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特開2024-119183シートバックフレーム及びシートバック
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024119183
(43)【公開日】2024-09-03
(54)【発明の名称】シートバックフレーム及びシートバック
(51)【国際特許分類】
   B60N 2/68 20060101AFI20240827BHJP
【FI】
B60N2/68
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023025906
(22)【出願日】2023-02-22
(71)【出願人】
【識別番号】000241500
【氏名又は名称】トヨタ紡織株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000110321
【氏名又は名称】トヨタ車体株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000394
【氏名又は名称】弁理士法人岡田国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】森口 竜次
(72)【発明者】
【氏名】水野 博貴
【テーマコード(参考)】
3B087
【Fターム(参考)】
3B087DB02
3B087DB04
3B087DE03
(57)【要約】
【課題】シートバックパッドを合理的に支持可能なシートバックフレームを提供すること。
【解決手段】シートバックフレーム10は、正面視枠状を成すフレーム本体11と、フレーム本体11の枠内でシートバックパッド20を後側から支持する支持フレーム12と、を一体に有する。支持フレーム12は、前側に向かって幅方向に延びる庇状に張り出してシートバックパッド20のパッド後面に沿って設けられるパッド本体21よりも硬質な面状の硬質フェルト22を後側から支持するパッド支持部12Cを有し、パッド支持部12Cのみでシートバックパッド20を後側から支持する。
【選択図】図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
正面視枠状を成すフレーム本体と、該フレーム本体の枠内でシートバックパッドを後側から支持する支持フレームと、を一体に有するシートバックフレームであって、
前記支持フレームが、前側に向かって幅方向に延びる庇状に張り出して前記シートバックパッドのパッド後面に沿って設けられるパッド本体よりも硬質な面状の硬質部を後側から支持するパッド支持部を有し、該パッド支持部のみで前記シートバックパッドを後側から支持するシートバックフレーム。
【請求項2】
請求項1に記載のシートバックフレームであって、
前記支持フレームが、正面視面状を成すパネル材から成り、幅方向の両側縁と下縁とに前記フレーム本体と溶接されるフレーム溶接部を有し、
前記パッド支持部が、前記支持フレームの上縁から前側に折れ曲がり状に張り出すシートバックフレーム。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載のシートバックフレームであって、
前記支持フレームが、前記パッド支持部から外れた箇所に、シートバックのシート後面を覆うバックボードが固定されるボード固定部を更に有するシートバックフレーム。
【請求項4】
請求項1又は請求項2に記載のシートバックフレームであって、
前記支持フレームが、前記パッド支持部から外れた箇所に、前記シートバックパッドのパッド前面を覆うシートバックカバーの後側に引き込まれる下側の端末に結合される止着フックを止着可能なカバー止着部を更に有するシートバックフレーム。
【請求項5】
請求項1又は請求項2にシートバックフレームであって、
前記支持フレームが、前記パッド支持部から外れた箇所に、前記シートバックパッドの後側に引き込まれるパッド下部に上側から当てられる下部パッド当て部を更に有し、
前記下部パッド当て部が、当該シートバックを車両に搭載する際の搬送用治具が前記パッド下部を介して下側から引掛けられる治具引掛け部とされるシートバックフレーム。
【請求項6】
請求項1又は請求項2に記載のシートバックフレームであって、
前記支持フレームが、前記パッド支持部から外れた箇所に、シートバックのシート後面を覆うバックボードと、前記シートバックパッドのパッド前面を覆うシートバックカバーの後側に引き込まれる下側のカバー引込部と、の間に手指が下側から入り込むことを防止する指入防止ワイヤが溶接されるワイヤ溶接部を更に有するシートバックフレーム。
【請求項7】
シートバックパッドと、該シートバックパッドを後側から支持するシートバックフレームと、を有するシートバックであって、
前記シートバックパッドが、着座者の荷重を弾性的に支持するパッド本体と、該パッド本体のパッド裏面に沿って設けられる該パッド本体よりも硬質な面状の硬質部と、を有し、
前記シートバックフレームが、正面視枠状を成すフレーム本体と、該フレーム本体の枠内で前側に向かって幅方向に延びる庇状に張り出して前記硬質部を後側から支持するパッド支持部を備える支持フレームと、を有し、前記支持フレームが、前記パッド支持部のみで前記シートバックパッドを後側から支持するシートバック。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シートバックフレーム及びシートバックに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、乗物用シートにおいて、シートバックパッドを後側から支持するシートバックフレームが開示されている。シートバックフレームは、正面視枠状に組まれたフレーム本体と、フレーム本体の枠内に張られた面状のパネルフレームと、を有する。シートバックフレームは、パネルフレームにおいて、シートバックパッドを後側から面状に支持する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2019-81546号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載の構成では、パネルフレームがフレーム本体の枠内全域に張られることから、シートバックフレームの重量が増大する。また、シートバックフレームにバックボードやシートカバー等の機能部品を固定するためのブラケットの設置スペースが制約される懸念もある。そこで、本発明は、シートバックパッドを合理的に支持可能なシートバックフレーム及びシートバックを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決する手段として、本発明のシートバックフレーム及びシートバックは、次の手段をとる。
【0006】
すなわち、本発明の第1の発明は、正面視枠状を成すフレーム本体と、該フレーム本体の枠内でシートバックパッドを後側から支持する支持フレームと、を一体に有するシートバックフレームであって、前記支持フレームが、前側に向かって幅方向に延びる庇状に張り出して前記シートバックパッドのパッド後面に沿って設けられるパッド本体よりも硬質な面状の硬質部を後側から支持するパッド支持部を有し、該パッド支持部のみで前記シートバックパッドを後側から支持するシートバックフレームである。
【0007】
第1の発明によれば、支持フレームを、その前側に張り出す一部の構成(パッド支持部)のみでシートバックパッドを後側から広く面状に支えられる構成とすることができる。その結果、支持フレームの小型化を図れると共に、支持フレームのパッド支持部以外の箇所を他の機能部品の固定部として有効に活用することが可能となる。
【0008】
本発明の第2の発明は、上記第1の発明において、前記支持フレームが、正面視面状を成すパネル材から成り、幅方向の両側縁と下縁とに前記フレーム本体と溶接されるフレーム溶接部を有し、前記パッド支持部が、前記支持フレームの上縁から前側に折れ曲がり状に張り出すシートバックフレームである。
【0009】
第2の発明によれば、支持フレームをフレーム本体に対して適用に構造強度を持たせられるように結合することができる。また、パッド支持部をフレーム本体の下部寄りに配置される支持フレームの高い位置から幅方向に広く延びる形に形成することができる。その結果、シートバックパッドを後側からより適切に支持することができる。
【0010】
本発明の第3の発明は、上記第1又は第2の発明において、前記支持フレームが、前記パッド支持部から外れた箇所に、シートバックのシート後面を覆うバックボードが固定されるボード固定部を更に有するシートバックフレームである。
【0011】
第3の発明によれば、支持フレームによるシートバックパッドの後側からの支持を阻害することなく、支持フレームにバックボードを適切に固定することができる。
【0012】
本発明の第4の発明は、上記第1又は第2の発明において、前記支持フレームが、前記パッド支持部から外れた箇所に、前記シートバックパッドのパッド前面を覆うシートバックカバーの後側に引き込まれる下側の端末に結合される止着フックを止着可能なカバー止着部を更に有するシートバックフレームである。
【0013】
第4の発明によれば、支持フレームによるシートバックパッドの後側からの支持を阻害することなく、支持フレームにシートバックカバーの下側の端末の止着フックを適切に止着することができる。
【0014】
本発明の第5の発明は、上記第1又は第2の発明において、前記支持フレームが、前記パッド支持部から外れた箇所に、前記シートバックパッドの後側に引き込まれるパッド下部に上側から当てられる下部パッド当て部を更に有し、前記下部パッド当て部が、当該シートバックを車両に搭載する際の搬送用治具が前記パッド下部を介して下側から引掛けられる治具引掛け部とされるシートバックフレームである。
【0015】
第5の発明によれば、支持フレームによるシートバックパッドの後側からの支持を阻害することなく、支持フレームをシートバックを車両に搭載する際の搬送用治具の引掛け部として合理的に機能させることができる。
【0016】
本発明の第6の発明は、上記第1又は第2の発明において、前記支持フレームが、前記パッド支持部から外れた箇所に、シートバックのシート後面を覆うバックボードと、前記シートバックパッドのパッド前面を覆うシートバックカバーの後側に引き込まれる下側のカバー引込部と、の間に手指が下側から入り込むことを防止する指入防止ワイヤが溶接されるワイヤ溶接部を更に有するシートバックフレームである。
【0017】
第6の発明によれば、支持フレームによるシートバックパッドの後側からの支持を阻害することなく、支持フレームに指入防止ワイヤを適切に溶接することができる。
【0018】
本発明の第7の発明は、シートバックパッドと、該シートバックパッドを後側から支持するシートバックフレームと、を有するシートバックであって、前記シートバックパッドが、着座者の荷重を弾性的に支持するパッド本体と、該パッド本体のパッド裏面に沿って設けられる該パッド本体よりも硬質な面状の硬質部と、を有し、前記シートバックフレームが、正面視枠状を成すフレーム本体と、該フレーム本体の枠内で前側に向かって幅方向に延びる庇状に張り出して前記硬質部を後側から支持するパッド支持部を備える支持フレームと、を有し、前記支持フレームが、前記パッド支持部のみで前記シートバックパッドを後側から支持するシートバックである。
【0019】
第7の発明によれば、支持フレームを、その前側に張り出す一部の構成(パッド支持部)のみでシートバックパッドを後側から広く面状に支えられる構成とすることができる。その結果、支持フレームの小型化を図れると共に、支持フレームのパッド支持部以外の箇所を他の機能部品の固定部として有効に活用することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】第1の実施形態に係るシートバックの概略構成を表す斜視図である。
図2】シートバックの内部構造を表す図1のII矢視図である。
図3】シートバックフレームの要部斜視図である。
図4図3を後側から見た斜視図である。
図5図2のV-V線断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下に、本発明を実施するための形態について、図面を用いて説明する。
【0022】
《第1の実施形態》
(シートバック2の概略構成)
始めに、本発明の第1の実施形態に係るシートバックフレーム10及びシートバック2の構成について、図1図5を用いて説明する。なお、以下の説明において、前後上下左右等の各方向を示す場合には、各図中に示されたそれぞれの方向を指すものとする。また、以下の説明において、具体的な参照図を示さない場合、或いは参照図に該当する符号がない場合には、図1図5のいずれかの図を適宜参照するものとする。
【0023】
図1に示すように、本実施形態に係るシートバックフレーム10及びシートバック2は、自動車のリヤシート1に適用されている。リヤシート1は、同列に3人掛け可能なベンチシートとして構成されている。具体的には、リヤシート1は、センタ席1Cと、右席1Rと、不図示の左席と、の3席で構成される。センタ席1Cと右席1Rとは、互いにユニット化されている。
【0024】
センタ席1Cは、着座乗員の背凭れ部となるシートバック2と、着座部となるシートクッション3と、頭凭れ部となる不図示のヘッドレストと、を有する。シートバック2は、シートクッション3に対して、不図示のリクライナを介して背凭れ角度の調節を行えるように連結されている。
【0025】
シートバック2は、その骨格を成すシートバックフレーム10と、シートバックフレーム10を前側から覆うシートバックパッド20と、を有する。また、シートバック2は、シートバックパッド20をパッド表面側から覆うシートバックカバー30と、シートバック2の背裏面を覆うバックボード40と、を更に有する。
【0026】
シートバックフレーム10は、正面視枠状を成すフレーム本体11と、フレーム本体11の枠内に結合された支持フレーム12と、を有する。また、シートバックフレーム10は、フレーム本体11の右側部と左側部とにそれぞれ結合された左右一対のサイドフレーム13を更に有する。シートバックフレーム10は、各サイドフレーム13の外側部が、シートクッション3の図示しない左右両サイドのフレームと連結されている。
【0027】
図5に示すように、シートバックパッド20は、ポリウレタン発泡成形体から成るパッド本体21と、パッド本体21のパッド裏面に沿って一体成形された面状の硬質フェルト22と、を有する。図1に示すように、シートバックパッド20は、シートバック2の基本形状を成す形に成形され、シートバックフレーム10に対して前側と上下左右の外周側とからそれぞれ覆うように組み付けられる。
【0028】
それにより、シートバックパッド20は、シートバックフレーム10の枠状を成すフレーム本体11によって、その周囲部が後側から強く支持されるようになっている。また、シートバックパッド20は、シートバックフレーム10の枠内に設けられた支持フレーム12によって、その中央部が後側から強く支持されるようになっている。
【0029】
図5に示すように、硬質フェルト22は、面状のフェルト材をパッド本体21の図示しない成形型にセットしてパッド本体21と一体成形することで、パッド本体21のパッド裏面に沿って一体に成形されている。硬質フェルト22は、パッド本体21との一体成形に伴う発泡樹脂原料の含浸及び熱硬化により、パッド本体21よりも硬質な層を成す形に形成されている。
【0030】
硬質フェルト22は、パッド本体21のパッド裏面の全域ではなく、着座乗員の腰椎部付近を支える領域に設けられている。それにより、シートバックパッド20は、硬質フェルト22の一部が支持フレーム12によって後側から支持される構成とされ、硬質フェルト22の設置面全体に亘って広く体圧が分散されるようになっている。ここで、硬質フェルト22が、本発明の「硬質部」に相当する。
【0031】
なお、図示は省略されているが、シートバックパッド20のパッド裏面には、その全域に亘って、硬質フェルト22よりも軟質な不織布から成る裏面材がパッド本体21との一体成形により積層された状態に設けられている。それにより、シートバックパッド20は、硬質フェルト22が設けられる箇所以外のフレーム本体11によって支持される領域も、広く体圧が分散されるようになっている。上述した不図示の裏面材も、パッド本体21との一体成形に伴う発泡樹脂原料の含浸及び熱硬化により、パッド本体21よりも硬質な層を成す形に形成されている。
【0032】
図1に示すように、シートバックカバー30は、シートバックパッド20のパッド表面の形に合わせて裁断、縫製されたファブリック製又は皮革製の表皮材から成る。シートバックカバー30は、シートバックパッド20のパッド表面に被せられた後、その上下左右の各端末が後側に引き込まれてシートバックフレーム10に止着されている。
【0033】
それにより、シートバックカバー30は、シートバックパッド20のパッド表面に広く張られた状態として、シートバックパッド20をシートバックフレーム10に位置固定した状態に保持している。上記各端末のうち、図5に示すように、シートバックカバー30の下側の端末は、その後側に引き込まれるカバー引込部31の先端縁に沿って縫合されたJフック32が、支持フレーム12に形成されたカバー止着孔12Dに後下側から引掛けられて止着されている。Jフック32は、横断面J字状に成形された樹脂部材から成る。ここで、Jフック32が、本発明の「止着フック」に相当する。
【0034】
上記止着に伴い、シートバックパッド20は、そのパッド本体21のフレーム本体11を下側に越えるパッド下部21Aが、カバー引込部31によってフレーム本体11の枠下部11Bの下側を通って後側に引き込まれる。それにより、シートバックパッド20は、その後側に引き込まれたパッド下部21Aが、支持フレーム12の後述する下部パッド当て部12Gの下側を通って支持フレーム12の後面に当てられるようにセットされる。
【0035】
バックボード40は、樹脂製の板状部材から成る。バックボード40は、その上部がシートバックフレーム10に後側から不図示のフックで引掛けられている。また、バックボード40は、その下部が、支持フレーム12の後述するボード固定部12Eに後側からビス42で締結されている。それにより、バックボード40が、シートバックフレーム10に対して一体的に固定されている。
【0036】
(シートバックフレーム10の各部構成)
次に、上述したシートバックフレーム10の各部の具体的な構成について説明する。図1に示すように、フレーム本体11は、正面視枠状を成す形に曲げ加工された丸パイプ材から成る。詳しくは、図2に示すように、フレーム本体11は、その左右の枠側部11Aと枠下部11Bとの間の各角部が、直角ではなく、C面取り状に斜めに延びるように曲げられた枠斜部11Cとされた形状とされている。
【0037】
図2図4に示すように、支持フレーム12は、正面視面状を成すパネル材から成る。支持フレーム12は、面状のパネル本体12Aと、パネル本体12Aの左右の各側縁と下縁の左右2箇所とからそれぞれ張り出してフレーム本体11と溶接されるフレーム溶接部12Bと、を有する。また、支持フレーム12は、パネル本体12Aの上縁から前側に向かって折れ曲がり状に張り出すパッド支持部12Cを有する。
【0038】
また、支持フレーム12は、パネル本体12Aの高さ方向の中間部に、左右方向に長尺状に延びる孔形状に貫通するカバー止着孔12Dを有する。また、支持フレーム12は、パネル本体12Aの高さ方向の中間部の左右2箇所に、後側に向かって有底円筒状に張り出すように押し出されたボード固定部12Eを有する。ここで、カバー止着孔12Dが、本発明の「カバー止着部」に相当する。
【0039】
また、支持フレーム12は、パネル本体12Aの下部後面の左右2箇所に、シートバックフレーム10に設けられる指入防止ワイヤ14の下側の左右の端部がそれぞれ溶接されるワイヤ溶接部12Fを有する。また、支持フレーム12は、パネル本体12Aの下縁の中央部に、下方に張り出す下部パッド当て部12Gを有する。
【0040】
パネル本体12Aは、フレーム本体11の左右の枠斜部11Cと枠下部11Bとによって囲まれた枠内に適合する正面視逆台形状の面形状に形成されている。パネル本体12Aの周縁には、前側に向かって折れ曲がり状に張り出す周縁折曲部A1が形成されている。
【0041】
また、パネル本体12Aの上縁部と中央下部には、それぞれ、補強用の絞り形状である複数のビードA2が形成されている。また、パネル本体12Aには、その高さ方向の3箇所の部位に、パネル面を左右方向に延びる折れ線に沿って後方に凹ませる面折曲部A3が形成されている。
【0042】
フレーム溶接部12Bは、上述したパネル本体12Aの周縁折曲部A1の折り曲げられた先の端部から張り出す形状とされる。具体的には、パネル本体12Aの左右の各側縁から張り出すフレーム溶接部12Bは、左右の周縁折曲部A1の前側に折り曲げられた先から左右に直角に折り曲げられる形に張り出す。また、パネル本体12Aの下縁から張り出す左右のフレーム溶接部12Bは、下側の周縁折曲部A1の前側に折り曲げられた先から更に前側に延び出す形に張り出す。
【0043】
パネル本体12Aの左右の各側縁から張り出すフレーム溶接部12Bは、フレーム本体11の左右の枠斜部11Cにそれぞれ後方から当てられて溶接される。また、パネル本体12Aの下縁から張り出す左右のフレーム溶接部12Bは、フレーム本体11の枠下部11Bに下方から当てられて溶接される。このような構成とされることで、支持フレーム12は、各フレーム溶接部12Bをフレーム本体11に溶接する際に、フレーム本体11を途中でひっくり返すことなく、背裏側からのアクセスのみで簡便に溶接できる構成とされている。
【0044】
図2図3に示すように、パッド支持部12Cは、パネル本体12Aの上縁の幅方向の両端を残す略全域から前側に向かって庇状に張り出す形状とされる。具体的には、パッド支持部12Cは、パネル本体12Aの上側の周縁折曲部A1の前側に折り曲げられた先から更に前側に延び出す形に張り出す。そして、パッド支持部12Cは、前側に張り出した先から更に上方に略直角に折り曲げられて、更にその先で上斜め後方に折り曲げられた形状とされる。
【0045】
図2図4に示すように、カバー止着孔12Dは、パネル本体12Aの最も上側の面折曲部A3を跨ぐ上側の領域を左右方向に長尺状に延びる形に形成されている。カバー止着孔12Dは、パネル本体12Aの左右の各側縁から張り出すフレーム溶接部12Bと高さ方向の配置が重なる位置に形成されている。
【0046】
図2及び図5に示すように、ボード固定部12Eは、パネル本体12Aの最も下側の面折曲部A3とその上側の面折曲部A3との間の面領域に形成されている。このパネル本体12Aのボード固定部12Eが形成された面領域は、上述した2つの面折曲部A3によって、バックボード40と平行な面を成す形に形成されている。
【0047】
図5に示すように、ボード固定部12Eは、パネル本体12Aから後側に有底円筒状に張り出す形に形成されている。ボード固定部12Eには、次のようにバックボード40がビス42で締結されている。先ず、ボード固定部12Eのそれぞれの底面である後面に、バックボード40の下部前面から台座状に張り出す各締結台座41を後側から当てる。
【0048】
次に、各締結台座41に後側からビス42をそれぞれ差し込んで、ボード固定部12Eの底面に締結する。これにより、バックボード40の下部が支持フレーム12のボード固定部12Eにそれぞれ一体的に固定される。
【0049】
図4に示すように、ワイヤ溶接部12Fは、パネル本体12Aの下部後面の両端箇所に形成されている。これらワイヤ溶接部12Fは、パネル本体12Aの中央箇所よりも前方に凹んだ段差面として形成されている。これらワイヤ溶接部12Fには、背面視枠状を成す指入防止ワイヤ14の下側の各端部である左右の端部が、それぞれ後側から当てられて溶接される。
【0050】
指入防止ワイヤ14は、各ワイヤ溶接部12Fと溶接された左右の各端部から、フレーム本体11の枠形状に沿ってその背裏側の領域を上方に向かって折れ曲がり状に延びる。そして、指入防止ワイヤ14は、図示は省略されているが、フレーム本体11の上部領域においてフレーム本体11と溶着されている。
【0051】
図5に示すように、上記指入防止ワイヤ14の配設により、シートバックパッド20の後側に引き込まれたパッド下部21A等の周縁部分が、シートバックカバー30の張設に伴い指入防止ワイヤ14の後側に回し込まれる。それにより、シートバックパッド20の指入防止ワイヤ14によって支持されるパッド下部21A等の周縁部分が、指入防止ワイヤ14によって外部から押し潰されにくくなるよう内側から支持される。その結果、シートバックパッド20を覆うシートバックカバー30のカバー引込部31等の周縁部分とバックボード40との間に外部から手指が入り込むことが防止される。
【0052】
図3図4に示すように、下部パッド当て部12Gは、パネル本体12Aの下縁の中央部から下方に張り出す形に形成されている。下部パッド当て部12Gの下方に張り出した先にも、パネル本体12Aの下縁に沿って形成される周縁折曲部A1が連なって形成されている。
【0053】
図5に示すように、下部パッド当て部12Gは、図1で前述したセンタ席1Cを右席1Rと共に車両に搭載する際に、搬送用治具J(フック)をシートバック2に引掛けるための治具引掛け部として機能する。下部パッド当て部12Gは、フレーム本体11の枠下部11B及びバックボード40の下端よりも下方に張り出す形状とされる(図5参照)。
【0054】
このような下部パッド当て部12Gが形成されていることで、搬送用治具Jを下部パッド当て部12Gの直下に差し込んでシートバック2を持ち上げることで、搬送用治具Jがパッド下部21Aを介して下部パッド当て部12Gに押し付けられる。その結果、搬送用治具Jをバックボード40に当てることなく下部パッド当て部12Gに押し付け力を作用させて、シートバック2を持ち上げることができる。
【0055】
その際、支持フレーム12は、下部パッド当て部12Gの両サイドにある下縁側の2つのフレーム溶接部12Bが、フレーム本体11の枠下部11Bに下側から当てられて溶接されていることから、下部パッド当て部12Gに掛けられる押し付け力をフレーム本体11に適切に伝達して受け止められるようになっている。なお、搬送用治具Jは、図1で前述した右席1Rの所定箇所にも図示しない別の引掛け具が引掛けられて、右席1Rとセンタ席1Cとの2箇所を同時に持ち上げながらバランス良く搬送するようになっている。
【0056】
以上をまとめると、本実施形態に係るシートバックフレーム10及びシートバック2は、次のような構成とされている。なお、以下において括弧書きで付す符号は、上記実施形態で示した各構成に対応する符号である。
【0057】
すなわち、シートバックフレーム(10)は、正面視枠状を成すフレーム本体(11)と、フレーム本体(11)の枠内でシートバックパッド(20)を後側から支持する支持フレーム(12)と、を一体に有する。支持フレーム(12)は、前側に向かって幅方向に延びる庇状に張り出してシートバックパッド(20)のパッド後面に沿って設けられるパッド本体(21)よりも硬質な面状の硬質部(22)を後側から支持するパッド支持部(12C)を有し、パッド支持部(12C)のみでシートバックパッド(20)を後側から支持する。
【0058】
上記構成によれば、支持フレーム(12)を、その前側に張り出す一部の構成(パッド支持部(12C))のみでシートバックパッド(20)を後側から広く面状に支えられる構成とすることができる。その結果、支持フレーム(12)の小型化を図れると共に、支持フレーム(12)のパッド支持部(12C)以外の箇所を他の機能部品の固定部として有効に活用することが可能となる。
【0059】
また、支持フレーム(12)が、正面視面状を成すパネル材から成り、幅方向の両側縁と下縁とにフレーム本体(11)と溶接されるフレーム溶接部(12B)を有する。パッド支持部(12C)が、支持フレーム(12)の上縁から前側に折れ曲がり状に張り出す。
【0060】
上記構成によれば、支持フレーム(12)をフレーム本体(11)に対して適用に構造強度を持たせられるように結合することができる。また、パッド支持部(12C)をフレーム本体(11)の下部寄りに配置される支持フレーム(12)の高い位置から幅方向に広く延びる形に形成することができる。その結果、シートバックパッド(20)を後側からより適切に支持することができる。
【0061】
また、支持フレーム(12)が、パッド支持部(12C)から外れた箇所に、シートバック(2)のシート後面を覆うバックボード(40)が固定されるボード固定部(12E)を更に有する。上記構成によれば、支持フレーム(12)によるシートバックパッド(20)の後側からの支持を阻害することなく、支持フレーム(12)にバックボード(40)を適切に固定することができる。
【0062】
また、支持フレーム(12)が、パッド支持部(12C)から外れた箇所に、シートバックパッド(20)のパッド前面を覆うシートバックカバー(30)の後側に引き込まれる下側の端末に結合される止着フック(32)を止着可能なカバー止着部(12D)を更に有する。上記構成によれば、支持フレーム(12)によるシートバックパッド(20)の後側からの支持を阻害することなく、支持フレーム(12)にシートバックカバー(30)の下側の端末の止着フック(32)を適切に止着することができる。
【0063】
また、支持フレーム(12)が、パッド支持部(12C)から外れた箇所に、シートバックパッド(20)の後側に引き込まれるパッド下部(21A)に上側から当てられる下部パッド当て部(12G)を更に有する。下部パッド当て部(12G)が、シートバック(2)を車両に搭載する際の搬送用治具(J)がパッド下部(21A)を介して下側から引掛けられる治具引掛け部とされる。
【0064】
上記構成によれば、支持フレーム(12)によるシートバックパッド(20)の後側からの支持を阻害することなく、支持フレーム(12)をシートバック(2)を車両に搭載する際の搬送用治具(J)の引掛け部として合理的に機能させることができる。
【0065】
また、支持フレーム(12)が、パッド支持部(12C)から外れた箇所に、シートバック(2)のシート後面を覆うバックボード(40)と、シートバックパッド(20)のパッド前面を覆うシートバックカバー(30)の後側に引き込まれる下側のカバー引込部(31)と、の間に手指が下側から入り込むことを防止する指入防止ワイヤ(14)が溶接されるワイヤ溶接部(12F)を更に有する。上記構成によれば、支持フレーム(12)によるシートバックパッド(20)の後側からの支持を阻害することなく、支持フレーム(12)に指入防止ワイヤ(14)を適切に溶接することができる。
【0066】
また、シートバック(2)は、シートバックパッド(20)と、シートバックパッド(20)を後側から支持するシートバックフレーム(10)と、を有する。シートバックパッド(20)は、着座者の荷重を弾性的に支持するパッド本体(21)と、パッド本体(21)のパッド裏面に沿って設けられるパッド本体(21)よりも硬質な面状の硬質部(22)と、を有する。
【0067】
シートバックフレーム(10)が、正面視枠状を成すフレーム本体(11)と、フレーム本体(11)の枠内で前側に向かって幅方向に延びる庇状に張り出して硬質部(22)を後側から支持するパッド支持部(12C)を備える支持フレーム(12)と、を有する。支持フレーム(12)が、パッド支持部(12C)のみでシートバックパッド(20)を後側から支持する。
【0068】
上記構成によれば、支持フレーム(12)を、その前側に張り出す一部の構成(パッド支持部(12C))のみでシートバックパッド(20)を後側から広く面状に支えられる構成とすることができる。その結果、支持フレーム(12)の小型化を図れると共に、支持フレーム(12)のパッド支持部(12C)以外の箇所を他の機能部品の固定部として有効に活用することが可能となる。
【0069】
《その他の実施形態について》
以上、本発明の実施形態を1つの実施形態を用いて説明したが、本発明は上記実施形態の他、各種の形態で実施することができるものである。
【0070】
1.本発明のシートバックフレーム及びシートバックは、鉄道等の自動車以外の車両の他、航空機や船舶等の車両以外の乗物用に供されるシートに適用されるものであっても良い。また、シートバックフレーム及びシートバックは、乗物の他、スポーツ施設や劇場、コンサート会場、イベント会場等の各種施設に設置されるシートやマッサージシート等の乗物以外のシートに適用されるものであっても良い。
【0071】
2.フレーム本体は、丸パイプ材を枠状に曲げ加工したものの他、一対の板状のサイドフレームの間にアッパフレームとロアフレームとが架橋されることで枠状とされるものであっても良い。
【0072】
3.支持フレームのパッド支持部は、支持フレームの上縁から前側に折れ曲がり状に張り出すものの他、支持フレームの高さ方向の中間部から前側に折れ曲がり状又は部分的に押し出される形に形成されるものであっても良い。
【0073】
4.支持フレームのカバー止着部は、シートバックカバーの端末に結合される止着フックを止着可能な構成であれば良く、長孔の他、支持フレームの上縁や上縁以外の箇所から曲げ返される曲返し部から成るものであっても良い。シートバックカバーの端末に結合される止着フックは、Jフックに限らず、支持フレームのカバー止着部に止着可能な構造から成るものであれば良い。
【0074】
5.支持フレームのボード固定部は、バックボードをクリップの差し込みやフックの引掛けによって固定するものであっても良い。
【0075】
6.シートバックパッドのパッド後面に沿って設けられる面状の硬質部は、パッド本体と一体成形される硬質フェルトから成るものの他、パッド本体と一体成形されるビーズ発泡成形体から成るものであっても良い。ビーズ発泡成形体としては、発泡ポリプロピレンや発泡スチロールを含むビーズ発泡成形体が挙げられる。
【0076】
シートバックパッドは、体圧分散用の硬質部がパッド裏面の全域に設けられる構成であっても良い。また、シートバックパッドは、上記実施形態で示したように、支持フレームのパッド支持部により支持される領域に体圧分散用の硬質部が設けられ、それ以外のフレーム本体により支持される領域に硬質部とは別のパッド本体よりも硬質となる体圧分散用の裏面材が設けられる構成とされても良い。
【符号の説明】
【0077】
1 リヤシート
1C センタ席
1R 右席
2 シートバック
3 シートクッション
10 シートバックフレーム
11 フレーム本体
11A 枠側部
11B 枠下部
11C 枠斜部
12 支持フレーム
12A パネル本体
A1 周縁折曲部
A2 ビード
A3 面折曲部
12B フレーム溶接部
12C パッド支持部
12D カバー止着孔(カバー止着部)
12E ボード固定部
12F ワイヤ溶接部
12G 下部パッド当て部
13 サイドフレーム
14 指入防止ワイヤ
20 シートバックパッド
21 パッド本体
21A パッド下部
22 硬質フェルト(硬質部)
30 シートバックカバー
31 カバー引込部
32 Jフック(止着フック)
40 バックボード
41 締結台座
42 ビス
J 搬送用治具
図1
図2
図3
図4
図5