(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024119202
(43)【公開日】2024-09-03
(54)【発明の名称】処理装置、プログラム及び処理方法
(51)【国際特許分類】
H04M 3/51 20060101AFI20240827BHJP
G10L 15/00 20130101ALI20240827BHJP
G06F 3/16 20060101ALI20240827BHJP
【FI】
H04M3/51
G10L15/00 200A
G06F3/16 650
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023025935
(22)【出願日】2023-02-22
(71)【出願人】
【識別番号】000000295
【氏名又は名称】沖電気工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100174104
【弁理士】
【氏名又は名称】奥田 康一
(72)【発明者】
【氏名】新井 英樹
【テーマコード(参考)】
5K201
【Fターム(参考)】
5K201AA05
5K201BA13
5K201BC19
5K201CA01
5K201DC05
5K201EC09
5K201ED01
5K201ED10
5K201EE08
5K201EF03
5K201EF08
(57)【要約】
【課題】自動音声応答の使い勝手を向上する。
【解決手段】1又は複数のチェックポイントが1又は複数の再生位置に対応付けられていて当該チェックポイントを境に複数の音声部分に分けられる音声データを、第1装置に送信して再生させる第1処理部と、前記第1装置から当該第1装置を使用するユーザの発声に基づく音声情報を受信すると、前記第1装置への前記音声データの送信を停止して、受信した前記音声情報をテキスト情報に変換する第2処理部と、前記テキスト情報が、前記音声データの再生制御に関する再生制御情報と合致する場合に、当該再生制御情報と、現在までに前記第1装置で再生済みのチェックポイントとに基づいて、前記音声データをどの再生位置から再生させるか決定し、前記第1処理部に前記音声データを決定した再生位置から前記第1装置に送信させる第3処理部とを備える。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
1又は複数のチェックポイントが1又は複数の再生位置に対応付けられていて当該チェックポイントを境に複数の音声部分に分けられる音声データを、第1装置に送信して再生させる第1処理部と、
前記第1装置から当該第1装置を使用するユーザの発声に基づく音声情報を受信すると、前記第1装置への前記音声データの送信を停止して、受信した前記音声情報をテキスト情報に変換する第2処理部と、
前記テキスト情報が、前記音声データの再生制御に関する再生制御情報と合致する場合に、当該再生制御情報と、現在までに前記第1装置で再生済みのチェックポイントとに基づいて、前記音声データをどの再生位置から再生させるか決定し、前記第1処理部に前記音声データを決定した再生位置から前記第1装置に送信させる第3処理部と
を備えることを特徴とする処理装置。
【請求項2】
前記第3処理部は、
前記テキスト情報が、前記音声データを直前のチェックポイントまで戻すことを示す前記再生制御情報と合致する場合に、前記音声データを直前のチェックポイントから再生させると決定する
ことを特徴とする請求項1に記載の処理装置。
【請求項3】
前記第3処理部は、
前記テキスト情報が、前記音声データを次のチェックポイントまで進めることを示す前記再生制御情報と合致する場合に、前記音声データを次のチェックポイントから再生させると決定する
ことを特徴とする請求項1に記載の処理装置。
【請求項4】
前記第3処理部は、
前記テキスト情報が、前記音声データを先頭から再生することを示す前記再生制御情報と合致する場合に、前記音声データを先頭から再生させると決定する
ことを特徴とする請求項1に記載の処理装置。
【請求項5】
前記音声データは、
前記ユーザに所望の選択肢を選択させる為の自動音声応答用の音声データであり、前記チェックポイントを境に複数の選択肢となる複数の音声部分に分けられていて、
前記第3処理部は、
前記テキスト情報が、前記音声データに含まれる複数の選択肢のうちの1つに合致する場合には、前記第1処理部による前記音声データの送信を終了させる
ことを特徴とする請求項1~4のいずれかに記載の処理装置。
【請求項6】
コンピューターを、
1又は複数のチェックポイントが1又は複数の再生位置に対応付けられていて当該チェックポイントを境に複数の音声部分に分けられる音声データを、第1装置に送信して再生させる第1処理部と、
前記第1装置から当該第1装置を使用するユーザの発声に基づく音声情報を受信すると、前記第1装置への前記音声データの送信を停止して、受信した前記音声情報をテキスト情報に変換する第2処理部と、
前記テキスト情報が、前記音声データの再生制御に関する再生制御情報と合致する場合に、当該再生制御情報と、現在までに前記第1装置で再生済みのチェックポイントとに基づいて、前記音声データをどの再生位置から再生させるか決定し、前記第1処理部に前記音声データを決定した再生位置から前記第1装置に送信させる第3処理部と
して機能させる為のプログラム。
【請求項7】
処理装置の処理方法であって、前記処理装置は、
1又は複数のチェックポイントが1又は複数の再生位置に対応付けられていて当該チェックポイントを境に複数の音声部分に分けられる音声データを、第1装置に送信して再生させるステップと、
前記第1装置から当該第1装置を使用するユーザの発声に基づく音声情報を受信すると、前記第1装置への前記音声データの送信を停止して、受信した前記音声情報をテキスト情報に変換するステップと、
前記テキスト情報が、前記音声データの再生制御に関する再生制御情報と合致する場合に、当該再生制御情報と、現在までに前記第1装置で再生済みのチェックポイントとに基づいて、前記音声データをどの再生位置から再生させるか決定し、前記音声データを決定した再生位置から前記第1装置に送信するステップと
を有することを特徴とする処理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、処理装置、プログラム及び処理方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、多くの企業が、顧客からの問い合わせに対応する為のコンタクトセンターシステムを有している。コンタクトセンターシステムでは、顧客からの入電を適切なオペレーターに接続したり接続後のオペレーターの対応を時間短縮したりするなどサービスを効率的に提供する為に、顧客からの入電をオペレーターに接続する前に、IVR(Interactive Voice Response)と呼ばれる自動音声応答機能を利用して顧客から情報を収集するようになっている。
【0003】
従来のIVRでは、例えば「…の場合は1を、……の場合は2を、………の場合は3を押してください」のように番号と対応付けられた音声による選択肢に対して、顧客が電話機の数字ボタンを押下して番号を選択することで、顧客から情報を収集するようになっていた。これに対して近年、音声認識技術の発展により、顧客が電話機の数字ボタンを押下して番号を選択する代わりに電話機に番号などを発声することで、顧客から情報を収集するようにしたIVRも実現されている(例えば特許文献1参照)。
【0004】
またいずれのIVRも、全ての選択肢の再生後に顧客が再度の再生を要求することで、聞き逃した選択肢や確認したい選択肢を顧客が聞き直すことができるようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、従来のIVRでは、顧客が特定の選択肢を聞きたい場合でも、当該選択肢の前に再生される他の選択肢を最後まで聴取しなければならず、また聞き逃しや確認の為に選択肢を聞き直す場合、用意された全ての選択肢の再生が終了するのを待たなければならなかった。
【0007】
このように、従来のIVRでは、顧客が聞く必要のない選択肢をスキップしたり、選択肢をすぐに聞き直したりすることができず、顧客にとって使い勝手が良くないという問題があった。
【0008】
本発明は以上の点を考慮したものであり、自動音声応答の使い勝手を向上し得る処理装置、プログラム及び処理方法を提案しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
かかる課題を解決するため本発明の処理装置においては、1又は複数のチェックポイントが1又は複数の再生位置に対応付けられていて当該チェックポイントを境に複数の音声部分に分けられる音声データを、第1装置に送信して再生させる第1処理部と、前記第1装置から当該第1装置を使用するユーザの発声に基づく音声情報を受信すると、前記第1装置への前記音声データの送信を停止して、受信した前記音声情報をテキスト情報に変換する第2処理部と、前記テキスト情報が、前記音声データの再生制御に関する再生制御情報と合致する場合に、当該再生制御情報と、現在までに前記第1装置で再生済みのチェックポイントとに基づいて、前記音声データをどの再生位置から再生させるか決定し、前記第1処理部に前記音声データを決定した再生位置から前記第1装置に送信させる第3処理部とを備える。
【0010】
また本発明のプログラムにおいては、コンピューターを、1又は複数のチェックポイントが1又は複数の再生位置に対応付けられていて当該チェックポイントを境に複数の音声部分に分けられる音声データを、第1装置に送信して再生させる第1処理部と、前記第1装置から当該第1装置を使用するユーザの発声に基づく音声情報を受信すると、前記第1装置への前記音声データの送信を停止して、受信した前記音声情報をテキスト情報に変換する第2処理部と、前記テキスト情報が、前記音声データの再生制御に関する再生制御情報と合致する場合に、当該再生制御情報と、現在までに前記第1装置で再生済みのチェックポイントとに基づいて、前記音声データをどの再生位置から再生させるか決定し、前記第1処理部に前記音声データを決定した再生位置から前記第1装置に送信させる第3処理部として機能させる。
【0011】
さらに本発明の処理方法は、処理装置の処理方法であって、処理装置は、1又は複数のチェックポイントが1又は複数の再生位置に対応付けられていて当該チェックポイントを境に複数の音声部分に分けられる音声データを、第1装置に送信して再生させるステップと、前記第1装置から当該第1装置を使用するユーザの発声に基づく音声情報を受信すると、前記第1装置への前記音声データの送信を停止して、受信した前記音声情報をテキスト情報に変換するステップと、前記テキスト情報が、前記音声データの再生制御に関する再生制御情報と合致する場合に、当該再生制御情報と、現在までに前記第1装置で再生済みのチェックポイントとに基づいて、前記音声データをどの再生位置から再生させるか決定し、前記音声データを決定した再生位置から前記第1装置に送信するステップとを有する。
【0012】
これにより、ユーザが例えば「もう1度」と発声することで、直前まで再生していた音声部分の先頭に戻ってもう1度当該音声部分から再生し直したり、例えば「先頭から」と発声することで、直ちに音声データを先頭から再生し直したり、例えば「送る」と発声することで、直前まで再生していた音声部分をスキップして次の音声部分から再生したりするというような再生制御が可能となる。
【発明の効果】
【0013】
かくして本発明は、自動音声応答の使い勝手を向上し得る処理装置、プログラム及び処理方法を実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】コンタクトセンターシステムの構成を示す図である。
【
図2】コンタクトセンターシステムで扱うデータの構成を示す図である。
【
図3】コンタクトセンターシステムの動作を示すシーケンスチャートである。
【
図4】
図3のシーケンスチャートにつづくシーケンスチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、発明を実施するための形態(以下、これを実施の形態と呼ぶ)について、図面を用いて詳細に説明する。
【0016】
[1.コンタクトセンターシステムの構成]
まず
図1を用いて、本実施の形態によるコンタクトセンターシステム1の構成について説明する。このコンタクトセンターシステム1は、例えば企業などのコンタクトセンターに導入されるシステムであり、顧客U20からの電話などによる問い合わせに対応可能なシステムである。
【0017】
このコンタクトセンターシステム1は、コンタクトセンターサーバー100と、オペレーターU10が使用するオペレーター通信装置300とで構成され、コンタクトセンターサーバー100とオペレーター通信装置300とがLAN(Local Area Network)などの構内通信網400を介して通信可能に接続されている。またコンタクトセンターサーバー100は、IP(Internet Protocol)ネットワークなどの公衆網600を介して顧客U20が所有する顧客通信装置500と通信可能に接続されている。
【0018】
尚、
図1では、説明を簡単にする為、コンタクトセンターサーバー100に、1人のオペレーターU10が使用する1台のオペレーター通信装置300が接続されているが、複数人のオペレーターU10が使用する複数台のオペレーター通信装置300が接続されていてもよい。また同様に、
図1では、コンタクトセンターサーバー100に、1人の顧客U20が所有する1台の顧客通信装置500が接続されているが、複数人の顧客U20が所有する複数台の顧客通信装置500が接続されていてもよい。
【0019】
オペレーター通信装置300は、オペレーターU10に対して、コンタクトセンターサーバー100によって接続された顧客通信装置500との通信を提供する装置である。このオペレーター通信装置300は、コンタクトセンターサーバー100を介して顧客通信装置500からの着信に応答して顧客U20との通話を可能とする入出力装置と、通話を終了する為の制御機能とを有している。
【0020】
コンタクトセンターサーバー100は、顧客U20に提供するコンタクトセンターサービスの処理を実行するサーバー装置である。このコンタクトセンターサーバー100は、CPU(Central Processing Unit)と、メモリと、ハードディスクなどの記憶手段と、ネットワークインタフェースとを有するコンピューターとして構成され、CPUがメモリ上に読み込んだプログラムを実行することにより各種機能を実現する。
【0021】
コンタクトセンターサーバー100は、IVR(Interactive Voice Response:自動音声応答機能)200と、図示しないACD(Automatic Call Distributer:自動呼分配機能)を有している。IVR200は、顧客通信装置500から着信した呼について、顧客U20による通話の目的を収集する為に、一旦顧客通信装置500からの着信に応答し、当該顧客通信装置500に対して音声で質問を送出して応答を受信するというサイクルを通話の目的を収集するまで繰り返す機能を有している。尚、このIVR200は、顧客通信装置500から顧客U20の音声を応答として受信することにより顧客U20から情報を収集することが可能な音声入力対応のIVRとなっている。
【0022】
またコンタクトセンターサーバー100は、IVR200により収集した通話の目的を、ACDに送る機能を有している。
【0023】
具体的には、IVR200は、音声受信部210と、音声認識部220と、音声送信部230と、制御部240と、再生データ格納部250と、照合データ格納部260とを有している。
【0024】
音声受信部210は、顧客通信装置500からコンタクトセンターサーバー100へと送信されてくる顧客U20の音声を受信して音声認識部220に逐次送る。音声認識部220は、音声受信部210から送られてくる音声(つまり顧客U20の音声)を逐次テキスト情報に変換して制御部240に送る。音声送信部230は、コンタクトセンターサーバー100が顧客通信装置500に送信する為の音声データ(後述する再生データ)を制御部240から受け取って顧客通信装置500に送信する。
【0025】
再生データ格納部250には、あらかじめ用意された顧客U20に聞かせる為の複数の再生データが格納されている。格納されている複数の再生データには、それぞれ意味を持つ部分ごとに区切りの情報(これをチェックポイントと呼ぶ)が付与されている。照合データ格納部260には、顧客U20からの入電に対して、再生データ格納部250に格納されているどの再生データをどのように再生するのかを定義した照合データが格納されている。
【0026】
ここで、
図2(A)に再生データ格納部250に格納されている再生データの一例を示し、
図2(B)に照合データ格納部260に格納されている照合データの一例を示す。
【0027】
再生データ格納部250には、「…を……の場合は1、……を……の場合は2、…、……の場合は6、と話してください」という内容の再生データxが格納されている。つまりこの再生データxは、顧客U20から通話の目的を収集する為の音声データであり、「…を……の場合は1」というように、番号に対応付けられた複数の選択肢と、「と話してください」というように顧客U20に発声を促す命令文とで構成された音声データとなっている。
【0028】
またこの再生データxには、「…を……の場合は1」の部分の直後にチェックポイントcp-x1が付与されているように、それぞれの選択肢の直後にチェックポイントが付与されている。別の言い方をすると、再生データxは、1又は複数のチェックポイントが1又は複数の再生位置(選択肢の直後となる再生位置)に対応付けられていて当該チェックポイントを境に複数の音声部分に分けられている。このチェックポイントは、再生データxの再生を選択肢単位で管理する為の情報である。
【0029】
尚、
図2では省略しているが、再生データ格納部250には、再生データxの他にも、顧客U20から通話の目的を収集する為の種々の再生データが格納されている。
【0030】
一方、照合データ格納部260には、入電(具体的には着信電話番号)ごとに、当該入電に対して再生する再生データと、当該再生データに付与されているチェックポイントごとに有効な選択肢(具体的には選択肢の番号)と有効な再生制御用のワード(以下、再生制御ワードと呼ぶ)とを関連付けた照合データが格納されている。
【0031】
例えば、照合データは、入電(着信電話番号)Xに対して再生する再生データが再生データxであり、当該再生データxに付与されているチェックポイントcp-x1までで有効な選択肢の番号(つまりチェックポイントcp-x1よりも前にある選択肢の番号)が「1」で有効な再生制御ワードが「もう1度」と「先頭から」と「送る」であり、チェックポイントcp-x2までで有効な選択肢の番号が「1」と「2」で有効な再生制御ワードが「もう1度」と「先頭から」と「送る」であることなどを示している。
【0032】
また照合データは、入電(着信電話番号)Yに対して再生する再生データが再生データyであり、当該再生データyに付与されているチェックポイントcp-y1までで有効な選択肢の番号が「1」で有効な再生制御ワードが「もう1度」と「先頭から」と「送る」であり、チェックポイントcp-y2までで有効な選択肢の番号が「1」と「2」で有効な再生制御ワードが「もう1度」と「先頭から」と「送る」であることなどを示している。
【0033】
図1に戻り、制御部240は、顧客U20からの入電に対して、照合データ格納部260を参照することで、当該入電の着信電話番号(つまり顧客U20がダイヤルした電話番号)に対応する再生データを特定し、特定した再生データを再生データ格納部250から取得して音声送信部230に送信する機能を有している。また制御部240は、再生データがどのチェックポイントまで再生されているかを管理する機能と、音声認識部220から顧客U20の音声を示すテキスト情報を受け取ると再生データの送信を中断して照合データで定義されている直近のチェックポイントまでで有効な選択肢及び再生制御ワードと受け取ったテキスト情報とを照合する機能を有している。
【0034】
さらに制御部240は、当該照合結果に基づいて再生データを音声送信部230に送る機能と、顧客U20から必要な情報の収集が完了した(つまり通話の目的の収集が完了した)場合には、当該情報(つまり通話の目的)をACDに送る機能とを有している。コンタクトセンターシステム1の構成は、以上のようになっている。
【0035】
[2.コンタクトセンターシステムの動作]
つぎに、コンタクトセンターシステム1の動作について説明する。ここでは、コンタクトセンターシステム1の動作として、コンタクトセンターサーバー100のIVR200が顧客U20からの入電に対して自動音声応答を行う際の動作について説明する。
図3及び
図4に、当該動作の手順となるシーケンスチャートを示す。尚、この動作は、主にIVR200の制御部240が主体となって行う動作である。
【0036】
まず、ある顧客U20の顧客通信装置500から例えば着信電話番号Xに入電があったとする(SP1)。ここで制御部240は、当該着信電話番号Xに基づき、照合データ格納部260に格納されている照合データを参照することにより当該着信電話番号Xに対応する再生データが再生データxであると特定して(SP2)、再生データ格納部250から当該再生データxを取得する(SP3)。
【0037】
つづけて制御部240は、取得した再生データxを音声送信部230に送り、当該音声送信部230から顧客通信装置500へと送信することにより、当該再生データxに基づく音声(つまり顧客U20への質問と回答となる選択肢)を顧客U20に聞かせて音声入力(つまり選択肢の選択)を促す(SP5)。尚、このとき、制御部240は、再生データxを先頭から音声送信部230に送るようになっていて、顧客通信装置500側では再生データxが先頭から再生される。
【0038】
ここで仮に顧客U20が、再生データxのチェックポイントcp-x2を過ぎ、次のチェックポイントcp-x3に到達する前に(つまり3番目の選択肢を聞いている途中で)発声したとする(SP6)。このとき、顧客U20の発声は音声データとして顧客通信装置500からコンタクトセンターサーバー100へと送信され、音声受信部210により受信され、当該音声受信部210から音声認識部220に送られてテキスト化される(SP7)。そして顧客U20の発声をテキスト化したテキスト情報が制御部240に送られる(SP8)。
【0039】
すると制御部240は、再生データxの音声送信部230への送りを一時停止する(SP9)とともに、照合データに記述されている、再生データxのチェックポイントcp-x2までで有効な選択肢の番号(「1」、「2」)及び有効な再生制御ワード(「もう1度」、「先頭から」、「送る」)と、音声認識部220から受け取ったテキスト情報(つまり顧客U20の発声)とを照合する(SP10)。
【0040】
このときテキスト情報が、選択肢の番号「1」又は「2」に合致した場合(SP101)、制御部240は、顧客U20が選択肢を選択したことから通話の目的を収集し終えたとして、再生データxの送りを終了し、収集した通話の目的(つまり顧客U20により選択された選択肢)をACD機能に送り(SP102)、オペレーター対応に進む。
【0041】
またテキスト情報が、再生制御ワードのうちの「先頭から」に合致した場合(
図4のSP111)、制御部240は、再生データxを先頭から再生させると決定して、当該再生データxを先頭から音声送信部230に送り直す(SP112→SP4)。これにより、顧客通信装置500側では再生データxが先頭から再生し直される。この場合、顧客U20がチェックポイントcp-x2まで(つまり2番目の選択肢まで)聴取済みの為、制御部240は、再生データxを先頭から再生し直した際に、チェックポイントcp-x2に到達する前に顧客U20が発声したとしても、有効な選択肢の番号と有効な再生制御ワードはチェックポイントcp-x2までのものとする。つまり再生データxを再生し直した場合、ここまでに顧客U20が聴取済みの選択肢の番号(例えば「1」と「2」)と当該番号に関連付けられた再生制御ワード(例えば「もう1度」、「先頭から」、「送る」)が有効となる。
【0042】
またテキスト情報が、再生制御ワードのうちの「もう1度」に合致した場合(
図4のSP121)、制御部240は、再生データxを直前のチェックポイントcp-x2から再生させると決定して、当該再生データxを直前のチェックポイントcp-x2から音声送信部230に送り直す(SP122→SP4)。これにより、顧客通信装置500側では再生データxが直前のチェックポイントcp-x2から(つまり2番目の選択肢から)もう1度再生される。
【0043】
またテキスト情報が、再生制御ワードのうちの「送る」に合致した場合(
図4のSP131)、制御部240は、再生データxを次のチェックポイントcp-x3から再生させると決定して、当該再生データxを次のチェックポイントcp-x3から音声送信部230に送る(SP132→SP4)。これにより、顧客通信装置500側では再生データxが次のチェックポイントcp-x3から再生される(つまり3番目の選択肢の再生がスキップされて4番目の選択肢から再生される)。この場合、制御部240は、顧客U20がチェックポイントcp-x3まで聴取済みとして扱う。つまり再生データxをスキップした場合、スキップした選択肢の番号(例えば「3」)と当該番号に関連付けられた再生制御ワード(例えば「もう1度」、「先頭から」、「送る」)も有効となる。
【0044】
また一方で、顧客U20が再生データxを最後まで聞いても発声しなかったとする。この場合、制御部240は、顧客U20が発声するまで、再生データxを先頭から音声送信部230に送り直す。これにより、顧客通信装置500側では、顧客U20が発声するまで再生データxが先頭から再生し直される。
【0045】
このようにして再生データxを先頭から繰り返し再生し直している際に顧客U20が発声した場合、顧客U20が少なくとも1度は再生データxを最後まで聴取済みの為、制御部240は、顧客U20が最後のチェックポイントcp-x6まで聴取済みとして扱う。つまり再生データxを最後まで再生した後、再び先頭から再生し直した場合、全ての選択肢の番号(例えば「1」、「2」、「3」、「4」、「5」、「6」)と当該番号に関連付けられた再生制御ワード(例えば「もう1度」、「先頭から」、「送る」)が有効となる。コンタクトセンターシステム1による自動音声応答を行う際の動作は、以上のようになっている。
【0046】
[3.まとめと効果]
ここまで説明したように、本実施の形態のコンタクトセンターシステム1は、処理装置及びコンピューターとしてのコンタクトセンターサーバー100と、オペレーター通信装置300とを有する。
【0047】
またコンタクトセンターサーバー100は、1又は複数のチェックポイントが1又は複数の再生位置に対応付けられていて当該チェックポイントを境に複数の音声部分に分けられる音声データとしての再生データを、第1装置としての顧客通信装置500に送信して再生させる第1処理部(音声送信部230及び制御部240)を有する。
【0048】
さらにコンタクトセンターサーバー100は、顧客通信装置500から当該顧客通信装置500を使用するユーザとしての顧客U20の発声に基づく音声情報としての音声データを受信すると、顧客通信装置500への再生データの送信を停止して、受信した音声データをテキスト情報に変換する第2処理部(音声受信部210、音声認識部220、音声送信部230、及び制御部240)を有する。
【0049】
さらにコンタクトセンターサーバー100は、テキスト情報が、再生データの再生制御に関する再生制御情報としての再生制御ワードと合致する場合に、当該再生制御ワードと、現在までに顧客通信装置500で再生済みのチェックポイントとに基づいて、第1処理部が再生データをどの再生位置から顧客通信装置500に送信して再生させるか決定し、第1処理部に再生データを決定した再生位置から顧客通信装置500に送信させる第3処理部(制御部240、照合データ格納部260)とを有する。
【0050】
つまり、コンタクトセンターサーバー100の第3処理部は、顧客U20の発声を示すテキスト情報が、再生データを直前のチェックポイントまで戻すことを示す再生制御ワードである例えば「もう1度」に合致する場合、再生データを直前のチェックポイントから再生させると決定する。
【0051】
またコンタクトセンターサーバー100の第3処理部は、顧客U20の発声を示すテキスト情報が、再生データを次のチェックポイントまで進めることを示す再生制御ワードである例えば「送る」に合致する場合、再生データを次のチェックポイントから再生させると決定する。
【0052】
さらにコンタクトセンターサーバー100の第3処理部は、顧客U20の発声を示すテキスト情報が、再生データを先頭から再生することを示す再生制御ワードである例えば「先頭から」に合致する場合、再生データを先頭から再生させると決定する。
【0053】
これにより、コンタクトセンターサーバー100は、顧客U20の発声による音声入力に応じて、直前まで再生していた音声部分(選択肢)の先頭(つまり直前のチェックポイント)に戻ってもう1度当該音声部分から再生し直したり、直ちに再生データを先頭から再生し直したり、直前まで再生していた音声部分(選択肢)をスキップして次の音声部分の先頭(つまり次のチェックポイント)から再生したりするというような再生制御が可能となる。かくして、本実施の形態のコンタクトセンターサーバー100によれば、自動音声応答の使い勝手を向上することができる。
【0054】
またコンタクトセンターサーバー100は、顧客U20からの音声入力に対応するIVR200(音声受信部210、音声認識部220、音声送信部230、及び制御部240)を有している為、顧客U20が再生データの音声を聞きながら再生制御ワードに対応する発声(つまり音声入力)をすることで、容易且つ迅速に、所望の選択肢を聞き直したり、音声を最初から聞き直したり、聞く必要のない選択肢をスキップしたりすることができる。
【0055】
[4.他の実施の形態]
[4-1.他の実施の形態1]
尚、上述した実施の形態では、コンタクトセンターサーバー100の制御部240が、上述した第1処理部、第2処理部、及び第3処理部として機能するようにしたが、これに限らず、例えば制御部240の代わりに、第1処理部として機能する第1の制御部と、第2処理部として機能する第2の制御部と、第3処理部として機能する第3の制御部を、コンタクトセンターサーバー100に設けるようにしてもよい。
【0056】
[4-2.他の実施の形態2]
また上述した実施の形態では、再生データ格納部250に音声データである再生データを格納しておき、当該再生データを、音声送信部230から顧客通信装置500に送信して再生させるようにした。これに限らず、再生データ格納部250にはテキストデータである再生データを格納しておき、テキストデータである再生データを音声データである再生データに変換したうえで、音声送信部230から顧客通信装置500に送信して再生させるようにしてもよい。この場合、例えば、音声送信部230の前段に音声合成部を設け、当該音声合成部により再生データをテキスト音声変換するようにすればよい。
【0057】
[4-3.他の実施の形態3]
さらに上述した実施の形態では、照合データ格納部260に、入電(具体的には着信電話番号)ごとに、当該入電に対して再生する再生データと、当該再生データに付与されているチェックポイントごとに有効な選択肢の番号と有効な再生制御ワードとを関連付けた照合データが格納されているとした。
【0058】
ここでこの照合データでは、「1」や「2」などの番号を用いて選択肢を特定するようになっているが、これに限らず、番号の代わりに選択肢を特定可能な単語(例えば「……の場合は1」のうちの「……」など)を用いてもよい。
【0059】
[4-4.他の実施の形態4]
さらに上述した実施の形態では、再生制御ワードとして「もう1度」、「先頭から」、「送る」を用いたが、これに限らず、再生制御に関する意味を持つ言葉であれば、これら以外の言葉を用いてもよい。例えば、「繰り返し」、「最初から」、「スキップ」などの言葉を用いてもよい。また再生制御ワードごとに、顧客U20の発声として考えられるワードを複数関連付けて照合データとして照合データ格納部260に格納しておくようにしてもよい。例えば、再生制御ワードとしての「送る」については、「送って」、「スキップ」、「スキップして」、「飛ばして」などのワードを関連付けておく。このようにすれば顧客U20の発声に対して柔軟に対応することが可能となる。さらにこのような再生制御ワードについての説明を再生データの先頭など(選択肢の前)に入れることで、顧客U20に再生制御ワードについて通知するようにしてもよい。
【0060】
[4-5.他の実施の形態5]
さらに上述した実施の形態では、オペレーターU10と顧客U20との間で通話を行うコンタクトセンターシステム1に本発明を適用したが、本発明は、自動音声応答機能を有する様々なコンタクトセンターシステムに適用できる。
【0061】
さらに上述した実施の形態では、処理装置及びコンピューターの具体例としてコンタクトセンターサーバー100を用いたが、これに限らず、コンタクトセンターサーバー100と同等に機能するものであれば、コンタクトセンターサーバー100とは部分的に異なる構成の処理装置及びコンピューターを用いてもよい。
【0062】
[4-6.他の実施の形態6]
さらに、本発明は、上述した各実施の形態に限定されるものではない。すなわち本発明は、上述した各実施の形態の一部または全部を任意に組み合わせた実施の形態や、一部を抽出した実施の形態にもその適用範囲が及ぶものである。
【0063】
[5.付記]
上述した実施の形態に関し、さらに以下の付記を開示する。
【0064】
かかる課題を解決するため本発明の処理装置においては、1又は複数のチェックポイントが1又は複数の再生位置に対応付けられていて当該チェックポイントを境に複数の音声部分に分けられる音声データを、第1装置に送信して再生させる第1処理部と、前記第1装置から当該第1装置を使用するユーザの発声に基づく音声情報を受信すると、前記第1装置への前記音声データの送信を停止して、受信した前記音声情報をテキスト情報に変換する第2処理部と、前記テキスト情報が、前記音声データの再生制御に関する再生制御情報と合致する場合に、当該再生制御情報と、現在までに前記第1装置で再生済みのチェックポイントとに基づいて、前記音声データをどの再生位置から再生させるか決定し、前記第1処理部に前記音声データを決定した再生位置から前記第1装置に送信させる第3処理部とを備える。
【0065】
また本発明においては、前記第3処理部は、前記テキスト情報が、前記音声データを直前のチェックポイントまで戻すことを示す前記再生制御情報と合致する場合に、前記音声データを直前のチェックポイントから再生させると決定する。
【0066】
さらに本発明においては、前記第3処理部は、前記テキスト情報が、前記音声データを次のチェックポイントまで進めることを示す前記再生制御情報と合致する場合に、前記音声データを次のチェックポイントから再生させると決定する。
【0067】
さらに本発明においては、前記第3処理部は、前記テキスト情報が、前記音声データを先頭から再生することを示す前記再生制御情報と合致する場合に、前記音声データを先頭から再生させると決定する。
【0068】
さらに本発明においては、前記音声データは、前記ユーザに所望の選択肢を選択させる為の自動音声応答用の音声データであり、前記チェックポイントを境に複数の選択肢となる複数の音声部分に分けられていて、前記第3処理部は、前記テキスト情報が、前記音声データに含まれる複数の選択肢のうちの1つに合致する場合には、前記第1処理部による前記音声データの送信を終了させる。
【0069】
また本発明のプログラムにおいては、コンピューターを、1又は複数のチェックポイントが1又は複数の再生位置に対応付けられていて当該チェックポイントを境に複数の音声部分に分けられる音声データを、第1装置に送信して再生させる第1処理部と、前記第1装置から当該第1装置を使用するユーザの発声に基づく音声情報を受信すると、前記第1装置への前記音声データの送信を停止して、受信した前記音声情報をテキスト情報に変換する第2処理部と、前記テキスト情報が、前記音声データの再生制御に関する再生制御情報と合致する場合に、当該再生制御情報と、現在までに前記第1装置で再生済みのチェックポイントとに基づいて、前記音声データをどの再生位置から再生させるか決定し、前記第1処理部に前記音声データを決定した再生位置から前記第1装置に送信させる第3処理部として機能させる。
【0070】
さらに本発明の処理方法は、処理装置の処理方法であって、処理装置は、1又は複数のチェックポイントが1又は複数の再生位置に対応付けられていて当該チェックポイントを境に複数の音声部分に分けられる音声データを、第1装置に送信して再生させるステップと、前記第1装置から当該第1装置を使用するユーザの発声に基づく音声情報を受信すると、前記第1装置への前記音声データの送信を停止して、受信した前記音声情報をテキスト情報に変換するステップと、前記テキスト情報が、前記音声データの再生制御に関する再生制御情報と合致する場合に、当該再生制御情報と、現在までに前記第1装置で再生済みのチェックポイントとに基づいて、前記音声データをどの再生位置から再生させるか決定し、前記音声データを決定した再生位置から前記第1装置に送信するステップとを有する。
【0071】
ユーザが例えば「もう1度」と発声することで、直前まで再生していた音声部分の先頭に戻ってもう1度当該音声部分から再生し直したり、例えば「先頭から」と発声することで、直ちに音声データを先頭から再生し直したり、例えば「送る」と発声することで、直前まで再生していた音声部分をスキップして次の音声部分から再生したりするというような再生制御が可能となる。かくして本発明は、自動音声応答の使い勝手を向上し得る処理装置、プログラム及び処理方法を実現できる。
【産業上の利用可能性】
【0072】
本発明は、例えばコンタクトセンターシステムなどの顧客対応システムで広く利用することができる。
【符号の説明】
【0073】
1……コンタクトセンターシステム、100……コンタクトセンターサーバー、200……IVR、210……音声受信部、220……音声認識部、230……音声送信部、240……制御部、250……再生データ格納部、260……照合データ格納部、300……オペレーター通信装置、400……構内通信網、500……顧客通信装置、600……公衆網、U10……オペレーター、U20……顧客。