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特開2024-119187バルブメンテナンス支援装置および支援方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024119187
(43)【公開日】2024-09-03
(54)【発明の名称】バルブメンテナンス支援装置および支援方法
(51)【国際特許分類】
   F16K 51/00 20060101AFI20240827BHJP
【FI】
F16K51/00 F
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023025912
(22)【出願日】2023-02-22
(71)【出願人】
【識別番号】000006666
【氏名又は名称】アズビル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100098394
【弁理士】
【氏名又は名称】山川 茂樹
(72)【発明者】
【氏名】山▲崎▼ 史明
(72)【発明者】
【氏名】田中 雅人
【テーマコード(参考)】
3H066
【Fターム(参考)】
3H066AA05
3H066BA38
(57)【要約】
【課題】ON-OFFバルブのメンテナンスの作業効率を向上させる。
【解決手段】バルブメンテナンス支援装置は、ON-OFFバルブに操作器空気を供給する電磁弁を開状態にする開信号を取得する電磁弁開信号取得部2と、電磁弁開信号取得部2が開信号を受信したときに、開信号の出力対象の電磁弁に対応するON-OFFバルブに設けられた操作器圧力計測部3から、操作器空気の圧力計測値を取得する操作器圧力取得部4と、圧力計測値を記憶する操作器圧力記憶部5と、圧力計測値が規定値に到達していない場合に、ON-OFFバルブの操作器に空気の内通漏れの可能性があると判定する内通漏れ判定部6と、内通漏れ判定部6の判定結果を提示する判定結果提示部7とを備える。
【選択図】 図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ON-OFFバルブに操作器空気を供給する電磁弁を開状態にする開信号を取得するように構成された電磁弁開信号取得部と、
前記電磁弁開信号取得部が前記開信号を受信したときに、前記開信号の出力対象の電磁弁に対応するON-OFFバルブに設けられた操作器圧力計測部から、操作器空気の圧力計測値を取得するように構成された操作器圧力取得部と、
前記圧力計測値を記憶するように構成された第1の記憶部と、
前記圧力計測値が規定値に到達していない場合に、前記ON-OFFバルブの操作器に空気の内通漏れの可能性があると判定するように構成された内通漏れ判定部と、
前記内通漏れ判定部の判定結果を提示するように構成された判定結果提示部とを備えることを特徴とするバルブメンテナンス支援装置。
【請求項2】
請求項1記載のバルブメンテナンス支援装置において、
メンテナンスの候補となり得るON-OFFバルブのIDを予め記憶するように構成された第2の記憶部をさらに備え、
前記第1の記憶部は、前記圧力計測値を送信元のON-OFFバルブのIDと共に記憶し、
前記内通漏れ判定部は、前記第2の記憶部にIDが記憶されているON-OFFバルブについて前記内通漏れの可能性があるかどうかを判定し、
前記判定結果提示部は、前記内通漏れの可能性があると判定されたON-OFFバルブについて、このバルブのIDと前記圧力計測値と前記内通漏れ判定部の判定結果とを提示することを特徴とするバルブメンテナンス支援装置。
【請求項3】
請求項1記載のバルブメンテナンス支援装置において、
前記ON-OFFバルブに設けられた開度計測部から開度計測値を取得するように構成された開度取得部と、
前記開度計測値を記憶するように構成された第2の記憶部と、
前記内通漏れの可能性があると判定されたON-OFFバルブについて、前記開度計測値を参照し、開閉動作が正常と判明したON-OFFバルブの前記操作器圧力計測部に不具合が発生している可能性があると判定するように構成された計測不具合判定部とをさらに備え、
前記判定結果提示部は、前記内通漏れ判定部の判定結果に加えて、前記計測不具合判定部の判定結果を提示することを特徴とするバルブメンテナンス支援装置。
【請求項4】
請求項3記載のバルブメンテナンス支援装置において、
メンテナンスの候補となり得るON-OFFバルブのIDを予め記憶するように構成された第3の記憶部をさらに備え、
前記第1の記憶部は、前記圧力計測値を送信元のON-OFFバルブのIDと共に記憶し、
前記第2の記憶部は、前記開度計測値を送信元のON-OFFバルブのIDと共に記憶し、
前記内通漏れ判定部は、前記第3の記憶部にIDが記憶されているON-OFFバルブについて前記内通漏れの可能性があるかどうかを判定し、
前記判定結果提示部は、前記内通漏れの可能性があると判定されたON-OFFバルブについて、このバルブのIDと前記圧力計測値と前記内通漏れ判定部の判定結果とを提示し、前記操作器圧力計測部に不具合が発生している可能性があると判定されたON-OFFバルブについて、このバルブのIDと前記計測不具合判定部の判定結果とを提示することを特徴とするバルブメンテナンス支援装置。
【請求項5】
請求項1記載のバルブメンテナンス支援装置において、
前記ON-OFFバルブに設けられた開度計測部から開度計測値を取得するように構成された開度取得部と、
前記開度計測値を記憶するように構成された第2の記憶部と、
前記圧力計測値が規定値に到達していないON-OFFバルブについて、前記開度計測値を参照し、開閉動作が異常と判明したON-OFFバルブの前記操作器圧力計測部に不具合が発生していないと判定するように構成された計測正常判定部とをさらに備え、
前記内通漏れ判定部は、前記圧力計測値が規定値に到達しておらず、かつ前記操作器圧力計測部に不具合が発生していないと判定されたON-OFFバルブの操作器に空気の内通漏れの可能性があると判定することを特徴とするバルブメンテナンス支援装置。
【請求項6】
請求項5記載のバルブメンテナンス支援装置において、
メンテナンスの候補となり得るON-OFFバルブのIDを予め記憶するように構成された第3の記憶部をさらに備え、
前記第1の記憶部は、前記圧力計測値を送信元のON-OFFバルブのIDと共に記憶し、
前記第2の記憶部は、前記開度計測値を送信元のON-OFFバルブのIDと共に記憶し、
前記計測正常判定部は、前記第3の記憶部にIDが記憶されているON-OFFバルブについて前記圧力計測値が規定値に到達しているかどうかを判定し、
前記判定結果提示部は、前記内通漏れの可能性があると判定されたON-OFFバルブについて、このバルブのIDと前記圧力計測値と前記内通漏れ判定部の判定結果とを提示することを特徴とするバルブメンテナンス支援装置。
【請求項7】
ON-OFFバルブに操作器空気を供給する電磁弁を開状態にする開信号を取得する第1のステップと、
前記第1のステップで前記開信号を受信したときに、前記開信号の出力対象の電磁弁に対応するON-OFFバルブに設けられた操作器圧力計測部から、操作器空気の圧力計測値を取得する第2のステップと、
前記圧力計測値を記憶する第3のステップと、
前記圧力計測値が規定値に到達していない場合に、前記ON-OFFバルブの操作器に空気の内通漏れの可能性があると判定する第4のステップと、
前記第4のステップの判定結果を提示する第5のステップとを含むことを特徴とするバルブメンテナンス支援方法。
【請求項8】
請求項7記載のバルブメンテナンス支援方法において、
前記第3のステップは、前記圧力計測値を送信元のON-OFFバルブのIDと共に記憶するステップを含み、
前記第4のステップは、メンテナンスの候補となり得るON-OFFバルブのIDを予め記憶している記憶部を参照し、この記憶部にIDが記憶されているON-OFFバルブについて前記内通漏れの可能性があるかどうかを判定するステップを含み、
前記第5のステップは、前記内通漏れの可能性があると判定されたON-OFFバルブについて、このバルブのIDと前記圧力計測値と前記第4のステップの判定結果とを提示するステップを含むことを特徴とするバルブメンテナンス支援方法。
【請求項9】
請求項7記載のバルブメンテナンス支援方法において、
前記ON-OFFバルブに設けられた開度計測部から開度計測値を取得する第6のステップと、
前記開度計測値を記憶する第7のステップと、
前記内通漏れの可能性があると判定されたON-OFFバルブについて、前記開度計測値を参照し、開閉動作が正常と判明したON-OFFバルブの前記操作器圧力計測部に不具合が発生している可能性があると判定する第8のステップとをさらに含み、
前記第5のステップは、前記第4のステップの判定結果に加えて、前記第8のステップの判定結果を提示するステップを含むことを特徴とするバルブメンテナンス支援方法。
【請求項10】
請求項9記載のバルブメンテナンス支援方法において、
前記第3のステップは、前記圧力計測値を送信元のON-OFFバルブのIDと共に記憶するステップを含み、
前記第7のステップは、前記開度計測値を送信元のON-OFFバルブのIDと共に記憶するステップを含み、
前記第4のステップは、メンテナンスの候補となり得るON-OFFバルブのIDを予め記憶している記憶部を参照し、この記憶部にIDが記憶されているON-OFFバルブについて前記内通漏れの可能性があるかどうかを判定するステップを含み、
前記第5のステップは、前記内通漏れの可能性があると判定されたON-OFFバルブについて、このバルブのIDと前記圧力計測値と前記第4のステップの判定結果とを提示し、前記操作器圧力計測部に不具合が発生している可能性があると判定されたON-OFFバルブについて、このバルブのIDと前記第8のステップの判定結果とを提示するステップを含むことを特徴とするバルブメンテナンス支援方法。
【請求項11】
請求項7記載のバルブメンテナンス支援方法において、
前記ON-OFFバルブに設けられた開度計測部から開度計測値を取得する第6のステップと、
前記開度計測値を記憶する第7のステップと、
前記圧力計測値が規定値に到達していないON-OFFバルブについて、前記開度計測値を参照し、開閉動作が異常と判明したON-OFFバルブの前記操作器圧力計測部に不具合が発生していないと判定する第8のステップとをさらに含み、
前記第4のステップは、前記圧力計測値が規定値に到達しておらず、かつ前記操作器圧力計測部に不具合が発生していないと判定されたON-OFFバルブの操作器に空気の内通漏れの可能性があると判定するステップを含むことを特徴とするバルブメンテナンス支援方法。
【請求項12】
請求項11記載のバルブメンテナンス支援方法において、
前記第3のステップは、前記圧力計測値を送信元のON-OFFバルブのIDと共に記憶するステップを含み、
前記第7のステップは、前記開度計測値を送信元のON-OFFバルブのIDと共に記憶するステップを含み、
前記第8のステップは、メンテナンスの候補となり得るON-OFFバルブのIDを予め記憶している記憶部を参照し、この記憶部にIDが記憶されているON-OFFバルブについて前記圧力計測値が規定値に到達しているかどうかを判定するステップを含み、
前記第5のステップは、前記内通漏れの可能性があると判定されたON-OFFバルブについて、このバルブのIDと前記圧力計測値と前記第4のステップの判定結果とを提示するステップを含むことを特徴とするバルブメンテナンス支援方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、メンテナンス作業を支援する技術に係り、特にON-OFFバルブのメンテナンスの効率的な作業のための支援を実現するバルブメンテナンス支援装置および支援方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
石油化学プラントなどで使用されるバルブ(例えば図17のコントロールバルブ)は、特に安全性に留意する必要があり、ゆえに定期的なメンテナンスが行なわれる。図17に示すコントロールバルブは、流体の流れる通路を開閉するバルブ本体100と、入力電気信号を空気圧に変換するポジショナ101と、ポジショナ101から供給される空気圧に応じてバルブ本体100を操作する操作器102とから構成される。
【0003】
図17に示したようなバルブが設置されているプラントにおいてバルブのメンテナンス作業効率を改善するために、バルブの摺動部におけるスティックスリップの発生を検出する技術(特許文献1参照)、バルブのハンチング状態を判定する技術(特許文献2参照)、バルブへのスケールの付着を検出する技術(特許文献3参照)などが提案されている。
【0004】
一方、開度を連続的に変化させることが可能なコントロールバルブとは別の種類のバルブとして、開度を全開/全閉の二位置しか取ることができないON-OFFバルブがあり、例えばボールバルブやバタフライバルブやゲートバルブがある。図18に示すON-OFFバルブ200は、ボールバルブを用いたものであり、弁体であるボール201をボールシートと呼ばれるシートリング202で挟み込む構造であり、ステム(弁棒)203を操作器204によって90度回転させることで、バルブを開いたり閉めたりすることができる。また、種類によっては、90度以外のものもある。
【0005】
ON-OFFバルブ200の大半は、図19に示すように計装されており、電磁弁205を介してON-OFFバルブ200の操作器204に操作器空気が供給されるようになっている。ON-OFFバルブ200の開状態はリミットスイッチ206によって検出され、閉状態はリミットスイッチ207によって検出される。このように、リミットスイッチ206,207を用いたアンサーバックは、閉状態または開状態の2状態のみを表しており、ON-OFFバルブ200の開閉の動作過程はアンサーバックに反映されない。すなわち、ON-OFFバルブ200のアンサーバック機能は、異常時に警報を発報するだけであり、警報が発生した時に既に緊急の異常状態であれば、処置が手遅れになる。
【0006】
そこで発明者は、ON-OFFバルブの動き出しの不感帯(圧力の動き出しから開度の動き出しまでの時間差)の大きさの変化が、ON-OFFバルブの不具合(基準トルク以上または基準トルク以下の力で作動させている)と相関することを利用した診断技術を提案した(特許文献4参照)。
【0007】
しかしながら、特許文献4に開示された技術では、ON-OFFバルブ本体の不具合の予兆を検出できるものの、操作器の不具合の予兆を検出できない可能性があった。
安全性や作業効率については、完全とか十分とか言える上限は無く、安全性、作業効率の更なる向上が求められている。特に、石油化学プラントなどでは、例えば図20に示すように複数のバルブ200-A,200-C,200-Mが使用される。したがって、バルブメンテナンスの作業効率については、更なる改善が求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特許第3254624号広報
【特許文献2】特開2015-114942号公報
【特許文献3】特開2015-114943号公報
【特許文献4】特開2021-026268号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、上記課題を解決するためになされたもので、ON-OFFバルブのメンテナンスの作業効率を向上させることができるバルブメンテナンス支援装置および支援方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明のバルブメンテナンス支援装置は、ON-OFFバルブに操作器空気を供給する電磁弁を開状態にする開信号を取得するように構成された電磁弁開信号取得部と、前記電磁弁開信号取得部が前記開信号を受信したときに、前記開信号の出力対象の電磁弁に対応するON-OFFバルブに設けられた操作器圧力計測部から、操作器空気の圧力計測値を取得するように構成された操作器圧力取得部と、前記圧力計測値を記憶するように構成された第1の記憶部と、前記圧力計測値が規定値に到達していない場合に、前記ON-OFFバルブの操作器に空気の内通漏れの可能性があると判定するように構成された内通漏れ判定部と、前記内通漏れ判定部の判定結果を提示するように構成された判定結果提示部とを備えることを特徴とするものである。
また、本発明のバルブメンテナンス支援装置の1構成例は、メンテナンスの候補となり得るON-OFFバルブのIDを予め記憶するように構成された第2の記憶部をさらに備え、前記第1の記憶部は、前記圧力計測値を送信元のON-OFFバルブのIDと共に記憶し、前記内通漏れ判定部は、前記第2の記憶部にIDが記憶されているON-OFFバルブについて前記内通漏れの可能性があるかどうかを判定し、前記判定結果提示部は、前記内通漏れの可能性があると判定されたON-OFFバルブについて、このバルブのIDと前記圧力計測値と前記内通漏れ判定部の判定結果とを提示することを特徴とするものである。
【0011】
また、本発明のバルブメンテナンス支援装置の1構成例は、前記ON-OFFバルブに設けられた開度計測部から開度計測値を取得するように構成された開度取得部と、前記開度計測値を記憶するように構成された第2の記憶部と、前記内通漏れの可能性があると判定されたON-OFFバルブについて、前記開度計測値を参照し、開閉動作が正常と判明したON-OFFバルブの前記操作器圧力計測部に不具合が発生している可能性があると判定するように構成された計測不具合判定部とをさらに備え、前記判定結果提示部は、前記内通漏れ判定部の判定結果に加えて、前記計測不具合判定部の判定結果を提示することを特徴とするものである。
また、本発明のバルブメンテナンス支援装置の1構成例は、メンテナンスの候補となり得るON-OFFバルブのIDを予め記憶するように構成された第3の記憶部をさらに備え、前記第1の記憶部は、前記圧力計測値を送信元のON-OFFバルブのIDと共に記憶し、前記第2の記憶部は、前記開度計測値を送信元のON-OFFバルブのIDと共に記憶し、前記内通漏れ判定部は、前記第3の記憶部にIDが記憶されているON-OFFバルブについて前記内通漏れの可能性があるかどうかを判定し、前記判定結果提示部は、前記内通漏れの可能性があると判定されたON-OFFバルブについて、このバルブのIDと前記圧力計測値と前記内通漏れ判定部の判定結果とを提示し、前記操作器圧力計測部に不具合が発生している可能性があると判定されたON-OFFバルブについて、このバルブのIDと前記計測不具合判定部の判定結果とを提示することを特徴とするものである。
【0012】
また、本発明のバルブメンテナンス支援装置の1構成例は、前記ON-OFFバルブに設けられた開度計測部から開度計測値を取得するように構成された開度取得部と、前記開度計測値を記憶するように構成された第2の記憶部と、前記圧力計測値が規定値に到達していないON-OFFバルブについて、前記開度計測値を参照し、開閉動作が異常と判明したON-OFFバルブの前記操作器圧力計測部に不具合が発生していないと判定するように構成された計測正常判定部とをさらに備え、前記内通漏れ判定部は、前記圧力計測値が規定値に到達しておらず、かつ前記操作器圧力計測部に不具合が発生していないと判定されたON-OFFバルブの操作器に空気の内通漏れの可能性があると判定することを特徴とするものである。
また、本発明のバルブメンテナンス支援装置の1構成例は、メンテナンスの候補となり得るON-OFFバルブのIDを予め記憶するように構成された第3の記憶部をさらに備え、前記第1の記憶部は、前記圧力計測値を送信元のON-OFFバルブのIDと共に記憶し、前記第2の記憶部は、前記開度計測値を送信元のON-OFFバルブのIDと共に記憶し、前記計測正常判定部は、前記第3の記憶部にIDが記憶されているON-OFFバルブについて前記圧力計測値が規定値に到達しているかどうかを判定し、前記判定結果提示部は、前記内通漏れの可能性があると判定されたON-OFFバルブについて、このバルブのIDと前記圧力計測値と前記内通漏れ判定部の判定結果とを提示することを特徴とするものである。
【0013】
また、本発明のバルブメンテナンス支援方法は、ON-OFFバルブに操作器空気を供給する電磁弁を開状態にする開信号を取得する第1のステップと、前記第1のステップで前記開信号を受信したときに、前記開信号の出力対象の電磁弁に対応するON-OFFバルブに設けられた操作器圧力計測部から、操作器空気の圧力計測値を取得する第2のステップと、前記圧力計測値を記憶する第3のステップと、前記圧力計測値が規定値に到達していない場合に、前記ON-OFFバルブの操作器に空気の内通漏れの可能性があると判定する第4のステップと、前記第4のステップの判定結果を提示する第5のステップとを含むことを特徴とするものである。
また、本発明のバルブメンテナンス支援方法の1構成例において、前記第3のステップは、前記圧力計測値を送信元のON-OFFバルブのIDと共に記憶するステップを含み、前記第4のステップは、メンテナンスの候補となり得るON-OFFバルブのIDを予め記憶している記憶部を参照し、この記憶部にIDが記憶されているON-OFFバルブについて前記内通漏れの可能性があるかどうかを判定するステップを含み、前記第5のステップは、前記内通漏れの可能性があると判定されたON-OFFバルブについて、このバルブのIDと前記圧力計測値と前記第4のステップの判定結果とを提示するステップを含むことを特徴とするものである。
【0014】
また、本発明のバルブメンテナンス支援方法の1構成例は、前記ON-OFFバルブに設けられた開度計測部から開度計測値を取得する第6のステップと、前記開度計測値を記憶する第7のステップと、前記内通漏れの可能性があると判定されたON-OFFバルブについて、前記開度計測値を参照し、開閉動作が正常と判明したON-OFFバルブの前記操作器圧力計測部に不具合が発生している可能性があると判定する第8のステップとをさらに含み、前記第5のステップは、前記第4のステップの判定結果に加えて、前記第8のステップの判定結果を提示するステップを含むことを特徴とするものである。
また、本発明のバルブメンテナンス支援方法の1構成例において、前記第3のステップは、前記圧力計測値を送信元のON-OFFバルブのIDと共に記憶するステップを含み、前記第7のステップは、前記開度計測値を送信元のON-OFFバルブのIDと共に記憶するステップを含み、前記第4のステップは、メンテナンスの候補となり得るON-OFFバルブのIDを予め記憶している記憶部を参照し、この記憶部にIDが記憶されているON-OFFバルブについて前記内通漏れの可能性があるかどうかを判定するステップを含み、前記第5のステップは、前記内通漏れの可能性があると判定されたON-OFFバルブについて、このバルブのIDと前記圧力計測値と前記第4のステップの判定結果とを提示し、前記操作器圧力計測部に不具合が発生している可能性があると判定されたON-OFFバルブについて、このバルブのIDと前記第8のステップの判定結果とを提示するステップを含むことを特徴とするものである。
【0015】
また、本発明のバルブメンテナンス支援方法の1構成例は、前記ON-OFFバルブに設けられた開度計測部から開度計測値を取得する第6のステップと、前記開度計測値を記憶する第7のステップと、前記圧力計測値が規定値に到達していないON-OFFバルブについて、前記開度計測値を参照し、開閉動作が異常と判明したON-OFFバルブの前記操作器圧力計測部に不具合が発生していないと判定する第8のステップとをさらに含み、前記第4のステップは、前記圧力計測値が規定値に到達しておらず、かつ前記操作器圧力計測部に不具合が発生していないと判定されたON-OFFバルブの操作器に空気の内通漏れの可能性があると判定するステップを含むことを特徴とするものである。
また、本発明のバルブメンテナンス支援方法の1構成例において、前記第3のステップは、前記圧力計測値を送信元のON-OFFバルブのIDと共に記憶するステップを含み、前記第7のステップは、前記開度計測値を送信元のON-OFFバルブのIDと共に記憶するステップを含み、前記第8のステップは、メンテナンスの候補となり得るON-OFFバルブのIDを予め記憶している記憶部を参照し、この記憶部にIDが記憶されているON-OFFバルブについて前記圧力計測値が規定値に到達しているかどうかを判定するステップを含み、前記第5のステップは、前記内通漏れの可能性があると判定されたON-OFFバルブについて、このバルブのIDと前記圧力計測値と前記第4のステップの判定結果とを提示するステップを含むことを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、電磁弁開信号取得部と操作器圧力取得部と内通漏れ判定部とを設けることにより、ON-OFFバルブの操作器に空気の内通漏れの可能性があることを検知できるので、オペレータがメンテナンス候補のON-OFFバルブを選定する作業を支援することができる。その結果、本発明では、ON-OFFバルブのメンテナンスの作業効率を向上させることができる。本発明では、ON-OFFバルブを利用する生産設備におけるロスを低減することができ、従来に比べて生産設備を安定的に稼働させることが期待できる。
【0017】
また、本発明では、開度取得部と計測不具合判定部とを設けることにより、内通漏れの可能性があると判定したON-OFFバルブについて、開度計測値を参照し、開閉動作が正常と判明したON-OFFバルブの操作器圧力計測部に不具合が発生している可能性があると判定する。これにより、本発明では、内通漏れ判定部による判定結果が、操作器の不具合による結果か、操作器圧力計測部の不具合による結果かを推測することができる。
【0018】
また、本発明では、開度取得部と計測正常判定部とを設けることにより、圧力計測値が規定値に到達していないON-OFFバルブについて、開度計測値を参照し、開閉動作が異常と判明したON-OFFバルブの操作器圧力計測部に不具合が発生していないと判定する。これにより、本発明では、内通漏れ判定部による判定結果が、操作器の不具合による結果か、操作器圧力計測部の不具合による結果かを推測することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1図1は、本発明の第1の実施例に係るバルブメンテナンス支援装置の構成を示すブロック図である。
図2図2は、本発明の第1の実施例に係るバルブメンテナンス支援装置の動作を説明するフローチャートである。
図3図3は、本発明の第1の実施例に係るON-OFFバルブの構造の1例を示す図である。
図4図4は、本発明の第1の実施例に係るON-OFFバルブの操作器圧力計測部の構成を示すブロック図である。
図5図5は、本発明の第1の実施例に係るバルブメンテナンス支援装置による判定結果の提示例を示す図である。
図6図6は、電磁弁への入力電気信号と操作器空気圧力との関係の1例を示す図である。
図7図7は、本発明の第2の実施例に係るバルブメンテナンス支援装置の構成を示すブロック図である。
図8図8は、本発明の第2の実施例に係るON-OFFバルブの構造の1例を示す図である。
図9図9は、本発明の第2の実施例に係るON-OFFバルブの開度計測部の構成を示すブロック図である。
図10図10は、本発明の第2の実施例に係るバルブメンテナンス支援装置の動作を説明するフローチャートである。
図11図11は、本発明の第2の実施例に係るバルブメンテナンス支援装置の計測不具合判定部による判定処理を説明するフローチャートである。
図12図12は、バルブ開度の立ち上がり時点の導出方法を説明する図である。
図13図13は、本発明の第3の実施例に係るバルブメンテナンス支援装置の構成を示すブロック図である。
図14図14は、本発明の第3の実施例に係るバルブメンテナンス支援装置の動作を説明するフローチャートである。
図15図15は、本発明の第4の実施例に係るプラントとその機器管理システムの構成を示す図である。
図16図16は、本発明の第1~第4の実施例に係るバルブメンテナンス支援装置を実現するコンピュータの構成例を示すブロック図である。
図17図17は、コントロールバルブの1例を示す図である。
図18図18は、ON-OFFバルブの1例を示す図である。
図19図19は、ON-OFFバルブの計装図である。
図20図20は、プラントのタンクに使用される複数のバルブの例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
[発明の原理1]
ON-OFFバルブの作動不良の原因に、操作器内部のシール部品(例えば図18に示すOリング208等)の劣化による空気の内通漏れがある。発明者は、バルブの開閉頻度によって、操作器内部のシール部品が摩耗・劣化することで内通漏れが発生することを突き止めた。そして、発明者は、弁軸のみの動きでは、バルブ本体の不具合なのか、操作器の不具合なのかを区別ができないことに着眼し、バルブの作動信号と操作器空気圧力測定により、操作器の内通漏れを検知できることに想到した。
【0021】
より具体的には、電磁弁への開信号に応じて操作器に空気が供給されるが、操作器が内通漏れしていると、規定値まで操作器空気圧力が上昇せずに、操作器内部を通って大気開放に空気が逃げる。すなわち、操作器空気圧力が必要量確保できないという現象が発生する。したがって、操作器空気圧力と電磁弁作動信号との関係を検出することで、操作器の内通漏れを検出することができる。これにより、ON-OFFバルブを利用する工程におけるロスを低減することができ、従来に比べて生産設備を安定的に稼働させることが期待できる。
【0022】
[発明の原理2]
上記の発明の原理1で説明した処理を実施する場合、ON-OFFバルブに圧力センサを設け、電磁弁を介して操作器に供給される操作器空気の圧力値を検出できるようにする。現実的には、プラントで実稼働中のON-OFFバルブの操作器と電磁弁との間の操作器空気の供給ラインなどに圧力センサを後付けする形態になることが想定される。すなわち、圧力センサにとって十分な取付条件が確保できるとは限らないので、圧力センサの方に不具合(計測誤差)が発生する可能性も考慮しておくことが好ましい。
【0023】
そこで、特許文献4に開示されている開度センサなどを併用し、操作器空気圧力が低下していながらも、ON-OFFバルブの開閉動作が正常である場合は、圧力センサに不具合(計測誤差要因)が発生している可能性があると判断するのが好ましい。なお、操作器に内通漏れの可能性があるかどうかを判定する前に、圧力センサに不具合が発生している可能性があるかどうかを判定してもよい。
【0024】
[第1の実施例]
以下、本発明の第1の実施例について図面を参照して説明する。本実施例は、上記の発明の原理1に対応する実施例である。図1は本実施例に係るバルブメンテナンス支援装置の構成を示すブロック図である。以下の実施例では、説明を簡潔にするため、バルブのIDの事例などは、実際のプラントで利用されるものよりも単純なものとする。
【0025】
バルブメンテナンス支援装置は、メンテナンスの候補となり得るON-OFFバルブのID(識別情報)を予め記憶するバルブID記憶部1と、ON-OFFバルブに操作器空気を供給する電磁弁を開状態にする開信号を取得する電磁弁開信号取得部2と、電磁弁からON-OFFバルブの操作器に供給される操作器空気の圧力を計測する操作器圧力計測部3と、電磁弁開信号取得部2が開信号を受信したときに、開信号の出力対象の電磁弁に対応するON-OFFバルブに設けられた操作器圧力計測部3から、操作器空気の圧力計測値を取得する操作器圧力取得部4と、圧力計測値を送信元のON-OFFバルブのIDと共に記憶する操作器圧力記憶部5と、圧力計測値が規定値に到達していない場合に、ON-OFFバルブの操作器に空気の内通漏れの可能性があると判定する内通漏れ判定部6と、内通漏れ判定部6の判定結果を提示する判定結果提示部7とを備えている。
【0026】
図2は本実施例のバルブメンテナンス支援装置の動作を説明するフローチャートである。本実施例では、例えばプラント内にバルブが26個あるとして、これら26個のバルブにそれぞれ“A”,“B”,“C”,・・・,“M”,・・・,“X”,“Y”,“Z”という固有のIDが予め割り当てられているものとする。特に、バルブID“A”,“C”,“M”のバルブが電磁弁を利用しているON-OFFバルブで、このID“A”,“C”,“M”がバルブID記憶部1に予め記憶されているものとする。
【0027】
図3は、本実施例のON-OFFバルブ200の構造の1例を示す図であり、図18図19に示した構成において、電磁弁205と操作器204との間の操作器空気の供給ライン209に操作器圧力計測部3を追加した例を示している。
【0028】
図4は操作器圧力計測部3の構成を示すブロック図である。操作器圧力計測部3は、電磁弁205を介してON-OFFバルブ200の操作器204に供給される操作器空気の圧力値を連続的に計測する圧力センサ30と、操作器圧力計測部3が取り付けられたON-OFFバルブ200に固有のバルブIDを記憶するバルブID記憶部31と、バルブメンテナンス支援装置に対して圧力計測値とバルブIDとを周期的に送信する送信部32とを備えている。圧力計測値の計測・送信周期は、ON-OFFバルブ200の開閉所要時間の生じ得る最小値よりも短いことが望ましい。
【0029】
バルブメンテナンス支援装置の電磁弁開信号取得部2は、ON-OFFバルブ200に操作器空気を供給する電磁弁を開状態にする開信号を、例えばON-OFFバルブ200を制御するコントローラ(不図示)から受信する(図2ステップS100)。このとき、電磁弁開信号取得部2は、開信号の出力対象の電磁弁に対応するON-OFFバルブ200、すなわち操作器空気の供給ラインを介して電磁弁と接続されたON-OFFバルブ200のバルブIDを、開信号と共にコントローラから受信する。
【0030】
各ON-OFFバルブ200の操作器圧力計測部3は、操作器空気の圧力を計測する。圧力の計測は常時行なってもよいが、操作器圧力取得部4が圧力計測値を取得する必要がある時間帯のみでもよい。
【0031】
操作器圧力取得部4は、電磁弁開信号取得部2が開信号を受信したときに、開信号の出力対象の電磁弁に対応するON-OFFバルブ200の操作器圧力計測部3から圧力計測値を取得し(図2ステップS101)、取得した圧力計測値と、圧力計測値の送信元のON-OFFバルブ200のバルブIDと、圧力計測値の受信時刻とを操作器圧力記憶部5に格納する(図2ステップS102)。具体的には、操作器圧力取得部4は、電磁弁開信号取得部2が開信号とバルブIDとをコントローラから受信したときに、コントローラから受信したバルブIDと同一のバルブIDが付加されている圧力計測値を取得すればよい。
【0032】
後述のように圧力計測値が規定値に到達しているかどうかを判定する必要があるため、操作器圧力取得部4は、電磁弁開信号取得部2が開信号を受信したときから規定時間が経過するまで、圧力計測値を取得し続ける必要がある。規定時間は、圧力計測値が整定値に到達するのに充分な時間以上の値に設定しておけばよい。
【0033】
次に、内通漏れ判定部6は、バルブID記憶部1にバルブIDが登録されている、メンテナンスの候補となり得るON-OFFバルブ200について、操作器圧力記憶部5に記憶された圧力計測値が規定値に到達しているかどうかを判定する(図2ステップS103)。
【0034】
内通漏れ判定部6は、圧力計測値が規定値に到達している場合、ON-OFFバルブ200の操作器204が正常と判定し(図2ステップS104)、圧力計測値が規定値に到達していない場合、操作器204に空気の内通漏れの可能性があると判定する(図2ステップS105)。
【0035】
規定値については、正常なON-OFFバルブ200が開状態のときの圧力計測値の整定値を基準値(100%)とし、例えば基準値の80%の圧力を規定値としてON-OFFバルブ200毎に予め設定しておけばよい。
【0036】
判定結果提示部7は、内通漏れ判定部6の判定結果をオペレータに対して提示する(図2ステップS106)。具体的には、判定結果提示部7は、操作器204に内通漏れの可能性ありと判定されたON-OFFバルブ200について、このバルブのIDと圧力計測値と判定結果とを通常と異なる形式(例えば赤色で表示)で表示し、正常と判定されたON-OFFバルブ200のIDと圧力計測値とを通常の形式(例えば黒色で表示)で表示すればよい。
【0037】
こうして、図2のステップS100~S106の処理が定期的に、あるいはオペレータから診断実行の指示があったときに行われる。
【0038】
図5は判定結果の提示例を示す図である。図5の例では、判定結果提示部7が表示する画面70の領域700に、バルブID“A”,“C”,“M”の各バルブの判定結果が表示されている。圧力計測値は、基準値に対するパーセンテージで表示されている。本実施例では、規定値を80%としている。図5の例では、バルブID“M”のON-OFFバルブの圧力計測値が70%なので、バルブIDと圧力計測値と「漏れあり」という判定結果とが、他のON-OFFバルブの結果と異なる色(図5の例では黒地に白)で表示されている。
【0039】
判定結果提示部7は、ON-OFFバルブを診断対象としていることを伝える情報を、画面70の領域701に表示している。また、判定結果提示部7は、予め用意されている画像データを用いて、図5に示すように診断対象のON-OFFバルブが配設されている箇所の配管計装図702を画面70に表示するようにしてもよい。
【0040】
本実施例では、ON-OFFバルブの操作器に空気の内通漏れの可能性があることを検知できるので、オペレータがメンテナンス候補のON-OFFバルブを選定する作業を支援することができる。本実施例では、ON-OFFバルブを利用する生産設備におけるロスを低減することができ、従来に比べて生産設備を安定的に稼働させることが期待できる。
【0041】
図6は電磁弁への入力電気信号と操作器空気圧力との関係の1例を示す図である。図6の例では、説明を明瞭にするため、圧力の変化を簡略化している。コントローラから電磁弁へ出力された制御指令である入力電気信号Vinは、“H”レベルのときに、電磁弁を開状態にする開信号となる。Prefは正常時の操作器空気圧力を示し、Pmは内通漏れ発生時の操作器空気圧力を示している。操作器の内通漏れを判定する規定値は、PrefとPmとの間の数値で適宜選択すればよい。
【0042】
[第2の実施例]
次に、本発明の第2の実施例について説明する。本実施例は、上記の発明の原理2に対応する実施例である。図7は本実施例に係るバルブメンテナンス支援装置の構成を示すブロック図である。本実施例のバルブメンテナンス支援装置は、バルブID記憶部1と、電磁弁開信号取得部2と、操作器圧力計測部3と、操作器圧力取得部4と、操作器圧力記憶部5と、内通漏れ判定部6と、ON-OFFバルブに設けられた開度計測部から開度計測値を取得する開度取得部8と、開度計測値を送信元のON-OFFバルブのIDと共に記憶する開度記憶部9と、内通漏れの可能性があると判定されたON-OFFバルブについて、開度計測値を参照し、開閉動作が正常と判明したON-OFFバルブの操作器圧力計測部3に不具合が発生している可能性があると判定する計測不具合判定部10と、内通漏れ判定部6の判定結果に加えて、計測不具合判定部10の判定結果を提示する判定結果提示部11とを備えている。
【0043】
図8は、本実施例のON-OFFバルブ200の構造の1例を示す図であり、図3に示した構成に開度計測部12を追加した例を示している。開度計測部12の追加位置については、図8の位置に限られるものではなく、ON-OFFバルブ200の開度が計測できる位置であればよい。
【0044】
図9は開度計測部12の構成を示すブロック図である。開度計測部12は、ON-OFFバルブ200のステム(弁棒)203の回転角度を連続的に検出することにより、バルブ開度を連続的に計測する開度センサ120と、開度計測部12が取り付けられたON-OFFバルブ200に固有のバルブIDを記憶するバルブID記憶部121と、バルブメンテナンス支援装置に対して開度計測値とバルブIDとを周期的に送信する送信部122とを備えている。
【0045】
送信部122は、バルブID記憶部121に記憶されているバルブIDを、開度計測値に付加して送信する。なお、ON-OFFバルブ200の開度を連続的に取得する必要があるので、開度計測値の計測・送信周期は、ON-OFFバルブ200の開閉所要時間の生じ得る最小値よりも短いことが必要である。
【0046】
図10は本実施例のバルブメンテナンス支援装置の動作を説明するフローチャートである。バルブID記憶部1と電磁弁開信号取得部2と操作器圧力計測部3と操作器圧力取得部4と操作器圧力記憶部5と内通漏れ判定部6の動作(図10ステップS200~S205)は、図2のステップS100~S105で説明したとおりである。
【0047】
開度取得部8は、各ON-OFFバルブ200の開度計測部12から開度計測値を受信し(図10ステップS206)、受信した開度計測値とこの開度計測値に付加されていたバルブIDと開度計測値の受信時刻とを開度記憶部9に格納する(図10ステップS207)。なお、図10では明記していないが、開度取得部8は、ステップS206,S207の処理を周期的に実施する。
【0048】
次に、計測不具合判定部10は、内通漏れ判定部6がON-OFFバルブ200の操作器204に空気の内通漏れの可能性があると判定した場合に(図10ステップS205)、内通漏れの可能性があると判定されたON-OFFバルブ200について、開度記憶部9に記憶された開度計測値を参照し、開閉動作が正常かどうかを判定する(図10ステップS208)。
【0049】
図11は計測不具合判定部10による判定処理を説明するフローチャートである。計測不具合判定部10は、内通漏れの可能性があると判定されたON-OFFバルブ200について、開度記憶部9に記憶された開度計測値に基づいてバルブ開度の立ち上がり時点を求める(図11ステップS300)。また、計測不具合判定部10は、内通漏れの可能性があると判定されたON-OFFバルブ200について、操作器圧力記憶部5に記憶された圧力計測値に基づいて操作器空気圧力の立ち上がり時点を求める(図11ステップS301)。
【0050】
上記のとおり、開度記憶部9には、時系列に得られた開度計測値とバルブIDと開度計測値の受信時刻とが記憶されているので、バルブ開度の立ち上がり時点を求めることが可能である。図12はバルブ開度の立ち上がり時点の導出方法を説明する図である。開度計測値とその受信時刻とから、例えば図12のようなバルブ開度変化曲線が得られたとする。計測不具合判定部10は、バルブ開度Aが整定値Acontに対して規定開度幅以上大きく変化したときに、その変化の傾きが最大となったバルブ開度変化曲線上の点を求め、この点の接線L2と整定値Acontの延長線L1とが交わる時点を、バルブ開度Aの立ち上がり時点taとすればよい。
【0051】
同様に、操作器圧力記憶部5には、時系列に得られた圧力計測値とバルブIDと圧力計測値の受信時刻とが記憶されている。計測不具合判定部10は、操作器空気圧力Pがその整定値に対して規定圧力幅以上大きく変化したときに、その変化の傾きが最大となった操作器空気圧力変化曲線上の点を求め、この点の接線と整定値の延長線とが交わる時点を、操作器空気圧力Pの立ち上がり時点tpとすればよい。
【0052】
そして、計測不具合判定部10は、操作器空気圧力Pの立ち上がり時点tpとバルブ開度Aの立ち上がり時点taとの時間差(不感帯時間)ta-tpを、診断指標として算出する(図11ステップS302)。
【0053】
計測不具合判定部10は、診断指標が予め規定された閾値未満の場合(図11ステップS303においてYES)、内通漏れの可能性があると判定されたON-OFFバルブ200の開閉動作が正常と判定し(図11ステップS304)、診断指標が閾値以上の場合(ステップS303においてNO)、ON-OFFバルブ200の開閉動作が異常と判定する(図11ステップS305)。
以上のようにして、ON-OFFバルブ200の開閉動作が正常かどうかを判定することができる。
【0054】
計測不具合判定部10は、内通漏れの可能性があると判定されたON-OFFバルブ200の開閉動作が正常と判定した場合、このON-OFFバルブ200の操作器圧力計測部3に不具合(計測誤差要因)が発生している可能性があると判定する(図10ステップS209)。
【0055】
判定結果提示部11は、内通漏れ判定部6と計測不具合判定部10の判定結果をオペレータに対して提示する(図10ステップS210)。具体的には、判定結果提示部11は、操作器204に内通漏れの可能性ありと判定されたON-OFFバルブ200について、このバルブのIDと圧力計測値と内通漏れ判定部6の判定結果とを通常と異なる形式(例えば赤色で表示)で表示し、操作器圧力計測部3に不具合が発生している可能性ありと判定されたON-OFFバルブ200について、このバルブのIDと計測不具合判定部10の判定結果とを通常と異なる形式(例えば赤色で表示)で表示する。また、判定結果提示部11は、内通漏れ判定部6によって正常と判定されたON-OFFバルブ200のIDと圧力計測値とを通常の形式(例えば黒色で表示)で表示する。
【0056】
こうして、図10のステップS200~S210の処理が定期的に、あるいはオペレータから診断実行の指示があったときに行われる。
【0057】
以上のように、本実施例では、内通漏れの可能性があると判定したON-OFFバルブについて、開度計測値を参照し、開閉動作が正常と判明したON-OFFバルブの操作器圧力計測部に不具合が発生している可能性があると判定する。これにより、本実施例では、内通漏れ判定部6による判定結果が、操作器の不具合による結果か、操作器圧力計測部の不具合による結果かを推測することができる。
【0058】
[第3の実施例]
次に、本発明の第3の実施例について説明する。本実施例は、上記の発明の原理2に対応する別の実施例である。図13は本実施例に係るバルブメンテナンス支援装置の構成を示すブロック図である。本実施例のバルブメンテナンス支援装置は、バルブID記憶部1と、電磁弁開信号取得部2と、操作器圧力計測部3と、操作器圧力取得部4と、操作器圧力記憶部5と、内通漏れ判定部6aと、開度取得部8と、開度記憶部9と、圧力計測値が規定値に到達していないON-OFFバルブについて、開度計測値を参照し、開閉動作が異常と判明したON-OFFバルブの操作器圧力計測部3に不具合が発生していないと判定する計測正常判定部13と、内通漏れ判定部6aの判定結果を提示する判定結果提示部14とを備えている。
【0059】
図14は本実施例のバルブメンテナンス支援装置の動作を説明するフローチャートである。バルブID記憶部1と電磁弁開信号取得部2と操作器圧力計測部3と操作器圧力取得部4と操作器圧力記憶部5の動作(図14ステップS400~S402)は、図2のステップS100~S102で説明したとおりである。
【0060】
開度取得部8と開度記憶部9の動作(図14ステップS403,S404)は、図10のステップS206,S207で説明したとおりである。
計測正常判定部13は、バルブID記憶部1にバルブIDが登録されている、メンテナンスの候補となり得るON-OFFバルブ200について、操作器圧力記憶部5に記憶された圧力計測値が規定値に到達しているかどうかを判定する(図14ステップS405)。
【0061】
計測正常判定部13は、圧力計測値が規定値に到達していないON-OFFバルブ200がある場合、このON-OFFバルブ200について、開度記憶部9に記憶された開度計測値を参照し、開閉動作に異常があるかどうかを判定する(図14ステップS406)。このステップS406の処理は、図11で説明した計測不具合判定部10の処理と同様に実施できるので、詳細な説明は省略する。
【0062】
計測正常判定部13は、圧力計測値が規定値に到達していないON-OFFバルブ200について開閉動作が異常と判定した場合、このON-OFFバルブ200の操作器圧力計測部3に不具合(計測誤差要因)が発生していないと判定する(図14ステップS407)。
【0063】
内通漏れ判定部6aは、圧力計測値が規定値に到達しているON-OFFバルブ200の操作器204を正常と判定し(図14ステップS408)、圧力計測値が規定値に到達しておらず、かつ操作器圧力計測部3に不具合が発生していないと判定されたON-OFFバルブ200について、操作器204に空気の内通漏れの可能性があると判定する(図14ステップS409)。
【0064】
判定結果提示部14は、内通漏れ判定部6aの判定結果をオペレータに対して提示する(図14ステップS410)。具体的には、判定結果提示部14は、操作器204に内通漏れの可能性ありと判定されたON-OFFバルブ200について、このバルブのIDと圧力計測値と判定結果とを通常と異なる形式(例えば赤色で表示)で表示し、正常と判定されたON-OFFバルブ200のIDと圧力計測値とを通常の形式(例えば黒色で表示)で表示すればよい。
【0065】
図14のステップS400~S410の処理が定期的に、あるいはオペレータから診断実行の指示があったときに行われる。
こうして、本実施例では、第2の実施例と同様の効果を得ることができる。
【0066】
[第4の実施例]
次に、本発明の第4の実施例について説明する。本実施例は、第1~第3の実施例の実装例を説明するものである。図15はプラントとその機器管理システムの構成を示す図である。本実施例では、バルブID“A”,“M”のON-OFFバルブ200-A,200-Mが流路15-1に配設され、バルブID“C”のON-OFFバルブ200-Cが流路15-3に配設されているものとする。図15における16-A,16-C,16-Mは流量計測器、17はタンク、18は圧力発信器である。なお、図15では、バルブIDが“A”,“C”,“M”以外のバルブについては記載を省略している。
【0067】
石油、化学系のプラントの機器管理システムには、プラントの各機器を制御・管理する管理装置19が設けられている。第1~第3の実施例で説明したバルブID記憶部1と電磁弁開信号取得部2と開度取得部8と開度記憶部9と操作器圧力計測部3と操作器圧力取得部4と操作器圧力記憶部5については、プラント固有の膨大な情報を扱うので、管理装置19に実装されることが好ましい。
【0068】
一方、内通漏れ判定部6,6aと計測不具合判定部10と計測正常判定部13と判定結果提示部7,11,14とは、原則的にバルブのメンテナンス要否判断時のみ必要な処理を提供するものである。また、メンテナンス実施者(メンテナンス受託企業の作業担当者)は、プラントオーナ企業から委託されてプラントのメンテナンスを実施するのが一般的である。したがって、不特定多数のプラントを対象にすることを想定して、メンテナンス受託企業の作業担当者(オペレータ)が持ち歩く携帯型のコンピュータ20に、内通漏れ判定部6,6aと計測不具合判定部10と計測正常判定部13と判定結果提示部7,11,14とを実装することが好ましい。
【0069】
プラントの管理装置19とコンピュータ20とは、メンテナンス作業実施時にイーサネット(登録商標)などの通信機能を利用して一時的に接続される。
オペレータがコンピュータ20上のアプリケーションソフトウエアを起動すると、コンピュータ20のCPUは、メモリに格納されたプログラムに従って処理を実行し、内通漏れ判定部6,6aと計測不具合判定部10と計測正常判定部13と判定結果提示部7,11,14としての機能を実現する。
【0070】
内通漏れ判定部6は、管理装置19上のバルブID記憶部1からバルブIDを読み込むと共に、操作器圧力記憶部5に記憶された圧力計測値を読み込み、圧力計測値が規定値に到達しているかどうかを判定する(図2ステップS103)。判定結果提示部7は、内通漏れ判定部6の判定結果をコンピュータ20のディスプレイに表示する(図2ステップS106)。
【0071】
オペレータは、表示されたバルブIDと圧力計測値と判定結果に基づき、特に留意すべきON-OFFバルブ200を確認する。オペレータは、表示された事項を確認した後で、コンピュータ20と管理装置19との接続を解除する。
こうして、第1の実施例で説明したバルブメンテナンス支援装置を実際のプラントに適用することができる。
【0072】
また、第2の実施例を実際のプラントに適用する場合、内通漏れ判定部6は、管理装置19上のバルブID記憶部1からバルブIDを読み込むと共に、操作器圧力記憶部5に記憶された圧力計測値を読み込み、圧力計測値が規定値に到達しているかどうかを判定する(図10ステップS203)。
【0073】
計測不具合判定部10は、管理装置19上の開度記憶部9に記憶された開度計測値を読み込み、内通漏れの可能性があると判定されたON-OFFバルブ200について、開閉動作が正常かどうかを判定する(図10ステップS208)。判定結果提示部11は、内通漏れ判定部6と計測不具合判定部10の判定結果をコンピュータ20のディスプレイに表示する(図10ステップS210)。
【0074】
また、第3の実施例を実際のプラントに適用する場合、計測正常判定部13は、管理装置19上のバルブID記憶部1からバルブIDを読み込むと共に、操作器圧力記憶部5に記憶された圧力計測値を読み込み、圧力計測値が規定値に到達しているかどうかを判定する(図14ステップS405)。
【0075】
計測正常判定部13は、管理装置19上の開度記憶部9に記憶された開度計測値を読み込み、圧力計測値が規定値に到達していないON-OFFバルブ200について、開閉動作に異常があるかどうかを判定する(図14ステップS406)。内通漏れ判定部6aは、管理装置19上の操作器圧力記憶部5に記憶された圧力計測値を読み込み、ON-OFFバルブ200の操作器204に内通漏れの可能性があるかどうかを判定する(図14ステップS408,S409)。判定結果提示部14は、内通漏れ判定部6aの判定結果をコンピュータ20のディスプレイに表示する(図14ステップS410)。
【0076】
第1~第4の実施例で説明したバルブメンテナンス支援装置は、CPU(Central Processing Unit)、記憶装置及びインターフェースを備えたコンピュータと、これらのハードウェア資源を制御するプログラムによって実現することができる。このコンピュータの構成例を図16に示す。
【0077】
コンピュータは、CPU300と、記憶装置301と、インターフェース装置(I/F)302とを備えている。I/F302には、例えばバルブ、管理装置、ディスプレイ等が接続される。このようなコンピュータにおいて、本発明のバルブメンテナンス支援方法を実現させるためのプログラムは記憶装置301に格納される。CPU300は、記憶装置301に格納されたプログラムに従って第1~第4の実施例で説明した処理を実行する。
【0078】
なお、第4の実施例に示したようにバルブメンテナンス支援装置を管理装置19とコンピュータ20に分けて実装する場合には、これらの各々を図16のような構成で実現すればよい。
【産業上の利用可能性】
【0079】
本発明は、バルブメンテナンス作業を支援する技術に適用することができる。
【符号の説明】
【0080】
1…バルブID記憶部、2…電磁弁開信号取得部、3…操作器圧力計測部、4…操作器圧力取得部、5…操作器圧力記憶部、6,6a…内通漏れ判定部、7,11,14…判定結果提示部、8…開度取得部、9…開度記憶部、10…計測不具合判定部、12…開度計測部、13…計測正常判定部、15-1,15-3…流路、16-A,16-C,16-M…流量計測器、17…タンク、18…圧力発信器、19…管理装置、20…コンピュータ、30…圧力センサ、31,121…バルブID記憶部、32,122…送信部、120…開度センサ。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
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図19
図20