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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024119188
(43)【公開日】2024-09-03
(54)【発明の名称】固形燃料の製造方法及び固形燃料
(51)【国際特許分類】
   C10L 5/48 20060101AFI20240827BHJP
   C08J 11/06 20060101ALI20240827BHJP
【FI】
C10L5/48 ZAB
C08J11/06
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023025913
(22)【出願日】2023-02-22
(71)【出願人】
【識別番号】519367706
【氏名又は名称】株式会社エコ・マイニング
(74)【代理人】
【識別番号】100067356
【弁理士】
【氏名又は名称】下田 容一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100160004
【弁理士】
【氏名又は名称】下田 憲雅
(74)【代理人】
【識別番号】100120558
【弁理士】
【氏名又は名称】住吉 勝彦
(74)【代理人】
【識別番号】100148909
【弁理士】
【氏名又は名称】瀧澤 匡則
(74)【代理人】
【識別番号】100192533
【弁理士】
【氏名又は名称】奈良 如紘
(72)【発明者】
【氏名】相田 辰
【テーマコード(参考)】
4F401
4H015
【Fターム(参考)】
4F401AA09
4F401AA10
4F401AA11
4F401AA13
4F401AA17
4F401AA22
4F401AA23
4F401AA24
4F401AA40
4F401BA04
4F401CA14
4F401CA58
4F401CA79
4F401CB23
4F401FA01Y
4H015AA01
4H015AA17
4H015AB01
4H015BA04
4H015BA13
4H015BB06
4H015CA01
4H015CA03
4H015CB01
(57)【要約】
【課題】廃エンプラを対象とし、リサイクルコストが嵩まないようなリサイクル技術を提供する。
【解決手段】汎用プラスチック片28とエンプラ片29とを圧縮・整粒機30に投入して柱状の固形燃料50を得る。このときに、多孔エアヘッダ39から冷却用エア38をリングダイ31へ吹き付けることで、リングダイ31の温度上昇を防止する。これにより、固体状態のエンプラ片29を溶けた後に凝固した汎用プラスチックで包む形態の固形燃料50が得られる。格別の熱エネルギーを外から加えることなく固形燃料が製造でき、リサイクルコストが嵩まない。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
廃プラスチックを主原料とする固形燃料の製造方法であって、
前記廃プラスチックは、汎用プラスチックと、この汎用プラスチックより融点が高いエンジニアリングプラスチックとからなり、このエンジニアリングプラスチックを、エンプラと略称するときに、
スクリーンを備えた一軸破砕機と、多数のダイ孔を有するリングダイ、このリングダイに収納されるローラ及び前記リングダイの外に配置されるカッタを備えた圧縮・整粒機とを準備する工程と、
前記一軸破砕機で、前記汎用プラスチックを破砕することで汎用プラスチック片を得る第1破砕工程と、
前記スクリーンを交換し、前記一軸破砕機で、前記エンプラを破砕することでエンプラ片を得る第2破砕工程と、
前記汎用プラスチック片及び前記エンプラ片を、前記圧縮・整粒機へ投入し、前記ローラで圧縮し、前記ダイ孔から押し出し、前記カッタで所定の長さに切断することで柱状の固形燃料を得る圧縮・整粒工程とからなり、
この圧縮・整粒工程では、前記リングダイの温度が、前記汎用プラスチックの融点以上で前記エンプラの融点未満となるように、温度制御を実施することを特徴とする固形燃料の製造方法。
【請求項2】
請求項1記載の固形燃料の製造方法で製造される固形燃料であって、
前記エンプラ片同士が、溶けた後に凝固した汎用プラスチックで接合されていることを特徴とする固形燃料。
【請求項3】
廃プラスチックを主原料とする固形燃料の製造方法であって、
前記廃プラスチックは、汎用プラスチックと、この汎用プラスチックより融点が高いエンジニアリングプラスチックとからなり、このエンジニアリングプラスチックを、エンプラと略称するときに、
スクリーンを備えた一軸破砕機と、多数のダイ孔を有するリングダイ、このリングダイに収納されるローラ及び前記リングダイの外に配置されるカッタを備えた圧縮・整粒機とを準備する工程と、
前記一軸破砕機で、前記汎用プラスチックを破砕することで汎用プラスチック片を得る第1破砕工程と、
前記スクリーンを交換し、前記一軸破砕機で、前記エンプラを破砕することでエンプラ片を得る第2破砕工程と、
さらに前記スクリーンを交換し、前記一軸破砕機で、前記エンプラを破砕することで前記エンプラ片より小径のエンプラ細片を得る第3破砕工程と、
前記汎用プラスチック片、前記エンプラ片及び前記エンプラ細片を、前記圧縮・整粒機へ投入し、前記ローラで圧縮し、前記ダイ孔から押し出し、前記カッタで所定の長さに切断することで柱状の固形燃料を得る圧縮・整粒工程とからなり、
この圧縮・整粒工程では、前記リングダイの温度が、前記汎用プラスチックの融点以上で前記エンプラの融点未満となるように、温度制御を実施することを特徴とする固形燃料の製造方法。
【請求項4】
請求項3記載の固形燃料の製造方法で製造される固形燃料であって、
前記エンプラ細片を前記エンプラ片で囲うようにして、前記エンプラ片と前記エンプラ細片が、溶けた後に凝固した汎用プラスチックで接合されていることを特徴とする固形燃料。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エンジニアリングプラスチック(以下「エンプラ」とも言う。)を含む廃プラスチックのリサイクル技術に関する。
【背景技術】
【0002】
プラスチック製品の普及は、目覚ましい。プラスチックは石油由来であるため、廃プラスチックのリサイクルが強く求められている。
【0003】
ところで、プラスチックは、熱可塑性プラスチックと熱硬化性プラスチックに分類される。
さらに、熱可塑性プラスチックは、汎用ブラスチックとエンプラに分類される。
さらに、エンプラは、汎用エンプラとスーパーエンプラに分類される。
これらの詳細を次の表に示す。
【0004】
【表1】
【0005】
なお、※を付したPVC及びPVDCは、燃やすと塩素ガスが発生するため、本発明の固形燃料には不適である。
汎用プラスチックの耐熱は100℃程度である。この温度を超えて使用される場合には汎用エンプラが採用される。より高い温度で使用される場合にはスーパーエンプラが採用される。
【0006】
汎用エンプラ及びスーパーエンプラからなるエンプラにつき、その生産量の一例を次の表に示す。
【0007】
【表2】
【0008】
生産量は統計年度により変動するが、近年における生産量の概算と比率を知ることができる。
生産量の大半を占める汎用プラスチックは、使用後はマテリアルリサイクル、ケミカルリサイクル、サーマルリサイクルと呼ばれる3つのリサイクル手法により、盛んに再利用される。
【0009】
対して、エンプラについては、生産量が少ないこともあり、リサイクル化が遅れており、多くが埋め立て処理又は焼却処理されている。
しかし、エンプラについても再利用が求められる中、リサイクル技術が各種提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【0010】
特許文献1の技術では、廃エンプラを破砕し、破砕片を熱分解槽へ収容する。熱分解槽で300~600℃に加熱・溶融し、熱分解しガス化する。得られたガスを冷却槽で冷却することで油(分解油)を得る。
【0011】
特許文献1の技術では、エンプラを溶融するため、熱エネルギーが必須であり、ガス代又は電気代が嵩み、リサイクルコストが嵩む。油(分解油)を製品化して得られる利益より、リサイクルコストが高いことが少なくない。
結果、上述したように、多くの廃エンプラは、ごみとして埋め立て処理又は焼却処理される。
【0012】
しかし、現在主流となっている廃エンプラの埋め立て処理又は焼却処理には、次に述べる不具合がある。
汎用プラスチックの生産は、いわゆる非先進国でも増々盛んになる。そのため、先進国の一つである我が国では、汎用プラスチックの生産量が減少する。また、産業界からは、より高強度でより高温で使えるエンプラが要求され、エンプラの生産が増加する。
そのため、上記表2で示した生産比率は、将来的にはエンプラの比率が増大する。
【0013】
エンプラの生産比率が増大した場合、エンプラの埋め立て処理や焼却処理は、好ましいとは言えない。
逆に、リサイクルコストが嵩まないようなリサイクル技術が確立されれば、エンプラの再利用が促進される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0014】
【特許文献1】特開2013-151612号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
本発明は、廃エンプラを対象とし、リサイクルコストが嵩まないようなリサイクル技術を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明者らは、先に特開2022-163288号公報に記載する固形燃料を製造している。そして、この固形燃料の製造に供した製造装置を用いて、新たなリサイクル技術の研究に着手した。
【0017】
図1は新たなリサイクル技術の研究に用いた圧縮・整粒装置の原理図である。
図1において、破砕された廃プラスチック片11がリングダイ12の内へ投入される。リングダイ12は所定速度で回転し、このリングダイ12の内側に配置されるローラ13も同期して回転する。
【0018】
投入された廃プラスチック片11はリングダイ12の内周面に沿って周回する。この周回の過程で、ローラ13で圧縮され、一部がダイ孔14を通り、突出する。
ローラ13で圧縮され、ダイ孔14で圧縮されつつ通過するときに、摩擦熱が発生し、廃プラスチック片11は適度に溶融する。
突出したものを、カッタ15で切断することで、柱状の固形燃料16が得られる。
【0019】
廃プラスチック片11は、エンプラの比率が0~5%で残りの95~100%が汎用プラスチックであるときは、良好な固形燃料16が得られる。
次に、人為的にエンプラの比率を15%とし、汎用プラスチックの比率を85%とすると、ダイ孔14に詰まりが認められ、生産に支障がでた。
【0020】
本発明者らは、詰まりの発生プロセスを次のように推定した。
エンプラは、汎用プラスチックより機械的強度が大きく、耐熱温度が高い。
未溶融状態で固いエンプラ片がローラ13とリングダイ12との間で擦られ大きな摩擦熱を発する。
結果として温度が上がり過ぎる。温度が上がり過ぎると、汎用プラスチックが溶け過ぎて、材料が団子(だんご)状になり、ダイ孔14に詰まる。
【0021】
そこで、本発明者らは、改善を図るべく色々と試みた。試みのうちの一つが空気でリングダイ12を冷却することである。
具体的には、エアホースの先をリングダイ12に向け、冷たい空気をリングダイ12の外周面に吹きかけたところ、詰まりが改善された。
以上の知見から、完成した本発明は次の通りである。
【0022】
すなわち、請求項1に係る発明は、廃プラスチックを主原料とする固形燃料の製造方法であって、
前記廃プラスチックは、汎用プラスチックと、この汎用プラスチックより融点が高いエンジニアリングプラスチックとからなり、このエンジニアリングプラスチックを、エンプラと略称するときに、
スクリーンを備えた一軸破砕機と、多数のダイ孔を有するリングダイ、このリングダイに収納されるローラ及び前記リングダイの外に配置されるカッタを備えた圧縮・整粒機とを準備する工程と、
前記一軸破砕機で、前記汎用プラスチックを破砕することで汎用プラスチック片を得る第1破砕工程と、
前記スクリーンを交換し、前記一軸破砕機で、前記エンプラを破砕することでエンプラ片を得る第2破砕工程と、
前記汎用プラスチック片及び前記エンプラ片を、前記圧縮・整粒機へ投入し、前記ローラで圧縮し、前記ダイ孔から押し出し、前記カッタで所定の長さに切断することで柱状の固形燃料を得る圧縮・整粒工程とからなり、
この圧縮・整粒工程では、前記リングダイの温度が、前記汎用プラスチックの融点以上で前記エンプラの融点未満となるように、温度制御を実施することを特徴とする。
【0023】
請求項2に係る発明は、請求項1記載の固形燃料の製造方法で製造される固形燃料であって、
前記エンプラ片同士が、溶けた後に凝固した汎用プラスチックで接合されていることを特徴とする。
【0024】
請求項3に係る発明は、廃プラスチックを主原料とする固形燃料の製造方法であって、
前記廃プラスチックは、汎用プラスチックと、この汎用プラスチックより融点が高いエンジニアリングプラスチックとからなり、このエンジニアリングプラスチックを、エンプラと略称するときに、
スクリーンを備えた一軸破砕機と、多数のダイ孔を有するリングダイ、このリングダイに収納されるローラ及び前記リングダイの外に配置されるカッタを備えた圧縮・整粒機とを準備する工程と、
前記一軸破砕機で、前記汎用プラスチックを破砕することで汎用プラスチック片を得る第1破砕工程と、
前記スクリーンを交換し、前記一軸破砕機で、前記エンプラを破砕することでエンプラ片を得る第2破砕工程と、
さらに前記スクリーンを交換し、前記一軸破砕機で、前記エンプラを破砕することで前記エンプラ片より小径のエンプラ細片を得る第3破砕工程と、
前記汎用プラスチック片、前記エンプラ片及び前記エンプラ細片を、前記圧縮・整粒機へ投入し、前記ローラで圧縮し、前記ダイ孔から押し出し、前記カッタで所定の長さに切断することで柱状の固形燃料を得る圧縮・整粒工程とからなり、
この圧縮・整粒工程では、前記リングダイの温度が、前記汎用プラスチックの融点以上で前記エンプラの融点未満となるように、温度制御を実施することを特徴とする。
【0025】
請求項4に係る発明は、請求項3記載の固形燃料の製造方法で製造される固形燃料であって、
前記エンプラ細片を前記エンプラ片で囲うようにして、前記エンプラ片と前記エンプラ細片が、溶けた後に凝固した汎用プラスチックで接合されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0026】
請求項1に係る発明では、エンプラを汎用プラスチックに混ぜて固形燃料にする。圧縮・整粒工程では、エンプラ及び汎用プラスチックからなる廃プラスチックをローラで圧縮しダイ孔へ押し出すときの摩擦熱で溶融するため、外から熱エネルギーを加える必要はない。むしろ、温度が上がり過ぎないようにリングダイの温度を適温に制御する。
【0027】
仮に、リングダイの温度が、汎用プラスチックの融点未満であると、汎用プラスチックの溶融が不十分となり、エンプラ片同士を十分に接合させることができない。また、リングダイの温度が、エンプラの融点以上であると、汎用プラスチックが団子状になり、製造に支障がでる。
リングダイの温度が、汎用プラスチックの融点以上でエンプラの融点未満であれば、汎用プラスチックを過不足なく適度に溶融させることができ、好ましい品質の固形燃料が製造可能となる。
【0028】
特許文献1の技術では、廃エンプラを300~600℃に加熱・溶融するため、外部から大量の熱エネルギーを供給する必要があり、そのためにリサイクルコストが嵩んだ。
対して、本発明は、熱エネルギーを供給する必要がない。そのため、本発明によれば、廃エンプラを対象とし、リサイクルコストが嵩まないようなリサイクル技術が提供される。
【0029】
請求項2に係る発明の固形燃料では、エンプラ片同士が汎用プラスチックで接合されている。
汎用プラスチックがバインダーの役割を発揮するため、エンプラ片がばらばらになることはなく、固形燃料の強度が良好に維持される。
【0030】
請求項3に係る発明では、請求項1と同様に、エンプラを汎用プラスチックに混ぜて固形燃料にする。圧縮・整粒工程では、エンプラ及び汎用プラスチックからなる廃プラスチックをローラで圧縮しダイ孔へ押し出すときの摩擦熱で溶融するため、外から熱エネルギーを加える必要はない。むしろ、温度が上がり過ぎないようにリングダイの温度を適温に制御する。
【0031】
特許文献1の技術では、廃エンプラを300~600℃に加熱・溶融するため、外部から大量の熱エネルギーを供給する必要があり、そのためにリサイクルコストが嵩んだ。
対して、本発明は、熱エネルギーを供給する必要がない。そのため、本発明によれば、廃エンプラを対象とし、リサイクルコストが嵩まないようなリサイクル技術が提供される。
【0032】
請求項4に係る発明の固形燃料では、請求項2と同様に、汎用プラスチックがバインダーの役割を発揮するため、エンプラ片及びエンプラ細片がばらばらになることはなく、固形燃料の強度が良好に維持される。
加えて、請求項4では、エンプラ細片をエンプラ片で囲うようにしたので、エンプラをより高い密度で配列することができ、よりエンプラ比率の高い固形燃料が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0033】
図1】新たなリサイクル技術の研究に用いた圧縮・整粒装置の原理図である。
図2】本発明で使用する一軸破砕機の原理図である。
図3】(a)は汎用プラスチック片を説明する図、(b)はエンプラ片を説明する図である。
図4】本発明で使用する圧縮・整粒機の原理図である。
図5】廃プラスチックの温度と溶融性の相関を示すグラフである。
図6】(a)は固形燃料の斜視図であり、(b)は(a)のb部を拡大した模式図である。
図7】(a)は汎用プラスチック片を説明する図、(b)はエンプラ片を説明する図、(c)はエンプラ細片を説明する図である。
図8】(a)は固形燃料の変更例を示す斜視図であり、(b)は(a)のb部を拡大した模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0034】
本発明の実施の形態を添付図に基づいて以下に説明する。
【実施例0035】
[一軸破砕機]
図2に示すような一軸破砕機20を準備する。
図2に示すように、一軸破砕機20は、ホッパ21と、このホッパ21の下に配置される一軸の回転刃22と、この回転刃22の概ね下半分を囲うスクリーン23と、回転刃22に向き合うように配置される固定刃24と、回転刃22へ廃プラスチック25を押し付けるプッシャー26とを主要素とする装置である。
【0036】
廃プラスチック25は、回転刃22と固定刃24とのせん断作用により破砕される。破砕片は固定刃24と共に周回し、繰り返しせん断され、破片の大きさが徐々に小さくなる。破片の大きさが、スクリーン23の目より小さくなると、スクリーン23を通過して落下する。
【0037】
廃プラスチック25は、汎用プラスチック25Aとこの汎用プラスチック25Aより融点が高いエンプラ25Bとからなる。汎用プラスチック25Aは正確には廃汎用プラスチック25Aであるが、便宜上「廃」を省いた。同様に、エンプラ25Bは廃エンプラ25Bであるが、「廃」を省いた。
【0038】
よって、ホッパ21へは、汎用プラスチック25A又はエンプラ25Bを選択的に投入する。
【0039】
[汎用プラスチック片]
図3(a)に示すように、汎用プラスチック片28を得るために、第1のスクリーン23Aを準備する。この第1のスクリーン23Aの目の大きさd1は、8~80mmとする。
すると、汎用プラスチック(図2、符号25A)を一軸破砕機(図2、符号20)により破砕することで、外径が8mm以上である汎用プラスチック片28が得られる。
【0040】
[エンプラ片]
図3(b)に示すように、エンプラ片29を得るために、第2のスクリーン23Bを準備する。この第2のスクリーン23Bの目の大きさd2は、4~7mmとする。
すると、エンプラ(図2、符号25B)を一軸破砕機(図2、符号20)により破砕することで、外径が7mm以下であるエンプラ片29が得られる。
【0041】
[圧縮・整粒機]
図4に示すような圧縮・整粒機30を準備する。
図4に示すように、圧縮・整粒機30は、汎用プラスチック片28及びエンプラ片29を回転ドラム状のリングダイ31に導く投入ダクト32と、リングダイ31の内に配置されるローラ33、34と、リングダイ31に開けた多数のダイ孔35と、リングダイ31の外に配置されるカッタ36と、ケーシング37と、このケーシング37とリングダイ31との間に配置されリングダイ31の外周面へ冷却用エア38を吹き付ける多孔エアヘッダ39と、この多孔エアヘッダ39へ配管41を介して冷却用エアを送る送風機42と、配管41に介設したエア流量制御弁43と、リングダイ31の温度を計測する非接触型温度センサ44と、この非接触型温度センサ44で計測した温度が温度設定器45で設定した温度に合致するようにエア流量制御弁43の弁開度を調整する制御部46とからなる。非接触型温度センサ44で計測した温度を目視することができる温度計47を設けることはなお好ましい。
【0042】
図5に示すように、横軸を温度、縦軸を溶融性としたとき、汎用プラスチックは常温から90℃前後までの範囲は固体であり、90℃を超えると溶融が始まり、130℃を超えると団子状になり、さらに温度を高めると発煙する。
汎用エンプラは130℃を超えると溶融が始まる。
【0043】
[融点]
樹脂の種類によって融点が異なるために、一義的に融点を決めることはできないが、本発明では、汎用プラスチックの融点を90℃、汎用エンプラの融点を130℃と規定する。
【0044】
[制御温度]
温度に係る制御範囲は、汎用プラスチックの融点以上でエンプラの融点以下と定めたときに、制御範囲は90~130℃となる。制御範囲が広いと制御が容易であるという利点はあるが、範囲から外れたときに不良品が直ぐに発生するという欠点がある。
【0045】
そこで、上下に各々10℃の余裕を見込んで、100~120℃をより好ましい制御範囲とすることが望まれる。この範囲であれば、制御に精密さが求められるという欠点があるものの、不良品の発生を抑制することができると言う利点がある。
よって、温度に係る制御範囲を、90~130℃にするか、100~120℃にするかは、適宜選択すればよい。
【0046】
図4において、投入ダクト32を介して投入された汎用プラスチック片28とエンプラ片29は、リングダイ31の内を周回しつつ、ローラ33、34でリングダイ31へ圧縮され、一部がダイ孔35を通じて押し出される。突出したものがカッタ36で所定の長さに切断され、固形燃料50となる。
【0047】
リングダイ31は、適温になるように温度に制御されているため、ダイ孔35を通過するときに、エンプラ片29は固体のままで、汎用プラスチック片28は適度に軟化、溶融する。すると、エンプラ片29を溶けた汎用プラスチックが包む、又は、エンプラ片29同士が溶けた汎用プラスチックで結合される。
得られた固形燃料50の構造を図6(a)、(b)で詳しく説明する。
【0048】
図6(a)に示すように、固形燃料50は円柱状を呈する。
外径Dは例えば10mmである。外径Dはダイ孔(図4、符号35)の穴径で決まるため、ダイ孔の穴径を変えることで、外径Dは任意に変更することができる。
長さLは例えば30~50mmである。長さLはカッタ(図4、符号36)の設定を変えることで任意に変更することができる。
【0049】
図6(b)に示すように、固体のままのエンプラ片29は、溶けた後に凝固した汎用プラスチック52で包まれる。又は、固体のままのエンプラ片29同士は、溶けた後に凝固した汎用プラスチック52で結合される。
【0050】
すなわち、リングダイ(図4、符号31)の温度を、90~130℃(または、100~120℃)に制御することで、好ましい固形燃料50を製造することに成功した。
ただし、固形燃料50にあっては、さらなる改良の余地がある。
【0051】
すなわち、図6(a)、(b)に示す固形燃料50は、次の点で改良の余地がある。
先ず、燃焼性を検討する。
固形燃料50を燃やすと、耐熱温度の低い汎用プラスチック52が先に燃える。耐熱温度の高いエンプラ片29が遅れて燃える。エンプラ片29は、着火性が悪いため、汎用プラスチック52からエンプラ片29への燃え移りが円滑でないことがある。
極端な場合は、汎用プラスチック52が燃え尽きてもエンプラ片29が燃え始めないことがある。よって、燃え移りの更なる円滑化が望まれる。
【0052】
次に、エンプラの密度を検討する。
汎用プラスチックの比率が下がり、エンプラの比率が上がることを考慮すると、図6(a)、(b)に示す構造の固形燃料50よりも、エンプラ比率の高い(エンプラが高い密度で配列される)固形燃料が望まれる
【0053】
[変更例]
以上に述べた燃焼性と高密度の両方を解決し得る変更例を、以下に示す。
【0054】
[汎用プラスチック片]
図7(a)に示すように、汎用プラスチック片28を得るために、第1のスクリーン23Aを準備する。この第1のスクリーン23Aの目の大きさd1は、8~80mmとする。
すると、外径が8mm以上である汎用プラスチック片28が得られる。
【0055】
[エンプラ片]
図7(b)に示すように、エンプラ片29を得るために、第2のスクリーン23Bを準備する。この第2のスクリーン23Bの目の大きさd2は、4~7mmとする。
すると、外径が7mm以下であるエンプラ片29が得られる。
【0056】
[エンプラ細片]
図7(c)に示すように、エンプラ細片54を得るために、第3のスクリーン23Cを準備する。この第3のスクリーン23の目の大きさd3は、1~3mmとする。
すると、外径が3mm以下であるエンプラ細片54が得られる。
【0057】
得られた汎用プラスチック片28と、エンプラ片29と、エンプラ細片54とを、図4に示す圧縮・整粒機30へ投入して、固形燃料50を得る。得られた固形燃料50の詳細を図8(a)、(b)で説明する。
【0058】
図8(a)に示すように、固形燃料50は円柱状を呈する。
外径Dは例えば10mmである。外径Dはダイ孔の穴径で決まるため、任意に変更することができる。
長さLは例えば30~50mmである。長さLはカッタの設定を変えることで任意に変更することができる。
【0059】
図8(b)に示すように、固体のままのエンプラ細片54をエンプラ片29が囲う。そして、これらが溶けた後に凝固した汎用プラスチック52で結合される。
【0060】
エンプラ片29とエンプラ片29の間にエンプラ細片54が介在するため、エンプラの密度が高まり、汎用プラスチック52の比率を下げ、エンプラの比率を高めることができる。
【0061】
また、エンプラ細片54は、エンプラ片29よりも体積が格段に小さく、熱容量が格段に小さい。熱容量が小さいと、外からの熱で、エンプラ細片54は、エンプラ片29よりも短時間で温度上昇し、着火点に到達する。なお、融点の低い汎用プラスチック52が最初に着火する。
結果、汎用プラスチック52が燃え、この熱でエンプラ細片54が燃え、この熱でエンプラ片29が燃える。
以上に述べたように、変更例であれば、エンプラ比率がより高められ、燃焼時の燃え移りがより円滑になる。
【0062】
尚、図4において、多孔エアヘッダ39は水冷ジャケットに変更することは差し支えない。
【0063】
または、図1において、ローラ13、13を横に移動するようにしてもよい。ローラ13、13をリングダイ12から離すと、リングダイ12に滞留する廃プラスチック片の層の厚さが増す。厚さが増すと、滞留時間が増える。廃プラスチック片はリングダイ12から受熱するため、滞留時間が延びると温度上昇する。
逆に、ローラ13、13をリングダイ12に近づけると廃プラスチック片の温度が下がる。
以上により、リングダイ12の温度制御が可能となる。
よって、温度制御の方法は任意であって、実施例に限定されるものではない。
【0064】
また、本実施例では、エンプラをエンプラ片とエンプラ細片とで構成したが、エンプラをエンプラ片とエンプラ細片とこのエンプラ細片より小径のエンプラ微細片で構成してもよい。
よって、本発明のエンプラは、エンプラ片とエンプラ細片との2種類で構成する他、径が異なる3種類以上で構成してもよい。
【0065】
また、本発明に係る固形燃料は、廃プラスチックが主原料であるため、廃プラスチック100%の他、廃プラスチックに古紙など廃プラスチック以外の廃棄物を混ぜることは差し支えない。
【産業上の利用可能性】
【0066】
本発明は、エンプラを含む固形燃料に好適である。
【符号の説明】
【0067】
20…一軸破砕機、23…スクリーン、23A…第1のスクリーン、23B…第2のスクリーン、23C…第3のスクリーン、25…廃プラスチック、25A…汎用プラスチック、25B…エンプラ、28…汎用プラスチック片、29…エンプラ片、30…圧縮・整粒機、31…リングダイ、33、34…ローラ、35…ダイ孔、36…カッタ、45…温度設定器、46…制御部、50…固形燃料、52…溶けた後に凝固した汎用プラスチック、54…エンプラ細片。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8