆を調査することができない。そのため、ユーザーが、成形不良の予兆があるか否かの判定に使用される値を、成形品が良品であるか不良品であるかの判定に使用される値を超えた値に変更することを抑制できる技術が求められている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示の第1の形態によれば、成形管理システムが提供される。この成形管理システムは、成形品の品目に関する情報、前記成形品の仕様に関する値である規格値に関する情報、および、前記成形品の不良の予兆判定に用いられる値である閾値に関する情報を関連付けて記憶する記憶部と、画面を生成する、画面生成部と、前記画面を表示する表示部と、を備え、前記画面には、前記成形品の前記品目に関する情報、および、前記成形品の前記規格値に関する情報が表示され、前記成形品の前記閾値に関する情報を更新可能とする第1領域が設けられている。
【図面の簡単な説明】
【0006】
【
図2】成形管理システムが実行する閾値更新処理の工程図。
【
図5】第2実施形態における閾値更新画面を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0007】
A.第1実施形態:
図1は、成形管理システム10の概略構成を示す説明図である。成形管理システム10は、成形管理サーバ100と、射出成形機210と、センサ220と、検査装置230と、クラウドサーバ300と、端末装置400と、を備える。成形管理サーバ100は、射出成形機210、センサ220、および、検査装置230とネットワークNTを介して相互に通信可能に構成されている。ネットワークNTは、例えば、LANであってもよいし、WANであってもよいし、インターネットであってもよい。クラウドサーバ300は、成形管理サーバ100および端末装置400とインターネットINを介して相互に通信可能に構成されている。なお、
図1には、成形管理システム10が射出成形機210とセンサ220と検査装置230をそれぞれ1台ずつ備える例が示されているが、成形管理システム10は、射出成形機210とセンサ220と検査装置230をそれぞれ複数台ずつ備えてもよい。また、成形管理システム10は、射出成形機210から成形品を取り出す取り出しロボットや、射出成形機210で使用される材料を乾燥させる乾燥機などの周辺機器を備えてもよい。
【0008】
射出成形機210は、射出成形を行う装置である。射出成形機210は、第1制御部211と、それぞれ図示しない射出装置と型締装置を備えている。型締装置には、キャビティーを有する成形型が装着される。成形型は、金属製でもよいし、セラミック製でもよいし、樹脂製でもよい。金属製の成形型のことを金型と呼ぶ。第1制御部211は、1つまたは複数のプロセッサーと、記憶装置と、外部との信号の入出力を行う入出力インターフェイスとを備えるコンピューターによって構成されている。第1制御部211は、複数のコンピューターによって構成されてもよい。検査装置230の第2制御部231についても、第1制御部211と同様の構成である。
【0009】
第1制御部211は、成形管理サーバ100を介してクラウドサーバ300から取得した成形条件に基づいて、射出成形機210の各部を制御して射出成形を行い、成形品を成形する。より具体的には、第1制御部211は、型締装置を制御して成形型を型締めし、射出装置を制御して材料を可塑化した造形材料を成形型に射出することによって、成形型に設けられたキャビティーの形状に応じた形状を有する成形品を成形する。成形された成形品は、図示していない取り出しロボット等の搬送装置によって検査装置230に搬送される。
【0010】
センサ220は、射出成形機210の動作状態に関する物理量である、射出圧力や金型の温度、射出充填時間などを計測する。センサ220は、例えば、射出圧力を計測する圧力センサや、金型の温度を計測する温度センサなどである。センサ220は、計測した射出成形機210の動作状態に関する物理量を、成形管理サーバ100に送信する。センサ220は、射出成形機210に備えられていてもよい。センサ220は、射出成形機210の第1制御部211を介して、射出成形機210の動作状態に関する物理量を、成形管理サーバ100に送信してもよい。
【0011】
検査装置230は、成形品の検査を行う装置である。検査装置230は、第2制御部231と図示しないカメラとによって構成される。第2制御部231は、カメラを制御して成形品を撮像し、撮像した成形品を画像解析することによって、成形品の寸法測定および外観検査を行う。第2制御部231は、成形品の寸法として、例えば、成形品の高さや、全長、全幅などを測定する。また、第2制御部231は、外観検査において、例えば、キズや反りといった、成形品の不良を検査する。第2制御部231は、成形品毎に寸法及び外観検査の結果に基づいて成形品が不良であるか否かを判定し、その判定結果を成形管理サーバ100に送信する。なお、検査装置230は、成形品の寸法をカメラではなく、各種の変位センサや測長センサを用いて測定してもよい。
【0012】
成形管理サーバ100は、第1処理部101と、第1記憶部102と、通信制御部103と、を備えるコンピューターによって構成されている。第1処理部101は、1つ又は複数のプロセッサーおよび主記憶装置を備えている。第1記憶部102は、ハードディスクドライブなどの補助記憶装置により構成される。通信制御部103は、クラウドサーバ300や射出成形機210、センサ220、検査装置230などの他の装置との通信を制御するための通信回路を備えている。成形管理サーバ100は、複数台のコンピューターによって構成されていてもよい。
【0013】
第1処理部101は、センサ220から送信された射出成形機210の動作状態に関する物理量、および、検査装置230から送信された成形品の検査結果を取得する。第1処理部101によって取得された、射出成形機210の動作状態に関する物理量および成形品の検査結果は、第1記憶部102に記憶される。第1処理部101は、射出成形機210の動作状態に関する物理量および成形品の検査結果を、クラウドサーバ300に送信してもよい。この場合、クラウドサーバ300の第2記憶部302に、射出成形機210の動作状態に関する物理量および成形品の検査結果が記憶される。
【0014】
端末装置400は、CPUと記憶装置と表示部450とを備えるコンピューターとして構成されている。端末装置400としては、例えば、タブレット端末やノート型パソコン、スマートフォン、ハンディターミナルを適用できる。表示部450には、クラウドサーバ300から出力された各種の画面が表示される。表示部450には、タッチパネル機能が備えられてもよい。端末装置400を、情報端末とも呼ぶ。
【0015】
クラウドサーバ300は、インターネットIN経由で使用されるサーバである。クラウドサーバ300は、第2処理部301と、第2記憶部302と、を備える。第2記憶部302には、成形品の品目に関する情報、成形品の規格値に関する情報、成形品の基準値に関する情報、および、成形品の閾値に関する情報が関連付けて記憶される。成形管理サーバ100の第1記憶部102と、クラウドサーバ300の第2記憶部302を、まとめて記憶部とも呼ぶ。なお、成形管理サーバ100とクラウドサーバ300は、1つのサーバとして構成されていてもよい。
【0016】
成形品の品目に関する情報は、成形品の品目の識別情報と、成形品の検査工程の識別情報と、成形品の特性の識別情報と、を含む。
【0017】
成形品の品目の識別情報は、例えば、成形品の品目の名称や、それぞれの成形品の品目に割り当てられたID番号などである。以下では、成形品の品目を、成形品目とも呼ぶ。
【0018】
成形品の検査工程の識別情報は、成形品を検査する複数の工程を識別する情報である。成形品を検査する工程は、例えば、成形品の出荷前に成形品の検査を行う出荷検査の工程や、成形品が成形された直後に成形品の検査を行う成形検査の工程、出荷された後に工場に戻された成形品を検査する工程などである。成形品の検査工程の識別情報は、例えば、検査工程の名称や、それぞれの検査工程に割り当てられたID番号などである。以下では、成形品の検査工程を、単に工程とも呼ぶ。
【0019】
成形品の特性は、後述する成形品の規格値、成形品の基準値、および成形品の閾値が指定される成形品の部分や条件に関する情報であり、例えば、成形品の外径や、成形品の特定の部分の長さ、成形品の空隙率などである。成形品の特性の識別情報は、例えば、特性の名称や、それぞれの特性に割り当てられたID番号などである。
【0020】
成形品の規格値は、成形品の仕様に関する値である。本明細書では、成形品の仕様とは、成形品の各部分の寸法や、成形品の空隙率、成形品の重量、成形品に含まれる気泡の数などである。成形品の規格値は、成形品の設計者などによって、予め定められている。成形品の規格値に関する情報は、例えば、設計図面における成形品の各部分の寸法の上限値および下限値や、成形品の空隙率の設計上の上限値および下限値などである。成形品の規格値に関する情報は、設計図面における成形品の各部分の寸法公差や幾何公差、要件仕様書における成形品の透明度などであってもよい。規格値は、検査装置230による成形品の検査で、成形品の不良判定に用いられる値である。例えば、検査装置230で成形品の特定の部分の寸法が測定される場合、寸法の測定値が、成形品の当該特定の部分の寸法の規格値の上限値を超えている、または、成形品の当該特定の部分の寸法の規格値の下限値を下回っている場合に、その成形品は不良であると判定される。
【0021】
成形品の基準値は、成形品の仕様の基準に関する値である。成形品の基準値は、成形品の設計者などによって、予め定められている。成形品の基準値に関する情報は、例えば、設計図面における成形品の各部分の寸法値や、成形品の空隙率の設計上の値などである。例えば、成形品の設計図面において、成形品の特定の部分の寸法値が15mm、その部分の寸法公差が2mmである場合、成形品の上述した部分の寸法の基準値は15mm、上述した部分の寸法の規格値の上限値は17mm、規格値の下限値は13mmである。
【0022】
成形品の閾値は、成形品の不良の予兆判定に用いられる値である。ここで、「成形品の不良の予兆」、および「成形不良の予兆」とは、検査装置230によって測定された成形品の寸法などの物理量と、規格値との差分が、予め定められた値以下になったことを意味する。成形品の閾値は、成形品の品質を管理するユーザーによって、成形品の規格値に対応づけて設定される。例えば、成形品の特定の部分の寸法の、規格値の上限値および規格値の下限値が予め定められている場合、閾値の上限値および閾値の下限値は、成形品の当該特定の部分の寸法に対して設定される。成形品の閾値に関する情報は、例えば、検査装置230による成形品の検査で成形品の不良の予兆判定に用いられる、成形品の各部分の寸法の上限値および下限値や、成形品の空隙率の上限値および下限値などである。例えば、検査装置230で成形品の特定の部分の寸法が測定される場合、寸法の測定値が、成形品の当該特定の部分の寸法の閾値の上限値を超えている、または、成形品の当該特定の部分の寸法の閾値の下限値を下回っている場合に、成形不良の予兆を検出したと判定される。これにより、ユーザーは、成形不良の予兆を検出したと判定された成形品が、不良品ではないものの、成形品の寸法などの物理量と規格値との差分が小さくなっていることを把握できる。なお、閾値を管理値とも呼ぶ。
【0023】
クラウドサーバ300の第2処理部301は、画面生成部310と、入力部320と、判定部330と、出力部340と、を備える。画面生成部310と、入力部320と、判定部330と、出力部340は、第2処理部301が第2記憶部302に記憶されたプログラムを実行することによって実現される。なお、これらは回路によって実現されてもよい。
【0024】
画面生成部310は、ユーザーが成形品の閾値を変更する際に操作される画面を表すデータを生成する。端末装置400は、画面生成部310によって生成された画面のデータをクラウドサーバ300から取得し、その画面を表示部450に表示する。
【0025】
入力部320は、端末装置400に対して行われた、成形品の閾値に関する情報の入力を受け付ける。
【0026】
判定部330は、成形品の規格値に関する情報に基づいて、入力部320が受け付けた成形品の閾値に関する情報の正誤を判定する。
【0027】
出力部340は、判定部330が判定した判定結果を出力する。
【0028】
図2は、成形管理システム10が実行する閾値更新処理の工程図である。閾値更新処理は、ユーザーが成形品の検査を行う場合に、予め定められた操作が成形管理システム10に対して行われた場合に実行される。
【0029】
ステップS10において、画面生成部310は、ユーザーが閾値を変更する成形品目、工程、および特性を選択するための画面である、閾値一覧画面SC1を表すデータを生成する。
【0030】
図3は、閾値一覧画面SC1を示す図である。閾値一覧画面SC1には、成形品目の識別情報である成形品目の名称と、工程の識別情報である工程の名称と、成形品の特性の識別情報である特性のID番号と、が表示されている。閾値一覧画面SC1には、各成形品目の、各工程における、各特性について、規格値の上限値、閾値の上限値、基準値、閾値の下限値、および、規格値の下限値が表示されている。さらに、閾値一覧画面SC1には、各成形品目の各工程における各特性に対応付けられたチェックボックスC1と、追加ボタンBT1が設けられている。
図3に示す例では、閾値一覧画面SC1に表示されている最も上のチェックボックスC1に対応する行には、品目名が品目1である成形品目の、出荷検査における、特性A1の、規格値の上限値、閾値の上限値、基準値、閾値の下限値、および規格値の下限値が表示されている。閾値一覧画面SC1に表示されている規格値の上限値、閾値の上限値、基準値、閾値の下限値、および規格値の下限値の単位は、予め成形品の特性に関連付けて第2記憶部302に記憶されている。
【0031】
図2のステップS20において、第2処理部301は、閾値を変更する成形品目、工程、および特性の選択をユーザーから受け付ける。ユーザーは、
図3に示す閾値一覧画面SC1において、閾値を変更する成形品目、工程、および特性に対応するチェックボックスC1を選択し、追加ボタンBT1をクリックする。
【0032】
図2のステップS30において、画面生成部310は、成形品の閾値に関する情報を更新可能な閾値更新画面SC2を表すデータを生成する。
【0033】
図4は、閾値更新画面SC2を示す図である。閾値更新画面SC2には、成形品目の名称が表示される表示領域RG1、工程の名称が表示される表示領域RG2、成形品の特性のID番号が表示される表示領域RG3、規格値の上限値が表示される表示領域RG4、閾値の上限値が表示される表示領域RG5、基準値が表示される表示領域RG6、閾値の下限値が表示される表示領域RG7、規格値の下限値が表示される表示領域RG8、および、確定ボタンBT2が設けられている。表示領域RG1から表示領域RG3には、それぞれ、閾値一覧画面SC1で選択された成形品目、工程、特性が順番に表示されている。表示領域RG4から表示領域RG8には、それぞれ、表示領域RG1に表示されている成形品目の、表示領域RG2に表示されている工程における、表示領域RG3に表示されている特性の、規格値の上限値、閾値の上限値、基準値、閾値の下限値、および、規格値の下限値が順番に表示されている。
【0034】
閾値更新画面SC2において、閾値の上限値が表示される表示領域RG5、および、閾値の下限値が表示される表示領域RG7を、まとめて第1領域とも呼ぶ。第1領域は、成形品の閾値に関する情報を更新可能な領域である。本実施形態では、第1領域では、成形品の閾値の上限値および成形品の閾値の下限値が更新可能である。第1領域には、ユーザーから成形品の閾値に関する情報が入力される。
【0035】
図2のステップS40において、入力部320は、第1領域に対する、成形品の閾値の上限値、および、成形品の閾値の下限値の入力を受け付ける。ユーザーは、表示領域RG5に表示されている値を削除した後、表示領域RG3に表示されている特性の、変更後の閾値の上限値を、表示領域RG5に入力する。表示領域RG3に表示されている特性とは、表示領域RG2に表示されている工程における特性である。表示領域RG2に表示されている工程とは、表示領域RG1に表示されている成形品目の工程である。ユーザーは、表示領域RG5と同様に、変更後の閾値の下限値を表示領域RG7に入力する。ユーザーは、表示領域RG5または表示領域RG7に数値を入力した後、確定ボタンBT2をクリックする。
【0036】
ステップS50において、判定部330は、規格値に関する情報に基づいて、第1領域に入力された閾値の上限値および閾値の下限値の正誤を判定する。判定部330は、表示領域RG5に入力された閾値の上限値が、表示領域RG4に表示されている規格値の上限値を超えていない場合、閾値の上限値が正しいと判定し、表示領域RG5に入力された閾値の上限値が、表示領域RG4に表示されている規格値の上限値を超えている場合、閾値の上限値が誤っていると判定する。また、判定部330は、表示領域RG7に入力された閾値の下限値が、表示領域RG8に表示されている規格値の下限値を下回っていない場合、閾値の下限値が正しいと判定し、表示領域RG7に入力された閾値の下限値が、表示領域RG8に表示されている規格値の下限値を下回っている場合、閾値の下限値が誤っていると判定する。
【0037】
ステップS50で、第1領域に入力された閾値の上限値および閾値の下限値が正しいと判定された場合は、ステップS60が実行される。ステップS60では、第2処理部301は、表示領域RG5に入力された閾値の上限値、および、表示領域RG7に入力された閾値の下限値を、表示領域RG1に表示されている成形品目、表示領域RG2に表示されている工程、表示領域RG3に表示されている特性、表示領域RG4に表示されている規格値の上限値、表示領域RG6に表示されている基準値、および、表示領域RG8に表示されている規格値の下限値と関連付けて、第2記憶部302に記憶させる。このとき、第2記憶部302において、表示領域RG1に表示されている成形品目、表示領域RG2に表示されている工程、表示領域RG3に表示されている特性に関連付けて予め記憶されていた、変更前の閾値の上限値および変更前の閾値の下限値は、第2記憶部302から削除される。
【0038】
ステップS50で、第1領域に入力された閾値の上限値または閾値の下限値が誤っていると判定された場合は、ステップS70が実行される。ステップS70では、出力部340は、表示部450に警告情報を表示させる。出力部340は、例えば、「閾値が規格値の範囲を超えています。」という趣旨のメッセージを表示部450に表示させる。なお、出力部340は、表示部450に警告情報を表示させるのではなく、アラームを動作させてもよい。以上で説明したようにして、閾値更新処理が実行される。
【0039】
以上で説明した第1実施形態における成形管理システム10によれば、閾値更新画面SC2に、規格値の上限値および規格値の下限値が表示されているため、ユーザーが、閾値更新画面SC2において、閾値の上限値または閾値の下限値を変更する場合に、変更される閾値に対応する規格値の上限値および規格値の下限値を確認することができる。そのため、ユーザーが、規格値の上限値を超える値に閾値の上限値を変更すること、および、規格値の下限値を下回る値に閾値の下限値を変更することを抑制できる。したがって、ユーザーが、成形不良の予兆を調査することができる。
【0040】
ユーザーは、成形品の検査において、成形不良の予兆を迅速に把握することを目的として、閾値の上限値を小さい値に変更する、または、閾値の下限値を大きい値に変更する場合がある。例えば、成形品を成形する際の不良率を低減することを目的として、ユーザーが成形条件を変更し、試し打ちを実施する場合である。ここで、成形条件とは、成形品を成形する際の射出圧力や金型の温度などである。ユーザーは、安定した検査結果を得られる成形条件が得られた後、試し打ちの際に設定された閾値に比べて、閾値の上限値を大きい値に変更する、または、閾値の下限値を小さい値に変更する場合がある。本実施形態における成形管理システム10では、上記のような場合に、ユーザーが、規格値の上限値を超える値に閾値の上限値を変更すること、および、規格値の下限値を下回る値に閾値の下限値を変更することを抑制できる。
【0041】
また、本実施形態では、閾値更新画面SC2に、成形品の基準値が表示されているため、ユーザーが、閾値更新画面SC2において、閾値の上限値または閾値の下限値を変更する場合に、閾値を変更しようとする成形品目、工程、および特性に対応する基準値を確認できる。そのため、基準値に対して規格値の上限値と規格値の下限値が対称とならない成形品の特性についても、基準値を参考にして、ユーザーが閾値の上限値または閾値の下限値を設定できる。
【0042】
また、本実施形態では、判定部330が、第1領域に入力された閾値の上限値または閾値の下限値が誤っていると判定した場合、出力部340によって表示部450に警告文が表示される。そのため、ユーザーが、規格値の上限値を超える値に閾値の上限値を変更すること、および、規格値の下限値を下回る値に閾値の下限値を変更することを抑制できる。
【0043】
また、本実施形態では、閾値更新画面SC2において、閾値の上限値および閾値の下限値それぞれをユーザーが変更できる。そのため、閾値の上限値のみをユーザーが変更し、閾値の下限値は基準値と閾値の上限値に基づいて設定される場合と比べて、適切な閾値を設定しやすくできる。なお、上記の場合、閾値の下限値は、基準値と閾値の上限値との差分を、基準値から除算した値などとして設定される。
【0044】
B.第2実施形態:
第1実施形態では、閾値更新画面SC2の第1領域において、成形品の閾値の上限値および閾値の下限値が更新可能である。これに対して、第2実施形態では、閾値更新画面SC2の第1領域において、成形品の閾値の上限値が更新可能である。
【0045】
第2実施形態では、成形品の規格値に関する情報は、例えば、成形品に含まれる気泡の数、成形品に含まれる炭化した樹脂の数、成形品の表面における異物の総面積などの、成形品の設計上の上限値である。規格値に関する情報は、検査装置230による成形品の検査で成形品の不良判定に用いられる。例えば、検査装置230で成形品に含まれる気泡の数が測定される場合、気泡の数の測定値が、気泡の数の規格値の上限値を超えている場合に、その成形品は不良であると判定される。
【0046】
第2実施形態では、成形品の基準値に関する情報は、例えば、成形品に含まれる気泡の数、成形品に含まれる炭化した樹脂の数、成形品の表面における異物の総面積などの、成形品の設計上の基準となる値である。
【0047】
第2実施形態では、成形品の閾値に関する情報は、検査装置230による成形品の検査で成形品の不良の予兆判定に用いられる、成形品に含まれる気泡の数、成形品に含まれる炭化した樹脂の数、成形品の表面における異物の総面積などの上限値である。例えば、検査装置230で成形品に含まれる気泡の数が測定される場合、気泡の数の測定値が、気泡の数の閾値の上限値を超えている場合に、成形不良の予兆を検出したと判定される。
【0048】
以下では、第2実施形態における閾値更新処理について説明する。
【0049】
図5は、第2実施形態において、
図2に示す閾値更新処理のステップS30で生成される、閾値更新画面SC3を示す図である。閾値更新画面SC3の表示領域RG4から表示領域RG6には、それぞれ、表示領域RG1に表示されている成形品目の、表示領域RG2に表示されている工程における、表示領域RG3に表示されている特性の、規格値の上限値、閾値の上限値、および、基準値が、順番に表示されている。閾値更新画面SC3の表示領域RG7および表示領域RG8には、表示領域RG6に表示されている基準値と同じ値が表示されている。なお、表示領域RG7および表示領域RG8には数値が表示されなくてもよい。
【0050】
図2に示す閾値更新処理のステップS40において、入力部320は、
図5に示す閾値更新画面SC3の第1領域に対する、成形品の閾値の上限値の入力を受け付ける。ユーザーは、表示領域RG5に表示されている値を削除した後、表示領域RG1に表示されている成形品目の、表示領域RG2に表示されている工程における、表示領域RG3に表示されている特性の、変更後の閾値の上限値を、表示領域RG5に入力し、確定ボタンBT2をクリックする。
【0051】
図2に示す閾値更新処理のステップS50において、判定部330は、規格値に関する情報に基づいて、第1領域に入力された閾値の上限値の正誤を判定する。判定部330は、表示領域RG5に入力された閾値の上限値が、表示領域RG4に表示されている規格値の上限値を超えていない場合、閾値の上限値が正しいと判定し、表示領域RG5に入力された閾値の上限値が、表示領域RG4に表示されている規格値の上限値を超えている場合、閾値の上限値が誤っていると判定する。
【0052】
ステップS50で、第1領域に入力された閾値の上限値が正しいと判定された場合は、ステップS60が実行される。ステップS60では、第2処理部301は、表示領域RG5に入力された閾値の上限値を、表示領域RG1に表示されている成形品目、表示領域RG2に表示されている工程、表示領域RG3に表示されている特性、表示領域RG4に表示されている規格値の上限値、および、表示領域RG6に表示されている基準値と関連付けて、第2記憶部302に記憶させる。
【0053】
ステップS50で、第1領域に入力された閾値の上限値が誤っていると判定された場合は、ステップS70が実行される。
【0054】
以上で説明した第2実施形態における成形管理システム10によれば、閾値更新画面SC3に、規格値の上限値が表示されているため、ユーザーが、閾値更新画面SC3において、閾値の上限値を変更する場合に、変更される閾値に対応する規格値の上限値を確認することができる。そのため、ユーザーが、規格値の上限値を超える値に閾値の上限値を変更することを抑制できる。したがって、ユーザーが、成形不良の予兆を調査することができる。
【0055】
C.他の実施形態:
(C-1)上記実施形態では、成形品の品目に関する情報は、成形品の検査工程の識別情報および成形品の特性の識別情報を含む。これに対して、成形品の品目に関する情報は、成形品の検査工程の識別情報または成形品の特性の識別情報を含まなくてもよい。この場合、成形品の検査工程の識別情報または成形品の特性の識別情報は、閾値更新画面SC2に表示されなくてもよい。
【0056】
(C-2)上記実施形態では、第2記憶部302には、成形品の基準値に関する情報が記憶されている。これに対して、第2記憶部302には、成形品の基準値に関する情報が記憶されていなくてもよい。この場合、成形品の基準値に関する情報は、閾値更新画面SC2に表示されなくてもよい。
【0057】
(C-3)第1実施形態では、閾値更新画面SC2の第1領域において、成形品の閾値の上限値および閾値の下限値が更新可能である。また、第2実施形態では、閾値更新画面SC2の第1領域において、成形品の閾値の上限値が更新可能である。これに対して、閾値更新画面SC2の第1領域において、成形品の閾値の下限値が更新可能であってもよい。
【0058】
(C-4)上記実施形態では、成形管理システム10は、判定部330と出力部340を備える。これに対して、成形管理システム10は、判定部330と出力部340を備えなくてもよい。この場合、
図2に示す閾値更新処理において、ステップS50とステップS70は実行されなくてもよい。
【0059】
(C-5)上記実施形態では、クラウドサーバ300の第2処理部301が、画面生成部310、入力部320、判定部330、および、出力部340を備える。これに対して、成形管理サーバ100の第1処理部101が、画面生成部310、入力部320、判定部330、および出力部340の、一部または全部を備えてもよい。
【0060】
(C-6)上記実施形態では、変更前の閾値の上限値および閾値の下限値は、第2記憶部302から削除される。これに対して、変更前の閾値の上限値および閾値の下限値は、変更履歴レコードとして新たに第2記憶部302に記憶されてもよい。
【0061】
(C-7)上記実施形態では、
図2に示す閾値更新処理のステップS10からステップS70において、ユーザーが成形品の閾値を変更する手順を示したが、上述した手順からステップS50およびステップS70を除いた手順によって、ユーザーが成形品の規格値を変更しても構わない。例えば、成形品の品質を改善するために成形品の設計が変更された場合に、ユーザーは成形品の規格値を変更する。なお、成形品の規格値を変更する権限を有するユーザーは、工場長や成形品の設計者など、特定のユーザーに限定されることが望ましい。これにより、一般のユーザーが誤って成形品の規格値を変更することを抑制できる。
【0062】
D.他の形態:
本開示は、上述した実施形態に限られるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲において種々の形態で実現することができる。例えば、本開示は、以下の形態によっても実現可能である。以下に記載した各形態中の技術的特徴に対応する上記実施形態中の技術的特徴は、本開示の課題の一部又は全部を解決するために、あるいは、本開示の効果の一部又は全部を達成するために、適宜、差し替えや、組み合わせを行うことが可能である。また、その技術的特徴が本明細書中に必須なものとして説明されていなければ、適宜、削除することが可能である。
【0063】
(1)本開示の一形態によれば、成形管理システムが提供される。この成形管理システムは、成形品の品目に関する情報、前記成形品の仕様に関する値である規格値に関する情報、および、前記成形品の不良の予兆判定に用いられる値である閾値に関する情報を関連付けて記憶する記憶部と、画面を生成する、画面生成部と、前記画面を表示する表示部と、を備え、前記画面には、前記成形品の前記品目に関する情報、および、前記成形品の前記規格値に関する情報が表示され、前記成形品の前記閾値に関する情報を更新可能とする第1領域が設けられている。
このような形態によれば、ユーザーが、成形品の閾値に関する情報を変更する場合に、成形品の規格値に関する情報を確認することができる。そのため、ユーザーが、規格値を超えた値に閾値を変更することを抑制できる。
【0064】
(2)上記形態において、前記記憶部は、前記成形品の前記仕様の基準に関する値である基準値に関する情報を記憶し、前記画面には、前記成形品の前記基準値に関する情報が表示されてもよい。
このような形態によれば、ユーザーが、成形品の基準値に関する情報を参考にして、成形品の閾値に関する情報を変更できる。
【0065】
(3)上記形態において、前記第1領域では、前記成形品の前記閾値の上限値および前記成形品の前記閾値の下限値が更新可能であってもよい。
このような形態によれば、第1領域において、成形品の閾値の上限値または閾値の下限値のみが更新可能である場合と比べて、ユーザーが適切な閾値を設定しやすくできる。
【0066】
(4)上記形態において、前記第1領域に対する、前記成形品の前記閾値に関する情報の入力を受け付ける入力部と、前記成形品の前記規格値に関する情報に基づいて、前記入力部が受け付けた前記成形品の前記閾値に関する情報の正誤を判定する判定部と、前記判定部が判定した判定結果を出力する出力部と、を備えてもよい。
このような形態によれば、第1領域に入力された成形品の閾値が、成形品の規格値を超えているか否かを、ユーザーが確認しやすくできる。
【0067】
(5)上記形態において、前記出力部は、前記入力部が受け付けた前記成形品の前記閾値に関する情報が誤っていると前記判定部で判定された場合に、前記表示部に警告情報を出力してもよい。
このような形態によれば、ユーザーが、第1領域に入力された成形品の閾値が成形品の規格値を超えていることを認識しやすくできる。
【符号の説明】
【0068】
10…成形管理システム、100…成形管理サーバ、101…第1処理部、102…第1記憶部、103…通信制御部、210…射出成形機、211…第1制御部、220…センサ、230…検査装置、231…第2制御部、300…クラウドサーバ、301…第2処理部、302…第2記憶部、310…画面生成部、320…入力部、330…判定部、340…出力部、400…端末装置、450…表示部、BT1…追加ボタン、BT2…確定ボタン、C1…チェックボックス、IN…インターネット、NT…ネットワーク、RG1,RG2,RG3,RG4,RG5,RG6,RG7,RG8…表示領域、SC1…閾値一覧画面、SC2…閾値更新画面、SC3…閾値更新画面