(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024119180
(43)【公開日】2024-09-03
(54)【発明の名称】回転電機
(51)【国際特許分類】
H02K 7/102 20060101AFI20240827BHJP
【FI】
H02K7/102
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023025903
(22)【出願日】2023-02-22
(71)【出願人】
【識別番号】000004260
【氏名又は名称】株式会社デンソー
(74)【代理人】
【識別番号】100121821
【弁理士】
【氏名又は名称】山田 強
(74)【代理人】
【識別番号】100139480
【弁理士】
【氏名又は名称】日野 京子
(74)【代理人】
【識別番号】100125575
【弁理士】
【氏名又は名称】松田 洋
(74)【代理人】
【識別番号】100175134
【弁理士】
【氏名又は名称】北 裕介
(74)【代理人】
【識別番号】100207859
【弁理士】
【氏名又は名称】塩谷 尚人
(72)【発明者】
【氏名】寺田 健吾
【テーマコード(参考)】
5H607
【Fターム(参考)】
5H607AA02
5H607AA12
5H607BB01
5H607BB07
5H607BB14
5H607CC03
5H607EE07
5H607EE10
5H607EE19
(57)【要約】
【課題】無励磁ブレーキのトルク付与機構で発生した熱の影響を抑制できる回転電機を提供する。
【解決手段】回転電機10は、無励磁ブレーキ装置140、センター支持部91、仕切板部92及び蓋部103を備えている。無励磁ブレーキ装置140は、ロータ60のシャフト11に固定されたブレーキロータ141と、ブレーキロータ141に制動トルクを付与するトルク付与機構142とを備えている。無励磁ブレーキ装置140は、センター支持部91、仕切板部92及び蓋部103に囲まれた空間に配置されている。トルク付与機構142は、ブレーキロータ141よりも仕切板部92側に配置されるとともに、仕切板部92に例えば直接取り付けられている。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ステータ巻線(71)を有するステータ(70)と、
前記ステータの径方向外側に配置されたロータ(60)と、
を備えるアウタロータ型の回転電機(10)において、
前記ロータのシャフト(11)に固定されるとともに前記シャフトと一体回転するブレーキロータ(141)、及び前記ブレーキロータに制動トルクを付与するトルク付与機構(142)を有し、前記ステータの径方向内側に配置された無励磁ブレーキ装置(140)と、
前記ステータ及び前記無励磁ブレーキを支持するベース部材(90,100)と、
を備え、
前記ベース部材は、
前記ステータを径方向内側から支持するとともに、円筒状をなすセンター支持部(91)と、
前記センター支持部の軸方向における第1端側の開口部(92c)を覆う蓋部(103)と、
前記センター支持部の軸方向における第2端側から径方向内側に延びるとともに円盤状をなす仕切板部(92)と、
を有し、
前記仕切板部の中央部には、前記シャフトが挿通される挿通孔(92b)が形成されており、
前記無励磁ブレーキ装置は、前記センター支持部、前記仕切板部及び前記蓋部に囲まれた空間に配置されており、
前記トルク付与機構は、非通電状態で前記ブレーキロータに制動トルクを付与し、通電状態で前記ブレーキロータへの制動トルクの付与を解除し、
前記トルク付与機構は、軸方向において前記ブレーキロータよりも前記仕切板部側に配置されるとともに、前記仕切板部に直接取り付けられている又は空気よりも熱伝導率の高い伝熱層(150)を介して前記仕切板部に取り付けられている、回転電機。
【請求項2】
前記センター支持部には、冷却流体が流通する冷却流路(43)が形成されている、請求項1に記載の回転電機。
【請求項3】
前記ステータ巻線に通電するための中継通電部材(114,115)を備え、
前記蓋部には、前記中継通電部材が挿通されるとともに前記空間に繋がる第1挿通孔(103a)が形成されており、
前記センター支持部には、前記中継通電部材が挿通されるとともに前記空間に繋がる第2挿通孔(91a)が形成されており、
前記中継通電部材は、前記第1挿通孔、前記空間及び前記第2挿通孔を通って軸方向に延びている、請求項2に記載の回転電機。
【請求項4】
前記センター支持部及び前記仕切板部は、前記トルク付与機構よりも熱抵抗が小さい材料で構成されている、請求項2又は3に記載の回転電機。
【請求項5】
前記ベース部材は、前記ロータ及び前記ステータを収容するハウジング部材(100)として、
筒状をなす外筒部(102)と、
前記外筒部の軸方向一端側から径方向内側に延びる円盤部(101)と、
を有し、
環状をなすオイルシール(106)を備え、
前記円盤部には、前記シャフトのうち軸方向において前記ブレーキロータとは反対側の先端部(12)の側が挿通されるシャフト挿通孔(101a)が形成されており、
前記先端部には、変速機構(20)が接続され、
前記円盤部のうち軸方向において前記ブレーキロータとは反対側には、前記変速機構の潤滑油(22)が封入される封入部(21)が取り付けられており、
前記円盤部において前記シャフト挿通孔の内周面と、前記シャフトの外周面との間がオイルシールにより塞がれている、請求項2又は3に記載の回転電機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、アウタロータ型の回転電機に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ステータと、ステータの径方向外側に配置されたロータとを備えるアウタロータ型の回転電機が知られている(例えば特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ロータのシャフトに制動トルクを付与するために、無励磁ブレーキ装置が回転電機に備えられることがある。無励磁ブレーキ装置は、シャフトに固定されたブレーキロータと、トルク付与機構とを備えている。トルク付与機構の非通電状態において、トルク付与機構はブレーキロータに制動トルクを付与し、トルク付与機構の通電状態において、トルク付与機構はブレーキロータへの制動トルクの付与を解除する。
【0005】
ロータを回転させるためには、ステータが備えるステータ巻線に通電するとともに、ブレーキロータへの制動トルクの付与を解除するためにトルク付与機構を通電状態にする必要がある。この場合、トルク付与機構も発熱し、発生した熱がステータ巻線等、回転電機の構成部品に悪影響を及ぼす懸念がある。
【0006】
本開示は、無励磁ブレーキのトルク付与機構で発生した熱の影響を抑制できる回転電機を提供することを主たる目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
第1の開示は、ステータ巻線を有するステータと、
前記ステータの径方向外側に配置されたロータと、
を備えるアウタロータ型の回転電機において、
前記ロータのシャフトに固定されるとともに前記シャフトと一体回転するブレーキロータ、及び前記ブレーキロータに制動トルクを付与するトルク付与機構を有し、前記ステータの径方向内側に配置された無励磁ブレーキ装置と、
前記ステータ及び前記無励磁ブレーキを支持するベース部材と、
を備え、
前記ベース部材は、
前記ステータを径方向内側から支持するとともに、円筒状をなすセンター支持部と、
前記センター支持部の軸方向における第1端側の開口部を覆う蓋部と、
前記センター支持部の軸方向における第2端側から径方向内側に延びるとともに円盤状をなす仕切板部と、
を有し、
前記仕切板部の中央部には、前記シャフトが挿通される挿通孔が形成されており、
前記無励磁ブレーキ装置は、前記センター支持部、前記仕切板部及び前記蓋部に囲まれた空間に配置されており、
前記トルク付与機構は、非通電状態で前記ブレーキロータに制動トルクを付与し、通電状態で前記ブレーキロータへの制動トルクの付与を解除し、
前記トルク付与機構は、軸方向において前記ブレーキロータよりも前記仕切板部側に配置されるとともに、前記仕切板部に直接取り付けられている又は空気よりも熱伝導率の高い伝熱層を介して前記仕切板部に取り付けられている。
【0008】
無励磁ブレーキ装置は、ベース部材を構成するセンター支持部、仕切板部及び蓋部に囲まれた空間に配置されている。この場合、無励磁ブレーキ装置のトルク付与機構が通電状態にされることに伴い発生する熱が上記空間にこもりやすい。
【0009】
この点、第1の開示のトルク付与機構は、軸方向においてブレーキロータよりも仕切板部側に配置されている。また、トルク付与機構は、仕切板部に直接取り付けられている又は空気よりも熱伝導率の高い伝熱層を介して仕切板部に取り付けられている。これにより、トルク付与機構が通電状態にされることに伴い発生する熱を、ベース部材を構成する仕切板部を介してセンター支持部側へと極力逃がすことができる。その結果、センター支持部、仕切板部及び蓋部に囲まれた空間に熱がこもりにくくなり、無励磁ブレーキ装置のトルク付与機構で発生した熱の影響を抑制できる。
【0010】
第2の開示は、第1の開示において、前記センター支持部には、冷却流体が流通する冷却流路が形成されている。
【0011】
これにより、トルク付与機構が通電状態にされることに伴い発生する熱を、仕切板部を介して、センター支持部に形成された冷却流路の冷却流体に放出することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【発明を実施するための形態】
【0013】
図面を参照しながら、複数の実施形態を説明する。複数の実施形態において、機能的に及び/又は構造的に対応する部分及び/又は関連付けられる部分には同一の参照符号、又は百以上の位が異なる参照符号が付される場合がある。対応する部分及び/又は関連付けられる部分については、他の実施形態の説明を参照することができる。
【0014】
<第1実施形態>
以下、本開示に係る回転電機を具体化した第1実施形態について、図面を参照しつつ説明する。本実施形態の回転電機は、産業用、車両用、航空機用、家電用、OA機器用、遊技機用など広く用いられることが可能となっている。本実施形態では、特に、回転電機が産業用の建機に用いられ、具体的には、建機は電動パワーショベルである。
【0015】
図1は、回転電機を備えるシステムの全体概要図である。本実施形態のシステムは、建機に備えられ、回転電機10及び変速機構20を備えている。回転電機10は、建機の可動部30を駆動させるために用いられる。本実施形態の可動部30は、電動パワーショベルのバケット、アーム及びブーム等である。変速機構20は、減速機構であり、回転電機10の出力トルクを増幅して可動部30に供給する。
【0016】
システムは、回転電機10を冷却する冷却装置を備えている。冷却装置は、回転電機10の外部の冷却流路を備えている。外部の冷却流路と、回転電機10の内部に形成された冷却流路43(
図2参照)とを含む冷媒循環流路が構成されている。外部の冷却流路は、ポンプ41と、放熱装置であるラジエータ42と、配管40とを含む。配管40は、冷却流路43、ポンプ41及びラジエータ42を繋ぐ。ポンプ41は、例えば電動式のポンプであり、冷媒循環流路の液状の冷媒(例えば冷却水)を循環させる。
【0017】
システムは、電力変換回路50を備えている。電力変換回路50は、例えば3相インバータであり、上,下アームスイッチを備えている。上,下アームスイッチのスイッチング制御により、蓄電池の直流電力が交流電力に変換されて回転電機10のステータ巻線71に供給される。電力変換回路50は、回転電機10に内蔵されていてもよいし、回転電機10の外部に設けられていてもよい。本実施形態において、電力変換回路50は、回転電機10の外部に設けられていることとする。
【0018】
システムは、制御装置51を備えている。制御装置51は、マイコンを主体として構成されており、電力変換回路50のスイッチング制御を行ったり、冷媒を循環させるためにポンプ41を駆動させたりする。なお、電力変換回路50のスイッチング制御及びポンプ41の駆動制御は、各別の制御装置により実行され得る。ただし、本実施形態では、各別に実行されることは要部ではないため、
図1には、各制御の実行主体として1つの制御装置51を示している。
【0019】
まず、
図2を用いて、回転電機10について説明する。以下の記載では、回転電機10において、ロータ60の回転軸線の延びる方向を軸方向とし、回転軸線の中心から放射状に延びる方向を径方向とし、回転軸線を中心として円周状に延びる方向を周方向としている。
【0020】
回転電機10は、アウタロータ型の表面磁石型多相交流モータであり、ロータ60と、ロータ60の径方向内側に配置されたステータ70とを備えている。ロータ60及びステータ70は、円環状に延びるエアギャップを挟んで径方向に互いに対向配置されている。
【0021】
ロータ60は、円筒状のロータキャリア61と、ロータキャリア61に固定された環状の磁石ユニット62とを備えている。ロータキャリア61は、円筒状をなす円筒部63と、円筒部63の軸方向一端の側に設けられ、径方向に延びる端板部64とを有している。円筒部63の内周面には磁石ユニット62が固定されている。また、ロータキャリア61は、端板部64の径方向内側端部から軸方向において磁石ユニット62の側に延びる円筒状をなす内側円筒部65と、内側円筒部65の軸方向端部から径方向内側に延びる円環状をなすシャフト取付部66とを有している。ロータキャリア61の軸方向他端側は開放されている。ロータキャリア61は、磁石保持部材として機能する。
【0022】
磁石ユニット62は、ロータキャリア61の円筒部63の内周面に固定された複数の磁石を有している。磁石ユニット62において、磁石は、ロータ60の周方向に沿って極性が交互に変わるように並べられている。これにより、磁石ユニット62には、周方向に複数の磁極が形成されている。磁石は、例えば、極異方性の永久磁石であり、固有保磁力が400[kA/m]以上であり、かつ残留磁束密度Brが1.0[T]以上である焼結ネオジム磁石である。ちなみに、回転電機10としては、埋込磁石型の同期機(IPMSM)であってもよい。
【0023】
ステータ70は、ステータ巻線71と、ステータコア72とを有している。ステータコア72の径方向外側にステータ巻線71が組み付けられている。ステータ巻線71は、複数の相巻線を有し、各相の相巻線が周方向に所定順序で配置されることで円筒状に形成されている。本実施形態では、ステータ巻線71がU,V,W相の3相巻線で構成されている。ステータコア72は、円筒状をなし、バックヨークとして設けられている。
【0024】
本実施形態において、ステータ70は、スロットを形成するためのティースを有していないティースレス構造を有するものである。この構造は以下(A)~(C)のいずれかを用いた構造とすればよい。
(A)ステータ70において、周方向における各導線部(後述する中間導線部82)の間に導線間部材が設けられ、かつ導線間部材として、1磁極における導線間部材の周方向の幅寸法をWt、導線間部材の飽和磁束密度をBs、1磁極における磁石の周方向の幅寸法をWm、磁石ユニット62を構成する磁石の残留磁束密度をBrとした場合に、Wt×Bs≦Wm×Brの関係となる磁性材料が用いられる構造。
(B)ステータ70において、周方向における各導線部の間に導線間部材が設けられ、かつ導線間部材として、非磁性材料が用いられる構造。
(C)ステータ70において、周方向における各導線部の間に導線間部材が設けられていない構造。
【0025】
次に、ステータ70のより詳細な構成を
図3及び
図4を用いて説明する。
図3は、ステータ70の構成を示す斜視図であり、
図4は、ステータ70の分解斜視図である。
【0026】
ステータ巻線71は、単位コイルである複数の部分巻線81を有し、これら各部分巻線81が周方向に並ぶ状態で配置されることで構成されている。部分巻線81は、導線材を多重に巻回することで構成された空芯コイルであり、周方向に所定間隔を離して設けられる一対の中間導線部82と、一対の中間導線部82を軸方向両端でそれぞれ接続する一対の渡り部83,84とを有し、一対の中間導線部82と一対の渡り部83,84とにより環状に形成されている。部分巻線81における一対の中間導線部82の間に、他相の部分巻線81における一対の中間導線部82のうち一方の中間導線部82が配置されることにより、各相の中間導線部82同士が近接状態で周方向に並べて配置されている。
【0027】
軸方向両側の各渡り部83,84は、コイルエンド部に相当する部分として設けられ、各渡り部83,84のうち、一方の渡り部83は径方向に屈曲形成され、他方の渡り部84は径方向に屈曲されることなく形成されている。各部分巻線81には、渡り部83が径方向内側に屈曲された部分巻線81(
図4の部分巻線81A)と、渡り部83が径方向外側に屈曲された部分巻線81(
図4の部分巻線81B)とが含まれている。
図3で言えば、ステータ70において、軸方向一端側(
図3の上側)のコイルエンドエリアCE1では、部分巻線81の渡り部83が径方向内側に屈曲され、軸方向他端側(
図3の下側)のコイルエンドエリアCE2では、部分巻線81の渡り部83が径方向外側に屈曲されている。
【0028】
回転電機10は、ステータ70を径方向内側から支持するフレーム部材90を備えている。フレーム部材90は、例えばアルミニウムで構成されており、軸方向に延びるとともに円筒状をなすセンター支持部91と、センター支持部91の軸方向における第1端側から径方向内側に延びるとともに円盤状をなす仕切板部92とを備えている。センター支持部91の外周面には、ステータコア72が取り付けられている。
【0029】
センター支持部91には、冷媒循環流路を構成する冷却流路43が形成されている。冷却流路43は、軸方向に扁平状に延び、かつセンター支持部91に沿って環状に設けられており、配管40に接続された入口部及び出口部を有している。入口部と出口部との間で周方向に冷媒を流通させる。
【0030】
仕切板部92の中央部には、シャフト11が挿通される第1シャフト挿通孔92bが形成されている。仕切板部92のうち第1シャフト挿通孔92bの周縁部には、軸方向に凹むとともに第2軸受19が設けられる段差部92aが形成されている。
【0031】
フレーム部材90は、センター支持部91の軸方向における第2端側から径方向外側に延びる円環状をなす土台部93を備えている。土台部93及びセンター支持部91により、樹脂モールドされたステータ巻線71が支持されている。
【0032】
回転電機10は、ロータ60及びステータ70を収容するハウジング部材100を備えている。ハウジング部材100は、例えばアルミニウムで構成されており、円盤状をなす円盤部101と、円盤部101の径方向外側端部から軸方向に延びる円筒状をなす外筒部102と、蓋部103とを備えている。外筒部102の内周面は、ロータキャリア61の円筒部63の外周面と対向している。外筒部102の軸方向端部は、フレーム部材90の土台部93の径方向外側端部にボルト14により固定されている。なお、本実施形態において、フレーム部材90及びハウジング部材100が「ベース部材」に相当する。
【0033】
円盤部101の中央部には、シャフト11が挿通される第2シャフト挿通孔101aが形成されている。円盤部101のうち第2シャフト挿通孔101aの周縁部には、軸方向に凹むとともに第1軸受18が設けられる段差部104が形成されている。
【0034】
回転電機10は、シャフト11を回転可能に支持する第1軸受18及び第2軸受19を備えている。本実施形態の各軸受18,19は、内輪部材と、外輪部材と、外輪部材及び内輪部材の間に設けられた複数の転動体(例えば玉)とを備える転がり軸受である。
【0035】
シャフト11の中間部には、径方向外側に延びる円環状の取付部13が形成されている。取付部13は、ボルト15によってロータキャリア61のシャフト取付部66に固定されている。これにより、シャフト11、ロータキャリア61及び磁石ユニット62が一体回転する。
【0036】
ハウジング部材100の段差部104には、第1軸受18の外輪部材が固定されている。第1軸受18の内輪部材には、シャフト11のうち取付部13よりも先端部12側の部分が固定されている。第1軸受18の外輪部材のうち軸方向においてフレーム部材90側の部分は、円環状をなす位置規制部105に当接している。位置規制部105は、円盤部101にボルト17によって固定されている。位置規制部105により、第1軸受18の軸方向変位が規制される。フレーム部材90の段差部92aには、第2軸受19の外輪部材が固定されている。第2軸受19の内輪部材には、シャフト11のうち取付部13よりも仕切板部92側の部分が固定されている。
【0037】
ハウジング部材100を構成する蓋部103は、センター支持部91の軸方向一端側の開口部92cを塞ぐように、土台部93にボルト16によって固定されている。なお、蓋部103には、ステータ巻線71を電力変換回路50に電気的に接続するための外部コネクタ等が備えられるが、便宜上、蓋部103を簡単化して図示している。
【0038】
図2~
図4に示すように、ステータ70の軸方向端部には、ステータ巻線71の各部分巻線81に電気的に接続される円環状の配線モジュール110が設けられている。配線モジュール110は、導電部材として各相用、及び中性線用の複数のバスバー111を有している。配線モジュール110は、複数のバスバー111を一体で樹脂モールドしたものであってもよいし、複数のバスバー111を組み付け具により一体化したものであってもよい。配線モジュール110により、各相の部分巻線81が相ごとに並列又は直列に接続され、かつ各相の相巻線が中性点接続されている。配線モジュール110は、ステータ70の軸方向両側のコイルエンドエリアCE1,CE2のうち、フレーム部材90の側とは反対側であるコイルエンドエリアCE1側に設けられている。
【0039】
続いて、バスバー111と電力変換回路50とを電気的に接続するための構成について説明する。相ごとに設けられるバスバー111には、径方向内側に延びる導電部材である接続端部112が設けられている。各相の接続端部112には、中継モジュール114の各相に対応する第1端子が接続されている。中継モジュール114は、センター支持部91のうち冷却流路43よりも径方向内側に形成されるとともに軸方向に貫通する挿通孔91a(「第2挿通孔」に相当)に挿通されている。中継モジュール114は、挿通孔91aを塞ぐように設けられている。これにより、センター支持部91、仕切板部92及び蓋部103により囲まれる空間(以下、ブレーキ室)と、フレーム部材90及びロータキャリア61により囲まれる空間とが中継モジュール114により遮断されている。
【0040】
中継モジュール114の各相に対応する第2端子には、導電部材である中継バスバー115の第1端が接続されている。中継バスバー115は、相数分設けられている。中継バスバー115は、蓋部103のうち軸方向において挿通孔91aと対向する位置に形成されるとともに軸方向に貫通する挿通孔103a(「第1挿通孔」に相当)に挿通されている。これにより、中継バスバー115の第2端側の部分は、挿通孔103aからブレーキ室外に引き出されている。中継バスバー115の第2端は、図示しない外部コネクタ等を介して電力変換回路50に電気的に接続されている。これにより、ステータ巻線71に対する電力の入出力が行われるようになっている。中継バスバー115は、ブレーキ室において、センター支持部91の内周面に沿って軸方向に延びている。なお、本実施形態において、中継モジュール114及び中継バスバー115が「中継通電部材」に相当する。また、センター支持部91の内周面に、中継バスバー115の少なくとも一部が当接していてもよい。この場合、中継バスバー115の冷却性能を高めることができる。
【0041】
本実施形態では、ステータ巻線71及び配線モジュール110のアセンブリに対して樹脂モールドが施されている。この場合、少なくとも軸方向両側の各コイルエンドエリアCE1,CE2を含む範囲で樹脂層130が形成されている。具体的には、コイルエンドエリアCE1側では、センター支持部91の軸方向端面の外側において、ステータ巻線71の各渡り部83,84よりも径方向内側を含む範囲で樹脂モールドが施されている。この場合、コイルエンドエリアCE1側では、センター支持部91の軸方向端部と端板部64との間の空間に、ステータ巻線71のコイルエンド部と配線モジュール110とを覆う状態で樹脂モールドにより樹脂層130が形成されている。
【0042】
また、コイルエンドエリアCE2側では、ステータ巻線71の各渡り部83,84よりも径方向外側を含む範囲で樹脂モールドが施されている。
【0043】
続いて、
図5を用いて、変速機構20について説明する。
【0044】
シャフト11の先端部12には、変速機構20の入力軸が接続されている。変速機構20の出力軸は、可動部30に接続されている。変速機構20は、例えば遊星歯車機構である。本実施形態の変速機構20は、減速機構である。このため、シャフト11から変速機構20の入力軸に入力されたトルクは、増幅されて出力軸から可動部30に供給される。
【0045】
変速機構20は、ケース21(「封入部」に相当)に収容されており、ケース21には、変速機構20の潤滑油22が封入されている。ケース21は、円盤部101のうち第2シャフト挿通孔101aの周縁部を取り囲むように円盤部101に取り付けられている。
【0046】
本実施形態では、円盤部101において第2シャフト挿通孔101aの内周面と、シャフト11の外周面との間が、円環状をなすオイルシール106により塞がれている。これにより、ケース21からハウジング部材100内部に潤滑油22が浸入することを抑制する。
【0047】
図2に示すように、回転電機10は、無励磁ブレーキ装置140を備えている。無励磁ブレーキ装置140は、ブレーキ室に配置されている。無励磁ブレーキ装置140は、シャフト11に固定されるとともにシャフト11と一体回転する円板状をなすブレーキロータ141と、ブレーキロータ141に制動トルクを付与するトルク付与機構142とを備えている。本実施形態の無励磁ブレーキ装置140は、乾式のブレーキ装置である。
【0048】
トルク付与機構142は、磁性材料で構成されたフィールドコア143と、フィールドコア143内に設けられたフィールド巻線144と、円板状をなすアーマチュアプレート145と、サイドプレート146と、スプリング147とを備えている。フィールドコア143は、フレーム部材90よりも熱抵抗が小さい材料で構成されており、例えば鉄で構成されている。スプリング147は、フィールドコア143の凹部に設けられており、アーマチュアプレート145をブレーキロータ141に押圧するための弾性部材である。
【0049】
サイドプレート146は、フィールドコア143に対して相対変位しないようにボルト146aによって固定されている。軸方向において、サイドプレート146とアーマチュアプレート145との間にブレーキロータ141が配置されている。
【0050】
フィールド巻線144には、フィールド巻線144に通電するための配線148の第1端が接続されている。配線148の第2端は、蓋部103の挿通孔103aから引き出されている。配線148の第2端は、図示しない外部コネクタ等を介して電源装置(例えば)直流電源に電気的に接続されている。電源装置から配線148等を介したフィールド巻線144への通電制御は、制御装置51により実行される。
【0051】
フィールドコア143は、軸方向においてブレーキロータ141よりも仕切板部92側に配置されるとともに、仕切板部92の凹部92dに図示しないボルトによって直接取り付けられている
制御装置51は、フィールド巻線144に対する通電制御を行う。フィールド巻線144に通電されない非通電状態では、圧縮状態で設けられたスプリング147によりアーマチュアプレート145がブレーキロータ141に押しつけられる。その結果、ブレーキロータ141にアーマチュアプレート145が押し付けられ、ブレーキロータ141(つまりシャフト11)に制動トルクが付与され、シャフト11の回転が規制される。一方、フィールド巻線144に通電される通電状態では、フィールド巻線144への通電により発生する磁力により、アーマチュアプレート145は、スプリング147の押し付け力に打ち勝ってフィールドコア143側に吸引される。その結果、アーマチュアプレート145がブレーキロータ141から離間し、ブレーキロータ141への制動トルクの付与が解除される。
【0052】
無励磁ブレーキ装置140は、ブレーキ室に配置されている。この場合、無励磁ブレーキ装置140のフィールド巻線144が通電状態にされることに伴い発生する熱がブレーキ室にこもりやすい。この点、本実施形態のトルク付与機構142は、軸方向においてブレーキロータ141よりも仕切板部92側に配置されている。また、トルク付与機構142は、仕切板部92に直接取り付けられている。これにより、フィールド巻線144が通電状態にされることに伴い発生する熱を、仕切板部92を介してセンター支持部91側へと極力逃がすことができる。その結果、ブレーキ室に熱がこもりにくくなり、フィールド巻線144で発生した熱が回転電機10の構成部材に及ぼす影響を抑制できる。
【0053】
センター支持部91には、冷媒が流通する冷却流路43が形成されている。これにより、フィールド巻線144が通電状態にされることに伴い発生する熱を、仕切板部92を介して、センター支持部91に形成された冷却流路43の冷媒に放出することができる。その結果、ブレーキ室の昇温を抑制できる。
【0054】
フィールドコア143は、フレーム部材90よりも熱抵抗が小さい材料(例えば鉄)で構成されている。これにより、ブレーキ室の昇温抑制効果を高めることができる。
【0055】
なお、フィールド巻線144の非通電状態において、アーマチュアプレート145がブレーキロータ141の回転を阻止できるトルクよりも大きいトルクが外部からシャフト11に付与され、ブレーキロータ141において発熱し得る。この場合であっても、本実施形態によれば、ブレーキ室の昇温を抑制できる。
【0056】
本実施形態では、例えばロータキャリア61の端板部64とフレーム部材90のセンター支持部91とで挟まれた空間を有効活用するために、この空間に、ステータ巻線71に電気的に接続されたバスバー111を含む配線モジュール110が配置されている。バスバー111に通電するための中継バスバー115がブレーキ室を通って延びている。ステータ巻線71への通電に伴い中継バスバー115及び中継モジュール114等の通電部材が発熱する。この状況下において、中継バスバー115に、フィールド巻線144への通電に伴い発生した熱が更に作用し、例えば、中継バスバー115の温度上昇に伴う抵抗増加が発生する。この点、本実施形態によれば、ブレーキ室の昇温を抑制できるため、中継バスバー115に熱の影響が及ぼされる事態の発生を抑制できる。
【0057】
ハウジング部材100を構成する円盤部101において第2シャフト挿通孔101aの内周面と、シャフト11の外周面との間がオイルシール106により塞がれている。これにより、ケース21から第2シャフト挿通孔101aを介して回転電機10の内部へと潤滑油22が浸入することを抑制できる。その結果、ブレーキ室に潤滑油22が浸入することを抑制でき、無励磁ブレーキ装置140からシャフト11に付与する制動トルクが低下する事態の発生を抑制できる。
【0058】
<第2実施形態>
以下、第2実施形態について、第1実施形態との相違点を中心に図面を参照しつつ説明する。
図6に示すように、無励磁ブレーキ装置140を構成するフィールドコア143が、空気よりも熱伝導率の高い伝熱層150を介して、仕切板部92の凹部92dに取り付けられていてもよい。本実施形態の伝熱層150は、グリースで構成されている。
【0059】
仕切板部92の凹部92dの加工精度等に起因して、凹部92dとフィールドコア143との間に隙間が発生し得る。この場合、隙間に空気が介在することにより、フィールドコア143から仕切板部92への熱の伝達効率が低下し得る。この点、本実施形態の伝熱層150によれば、上記隙間を埋めることができ、上述した熱の伝達効率の低下を抑制できる。
【0060】
<その他の実施形態>
なお、上記各実施形態は、以下のように変更して実施してもよい。
【0061】
・中継バスバー115及び配線148が、蓋部103の挿通孔103aではなく、例えば、土台部93に形成されるとともに径方向に貫通する挿通孔を介して引き出されていてもよい。
【0062】
・回転電機としては、表面磁石型のものに限らず、埋込磁石型のものであってもよい。また、回転電機としては、ステータにティースが設けられるものであってもよい。
【0063】
以下、上述した各実施形態から抽出される特徴的な構成を記載する。
[構成1]
ステータ巻線(71)を有するステータ(70)と、
前記ステータの径方向外側に配置されたロータ(60)と、
を備えるアウタロータ型の回転電機(10)において、
前記ロータのシャフト(11)に固定されるとともに前記シャフトと一体回転するブレーキロータ(141)、及び前記ブレーキロータに制動トルクを付与するトルク付与機構(142)を有し、前記ステータの径方向内側に配置された無励磁ブレーキ装置(140)と、
前記ステータ及び前記無励磁ブレーキを支持するベース部材(90,100)と、
を備え、
前記ベース部材は、
前記ステータを径方向内側から支持するとともに、円筒状をなすセンター支持部(91)と、
前記センター支持部の軸方向における第1端側の開口部(92c)を覆う蓋部(103)と、
前記センター支持部の軸方向における第2端側から径方向内側に延びるとともに円盤状をなす仕切板部(92)と、
を有し、
前記仕切板部の中央部には、前記シャフトが挿通される挿通孔(92b)が形成されており、
前記無励磁ブレーキ装置は、前記センター支持部、前記仕切板部及び前記蓋部に囲まれた空間に配置されており、
前記トルク付与機構は、非通電状態で前記ブレーキロータに制動トルクを付与し、通電状態で前記ブレーキロータへの制動トルクの付与を解除し、
前記トルク付与機構は、軸方向において前記ブレーキロータよりも前記仕切板部側に配置されるとともに、前記仕切板部に直接取り付けられている又は空気よりも熱伝導率の高い伝熱層(150)を介して前記仕切板部に取り付けられている、回転電機。
[構成2]
前記センター支持部には、冷却流体が流通する冷却流路(43)が形成されている、構成1に記載の回転電機。
[構成3]
前記ステータ巻線に通電するための中継通電部材(114,115)を備え、
前記蓋部には、前記中継通電部材が挿通されるとともに前記空間に繋がる第1挿通孔(103a)が形成されており、
前記センター支持部には、前記中継通電部材が挿通されるとともに前記空間に繋がる第2挿通孔(91a)が形成されており、
前記中継通電部材は、前記第1挿通孔、前記空間及び前記第2挿通孔を通って軸方向に延びている、構成2に記載の回転電機。
[構成4]
前記センター支持部及び前記仕切板部は、前記トルク付与機構よりも熱抵抗が小さい材料で構成されている、構成2又は3に記載の回転電機。
[構成5]
前記ベース部材は、前記ロータ及び前記ステータを収容するハウジング部材(100)として、
筒状をなす外筒部(102)と、
前記外筒部の軸方向一端側から径方向内側に延びる円盤部(101)と、
を有し、
環状をなすオイルシール(105)を備え、
前記円盤部には、前記シャフトのうち軸方向において前記ブレーキロータとは反対側の先端部(12)の側が挿通されるシャフト挿通孔(101a)が形成されており、
前記先端部には、変速機構(20)が接続され、
前記円盤部のうち軸方向において前記ブレーキロータとは反対側には、前記変速機構の潤滑油(22)が封入される封入部(21)が取り付けられており、
前記円盤部において前記シャフト挿通孔の内周面と、前記シャフトの外周面との間がオイルシールにより塞がれている、構成2~4のいずれか1つに記載の回転電機。
【符号の説明】
【0064】
10…回転電機、11…シャフト、60…ロータ、70…ステータ、90…フレーム部材、100…ハウジング部材、140…無励磁ブレーキ装置。