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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024119217
(43)【公開日】2024-09-03
(54)【発明の名称】振動モータ
(51)【国際特許分類】
   B06B 1/04 20060101AFI20240827BHJP
【FI】
B06B1/04 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023025962
(22)【出願日】2023-02-22
(71)【出願人】
【識別番号】000232302
【氏名又は名称】ニデック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001933
【氏名又は名称】弁理士法人 佐野特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】光畑 遼一
(72)【発明者】
【氏名】井上 順
【テーマコード(参考)】
5D107
【Fターム(参考)】
5D107AA11
5D107AA13
5D107CC09
5D107CC10
5D107FF10
(57)【要約】      (修正有)
【課題】振動モータの寸法の大型化および見栄えの悪化を抑制しつつ、振動モータの強度の低下を抑制した振動モータを提供する。
【解決手段】振動モータ1は、静止部と、可動部と、を備え、静止部は、ハウジングを有し、ハウジングは、軸方向に延びる筒状のハウジング筒部11と、ハウジング筒部の軸方向一方側の端部に配置されるハウジング蓋部12と、接着剤130と、を有し、ハウジング蓋部は、ハウジング筒部の軸方向一方側の開口を覆う蓋本体部121と、蓋本体部から軸方向他方側に突出してハウジング筒部の内部に配置される蓋固定部122と、を有し、接着剤は、ハウジング筒部と蓋固定部との径方向間の領域である接着領域の少なくとも一部に配置され、ハウジング筒部は、ハウジング筒部の軸方向一方側の端面から軸方向他方側に凹み、かつ、径方向に貫通する切り欠き部110を有し、接着領域の一部は、切り欠き部を介して、ハウジングの外部に露出する。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
静止部と、
前記静止部に対し、中心軸に沿って軸方向に振動可能な可動部と、を備え、
前記静止部は、ハウジングを有し、
前記ハウジングは、
前記中心軸に沿って軸方向に延びる筒状であり、前記可動部が内部に配置されるハウジング筒部と、
前記ハウジング筒部の軸方向一方側の端部に配置されるハウジング蓋部と、
接着剤と、を有し、
前記ハウジング蓋部は、
前記ハウジング筒部の軸方向一方側の開口を覆う蓋本体部と、
前記蓋本体部から軸方向他方側に突出して前記ハウジング筒部の内部に配置される蓋固定部と、を有し、
前記接着剤は、前記ハウジング筒部と前記蓋固定部との径方向間の領域である接着領域の少なくとも一部に配置され、
前記ハウジング筒部は、前記ハウジング筒部の軸方向一方側の端面から軸方向他方側に凹み、かつ、径方向に貫通する切り欠き部を有し、
前記接着領域の一部は、前記切り欠き部を介して、前記ハウジングの外部に露出する、振動モータ。
【請求項2】
前記蓋固定部の径方向外側面は、前記ハウジング筒部の径方向内側面に沿って周方向に連続して延びる、請求項1に記載の振動モータ。
【請求項3】
前記蓋固定部の軸方向の厚みは、前記切り欠き部の軸方向の切り込み深さの半分以上である、請求項1に記載の振動モータ。
【請求項4】
前記蓋固定部は、径方向から見て、前記切り欠き部の全域を塞ぐ、請求項1に記載の振動モータ。
【請求項5】
前記切り欠き部の周方向の開口幅は、前記ハウジング筒部の周方向の長さの半分以下である、請求項1に記載の振動モータ。
【請求項6】
回路基板を備え、
前記静止部は、前記ハウジング筒部の内部に配置され、前記可動部に駆動力を付与するコイルを有し、
前記回路基板は、前記コイルに電気的に接続され、
前記ハウジング筒部は、前記ハウジング筒部の軸方向他方側の端面から軸方向一方側に凹み、かつ、径方向に貫通する基板用切り欠き部を有し、
前記回路基板の少なくとも一部は、前記基板用切り欠き部に配置される、請求項1に記載の振動モータ。
【請求項7】
前記コイルと前記回路基板とを接続する引き出し線と、
封止部材と、を備え、
前記基板用切り欠き部の軸方向の切り込み深さは、前記コイルの配置領域に達し、
前記封止部材は、前記基板用切り欠き部に配置され、少なくとも前記コイルと前記引き出し線との接続箇所を径方向外方から覆う、請求項6に記載の振動モータ。
【請求項8】
前記可動部は、前記中心軸に沿って軸方向に延びるコア部を有し、
前記静止部は、前記コア部を前記中心軸に沿って軸方向に振動可能に支持するベアリングを有し、
前記ベアリングは、前記ハウジング筒部の内部に配置され、前記コア部の少なくとも一部が挿入されるベアリング筒部を有し、
前記ベアリング筒部は、前記中心軸に沿って軸方向に延びる円筒状であり、径方向外側面にDカット面を有し、
前記Dカット面は、前記回路基板の前記基板用切り欠き部に配置される部分と径方向に対向する、請求項6に記載の振動モータ。
【請求項9】
前記ベアリング筒部は、位置決め部を有し、
前記位置決め部は、前記Dカット面から径方向外方に突出し、前記回路基板の軸方向一方側の端部に接触する、請求項8に記載の振動モータ。
【請求項10】
前記位置決め部の径方向外方の先端は、前記ハウジング筒部の径方向外側面よりも径方向内方に位置する、請求項9に記載の振動モータ。
【請求項11】
前記可動部は、前記中心軸に沿って軸方向に延びるコア部を有し、
前記静止部は、前記コア部を前記中心軸に沿って軸方向に振動可能に支持するベアリングを有し、
前記ベアリングは、
前記ハウジング筒部の内部に配置され、前記コア部の少なくとも一部が挿入されるベアリング筒部と、
前記ベアリング筒部の軸方向他方側の開口を覆うベアリング蓋部と、を有し、
前記ベアリング筒部の軸方向他方側の端部は、前記ハウジング筒部から軸方向他方側に突出し、
前記ベアリング筒部の軸方向他方側の端面は、軸方向一方側に凹み、かつ、径方向に貫通する排気用溝部を有する、請求項1に記載の振動モータ。
【請求項12】
前記蓋固定部の径方向外側面は、径方向内方に凹み、かつ、周方向に延びる接着剤用溝部を有する、請求項1に記載の振動モータ。
【請求項13】
静止部と、
前記静止部に対し、中心軸に沿って軸方向に振動可能な可動部と、を備え、
前記静止部は、ハウジングを有し、
前記ハウジングは、
前記中心軸に沿って軸方向に延びる筒状であり、前記可動部が内部に配置されるハウジング筒部と、
前記ハウジング筒部の軸方向一方側の端部に配置されるハウジング蓋部と、
接着剤と、を有し、
前記ハウジング蓋部は、
前記ハウジング筒部の軸方向一方側の開口を覆う蓋本体部と、
前記蓋本体部から軸方向他方側に突出して前記ハウジング筒部の内部に配置される蓋固定部と、を有し、
前記接着剤は、前記ハウジング筒部と前記蓋固定部との径方向間の領域である接着領域の少なくとも一部に配置され、
前記ハウジング蓋部は、前記ハウジング蓋部の径方向外側面から径方向内方に凹み、かつ、前記ハウジング蓋部の軸方向一方側の端面から前記蓋本体部を軸方向に貫通して前記蓋固定部に達する切り欠き部を有し、
前記接着領域の一部は、前記切り欠き部を介して、前記ハウジングの外部に露出する、振動モータ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、振動モータに関する。
【背景技術】
【0002】
従来の振動モータは、軸方向に振動可能な可動体を備える。可動体は、筒状体の内部に配置される。筒状体の軸方向の開口は、上ケースおよび下ケースによって覆われる(たとえば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第6750825号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
たとえば、ケース(上ケースまたは下ケース)は、筒状体に対して、接着剤を介して固定される。接着剤は、筒状体とケースとの径方向間の領域に配置される。この構成では、筒状体とケースとを接着剤で固定する製造工程において、筒状体とケースとの径方向間の領域から接着剤が漏出すると、接着剤の量が不十分になり、筒状体からケースが外れ易くなる場合がある。言い換えると、振動モータの強度が低下する場合がある。また、接着剤がケースから漏出し、そのまま固まってしまった場合、振動モータの寸法が大型化したり、振動モータの見栄えが悪化したりする。
【0005】
本発明は、振動モータの寸法の大型化および見栄えの悪化を抑制しつつ、振動モータの強度の低下を抑制することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の例示的な振動モータは、静止部と、静止部に対し、中心軸に沿って軸方向に振動可能な可動部と、を備える。静止部は、ハウジングを有する。ハウジングは、中心軸に沿って軸方向に延びる筒状であり、可動部が内部に配置されるハウジング筒部と、ハウジング筒部の軸方向一方側の端部に配置されるハウジング蓋部と、接着剤と、を有する。ハウジング蓋部は、ハウジング筒部の軸方向一方側の開口を覆う蓋本体部と、蓋本体部から軸方向他方側に突出してハウジング筒部の内部に配置される蓋固定部と、を有する。接着剤は、ハウジング筒部と蓋固定部との径方向間の領域である接着領域の少なくとも一部に配置される。ハウジング筒部は、ハウジング筒部の軸方向一方側の端面から軸方向他方側に凹み、かつ、径方向に貫通する切り欠き部を有する。接着領域の一部は、切り欠き部を介して、ハウジングの外部に露出する。
【0007】
本発明の例示的な振動モータは、静止部と、静止部に対し、中心軸に沿って軸方向に振動可能な可動部と、を備える。静止部は、ハウジングを有する。ハウジングは、中心軸に沿って軸方向に延びる筒状であり、可動部が内部に配置されるハウジング筒部と、ハウジング筒部の軸方向一方側の端部に配置されるハウジング蓋部と、接着剤と、を有する。ハウジング蓋部は、ハウジング筒部の軸方向一方側の開口を覆う蓋本体部と、蓋本体部から軸方向他方側に突出してハウジング筒部の内部に配置される蓋固定部と、を有する。接着剤は、ハウジング筒部と蓋固定部との径方向間の領域である接着領域の少なくとも一部に配置される。ハウジング蓋部は、ハウジング蓋部の径方向外側面から径方向内方に凹み、かつ、ハウジング蓋部の軸方向一方側の端面から蓋本体部を軸方向に貫通して蓋固定部に達する切り欠き部を有する。接着領域の一部は、切り欠き部を介して、ハウジングの外部に露出する。
【発明の効果】
【0008】
本発明の例示的な振動モータによれば、振動モータの寸法の大型化および見栄えの悪化を抑制しつつ、振動モータの強度の低下を抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1図1は、第1実施形態に係る振動モータの斜視図である。
図2図2は、第1実施形態に係る振動モータの断面図である。
図3図3は、第1実施形態に係るハウジングの分解斜視図である。
図4図4は、第1実施形態に係るハウジングの斜視図である。
図5図5は、第1実施形態に係るハウジングの上端部の拡大断面図である。
図6図6は、第1実施形態に係るハウジングの上端部の断面斜視図である。
図7図7は、第1実施形態に係るハウジングを径方向から見た平面図である。
図8図8は、第1実施形態に係るハウジングの蓋固定部の径方向外側面に凹部がある場合の模式図である。
図9図9は、第1実施形態に係るハウジングの蓋固定部(接着剤用溝部を有する蓋固定部)の斜視図である。
図10図10は、第1実施形態に係る振動モータの分解斜視図である。
図11図11は、第1実施形態に係る振動モータから回路基板および封止部材を省略した斜視図である。
図12図12は、第1実施形態に係る振動モータを下方から見た平面図である。
図13図13は、第1実施形態に係るベアリングの斜視図である。
図14図14は、第2実施形態に係るハウジングの分解斜視図である。
図15図15は、第2実施形態に係るハウジングの斜視図である。
図16図16は、第2実施形態に係るハウジングを上方から見た平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の例示的な実施形態について、図面を参照しながら説明する。
【0011】
本明細書では、振動モータ1000の中心軸CAが延びる方向を「軸方向」と呼び、中心軸CAを中心とする周方向を「周方向」と呼ぶ。
【0012】
また、本明細書では、軸方向を上下方向と定義する。さらに、軸方向の一方を上方と定義し、軸方向の他方を下方と定義する。すなわち、明細書中の上方側は「軸方向一方側」に相当し、下方側は「軸方向他方側」に相当する。本明細書では、ハウジング蓋部12が配置される側が上方側であり、ベアリング蓋部22が配置される側が下方側である。ただし、この上下方向の定義は、振動モータ1000の各構成要素の実際の向きおよび位置関係を限定するものではない。
【0013】
また、本明細書では、各構成要素において、上方側の端部(すなわち、軸方向一方側の端部)を「上端部」と呼び、下方側の端部(すなわち、軸方向他方側の端部)を「下端部」と呼ぶ。さらに、各構成要素において、上端部のうち上方を向く端面(すなわち、軸方向一方側の端面)を「上端面」と呼び、下方側を向く端面(すなわち、軸方向他方側の端面)を「下端面」と呼ぶ。
【0014】
また、本明細書では、中心軸CAと直交する方向を「径方向」と呼ぶ。径方向のうち、中心軸CAに接近する向きを「径方向内方」と呼び、中心軸CAから離間する向きを「径方向外方」と呼ぶ。さらに、各構成要素において、径方向内方を向く側面を「径方向内側面」と呼び、径方向外方を向く側面を「径方向外側面」と呼ぶ。
【0015】
<1.第1実施形態>
<1-1.振動モータ1000の全体構成>
図1は、第1実施形態に係る振動モータ1000の斜視図である。図2は、第1実施形態に係る振動モータ1000の断面図である。図2は、中心軸CAを含む平面で振動モータ1000を切断した断面に対応する。
【0016】
振動モータ1000は、静止部10と、可動部20と、を備える。可動部20は、静止部10に対し、中心軸CAに沿って軸方向に振動可能である。言い換えると、静止部10は、可動部20を中心軸CAに沿って軸方向に振動可能に支持する。
【0017】
振動モータ1000は、弾性部材30を備える。弾性部材30は、たとえば、コイルばねである。弾性部材30は、たとえば、板バネやクッションのようなものでもよい。弾性部材30は、静止部10と可動部20とを連結する。詳細は後述する。
【0018】
振動モータ1000は、回路基板40を備える。回路基板40は、たとえば、フレキシブルプリント基板(FPC)である。回路基板40は、たとえば、フレキシブルプリント基板のような柔らかいものではないもの(たとえば、硬質基板)でもよい。回路基板40は、後述するコイル3に電気的に接続される。回路基板40は、コイル3への通電を制御するための回路を有する。
【0019】
静止部10は、ハウジング1を有する。ハウジング1は、非磁性体で構成される。ハウジング1は、たとえば、ステンレス製であるが、合金などでもよい。また、ハウジング1は、有蓋円筒状である。ハウジング1は、その内部空間を収容領域として有する。ハウジング1は、可動部20を内部に収容する。すなわち、可動部20は、ハウジング1の内部に配置される。
【0020】
ハウジング1は、ハウジング筒部11を有する。ハウジング筒部11は、中心軸CAに沿って軸方向に延びる筒状である。具体的には、ハウジング筒部11は、中心軸CAに沿って軸方向に延びる円筒状である。可動部20は、ハウジング筒部11の内部に配置される。すなわち、ハウジング筒部11は、可動部20を径方向外方から覆う。
【0021】
ハウジング1は、ハウジング蓋部12を有する。ハウジング蓋部12は、ハウジング筒部11の上端部に配置される。ハウジング蓋部12は、蓋本体部121と、蓋固定部122と、を有する。蓋本体部121は、中心軸CAを中心とする円盤状である。蓋本体部121は、ハウジング筒部11の上方側の開口を覆う。ハウジング筒部11の上方側の開口が蓋本体部121で覆われた状態では、蓋本体部121の径方向外方の端部がハウジング筒部11の上端面に接触する。
【0022】
また、静止部10は、ベアリング2を有する。ベアリング2は、樹脂製であるが、これに限らず、金属製であってもよい。ただし、ベアリング2が金属製である場合には、後述するコイル3との間で絶縁ができないため、ベアリング2のうちコイル3が巻き付けられる部分に絶縁材料を介在させる必要がある。一方で、ベアリング2が樹脂製である場合には、絶縁材料を介在させることなく直接、ベアリング2にコイル3を巻き付けることができる。なお、ベアリング2は、スリーブベアリングである。ベアリング2は、後述するコア部201を中心軸CAに沿って軸方向に振動可能に支持する。
【0023】
ベアリング2は、ベアリング筒部21を有する。ベアリング筒部21がスリーブベアリングとして機能する。ベアリング筒部21は、中心軸CAに沿って軸方向に延びる円筒状である。ベアリング筒部21は、ハウジング筒部11の内部に配置される。ベアリング筒部21には、後述するコア部201の少なくとも一部が挿入される。たとえば、コア部201の半分以上がベアリング筒部21の内部に挿入される。これにより、ベアリング筒部21は、コア部201を安定して保持できる。
【0024】
ベアリング筒部21は、ベアリング鍔部211を有する。具体的には、ベアリング筒部21の下端部は、ハウジング筒部11から下方側に突出する。そして、ベアリング鍔部211は、ベアリング筒部21の全周にわたって、ベアリング筒部21の下端部から径方向外方に突出する。ベアリング鍔部211の径方向外方の先端は、ハウジング筒部11の径方向外側面よりも径方向内方に配置される。または、ベアリング鍔部211の径方向外方の先端は、ハウジング筒部11の径方向外側面と面一となる位置に配置される。また、ベアリング鍔部211の上端面は、ハウジング筒部11の下端面に接触する。これにより、ベアリング2が軸方向に位置決めされる。なお、ベアリング筒部21の下端面は、ベアリング鍔部211の下端面も含む。
【0025】
ベアリング2は、ベアリング蓋部22を有する。ベアリング蓋部22の構成材料は特に限定されず、金属製であってもよいし、樹脂製であってもよい。ベアリング蓋部22は、ベアリング筒部21の下端部に配置される。ベアリング蓋部22は、ベアリング筒部21の下端面に接着される。これにより、ベアリング蓋部22は、ベアリング筒部21の下方側の開口を覆う。ベアリング筒部21の下方側の開口が覆われることにより、ホコリなどの異物が振動モータ1000の外部から内部に進入することを抑制できる。たとえば、ベアリング蓋部22は、樹脂製のシールである。ベアリング蓋部22としてのシールがベアリング筒部21の下端面に貼り付けられる。
【0026】
また、静止部10は、コイル3を有する。コイル3は、可動部20(後述するコア部201)に駆動力を付与する。コイル3は、ベアリング筒部21の外周面に導線が巻き付けられることによって形成される。これにより、コイル3は、ハウジング筒部11の内部に配置される。たとえば、ベアリング筒部21は、周方向に連続して延びて1周する溝部(符号省略)を径方向外側面に有する。コイル3は、ベアリング筒部21の径方向外側面の溝部に配置される。ベアリング筒部21の径方向外側面の溝部にコイル3が配置されることにより、振動モータ1000を径方向に小型化できる。
【0027】
可動部20は、コア部201を有する。コア部201は、中心軸CAに沿って軸方向に延びる。コア部201は、軸方向に延びる円柱状である。ただし、コア部201の形状は円柱状に限らない。コア部201は、ベアリング2に対し、上方から下方に向かって挿入される。コア部201は、その下端部が少なくともベアリング2に挿入された状態で保持される。すなわち、コア部201は、コイル3の径方向内方に配置される。
【0028】
たとえば、コア部201は、符号は省略するが、磁性体と、その磁性体を軸方向に挟み込む一対のマグネットと、を有する。上方のマグネットうち、下方側がS極であり、上方側がN極である。下方のマグネットのうち、上方側がS極であり、下方側がN極である。この場合には、S極同士が磁性体を挟んで軸方向に対向する。または、上方のマグネットうち、下方側がN極であり、上方側がS極である。下方のマグネットのうち、上方側がN極であり、下方側がS極である。この場合には、N極同士が磁性体を挟んで軸方向に対向する。
【0029】
また、可動部20は、ホルダ202を有する。ホルダ202は、コア部201の上端部に配置される。たとえば、ホルダ202は、下方から上方に凹む凹部(符号省略)を有する。コア部201は、その上端部がホルダ202の凹部に嵌め込まれ、ホルダ202に固定される。ホルダ202は、コア部201と共に軸方向に振動する。ホルダ202は、錘として機能する。ホルダ202の構成材料は、たとえば、ステンレスであるが、ステンレスよりも重いタングステンであってもよい。なお、ステンレスの方がタングステンよりも加工がし易い。
【0030】
弾性部材30は、ハウジング蓋部12とホルダ202との軸方向間に配置される。弾性部材30の上端部は、ハウジング蓋部12の下端部(後述する凸部123)に接着剤で固定される。弾性部材30の下端部は、ホルダ202の上端部に接着剤で固定される。弾性部材30は、可動部20を下方に付勢する。なお、弾性部材30のハウジング蓋部12およびホルダ202に対する固定方法は特に限定されない。たとえば、弾性部材30の上端部は、ハウジング蓋部12の下端部に対して溶接されてもよい。また、弾性部材30の下端部は、ホルダ202の上端部に対して溶接されてもよい。
【0031】
回路基板40は、少なくとも一部が静止部10に接着剤で固定される。なお、回路基板40の静止部10に対する固定方法は特に限定されない。たとえば、回路基板40の少なくとも一部は、静止部10に対して溶接されてもよい。回路基板40の配置位置については、後に詳細に説明する。回路基板40は、引き出し線41を介して、コイル3に接続される。すなわち、振動モータ1000は、コイル3と回路基板40とを接続する引き出し線41を備える。回路基板40から引き出し線41を介して、コイル3に対する通電が行われる。
【0032】
コイル3に対する通電を行うことにより、コイル3から磁界が発生する。そして、コイル3から発生した磁界とコア部201による磁界との相互作用により、可動部20が軸方向に振動する。
【0033】
なお、振動モータ1000は、封止部材50を備える。封止部材50は、硬化した樹脂である。封止部材50の構成材料は、後述する接着剤13の構成材料よりも粘度が高い。詳細は後述するが、コイル3と引き出し線41との接続箇所はハウジング1で覆われない。そこで、封止部材50により、コイル3と引き出し線41との接続箇所の封止が行われる。言い換えると、封止部材50は、少なくともコイル3と引き出し線41との接続箇所を径方向外方から覆う。一方で、回路基板40と引き出し線41との接続を容易にするため、回路基板40と引き出し線41との接続箇所はむき出しになっている。これにより、振動モータ100の組み立ての際、封止部材50の構成材料を塗布してからでも、回路基板40と引き出し線41との接続が容易になる。
【0034】
コイル3の少なくとも一部を封止部材50で覆う構成において、封止部材50の構成材料の粘度が低い場合には、封止部材50の構成材料がコイル3の導線の隙間に染み込んだり、封止部材50の構成材料が不要な部分に付着して見栄えが悪くなったりする可能性がある。このため、封止部材50の構成材料は接着剤13の構成材料よりも粘度が高いことが好ましい。
【0035】
<1-2.ハウジング筒部に対するハウジング蓋部の固定>
図3は、第1実施形態に係るハウジング1の分解斜視図であり、図4は、第1実施形態に係るハウジング1の斜視図である。言い換えると、図3は、ハウジング筒部11に対してハウジング蓋部12が固定される前の状態を示す図であり、図4は、ハウジング筒部11に対してハウジング蓋部12が固定された後の状態を示す図である。図3および図4では、ハウジング1の上端部の周辺のみ図示する。図5は、第1実施形態に係るハウジング1の上端部の拡大断面図である。図5は、中心軸CAを含む平面でハウジング1の上端部を切断した断面に対応する。図6は、第1実施形態に係るハウジング1の上端部の断面斜視図である。図6は、中心軸CAと直交する平面でハウジング1の上端部を切断した断面に対応する。図7は、第1実施形態に係るハウジング1を径方向から見た平面図である。
【0036】
ハウジング筒部11とハウジング蓋部12との固定では、接着剤13が使用される。すなわち、ハウジング1は、接着剤13を有する。接着剤13の種類は特に限定されない。たとえば、エポキシ系接着剤およびアクリル系接着剤などを使用できる。なお、接着剤13の構成材料は、封止部材50の構成材料よりも粘度が低い。接着剤13の粘度が高い場合には、ハウジング筒部11とハウジング蓋部12との径方向間の隙間に接着剤13を充填するときに接着剤13が周方向に行きわたり難くなる可能性がある。したがって、接着剤13の構成材料は封止部材50の構成材料よりも粘度が低いことが好ましい。これにより、ハウジング筒部11とハウジング蓋部12との径方向間の隙間に接着剤13を充填するときに接着剤13が周方向に行きわたり易くなるため、ハウジング筒部11とハウジング蓋部12とを強固に固定できる。ただし、接着剤13の構成材料と封止部材50の構成材料とが同じでもよい。
【0037】
ハウジング蓋部12は、その一部がハウジング筒部11の内部に嵌め込まれ、接着剤13によって固定される。具体的には、蓋固定部122は、蓋本体部121から下方側に突出してハウジング筒部11の内部に配置される。蓋固定部122は、円柱状であり、中心軸CAに沿って軸方向に突出する。そして、接着剤13は、ハウジング筒部11と蓋固定部122との径方向間の領域である接着領域130の少なくとも一部に配置される。
【0038】
なお、蓋固定部122は、下方側に突出する凸部123を下端面に有する(図2および図5参照)。凸部123は、円柱状であり、中心軸CAに沿って軸方向に突出する。凸部123には、弾性部材30の上端部が固定される。蓋固定部122の軸方向の長さは、弾性部材30の軸方向の長さの半分以下で良い。図5では、便宜上、蓋本体部121と蓋固定部122との境界を破線で示す。また、蓋固定部122と凸部123との境界を破線で示す。
【0039】
たとえば、図示しないが、蓋固定部122は、中心軸CAを中心とし、かつ、上方に環状に凹む溝部を有してもよい。そして、弾性部材30の上端部は、蓋固定部122の環状の溝部に配置されてもよい。また、同様に、ホルダ202は、中心軸CAを中心とし、かつ、下方に環状に凹む溝部を有してもよい。そして、弾性部材30の下端部は、ホルダ202の溝部に配置されてもよい。
【0040】
ここで、ハウジング1の組み立て工程(すなわち、ハウジング筒部11にハウジング蓋部12を固定する工程)では、ハウジング筒部11の内部に蓋固定部122を配置した状態で、接着領域130への接着剤13の注入が行われる。このため、ハウジング筒部11は、接着剤13の注入口を有する。
【0041】
具体的には、第1実施形態では、ハウジング筒部11は、切り欠き部110を有する。この切り欠き部110が接着剤13の注入口となる。切り欠き部110は、ハウジング筒部11の上端面から下方側に凹み、かつ、径方向に貫通する。これにより、接着領域130の一部は、切り欠き部110を介して、ハウジング筒部11から径方向外方に露出する。言い換えると、蓋固定部122の一部は、切り欠き部110を介して、ハウジング筒部11から露出する。さらに言い換えると、接着領域130の一部は、切り欠き部110を介して、ハウジング1の外部に露出する。その結果、接着領域130の一部がハウジング1の外部から視認可能である。これにより、後述するように容易に、ディスペンサーニードルで接着剤13を塗布できる。
【0042】
ハウジング筒部11が切り欠き部110を有する場合、ハウジング1の組み立て工程において、ハウジング筒部11の内部に蓋固定部122を配置した状態で、接着領域130に接着剤13を注入できる。具体的には、ハウジング1の組み立て工程では、まず、ハウジング筒部11の内部に蓋固定部122が嵌め込まれる。ここで、ハウジング筒部11の内部に蓋固定部122が嵌め込まれても、接着領域130の一部が切り欠き部110から露出する。その後、図示しないが、切り欠き部110にディスペンサーニードルの先端(すなわち、吐出口)が配置され、接着剤13がディスペンサーニードルから吐出される。このとき、切り欠き部110から露出する接着領域130に接着剤13が進入し、接着剤13が周方向に流動する。これにより、接着領域130の略全域にわたって接着剤13が充填される。すなわち、接着剤13を介して、ハウジング筒部11にハウジング蓋部12が固定される。
【0043】
たとえば、ハウジング筒部11に切り欠き部110が存在しない場合、蓋固定部122の径方向外側面に接着剤13を塗布した後(または、ハウジング筒部11の径方向内側面に接着剤13を塗布した後)、ハウジング筒部11の内部に蓋固定部122を嵌め込むという作業が行われる。この場合には、ハウジング筒部11の内部に蓋固定部122嵌め込むとき、接着領域130から接着剤13がハウジング筒部11の上端によってこし取られて外部に漏出し易いため、接着領域130に配置される接着剤13の量が少なくなる。また、接着領域130からの接着剤13の漏出が多くなると、接着剤13の拭き取り作業を行わなければならない。接着剤13の拭き取り作業を省略するには、接着剤13の使用量を減らして接着剤13の漏出を抑制すればよいが、接着領域130に配置される接着剤13の量が少なくなる。これらの結果、ハウジング筒部11に切り欠き部110が存在しない場合には、ハウジング筒部11に対するハウジング蓋部12の固定が弱くなり、ハウジング1の強度が低下する可能性がある。言い換えると、ハウジング筒部11からハウジング蓋部12が外れる可能性がある。また、接着剤13がハウジング1から漏出し、そのまま固まってしまった場合、振動モータ1000の寸法が大型化したり、振動モータ1000の見栄えが悪化したりする場合がある。
【0044】
一方で、第1実施形態では、ハウジング筒部11の内部に蓋固定部122を配置した状態で、接着領域130への接着剤13の注入をディスペンサーニードルによって行うことができる。これにより、切り欠き部110に配置したディスペンサーニードルから適切量の接着剤13を吐出することにより、接着領域130から接着剤13が漏出することを抑制できる。すなわち、接着領域130に適切量の接着剤13が充填された状態にできる。なお、接着剤13の適切量は、接着領域130から接着剤13が略漏出しない量であり、ハウジング筒部11に対するハウジング蓋部12の固定に十分な量である。接着剤13の適切量は、実験的および経験的に求められる。
【0045】
これにより、第1実施形態では、ハウジング筒部11に対してハウジング蓋部12を強固に固定できる。その結果、ハウジング1の強度の低下を抑制できる。すなわち、振動モータ1000の強度の低下を抑制できる。また、ハウジング1の組み立て工程において、接着剤13の拭き取り作業を省略できる。さらに、ハウジング1の外部への接着剤13の漏出が抑制されるため、振動モータ1000の寸法の大型化および見栄えの悪化を抑制できる。
【0046】
また、第1実施形態では、蓋固定部122の径方向内側面は、ハウジング筒部11の径方向内側面に沿って周方向に連続して延びる(図6参照)。すなわち、蓋固定部122の径方向外側面には、周方向の全周にわたって、凹部などの段差が存在しない。これにより、蓋固定部122の径方向外側面のうち、切り欠き部110と径方向に重ならない部分の略全てをハウジング筒部11の径方向内側面に接着できる。また、接着領域130に接着剤13を充填するとき、ハウジング筒部11とハウジング蓋部12との径方向間の領域を接着剤13が流動し易くなる。なお、図6では、接着剤13の図示を省略する。
【0047】
また、第1実施形態では、蓋固定部122の軸方向の厚みTは、切り欠き部110の軸方向の切り込み深さHの半分以上である(図7参照)。これにより、接着領域130が軸方向に大きくなるため、接着領域130への接着剤13の充填が容易になる。また、接着剤13の使用量を増やせるため、ハウジング筒部11に対するハウジング蓋部12の固定がより強固になる。
【0048】
なお、第1実施形態では、蓋固定部122の厚みTは、切り込み深さHの半分以上、かつ、切り込み深さHよりも小さい。このため、径方向から見て、蓋固定部122の下端面と切り欠き部110の底面との軸方向間に隙間が生じる。ただし、これに限定されない。
【0049】
蓋固定部122の軸方向の厚みTは、切り欠き部110の軸方向の切り込み深さH以上であってもよい。この場合、図示しないが、蓋固定部122は、径方向から見て、切り欠き部110の全域を塞ぐ。すなわち、径方向から見て、蓋固定部122の下端面と切り欠き部110の底面との軸方向間に隙間が生じない。これにより、ハウジング1の内部に異物が進入することを抑制できる。
【0050】
また、第1実施形態では、切り欠き部110の周方向の開口幅Wは、ハウジング筒部11の周方向の長さの半分以下である(図7参照)。これにより、切り欠き部110が大き過ぎることに起因する接着領域130の不足を抑制できる。
【0051】
たとえば、切り欠き部110の径方向から見た開口の大きさは、ハウジング1の組み立て工程で使用されるディスペンサーニードルの先端の直径に基づき設定される。切り欠き部110の径方向から見た開口は、少なくともディスペンサーニードルの先端を配置できる大きさに設定される。切り欠き部110の径方向から見た開口は、ディスペンサーニードルの先端を配置できれば、より小さいことが好ましい。
【0052】
また、切り欠き部110の径方向から見た開口形状は、略矩形状である。ただし、切り欠き部110の径方向から見た開口形状は特に限定されず、円形状、半円形状および多角形状などであってもよい。
【0053】
なお、切り欠き部110の数は特に限定されない。切り欠き部110は、1つでもよいし、複数でもよい。たとえば、切り欠き部110は2つ存在し、軸方向から見て、中心軸CAを挟んで径方向に対向する。これにより、接着領域130に対して複数個所から接着剤13を注入できる。
【0054】
また、蓋固定部122の径方向外側面に複数の凹部(段差)が存在する場合には、ハウジング筒部11に複数の切り欠き部110を設けることが好ましい。たとえば、図8に示すように、軸方向に延びる2つの凹部200が蓋固定部122の径方向外側面に存在する場合には、軸方向から見て、蓋固定部122の径方向外側面が2つに分割された状態となる。
【0055】
なお、図8は、第1実施形態に係るハウジング1の蓋固定部122の径方向外側面に凹部200がある場合の模式図である。図8は、ハウジング1の上端部を中心軸CAと直交する平面で切断して上方から見た断面に対応する。ここでは、便宜上、蓋固定部122の2つに分割された径方向外側面のうち、一方を一方蓋外側面12Aと呼び、他方を他方蓋外側面12Bと呼ぶ。
【0056】
このように蓋固定部122の径方向外側面に2つの凹部200が存在する場合には、ハウジング筒部11に2つの切り欠き部110を設けるとともに、一方の切り欠き部110を一方蓋外側面12Aと径方向に重ね、他方の切り欠き部110を他方蓋外側面12Bと径方向に重ねることが好ましい。これにより、一方の切り欠き部110から接着剤13を注入することより、ハウジング筒部11の径方向内側面と一方蓋外側面12Aとで構成される接着領域130に接着剤13が充填され易くなる。また、他方の切り欠き部110から接着剤13を注入することにより、ハウジング筒部11の径方向内側面と他方蓋外側面12Bとで構成される接着領域130に接着剤13が充填され易くなる。これにより、接着剤13を略全周にわたって充填させることができる。
【0057】
また、図9に示すように、蓋固定部122の径方向外側面は、接着剤用溝部1220を有してもよい。接着剤用溝部1220は、径方向内方に凹み、かつ、周方向に延びる。たとえば、接着剤用溝部1220は、周方向に連続して延びて1周する。すなわち、接着剤用溝部1220は、周方向に途切れることなく一つながりの環状である。これにより、接着領域130に注入した接着剤13の周方向への流動性が向上する。
【0058】
なお、図9に示す形態では、接着剤用溝部1220の個数は1つであるが、接着剤用溝部1220の個数は特に限定されない。たとえば、複数の接着剤用溝部1220が軸方向に間隔を隔てて配列されていてもよい。また、接着剤用溝部1220は、周方向に連続して延びていなくてもよく、周方向に複数に分割されていてもよい。言い換えると、蓋固定部122の周長よりも短い接着剤用溝部1220が周方向に間隔を隔てて配列されていてもよい。
【0059】
<1-3.回路基板40の固定>
図10は、第1実施形態に係る振動モータ1000の一部を分解した斜視図である。図10では、可動部20の図示を省略する。図11は、第1実施形態に係る振動モータ1000から回路基板40および封止部材50を省略した斜視図である。図12は、第1実施形態に係る振動モータ1000を下方から見た平面図である。なお、図12では、回路基板40の図示を省略する。
【0060】
回路基板40は、ベアリング筒部21の径方向外側面に固定される。このため、ハウジング筒部11は、基板用切り欠き部111を有する。基板用切り欠き部111は、ハウジング筒部11の下端面から上方側に凹み、かつ、径方向に貫通する。たとえば、基板用切り欠き部111の径方向から見た開口形状は、略矩形状である。ただし、基板用切り欠き部111の径方向から見た開口形状は特に限定されない。これにより、基板用切り欠き部111を介して、ベアリング筒部21の径方向外側面の一部がハウジング筒部11から露出する。
【0061】
ここで、第1実施形態では、回路基板40は、ベアリング筒部21のうち基板用切り欠き部111を介してハウジング筒部11から露出する部分に固定される。言い換えると、回路基板40の少なくとも一部は、基板用切り欠き部111に配置される。
【0062】
これにより、第1実施形態では、回路基板40がハウジング筒部11の径方向外側面よりも径方向外方にはみ出ることを抑制できる。すなわち、振動モータ1000が径方向に大きくなることを抑制できる。
【0063】
また、第1実施形態では、基板用切り欠き部111の軸方向の切り込み深さは、コイル3の配置領域に達する。すなわち、コイル3の少なくとも一部は、基板用切り欠き部111を介して、ハウジング筒部11から径方向外方に露出する。コイル3のうちハウジング筒部11から径方向外方に露出する部分が引き出し線41の接続箇所となる。そこで、封止部材50(図1参照)は、基板用切り欠き部111に配置される。封止部材50は、少なくとも、基板用切り欠き部111のうち上方側に配置される。
【0064】
これにより、第1実施形態では、コイル3と引き出し線41との接続箇所が封止部材50によって径方向外方から覆われるため、引き出し線41が動くことを抑制できる。その結果、コイル3から引き出し線41が外れたり、回路基板40から引き出し線41が外れたりするなどの断線を抑制できる。
【0065】
なお、図示しないが、封止部材50の配置領域を軸方向により大きくし、少なくとも回路基板40と引き出し線41との接続箇所に設けられる半田層42まで封止部材50で覆ってもよい。これにより、引き出し線41が動くことをより抑制できる。
【0066】
また、第1実施形態では、ベアリング筒部21は、径方向外側面にDカット面210を有する。Dカット面210は、基板用切り欠き部111を介して、ハウジング筒部11から径方向外方に露出する。このため、Dカット面210は、回路基板40のうち基板用切り欠き部111に配置される部分と径方向に対向する。これにより、回路基板40をDカット面210に固定できる。すなわち、回路基板40を平坦面に固定できる。その結果、回路基板40が位置ずれすることを抑制できる。仮に、Dカット面210が存在しない場合には、回路基板40を曲面上に配置しなければならず、回路基板40の固定が不安定になる。一方で、平坦面であるDカット面210に回路基板40を固定する場合には、回路基板40の固定をより安定させることができる。たとえば、回路基板40がDカット面210に対して接着されてもよい。
【0067】
また、第1実施形態では、ベアリング筒部21は、位置決め部212を有する。位置決め部212は、Dカット面210から径方向外方に突出する。位置決め部212は、Dカット面210の上方端に配置される。位置決め部212の下端面は、回路基板40の上端部に接触する。これにより、回路基板40の軸方向の位置決めを行うことができる。すなわち、回路基板40が軸方向に位置ずれすることを抑制できる。
【0068】
位置決め部212は、メイン位置決め部2121と、サブ位置決め部2122と、を含む。メイン位置決め部2121は、1つである。メイン位置決め部2121は、Dカット面210の法線方向から見て、Dカット面210のうち、軸方向と直交する方向(ここでは、「幅方向」と呼ぶ)における略中央に配置される。サブ位置決め部2122は、2つである。2つのサブ位置決め部2122は、それぞれ、幅方向における一方側および他方側に配置される。
【0069】
位置決め部212が複数存在することにより、回路基板40の軸方向の位置ずれをより抑制できる。また、Dカット面210の法線方向から見て、回路基板40が傾くことを抑制できる。なお、サブ位置決め部2122は省略されてもよい。
【0070】
また、第1実施形態では、位置決め部212の径方向外方の先端は、ハウジング筒部11の径方向外側面よりも径方向内方に位置する(図12参照)。これにより、振動モータ1000を径方向に大型化することなく、回路基板40の軸方向の位置決めを行うことができる。
【0071】
<1-4.ベアリング2の内部空気の排気>
図13は、第1実施形態に係るベアリング2の斜視図である。なお、図13では、ベアリング筒部21からベアリング蓋部22を離間させて図示する。また、図13では、ベアリング2の下端部を上方に向けて図示する。
【0072】
ベアリング筒部21には、上方側から、コア部201の一部が挿入される。一方で、ベアリング筒部21の下方側の開口は、ベアリング蓋部22で塞がれる。コア部201は、その一部がベアリング筒部21に挿入された状態で、軸方向に振動する。仮に、ベアリング蓋部22とコア部201との間の空気を逃がさなければ、ダンパー効果が強まり、コア部201が下方側に移動し難くなる。
【0073】
このため、第1実施形態では、ベアリング筒部21の下端面は、排気用溝部213を有する。排気用溝部213は、上方側に凹み、かつ、径方向に貫通する。なお、ベアリング蓋部22は、ベアリング筒部21の下端面に接触する一方、排気用溝部213の内面には接触しない。すなわち、排気用溝部213の内面とベアリング蓋部22とで囲まれた領域は空間である。これにより、ベアリング筒部21の内部の空気を排気用溝部213から外部に逃がすことができる。その結果、コア部201が下方側に移動し難くなることを抑制できる。
【0074】
なお、排気用溝部213の数は特に限定されない。排気用溝部213は、1つでもよいし、複数でもよい。たとえば、排気用溝部213は2つ存在する。排気用溝部213が2つであれば、ベアリング筒部21の下端面に対するベアリング蓋部22の接着面積を十分に確保しつつ、ベアリング筒部21の内部の空気を外部に逃がすことができる。
【0075】
<2.第2実施形態>
図14は、第2実施形態に係るハウジング100の分解斜視図であり、図15は、第2実施形態に係るハウジング100の斜視図である。言い換えると、図14は、ハウジング筒部101に対してハウジング蓋部102が固定される前の状態を示す図であり、図15は、ハウジング筒部101に対してハウジング蓋部102が固定された後の状態を示す図である。図14および図15では、ハウジング100の上端部の周辺のみ図示する。図16は、第2実施形態に係るハウジング100を上方から見た平面図である。
【0076】
以下、第2実施形態について説明する。なお、第2実施形態のハウジング100は第1実施形態のハウジング1とは構成が異なる。一方で、その他の構成については第2実施形態と第1実施形態とで共通である。したがって、第2実施形態と第1実施形態とで共通する構成については、第1実施形態の説明を援用するものとして、ここではその説明を省略する。
【0077】
第2実施形態のハウジング100は、ハウジング筒部101と、ハウジング蓋部102と、を有する。また、ハウジング100は、接着剤103を有する。ハウジング筒部101は、軸方向に延びる筒状であり、可動部20(図2参照)が内部に配置される。ハウジング蓋部102は、ハウジング筒部101の上端部に配置される。
【0078】
ハウジング蓋部102は、ハウジング筒部101の上方側の開口を覆う蓋本体部1021と、蓋本体部1021から下方側に突出してハウジング筒部101の内部に配置される蓋固定部1022と、を有する。接着剤103は、ハウジング筒部101と蓋固定部1022との径方向間の領域である接着領域1030の少なくとも一部に配置される。
【0079】
これにより、第2実施形態では、第1実施形態と同様、ハウジング蓋部102は、接着剤103を介して、ハウジング筒部101に固定される。ここで、第2実施形態のハウジング100の組み立て工程は、第1実施形態のハウジング1の組み立て工程と同様、接着領域1030に対してディスペンサーニードルで接着剤103が注入される。ただし、第2実施形態では、接着剤103の注入口が第1実施形態とは異なる。
【0080】
第2実施形態では、ハウジング蓋部102が切り欠き部120を有する。そして、その切り欠き部120が接着剤103の注入口となる。切り欠き部120は、ハウジング蓋部102の径方向外側面から径方向内方に凹み、かつ、ハウジング蓋部102の上端面から蓋本体部1021を軸方向に貫通して蓋固定部1022に達する。これにより、接着領域1030の一部は、切り欠き部120を介して、ハウジング筒部101から露出する。言い換えると、蓋固定部1022の一部は、切り欠き部120を介して、ハウジング筒部101から露出する。さらに言い換えると、接着領域1030の一部は、切り欠き部120を介して、ハウジング100の外部に露出する。その結果、接着領域1030の一部がハウジング100の外部(具体的には、ハウジング100の上方)から視認可能である。
【0081】
これにより、第2実施形態では、第1実施形態と同様、ハウジング100の組み立て工程において、ハウジング筒部101の内部に蓋固定部1022を配置した状態で、接着領域1030に接着剤103を注入できる。具体的には、ハウジング100の組み立て工程では、まず、ハウジング筒部101の内部に蓋固定部1022が嵌め込まれる。ここで、ハウジング筒部101の内部に蓋固定部1022が嵌め込まれても、接着領域1030が切り欠き部120から露出する。その後、図示しないが、切り欠き部120にディスペンサーニードルの先端(すなわち、吐出口)が配置され、接着剤103がディスペンサーニードルから吐出される。このとき、切り欠き部120から露出する接着領域1030に接着剤103が進入し、接着剤103が周方向に流動する。これにより、接着領域1030の略全域にわたって接着剤103が充填される。すなわち、接着剤103を介して、ハウジング筒部101にハウジング蓋部102が固定される。
【0082】
その結果、第2実施形態では、第1実施形態と同様、ハウジング筒部101に対してハウジング蓋部102を強固に固定できる。すなわち、ハウジング100の強度の低下を抑制できる。また、ハウジング100の組み立て工程において、接着剤103の拭き取り作業を省略できる。
【0083】
第2実施形態のハウジング100のその他の構成は、第1実施形態のハウジング1の構成と同様である。すなわち、図示しないが、ハウジング筒部101は、ハウジング筒部101の下端面から上方側に凹み、かつ、径方向に貫通する基板用切り欠き部を有する。
【0084】
<3.その他>
以上、本発明の実施形態について説明した。なお、本発明の範囲は上述の実施形態に限定されない。本発明は、発明の主旨を逸脱しない範囲で種々の変更を加えて実施することができる。また、上述の実施形態は適宜任意に組み合わせることができる。
【0085】
本発明は、以下の(1)~(13)の構成をとることが可能である。
【0086】
(1) 静止部と、
前記静止部に対し、中心軸に沿って軸方向に振動可能な可動部と、を備え、
前記静止部は、ハウジングを有し、
前記ハウジングは、
前記中心軸に沿って軸方向に延びる筒状であり、前記可動部が内部に配置されるハウジング筒部と、
前記ハウジング筒部の軸方向一方側の端部に配置されるハウジング蓋部と、
接着剤と、を有し、
前記ハウジング蓋部は、
前記ハウジング筒部の軸方向一方側の開口を覆う蓋本体部と、
前記蓋本体部から軸方向他方側に突出して前記ハウジング筒部の内部に配置される蓋固定部と、を有し、
前記接着剤は、前記ハウジング筒部と前記蓋固定部との径方向間の領域である接着領域の少なくとも一部に配置され、
前記ハウジング筒部は、前記ハウジング筒部の軸方向一方側の端面から軸方向他方側に凹み、かつ、径方向に貫通する切り欠き部を有し、
前記接着領域の一部は、前記切り欠き部を介して、前記ハウジングの外部に露出する、振動モータ。
【0087】
(2) 前記蓋固定部の径方向外側面は、前記ハウジング筒部の径方向内側面に沿って周方向に連続して延びる、(1)に記載の振動モータ。
【0088】
(3) 前記蓋固定部の軸方向の厚みは、前記切り欠き部の軸方向の切り込み深さの半分以上である、(1)または(2)に記載の振動モータ。
【0089】
(4) 前記蓋固定部は、径方向から見て、前記切り欠き部の全域を塞ぐ、(1)から(3)のいずれかに記載の振動モータ。
【0090】
(5) 前記切り欠き部の周方向の開口幅は、前記ハウジング筒部の周方向の長さの半分以下である、(1)から(4)のいずれかに記載の振動モータ。
【0091】
(6) 回路基板を備え、
前記静止部は、前記ハウジング筒部の内部に配置され、前記可動部に駆動力を付与するコイルを有し、
前記回路基板は、前記コイルに電気的に接続され、
前記ハウジング筒部は、前記ハウジング筒部の軸方向他方側の端面から軸方向一方側に凹み、かつ、径方向に貫通する基板用切り欠き部を有し、
前記回路基板の少なくとも一部は、前記基板用切り欠き部に配置される、(1)から(5)のいずれかに記載の振動モータ。
【0092】
(7) 前記コイルと前記回路基板とを接続する引き出し線と、
封止部材と、を備え、
前記基板用切り欠き部の軸方向の切り込み深さは、前記コイルの配置領域に達し、
前記封止部材は、前記基板用切り欠き部に配置され、少なくとも前記コイルと前記引き出し線との接続箇所を径方向外方から覆う、(6)に記載の振動モータ。
【0093】
(8) 前記可動部は、前記中心軸に沿って軸方向に延びるコア部を有し、
前記静止部は、前記コア部を前記中心軸に沿って軸方向に振動可能に支持するベアリングを有し、
前記ベアリングは、前記ハウジング筒部の内部に配置され、前記コア部の少なくとも一部が挿入されるベアリング筒部を有し、
前記ベアリング筒部は、前記中心軸に沿って軸方向に延びる円筒状であり、径方向外側面にDカット面を有し、
前記Dカット面は、前記回路基板の前記基板用切り欠き部に配置される部分と径方向に対向する、(6)または(7)に記載の振動モータ。
【0094】
(9) 前記ベアリング筒部は、位置決め部を有し、
前記位置決め部は、前記Dカット面から径方向外方に突出し、前記回路基板の軸方向一方側の端部に接触する、(8)に記載の振動モータ。
【0095】
(10) 前記位置決め部の径方向外方の先端は、前記ハウジング筒部の径方向外側面よりも径方向内方に位置する、(9)に記載の振動モータ。
【0096】
(11) 前記可動部は、前記中心軸に沿って軸方向に延びるコア部を有し、
前記静止部は、前記コア部を前記中心軸に沿って軸方向に振動可能に支持するベアリングを有し、
前記ベアリングは、
前記ハウジング筒部の内部に配置され、前記コア部の少なくとも一部が挿入されるベアリング筒部と、
前記ベアリング筒部の軸方向他方側の開口を覆うベアリング蓋部と、を有し、
前記ベアリング筒部の軸方向他方側の端部は、前記ハウジング筒部から軸方向他方側に突出し、
前記ベアリング筒部の軸方向他方側の端面は、軸方向一方側に凹み、かつ、径方向に貫通する排気用溝部を有する、(1)から(10)のいずれかに記載の振動モータ。
【0097】
(12) 前記蓋固定部の径方向外側面は、径方向内方に凹み、かつ、周方向に延びる接着剤用溝部を有する、(1)から(11)のいずれかに記載の振動モータ。
【0098】
(13) 静止部と、
前記静止部に対し、中心軸に沿って軸方向に振動可能な可動部と、を備え、
前記静止部は、ハウジングを有し、
前記ハウジングは、
前記中心軸に沿って軸方向に延びる筒状であり、前記可動部が内部に配置されるハウジング筒部と、
前記ハウジング筒部の軸方向一方側の端部に配置されるハウジング蓋部と、
接着剤と、を有し、
前記ハウジング蓋部は、
前記ハウジング筒部の軸方向一方側の開口を覆う蓋本体部と、
前記蓋本体部から軸方向他方側に突出して前記ハウジング筒部の内部に配置される蓋固定部と、を有し、
前記接着剤は、前記ハウジング筒部と前記蓋固定部との径方向間の領域である接着領域の少なくとも一部に配置され、
前記ハウジング蓋部は、前記ハウジング蓋部の径方向外側面から径方向内方に凹み、かつ、前記ハウジング蓋部の軸方向一方側の端面から前記蓋本体部を軸方向に貫通して前記蓋固定部に達する切り欠き部を有し、
前記接着領域の一部は、前記切り欠き部を介して、前記ハウジングの外部に露出する、振動モータ。
【産業上の利用可能性】
【0099】
本発明は、たとえば、携帯機器などの各種機器に搭載される振動モータに利用可能である。
【符号の説明】
【0100】
1、100 ハウジング
2 ベアリング
3 コイル
10 静止部
11、101 ハウジング筒部
12、102 ハウジング蓋部
13、103 接着剤
20 可動部
21 ベアリング筒部
22 ベアリング蓋部
40 回路基板
41 引き出し線
50 封止部材
110、120 切り欠き部
111 基板用切り欠き部
121、1021 蓋本体部
122、1022 蓋固定部
130、1030 接着領域
201 コア部
210 Dカット面
212 位置決め部
213 排気用溝部
1000 振動モータ
1220 接着剤用溝部
CA 中心軸
図1
図2
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