(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024119190
(43)【公開日】2024-09-03
(54)【発明の名称】非侵襲計測装置
(51)【国際特許分類】
A61B 5/1455 20060101AFI20240827BHJP
G02B 27/09 20060101ALN20240827BHJP
【FI】
A61B5/1455
G02B27/09
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023025915
(22)【出願日】2023-02-22
(71)【出願人】
【識別番号】524017434
【氏名又は名称】株式会社ヘルスケアビジョン
(74)【代理人】
【識別番号】100095407
【弁理士】
【氏名又は名称】木村 満
(74)【代理人】
【識別番号】100132883
【弁理士】
【氏名又は名称】森川 泰司
(74)【代理人】
【識別番号】100214514
【弁理士】
【氏名又は名称】鳴村 英幸
(74)【代理人】
【識別番号】100201352
【弁理士】
【氏名又は名称】豊田 朝子
(72)【発明者】
【氏名】郭 若峰
【テーマコード(参考)】
4C038
【Fターム(参考)】
4C038KK00
4C038KL05
4C038KL07
4C038KM01
4C038KX04
4C038KY01
(57)【要約】
【課題】生体内に含まれる特定成分を迅速かつ網羅的に非侵襲計測する。
【解決手段】非侵襲計測装置は、励起光を出射する光源部41と、励起光から複数のニードル光を生成するアキシコンレンズ43と、複数のニードル光を生体の所定部位から生体内に照射するハーフミラー44及び集光レンズ45と、生体内からの反射光を検出する撮像器46と、撮像器46から得られた検出信号に基づき生体内に含まれる特定成分を計測する処理部と、を備える。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
励起光を出射する光源部と、
前記励起光から複数のニードル光を生成する光学素子と、
前記複数のニードル光を生体の所定部位から生体内に照射する案内部と、
前記生体内からの反射光を検出する検出部と、
前記検出部から得られた検出信号に基づき前記生体内に含まれる特定成分を計測する処理部と、
を備える非侵襲計測装置。
【請求項2】
前記光学素子は、前記光源部から入射した前記励起光が出射する出射側の面に複数の円錐面が設けられたアキシコンレンズである、
請求項1に記載の非侵襲計測装置。
【請求項3】
前記所定部位は、指の後爪郭である、
請求項1に記載の非侵襲計測装置。
【請求項4】
前記特定成分は、血球である、
請求項1に記載の非侵襲計測装置。
【請求項5】
前記処理部は、前記血球の個数を計測する、
請求項4に記載の非侵襲計測装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、非侵襲計測装置に関する。
【背景技術】
【0002】
血液中に存在する血球の数を計測する血球計測の手法として、採血によって得られた血液を血球一つが通るほどの細い管に通し、高速に循環させながら光あるいは電気計測する方式が広く用いられている。また、それ以外に、顕微鏡下に配置し、画像上で認識された血球の数を目視あるいはコンピュータによってカウントする方法がある。しかしながら、いずれの方式も、採血を必要とし、計測対象者に生理的、心理的な負担を強いてきた。これを解決する方法として、指の後爪郭に存在する毛細血管を直接観察する方式が提案されている。
【0003】
例えば特許文献1は、顕微鏡本体の光軸が指の爪の甘皮に隣接する爪根部に合うように顕微鏡を位置合わせして、顕微鏡本体の対物レンズの焦点を爪の甘皮の近傍の爪根部の表皮に合わせた後、顕微鏡により爪根部の表皮を介して指先の毛細血管の血流を観察することを開示する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記方式においても、皮膚下の毛細血管を流れる血球を迅速かつ網羅的に計測することが難しい。
【0006】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、生体内に含まれる特定成分を迅速かつ網羅的に非侵襲計測することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る非侵襲計測装置は、
励起光を出射する光源部と、
前記励起光から複数のニードル光を生成する光学素子と、
前記複数のニードル光を生体の所定部位から生体内に照射する案内部と、
前記生体内からの反射光を検出する検出部と、
前記検出部から得られた検出信号に基づき前記生体内に含まれる特定成分を計測する処理部と、
を備える。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、複数のニードル光を生体内に照射することにより、生体内に含まれる特定成分を迅速かつ網羅的に非侵襲計測することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本発明の実施の形態に係る非侵襲計測装置の構成を説明する図である。
【
図2】本発明の実施の形態に係る非侵襲計測装置の光学ユニットの構成を説明する図である。
【
図3】本発明の実施の形態に係る非侵襲計測装置の処理部の機能的構成を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
図1は、非侵襲計測装置の構成を示す図である。非侵襲計測装置1は、励起光を皮膚下の毛細血管に照射して、その反射光によって、毛細血管中を流れる血液中の血球を光学的に検出し、検出された血球数を計測する。
【0011】
非侵襲計測装置1は、被験者の手の指2を保持する保持台3と、被験者の指2に光を照射して血液情報を検出する光学ユニット4と、検出された血液情報を画像処理して血球数を計測する処理部5とを備える。
【0012】
保持台3は、指2を挿入する挿入部31、指2を載置するための保持部32を備える。挿入部31は、指2を挿入するための凹部が形成されており、保持部32を覆っている。被験者は、指2の腹を保持部32に載置するように、挿入部31の凹部に指2を挿入する。指2の位置は、挿入部31の凹部と保持部32によって固定される。
【0013】
光学ユニット4は、保持台3上に設けられている。保持台3には、挿入部31の内面に貫通する開口部が設けられている。開口部は、保持台3の挿入部31に指2が挿入され、保持部32に保持された状態において、指2の後爪郭21に対向する位置に設けられる。光学ユニット4は、開口部を塞ぐ位置に設けられており、集光レンズが開口部から挿入部31に向かって配置され、挿入部31に指2が挿入された状態において、集光レンズを介して指2の後爪郭21に向かって光を照射する。
【0014】
図2は、非侵襲計測装置1の光学ユニット4の構成を示す図である。非侵襲計測装置1の光学ユニット4は、光源部41と、コリメータレンズ42と、アキシコンレンズ43と、ハーフミラー44と、集光レンズ45と、撮像器46とを備える。
【0015】
光源部41は、励起光を出射する光源とされる。励起光の照射によって皮膚組織からの反射光は微弱になり易いことから、光源部41は強度の高い励起光を出射する光源とされることが好ましい。また、光源部41は単波長の励起光を出射する光源とされることが好ましい。このような光源として、例えば半導体レーザ、固体レーザが挙げられる。また、光源部41は、LED(Light‐Emitting Diode)であってもよい。
【0016】
光源部41から出射された光は、コリメータレンズ42により平行光とされ、アキシコンレンズ43に入射する。アキシコンレンズ43は、入射側の面が平面であり、出射側の面には複数の円錐状の凸部が設けられた光学素子であるマルチアキシコンレンズである。円錐面を通過した光は、光軸に対して交差する方向に向かい、互いの光が重なり合って干渉する領域が形成される。この干渉する領域内において、光軸方向に細長い高光強度部のニードルスポットが形成されるベッセルビームが生成される。ニードルスポットの位置・大きさは、円錐のアルファ角と頂角によって決定され、これらを調節することにより、皮膚に照射した際の照射深度を調節することができる。アキシコンレンズ43の出射側の面には複数の円錐面が設けられていることから、これらの円錐面の数だけニードル光47が形成される。したがって、円錐の数を調節することにより、皮膚に照射されるニードル光47の数を調節することができる。また、円錐の密度を調節することにより、皮膚に照射されるニードル光47の密度を調節することができる。アキシコンレンズ43を通過した複数のニードル光47は、ハーフミラー44及び集光レンズ45を案内部として、ハーフミラー44により反射された後、集光レンズ45によって集光されて、被験者の所定の部位である手の指2の後爪郭21から生体内である皮膚組織内に向かって照射される。
【0017】
生体の皮膚は、表皮、真皮、皮下組織等で構成されている。真皮には血管が存在し、血液が循環して流れている。皮膚表面を形成する表皮の直下には、毛細血管が伸びている。後爪郭21は、爪の根元の皮膚の部分であって、後爪郭21の表皮の直下において、毛細血管の血流を鮮明に観察することができる。
【0018】
集光レンズ45から指2の後爪郭21に向かって出射された複数のニードル光47は、後爪郭21の表皮直下の所定の体積の範囲の検出領域48に照射される。検出領域48内には、複数の毛細血管49が存在する。複数のニードル光47は、検出領域48に存在する特定成分として、毛細血管49内の血球50を検出する。検出領域48は、
図2において実線で示された直方体の領域であり、X-Y平面において複数のニードル光47が存在する範囲であり、かつ、深さ方向であるZ方向においてニードル光47の細長いスポット径の長さの範囲である。このように、ニードル光47は、光軸方向に細長いスポットを形成するため、焦点深度が深く、皮膚の深部まで検出することができる。また、複数のニードル光47を照射するため、一度に広い範囲を検出することができる。毛細血管49の断面の大きさは、直径数十ミクロン程度であり、ニードル光47は、1mm四方に対し、100×100本程度設けることにより、毛細血管49内の血球50を漏れ少なく検出することができ、一度に多くの個数の血球50を検出でき、血球数のカウント性能を上げることができる。したがって、照射光を時間をかけて複数回走査する必要がない。
【0019】
検出領域48からの反射光は、ハーフミラー44を透過して集光レンズ45を介して検出部である撮像器46に入射され、撮像器46で撮像される。撮像器46は、受光面上に複数の撮像素子を備える。撮像器46の受光面には複数のニードル光47の皮膚組織からの反射光が入射する。撮像器46は、皮膚組織からの反射光を受けると、撮像素子が受光信号を電気信号に変換し、検出信号である画像信号を出力する。撮像素子として、例えば、フォトダイオード、CCD(Charge Coupled Device)、CMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)等が用いられる。撮像器46から出力された信号は、処理部5に入力される。
【0020】
処理部5は、パーソナルコンピュータのようなコンピュータであり、制御プログラムにしたがってデータを処理するプロセッサと、プロセッサのワークエリアとして機能する主記憶部と、データを長期間にわたって記憶するための補助記憶部等を備える。処理部5は、撮像された画像を画像処理して毛細血管49内の血球50を検出し、検出された血球50の個数を計測する。
【0021】
図3は、処理部5の機能的構成を示す。処理部5は、撮像器46から画像を取得する画像取得部51と、撮像画像から画像の輪郭を表すエッジを検出するエッジ検出部52と、テンプレートマッチング処理を行うマッチング部53と、血球50を計数する計数部54と、テンプレートデータを記憶するテンプレートデータ記憶部55と、計数結果を含むログ情報を記憶するログ記憶部56を備える。
【0022】
画像取得部51は、撮像器46が撮像した毛細血管49内の画像を取得して記憶する。エッジ検出部52は、撮像した画像から画像の輪郭を表すエッジを検出するエッジ検出を行い、マッチング部53でテンプレートマッチング処理を行うためのエッジデータを作成する。
【0023】
マッチング部53は、撮像した毛細血管49内の画像について、テンプレートデータとマッチング処理を行うことによって毛細血管49内の血球50を識別する。テンプレートデータ記憶部55は、血球50の輪郭を表すエッジデータであるテンプレートデータを記憶する。テンプレートデータは、例えば、白血球の輪郭を表すエッジデータ、赤血球の輪郭を表すエッジデータ等が設けられる。
【0024】
マッチング処理は、エッジ検出された毛細血管49内の撮像画像とテンプレートデータ記憶部55から読み出された赤血球の輪郭を表すテンプレートデータを比較することによって、撮像画像から赤血球を識別する。また、テンプレートデータ記憶部55から読み出された白血球の輪郭を表すテンプレートデータをエッジ検出された毛細血管49内の撮像画像と比較することによって、撮像画像から白血球を識別する。
【0025】
計数部54は、マッチング部53で識別された血球50の個数を計数する。ログ記憶部56は、計数部54で計数された結果と、被験者名、検査日時等を含むログ情報を記憶する。ログ情報は、外部システムに送信される。
【0026】
上述したように、検出領域48である体積内に複数のニードル光47を照射することにより、毛細血管49内の検出領域48内に存在する血球50を一度に検出することができるため、皮膚組織に対して光学ユニット4を複数回に亘って走査する必要がない。
【0027】
本実施の形態では、エッジ検出したエッジデータをテンプレートデータとマッチング処理することにより、赤血球、白血球を識別したが、これに限らない。例えば、光源部41から赤血球が吸収する所定の波長の光を生体内に照射して反射する光を検出することにより、赤血球を識別してもよい。生体に照射した光は、照射した血管内に赤血球が存在すれば、赤血球により吸収される。したがって、赤血球が存在する箇所は、赤血球が存在しない箇所に比べて、光が吸収される分、反射光量が小さくなる。反射光量に対して所定の閾値を設定することにより、赤血球を検出することができる。赤血球に対して白血球が吸収する光の波長は異なっている。白血球を検出する場合は、光源部41から発せられる光の波長を白血球が吸収する波長に変更する。変更した光を生体に照射し、照射した血管内に白血球が存在すれば、白血球により光が吸収され、反射光量が小さくなる。反射光量に対して先ほどと同様に所定の閾値を設定することにより、白血球を検出することができる。
【0028】
また、本実施の形態では、指2の後爪郭21から特定成分として血球を検出したが、これに限らず、例えば、口唇、耳たぶ等から検出するようにしてもよい。また、血球に限らず、他の血液中の成分を検出してもよく、また血液以外の間質液、リンパ液等の成分を検出するようにしてもよい。
【0029】
また、本実施の形態では、ベッセルビームを生成するアキシコンとして、出射面に複数の円錐状の凸部を形成した屈折型のアキシコンレンズについて説明したが、これに限らない。例えば、励起光を反射する反射面に複数の円錐状の凹部を形成する反射型のアキシコンであってもよい。
【0030】
なお、本発明は、本発明の広義の精神と範囲を逸脱することなく、様々な実施形態及び変形が可能とされているものである。また、上述した実施形態は、本発明の一実施例を説明するためのものであり、本発明の範囲を限定するものではない。上記実施例及び変形例は任意に組み合わせることができる。さらに、必要に応じて実施形態の構成要件の一部を除いても本発明の技術的思想の範囲内となる。
【符号の説明】
【0031】
1 非侵襲計測装置、2 指、3 保持台、4 光学ユニット、5 処理部、21 後爪郭、31 挿入部、32 保持部、41 光源部、42 コリメータレンズ、43 アキシコンレンズ、44 ハーフミラー、45 集光レンズ、46 撮像器、47 ニードル光、48 検出領域、49 毛細血管、50血球、51 画像取得部、52 エッジ検出部、53 マッチング部、54 計数部、55 テンプレートデータ記憶部、56 ログ記憶部。