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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024119194
(43)【公開日】2024-09-03
(54)【発明の名称】管拡径工具
(51)【国際特許分類】
   B29C 57/04 20060101AFI20240827BHJP
   B21D 39/20 20060101ALN20240827BHJP
【FI】
B29C57/04
B21D39/20 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023025925
(22)【出願日】2023-02-22
(71)【出願人】
【識別番号】000137292
【氏名又は名称】株式会社マキタ
(74)【代理人】
【識別番号】110000394
【氏名又は名称】弁理士法人岡田国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】矢加部 晃一
【テーマコード(参考)】
4F209
【Fターム(参考)】
4F209AG08
4F209AG24
4F209AH11
4F209NA22
4F209NB01
4F209NG03
4F209NH06
4F209NM02
4F209NN02
(57)【要約】
【課題】PEX管を合理的に拡径できる管拡径工具を提供すること。
【解決手段】管拡径工具1は、電動モータ20によって回転する雌ねじ部材26を有する。ねじ軸27が雌ねじ部材26に螺合されて前後動する。前端位置センサ29bはねじ軸27が前位置に到達したことを検出する。ブレーキがねじ軸27の前方移動を停止する。制御装置が電動モータ20とブレーキを制御する。制御装置は、ねじ軸27が前位置に到達したことを前端位置センサ29bからの信号に基づいて判断した際にブレーキを作動させる。更に制御装置は、ねじ軸27が停止したことを検知した際に電動モータ20の出力を逆転させてねじ軸27を後方へ移動させる。
【選択図】図7
【特許請求の範囲】
【請求項1】
合成樹脂製の流体管の端部を拡径する管拡径工具であって、
モータによって回転する雌ねじと、
前記雌ねじに螺合されて前後動するねじ軸と、
前記ねじ軸の前端に設けられ、かつ複数のジョーの間に挿入されることで前記ジョーを介して前記流体管を拡径する楔と、
前記ねじ軸が前位置に到達したことを検出する検出器と、
前記ねじ軸の前方移動を停止するブレーキと、
前記モータと前記ブレーキを制御する制御装置を有し、前記制御装置は、
前記ねじ軸が前記前位置に到達したことを前記検出器からの信号に基づいて判断した際に前記ブレーキを作動させ、
前記ねじ軸が停止したことを検知した際に前記モータの出力を逆転させて前記ねじ軸を後方へ移動させる管拡径工具。
【請求項2】
請求項1に記載の管拡径工具であって、
前記制御装置は、前記ブレーキを作動させた後、前記ねじ軸の停止又は後方への移動を検知した際に前記モータの出力を逆転させる管拡径工具。
【請求項3】
請求項2に記載の管拡径工具であって、
前記制御装置は、前記ねじ軸が前記前位置に到達したときから又は前記ブレーキを作動開始したときから時間が規定の保持時間を超えた際に、前記ねじ軸の停止又は後方への移動を検知して前記モータの出力を逆転させる管拡径工具。
【請求項4】
請求項3に記載の管拡径工具であって、
前記保持時間は0.1~0.5秒の範囲で設定される管拡径工具。
【請求項5】
請求項1~4のいずれか1つに記載の管拡径工具であって、
前記モータは、固定子と前記固定子周りを回転する回転子を有し、
前記ブレーキは、前記モータにおいて構成され、前記モータへの電力供給を停止することで前記回転子の慣性力によって生じる逆起電力によって前記回転子の回転が抑制される構成である管拡径工具。
【請求項6】
請求項1~5のいずれか1つに記載の管拡径工具であって、
前記検出器は、前記ねじ軸に設けられた第1マグネットと、工具本体に設けられて前記第1マグネットの磁気を検知する第1ホールICを有する管拡径工具。
【請求項7】
請求項1~5のいずれか1つに記載の管拡径工具であって、
前記検出器は、前記モータの回転を検知する第1モータセンサを有し、
前記制御装置が前記第1モータセンサからの信号に基づいて前記ねじ軸が前記前位置に到達したことを判断する管拡径工具。
【請求項8】
請求項1または2に記載の管拡径工具であって、
前記モータの回転を検知する第2モータセンサを有し、前記第2モータセンサからの検知信号に基づいて前記制御装置が前記ねじ軸の停止または後方への移動を判断する管拡径工具。
【請求項9】
請求項7または8に記載の管拡径工具であって、
請求項7の前記第1モータセンサまたは請求項8の前記第2モータセンサは、前記モータに設けられた第2マグネットと、前記第2マグネットの磁気を検知する第2ホールICを有する管拡径工具。
【請求項10】
請求項1または2に記載の管拡径工具であって、
前記モータと前記ねじ軸の間には、前記モータからの出力を伝達するギヤを含む伝達機構が設けられ、
前記モータ、前記伝達機構、前記ねじ軸のいずれかの部材の移動を検知するセンサを有し、前記センサからの信号に基づいて前記制御装置が前記ねじ軸の停止または後方への移動を判断する管拡径工具。
【請求項11】
請求項1~10のいずれか1つに記載の管拡径工具であって、
前記ねじ軸と前記雌ねじの螺合部分にボールが介装される管拡径工具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、例えば合成樹脂製の流体管の端部を被接続体に接続するために拡径する管拡径工具に関する。
【背景技術】
【0002】
例えばPEX(Crоss-linked pоlyethylene:架橋ポリエチレン)を材料とする流体管を樹脂製のパイプ等の被接続体に接続する場合がある。PEX管の端部の内径を拡げる管拡径工具が従来知られている。管拡径工具を用いてPEX管の端部を弾性変形して拡径し、拡径部分に被接続体を挿入する。PEX管の端部は、次第に元の径に弾性的に縮径する。これによりPEX管の端部が被接続体と密に接続する。
【0003】
特許文献1には、電動モータを駆動源としてPEX管を拡径する管拡径工具が記載されている。管拡径工具は、前後方向に延出するねじ軸と、ねじ軸の前部に連結された略円錐状の楔を有する。楔の前方で楔の周方向には、複数のジョーが配設される。複数のジョーは、本体ハウジングの前部に装着されるキャップによって径方向に開閉可能に支持される。ねじ軸は、本体ハウジングに対して回り止めされている。ねじ軸は、ねじ軸の軸回りに回転可能に本体ハウジングに支持された雌ねじ部材と螺合される。
【0004】
雌ねじ部材を電動モータの駆動によって回転させると、回り止めされたねじ軸が前後動する。楔がねじ軸と共に前進する際、複数のジョーは楔に押されて楔の径方向外方に相互に開く。複数のジョーをPEX管の端部開口に進入させた状態で径方向外方に開くことで、PEX管の端部を拡げることができる。楔がねじ軸と共に後退する際、複数のジョーは楔からの押圧力から解放されて径方向内方へ閉じる。
【0005】
ねじ軸が前位置まで移動した後、電動モータは雌ねじ部材を逆回転させる。これによりねじ軸は後位置に向かって後退する(リターン動作)。PEX管の拡径を効率よく行うためには、ねじ軸のリターン動作を適切に制御する必要がある。特許文献1にはリターン動作の具体的な制御方法について記載されていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】米国特許出願公開第2020/0261959号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
従ってPEX管を合理的に拡径できる管拡径工具が従来、必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本開示の1つの局面によると、管拡径工具は、モータによって回転する雌ねじを有する。ねじ軸が雌ねじに螺合されて前後動する。ねじ軸の前端に楔が設けられる。楔は、複数のジョーの間に挿入されることでジョーを介して流体管を拡径する。検出器はねじ軸が前位置に到達したことを検出する。ブレーキがねじ軸の前方移動を停止する。制御装置がモータとブレーキを制御する。制御装置は、ねじ軸が前位置に到達したことを検出器からの信号に基づいて判断した際にブレーキを作動させる。更に制御装置は、ねじ軸が停止したことを検知した際にモータの出力を逆転させてねじ軸を後方へ移動させる。
【0009】
従って制御装置はモータを完全に停止したことを検知した後、モータの出力を逆転させる。このため制御装置は、モータが正転している最中にモータを逆転させることを防止できる。そのためモータを正転中に逆転させることで生じる大電流等の負荷を抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本開示の実施例に係る管拡径工具の斜視図である。
図2】本体ハウジングを取り外した状態の工具本体を前側右方から見た斜視図である。
図3】工具本体の分解斜視図である。
図4】本体ハウジングを取り外した状態の工具本体を後側右方から見た斜視図である。
図5】本体ハウジングを取り外した状態の工具本体を後側左方から見た斜視図であって、ねじ軸が後端位置に位置する状態を示す斜視図である。
図6】本体ハウジングを取り外した状態の工具本体を後側左方から見た斜視図であって、ねじ軸が前端位置に位置する状態を示す斜視図である。
図7】右方から見た工具本体の縦断面図であって、ねじ軸が後端位置に位置する状態を示す断面図である。
図8】右方から見た工具本体の縦断面図であって、ねじ軸が前端位置に位置する状態を示す断面図である。
図9図7中のIX-IX線断面矢視図である。
図10図8中のX-X線断面矢視図である。
図11図7中のXI-XI線断面矢視図である。
図12図11中のXII-XII線断面矢視図である。
図13図11中のXII-XII線断面において、ねじ軸が前端位置に位置する状態を示す断面図である。
図14】回転ギヤと受けカムと複数のジョーの上面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本開示の他の局面によると、制御装置はブレーキを作動させた後、ねじ軸の停止又は後方への移動を検知した際にモータの出力を逆転させる。従ってブレーキ作動後にねじ軸が外力等により後方に移動した場合でも、制御装置がモータを逆転できる。例えば、ねじ軸が前方への移動から後方への移動へのタイミングが短く、停止時間が短い場合がある。この場合、ねじ軸の停止を検出できず、ねじ軸が完全に停止するのを待つ場合が想定される。このような場合でも本局面によると、ねじ軸の後方への移動時にモータが逆転される。このため上記の場合であっても、短時間にねじ軸を後方に移動させることができる。
【0012】
本開示の他の局面によると、制御装置はねじ軸が前位置に到達したときから又はブレーキを作動開始したときからの時間が規定の保持時間を超えた際に、ねじ軸の停止又は後方への移動を検知する。従ってねじ軸が前進し、流体管を拡径する時間を少なくとも保持時間以上にすることができる。これにより1回の拡径動作において流体管を十分に拡径でき、拡径動作の回数を減らすことができる。
【0013】
本開示の他の局面によると、保持時間は0.1~0.5秒の範囲で設定される。従って保持時間を確保して効率よく流体管を拡径できる。
【0014】
本開示の他の局面によると、モータは、固定子と固定子周りを回転する回転子を有する。ブレーキはモータにおいて構成される。ブレーキは、モータへの電力供給を停止することで回転子の慣性力によって生じる逆起電力によって回転子の回転を抑制する。従ってモータを停止させるために電力を供給する構成と比べて電力が少なくできる。あるいは部品点数を軽減できる。
【0015】
本開示の他の局面によると、検出器はねじ軸に設けられた第1マグネットと、工具本体に設けられて第1マグネットの磁気を検知する第1ホールICを有する。従って配線を必要としない第1マグネットが移動するねじ軸に設けられる。配線が通常接続される第1ホールICが移動しない工具本体に設けられる。そのため配線も工具本体に設けられることで、比較的簡易に検出器を設けることができる。しかも第1マグネットよりも高価な第1ホールICの破損の確率も低くなる。
【0016】
本開示の他の局面によると、検出器は、モータの回転を検知する第1モータセンサを有する。制御装置が、第1モータセンサからの信号に基づいてねじ軸が前位置に到達したことを判断する。従って例えば第1モータセンサが他の理由により既に設けられている場合は、新たな検出器を必要としない。これにより部品点数の増加を抑制できる。
【0017】
本開示の他の局面によると、第2モータセンサがモータの回転を検知する。制御装置が、第2モータセンサからの検知信号に基づいてねじ軸の停止または後方への移動を判断する。従って制御装置が、モータの回転に基づいてねじ軸の停止または後方への移動を検出できる。
【0018】
本開示の他の局面によると、第1モータセンサまたは第2モータセンサはモータに設けられた第2マグネットと、第2マグネットの磁気を検知する第2ホールICを有する。従って比較的安価なモータセンサを利用できる。
【0019】
本開示の他の局面によると、モータとねじ軸の間には、モータからの出力を伝達するギヤを含む伝達機構が設けられる。センサがモータ、伝達機構、ねじ軸のいずれかの部材の移動を検知する。制御装置がセンサからの信号に基づいてねじ軸の停止または後方への移動を判断する。従って制御装置がモータ、伝達機構、ねじ軸のいずれかの移動を検知することでねじ軸の停止又は後方への移動を判断する。
【0020】
本開示の他の局面によると、ねじ軸と雌ねじの螺合部分にボールが介装される。従って螺合部分に介装されたボールによって、雌ねじからねじ軸への動力の伝達効率が向上する。そのため雌ねじの回転駆動をねじ軸の前後動に効率良く変換できる。
【0021】
次に、本開示の実施例の1つを図1~14に基づいて説明する。図1に示すように本実施例の管拡径工具1は、本体ハウジング11に収容される工具本体10を有する。本体ハウジング11の下部には、下方に延出するグリップ5が設けられる。使用者は管拡径工具1の概ね後方(図1において左方奥側)に位置してグリップ5を把持する。以下の説明において、使用者の手前側を後方、使用者の手前側と反対側を前方とする。上下左右方向については使用者を基準とする。
【0022】
図1に示すように工具本体10の前部には、リング状のキャップ2が装着される。図7に示すように工具本体10の中央には、前後方向に延出する円柱状のねじ軸27が設けられる。ねじ軸27の前部には略円錐状の楔3が装着される。楔3はキャップ2の径方向の内側に位置する。ねじ軸27と楔3は工具本体10の中央で前後方向に延出するねじ軸軸線K上に配置される。ねじ軸27と楔3は、ねじ軸軸線Kに沿って後位置と前位置の間で前後方向に移動可能である。楔3の径方向の外側かつキャップ2の径方向の内側には、前後方向に延出する複数のジョー4が設けられる。複数のジョー4は楔3の周方向に等間隔に並ぶ。管拡径工具1は例えば6つのジョー4を有する。各ジョー4は楔3の周方向に60度間隔で配置される。複数のジョー4は、周方向に互いに密接して楔3を覆う閉じ位置と、径方向の外側に相互に開いて楔3の先端を露出する開き位置の間で径方向に開閉可能である。
【0023】
図1に示すようにグリップ5の前面には、トリガ式のスイッチレバー6が設けられる。使用者は、グリップ5を把持した状態でスイッチレバー6を引いて操作することができる。グリップ5の内部には、スイッチレバー6の操作を連動してオンオフが切り替えられるスイッチ本体6aが設けられる。スイッチ本体6aは、スイッチレバー6を引いていない場合にオフ状態であり、スイッチレバー6を引いた場合にオン状態になる。管拡径工具1を使用する際、使用者はグリップ5を把持して複数のジョー4を合成樹脂製のPEX管の端部に挿入する。スイッチレバー6を引くことで複数のジョー4が径方向に開閉する。これによりPEX管の端部が所定の径まで拡径される。グリップ5の下端には、前後方向及び左右方向に拡径する略矩形箱型の膨出部7が設けられる。膨出部7には、制御装置9が収容される。制御装置9は底浅の矩形箱型のケースと、ケース内に収容されかつ樹脂モールドされた制御基板を有する。制御装置9は、厚み方向(ケースの最短辺が延びる方向)が上下方向に沿った姿勢で膨出部7に収容される。制御装置9は、主として後述する電動モータ20の駆動を制御する。
【0024】
図1に示すように膨出部7の下面には、矩形箱型のバッテリ8を取り外し可能に装着できるバッテリ取付部7aが設けられる。バッテリ8は、前方にスライドさせることでバッテリ取付部7aから取り外すことができる。バッテリ8は、バッテリ取付部7aの前方から後方へスライドさせることでバッテリ取付部7aに装着できる。バッテリ8は、他の電動工具の電源として流用することができる。バッテリ8は、電動モータ20に電力を供給する電源として動作する。
【0025】
図7、8に示すように本体ハウジング11は、工具本体10の外周を覆う外装ケース17を有する。外装ケース17内で前側機構ハウジング12と第1中央機構ハウジング13と第2中央機構ハウジング14と後側機構ハウジング15が相互に組み付けられる。前側から順に前側機構ハウジング12、第1中央機構ハウジング13、第2中央機構ハウジング14、後側機構ハウジング15が配置される。前側機構ハウジング12と第1中央機構ハウジング13と第2中央機構ハウジング14は、前後方向に貫通する中空路を中央に有する略円筒形状である。後側機構ハウジング15は、前後方向を板厚方向とする板状に設けられる。前側機構ハウジング12と第1中央機構ハウジング13と第2中央機構ハウジング14と後側機構ハウジング15は、協働して機構ハウジングを形成する。機構ハウジングには、後述するギヤ軸23とアイドルギヤ24と雌ねじ部材26が収容される。
【0026】
図3に示すように前側機構ハウジング12の前部の外周面には、雄ねじ12aが設けられる。キャップ2の後部の内周面には、雄ねじ12aと螺合する雌ねじ2bが設けられる。雄ねじ12aと雌ねじ2bを螺合させることで、キャップ2が前側機構ハウジング12の前部に連結される。
【0027】
図3に示すように前側機構ハウジング12の外周面には、径方向の外側に張り出した略矩形状のフランジ12eが設けられる。フランジ12eは、4つの角部に前後方向に貫通するねじ孔をそれぞれ有する。第1中央機構ハウジング13、第2中央機構ハウジング14、後側機構ハウジング15の外周面には、径方向の外側に張り出した略円筒形状のボス部13f,14h,15bがそれぞれ設けられる。各ボス部13f,14h,15bには、前後方向に貫通する透孔が設けられる。フランジ12eの後方にボス部13f,14h,15bを前後方向に並べることにより、フランジ12eのねじ孔と各ボス部の透孔が前後方向に連通する。4本のボルト16を、連通した各透孔に後方から前方へ挿通させ、フランジ12eのねじ孔に締結させる。これにより前側機構ハウジング12,第1中央機構ハウジング13,第2中央機構ハウジング14,後側機構ハウジング15は前後方向に並んで連結される。
【0028】
図3に示すように第1中央機構ハウジング13は、円筒形状の下方に延出する外形略U字状の下方延出部13bを有する。第2中央機構ハウジング14は、円筒形状の下方に延出する外形略U字状の下方延出部14bを有する。下方延出部13bと下方延出部14bが前後方向に連結されることで、ギヤ軸23とアイドルギヤ24を収容するスペースが形成される。下方延出部13bには、前後方向に貫通する2つの透孔が前後に並行して設けられる。下側の透孔には、後述するギヤ軸23を支持するための凹部13cが設けられる。上側の透孔には、アイドルギヤ24を支持する軸部材24aが圧入される。下方延出部14bには、前後方向に貫通する2つの透孔が前後に並行して設けられる。下側の透孔には、ギヤ軸23を支持するための凹部14cが設けられる。上側の透孔14dには、軸部材24aが挿入される。
【0029】
図7に示すように外装ケース17の後方下部には、略円柱形状の電動モータ20が収容される。電動モータ20には例えばDCブラシレスモータと称されるモータが用いられる。電動モータ20は、後端位置に位置するねじ軸27の下方かつグリップ5の上方に位置する。電動モータ20のモータ軸20aは、モータ軸線Jに沿ってねじ軸27の中心を通るねじ軸軸線Kと平行に前後方向に延出する。モータ軸20aは外装ケース17に保持された軸受20e、20fによってモータ軸線Jを中心に回転可能に支持される。
【0030】
図7に示すように電動モータ20は、外装ケース17に対して回転不能に支持された固定子20bを有する。固定子20bは、モータ軸20aの径方向の外側に配置される。電動モータ20の回転子20cは、固定子20bの内周側でモータ軸20aと一体に回転可能にモータ軸20aに取り付けられる。回転子20cの前方には、モータセンサ20dが設けられる。モータセンサ20dはモータ軸20aの回転数を検知する。モータセンサ20dは回転子20cに設けられるマグネット20hと、マグネット20hの磁気を検知するホールIC20gを有する。回転子20cと後方の軸受20fの前後方向の間には、電動モータ20に冷却風を導入するためのファン21がモータ軸20aに一体に取り付けられる。モータ軸20aとともにファン21が回転すると、冷却風が電動モータ20の前方から後方に向けて流れる。
【0031】
図7に示すように電動モータ20の前方には、モータ軸20aの出力を減速するための遊星減速機構22が設けられる。遊星減速機構22は、電動モータ20前後方向に並んで外装ケース17に収容される。モータ軸20aの回転駆動は、遊星減速機構22において2段階で減速されてギヤ軸23に伝達される。
【0032】
図7に示すようにギヤ軸23は、軸受23b、23cによってモータ軸線Jを中心に回転可能に支持される。前方の軸受23bは、第1中央機構ハウジング13の凹部13cに圧入される。後方の軸受23cは、第2中央機構ハウジング14の凹部14cに圧入される。ギヤ軸23は軸受23b、23cの前後方向の間に駆動側ギヤ23aを有する。駆動側ギヤ23aは、ギヤ軸23と一体になってモータ軸線Jを中心に回転する。
【0033】
図7に示すようにギヤ軸23とねじ軸27の上下方向の間には、アイドルギヤ24が設けられる。アイドルギヤ24は、前後方向に延出する円柱状の軸部材24aによって軸部材24aの軸回りに回転可能に支持される。アイドルギヤ24は下方のギヤ軸23の駆動側ギヤ23aと噛合し、かつ上方の従動側ギヤ26aと噛合する。
【0034】
図7に示すように工具本体10には、ボールねじ機構と称される送りねじ機構25が設けられる。送りねじ機構25はねじ軸27と雌ねじ部材26を有する。ねじ軸27の外周面に雄ねじ27aが設けられる。雌ねじ部材26は、ねじ軸27を周方向に覆う略円筒形状に形成される。雌ねじ部材26の内周面には雌ねじ26bが設けられる。雌ねじ26bは、複数のボール27bを介してねじ軸27の雄ねじ27aに螺合される。雌ねじ部材26の外周には、径方向の外側に突出しかつアイドルギヤ24と噛み合う従動側ギヤ26aが設けられる。駆動側ギヤ23aとアイドルギヤ24との噛み合いとアイドルギヤ24と従動側ギヤ26aとの噛み合いによって、ギヤ軸23の回転駆動が雌ねじ部材26に減速して伝達される。
【0035】
図7に示すように雌ねじ部材26は、工具本体10内に収容された軸受26c,26dによってねじ軸軸線Kを中心にして回転可能に支持される。前方の軸受26cは、第1中央機構ハウジング13の内周面13aに圧入される。後方の軸受26dは、第2中央機構ハウジング14の内周面14aに圧入される。雌ねじ部材26の後面と後側機構ハウジング15の前面15aとの間には、雌ねじ部材26を後方に押すスラスト荷重を受けるためのスラスト軸受26eが設けられる。
【0036】
図4、5に示すようにねじ軸27の後部には、ねじ軸27の回り止めをしかつねじ軸27の前後動をガイドするねじ軸ガイド28が取付けられる。ねじ軸ガイド28は、ねじ軸27の後端に連結されかつ左右方向に延出するローラシャフト28aを有する。ローラシャフト28aの左右両端には、ローラ28bが設けられる。第2中央機構ハウジング14の左右側部には、前後方向に延出するループ形状の一対のレール28cが取付けられる。ローラ28bは、レール28cと係合してレール28cに沿って前後方向に移動可能である。ねじ軸27は、ローラ28bに案内されてねじ軸ガイド28とともに前後方向に移動する。
【0037】
図5、6に示すように工具本体10は、複数のジョー4を回転させるジョー回転機構30を有する。図12、13に示すように複数のジョー4は、ジョー回転機構30によってねじ軸軸線Kの軸回りに回転する。ジョー回転機構30は、モータ軸20aの回転に連動して前後動するプッシュプレート34を有する。プッシュプレート34の前後動に連動してシャフト31が軸回りに回転する。
【0038】
図3、4に示すようにジョー回転機構30は、シャフト31に取付けられたボールリテーナ35を有する。ボールリテーナ35は、シャフト31の延出方向に沿って前後方向に移動可能である。シャフト31の右方には、シャフト31と平行に延出するガイドシャフト41が設けられる。第2中央機構ハウジング14の下方延出部14bには、後方へ突出する円筒状のガイドシャフト支持部14eが設けられる。ガイドシャフト41は、先端に設けられた雄ねじをガイドシャフト支持部14eの雌ねじに螺合させることで第2中央機構ハウジング14に固定される。
【0039】
図3に示すようにボールリテーナ35は、略円筒状のスリーブ装着部35aと、スリーブ装着部35aの右方に延出する側方延出部35dを有する。スリーブ装着部35aの中央には、前後方向に貫通するシャフト挿通孔35cが設けられる。シャフト挿通孔35cには、シャフト31が前後方向にスライド可能に挿通される。側方延出部35dには、前後方向に貫通する透孔35eが設けられる。透孔35eには、ガイドシャフト41が前後方向にスライド可能に挿通される。かくしてボールリテーナ35は、シャフト31とガイドシャフト41に案内されて前後方向にスライド可能であり、かつシャフト31の軸回りの回転を規制する。
【0040】
図5に示すようにプッシュプレート34は、板状に形成され、板厚方向を前後方向とする姿勢でローラシャフト28aに一体に取付けられる。プッシュプレート34は、ローラシャフト28aから下方に延出してスリーブ装着部35a(図3参照)の後方に配置される。プッシュプレート34は、前後方向に貫通する透孔34aを有する。透孔34aには、スリーブ装着部35aから後方へ突出したシャフト31が挿通される。プッシュプレート34は、ねじ軸27と一体で前後動する。ねじ軸27が前進する際、プッシュプレート34はボールリテーナ35の後面を前方へ押圧する。ねじ軸27が後退する際、プッシュプレート34はボールリテーナ35から離間するように移動する。そのためプッシュプレート34がボールリテーナ35を移動させる力は作用しない。
【0041】
図3に示すようにスリーブ装着部35aには、左右方向に貫通してシャフト挿通孔35cと連通するボール保持孔35bが設けられる。左右一対のボール保持孔35bには、それぞれボール38が挿入される。スリーブ装着部35aには、一対のボール38およびボール保持孔35bを径方向外方から覆うスリーブ36が装着される。スリーブ36をスリーブ装着部35aに装着することで、一対のボール38はボール保持孔35bから脱離しないように保持される。一対のボール38は、シャフト31の左方と右方それぞれに位置する。一対のボール38は、ボールリテーナ35が回り止めされることでシャフト31の軸回りの移動が規制される。スリーブ装着部35aの前部には、スリーブ36を保持するためのナット37が装着される。
【0042】
図3に示すようにシャフト31は、前シャフト32と後シャフト33を前後方向に組付けることで構成される。前シャフト32は、第1中央機構ハウジング13のシャフト支持部13eに軸回りに回転可能に支持される。後シャフト33は、第2中央機構ハウジング14のシャフト支持部14gに軸回りに回転可能に支持される。後シャフト33は、ボールリテーナ35に挿通される。後シャフト33の前部には、雄ねじ33aが設けられる。前シャフト32の後部には、雄ねじ33aと螺合する雌ねじ32aが設けられる。雌ねじ32aと雄ねじ33aを螺合させることで前シャフト32と後シャフト33が一体に取付けられる。
【0043】
図3、12に示すように後シャフト33の外周面には、一対のボール溝33bが設けられる。ボール溝33bは、概ね後シャフト33の長手方向に延出し、かつ後方から前方に向けてねじ溝のように周方向に延出する。ボール溝33bは、後方から前方に向けて第2回転R2(図6参照)の方向へ延出する。一対のボール溝33bは、後シャフト33の軸中心に対して点対称の位置関係で配置される。各ボール溝33bには、ボールリテーナ35のボール保持孔35bからシャフト挿通孔35cへと径方向内方へ突出したボール38が係合する。
【0044】
図5、6に示すようにボールリテーナ35が後シャフト33に対して前後動する際、一対のボール38(図3参照)はボール溝33bの延出方向に沿ってボール溝33b内を移動する。一対のボール38が後シャフト33の軸回りに移動しないため、後シャフト33は前後動するボールリテーナ35に対して軸回りに回転する。後シャフト33は、ボールリテーナ35が前進する場合、ボールリテーナ35に対して第1回転R1の方向に回転する。後シャフト33は、ボールリテーナ35が後退する場合、ボールリテーナ35に対して第2回転R2の方向に回転する。後シャフト33に螺合された前シャフト32は、後シャフト33と一体で軸回りに回転する。
【0045】
図12、13に示すように第2中央機構ハウジング14のシャフト支持部14gには、径方向に張り出したフランジ状のばね受け部14fが設けられる。ばね受け部14fとボールリテーナ35の前後方向の間には、ボールリテーナ35を後方へ付勢する圧縮ばね39が介装される。
【0046】
図11、12に示すようにジョー回転機構30は、円筒形状のワンウェイクラッチ42と駆動側ギヤ43を有する。ワンウェイクラッチ42と駆動側ギヤ43は、シャフト支持部13eの前方において前シャフト32の前部に装着される。ワンウェイクラッチ42は、前シャフト32と駆動側ギヤ43の径方向の間に設けられる。ワンウェイクラッチ42は、例えばスプラグ式と称される構造で径方向内周面側の一方向の回転のみを径方向外周面側へ伝達する。ワンウェイクラッチ42は、前シャフト32の第2回転R2(図6参照)を駆動側ギヤ43へ伝達する。ワンウェイクラッチ42は、前シャフト32の第1回転R1(図5参照)を駆動側ギヤ43へ伝達せず前シャフト32を空転させる。
【0047】
図5、6に示すように前シャフト32の後部には、前後方向に相互に平行に延出する一対の平面を具備する二面幅部32bが設けられる。二面幅部32bは、第1中央機構ハウジング13と第2中央機構ハウジング14の前後方向の間で第1中央機構ハウジング13および第2中央機構ハウジング14の外側へ露出する位置に配置される。後シャフト33の後端には、前後方向に相互に平行に延出する一対の平面を具備する二面幅部33cが設けられる。二面幅部32bをスパナ等で保持して前シャフト32の回り止めをした状態で、二面幅部33cをスパナ等で保持して後シャフト33を前シャフト32に螺合させることができる。
【0048】
図3、9に示すようにジョー回転機構30は、略円筒形状の回転ギヤ50と、略円筒形状の受けカム51を有する。回転ギヤ50は、雌ねじ部材26の前方に配置される。受けカム51は、回転ギヤ50の前方に配置される。回転ギヤ50と受けカム51は、前側機構ハウジング12の内周面によって同軸上で回転可能に支持される。前側機構ハウジング12は、ねじ軸軸線Kを中心とする円筒内周面である第1内周面12bと第2内周面12cを有する。第1内周面12bと第2内周面12cは、前後に並んで連通される。第2内周面12cは、第1内周面の前方に位置しかつ第1内周面12bよりも小径に設けられる。第1内周面12bの前端と第2内周面12cの後端は、径方向に延出する径方向延出面12dによって連結される。
【0049】
図3、12に示すように回転ギヤ50は、円筒状の円筒壁50bと、円筒壁50bの後部から径方向に突出する従動側ギヤ50aを有する。円筒壁50bの中央には、前後方向に貫通する挿通孔50cが設けられる。挿通孔50cは、ねじ軸27を挿通させてねじ軸27と楔3が前後方向に移動可能な径で設けられる。円筒壁50bの外周面は、前側機構ハウジング12の第1内周面12bと摺動することでねじ軸軸線Kの軸回りに回転する。従動側ギヤ50aは、第1内周面12bよりも後方で駆動側ギヤ43と噛合する。駆動側ギヤ43の回転動力は、従動側ギヤ50aへ減速して伝達される。従動側ギヤ50aは、駆動側ギヤ43が第2回転R2(図6参照)の方向に回転する時、前方から見て反時計回り方向に回転する。従動側ギヤ50aは、駆動側ギヤ43が第1回転R1(図5参照)の方向に回転する時、前方から見て時計回り方向に回転する。
【0050】
図12、13に示すように回転ギヤ50は、円筒壁50bの後部から径方向内方へ延出するばね受け部50dを有する。ばね受け部50dは、従動側ギヤ50aの径方向内方に位置する。ばね受け部50dの内周面は、ねじ軸27を挿通可能かつ楔3の後端3aを通さない大きさで設けられる。ばね受け部50dの前面には後述するコイルばね52の後部が当接する。ばね受け部50dは、ねじ軸27が異常に後方へ移動することを抑制するストッパを兼ねる。通常、ねじ軸27が後退する際、楔3の後端3aはばね受け部50dよりも前方に位置する。万一、ねじ軸27が後端位置よりもさらに後方へ移動しようとする場合でも、楔3の後端3aがばね受け部50dの前面に当接することでねじ軸27の後方への移動が停止する。
【0051】
図3、14に示すように回転ギヤ50は、円筒壁50bの前面から前方へ突出する略矩形状のガイド50eを有する。ガイド50eは、円筒壁50bの周方向に180°間隔で計2つ設けられる。ガイド50eは、受けカム51を回転ギヤ50に対して相対回転しないようにかつ前後方向に移動するように案内する。
【0052】
図3、12に示すように受けカム51は、円筒状の円筒部51aを有する。円筒部51aの外周面は、前側機構ハウジング12の第2内周面12cと摺動することでねじ軸軸線Kの軸回りに回転する。円筒部51aの中央には、前後方向に貫通する挿通孔51bが設けられる。挿通孔51bは、ねじ軸27と楔3を挿通可能な径で設けられる。円筒部51aの後部には、径方向外方へフランジ状に突出する第2ばね受け部51cが設けられる。第2ばね受け部51cの外周面は、回転ギヤ50の円筒壁50bの外周面と略同じ径で設けられる。第2ばね受け部51cの外周面は、前側機構ハウジング12の第1内周面12bと摺動することでねじ軸軸線Kの軸回りに回転する。回転ギヤ50のばね受け部50dと受けカム51の第2ばね受け部51cとの間にコイルばね(付勢部材)52が介装される。受けカム51は、コイルばね52によって回転ギヤ50に対して前方へ付勢されている。コイルばね52による受けカム51の付勢方向は、ねじ軸軸線Kの延出方向に沿っている。
【0053】
図3、14に示すように第2ばね受け部51cには、径方向内方へ切り欠かれ、かつ第2ばね受け部51cを前後方向に貫通するガイド係合部51dが設けられる。ガイド係合部51dは、第2ばね受け部51cの周方向に180°間隔で計2つ設けられる。各ガイド係合部51dは、回転ギヤ50の各ガイド50eと係合する。受けカム51は、各ガイド係合部51dと各ガイド50eを係合させることで回転ギヤ50と一体でねじ軸軸線K(図12参照)の軸回りに回転する。また、受けカム51は、各ガイド係合部51dと各ガイド50eを係合させることで回転ギヤ50に対して前後方向に相対移動可能である。
【0054】
図12、13に示すように受けカム51が前方位置P1に位置する時、コイルばね52は概ね自然長である。受けカム51が前方位置P1に位置する時、円筒壁50bの前面と第2ばね受け部51cの後面の間には、受けカム51の後方への移動を許容するスペースSが形成される。ガイド50eおよびガイド係合部51dの前後長さは、受けカム51が前方位置P1に位置する時にガイド50eとガイド係合部51dの係合が外れない長さで設けられる。
【0055】
図3、14に示すように受けカム51は、円筒部51aの前面51fから前方へ突出する複数のカム係合部51eを有する。各カム係合部51eは矩形状に形成される。カム係合部51eは、円筒部51aの周方向に60°間隔で計6つ設けられる。カム係合部51eの前後長さD1は、受けカム51が回転ギヤ50に対して前方位置P1から後方の退避位置P2まで移動可能な距離D2以下である。換言すると距離D2は、カム係合部51eの前後長さD1以上の長さである。なお、図ではガイド50eとガイド係合部51dの係合を明確にする前方位置P1で記載しているが、実際の前方位置P1はガイド50eとガイド係合部51dの係合が外れる直前の位置まで前方に設定可能である。
【0056】
図9、14に示すようにジョー4の後面には、受けカム51の複数のカム係合部51eのいずれか1つと係合する凹形状のジョー係合部(凹部)4bが設けられる。複数のジョー4は、各カム係合部51eを各ジョー4のジョー係合部4bと係合させることで、受けカム51と一体でねじ軸軸線Kの軸回りに回転する。各ジョー係合部4bの周方向両端には、ジョー係合部4bに対して後方へ凸形状の凸部4dが形成される。ジョー係合部4bと凸部4dの前後の間隔は、カム係合部51eの前後長さD1と略同じ長さである。
【0057】
図9、10に示すように各ジョー4の後部の径方向外周には、断面円弧状のリング収容溝4aが設けられる。複数のジョー4のリング収容溝4aは、周方向に連なって円環状の溝を形成する。複数のジョー4は、リング収容溝4aに挿入されかつ弾性的に伸縮可能なリング4cによって周方向に連結される。キャップ2の内周面には、リング4cを収容可能なジョー支持溝2aが径方向外方および周方向に延出して設けられる。ジョー支持溝2aは、リング4cの径方向の移動は許容するが、リング4cの前後方向の移動は規制する。複数のジョー4は、ジョー支持溝2aに支持されたリング4cを中心にして径方向に開閉する。
【0058】
図7、8に示すように検出器29はマグネット28dと、マグネット28dの磁気を検知する後端位置センサ29aと前端位置センサ29bを有する。マグネット28dはローラシャフト28aの上部に取付けられる。後端位置センサ29aと前端位置センサ29bは、外装ケース17の上部内周面に設けられる。後端位置センサ29aはねじ軸27の後端位置を検知する。前端位置センサ29bはねじ軸27の前端位置を検知する。後端位置センサ29aは、ねじ軸27が後端位置に位置する際のマグネット28dの直上位置に配置される。後端位置センサ29aは、マグネット28dと前後方向にオーバーラップした時にねじ軸27の後端位置を検知し、制御装置9(図1参照)に信号を送信する。前端位置センサ29bは、ねじ軸27が前端位置に位置する際のマグネット28dの直上位置に配置される。前端位置センサ29bは、マグネット28dと前後方向にオーバーラップした時にねじ軸27の前端位置を検知し、制御装置9に信号を送信する。前端位置センサ29bと後端位置センサ29aは、例えばホールICである。
【0059】
図7、8を参照して送りねじ機構25とジョー回転機構30の駆動について説明する。先ず電動モータ20のモータ軸20aが回転する。モータ軸20aの回転駆動が遊星減速機構22で減速されてギヤ軸23に伝わる。ギヤ軸23が回転すると、駆動側ギヤ23aと噛合したアイドルギヤ24が回転する。従動側ギヤ26aでアイドルギヤ24と噛合した雌ねじ部材26がねじ軸軸線Kの軸回りに回転する。雌ねじ部材26が回転すると、ねじ軸ガイド28によって回り止めされたねじ軸27が前後動する。ねじ軸27が前進する際、ねじ軸27の前端に装着された楔3が複数のジョー4とリング4cを径方向外方の開き位置に移動するように押圧する。ねじ軸27が後退する際には、楔3の押圧力が解消されるため、リング4cが収縮して複数のジョー4が径方向内方の閉じ位置に戻る。
【0060】
図7、8に示すように電動モータ20は、制御装置9によって正転と逆転が切り替えられる。ねじ軸27は、電動モータ20が正転する際に前進し、電動モータ20が逆転する際に後退する。使用者がスイッチレバー6を引く操作を解除すると、電動モータ20が逆転する。これによりねじ軸27は、通常状態として後端位置に位置する。制御装置9は後端位置センサ29aから信号を受けて、ねじ軸27が後端位置に位置することを検知する。使用者がスイッチレバー6を引くと、制御装置9は電動モータ20を正転駆動させる。これによりねじ軸27が前進する。ねじ軸27が前端位置に移動すると、前端位置センサ29bが制御装置9に信号を送る。前端位置センサ29bからの信号に基づき、制御装置9はねじ軸27が前端位置に到達したと判断する。
【0061】
図8を参照するように、ねじ軸27が前端位置に到達したことを判断した制御装置9は、電動モータ20への電力供給を停止する。電力供給を停止した後も電動モータ20の回転子20cは慣性力により回転する。このため電磁誘導により固定子20bに設けられたコイルに誘導電流が流れる。この誘導電流により固定子20bは回転子20cのマグネットを引き寄せる磁力を生じる。これにより回転子20cの回転が抑制される(回生制動)。この逆起電力によるブレーキ作用により回転子20cは回転を停止する。制御装置9はモータセンサ20dからの信号に基づいて電動モータ20の回転が停止したことを検知する。すなわち制御装置9は、モータセンサ20dからの信号に基づいてねじ軸27の停止を検知する。制御装置9は電動モータ20の回転が完全に停止したと判断すると、電動モータ20を逆転駆動させる。これによりねじ軸27が後退する。ねじ軸27が後端位置に移動すると、後端位置センサ29aが制御装置9に信号を送る。これに基づき制御装置9はねじ軸27が後端位置(初期位置)に到達したと判断する。制御装置9は電動モータ20への電力供給を停止する。
【0062】
ねじ軸27が前進する際、ローラシャフト28aに装着されたプッシュプレート34も一体に前進する。プッシュプレート34は、ボールリテーナ35を圧縮ばね39の付勢力に抗して前方へ押圧する。ボールリテーナ35が前進すると、ボール38がボール溝33bと係合し(図3参照)、かつガイドシャフト41がボールリテーナ35を回り止めすることによって、シャフト31が第1回転R1の方向に回転する。この時、ワンウェイクラッチ42は、シャフト31の回転動力を駆動側ギヤ43に伝達しない。回転ギヤ50は、駆動側ギヤ43から回転動力が伝達されないため回転しない。そのため回転ギヤ50と連結される受けカム51と複数のジョー4は回転しない。かくして複数のジョー4は、ねじ軸軸線Kの軸回りに回転せず、楔3に押されて径方向外方に開く。
【0063】
ねじ軸27が前進する際、受けカム51は、回転ギヤ50やねじ軸27から周方向に回転する力も前後動する力も受けない。そのため受けカム51は、コイルばね52が概ね自然長である前方位置P1で保持される。概ね自然長のコイルばね52には、圧縮エネルギーが蓄積されない。
【0064】
ねじ軸27が後退する際、ローラシャフト28aに装着されたプッシュプレート34も一体に後退する。ボールリテーナ35は、プッシュプレート34の押圧力が解除されることで、圧縮ばね39に付勢されて後方へ移動する。ボールリテーナ35が後退すると、ボール38がボール溝33bと係合し、かつガイドシャフト41がボールリテーナ35を回り止めすることによって、シャフト31は第2回転R2の方向に回転する。この時、ワンウェイクラッチ42は、前シャフト32の回転動力を駆動側ギヤ43に伝達する。回転ギヤ50は、駆動側ギヤ43から回転動力が伝達されることで前方から見て反時計回り方向に回転する。受けカム51と複数のジョー4も、回転ギヤ50と一体に回転する。かくして複数のジョー4は、ねじ軸軸線Kの軸回りに前方から見て反時計回り方向に回転しながら径方向内方へ閉じる。
【0065】
ねじ軸27が後退する際、受けカム51は、回転ギヤ50から周方向に回転する力を受けるものの、回転ギヤ50やねじ軸27から前後動する力は受けない。そのため受けカム51は、コイルばね52が概ね自然長である前方位置P1で保持される。概ね自然長のコイルばね52には、圧縮エネルギーが蓄積されない。
【0066】
図1、14を参照するように管拡径工具1には、ジョー4の径方向の肉厚等が異なる複数種類のジョー4を取外し可能に装着できる。複数のジョー4を保持するキャップ2を本体ハウジング11から取外す際、各ジョー4のジョー係合部4bと受けカム51の各カム係合部51eとの係合が外れる。別の種類のジョー4を保持するキャップ2を本体ハウジング11に取付ける際、各ジョー4のジョー係合部4bと受けカム51の各カム係合部51eとが係合する。この時、ジョー係合部4bとカム係合部51eが正規の状態で係合しない場合がある。例えばジョー係合部4bの周方向両端の凸部4dとカム係合部51eが前後方向に当接する。この場合、各ジョー4は概ね前後長さD1分だけ、正規の位置よりも前方に位置する。そのためキャップ2を本体ハウジング11に十分に取付けられず、当該状態のままでは受けカム51から各ジョー4への回転駆動の伝達が良好に伝わらない。
【0067】
本開示のジョー回転機構30では、受けカム51をコイルばね52で前方位置P1へ付勢している。また、受けカム51は前方位置P1から退避位置P2まで、前後長さD1以上の距離D2を前後方向に移動できる。そのため凸部4dとカム係合部51eが前後方向に当接して相互に干渉した場合でも、カム係合部51eが距離D2だけ後方へ移動することで、凸部4dとカム係合部51eの干渉状態を解除できる。そのためジョー係合部4bとカム係合部51eを改めて正規の状態で係合させることができる。
【0068】
別の実施例として制御装置9は、電動モータ20への電力供給を停止した後、ねじ軸27が後方に移動したことを検知した際にも電動モータ20を逆転駆動させても良い。上述したようにねじ軸27が前方に移動すると、複数のジョー4がPEX管の端部を拡径する。このため複数のジョー4はPEX管の収縮力を受ける。この収縮力によりねじ軸27は後方に移動する方向に力を受ける。このため前端位置に到達したねじ軸27は、PEX管の収縮力によって、停止時間がほとんどなく、後方に移動を開始する場合がある。この場合、制御装置9がねじ軸27の停止を検出できない場合がある。上述する制御装置9はねじ軸27が所定時間以上停止した際にのみねじ軸27を後退させる。そのためねじ軸27が後方に移動して停止した後に、制御装置9がねじ軸27をさらに後方へ移動させる。その結果、電動モータ20を逆転させるまでに時間がかかる。このような場合であっても制御装置9がねじ軸27の後方移動の検知により電動モータ20を逆転駆動させる構成とすることで、電動モータ20の完全停止を待つことなく短時間でねじ軸27を後退させることができる。制御装置9は前端位置センサ29bからの信号に基づいてねじ軸27の停止または後方への移動を検知しても良い。
【0069】
別の実施例として制御装置9は、ねじ軸27が前端位置に到達したとき又は電動モータ20への電力供給を停止したときから規定の保持時間(例えば0.3秒)を超えた後に、ねじ軸27の停止又は後方への移動を検知しても良い。これによりねじ軸27が複数のジョー4を径方向の外側に開いてPEX管の端部を拡径する時間を保持時間以上にすることができる。このため1回の拡径動作でPEX管の端部を十分に拡径でき、拡径動作の回数を減らすことができる。
【0070】
別の実施例として制御装置9はモータセンサ20dからの信号に基づいて、ねじ軸27が前端位置に到達したことを判断しても良い。制御装置9はモータセンサ20dからの信号に基づいてねじ軸27の停止または後方への移動を検知しても良い。
【0071】
別の実施例として制御装置9は電動モータ20、遊星減速機構22、ギヤ軸23、アイドルギヤ24、雌ねじ部材26、ねじ軸27のいずれかの部材の移動を検知するセンサを有しても良い。例えば図7に示すように後側機構ハウジング15の前面15aの位置に圧力センサ15cを設けても良い。ねじ軸27がPEX管の収縮力により後方に移動した際に、雌ねじ部材26がねじ軸27と共に後方に移動する場合がある。このような場合に圧力センサ15cは、雌ねじ部材26から後側機構ハウジング15に掛かる圧力を検知することで雌ねじ部材26の後方への移動を検知できる。制御装置9は圧力センサ15cからの信号に基づいてねじ軸27の停止または後方への移動を検知しても良い。
【0072】
以上のように図3に示すように管拡径工具1は、電動モータ20によって回転する雌ねじ部材26を有する。ねじ軸27が雌ねじ部材26に螺合されて前後動する。ねじ軸27の前端に楔3が設けられる。楔3は、複数のジョー4の間に挿入されることでジョー4を介して流体管を拡径する。ねじ軸27が前位置に到達したことを前端位置センサ29bが検出する。制御装置9が電動モータ20とブレーキを制御する。制御装置9は、ねじ軸27が前位置に到達したことを前端位置センサ29bからの信号に基づいて判断した際にブレーキを作動させる。ブレーキがねじ軸27の前方移動を停止させる。更に制御装置9は、ねじ軸27が停止したことを検知した際に電動モータ20の出力を逆転させてねじ軸27を後方へ移動させる。
【0073】
従って制御装置9は電動モータ20を完全に停止したことを検知した後、電動モータ20の出力を逆転させる。このため制御装置9は、電動モータ20が正転している最中に電動モータ20を逆転させることを防止できる。そのため電動モータ20を正転中に逆転させることで生じる大電流等の負荷を抑制できる。
【0074】
図8に示すように制御装置9はブレーキを作動させた後、ねじ軸27の停止又は後方への移動を検知した際に電動モータ20の出力を逆転させる。従ってブレーキ作動後にねじ軸27が外力等により後方に移動した場合でも、制御装置9が電動モータ20を逆転できる。例えば、ねじ軸27が前方への移動から後方への移動へのタイミングが短く、停止時間が短い場合がある。この場合、ねじ軸27の停止を検出できず、ねじ軸27が完全に停止するのを待つ場合が想定される。このような場合でも本局面によると、ねじ軸27の後方への移動時に電動モータ20が逆転される。このため上記の場合であっても、短時間にねじ軸27を後方に移動させることができる。
【0075】
制御装置9はねじ軸27が前位置に到達したときから又はブレーキを作動開始したときからの時間が規定の保持時間を超えた際に、ねじ軸27の停止又は後方への移動を検知する。従ってねじ軸27が前進し、流体管を拡径する時間を少なくとも保持時間以上にすることができる。これにより1回の拡径動作において流体管を十分に拡径でき、拡径動作の回数を減らすことができる。
【0076】
保持時間は0.1~0.5秒の範囲で設定される。従って保持時間を確保して効率よく流体管を拡径できる。
【0077】
図7に示すように電動モータ20は、固定子20bと固定子20b周りを回転する回転子20cを有する。ブレーキは電動モータ20において構成される。ブレーキは、電動モータ20への電力供給を停止することで回転子20cの慣性力によって生じる逆起電力によって回転子20cの回転を抑制する。従って電動モータ20を停止させるために電力を供給する構成と比べて電力が少なくできる。あるいは部品点数を軽減できる。
【0078】
図7に示すように検出器29はねじ軸27に設けられたマグネット28d(第1マグネット)と、工具本体10に設けられてマグネット28dの磁気を検知する前端位置センサ29b(第1ホールIC)を有する。従って配線を必要としないマグネット28dが移動するねじ軸27に設けられる。配線が通常接続される前端位置センサ29bが移動しない工具本体10に設けられる。そのため配線も工具本体10に設けられることで、比較的簡易に検出器29を設けることができる。しかもマグネット28dよりも高価な前端位置センサ29bの破損の確率も低くなる。
【0079】
図7に示すように検出器は、電動モータ20の回転を検知するモータセンサ20dを有する。制御装置9が、モータセンサ20dからの信号に基づいてねじ軸27が前位置に到達したことを判断する。従って例えばモータセンサ20dが他の理由により既に設けられている場合は、新たな検出器を必要としない。これにより部品点数の増加を抑制できる。
【0080】
図7に示すようにモータセンサ20dが電動モータ20の回転を検知する。制御装置9が、モータセンサ20dからの検知信号に基づいてねじ軸27の停止または後方への移動を判断する。従って制御装置9が、電動モータ20の回転に基づいてねじ軸27の停止または後方への移動を検出できる。
【0081】
図7に示すようにモータセンサ20dは電動モータ20に設けられたマグネット20h(第2マグネット)と、マグネット20hの磁気を検知するホールIC20g(第2ホールIC)を有する。従って比較的安価なモータセンサ20dを利用できる。
【0082】
図7に示すように電動モータ20とねじ軸27の間には、電動モータ20からの出力を伝達するギヤを含む遊星減速機構22、ギヤ軸23、アイドルギヤ24、雌ねじ部材26(伝達機構)が設けられる。圧力センサ15cが電動モータ20、遊星減速機構22、ギヤ軸23、アイドルギヤ24、雌ねじ部材26、ねじ軸27のいずれかの部材の移動を検知する。制御装置9が圧力センサ15cからの信号に基づいてねじ軸27の停止または後方への移動を判断する。従って制御装置9が電動モータ20、遊星減速機構22、ギヤ軸23、アイドルギヤ24、雌ねじ部材26、ねじ軸27のいずれかの移動を検知することでねじ軸27の停止または後方への移動を判断する。
【0083】
図7、9に示すようにねじ軸27と雌ねじ部材26の螺合部分にボール27bが介装される。従って螺合部分に介装されたボール27bによって、雌ねじ部材26からねじ軸27への動力の伝達効率が向上する。そのため雌ねじ部材26の回転駆動をねじ軸27の前後動に効率良く変換できる。
【0084】
以上説明した実施例には種々変更を加えることができる。ブレーキは回転子20cの慣性力により生じる逆起電力による構成を例示した。これに代えて制御装置9が、回転子20cを停止させるように電動モータ20に電力を供給する構成でも良い。
【0085】
保持時間は0.1~0.5秒の範囲内であれば任意の時間で良い。制御装置9はねじ軸27が前端位置に到達したときから保持時間のカウントを開始する構成でも良い。
【0086】
制御装置9は、前端位置センサ29b、モータセンサ20dあるいは圧力センサ15cのいずれかの信号に基づいてねじ軸27の停止または後方への移動を検知する構成を例示した。これに代えて前端位置センサ29b、モータセンサ20d、圧力センサ15cのうち複数のセンサの信号に基づいてねじ軸27の停止または後方への移動を検知しても良い。
【0087】
圧力センサ15cは電動モータ20、伝達機構、ねじ軸27のいずれかの部材の移動を検知できる配置であれば任意の位置に設けて良い。マグネット28dは2つ設ける構成を例示した。これに代えて例えば1つまたは3つ以上のマグネット28dを設けても良い。検出器29は後端位置センサ29aと前端位置センサ29bの2つのホールICを有する構成を例示した。これに代えて1つのホールICのみを有する構成でも良い。その場合、マグネット28dを複数設けることで、ねじ軸27の前端位置と後端位置を検知する構成としても良い。
【0088】
ジョー4を6つ有する管拡径工具1を例示した。これに代えて、例えば5つ以下または7つ以上のジョー4を有していても良い。
【0089】
前方から見て複数のジョー4を反時計回り方向に回転させるジョー回転機構30を例示した。これに代えて、前方から見て複数のジョー4を時計回り方向に回転させる構成としても良い。この場合、ワンウェイクラッチ42が駆動側ギヤ43に動力を伝達する前シャフト32の回転方向は、前方から見て反時計回り方向(図5に示す第1回転R1の方向)である。
【0090】
ねじ軸27の雄ねじ27aと雌ねじ部材26の雌ねじ26bの間にボール27bが介装されるボールねじ機構と称される送りねじ機構25を例示した。これに代えて、例えば雄ねじ27aと雌ねじ26bが直接螺合してボールが介装されない送りねじ機構であっても良い。
【0091】
ねじ軸27と楔3の両方を挿通可能な回転ギヤ50の円筒壁50bを例示した。これに代えて円筒壁50bにはねじ軸27と楔3のいずれか一方のみ、例えばねじ軸27のみを挿通可能としても良い。ねじ軸27と楔3の両方を挿通可能な受けカム51の円筒部51aを例示した。これに代えて円筒部51aにはねじ軸27と楔3のいずれか一方のみ、例えば楔3のみを挿通可能としても良い。
【0092】
回転ギヤ50に凸形状のガイド50eを設け、受けカム51に凹形状のガイド係合部51dを設ける構成を例示した。ガイド50eとガイド係合部51dの凹凸を逆にしても良い。カム係合部51eとジョー係合部4bの凹凸を例示したものから逆に代えても良い。
【0093】
受けカム51を前方へ付勢する付勢部材としてコイルばね52を例示した。これに代えて例えば円筒状のゴム部材等であっても良い。コイルばね52を回転ギヤ50の円筒壁50bの内周側に設ける構成を例示した。これに代えてコイルばね52を回転ギヤ50の円筒壁50bの外周側に設けても良い。
【0094】
実施例の管拡径工具1が本開示の1つの局面における管拡径工具の一例である。実施例の電動モータ20が本開示の1つの局面におけるモータの一例である。実施例の雌ねじ部材26が本開示の1つの局面における雌ねじの一例である。実施例の検出器29が本開示の1つの局面における検出器の一例である。実施例の電動モータ20の回生制動が本開示の1つの局面におけるブレーキの一例である。実施例の制御装置9が本開示の1つの局面における制御装置の一例である。
【0095】
実施例の固定子20bが本開示の1つの局面における固定子の一例である。実施例の回転子20cが本開示の1つの局面における回転子の一例である。
【0096】
実施例のマグネット28dが本開示の1つの局面における第1マグネットの一例である。実施例の前端位置センサ29bが本開示の1つの局面における第1ホールICの一例である。実施例の工具本体10が本開示の1つの局面における工具本体の一例である。
【0097】
実施例のモータセンサ20dが本開示の1つの局面におけるモータセンサの一例である。
【0098】
実施例のマグネット20hが本開示の1つの局面における第2マグネットの一例である。実施例のホールIC20gが本開示の1つの局面における第2ホールICの一例である。
【0099】
実施例の遊星減速機構22、ギヤ軸23、アイドルギヤ24、雌ねじ部材26が本開示の1つの局面における伝達機構の一例である。実施例の圧力センサ15cが本開示の1つの局面におけるセンサの一例である。
【0100】
実施例のボール27bが本開示の1つの局面におけるボールの一例である。
【符号の説明】
【0101】
1 管拡径工具
2 キャップ
2a ジョー支持溝
2b 雌ねじ
3 楔
3a 後端
4 ジョー
4a リング収容溝
4b ジョー係合部
4c リング
4d 凸部
5 グリップ
6 スイッチレバー
6a スイッチ本体
7 膨出部
7a バッテリ取付部
8 バッテリ
9 制御装置
10 工具本体
11 本体ハウジング
12 前側機構ハウジング
12a 雄ねじ
12b 第1内周面
12c 第2内周面
12d 径方向延出面
12e フランジ
13 第1中央機構ハウジング
13a 内周面
13b 下方延出部
13c 凹部
13e シャフト支持部
13f ボス部
14 第2中央機構ハウジング
14a 内周面
14b 下方延出部
14c 凹部
14d 透孔
14e ガイドシャフト支持部
14f ばね受け部
14g シャフト支持部
14h ボス部
15 後側機構ハウジング
15a 前面
15b ボス部
15c 圧力センサ
16 ボルト
17 外装ケース
20 電動モータ
20a モータ軸
20b 固定子
20c 回転子
20d モータセンサ
20e 軸受
20f 軸受
20g ホールIC
20h マグネット
21 ファン
22 遊星減速機構
23 ギヤ軸
23a 駆動側ギヤ
23b 軸受
23c 軸受
24 アイドルギヤ
24a 軸部材
25 送りねじ機構
26 雌ねじ部材
26a 従動側ギヤ
26b 雌ねじ
26c 軸受
26d 軸受
26e スラスト軸受
27 ねじ軸
27a 雄ねじ
27b ボール
28 ねじ軸ガイド
28a ローラシャフト
28b ローラ
28c レール
28d マグネット
29 検出器
29a 後端位置センサ
29b 前端位置センサ
30 ジョー回転機構
31 シャフト
32 前シャフト
32a 雌ねじ
32b 二面幅部
33 後シャフト
33a 雄ねじ
33b ボール溝
33c 二面幅部
34 プッシュプレート
34a 透孔
35 ボールリテーナ
35a スリーブ装着部
35b ボール保持孔
35c シャフト挿通孔
35d 側方延出部
35e 透孔
36 スリーブ
37 ナット
38 ボール
39 圧縮ばね
41 ガイドシャフト
42 ワンウェイクラッチ
43 駆動側ギヤ
50 回転ギヤ
50a 従動側ギヤ
50b 円筒壁
50c 挿通孔
50d ばね受け部
50e ガイド
51 受けカム
51a 円筒部
51b 挿通孔
51c 第2ばね受け部
51d ガイド係合部
51e カム係合部
51f 前面
52 コイルばね
J モータ軸線
K ねじ軸軸線
R1 第1回転
R2 第2回転
S スペース
D1 前後長さ
D2 距離
P1 前方位置
P2 退避位置
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14