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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024119177
(43)【公開日】2024-09-03
(54)【発明の名称】経路探索装置、経路探索プログラム
(51)【国際特許分類】
   G01C 21/36 20060101AFI20240827BHJP
【FI】
G01C21/36
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023025896
(22)【出願日】2023-02-22
(71)【出願人】
【識別番号】308036402
【氏名又は名称】株式会社JVCケンウッド
(74)【代理人】
【識別番号】100105924
【弁理士】
【氏名又は名称】森下 賢樹
(72)【発明者】
【氏名】関根 勉
(72)【発明者】
【氏名】山口 高央
(72)【発明者】
【氏名】高橋 泰生
(72)【発明者】
【氏名】島田 叡
【テーマコード(参考)】
2F129
【Fターム(参考)】
2F129AA03
2F129BB03
2F129DD19
2F129DD20
2F129DD40
2F129DD47
2F129DD58
2F129DD64
2F129EE02
2F129EE52
2F129EE81
2F129EE88
2F129EE90
2F129FF12
2F129FF15
2F129FF20
2F129FF32
2F129FF60
2F129FF65
2F129FF70
2F129HH02
2F129HH12
2F129HH35
(57)【要約】
【課題】ユーザのエコ意識を高める。
【解決手段】地図情報取得部111は、出発地から目的地までの範囲を含む地図情報と、出発地から目的地まで車両で移動する場合の経路を取得する。代替経路探索部112は、地図情報取得部111が取得した経路の一部区間を代替の乗り物に乗り換えることで、全区間を車両で移動する場合の経路より距離が短縮する経路が存在するか否か探索する。排出量算出部113は、代替の乗り物に乗り換えることで距離が短縮する代替経路が存在する場合、代替経路を代替の乗り物も使用して移動するほうが、全区間を車両で移動する場合より二酸化炭素排出量が削減されるか否か判定する。表示制御部114は、全区間を車両で移動する場合より距離が短縮され、二酸化炭素排出量が削減される代替経路が存在する場合、当該代替経路を表示部15に表示させる。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
出発地から目的地までの範囲を含む地図情報と、前記出発地から前記目的地まで車両で移動する場合の経路を取得する地図情報取得部と、
前記地図情報取得部が取得した経路の一部区間を代替の乗り物に乗り換えることで、全区間を前記車両で移動する場合の経路より距離が短縮する経路が存在するか否か探索する代替経路探索部と、
前記代替の乗り物に乗り換えることで距離が短縮する代替経路が存在する場合、前記代替経路を前記代替の乗り物も使用して移動するほうが、前記全区間を前記車両で移動する場合より二酸化炭素排出量が削減されるか否か判定する排出量算出部と、
前記全区間を前記車両で移動する場合より距離が短縮され、二酸化炭素排出量が削減される代替経路が存在する場合、当該代替経路を表示部に表示させる表示制御部と、
を備える経路探索装置。
【請求項2】
前記代替経路探索部は、前記車両は通行できないが前記代替の乗り物は通行できるショートカット経路を探索する、
請求項1に記載の経路探索装置。
【請求項3】
前記代替経路探索部は、前記車両から前記代替の乗り物に乗り換える乗り換え地点から所定の距離内に、前記車両を駐車するための駐車スペースがあるか否か探索し、前記駐車スペースがない場合、前記乗り換え地点を使用した代替経路を候補から除外する、
請求項1に記載の経路探索装置。
【請求項4】
前記排出量算出部は、前記全区間を前記車両で移動する場合の二酸化炭素排出量から、前記代替経路を前記代替の乗り物も使用して移動する場合の二酸化炭素排出量を引いた差分を、前記代替経路を選択した場合の二酸化炭素削減量として算出し、
前記表示制御部は、前記代替経路を選択した場合の二酸化炭素削減量を前記表示部に表示させる、
請求項1に記載の経路探索装置。
【請求項5】
出発地から目的地までの範囲を含む地図情報と、前記出発地から前記目的地まで車両で移動する場合の経路を取得する処理と、
取得した経路の一部区間を代替の乗り物に乗り換えることで、全区間を前記車両で移動する場合の経路より距離が短縮する経路が存在するか否か探索する処理と、
前記代替の乗り物に乗り換えることで距離が短縮する代替経路が存在する場合、前記代替経路を前記代替の乗り物も使用して移動するほうが、前記全区間を前記車両で移動する場合より二酸化炭素排出量が削減されるか否か判定する処理と、
前記全区間を前記車両で移動する場合より距離が短縮され、二酸化炭素排出量が削減される代替経路が存在する場合、当該代替経路を表示部に表示させる処理と、
をコンピュータに実行させる経路探索プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、目的地までの経路を探索する経路探索装置、経路探索プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
ナビゲーションシステムでは目的地までの検索条件として、所要時間や料金を入力するものが一般的である。
【0003】
特許文献1は、複数の移動手段を用いて目的地まで向かう経路を選択する探索方法において、一部の経路をモビリティに乗り換え可能か否かを判断し、乗り換え可能な場合にモビリティへの乗り換えを提示することを開示する。ただし、モビリティに乗り換え可能か否かの判断は、輸送対象、利用者のモビリティ収容可能台数などの条件をもとに行われており、CO削減などを目的としたエコの観点を条件とするものではない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2020-126010号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本実施形態はこうした状況に鑑みてなされたものであり、その目的は、ユーザのエコ意識を高めることができる経路探索装置、経路探索プログラムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本実施形態のある態様の経路探索装置は、出発地から目的地までの範囲を含む地図情報と、前記出発地から前記目的地まで車両で移動する場合の経路を取得する地図情報取得部と、前記地図情報取得部が取得した経路の一部区間を代替の乗り物に乗り換えることで、全区間を前記車両で移動する場合の経路より距離が短縮する経路が存在するか否か探索する代替経路探索部と、前記代替の乗り物に乗り換えることで距離が短縮する代替経路が存在する場合、前記代替経路を前記代替の乗り物も使用して移動するほうが、前記全区間を前記車両で移動する場合より二酸化炭素排出量が削減されるか否か判定する排出量算出部と、前記全区間を前記車両で移動する場合より距離が短縮され、二酸化炭素排出量が削減される代替経路が存在する場合、当該代替経路を表示部に表示させる表示制御部と、を備える。
【0007】
なお、以上の構成要素の任意の組合せ、本実施形態の表現を方法、装置、システム、記録媒体、コンピュータプログラム等の間で変換したものもまた、本実施形態の態様として有効である。
【発明の効果】
【0008】
本実施形態によれば、ユーザのエコ意識を高めることができる経路探索を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】経路探索システムの全体構成を示すブロック図である。
図2】実施形態に係る携帯端末装置の構成例を示すブロック図である。
図3】第1の経路探索結果の表示例1を示す図である。
図4】第1の経路探索結果の表示例2を示す図である。
図5】第2の経路探索結果の表示例1を示す図である。
図6】第2の経路探索結果の表示例2を示す図である。
図7】実施形態に係る携帯端末装置による経路探索処理の流れを示すフローチャートである。
図8図7のフローチャートのステップS14の処理のサブルーチンを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
図1は、経路探索システム1の全体構成を示すブロック図である。経路探索システム1は、携帯端末装置10、地図サーバ20、エネルギー情報サーバ30および経路周辺情報サーバ40を用いて構築される。携帯端末装置10は、ネットワーク5を介して地図サーバ20、エネルギー情報サーバ30および経路周辺情報サーバ40にアクセス可能である。
【0011】
地図サーバ20は、地図データを保持するとともに、少なくとも車両(公共交通機関を除く)で移動する場合の経路探索機能が実装されたサーバである。エネルギー情報サーバ30は、各種乗り物の燃費または電費の情報が記載されたウェブサイトを管理するサーバ(例えば、各車両メーカのサーバ)、各電気事業者のCO排出係数の情報が記載されたウェブサイトを管理するサーバなどの、エネルギー関連の情報を保持するサーバの総称である。
【0012】
経路周辺情報サーバ40は、エコ活動に協賛する各店舗のウェブサイトを管理するサーバ、エコ活動に協賛する店舗を取りまとめている運営主体のエコ活動専用サイトを管理するサーバ、地域情報を発信する行政や商店街のウェブサイトを管理するサーバなどの、経路探索したユーザに提供する経路周辺の情報を保持するサーバの総称である。
【0013】
携帯端末装置10は、経路探索サービスを利用するユーザが携帯する端末装置であり、本実施形態に係る経路探索装置として機能する。携帯端末装置10には例えば、スマートフォン、フィーチャーホン、通信機能を搭載したタブレット、通信機能を搭載したポータブルカーナビゲーション装置などを使用することができる。以下、スマートフォンを使用する例を想定する。
【0014】
ネットワーク5は、インターネット、専用線、VPN(Virtual Private Network)などの通信路の総称であり、その通信媒体やプロトコルは問わない。通信媒体として例えば、携帯電話網(セルラー網)、無線LAN、有線LAN、光ファイバ網、ADSL網、CATV網などを使用することができる。
【0015】
図2は、実施形態に係る携帯端末装置10の構成例を示すブロック図である。携帯端末装置10は、処理部11、記憶部12、無線通信部13、操作部14、表示部15およびGPS(Global Positioning System)受信部16を含む。図2には、経路探索サービスに関連する構成要素を描いている。
【0016】
処理部11は、地図情報取得部111、代替経路探索部112、排出量算出部113および表示制御部114を含む。処理部11は、ハードウェア資源とソフトウェア資源の協働、またはハードウェア資源のみにより実現される。ハードウェア資源として、CPU、ROM、RAM、GPU(Graphics Processing Unit)、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)、FPGA(Field Programmable Gate Array)、その他のLSIを利用できる。ソフトウェア資源としてオペレーティングシステム、ミドルウェア、アプリケーションなどのプログラムを利用できる。記憶部12は、不揮発性の記録媒体(例えば、NAND型フラッシュメモリ)を有し、各種プログラムおよび各種データを記憶する。
【0017】
無線通信部13はモデムを有し、アンテナ13aを介してネットワーク5に無線接続するための信号処理を実行する。携帯端末装置10が無線接続可能な無線通信網として、例えば、携帯電話網(4G/5G)、Wi-Fi(登録商標)、Bluetooth(登録商標)を使用することができる。
【0018】
操作部14は、タッチパネル、物理ボタンなどのユーザインタフェースを含む。操作部14は、ユーザの操作を受け付け、ユーザの操作内容に応じた操作信号を処理部11に出力する。表示部15は、液晶ディスプレイ、有機ELディスプレイ、ミニLEDディスプレイなどのタッチパネルディスプレイを備える。
【0019】
GPS受信部16は、GNSS(Global Navigation Satellite System)受信機の一例であり、携帯端末装置10の現在の位置情報を緯度・経度・高度で検出し、検出した位置情報を処理部11に出力する。GPS受信部16は具体的には、複数のGPS衛星から、それぞれの発信時刻を含む電波をそれぞれ受信し、受信した複数の電波にそれぞれ含まれる複数の発信時刻に基づいて受信地点の緯度・経度・標高を算出する。
【0020】
表示制御部114は、表示部15に経路探索画面を表示する。地図情報取得部111は、経路探索画面において、操作部14からユーザにより入力された出発地と目的地を取得する。地図情報取得部111は取得した出発地と目的地を、ネットワーク5を介して地図サーバ20に送信する。地図情報取得部111は地図サーバ20から、出発地から目的地までの範囲を含む地図情報と、出発地から目的地まで車両で移動する場合の経路(以下、車両移動経路という)を取得する。地図情報取得部111は例えば、地図サーバ20が提供する地図表示機能および経路探索機能と、API(Application Programming Interface)連携していてもよい。
【0021】
本実施形態における車両は自動車を指し、主に自家用車を想定するが、レンタカー、シェアリングカー、およびタクシーも含む概念とする。なお、本実施形態における車両は、バスや電車などの公共交通機能は含まない概念とする。
【0022】
地図サーバ20から複数の車両移動経路が取得された場合、表示制御部114は、表示部15に複数の車両移動経路を表示させる。地図情報取得部111は、操作部14からユーザにより選択された車両移動経路を、以下に説明する代替経路探索の元になる車両移動経路に設定する。地図サーバ20から取得された車両移動経路が一つの場合は、地図情報取得部111は、取得した車両移動経路をそのまま、代替経路探索の元になる車両移動経路に設定する。
【0023】
なお、地図情報取得部111に車両移動経路の経路探索機能が備わっている場合、携帯端末装置10側で車両移動経路の経路探索を行ってもよい。また、携帯端末装置10の記憶部12に地図データが予めダウンロードされている場合は、地図情報を地図サーバ20から取得する必要はない。携帯端末装置10がこれら両方の条件を備えている場合、地図サーバ20にアクセスする必要はない。
【0024】
代替経路探索部112は、地図情報取得部111が取得した車両移動経路の一部区間を代替の乗り物に乗り換えることで、全区間を車両で移動する車両移動経路より距離が短縮する代替経路が存在するか否か探索する。
【0025】
本実施形態における代替の乗り物として、主に、動力を搭載したマイクロモビリティ(例えば、電動キックボード、電動自転車、電動バイク、超小型BEVなど)を想定するが、動力を搭載しない人力の自転車、キックボードを含む概念とする。
【0026】
代替経路探索部112は、車両は通行できないが代替の乗り物は通行できるショートカット経路を探索して、車両移動経路より距離が短縮された代替経路を探索する。車両は通行できないが代替の乗り物は通行できるショートカット経路として例えば、一方通行路、歩道、広場、細街路、自転車歩行者専用道路、自転車歩行者専用橋、自転車歩行者専用トンネルなどが挙げられる。各代替の乗り物が通行できるショートカット経路は、道路交通法で許可されている範囲で探索される。例えば、電動バイク、超小型BEVは一方通行路および歩道を走行できない。一方通行路(自転車を除く)または一方通行路(軽車両を除く)の場合、電動キックボード、電動自転車は通行可能である。(自転車を除く)または(軽車両を除く)がない場合、電動キックボードおよび電動自転車も通行できない。電動キックボードは、最高時速6kmおよび識別灯の緑色点滅の条件で、歩道を走行可能である。電動自転車は、(1)歩道に「自転車通行可」などの道路標識や道路標示がある場合、(2)運転者が13歳未満又は70歳以上、または身体の障害を有する者である場合、(3)歩道を通行することが「やむを得ない」と認められる場合、歩道を走行可能である。
【0027】
代替経路探索部112は、地図情報をもとに探索した代替経路において、車両から代替の乗り物に乗り換える乗り換え地点から所定の距離内(例えば、半径300m内)に、車両を駐車するための駐車スペースがあるか否か探索する。駐車スペースがない場合、代替経路探索部112は、当該乗り換え地点を使用した代替経路を、ユーザに提示する代替経路の候補から除外する。駐車スペースがある場合、代替経路探索部112は、当該乗り換え地点を使用した代替経路を、ユーザに提示する代替経路の候補に残す。駐車スペースは有料または無料の駐車場であってもよいし、道路内の時間制限駐車区間であってもよい。
【0028】
代替経路探索部112は、地図情報をもとに探索した代替経路において、当該乗り換え地点から所定の距離内(例えば、半径300m内)に、代替の乗り物を借りることができるシェアリングステーションやレンタル店舗があるか否か探索する。シェアリングステーションやレンタル店舗がない場合、代替経路探索部112は、当該乗り換え地点を使用した代替経路を、ユーザに提示する代替経路の候補から除外する。なお、ユーザが代替の乗り物(例えば、キックボードや自転車)を車両に積んでいることを、経路探索アプリケーションに予め登録している場合、代替経路探索部112は乗り換え地点の周辺に、代替の乗り物のシェアリングステーションやレンタル店舗がない場合でも、ユーザに提示する代替経路の候補から除外しない。
【0029】
排出量算出部113は、車両から代替の乗り物に乗り換えることで車両移動経路より距離が短縮する代替経路が存在する場合、当該代替経路を代替の乗り物も使用して移動するほうが、車両移動経路の全区間を車両で移動する場合よりCO排出量が削減されるか否か判定する。
【0030】
車両が内燃機関車の場合、排出量算出部113は、内燃機関車の燃費を特定する。
燃費(km/L)=走行距離(km)/給油量(L) ・・・(式1)
【0031】
内燃機関車が自家用車の場合、ユーザは経路探索アプリケーションに予め、自家用車の燃費を登録する。自家用車以外の場合、ユーザは経路探索画面において、利用する内燃機関車の車種を入力する。排出量算出部113は、エネルギー情報サーバ30にアクセスして当該車種の燃費情報を取得する。
【0032】
排出量算出部113は、内燃機関車の燃費をもとに、内燃機関車の単位距離(本実施形態では、1kmとする)当たりのCO排出量を算出する。
内燃機関車の1km当たりのCO排出量(kg-CO/km)=2.32(kg-CO/L)/燃費(km/L) ・・・(式2)
2.32(kg-CO/L)は、燃料にガソリンを使用する場合のCO排出係数であり、燃料に軽油を使用する場合のCO排出係数は、2.58(kg-CO/L)になる。
【0033】
車両が電動車の場合、排出量算出部113は、電動車の電費を特定する。
電費(km/kWh)=走行距離(km)/消費電力量(kWh) ・・・(式3)
【0034】
電動車が自家用車の場合、ユーザは、携帯端末装置10で実行される経路探索アプリケーションプログラムに予め、自家用車の電費を登録する。自家用車以外の場合、ユーザは経路探索画面において、利用する電動車の車種を入力する。排出量算出部113は、エネルギー情報サーバ30にアクセスして当該車種の電費情報を取得する。
【0035】
排出量算出部113は、エネルギー情報サーバ30にアクセスして、出発地が位置している地域に電気を供給している電気事業者のCO排出係数を取得する。電気事業者のCO排出係数は、1kWhを発電する際に排出されるCO排出量を示す。
CO排出係数(kg-CO/kWh)=CO排出量(kg-CO)/発電量(kWh) ・・・(式4)
【0036】
2021年度の実績では、北海道電力のCO排出係数は0.533、東京電力エナジーパートナーのCO排出係数は0.452、中部電力ミライズのCO排出係数は0.449、関西電力のCO排出係数は0.311、九州電力のCO排出係数は0.385である。電気事業者のCO排出係数は、電気事業者の総発電量に占める火力発電の比率、火力発電に使用する燃料の種類に依存する。
【0037】
排出量算出部113は、電動車の電費と電気事業者のCO排出係数をもとに、電動車の1km当たりのCO排出量を算出する。
電動車の1km当たりのCO排出量(kg-CO/km)=電気事業者のCO排出係数(kg-CO/kWh)/電費(km/kWh) ・・・(式5)
【0038】
代替の乗り物が電動の乗り物の場合にも、排出量算出部113は同様に、電動の乗り物の1km当たりのCO排出量を算出することができる。なお、電動の乗り物の場合、乗り換え地点が位置している地域に電気を供給している電気事業者のCO排出係数を使用する。電動の乗り物の電費が取得できない場合は、乗り物別の平均電費(例えば、電動キックボードの平均電費、電動自転車の平均電費)を使用する。
【0039】
排出量算出部113は、車両の1km当たりのCO排出量に車両移動経路の距離を掛けて、車両移動経路の全区間を車両で移動する場合のCO排出量を算出する。排出量算出部113は、車両の1km当たりのCO排出量に、代替経路内の車両による移動区間の距離を掛けて、代替経路における車両によるCO排出量を算出する。排出量算出部113は、代替の乗り物の1km当たりのCO排出量に、代替経路内の代替の乗り物による移動区間の距離を掛けて、代替経路における代替の乗り物によるCO排出量を算出する。なお車両の乗員が複数の場合、排出量算出部113は、代替経路における代替の乗り物によるCO排出量に人数を掛ける。なお代替の乗り物が人力の自転車やキックボードの場合、代替の乗り物によるCO排出量がゼロとして算出されも良い。
【0040】
排出量算出部113は、代替経路における車両によるCO排出量と、代替経路における代替の乗り物によるCO排出量を足して、代替経路を代替の乗り物も使用して移動する場合のCO排出量を算出する。排出量算出部113は、車両移動経路の全区間を車両で移動する場合のCO排出量から、代替経路を代替の乗り物も使用して移動する場合のCO排出量を引いた差分を、代替経路を選択した場合のCO削減量として算出する。当該差分が負の値になる場合、代替経路を選択した場合にCO排出量が増加するため、代替経路探索部112は当該代替経路を、ユーザに提示する代替経路の候補から除外する。車両の乗員人数が多い場合は、当該差分が負の値になる場合も発生し得る。
【0041】
車両移動経路の全区間を車両で移動する場合より距離が短縮され、CO排出量が削減される代替経路が存在する場合、表示制御部114は、当該代替経路を表示部15に表示させる。その際、表示制御部114は、代替経路を選択した場合のCO削減量を表示部15に表示させる。
【0042】
図3は、第1の経路探索結果の表示例1を示す図である。図4は、第1の経路探索結果の表示例2を示す図である。図3に示す表示画面15aには、出発地Sから目的地Dまでの全区間を車両C1で移動する場合の車両移動経路P1が示されている。図4に示す表示画面15bには、出発地Sから目的地Dまでの一部区間を代替の乗り物に乗り変える代替経路が示されている。代替経路の第1区間P2aは車両C1で移動する区間であり、代替経路の第2区間P2bは代替の乗り物(図4では、電動キックボード)で移動する区間である。
【0043】
大通りMT1は、目的地Dまで直線で到達できず、左に迂回した線形になっている。大通りMT1の最初の曲がり角から、直進できる細街路NT1が伸びている。細街路NT1は、目的地Dまでのショートカット経路になる。ただし、細街路NT1に車両C1は侵入できない。
【0044】
最初の曲がり角の周辺に、電動キックボードのシェアリングステーションST1と、駐車場PK1が存在している。したがって、ユーザは車両C1を駐車場PK1に駐車させ、シェアリングステーションST1から電動キックボードを借りて、電動キックボードで目的地Dに向かうことが可能である。
【0045】
なお細街路NT1の入口近辺に、電動キックボードや電動自転車のシェアリングステーションやレンタル店舗がない場合でも、車両C1に電動または人力のキックボードや自転車が積んであれば、乗り換え可能である。
【0046】
図4に示す代替経路P2を提示する表示画面15bには、図3に示した車両移動経路P1を車両C1で移動することから、代替経路P2を車両C1と電動キックボードで移動することに切り替えた場合のCO削減量を示すメッセージMS1が表示される。
【0047】
複数の代替経路の候補がある場合、表示制御部114は複数の代替経路の候補を表示部15に表示させる。ユーザがいずれかの代替経路を選択した場合、表示制御部114は、選択された代替経路の周辺の店舗情報、特典情報、イベント情報、専用サイトのリンクなどを、経路周辺情報サーバ40から取得し、表示部15に表示させる。図4に示す例では、第2店舗SP2の店舗情報や特典情報が表示される。なお図3に示した車両移動経路が選択された場合、第1店舗SP1と第3店舗SP3の店舗情報や特典情報が表示される。なお代替経路が選択された場合の特典は、車両移動経路が選択された場合の特典より、有利に設定されていてもよい。
【0048】
ユーザは、利用したいクーポンなどの特典情報があれば、特典情報を選択することで特典情報を入手することができる。ユーザは、入手した特典情報やイベント情報などから、立ち寄りたい店舗やスポットがあれば、その店舗やスポットを経由地に設定して、経路の再探索を実行することができる。
【0049】
図5は、第2の経路探索結果の表示例1を示す図である。図6は、第2の経路探索結果の表示例2を示す図である。図5に示す表示画面15cには、出発地Sから目的地Dまでの全区間を車両C1で移動する場合の車両移動経路P1が示されている。図6に示す表示画面15dには、出発地Sから目的地Dまでの一部区間を代替の乗り物に乗り変える代替経路が示されている。代替経路の第1区間P2aは第1車両C1で移動する区間であり、代替経路の第2区間P2bは代替の乗り物(図6では、電動キックボード)で移動する区間であり、代替経路の第3区間P2cは第2車両C2で移動する区間である。
【0050】
この例では、排出量算出部113は、代替経路における第1車両C1によるCO排出量と代替の乗り物によるCO排出量と第2車両C2によるCO排出量を足して、代替経路P2が選択された場合のCO排出量を算出する。
【0051】
第2の経路探索は第1の経路探索より目的地Dが遠方になった例であり、第2の経路探索では大通りMT1をさらに進んだ地点に目的地Dが設定されている。細街路NT1の出口周辺に、電動キックボードのシェアリングステーションST2と、レンタカー店舗RC1が存在している。
【0052】
ユーザは第1車両C1を、細街路NT1の入口周辺の駐車場PK1に駐車させ、細街路NT1の入口周辺のシェアリングステーションST1から電動キックボードを借り、細街路NT1の出口周辺のシェアリングステーションST2に電動キックボードを返却し、細街路NT1の出口周辺のレンタカー店舗RC1から第2車両C2を借りて、目的地Dに向かうことが可能である。
【0053】
なお細街路NT1の出口周辺のシェアリングステーションST2は、電動キックボードの駐車スペースでも代替できる。また、細街路NT1の出口周辺のレンタカー店舗RC1はタクシーを配車することでも代替できる。
【0054】
図6に示す代替経路P2を提示する表示画面15dには、図5に示した車両移動経路P1を第1車両C1のみで移動することから、代替経路P2を第1車両C1と電動キックボードと第2車両C2で移動することに切り替えた場合のCO削減量を示すメッセージMS1が表示される。
【0055】
図7は、実施形態に係る携帯端末装置10による経路探索処理の流れを示すフローチャートである。地図情報取得部111は、経路探索画面においてユーザから出発地と目的地の入力を受け付ける(ステップS10)。なお車両の乗員が複数の場合は、車両の乗員数も受け付ける。
【0056】
地図情報取得部111は地図サーバ20から、出発地から目的地までの範囲を含む地図情報と、出発地から目的地までの車両移動経路を取得する(ステップS11)。代替経路探索部112は、車両移動経路の一部区間を代替の乗り物に乗り換えることで、ショートカットできる代替経路が存在するか否か探索する(ステップS12)。
【0057】
ショートカットできる代替経路が存在する場合(ステップS13:Yes)、排出量算出部113は、代替経路を選択した場合のCO削減量を算出する(ステップS14)。
【0058】
図8は、図7のフローチャートのステップS14の処理のサブルーチンを示す図である。排出量算出部113は、車両の燃費をもとに車両の単位距離当たりのCO排出量を算出する(ステップS141)。排出量算出部113は、代替の乗り物の電費と電気事業者のCO排出係数をもとに、代替の乗り物の単位距離当たりのCO排出量を算出する(ステップS142)。排出量算出部113は、車両の単位距離当たりのCO排出量と車両移動経路の距離をもとに、車両移動経路を選択する場合のCO排出量を算出する(ステップS143)。
【0059】
排出量算出部113は、車両の単位距離当たりのCO排出量と代替経路の車両区間の距離をもとに、代替経路の車両区間のCO排出量を算出する(ステップS144)。排出量算出部113は、代替の乗り物の単位距離当たりのCO排出量と代替経路の代替の乗り物区間の距離をもとに、代替経路の代替の乗り物区間のCO排出量を算出する(ステップS145)。なお車両の乗員が複数の場合は、車両の乗員数を代替の乗り物区間のCO排出量に掛ける。
【0060】
排出量算出部113は、代替経路の車両区間のCO排出量と、代替経路の代替の乗り物区間のCO排出量を足して、代替経路を選択する場合のCO排出量を算出する(ステップS146)。排出量算出部113は、車両移動経路を選択する場合のCO排出量から代替経路を選択する場合のCO排出量を引いて、代替経路を選択することによるCO削減量を算出する(ステップS147)。
【0061】
図7のフローチャートに戻る。代替経路を選択することでCO削減効果がある場合(ステップS15:Yes)、すなわち代替経路を選択する場合のCO削減量が正の値である場合、表示制御部114は、車両移動経路、代替経路、代替経路を選択した場合のCO削減量をユーザに提示する(ステップS16)。
【0062】
代替経路を選択してもCO削減効果がない場合(ステップS15:No)、すなわち代替経路を選択する場合のCO削減量が0または負の値である場合、表示制御部114は、車両移動経路をユーザに提示する(ステップS17)。ステップS13において、ショートカットできる代替経路が存在しない場合も(ステップS13:No)、表示制御部114は、車両移動経路をユーザに提示する(ステップS17)。
【0063】
携帯端末装置10で実行される経路探索プログラムは、予め処理部11内にインストールされていてもよいし、事後的にインストールされてもよい。後者の場合、当該経路探索プログラムは、アプリケーションプログラムストアからネットワーク5を介して携帯端末装置10にダウンロードされてインストールされてもよい。
【0064】
以上説明したように本実施形態によれば、目的地まで車両で移動する経路を探索する際に、一部の区間をCO削減に寄与する乗り物に乗り換える代替案を提示することで、ユーザのエコ意識を高めることができる。その際、CO削減効果を数値で提示することで、ユーザは代替経路を選択することによる地球環境への貢献度を実感でき、代替経路が選択されやすくなる。地球環境への貢献度が可視化されることで、ユーザが代替経路を選択した場合の達成感も高まる。また、代替経路を選択した場合に有利な特典を付与することで、エコ活動に対する経済的なインセンティブが与えられ、エコ活動の継続がサポートされる。
【0065】
以上、本発明を実施形態に基づき説明した。この実施形態は例示であり、それらの各構成要素や各処理プロセスの組合せにいろいろな変形例が可能なこと、またそうした変形例も本発明の範囲にあることは当業者に理解されるところである。
【0066】
上記の実施形態では、代替の乗り物として、主にマイクロモビリティを想定した。この点、代替の乗り物には船舶も含まれる。例えば、本土と島が道路橋で接続されている地域において、連絡船または水上タクシーでショートカットする場合、代替経路探索部112は、連絡船または水上タクシーの航路を代替経路の一部区間として使用することができる。
【0067】
上記の実施形態において車両は公共交通機関を含まない概念としたが、代替の乗り物は公共交通機関を含む概念としてもよい。例えば、道路と並走していない鉄道は、道路をショートカットできる可能性がある、BRT(Bus Rapid Transit)も一般道をショートカットできる可能性がある。代替の乗り物が公共交通機関の場合、排出量算出部113は、公共交通の乗り物によるCO排出量を、代替経路を選択する場合のCO排出量に加算しない。船舶の例では、定期連絡船のCO排出量は加算せず、水上タクシーのCO排出量は加算する。
【0068】
上記の実施形態において代替の乗り物は複数使用されてもよい。例えば、代替経路に、電車を使用する区間と電動キックボードを使用する区間が含まれてもよい。
【符号の説明】
【0069】
1 経路探索システム、 5 ネットワーク、 10 携帯端末装置、 11 処理部、 111 地図情報取得部、 112 代替経路探索部、 113 排出量算出部、 114 表示制御部、 12 記憶部、 13 無線通信部、 13a アンテナ、 14 操作部、 15 表示部、 16 GPS受信部、 20 地図サーバ、 30 エネルギー情報サーバ、 40 経路周辺情報サーバ。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8