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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024119198
(43)【公開日】2024-09-03
(54)【発明の名称】内燃機関
(51)【国際特許分類】
   F02P 9/00 20060101AFI20240827BHJP
   F02B 23/10 20060101ALI20240827BHJP
   F02B 23/00 20060101ALI20240827BHJP
   F02M 21/02 20060101ALI20240827BHJP
   F02P 13/00 20060101ALI20240827BHJP
   F02B 31/00 20060101ALI20240827BHJP
   F02D 43/00 20060101ALI20240827BHJP
   F02D 19/02 20060101ALI20240827BHJP
【FI】
F02P9/00 305Z
F02P9/00 305A
F02B23/10 K
F02B23/10 310A
F02B23/00 V
F02M21/02 G
F02P13/00 302B
F02B31/00 500Z
F02M21/02 301R
F02M21/02 F
F02D43/00 301U
F02D19/02 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023025929
(22)【出願日】2023-02-22
(71)【出願人】
【識別番号】000003218
【氏名又は名称】株式会社豊田自動織機
(74)【代理人】
【識別番号】110000394
【氏名又は名称】弁理士法人岡田国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】田中 健太
【テーマコード(参考)】
3G019
3G023
3G092
3G384
【Fターム(参考)】
3G019AB03
3G019AB07
3G019AC01
3G019AC10
3G019GA10
3G019KA15
3G019KA16
3G023AA08
3G023AB03
3G023AC05
3G023AC07
3G023AD06
3G023AD12
3G023AD28
3G092AA01
3G092AA06
3G092AA07
3G092AA10
3G092AA17
3G092AB09
3G092AB19
3G092BA01
3G092BA03
3G092BA08
3G092CA01
3G092DC06
3G092DC09
3G092DD09
3G092EC10
3G092FA31
3G092GA10
3G092HA01X
3G092HD07Z
3G092HE01Z
3G092HE03Z
3G092HF08Z
3G092HF21Z
3G384AA06
3G384AA07
3G384AA10
3G384BA04
3G384BA23
3G384BA27
3G384CA23
3G384DA13
3G384EE32
3G384FA01Z
3G384FA06Z
3G384FA79Z
(57)【要約】
【課題】作動を開始するときに点火プラグの電極に水が付着していることに起因して失火が発生し、その結果として作動を開始できなくなることを回避し且つ点火プラグの消費電力が過大となることを回避できる内燃機関を提供する。
【解決手段】内燃機関は、燃料噴射弁と、燃焼室に位置する電極を備える点火プラグと、内燃機関の作動開始時及び作動停止時に、電極の近傍に発生する気流を増加させて電極に付着した水を除去する水除去制御を実行する制御部と、有する。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
内燃機関であって、
燃料噴射弁と、
燃焼室に位置する電極を備える点火プラグと、
前記内燃機関の作動開始時及び作動停止時に、前記電極近傍に発生する気流を増加させて前記電極に付着した水を除去する水除去制御を実行する制御部と、有する内燃機関。
【請求項2】
請求項1に記載の内燃機関であって、
前記燃焼室内に発生するタンブル流を増加させるために制御されるタンブルコントロールバルブを有し、
前記制御部は、
前記水除去制御の実行時に前記タンブルコントロールバルブを制御して前記電極近傍に発生する気流を増加させる、内燃機関。
【請求項3】
請求項1に記載の内燃機関であって、
前記燃焼室は、
主燃焼室、及び前記主燃焼室と連通し且つ空気噴射弁及び前記電極が配置された副燃焼室を有し、
前記制御部は、
前記水除去制御の実行時に前記空気噴射弁に空気を前記副燃焼室に噴射させる、内燃機関。
【請求項4】
請求項1乃至請求項3の何れか一項に記載の内燃機関であって、
前記制御部は、
前記燃料噴射弁による燃料噴射が開始される前に前記水除去制御を開始する、内燃機関。
【請求項5】
請求項1乃至請求項3の何れか一項に記載の内燃機関であって、
前記燃料噴射弁は、
水素又はアンモニアを噴射する、内燃機関。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内燃機関に関する。具体的には、点火プラグの失火の発生を回避するための制御を実行する制御部を有する内燃機関に関する。
【背景技術】
【0002】
内燃機関が作動を停止しているときに燃焼室の温度が低下した結果として結露が発生して点火プラグの電極に水(水滴)が付着する場合がある。加えて、内燃機関の作動中に電極に微小な水滴が付着する場合もある。内燃機関の点火プラグの電極に水が付着していると、燃料を含む混合気を点火できなくなる失火が発生する場合がある。例えば、内燃機関の作動開始時に失火が継続的に発生すると、作動を開始できなくなる虞がある。
【0003】
そのため、点火プラグの失火を防ぐ方法が提案されている。特許文献1は、燃焼室に導入される吸気の湿度に応じて放電エネルギーを調整する点火制御装置を開示している。この点火制御装置によれば、湿度が高くなるほど点火プラグの点火コイルへの通電時間が長くなり(即ち、放電エネルギーが高められ)、その結果、湿度が高くなっても点火プラグが失火することが回避される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2016-37880号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上述した点火制御装置は、吸気の湿度を検出するための湿度検出部(即ち、湿度センサ)を新たに必要とするため内燃機関の構成が複雑となる虞がある。一方、温度検出部を設けずに(即ち、湿度に依らずに)点火プラグの放電エネルギーを常に高めると、点火プラグの消費電力が過大となる可能性がある。
【0006】
本発明は、このような点に鑑みて創案されたものであり、点火プラグの消費電力が過大となることを回避しつつ、点火プラグの電極に付着した水に起因した失火により内燃機関が作動を開始できなくなる事象の発生を回避できる内燃機関を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するため、本発明の第1の発明に係る内燃機関は、燃料噴射弁と、燃焼室に位置する電極を備える点火プラグと、前記内燃機関の作動開始時及び作動停止時に、前記電極近傍に発生する気流を増加させて前記電極に付着した水を除去する水除去制御を実行する制御部と、有する。
【0008】
本発明の第2の発明は、上記第1の発明に係る内燃機関であって、前記燃焼室内に発生するタンブル流を増加させるために制御されるタンブルコントロールバルブを有し、前記制御部は、前記水除去制御の実行時に前記タンブルコントロールバルブを制御して前記電極近傍に発生する気流を増加させる。
【0009】
本発明の第3の発明は、上記第1の発明に係る内燃機関であって、前記燃焼室は、主燃焼室、及び前記主燃焼室と連通し且つ空気噴射弁及び前記電極が配置された副燃焼室を有し、前記制御部は、前記水除去制御の実行時に前記空気噴射弁に空気を前記副燃焼室に噴射させる。
【0010】
本発明の第4の発明は、上記第1の発明乃至第3の発明に係る内燃機関であって、前記制御部は、前記燃料噴射弁による燃料噴射が開始される前に前記水除去制御を開始する。
【0011】
本発明の第5の発明は、上記第1の発明乃至第3の発明に係る内燃機関であって、前記燃料噴射弁は、水素又はアンモニアを噴射する。
【発明の効果】
【0012】
第1の発明では、内燃機関の始動時において点火プラグの電極に付着していた水が、電極近傍に発生する気流の増加(例えば、流量及び/又は流速の増加)を伴う水除去制御によって除去される。具体的には、電極に付着した水が吹き払われる、或いは気化する。そのため、内燃機関の作動停止中に燃焼室内の水蒸気が結露することによって発生した電極上の水が除去される。加えて、内燃機関が作動を停止するときにも水除去制御が実行されて内燃機関の作動中に電極に付着した水(例えば、微小な水滴)が除去される。そのため、電極に付着した水に起因して点火プラグが失火することが回避され、以て、内燃機関が始動しなくなることを回避できる可能性が高くなる。
【0013】
第2の発明では、タンブルコントロールバルブを用いて電極近傍の気流を増加させることによって水除去制御が実行される。換言すれば、タンブルコントロールバルブを備える内燃機関であれば、新たなセンサ又はアクチュエータ等を設けることなく水除去制御を実行することが可能であり、それにより、内燃機関の始動時に点火プラグの失火が発生することを回避できる可能性が高くなる。
【0014】
第3の発明では、空気噴射弁を用いて電極近傍の気流を増加させることによって水除去制御が実行される。それにより、内燃機関の始動時に点火プラグの失火が発生することを回避できる可能性が高くなる。
【0015】
第4の発明では、内燃機関の作動時における燃料の噴射、及び噴射された燃料を含む混合気への点火プラグによる点火が開始される前に電極に付着した水が除去される。この燃料噴射を伴わない水除去制御行は、例えば、クランキング時に実行される。換言すれば、内燃機関の始動時における点火プラグによる最初の点火が行われる前に電極の水が除去される。その結果、内燃機関の始動時に点火プラグの失火が発生することを回避できる可能性が更に高くなる。
【0016】
第5の発明は、水素又はアンモニアを燃料とする内燃機関に適用される。水素又はアンモニアを含む混合気が燃焼したときに発生する燃焼ガスは、多くの場合、ガソリン又は軽油を燃料とする場合と比較して水蒸気濃度が高くなり、電極に水が付着する可能性が高くなる。このような内燃機関であっても、水除去制御により電極に付着した水が除去され、その結果として内燃機関の始動時に点火プラグの失火が発生することを回避できる可能性が高くなる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】第1実施形態に係る内燃機関の概略図である。
図2】内燃機関のタンブルコントロールバルブによって制御される燃焼室に発生する気流を示した図である。
図3】内燃機関の制御部が実行する「機関制御処理ルーチン」のフローチャートである。
図4】制御部が実行する「機関始動処理ルーチン」のフローチャートである。
図5】制御部が実行する「機関停止処理ルーチン」のフローチャートである。
図6】第2実施形態に係る内燃機関の概略図である。
図7】内燃機関の主燃焼室及び副燃焼室が互いに連通していること、及び副燃焼室に空気噴射弁が配設されていることを示した図である。
図8】内燃機関の制御部が実行する「機関制御処理ルーチン」のフローチャートである。
図9】制御部が実行する「機関始動処理ルーチン」のフローチャートである。
図10】制御部が実行する「機関停止処理ルーチン」のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0018】
<第1実施形態>
本発明の第1実施形態を図1~5を参照しながら説明する。説明中の同じ符号(参照番号)は、重複する説明をしないが同じ機能を有する同じ要素を意味する。図1に第1実施形態に係る内燃機関1が示される。内燃機関1は、車両(不図示、以下、「搭載車両」とも称呼される)に駆動力源として搭載された水素を燃料とする多気筒エンジンであり、図1には1つの気筒のみが示されている。内燃機関1は、本体部10、吸気システム20及び排気システム30を備え、ECU41によって制御される。
【0019】
本体部10は、シリンダブロック11、シリンダヘッド12、ピストン13、コンロッド14、クランクシャフト15、燃料噴射弁16、点火プラグ17及びスタータモータ18を含んでいる。本体部10の内部には、シリンダブロック11、シリンダヘッド12及びピストン13によって燃焼室19が形成されている。ピストン13の往復動がコンロッド14を介してクランクシャフト15に伝達され、クランクシャフト15が回転する。
【0020】
燃料噴射弁16は、ECU41からの指示に応じて燃焼室19内に燃料である水素を噴射し、水素及び酸素を含む混合気を燃焼室19内に生成する。燃料噴射弁16には、高圧の水素が供給されている。燃料噴射弁16に供給される水素を貯留する高圧水素タンク、及び燃料噴射弁16に供給される水素の圧力を調整するバルブ機構は、図1において図示が省略されている。
【0021】
点火プラグ17は、ECU41からの指示に応じて火花を発生させ、燃焼室19内の混合気を点火する。点火プラグ17は、燃焼室19内に位置する中心電極17a及び外側電極17b(接地電極)を含んでいる(図2を参照)。中心電極17aは、点火プラグ17本体の先端中央部にある電極である。外側電極17bは、中心電極17aと電気的に絶縁された電極である。外側電極17bの先端部は、中心電極17aと対向し且つ中心電極17aと所定の間隔を隔てた位置にある。点火プラグ17は、内蔵されたイグニッションコイル(不図示)により蓄電池(不図示)から供給された電力を昇圧して中心電極17a及び外側電極17bに印加し、以て、火花を発生させる。
【0022】
スタータモータ18(セルモータ)は、内燃機関1を始動させるときにクランクシャフト15を回転させるトルクを発生させる。即ち、スタータモータ18は内燃機関1のクランキングを行う。スタータモータ18には、蓄電池から電力が供給されている。スタータモータ18は、クランキングを行うとき、歯車機構(不図示)を介してクランクシャフト15とトルク伝達可能に連結される。
【0023】
吸気システム20は、吸気管21、吸気ポート22、エアクリーナ23、吸気弁24、スロットル弁25、流路壁26及びタンブルコントロールバルブ27を含んでいる。エアクリーナ23は、吸気管21の上流側端部の近傍に配設され、吸気に含まれる不純物を除去(濾過)する。吸気弁24は、シリンダヘッド12に配設され、インテークカムシャフト(不図示)により駆動されることにより、吸気ポート22と燃焼室19との連通部を開閉する。吸気弁24(及び、排気弁33)は、略円筒形状を有する細長いステム部と、閉じられたときに燃焼室19に当接する傘部と、を含むポペット弁である。
【0024】
スロットル弁25は、ECU41からの指示に応答するスロットル弁アクチュエータ25aによって開閉される。即ち、スロットル弁アクチュエータ25aによってスロットル弁25の開度であるスロットル弁開度TAが調整されて、以て、燃焼室19に吸入される空気量が調整される。
【0025】
流路壁26は、吸気管21内に配設された流路分割板である。吸気管21を流れる空気流(吸気流)は、流路壁26が配設された区間において上側流路21aと下側流路21bとに分割される。タンブルコントロールバルブ27(タンブルジェネレーターバルブ、以下、単にタンブルバルブ27とも表記される)は、流路壁26の上流側端部に配設されたシャフト27aと共に回転する弁体(フラップ)である(図2を参照)。シャフト27aは、ECU41からの指示に応答するタンブルコントロールアクチュエータ27bによって回転させられる(図1を参照)。
【0026】
具体的には、ECU41は、タンブルコントロールアクチュエータ27bを制御してシャフト27aの回転角度を調整することにより、タンブルバルブ27が下側流路21bを閉じた状態(閉塞状態)と、タンブルバルブ27が下側流路21bを閉じていない状態(開通状態)と、の何れかを実現する。図2には、閉塞状態にあるタンブルバルブ27が実線により示され、開通状態にあるタンブルバルブ27が破線により示されている。後述されるように、ECU41は、吸気行程において燃焼室19内にタンブル流を発生させるため(燃焼室19内のタンブル流を増加させるため)、タンブルバルブ27を閉状態とする。
【0027】
排気システム30は、EGRシステムを含み、具体的には、排気管31、排気ポート32、排気弁33、EGR管34及びEGR弁35を含んでいる。排気弁33は、シリンダヘッド12に配設され、エグゾーストカムシャフト(不図示)によって駆動されることにより、燃焼室19と排気ポート32との連通部を開閉する。燃焼室19から排出された排気(燃焼ガス)を浄化する排気浄化装置は、図1において図示が省略されている。
【0028】
EGR管34は、排気管31と吸気管21とを連通する。EGR弁35は、EGR管34に介装されている。EGR弁35の開弁状態は、ECU41からの指示に応じて所定の全開位置(全開状態)から全閉位置(全閉状態)までの間で変化し、その結果、排気管31から吸気管21に還流するEGRガスの量が調整される。
【0029】
ECU41は、CPU、ROM、RAM及びEEPROMを含む電子制御ユニット(制御部、制御装置)である。CPUは、所定のプログラムを逐次実行することによってデータの読み込み、数値演算、及び演算結果の出力等を行う。ROMは、CPUが実行するプログラム及びマップ(ルックアップテーブル)等を記憶している。RAMは、CPUによって参照されるデータを一時的に記憶する。EEPROMは、CPUによって参照されるデータを記憶し、更に、ECU41が作動を停止しても記憶したデータを保持する。
【0030】
ECU41は、吸入空気量センサ51、クランク角度センサ52、アクセル開度センサ53、車速センサ54及びイグニッションスイッチ55とも接続されている。吸入空気量センサ51は、吸気管21に導入された空気(新気)の質量流量である吸入空気量Gaを表す信号を出力する。
【0031】
クランク角度センサ52は、クランクシャフト15が一定角度回転する毎にパルス信号を発生する。ECU41は、そのパルス信号に基づいて内燃機関1の機関回転速度NEを取得する。更に、ECU41は、クランク角度センサ52からのパルスと、カムポジションセンサ(不図示)からのパルスと、に基づいて内燃機関1が備える特定の気筒のクランク角度CAを取得する。
【0032】
アクセル開度センサ53は、搭載車両のアクセルペダル(不図示)の操作量(踏込み量)であるアクセル操作量Apを表す出力する。車速センサ54は、搭載車両の走行速度である車速Vsを表す信号を出力する。
【0033】
イグニッションスイッチ55は、搭載車両の運転者によって操作(押下)されるブッシュ式スイッチ(ボタン)である。ECU41は、イグニッションスイッチ55の操作状態(即ち、押下されているか否か)を検知することができる。内燃機関1が作動していないときにイグニッションスイッチ55が押下されると、ECU41は、その操作を「機関始動要求」として検知する。内燃機関1の作動中にイグニッションスイッチ55が押下されると、ECU41は、その操作を「機関停止要求」として検知する。
【0034】
ECU41は、内燃機関1の作動中(即ち、搭載車両の走行中)、要求トルクTreqを取得し、要求トルクTreqに基づいてスロットル弁開度TAを決定する。要求トルクTreqは、運転者が要求(期待)する搭載車両の加速度に相関する値である。スロットル弁開度TAは、内燃機関1が実際に発生させるトルクが要求トルクTreqと等しくなるように決定される。概して、要求トルクTreqが大きくなるほどスロットル弁開度TAが大きくなる。ECU41は、決定されたスロットル弁開度TAに応じてスロットル弁アクチュエータ25aを制御する。
【0035】
加えて、ECU41は、燃焼室19内の混合気の空燃比が所定の目標空燃比Rnとなるように、吸入空気量Gaに基づいて燃料噴射量Qnを決定する。ECU41は、内燃機関1が備える各気筒においてクランク角度CAが所定の燃料噴射角度となると、噴射される燃料の量が燃料噴射量Qnと等しくなるように、その気筒(即ち、燃焼室19)の燃料噴射弁16を制御する。ある気筒の燃料噴射弁16から燃料が噴射されると、ECU41は、その気筒におけるクランク角度CAが所定の点火角度となると、その気筒の点火プラグ17を制御して混合気を点火する。
【0036】
更に、ECU41は、所定の「タンブルバルブ閉塞条件」が成立すると、タンブルバルブ27が閉塞状態となるようにタンブルコントロールアクチュエータ27bを制御する。タンブルバルブ閉塞条件は、例えば、吸入空気量Gaが所定の閾値よりも小さい場合に成立する。タンブルバルブ閉塞条件が成立していなければ、ECU41は、タンブルバルブ27が開通状態となるようにタンブルコントロールアクチュエータ27bを制御する。
【0037】
(水除去制御)
ところで、燃焼室19にて混合気に含まれる水素及び酸素が燃焼すると、水(具体的には、水蒸気)が発生する。即ち、燃焼室19にて発生する燃焼ガスには、水が含まれる。燃焼ガスに含まれる水分量は、例えば、ガソリン(即ち、炭化水素の混合物)を燃料とする内燃機関(ガソリン機関)と比較して多くなる。
【0038】
そのため、内燃機関1が作動を停止してから再び作動を開始するまでの期間において、燃焼室19内の水蒸気が結露して点火プラグ17の電極(中心電極17a及び/又は外側電極17b)に水(例えば、水滴)が付着する可能性が、ガソリン機関と比較して高くなる。更に、内燃機関1の作動中に点火プラグ17の電極に少量の水が付着する可能性もある。
【0039】
点火プラグ17の電極に水が付着していると、点火プラグ17に電圧が印加されても中心電極17aと外側電極17bとの間に火花が発生せず、燃焼室19内の混合気を点火できなくなる可能性が高くなる。即ち、点火プラグ17の失火が発生する可能性が高くなる。特に、内燃機関1が作動を停止している期間における燃焼室19内の結露によって点火プラグ17の電極に付着した水の量が増加すると、点火プラグ17の失火が継続的に発生して内燃機関1が作動を開始できなくなる可能性が高くなる。
【0040】
そこで、ECU41は、内燃機関1の作動開始時及び作動停止時に、「水除去制御」を実行して点火プラグ17の電極に付着した水を除去する。水除去制御は、燃焼室19における点火プラグ17の電極近傍の気流を、水除去制御が実行されない場合と比較して増加させる制御である。即ち、水除去制御が実行されると、点火プラグ17の電極近傍の空気(吸気)の流速及び/又は流量が増加する。水除去制御が実行されると、点火プラグ17の電極に付着していた水が吹き払われ、或いは気化して、点火プラグ17の失火が発生する可能性が低くなる。
【0041】
(水除去制御-作動開始時)
内燃機関1が作動を開始するときに実行される水除去制御について説明する。内燃機関1が作動を停止しているときにイグニッションスイッチ55が押下されると(即ち、ECU41が機関始動要求を検知すると)、ECU41は、タンブルバルブ27を閉塞状態に制御し且つクランキング(即ち、スタータモータ18によるトルクの発生)を開始する。
【0042】
ここで、ECU41は、所定の期間が経過するまで燃料噴射弁16に燃料を噴射させない。具体的には、クランキングが開始された後、クランクシャフト15が回転した回数が所定の始動制御回転数Ca1に到達するまでの期間において、ECU41は、燃料噴射量Qnが「0」に設定する。
【0043】
クランクシャフト15の回転回数が始動制御回転数Ca1に到達すると、ECU41は、燃料噴射弁16による燃料噴射、及び点火プラグ17による混合気の点火を開始する。混合気が点火されて内燃機関1が作動を開始すると、ECU41は、クランキングを終了する。
【0044】
クランキング時にタンブルバルブ27が閉塞状態に制御されると(即ち、下側流路21bが閉じられると)、図2の実線矢印によって示されるように、燃焼室19内にタンブル流が発生する。具体的には、上側流路21aを経て燃焼室19に流入した空気(吸気)が吸気弁24の傘部に促されて点火プラグ17の電極近傍に向かい、更に燃焼室19の内壁面に沿って流れてタンブル流を形成する。より具体的に述べると、タンブルバルブ27が閉塞状態に制御されることによって、点火プラグ17の電極近傍を流れ、更に燃焼室19内でタンブル流を形成する空気が増加する。なお、図2では上側流路21a(流路壁26上側の流路)及び下側流路21b(流路壁26下側の流路)の符号が省略されている。
【0045】
仮に、クランキング時にタンブルバルブ27が開通状態に制御されていれば、図2の破線矢印によって示されるように、上側流路21aを経て燃焼室19に流入した空気と、下側流路21bを経て燃焼室19に流入した空気と、が衝突して燃焼室19内で乱流が発生する。この場合、上側流路21aを流れる空気量は、タンブルバルブ27が閉塞状態である場合と比較して減少する。
【0046】
換言すれば、クランキング時にタンブルバルブ27が閉塞状態に制御されると、タンブルバルブ27が開通状態に制御される場合と比較して点火プラグ17の電極近傍に発生する気流が増加する。そのため、点火プラグ17の電極に水が付着していても、その水がタンブル流によって除去される可能性が高くなる。その結果、内燃機関1の作動開始時において、燃料噴射弁16による燃料噴射が開始されたときに点火プラグ17による火花の発生が電極に付着した水によって妨げられる(即ち、失火が発生する)可能性が低くなる。
【0047】
(水除去制御-作動停止時)
次に、内燃機関1が作動を停止するときに実行される水除去制御について説明する。内燃機関1が作動しているときにイグニッションスイッチ55が押下されると(即ち、ECU41が機関停止要求を検知すると)、ECU41は、タンブルバルブ27を閉塞状態に制御し且つ所定の期間が経過するまで内燃機関1をアイドル状態に維持する。具体的には、ECU41は、機関停止要求を検知した後、クランクシャフト15が回転した回数が所定の停止制御回転数Cd1に到達すると、内燃機関1の作動を停止させる。
【0048】
換言すれば、タンブルバルブ27が閉塞状態であるために点火プラグ17の電極近傍の空気流が増加した状態が、所定の期間が経過するまで維持される。そのため、内燃機関1の作動中に点火プラグ17の電極に微量の水が付着していても、タンブルバルブ27が閉塞状態に制御されることによって増加した電極近傍の気流によって付着した水が除去される可能性が高くなる。
【0049】
(具体的作動)
ECU41の具体的作動について図3~5を参照しながら説明する。ECU41のCPU(以下、単に「CPU」とも称呼される)は、図3にフローチャートにより示された「機関制御処理ルーチン」を所定の時間周期が経過する毎に実行する。
【0050】
図3~5のルーチンにおいて、機関作動フラグXo、始動制御フラグXa及び停止制御フラグXdの値が設定され且つ参照される。これらのフラグのそれぞれは、ECU41が作動を開始するとき(即ち、内燃機関1が未だ作動していないとき)に実行するイニシャルルーチン(不図示)の処理によって「0」に設定される。
【0051】
内燃機関1の始動時に水除去制御が開始されるとき、始動制御フラグXaが「1」に設定される。その後、内燃機関1が作動を開始すると、始動制御フラグXaが「0」に設定され且つ機関作動フラグXoが「1」に設定される。内燃機関1の作動停止時に水除去制御が開始されるとき、停止制御フラグXdが「1」に設定される。その後、内燃機関1が作動を停止すると、機関作動フラグXo及び停止制御フラグXdは共に「0」に設定される。
【0052】
適当なタイミングとなると、CPUは、図3のステップ300から処理を開始してステップ305に進み、機関作動フラグXoが「1」であるか否かを判定する。
【0053】
(具体的作動-作動開始時)
内燃機関1の作動停止中にイグニッションスイッチ55が押下された後、図3のルーチンが初めて実行されていると仮定する。この場合、機関作動フラグXoは「0」であるので、CPUは、ステップ305にて「No」と判定してステップ310に進み、始動制御フラグXaが「0」であるか否かを判定する。
【0054】
本仮定によれば、始動制御フラグXaは未だ「1」に設定されていないので、CPUは、ステップ310にて「Yes」と判定してステップ315に進み、機関始動要求を検知しているか否かを判定する。即ち、CPUは、内燃機関1の作動停止中にイグニッションスイッチ55が押下されているか否かを判定する。
【0055】
本仮定によれば、イグニッションスイッチ55が押下されているので、CPUは、ステップ315にて「Yes」と判定してステップ320に進み、始動制御フラグXaを「1」に設定する。次いで、CPUは、ステップ325に進み、図4にフローチャートにより示された「機関始動処理ルーチン」を実行する。
【0056】
具体的には、CPUは、図4のステップ400からステップ405に進み、始動制御フラグXaが「1」となった直後であるか否かを判定する。換言すれば、CPUは、図3のステップ320の処理によって始動制御フラグXaが「1」に設定された後、図4のルーチンが初めて実行されているか否かを判定する。
【0057】
本仮定によれば、始動制御フラグXaが「1」となった直後であるので、CPUは、ステップ405にて「Yes」と判定してステップ410に進み、タンブルバルブ27の閉側制御を実行する。具体的には、CPUは、タンブルバルブ27が開通状態であれば、タンブルバルブ27が閉塞状態となるようにタンブルコントロールアクチュエータ27bを制御する。タンブルバルブ27が閉塞状態であれば、CPUは、その状態を維持する。
【0058】
次いで、CPUは、ステップ415に進み、クランキングを開始する。具体的には、CPUは、スタータモータ18をクランクシャフト15とトルク伝達可能に連結し且つスタータモータ18に作動を開始させ、以て、クランクシャフト15を回転させる。このとき、搭載車両のクラッチ機構(不図示)の作動によって内燃機関1から搭載車両の駆動輪(不図示)へのトルク伝達は遮断されている。
【0059】
更に、CPUは、ステップ420に進み、クランキングが開始された後、クランクシャフト15の回転回数が始動制御回転数Ca1に到達しているか否かを判定する。本仮定によれば、スタータモータ18によるクランキングが開始された直後であるので、クランクシャフト15の回転回数は未だ始動制御回転数Ca1に到達していない。そのため、CPUは、ステップ420にて「No」と判定してステップ430に進み、燃料噴射量Qnを「0」に設定する。即ち、この時点においては燃料噴射弁16による燃料噴射は開始されない。
【0060】
次いで、CPUは、ステップ495に進み、図4のルーチンの処理を終了して図3のルーチンの処理に戻る。具体的には、CPUは、図3のステップ395に進んで図3のルーチンの処理を一旦終了する。
【0061】
次に図3のルーチンの処理が開始されると、機関作動フラグXoが「0」であり且つ始動制御フラグXaが「1」であるので、CPUは、ステップ305からステップ310に進み、ステップ310にて「No」と判定してステップ325に進む。即ち、CPUは、図4のルーチンの処理を開始する。
【0062】
この場合、始動制御フラグXaが「1」となった直後ではないので、CPUは、ステップ405にて「No」と判定してステップ420に直接進む。この時点では、クランキングが開始された後のクランクシャフト15の回転回数が始動制御回転数Ca1に未だ到達していないので、CPUは、ステップ420にて「No」と判定する。即ち、燃料噴射弁16による燃料噴射は開始されない。
【0063】
その後、クランキングの開始後のクランクシャフト15の回転回数が始動制御回転数Ca1に到達した後、図3のルーチンが初めて実行されると、CPUは、図4のステップ420にて「Yes」と判定してステップ425に進む。ステップ425にてCPUは、燃料噴射量Qnを所定の始動噴射量Qcに設定する。始動噴射量Qcは、内燃機関1がクランキングによって作動を速やかに開始するように適合された燃料噴射量である。
【0064】
燃料噴射量Qnが「0」より大きい値に設定されると、CPUは、図示しないルーチンを実行して燃料噴射弁16による燃料噴射、及び点火プラグ17による燃料を含む混合気を点火する。具体的には、CPUは、内燃機関1が備える複数の気筒(燃焼室19)の1つのクランク角度CAが燃料噴射角度となったときにその気筒の燃料噴射弁16に燃料噴射量Qnに等しい燃料を噴射させる。その後、その気筒のクランク角度CAが点火角度となると、CPUは、その気筒の点火プラグ17に火花を発生させて燃料を含む混合気を点火する。
【0065】
次いで、CPUは、ステップ435に進み、内燃機関1が始動したか否かを判定する。即ち、燃焼室19内の混合気が点火されて内燃機関1がクランクシャフト15を回転させるトルクを発生させているか否かを判定する。具体的には、CPUは、機関回転速度NEが、スタータモータ18によってクランクシャフト15が回転されられている場合(即ち、内燃機関1がトルクを発生していない場合)の回転速度よりも大きくなっているか否かを判定する。
【0066】
本仮定によれば、燃料噴射弁16による燃料噴射が開始された直後であるので、内燃機関1は未だ始動していない。そのため、CPUは、ステップ435にて「No」と判定してステップ395に直接進む。
【0067】
その後、内燃機関1が始動した後、図3のルーチンが初めて実行されると、CPUは、ステップ435にて「Yes」と判定し、以下に説明するステップ440乃至450の処理を順に実行する。次いで、CPUは、ステップ495に進む。
【0068】
ステップ440:CPUは、クランキングを停止する。具体的には、CPUは、スタータモータ18からクランクシャフト15へのトルク伝達を遮断し且つスタータモータ18の作動(即ち、トルクの発生)を停止させる。
ステップ445:CPUは、始動制御フラグXaを「0」に設定する。
ステップ450:CPUは、機関作動フラグXoを「1」に設定する。
即ち、この場合、水除去制御が終了する。
【0069】
次に図3のルーチンの処理が開始されると、機関作動フラグXoが「1」であるので、CPUは、ステップ305にて「Yes」と判定してステップ330に進み、停止制御フラグXdが「0」であるか否かを判定する。
【0070】
本仮定によれば、停止制御フラグXdは「0」であるので、CPUは、ステップ330にて「Yes」と判定してステップ335に進み、機関停止要求を検知しているか否かを判定する。即ち、CPUは、内燃機関1の作動中にイグニッションスイッチ55が押下されたか否かを判定する。
【0071】
本仮定によれば、内燃機関1が作動を開始した直後であるので、イグニッションスイッチ55は押下されていない。そのため、CPUは、ステップ335にて「No」と判定してステップ350に進む。
【0072】
ステップ350にてCPUは、要求トルクTreqに基づいてスロットル弁開度TAを調整する。具体的には、CPUは、アクセル操作量Ap及び車速Vs等を予め適合されたマップに適用することによって要求トルクTreqを取得する。加えて、CPUは、要求トルクTreqを予め適合されたマップに適用することによってスロットル弁開度TAの目標値を取得(決定)する。CPUは、実際のスロットル弁開度TAが取得されたスロットル弁開度TAの目標値と等しくなるようにスロットル弁アクチュエータ25aを制御する。
【0073】
次いで、CPUは、ステップ355に進み、目標空燃比Rnに基づいて燃料噴射量Qnを決定する。具体的には、CPUは、燃焼室19内の混合気の空燃比が目標空燃比Rnとなるように、吸入空気量Gaに応じて燃料噴射量Qnを決定する。
【0074】
更に、CPUは、ステップ360に進み、上述したタンブルバルブ閉塞条件が成立しているか否かを判定する。タンブルバルブ閉塞条件が成立していれば、CPUは、ステップ360にて「Yes」と判定してステップ365に進み、図4のステップ410と同様の処理を実行してタンブルバルブ27の閉側制御を実行する。次いで、CPUは、ステップ395に進む。
【0075】
一方、タンブルバルブ閉塞条件が成立していなければ、CPUは、ステップ360にて「No」と判定してステップ370に進み、タンブルバルブ27の開通制御を実行する。具体的には、CPUは、タンブルバルブ27が閉塞状態であれば、タンブルバルブ27が開通状態となるようにタンブルコントロールアクチュエータ27bを制御する。タンブルバルブ27が開通状態であれば、CPUは、その状態を維持する。次いで、CPUは、ステップ395に進む。
【0076】
(具体的作動-作動停止時)
次に、内燃機関1の作動中にイグニッションスイッチ55が押下された後、図3のルーチンが初めて実行されていると仮定する。この場合、機関作動フラグXoが「1」であり且つ停止制御フラグXdが「0」となっているので、CPUは、ステップ305からステップ330に進み、ステップ330にて「Yes」と判定してステップ335に進む。
【0077】
本仮定によれば、イグニッションスイッチ55が押下されているので(即ち、機関停止要求を検知しているので)、CPUは、ステップ335にて「Yes」と判定してステップ340に進み、停止制御フラグXdを「1」に設定する。次いで、CPUは、ステップ345に進み、図5にフローチャートにより示された「機関停止処理ルーチン」を実行する。
【0078】
具体的には、CPUは、図5のステップ500からステップ505に進み、停止制御フラグXdが「1」となった直後であるか否かを判定する。具体的には、CPUは、図3のステップ340の処理によって停止制御フラグXdが「1」に設定された後、図5のルーチンが初めて実行されているか否かを判定する。
【0079】
本仮定によれば、停止制御フラグXdが「1」となった直後であるので、CPUは、ステップ505にて「Yes」と判定してステップ410に進み、図4のステップ410と同様の処理を実行してタンブルバルブ27の閉側制御を実行する。更に、CPUは、ステップ515に進み、機関停止要求を検知した後、クランクシャフト15の回転回数が停止制御回転数Cd1に到達しているか否かを判定する。
【0080】
本仮定によれば、機関停止要求を検知した直後(即ち、イグニッションスイッチ55が押下された直後)であるので、クランクシャフト15の回転回数は未だ停止制御回転数Cd1に到達していない。そのため、CPUは、ステップ515にて「No」と判定してステップ520に進み、燃料噴射量Qnを所定のアイドル噴射量Qiに設定する。アイドル噴射量Qiは、機関回転速度NEが所定のアイドル回転速度となるように適合された燃料噴射量である。即ち、この場合、内燃機関1がアイドル状態となる。このとき、搭載車両のクラッチ機構の作動によって内燃機関1から駆動輪へのトルク伝達は遮断されている。
【0081】
次いで、CPUは、ステップ595に進み、図5のルーチンの処理を終了して図3のルーチンの処理に戻る。具体的には、CPUは、図3のステップ395に進んで図3のルーチンの処理を一旦終了する。
【0082】
次に図3のルーチンの処理が開始されると、機関作動フラグXoが「1」であり且つ停止制御フラグXdが「1」であるので、CPUは、ステップ330にて「No」と判定してステップ345に進む。即ち、CPUは、図5のルーチンの処理を開始する。
【0083】
この場合、停止制御フラグXdが「1」となった直後ではないので、CPUは、ステップ505にて「No」と判定してステップ515に直接進む。この時点では、機関停止要求を検知した後のクランクシャフト15の回転回数が停止制御回転数Cd1に未だ到達していないので、CPUは、ステップ515にて「No」と判定する。即ち、内燃機関1がアイドル状態に維持される。
【0084】
その後、機関停止要求を検知した後のクランクシャフト15の回転回数が停止制御回転数Cd1に到達した後、図3のルーチンが初めて実行されると、CPUは、図5のステップ515にて「Yes」と判定し、以下に説明するステップ525乃至535の処理を順に実行する。次いで、CPUは、ステップ595に進む。
【0085】
ステップ525:CPUは、燃料噴射量Qnを「0」に設定する。即ち、CPUは、内燃機関1の作動を停止させる。
ステップ530:CPUは、停止制御フラグXdを「0」に設定する。
ステップ535:CPUは、機関作動フラグXoを「0」に設定する。
【0086】
(具体的作動-その他の処理)
内燃機関1が作動しておらず(即ち、機関作動フラグXo及び始動制御フラグXaが共に「0」であり)且つ機関始動要求が検知されていなければ、CPUは、ステップ315にて「No」と判定してステップ395に進む。即ち、CPUは、内燃機関1の制御を行わない。換言すれば、ECU41は、イグニッションスイッチ55が押下されるまで待機状態となる。
【0087】
<第2実施形態>
第2実施形態を図6~10を参照しながら説明する。第1実施形態に係る内燃機関1は燃焼室19内に発生する空気流を制御するタンブルバルブ27を備え、ECU41は水除去制御の実行時に内燃機関1のタンブルバルブ27を制御していた。これに代わり、第2実施形態に係る内燃機関2は副燃焼室62内に空気を噴射する空気噴射弁67を備え、ECU42は水除去制御の実行時に空気噴射弁67を制御する。以下、この相違点を中心に説明する。
【0088】
図6に示されるように、内燃機関2は、主燃焼室61(メインチャンバ)及び副燃焼室62(プレチャンバ)を有している。副燃焼室62は、内燃機関2に係るシリンダヘッド12aに形成された空間である。主燃焼室61と副燃焼室62とは、複数の貫通孔が形成された分割板63によって区切られている。即ち、主燃焼室61及び副燃焼室62は、分割板63に形成された貫通孔を介して互いに連通している。
【0089】
主燃焼室61は、吸気弁24が開いたとき、吸気ポート22を介して吸気管21と連通する。主燃焼室61は、排気弁33が開いたとき、排気ポート32を介して排気管31と連通する。主燃焼室61には、主燃料噴射弁64が配設されている。主燃料噴射弁64は、第2実施形態に係るECU42からの指示に応じて主燃焼室61内に燃料(即ち、水素)を噴射する。
【0090】
副燃焼室62には、副燃料噴射弁65、点火プラグ66及び空気噴射弁67が配設されている。副燃料噴射弁65は、ECU42からの指示に応じて副燃焼室62内に燃料(水素)を噴射する。点火プラグ66は、ECU42からの指示に応じて副燃焼室62内の混合気を点火する。点火プラグ66は、中心電極66a及び外側電極66bを備えている(図7を参照)。
【0091】
空気噴射弁67は、図7の実線矢印によって示されるように、ECU42からの指示に応じて副燃焼室62内に空気を噴射する。より具体的に述べると、空気噴射弁67には、空気供給管68を介して空気が供給される(図6を参照)。空気供給管68の一端は、吸気管21におけるエアクリーナ23と、EGR管34との合流部と、の間の区間に接続されている。空気噴射弁67は、加圧ポンプ(不図示)を内蔵しており、空気供給管68から供給された空気を加圧して副燃焼室62内に噴射する。
【0092】
ECU42は、内燃機関2の作動中、主燃焼室61内の混合気の空燃比が所定の目標主空燃比Rmとなるように、主燃料噴射弁64に燃料を噴射させる。加えて、ECU42は、副燃焼室62内の混合気の空燃比が所定の目標副空燃比Rsとなるように、副燃料噴射弁65に燃料を噴射させる。
【0093】
ECU42が点火プラグ66の電極間に火花を発生させて副燃焼室62内の混合気に点火すると、図7の破線矢印によって示されるように、副燃焼室62にて発生した燃焼ガス(即ち、高温且つ高圧の気体)が分割板63の貫通孔を介して主燃焼室61に流入する。その結果、副燃焼室62から主燃焼室61に流入した燃焼ガスが主燃焼室61内の混合気を点火して、主燃焼室61内の混合気が燃焼する。
【0094】
目標主空燃比Rmは、目標副空燃比Rsよりも大きい(即ち、Rm>Rs)。換言すれば、主燃焼室61内の混合気は、副燃焼室62内の混合気と比較して燃料濃度が低い。そのため、仮に、主燃焼室61に配設された点火プラグに火花を発生させても主燃焼室61内の混合気が点火されず、従って、燃焼しない可能性がある。或いは、主燃焼室61内の混合気の点火に成功しても、燃料濃度が低いために燃焼速度が遅くなり、その結果として主燃料噴射弁64から噴射された燃料の全てが燃焼しない可能性がある。
【0095】
そこで、内燃機関2では、副燃焼室62内の混合気が燃焼して発生した燃焼ガスを用いて燃料濃度が低い主燃焼室61内の混合気を点火し且つ燃焼速度を上昇させる。そのため、内燃機関2によれば、所謂スーパーリーン燃焼によって高いエネルギー効率(即ち、良好な燃費)を実現することができる。
【0096】
加えて、空気噴射弁67から噴射される空気(新気)によって、副燃焼室62内に発生した燃焼ガスを主燃焼室61(更には、排気管31)へ効率よく排出(即ち、掃気)することができる。本実施形態において、ECU42は、内燃機関2の作動中、内燃機関2が備える気筒のそれぞれの排気行程において、所定の掃気噴射量Awに等しい量の空気を空気噴射弁67に噴射させる。その結果、主燃焼室61及び副燃焼室62にて発生した燃焼ガスを共に排気管31へ排出することができる。
【0097】
(水除去制御)
内燃機関2が作動を開始するときに実行される水除去制御について説明する。内燃機関2が作動を停止しているときにイグニッションスイッチ55が押下されると、ECU42は、スタータモータ18を制御してクランキングを開始すると共に空気噴射弁67に空気を噴射させる。具体的には、ECU42は、内燃機関2が備える気筒のそれぞれの排気行程において(即ち、排気弁33の開弁時に)、所定の水除去噴射量Abに等しい量の空気を空気噴射弁67に噴射させる。即ち、主燃料噴射弁64及び副燃料噴射弁65による燃料の噴射が実行されず、且つ空気噴射弁67による空気の噴射は実行される。
【0098】
本実施形態において、水除去噴射量Abは掃気噴射量Awよりも大きい(即ち、Ab>Aw)。換言すれば、水除去制御の実行時、内燃機関2の作動中(即ち、水除去制御の未実行時)と比較して空気噴射弁67から噴射される空気量が増加し、その結果として点火プラグ66の電極近傍に発生する気流が増加する。
【0099】
クランキングが開始された後、クランクシャフト15が回転した回数が所定の始動制御回転数Ca2に到達すると、ECU42は、主燃料噴射弁64及び副燃料噴射弁65による燃料噴射を開始させる。ECU42は、ある気筒の主燃料噴射弁64及び副燃料噴射弁65から燃料が噴射された後、その気筒のクランク角度CAが点火角度となると、(その気筒の)点火プラグ66を制御して混合気を点火する。その結果、内燃機関2が作動を開始する。
【0100】
次に、内燃機関2が作動を停止するときに実行される水除去制御について説明する。内燃機関2が作動しているときにイグニッションスイッチ55が押下されると、ECU42は、所定の期間が経過するまで内燃機関1をアイドル状態に維持する。このとき、ECU42は、内燃機関2が備える気筒のそれぞれの排気行程において、水除去噴射量Abに等しい量の空気を空気噴射弁67に噴射させる。ECU42は、イグニッションスイッチ55が押下された後、クランクシャフト15が回転した回数が所定の停止制御回転数Cd2に到達すると、内燃機関2の作動を停止させる。
【0101】
(具体的作動)
ECU42の具体的作動について図8~10を参照しながら説明する。ECU41のCPU(以下、単に「CPU」とも称呼される)は、図8にフローチャートにより示された「機関制御処理ルーチン」を所定の時間周期が経過する毎に実行する。なお、図8~10のそれぞれのフローチャートに示されたステップであって図3~5に示されたステップと同様の処理が実行されるステップには、図3~5と同一のステップ符号が付されている。
【0102】
適当なタイミングとなると、CPUは、図8のステップ800から処理を開始してステップ305に進む。機関作動フラグXoが「1」であり(即ち、内燃機関2が作動中であり)且つイグニッションスイッチ55が押下されていなければ、CPUは、ステップ305からステップ330及びステップ335を経てステップ350に進む。
【0103】
次いで、CPUは、以下に説明するステップ855乃至865の処理を順に実行する。加えて、CPUは、ステップ995に進んで図9のルーチンの処理を終了し、更に図8のルーチンの処理を一旦終了する。
【0104】
ステップ855:CPUは、目標主空燃比Rmに基づいて主燃料噴射量Qmを決定する。具体的には、CPUは、主燃焼室61内の混合気の空燃比が目標主空燃比Rmとなるように、吸入空気量Gaに応じて主燃料噴射量Qmを決定する。
ステップ860:CPUは、ステップ855の処理と同様に、目標副空燃比Rsに基づいて副燃料噴射量Qsを決定する。
ステップ865:CPUは、空気噴射量Asを掃気噴射量Awに設定する。
【0105】
(具体的作動-作動開始時)
CPUは、ステップ310にて「No」と判定すると、或いはステップ320の処理を終了すると、ステップ825に進み、図9にフローチャートにより示された「機関始動処理ルーチン」を実行する。即ち、始動制御フラグXaが「1」である期間において、CPUは、図9のルーチンを繰り返し実行する。
【0106】
より具体的に述べると、CPUは、図9のステップ900からステップ405に進み、始動制御フラグXaが「1」となった直後であるか否かを判定する。始動制御フラグXaが「1」となった直後であれば(即ち、機関始動要求を検知した直後であれば)、CPUは、ステップ405にて「Yes」と判定してステップ415に進んでクランキングを開始し、更にステップ920に進む。一方、始動制御フラグXaが「1」となった直後でなければ、CPUは、ステップ405にて「No」と判定してステップ920に直接進む。
【0107】
ステップ920にてCPUは、クランキングが開始された後、クランクシャフト15の回転回数が始動制御回転数Ca2に到達しているか否かを判定する。クランキングが開始された後のクランクシャフト15の回転回数が未だ始動制御回転数Ca2に到達していなければ、CPUは、ステップ920にて「No」と判定し、以下に説明するステップ955乃至965の処理を順に実行する。次いで、CPUは、ステップ995に進んで図9のルーチンの処理を終了し、更に図8のルーチンの処理を終了する。
【0108】
ステップ955:CPUは、主燃料噴射量Qmを「0」に設定する。
ステップ960:CPUは、副燃料噴射量Qsを「0」に設定する。
ステップ965:CPUは、空気噴射量Asを水除去噴射量Abに設定する。
即ち、この場合、水除去制御が実行される。具体的には、主燃料噴射弁64及び副燃料噴射弁65から燃料が噴射されない一方、空気噴射弁67から空気が噴射される。
【0109】
一方、クランキングが開始された後のクランクシャフト15の回転回数が始動制御回転数Ca2に到達していれば、CPUは、ステップ920にて「Yes」と判定し、以下に説明するステップ925乃至932の処理を順に実行する。次いで、CPUは、ステップ435に進む。
【0110】
ステップ925:CPUは、主燃料噴射量Qmを所定の始動主噴射量Qc1に設定する。
ステップ930:CPUは、副燃料噴射量Qsを所定の始動副噴射量Qc2に設定する。
ステップ932:CPUは、空気噴射量Asを水除去噴射量Abに設定する。
始動主噴射量Qc1及び始動副噴射量Qc2のそれぞれは、内燃機関2がクランキングによって作動を速やかに開始するように適合された燃料噴射量である。
【0111】
主燃料噴射量Qm及び副燃料噴射量Qsが「0」より大きい値に設定されると、CPUは、図示しないルーチンを実行して主燃料噴射弁64及び副燃料噴射弁65による燃料噴射、及び点火プラグ66による燃料を含む混合気を点火する。即ち、CPUは、内燃機関2が備える複数の気筒の1つのクランク角度CAが燃料噴射角度となったときにその気筒の主燃料噴射弁64及び副燃料噴射弁65に主燃料噴射量Qm及び副燃料噴射量Qsに等しい燃料を噴射させる。その後、その気筒のクランク角度CAが点火角度となると、CPUは、その気筒の点火プラグ66に火花を発生させて燃料を含む混合気を点火する。主燃料噴射弁64による燃料噴射、及び副燃料噴射弁65による燃料噴射は、互いに異なるタイミングにて実行されても良い。
【0112】
クランキングと共に主燃料噴射弁64及び副燃料噴射弁65による燃料噴射、及び点火プラグ66による混合気の点火が実行された結果として内燃機関2が作動を開始すると、CPUは、ステップ435にて「Yes」と判定し、ステップ440乃至450の処理を順に実行する。次いで、CPUは、ステップ995に進む。一方、内燃機関2が未だ作動を開始していなければ、CPUは、ステップ435にて「No」と判定してステップ995に直接進む。
【0113】
(具体的作動-作動停止時)
CPUは、ステップ330にて「No」と判定すると、或いはステップ340の処理を終了すると、ステップ845に進み、図10にフローチャートにより示された「機関停止処理ルーチン」を実行する。即ち、停止制御フラグXdが「1」である期間において、CPUは、図10のルーチンを繰り返し実行する。
【0114】
より具体的に述べると、CPUは、図10のステップ1000からステップ1005に進み、機関停止要求を検知した後、クランクシャフト15の回転回数が停止制御回転数Cd2に到達しているか否かを判定する。
【0115】
機関停止要求を検知した後のクランクシャフト15の回転回数が未だ停止制御回転数Cd2に到達していなければ、CPUは、ステップ1005にて「No」と判定し、以下に説明するステップ1040乃至1050の処理を順に実行する。次いで、CPUは、ステップ1095に進んで図10のルーチンの処理を終了し、更に図8のルーチンの処理を終了する。
【0116】
ステップ1040:CPUは、主燃料噴射量Qmを所定のアイドル主噴射量Qi1に設定する。
ステップ1045:CPUは、副燃料噴射量Qsを所定のアイドル副噴射量Qi2に設定する。
ステップ1050:CPUは、空気噴射量Asを水除去噴射量Abに設定する。
アイドル主噴射量Qi1及びアイドル副噴射量Qi2のそれぞれは、内燃機関2の機関回転速度NEが所定のアイドル回転速度となるように適合された燃料噴射量である。
【0117】
一方、機関停止要求を検知した後のクランクシャフト15の回転回数が停止制御回転数Cd2に到達していれば、CPUは、ステップ1005にて「Yes」と判定し、以下に説明するステップ1015及び1020、並びにステップ530及び535の処理を順に実行する。次いで、CPUは、ステップ1095に進む。
【0118】
ステップ1015:CPUは、主燃料噴射量Qmを「0」に設定する。
ステップ1020:CPUは、副燃料噴射量Qsを「0」に設定する。
即ち、この場合、内燃機関2の作動が停止する。
【0119】
以上、説明したように、ECU41は、内燃機関1の作動開始時及び作動停止時においてタンブルバルブ27を制御して点火プラグ17の中心電極17a及び外側電極17bの近傍に発生する気流を増加させる水除去制御を実行する。同様に、ECU42は、内燃機関2の作動開始時及び作動停止時において空気噴射弁67を制御して点火プラグ66の中心電極66a及び外側電極66bの近傍に発生する気流を増加させる水除去制御を実行する。それにより、点火プラグ17、66の電極に付着した水が除去されるので、失火が発生する可能性が低くなる。従って、点火プラグ17、66の失火に起因して内燃機関1、2が作動を開始できなくなる可能性が低減される。
【0120】
特に、内燃機関1、2の作動開始時において、ECU41、42は、燃料噴射弁16又は副燃料噴射弁65による燃料噴射が開始される前に水除去制御を開始する。そのため、燃焼ガスにおける水蒸気濃度が比較的高くなる水素を燃料とする内燃機関1、2であっても、点火プラグ17、66の失火が発生する可能性が低くなる。
【0121】
加えて、内燃機関1の燃料である水素は、可燃性限界(燃焼範囲)が広く且つ着火エネルギーが小さいので着火性が高い。そのため、始動時(クランキング時)にタンブルバルブ27を閉塞状態に制御することにより燃焼室19内の気流が増加したことに起因して点火プラグ17が火花を発生させても混合気が適切に燃焼しない事象が発生する可能性は低い。即ち、水除去制御に伴うタンブルバルブ27の制御によって点火プラグ17の電極近傍の気流が増加した結果として混合気を点火できなくなる可能性は低い。
【0122】
以上、本発明の実施形態を上記の構造を参照して説明したが、本発明の目的を逸脱せずに多くの交代、改良、変更が可能である。従って本発明の形態は、添付された請求項の精神と目的を逸脱しない全ての交代、改良、変更を含み得る。本発明の形態は、前記特別な構造に限定されず、例えば下記のような変更が可能である。
【0123】
ECU41、42は、内燃機関1、2の作動開始時及び作動停止時に常に水除去制御を実行していた。これに代わり、ECU41、42は、内燃機関1、2の作動開始時及び作動停止時に所定の条件が成立した場合においてのみ水除去制御を実行しても良い。例えば、ECU41、42は、内燃機関1、2の作動開始時において、内燃機関1、2が作動を停止してから経過した時間が所定の閾値よりも長い場合にのみ水除去制御を実行しても良い。同様に、ECU41、42は、内燃機関1、2の作動停止時において、内燃機関1、2が作動を開始してから経過した時間が所定の閾値よりも長い場合にのみ水除去制御を実行しても良い。
【0124】
加えて、搭載車両が内燃機関1、2に加えて電動機を駆動力源として搭載し且つ走行中に内燃機関1、2の作動開始と作動停止とが繰り返されるハイブリッド車両であれば、ECU41、42は、搭載車両の走行中においても所定の条件成立時に水除去制御を実行しても良い。
【0125】
ECU41、42は、クランクシャフト15の回転回数が始動制御回転数Ca1、Ca2又は停止制御回転数Cd1、Cd2に到達したか否かに応じて制御の継続の要否を判定していた。これに代わり、ECU41、42は、水除去制御を開始してから経過した時間が所定の閾値を超えたか否かに応じて制御の継続の要否を判定しても良い。
【0126】
内燃機関1、2は、水素を燃料として作動する機関であった。これに代わり、内燃機関1、2は、アンモニアを燃料として作動する機関であっても良い。即ち、燃料噴射弁16、主燃料噴射弁64及び副燃料噴射弁65は、アンモニアを噴射するように構成されても良い。或いは、内燃機関1、2は、ガソリン又は軽油を燃料とする機関であっても良い。
【0127】
ECU41は、水除去制御の実行時にタンブルバルブ27を制御して閉塞状態(即ち、下側流路21bが閉じた状態)を実現することによって点火プラグ17の電極近傍の気流を増加させていた。これに代わり、ECU41は、水除去制御の実行時に、開通状態と比較して下側流路21bの流路断面積がある程度小さくなるようにタンブルバルブ27を制御することによって点火プラグ17の電極近傍の気流を増加させても良い。即ち、水除去制御の実行時に下側流路21bが閉じられていなくても良い。
【0128】
一方、吸気管21の形状及び燃焼室19における点火プラグ17の位置等に起因してタンブルバルブ27を開通状態に制御した方が点火プラグ17の電極近傍の気流が増加するのであれば、ECU41は、水除去制御の実行時にタンブルバルブ27を開通状態に制御しても良い。
【0129】
或いは、ECU41は、タンブルバルブ27の制御とは異なる方法によって点火プラグ17の電極近傍の気流を増加させても良い。例えば、内燃機関1が周知のスワールコントロールバルブを備えていれば、ECU41は、水除去制御の実行時にスワールコントロールバルブの制御によって点火プラグ17の電極近傍の気流を増加させても良い。
【0130】
内燃機関1は、燃料噴射弁16が燃焼室19に配設された筒内噴射機関であった。これに代わり、内燃機関1は、燃料噴射弁が吸気ポート22に配設されたポート噴射機関であっても良い。
【0131】
ECU42は、内燃機関2の排気行程において空気噴射弁67による空気噴射を行うことにより水除去制御を実行していた。換言すれば、空気噴射弁67は、クランクシャフト15が回転しているときに空気を噴射していた。これに代わり、空気噴射弁67は、クランクシャフト15が回転していないときに空気を噴射しても良い。例えば、内燃機関2の排気弁33はエグゾーストカムシャフトの代わりに電磁石によって開閉される電磁弁であれば、ECU42は、内燃機関2の作動開始時におけるクランキングの開始よりも先に排気弁33が空いた状態にて空気噴射弁67に空気を噴射させる制御を水除去制御として実行しても良い。同様に、ECU42は、内燃機関2の作動停止後(即ち、クランクシャフト15の回転終了後)、排気弁33が空いた状態にて空気噴射弁67に空気を噴射させる制御を水除去制御として実行しても良い。この場合、水除去制御が実行されなければ点火プラグ66の電極近傍に気流が発生していない一方、水除去制御が実行されると点火プラグ66の電極近傍に気流が発生する。即ち、水除去制御によって電極近傍に気流が増加する。
【符号の説明】
【0132】
1、2…内燃機関
10…本体部
11…シリンダブロック
12、12a…シリンダヘッド
13…ピストン
14…コンロッド
15…クランクシャフト
16…燃料噴射弁
17…点火プラグ
17a…中心電極
17b…外側電極
18…スタータモータ
19…燃焼室
20…吸気システム
21…吸気管
21a…上側流路
21b…下側流路
22…吸気ポート
23…エアクリーナ
24…吸気弁
25…スロットル弁
25a…スロットル弁アクチュエータ
26…流路壁
27…タンブルコントロールバルブ(タンブルバルブ)
27a…シャフト
27b…タンブルコントロールアクチュエータ
30…排気システム
31…排気管
32…排気ポート
33…排気弁
34…EGR管
35…EGR弁
41、42…ECU
51…吸入空気量センサ
52…クランク角度センサ
53…アクセル開度センサ
54…車速センサ
55…イグニッションスイッチ
61…主燃焼室
62…副燃焼室
63…分割板
64…主燃料噴射弁
65…副燃料噴射弁
66…点火プラグ
66a…中心電極
66b…外側電極
67…空気噴射弁
68…空気供給管
図1
図2
図3
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図5
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図8
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図10