(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024119185
(43)【公開日】2024-09-03
(54)【発明の名称】HART通信装置
(51)【国際特許分類】
H03K 7/06 20060101AFI20240827BHJP
H03K 4/94 20060101ALI20240827BHJP
H04B 3/02 20060101ALI20240827BHJP
【FI】
H03K7/06
H03K4/94
H04B3/02
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023025909
(22)【出願日】2023-02-22
(71)【出願人】
【識別番号】000006666
【氏名又は名称】アズビル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100098394
【弁理士】
【氏名又は名称】山川 茂樹
(72)【発明者】
【氏名】加藤 太一郎
【テーマコード(参考)】
5K046
【Fターム(参考)】
5K046BB05
5K046PP02
(57)【要約】
【課題】HART物理層仕様で定められた台形波の傾き時間の仕様を満たすことが可能なHART通信装置を提供する。
【解決手段】HART通信装置は、送信すべきデジタル信号ITXDを変調して異なる2周波のパルス信号を出力するHARTモデム2と、2周波のパルス信号を台形波に整形するように構成されたチャージポンプ回路を含む波形整形回路3とを備える。波形整形回路3は、チャージポンプ回路の容量への充放電の電流量を2周波で変えることにより、2周波の台形波の傾きを変える。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
送信すべきデジタル信号を変調して異なる2周波のパルス信号を出力するように構成されたHARTモデムと、
前記2周波のパルス信号を台形波に整形するように構成されたチャージポンプ回路を含む波形整形回路とを備え、
前記波形整形回路は、前記チャージポンプ回路の容量への充放電の電流量を前記2周波で変えることにより、前記2周波の台形波の傾きを変えることを特徴とするHART通信装置。
【請求項2】
請求項1記載のHART通信装置において、
前記チャージポンプ回路は、
前記台形波を出力する出力端子と反転入力端子とが接続されたオペアンプと、
一端が前記オペアンプの非反転入力端子と接続され、他端がグラウンドと接続された前記容量と、
前記容量を充電するための第1の定電流源と、
前記第1の定電流源と異なる電流量で前記容量を充電するための第2の定電流源と、
前記容量の電荷を放電するための第3の定電流源と、
前記第3の定電流源と異なる電流量で前記容量の電荷を放電するための第4の定電流源と、
前記パルス信号に応じて前記容量の充電と放電とを切り替え、前記デジタル信号の値に応じて前記容量の充電時に前記第1の定電流源と前記第2の定電流源のどちらかを前記容量と接続し、前記デジタル信号の値に応じて前記容量の放電時に前記第3の定電流源と前記第4の定電流源のどちらかを前記容量と接続するように構成されたスイッチ回路とを少なくとも含むことを特徴とするHART通信装置。
【請求項3】
請求項2記載のHART通信装置において、
前記波形整形回路は、
前記デジタル信号を一定時間遅延させた信号を制御信号として出力するように構成された遅延回路をさらに備え、
前記スイッチ回路は、
制御端子に前記パルス信号が入力され、第1の接点端子が前記オペアンプの非反転入力端子と接続された第1のスイッチと、
制御端子に前記パルス信号が入力され、第1の接点端子が前記オペアンプの非反転入力端子と接続され、前記第1のスイッチに対して相補的に動作する第2のスイッチと、
制御端子に前記制御信号が入力され、第1の接点端子が前記第1のスイッチの第2の接点端子と接続され、第2の接点端子が前記第1の定電流源と接続された第3のスイッチと、
制御端子に前記制御信号が入力され、第1の接点端子が前記第1のスイッチの第2の接点端子と接続され、第2の接点端子が前記第2の定電流源と接続され、前記第3のスイッチに対して相補的に動作する第4のスイッチと、
制御端子に前記制御信号が入力され、第1の接点端子が前記第2のスイッチの第2の接点端子と接続され、第2の接点端子が前記第3の定電流源と接続された第5のスイッチと、
制御端子に前記制御信号が入力され、第1の接点端子が前記第2のスイッチの第2の接点端子と接続され、第2の接点端子が前記第4の定電流源と接続され、前記第5のスイッチに対して相補的に動作する第6のスイッチとから構成されることを特徴とするHART通信装置。
【請求項4】
送信すべきデジタル信号を変調して異なる2周波のパルス信号を出力するように構成されたHARTモデムと、
前記2周波のパルス信号を台形波に整形するように構成されたローパスフィルタ回路を含む波形整形回路とを備え、
前記波形整形回路は、前記ローパスフィルタ回路の時定数を前記2周波で変えることにより、前記2周波の台形波の傾きを変えることを特徴とするHART通信装置。
【請求項5】
請求項4記載のHART通信装置において、
前記ローパスフィルタ回路は、
反転入力端子に前記パルス信号が入力され、非反転入力端子に基準電圧が入力され、出力端子から前記台形波を出力するオペアンプと、
一端が前記オペアンプの反転入力端子と接続された第1の容量と、
一端が前記オペアンプの反転入力端子と接続された、前記第1の容量と異なる第2の容量と、
前記デジタル信号の値に応じて前記第1の容量と前記第2の容量のどちらかの他端を前記オペアンプの出力端子と接続するように構成されたスイッチ回路とを少なくとも含むことを特徴とするHART通信装置。
【請求項6】
請求項5記載のHART通信装置において、
前記波形整形回路は、
前記デジタル信号を一定時間遅延させた信号を制御信号として出力するように構成された遅延回路をさらに備え、
前記スイッチ回路は、
制御端子に前記制御信号が入力され、第1の接点端子が前記第1の容量の他端と接続され、第2の接点端子が前記オペアンプの出力端子と接続された第1のスイッチと、
制御端子に前記制御信号が入力され、第1の接点端子が前記第2の容量の他端と接続され、第2の接点端子が前記オペアンプの出力端子と接続され、前記第1のスイッチに対して相補的に動作する第2のスイッチとから構成されることを特徴とするHART通信装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、HART通信プロトコルに則った送信信号を生成するためのHART通信装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
HART(Highway Addressable Remote Transducer)通信は、制御システムで用いられている4~20mAの直流電流信号(アナログ信号)にデジタル信号を重畳する通信方式である。HART送信信号(デジタル信号)は、0と1を表す1対の周波数信号(1200Hzと2200Hz)からなり、物理層の仕様により、パルス状の変調信号を台形波に波形整形する必要がある(非特許文献1参照)。
【0003】
従来の仕様では、2周波の台形波がそれぞれ規定の振幅範囲内であることが定められていたが、2016年以降のHART物理層仕様に、送信波形の台形波の傾き時間が追加規定された。この新規定では、台形波がDCレベルからピーク・ピーク値(peak-to-peak)の5%のレベルまで立ち上がる時間が1200Hzの場合で10μs以上、2200Hzの場合で5μs以上と定められている。
【0004】
このように、傾き時間が2周波で異なることから、2周波で同じ傾きを与える波形整形回路では、振幅範囲の仕様と傾き時間の仕様とを同時に満たすことが難しい、という課題があった。パルス状の変調信号を台形波に整形する波形整形回路は、非特許文献1、特許文献1、特許文献2等に開示されているが、これらの波形整形回路では、新規定に対応することが困難であった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特表2016-522593号公報
【特許文献2】特開2004-007173号公報
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】“NCR 20C12 Modem Application Note:A HART Master Demonstration Circuit Document Revision:1.2”,HART Communication Foundation Document Number:HCF_LIT-2,1993
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、上記課題を解決するためになされたもので、HART物理層仕様で定められた台形波の傾き時間の仕様を満たすことが可能なHART通信装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明のHART通信装置は、送信すべきデジタル信号を変調して異なる2周波のパルス信号を出力するように構成されたHARTモデムと、前記2周波のパルス信号を台形波に整形するように構成されたチャージポンプ回路を含む波形整形回路とを備え、前記波形整形回路は、前記チャージポンプ回路の容量への充放電の電流量を前記2周波で変えることにより、前記2周波の台形波の傾きを変えることを特徴とするものである。
また、本発明のHART通信装置の1構成例において、前記チャージポンプ回路は、前記台形波を出力する出力端子と反転入力端子とが接続されたオペアンプと、一端が前記オペアンプの非反転入力端子と接続され、他端がグラウンドと接続された前記容量と、前記容量を充電するための第1の定電流源と、前記第1の定電流源と異なる電流量で前記容量を充電するための第2の定電流源と、前記容量の電荷を放電するための第3の定電流源と、前記第3の定電流源と異なる電流量で前記容量の電荷を放電するための第4の定電流源と、前記パルス信号に応じて前記容量の充電と放電とを切り替え、前記デジタル信号の値に応じて前記容量の充電時に前記第1の定電流源と前記第2の定電流源のどちらかを前記容量と接続し、前記デジタル信号の値に応じて前記容量の放電時に前記第3の定電流源と前記第4の定電流源のどちらかを前記容量と接続するように構成されたスイッチ回路とを少なくとも含むことを特徴とするものである。
【0009】
また、本発明のHART通信装置の1構成例において、前記波形整形回路は、前記デジタル信号を一定時間遅延させた信号を制御信号として出力するように構成された遅延回路をさらに備え、前記スイッチ回路は、制御端子に前記パルス信号が入力され、第1の接点端子が前記オペアンプの非反転入力端子と接続された第1のスイッチと、制御端子に前記パルス信号が入力され、第1の接点端子が前記オペアンプの非反転入力端子と接続され、前記第1のスイッチに対して相補的に動作する第2のスイッチと、制御端子に前記制御信号が入力され、第1の接点端子が前記第1のスイッチの第2の接点端子と接続され、第2の接点端子が前記第1の定電流源と接続された第3のスイッチと、制御端子に前記制御信号が入力され、第1の接点端子が前記第1のスイッチの第2の接点端子と接続され、第2の接点端子が前記第2の定電流源と接続され、前記第3のスイッチに対して相補的に動作する第4のスイッチと、制御端子に前記制御信号が入力され、第1の接点端子が前記第2のスイッチの第2の接点端子と接続され、第2の接点端子が前記第3の定電流源と接続された第5のスイッチと、制御端子に前記制御信号が入力され、第1の接点端子が前記第2のスイッチの第2の接点端子と接続され、第2の接点端子が前記第4の定電流源と接続され、前記第5のスイッチに対して相補的に動作する第6のスイッチとから構成されることを特徴とするものである。
【0010】
また、本発明のHART通信装置は、送信すべきデジタル信号を変調して異なる2周波のパルス信号を出力するように構成されたHARTモデムと、前記2周波のパルス信号を台形波に整形するように構成されたローパスフィルタ回路を含む波形整形回路とを備え、前記波形整形回路は、前記ローパスフィルタ回路の時定数を前記2周波で変えることにより、前記2周波の台形波の傾きを変えることを特徴とするものである。
また、本発明のHART通信装置の1構成例において、前記ローパスフィルタ回路は、反転入力端子に前記パルス信号が入力され、非反転入力端子に基準電圧が入力され、出力端子から前記台形波を出力するオペアンプと、一端が前記オペアンプの反転入力端子と接続された第1の容量と、一端が前記オペアンプの反転入力端子と接続された、前記第1の容量と異なる第2の容量と、前記デジタル信号の値に応じて前記第1の容量と前記第2の容量のどちらかの他端を前記オペアンプの出力端子と接続するように構成されたスイッチ回路とを少なくとも含むことを特徴とするものである。
【0011】
また、本発明のHART通信装置の1構成例において、前記波形整形回路は、前記デジタル信号を一定時間遅延させた信号を制御信号として出力するように構成された遅延回路をさらに備え、前記スイッチ回路は、制御端子に前記制御信号が入力され、第1の接点端子が前記第1の容量の他端と接続され、第2の接点端子が前記オペアンプの出力端子と接続された第1のスイッチと、制御端子に前記制御信号が入力され、第1の接点端子が前記第2の容量の他端と接続され、第2の接点端子が前記オペアンプの出力端子と接続され、前記第1のスイッチに対して相補的に動作する第2のスイッチとから構成されることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、波形整形回路を構成するチャージポンプ回路の容量への充放電の電流量を2周波で変えることにより、2周波の台形波の傾きを変えることができ、HART物理層仕様で定められた台形波の傾き時間の仕様を満たすことができる。
【0013】
また、本発明では、波形整形回路を構成するローパスフィルタ回路の時定数を2周波で変えることにより、2周波の台形波の傾きを変えることができ、HART物理層仕様で定められた台形波の傾き時間の仕様を満たすことができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】
図1は、本発明の第1の実施例に係るHART通信装置の構成を示すブロック図である。
【
図2】
図2は、本発明の第1の実施例に係る波形整形回路の構成を示すブロック図である。
【
図3】
図3は、本発明の第1の実施例に係る波形整形回路の動作を説明するタイミングチャートである。
【
図4】
図4は、本発明の第2の実施例に係る波形整形回路の構成を示すブロック図である。
【
図5】
図5は、本発明の第2の実施例に係る波形整形回路の動作を説明するタイミングチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0015】
[第1の実施例]
以下、本発明の実施例について図面を参照して説明する。
図1は本発明の第1の実施例に係るHART通信装置の構成を示すブロック図である。
HART通信装置は、送信すべきデジタル信号ITXDを出力するCPU(Central Processing Unit)1と、デジタル信号ITXDを変調して2周波のパルス信号OTXAを出力するHARTモデム2と、2周波のパルス信号OTXAを台形波OUTに整形する波形整形回路3とを備えている。
【0016】
図2は本実施例の波形整形回路3の構成を示すブロック図、
図3は
図2の波形整形回路3の動作を説明するタイミングチャートである。
波形整形回路3は、パルス信号OTXAに応じて容量の充放電を行うことにより、パルス信号OTXAを台形波OUTに整形するチャージポンプ回路30と、デジタル信号ITXDに応じてチャージポンプ回路30の容量への充放電電流を切り替えるための制御信号TRIM_TXを出力する遅延回路31とから構成される。
【0017】
チャージポンプ回路30は、台形波OUTを出力する出力端子と反転入力端子とが接続されたオペアンプA1と、一端がオペアンプA1の非反転入力端子と接続され、他端がグラウンドと接続された容量C1と、制御端子にパルス信号OTXAが入力され、第1の接点端子がオペアンプA1の非反転入力端子と接続されたスイッチSW1と、制御端子にパルス信号OTXAが入力され、第1の接点端子がオペアンプA1の非反転入力端子と接続され、スイッチSW1に対して相補的に動作するスイッチSW2と、制御端子に制御信号TRIM_TXが入力され、第1の接点端子がスイッチSW1の第2の接点端子と接続されたスイッチSW3と、制御端子に制御信号TRIM_TXが入力され、第1の接点端子がスイッチSW1の第2の接点端子と接続され、スイッチSW3に対して相補的に動作するスイッチSW4と、制御端子に制御信号TRIM_TXが入力され、第1の接点端子がスイッチSW2の第2の接点端子と接続されたスイッチSW5と、制御端子に制御信号TRIM_TXが入力され、第1の接点端子がスイッチSW2の第2の接点端子と接続され、スイッチSW5に対して相補的に動作するスイッチSW6と、一端が電源電圧VCCと接続され、他端がスイッチSW3の第2の接点端子と接続された定電流源IS1と、一端が電源電圧VCCと接続され、他端がスイッチSW4の第2の接点端子と接続された定電流源IS2と、一端がスイッチSW5の第2の接点端子と接続され、他端がグラウンドと接続された定電流源IS3と、一端がスイッチSW6の第2の接点端子と接続され、他端がグラウンドと接続された定電流源IS4とから構成される。
【0018】
HARTモデム2は、
図3に示すようにCPU1から出力されたデジタル信号ITXDを変調して2周波のパルス信号OTXAを出力する。デジタル信号ITXDのLowレベル(“0”)は1200Hzのパルス信号に変換され、Highレベル(“1”)は2200Hzのパルス信号に変換される。
【0019】
波形整形回路3の遅延回路31は、デジタル信号ITXDを一定時間遅延させた信号を、制御信号TRIM_TXとして出力する。
図3のdtは遅延回路31の遅延時間を示している。
【0020】
次に、スイッチSW1は、パルス信号OTXAがHighレベルのときにオン状態となり、Lowレベルのときにオフ状態となる。スイッチSW1に対して相補的に動作するスイッチSW2は、パルス信号OTXAがLowレベルのときにオン状態となり、Highレベルのときにオフ状態となる。
【0021】
一方、スイッチSW4,SW6は、制御信号TRIM_TXがHighレベルのときにオン状態となり、Lowレベルのときにオフ状態となる。スイッチSW4,SW6に対して相補的に動作するスイッチSW3,SW5は、制御信号TRIM_TXがLowレベルのときにオン状態となり、Highレベルのときにオフ状態となる。
【0022】
パルス信号OTXAがHighレベルかつ制御信号TRIM_TXがLowレベル(1200Hz)のときに定電流源IS1が容量C1と接続されて、容量C1が充電される。パルス信号OTXAがLowレベルかつ制御信号TRIM_TXがLowレベル(1200Hz)のときに定電流源IS3が容量C1と接続されて、容量C1の電荷が放電される。
【0023】
また、パルス信号OTXAがHighレベルかつ制御信号TRIM_TXがHighレベル(2200Hz)のときに定電流源IS2が容量C1と接続されて、容量C1が充電される。パルス信号OTXAがLowレベルかつ制御信号TRIM_TXがHighレベル(2200Hz)のときに定電流源IS4が容量C1と接続されて、容量C1の電荷が放電される。
【0024】
本実施例では、定電流源IS2の電流量を定電流源IS1の電流量よりも大きく設定している。また、定電流源IS4の電流量を定電流源IS3の電流量よりも大きく設定している。したがって、パルス信号OTXAの周波数が2200Hzの場合、周波数が1200Hzの場合よりも容量C1の充放電が速くなる。これにより、周波数2200Hzの場合、周波数1200Hzの場合よりも台形波OUTの立ち上がり、立ち下がりの傾きが急峻となる。
【0025】
こうして、本実施例では、チャージポンプ回路30の容量C1への充放電の電流量を2周波で変えることにより、2周波の台形波の傾きを変えることができ、HART物理層仕様で定められた台形波の傾き時間の仕様を満たすことができる。
【0026】
なお、周波数1200Hzのときの充電時の電流量(定電流源IS1の電流量)と放電時の電流量(定電流源IS3の電流量)は、同一でもよいし、異なっていてもよい。同様に、周波数2200Hzのときの充電時の電流量(定電流源IS2の電流量)と放電時の電流量(定電流源IS4の電流量)は、同一でもよいし、異なっていてもよい。
【0027】
[第2の実施例]
第1の実施例では、波形整形回路としてチャージポンプ回路を用いたが、ローパスフィルタ回路を用いてもよい。本実施例においても、HART通信装置の構成は第1の実施例と同様であるので、
図1の符号を用いて説明する。
【0028】
図4は本実施例の波形整形回路3の構成を示すブロック図、
図5は
図4の波形整形回路3の動作を説明するタイミングチャートである。
本実施例の波形整形回路3は、パルス信号OTXAを台形波OUTに整形するローパスフィルタ回路32と、デジタル信号ITXDに応じてローパスフィルタ回路32の時定数を切り替えるための制御信号TRIM_TXを出力する遅延回路33とから構成される。
【0029】
ローパスフィルタ回路32は、反転入力端子にパルス信号OTXAが入力され、非反転入力端子に基準電圧Vrefが入力され、出力端子から台形波OUTを出力するオペアンプA2と、一端がオペアンプA2の反転入力端子と接続された容量C2,C3と、制御端子に制御信号TRIM_TXが入力され、第1の接点端子が容量C2の他端と接続され、第2の接点端子がオペアンプA2の出力端子と接続されたスイッチSW7と、制御端子に制御信号TRIM_TXが入力され、第1の接点端子が容量C3の他端と接続され、第2の接点端子がオペアンプA2の出力端子と接続され、スイッチSW7に対して相補的に動作するスイッチSW8とから構成される。
【0030】
第1の実施例と同様に、波形整形回路3の遅延回路33は、デジタル信号ITXDを一定時間遅延させた信号を、制御信号TRIM_TXとして出力する。
【0031】
スイッチSW7は、制御信号TRIM_TXがLowレベルのときにオン状態となり、Highレベルのときにオフ状態となる。スイッチSW7に対して相補的に動作するスイッチSW8は、制御信号TRIM_TXがHighレベルのときにオン状態となり、Lowレベルのときにオフ状態となる。これにより、制御信号TRIM_TXがLowレベル(1200Hz)のときに容量C2がオペアンプA2と接続され、制御信号TRIM_TXがHighレベル(2200Hz)のときに容量C3がオペアンプA2と接続される。
【0032】
本実施例では、容量C2を容量C3よりも大きく設定している。したがって、パルス信号OTXAの周波数が1200Hzの場合、周波数が2200Hzの場合よりもローパスフィルタ回路32の時定数が大きくなる。これにより、周波数1200Hzの場合、周波数2200Hzの場合よりも、オペアンプA2から出力される台形波OUTの立ち上がり、立ち下がりの傾きが緩やかとなる。
【0033】
こうして、本実施例では、ローパスフィルタ回路32の時定数を2周波で変えることにより、2周波の台形波の傾きを変えることができ、HART物理層仕様で定められた台形波の傾き時間の仕様を満たすことができる。
【0034】
なお、第1、第2の実施例では、チャージポンプ回路30とローパスフィルタ回路32の前に遅延回路31,33を挿入しているが、遅延回路31,33は本発明において必須の構成要件ではない。遅延回路31,33の挿入の要否と遅延回路31,33の遅延時間とは、例えばHARTモデム2がデジタル信号ITXDの変調に要する時間等によって決まる。
【産業上の利用可能性】
【0035】
本発明は、HART通信技術に適用することができる。
【符号の説明】
【0036】
1…CPU、2…HARTモデム、3…波形整形回路、30…チャージポンプ回路、31,33…遅延回路、32…ローパスフィルタ回路、A1,A2…オペアンプ、C1~C3…容量、IS1~IS4…定電流源、SW1~SW8…スイッチ。