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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024011922
(43)【公開日】2024-01-25
(54)【発明の名称】ガス処理システム及びガス処理方法
(51)【国際特許分類】
   B01D 53/92 20060101AFI20240118BHJP
   B01D 53/96 20060101ALI20240118BHJP
   B01D 53/14 20060101ALI20240118BHJP
   B01D 53/18 20060101ALI20240118BHJP
   B01D 53/26 20060101ALI20240118BHJP
   C01B 32/50 20170101ALI20240118BHJP
【FI】
B01D53/92 215
B01D53/92 222
B01D53/92 240
B01D53/92 331
B01D53/92 352
B01D53/96 ZAB
B01D53/14 200
B01D53/18 150
B01D53/26 100
B01D53/26 200
C01B32/50
【審査請求】未請求
【請求項の数】14
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022114275
(22)【出願日】2022-07-15
(71)【出願人】
【識別番号】000005234
【氏名又は名称】富士電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110004185
【氏名又は名称】インフォート弁理士法人
(74)【代理人】
【識別番号】100121083
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 宏義
(74)【代理人】
【識別番号】100138391
【弁理士】
【氏名又は名称】天田 昌行
(74)【代理人】
【識別番号】100132067
【弁理士】
【氏名又は名称】岡田 喜雅
(74)【代理人】
【識別番号】100120444
【弁理士】
【氏名又は名称】北川 雅章
(72)【発明者】
【氏名】福村 琢
【テーマコード(参考)】
4D002
4D020
4D052
4G146
【Fターム(参考)】
4D002AA02
4D002AA09
4D002AA12
4D002AC10
4D002BA04
4D002BA06
4D002BA13
4D002BA14
4D002CA01
4D002DA41
4D002EA01
4D002EA02
4D002EA07
4D002GA02
4D002GB02
4D002GB20
4D002HA08
4D020AA06
4D020CB25
4D020CD02
4D020CD03
4D020CD10
4D052BA03
4D052CE00
4D052HA01
4D052HA02
4D052HA03
4D052HA21
4G146JA02
4G146JB09
4G146JC07
4G146JC25
4G146JD05
4G146JD06
4G146JD10
(57)【要約】
【課題】二酸化炭素の回収にて小型化を図りつつ、低電力で稼働すること。
【解決手段】ガス処理システム100は、エンジン3から排出される排ガスgが供給され、供給された排ガスgから二酸化炭素を回収する二酸化炭素回収ユニット11、12を含むガス回収システム200と、二酸化炭素回収ユニット11、12に含まれる二酸化炭素回収器21,22から、二酸化炭素を脱離する二酸化炭素脱離システム300と、を備え、ガス回収システム200は、二酸化炭素脱離システム300とは分離して船上に搭載される。
【選択図】図1

【特許請求の範囲】
【請求項1】
燃焼器から排出される燃焼排ガスが供給され、供給された前記燃焼排ガスから二酸化炭素を回収する二酸化炭素回収ユニットを含むガス回収システムと、
前記二酸化炭素回収ユニットに含まれる二酸化炭素回収器から、二酸化炭素を脱離する二酸化炭素脱離システムと、を備え、
前記ガス回収システムは、前記二酸化炭素脱離システムとは分離して船上に搭載される
ことを特徴とするガス処理システム。
【請求項2】
前記ガス回収システムは、前記燃焼排ガスに含まれるNOx,SOx,水分のうち少なくとも1つ以上を除去する前処理装置を更に備える
ことを特徴とする請求項1に記載のガス処理システム。
【請求項3】
前処理装置には、前記燃焼排ガスに含まれる熱を吸収して蒸気を発生させる排ガス排熱利用装置を更に備える
ことを特徴とする請求項2に記載のガス処理システム。
【請求項4】
前記二酸化炭素回収器は、残余のSOx,NOx,水分として吸着熱を検知する吸着熱用計測温度センサを備え、前記吸着熱が、予め実験式を用いて演算された二酸化炭素分離回収量に応じた吸着発熱反応温度上昇値を超過する場合は、前処理装置又は排ガス再熱装置からのSOx,NOx,水分のスリップとみなして警報出力をすることを特徴とする請求項1から3のうち何れかに記載のガス処理システム。
【請求項5】
前記ガス回収システムは、複数の前記二酸化炭素回収ユニットと、複数の前記二酸化炭素回収ユニットへ流入する二酸化炭素の濃度を測定する第1二酸化炭素センサと、複数の前記二酸化炭素回収ユニットから排出される二酸化炭素の濃度を測定する第2二酸化炭素センサと、複数の前記二酸化炭素回収ユニットへ流入される二酸化炭素を切り替える複数のユニット切替弁と、を更に備え、
前記ガス回収システムは、前記第1二酸化炭素センサにより計測される二酸化炭素濃度と、前記第2二酸化炭素センサにより計測される二酸化炭素濃度と、が同値となった場合には、前記複数のユニット切替弁の切替制御を行うことを特徴とする請求項1から3のうち何れかに記載のガス処理システム。
【請求項6】
前記ガス回収システムは、複数の前記二酸化炭素回収ユニットと、複数の前記二酸化炭素回収ユニットから排出される二酸化炭素の濃度を測定する二酸化炭素センサと、複数の前記二酸化炭素回収ユニットへ流入される二酸化炭素を切り替える複数のユニット切替弁と、を更に備え、
前記ガス回収システムは、前記二酸化炭素センサにより計測される二酸化炭素濃度があらかじめ設定した二酸化炭素濃度の一定濃度を超過した場合には、前記複数のユニット切替弁の切替制御を行うことを特徴とする請求項1から3のうち何れかに記載のガス処理システム。
【請求項7】
前記ガス回収システムは、前記切替制御を行う場合には、任意の時間を設定できるタイマー設定にて前記複数のユニット切替弁が同時に開状態となる時間を設け、前記複数のユニット切替弁うち前記タイマー設定にて設定した一定時間経過後に任意のユニット切替弁を閉状態とすることを特徴とする請求項5に記載のガス処理システム。
【請求項8】
前記ガス回収システムは、前記二酸化炭素回収ユニットを冷却する冷却ポンプと、前記二酸化炭素回収ユニットの温度を計測するユニット温度センサと、を更に備え、
前記ガス回収システムは、前記ユニット温度センサにより計測された温度が一定温度以上となった場合には、前記冷却ポンプの冷媒流量を制御して、前記二酸化炭素回収ユニットの冷却を行うことを特徴とする請求項1から3のうち何れかに記載のガス処理システム。
【請求項9】
前記ガス回収システムは、複数の前記二酸化炭素回収ユニットのうち第1二酸化炭素回収器及び第2二酸化炭素回収器の二酸化炭素の流入側に配置された第1仕切弁と、前記第1二酸化炭素回収器及び前記第2二酸化炭素回収器の二酸化炭素の排出側に配置された第2仕切弁と、を更に備え、
前記ガス回収システムは、前記第1二酸化炭素回収器へ流入する二酸化炭素濃度が、前記第1二酸化炭素回収器から排出される二酸化炭素濃度の一定濃度を超過した場合に、前記第1二酸化炭素回収器の前記第1仕切弁及び前記第2仕切弁を閉状態とし、前記第2二酸化炭素回収器の前記第1仕切弁及び前記第2仕切弁を開状態とする切替制御を行うことを特徴とする請求項1から3のうち何れかに記載のガス処理システム。
【請求項10】
前記二酸化炭素回収器は、二酸化炭素吸着済みの置換パージ二酸化炭素回収器を含み、
前記ガス回収システムは、前記置換パージ二酸化炭素回収器により、減圧吸引にて脱離した二酸化炭素を二酸化炭素回収済みの前記二酸化炭素回収器に流し、共吸着した他組成ガスを吸着剤内の濃度勾配をもって入れ替えることを特徴とする請求項1から3のうち何れかに記載のガス処理システム。
【請求項11】
前記ガス回収システムは、前記二酸化炭素回収器のうち、置換パージ二酸化炭素回収器に流入する二酸化炭素濃度と、前記置換パージ二酸化炭素回収器以外の前記二酸化炭素回収器の二酸化炭素濃度と、が同値となった場合には、前記置換パージ二酸化炭素回収器以外の前記二酸化炭素回収器による二酸化炭素の吸着濃度を高める運転方式が完了したと判断することを特徴とする請求項9に記載のガス処理システム。
【請求項12】
前記ガス回収システムは、要求される二酸化炭素の処理量に応じて、前記二酸化炭素回収器のうち、同時に運転する二酸化炭素回収器の数を制御する
ことを特徴とする請求項1から3のうち何れかに記載のガス処理システム。
【請求項13】
前記二酸化炭素脱離システムは、二酸化炭素の分離回収にかかる動力として、再生可能エネルギーで発電した電力を利用することを特徴とする請求項1から3のうち何れかに記載のガス処理システム。
【請求項14】
船上に搭載され、二酸化炭素回収ユニットを備えるガス回収システムと、前記ガス回収システムとは分離されて配置される二酸化炭素脱離システムと、を備えるガス処理システムが実行するガス処理方法であって、
燃焼器から排出される燃焼排ガスが供給され、供給された前記燃焼排ガスから二酸化炭素を回収し、
前記二酸化炭素回収ユニットに含まれる二酸化炭素回収器から、二酸化炭素を脱離することを特徴とするガス処理方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、排ガスの二酸化炭素を回収するガス処理システム及びガス処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
各国でカーボンプライシングや炭素税が検討され、二酸化炭素(CO2)排出削減技術の必要性が増しており、二酸化炭素排出源からの二酸化炭素分離回収についての技術開発が行われている。具体例を挙げると、火力発電やバイオマス発電のボイラ燃焼排ガス、船舶エンジンの燃焼排ガス、ごみ焼却設備の燃焼排ガス等を対象にした二酸化炭素分離システムが検討されている。
【0003】
特に海運業界では、二酸化炭素排出削減の規制が年々強化されている。具体的には、新船に関するエネルギー効率設計指標(EEDI:Energy Efficiency Design Index)に加え、既存船のエネルギー効率指標(EEXI:Energy Efficiency Existing Ship Index)も決定され、重油を燃料とする既存船のCO2排出削減ニーズが顕在化している。
【0004】
ここで、特許文献1は、燃焼器から排出される燃焼排ガスから二酸化炭素を回収する二酸化炭素回収装置を開示している。特許文献1において、燃焼排ガスを室温程度まで冷却することで、燃焼排ガスに含まれる水分を除去している。これにより、二酸化炭素を吸着する吸着剤にて水分の吸着量を少なくすることができ、吸着剤での二酸化炭素の吸着性能が低下することを抑制可能としている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2021-74657号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1のような技術を用いて二酸化炭素の回収する場合には、燃焼排ガスを冷却する必要があり、その他の二酸化炭素の分離方式である分離膜を用いて二酸化炭素を回収する場合には、圧縮機で燃焼排ガスを高圧にする必要があるため、大きなエネルギーが必要となる。しかしながら、海運業界で用いられる船舶上においては、使用できるエネルギーに限りがあることから、エネルギー消費量の低減を図ることが求められる。また、船舶上では、設置スペースの制約があることから、システムの小型化を図ることが求められる。
【0007】
本発明は、かかる点に鑑みてなされたものであり、二酸化炭素の回収にて小型化を図りつつ、低電力で稼働することができるガス処理システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明のガス処理システムは、燃焼器から排出される燃焼排ガスが供給され、供給された前記燃焼排ガスから二酸化炭素を回収する二酸化炭素回収ユニットを含むガス回収システムと、前記二酸化炭素回収ユニットに含まれる二酸化炭素回収器から、二酸化炭素を脱離する二酸化炭素脱離システムと、を備え、前記ガス回収システムは、前記二酸化炭素脱離システムとは分離して船上に搭載されることを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、二酸化炭素の回収にて小型化を図りつつ、低電力で稼働することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明の実施の形態に係るガス処理システムの一例を示す概略構成図である。
図2】前処理装置の構成の一例を示す図である。
図3】二酸化炭素回収ユニットの構成の一例を示す図である。
図4】二酸化炭素脱離システムの一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施の形態について添付図面を参照して詳細に説明する。図1は、本発明の実施の形態に係るガス処理システムの一例を示す概略構成図である。なお、本実施の形態に係るガス処理システムとしては、燃焼器として船舶に使用されるエンジンから排出される排ガスの二酸化炭素を回収するシステムを考える。図1に示すように、ガス処理システム100は、ガス回収システム200と、二酸化炭素脱離システム300と、を備える。
【0012】
ガス回収システム200は、燃焼排ガス(以下、「排ガス」と称する)gの発生源となるエンジン(燃焼器)3と、前処理装置4と、除熱・脱水装置5と、排ガス再熱装置6と、送風ブロワ7と、入口濃度センサ8Aと、出口濃度センサ8Bと、ユニット切替弁9と、ユニット切替弁10と、二酸化炭素回収ユニット11と、二酸化炭素回収ユニット12と、冷却ポンプ13と、冷却ポンプ14と、冷却ポンプ15と、排ガス置換パージ弁16と、制御部31と、記憶部32と、通信部33と、を備えている。
【0013】
エンジン3は、主機エンジンであってよく、補機エンジンであってもよい。主機エンジンは、主として船舶の推進動力用途として稼働される。補機エンジンは、主として船舶が推進動力以外の船内動力、港湾内の離着岸時の推進動力及び停泊時の船内動力として稼働される。エンジン3には、燃料タンク(不図示)に貯留された燃料が供給される。エンジン3は、運転負荷として回転数を検知する機能を備え、検知結果を後述する通信部33を介して制御部31に出力する。
【0014】
前処理装置4は、二酸化炭素回収ユニット11,12に流入する排ガスgの前処理を実施する。前処理装置4は、排ガスgに含まれる二酸化炭素(CO2)以外の不純物の少なくとも一部を分離除去する。不純物には、硫黄酸化物(SOx)、窒素酸化物(NOx)または粒子状物質(PM(Particulate matter))が含まれてよい。
【0015】
図2は、前処理装置4の構成の一例を示す図である。前処理装置4は、窒素酸化物処理装置41、排ガス排熱利用装置42、除塵装置43、及び硫黄酸化物処理装置44を備えている。なお、前処理装置4は、上記各装置41~44の少なくとも1つを有する構成に変更してもよい。
【0016】
窒素酸化物処理装置41は、エンジン3から供給される排ガスgに含まれる窒素酸化物(NOx)を処理する。窒素酸化物(NOx)を処理するとは、窒素酸化物(NOx)を除去することを指してよい。窒素酸化物処理装置41は、脱硝装置であってよい。該脱硝装置は、例えば選択式触媒還元脱硝(SCR(Selective Catalytic Reduction))装置である。なお、前処理装置4が窒素酸化物処理装置41を有することに代えて、エンジン3が排気再循環(EGR(Exhaust Gas Recirculation))の機能を有していてもよい。
【0017】
排ガス排熱利用装置42は、エンジン3と除塵装置43との間に設けられ、排ガスgの熱を吸収して蒸気を発生させる。排ガス排熱利用装置42は、エコノマイザ(economizer)であってよい。
【0018】
除塵装置43は、二酸化炭素回収ユニット11、12に供給される前の排ガスgに含まれる粒子状物質(PM)を除去する。除塵装置43は、電気集塵機(ESP(Electrostatic Precipitator))、ディーゼル・パーティキュレート・フィルタ(DPF(Diesel Paticulate Filter))または活性炭フィルタであってよい。
【0019】
硫黄酸化物処理装置44は、窒素酸化物処理装置41及び除塵装置43を経た後の排ガスgに含まれる硫黄酸化物(SOx)を処理する。硫黄酸化物(SOx)を処理するとは、二酸化硫黄(SO2)を除去することを指してよい。ガス回収システム200が船舶に搭載される場合、硫黄酸化物処理装置44は、該船舶に搭載される湿式のスクラバであってよい。
【0020】
図1に戻り、除熱・脱水装置5は、排ガスgの温度が二酸化炭素回収器21、22の入口許容温度を上回る場合、排ガスgに含まれる熱を除去する。例えば、除熱・脱水装置5は、通信部33を介して制御部31により制御される冷却ポンプ13により汲み上げられた海水を用いて熱交換を行い、排ガスgの熱を除去し、排ガスgから水分を凝縮除去する。例えば、脱水手段はシリカゲル、アルミナ、ゼオライト、活性炭等の吸着剤による脱水としてもよい。排ガス再熱装置6は、除熱・脱水装置5と熱交換して受熱した冷却ポンプ13の循環水を用いて、排ガスgの再熱を実施する。再熱することで、飽和状態の排ガスgが放熱冷却した際の凝縮滴下を防止する。脱水手段を吸着剤による脱水とした場合は、排ガス再熱装置6による再熱は不要としてもよい。例えば、排ガス再熱装置6は、通信部33を介して制御部31により制御される冷却ポンプ13を用いて、受熱した海水を循環し排ガスを再熱することで、排ガスg中の水蒸気の凝縮滴下を防止する。
【0021】
排ガス再熱装置6により再熱された排ガスgは、通信部33を介して制御部31により制御される送風ブロワ7により二酸化炭素回収ユニット11、二酸化炭素回収ユニット12へ送られる。送風ブロワ7と、二酸化炭素回収ユニット11及び二酸化炭素回収ユニット12と、の間には、入口濃度センサ8が設けられている。入口濃度センサ8は、二酸化炭素回収ユニット11及び二酸化炭素回収ユニット12へ入る二酸化炭素の濃度を計測する機能を備え、計測結果は通信部33を介して制御部31に出力される。
【0022】
また、送風ブロワ7と、二酸化炭素回収ユニット11と、の間には、ユニット切替弁9が配置され、送風ブロワ7と、二酸化炭素回収ユニット12と、の間には、ユニット切替弁10が配置されている。
【0023】
制御部31は、ユニット切替弁9およびユニット切替弁10により、二酸化炭素回収ユニット11、12へ流入される二酸化炭素を切り替える切替制御を行うことができる。初期状態においては、ユニット切替弁9およびユニット切替弁10は閉状態とされる。そして、二酸化炭素回収ユニット11による二酸化炭素の回収を開始する場合には、制御部31は、ユニット切替弁9を開状態とし、ユニット切替弁10を閉状態とする切替制御を行う。これにより排ガスgがユニット切替弁9を通じて二酸化炭素が流れることにより二酸化炭素回収ユニット11において二酸化炭素の回収を開始することができる。そして、エンジン3から送られた排ガスgが二酸化炭素回収ユニット11に送られて回収される。
【0024】
二酸化炭素回収ユニット11による二酸化炭素の回収が一定量溜まると、制御部31は、ユニット切替弁10を開状態とし、ユニット切替弁9を閉状態とする切替制御を行う。これにより、エンジン3から送られた排ガスgの送り先を二酸化炭素回収ユニット11から二酸化炭素回収ユニット12へ切り替えることができる。これにより排ガスgがユニット切替弁10を通じて二酸化炭素が流れることにより二酸化炭素回収ユニット12において二酸化炭素の回収を開始することができる。そして、エンジン3から送られた排ガスgが二酸化炭素回収ユニット12に送られて回収される。
【0025】
制御部31は、二酸化炭素回収器21、22の出口に配置された出口濃度センサ8Bにより計測された二酸化炭素濃度があらかじめ設定した二酸化炭素濃度を超過するか否かを判定する。そして、出口濃度センサ8Bで計測した二酸化炭素濃度があらかじめ設定した二酸化炭素濃度の一定濃度(例えば、95~98%)を超過した場合には、制御部31は、ユニット切替弁9、10の切替制御を行う。ユニット切替弁9,10の切替制御は、圧力変動を伴うため、二酸化炭素回収器21、22を含む機器を損傷させるおそれがあることに加えて、エンジン排ガスの背圧が上昇し、エンジン負荷が低減又は運転停止となる恐れがある。したがって、切替制御を行う場合には、任意の時間を設定できるタイマー設定にてユニット切替弁9、10が同時に開状態となる時間を設け、複数のユニット切替弁9、10のうちタイマー設定にて設定した一定時間経過後にユニット切替弁10(またはユニット切替弁9)を閉状態とする切替制御を行ってもよい。
【0026】
排ガス置換パージ弁16は、制御部31の制御に基づきガス回収システム200内における前処理装置4、除熱・脱水装置5、排ガス再熱装置6の排ガス流路内の空気を排ガスgでパージする。具体的には、ガス回収システム200の運転開始時、制御部31は、ユニット切替弁9、ユニット切替弁10、および排ガス置換パージ弁16を閉状態とする。これにより、ガス回収システム200の運転開始時は、ガス回収システム200内は通常の空気で満たされている状態となっている。次に、制御部31は、排ガス置換パージ弁16を開状態とする。続いて、制御部31は、送風ブロワ7を制御して送風ブロワ7の駆動力によりガス回収システム200内の空気を排ガスgで押出してパージを行う。これにより、ガス回収システム200内の空気を排ガスgによりパージすることができる。そして、一定時間が経過した場合、制御部31は、排ガス置換パージ弁16を閉状態とし、ユニット切替弁9を開状態として、ガス回収システム200による運転を開始することができる。
【0027】
また、ガス回収システム200は、二酸化炭素回収ユニット11、12の温度を計測するユニット温度センサ(図示せず)をそれぞれ備えてもよい。二酸化炭素の吸着は発熱反応であるため、冷却ポンプ14、15により二酸化炭素回収ユニット11および二酸化炭素回収ユニット12の冷却を行う。すなわち、二酸化炭素回収ユニット11、12内部に配置された二酸化炭素回収器21、22内の吸着剤に排ガスg中の二酸化炭素を吸着させる際の発熱反応により吸着剤の吸着温度が上昇することに伴い、二酸化炭素の吸着性能が低下しないようにすることが望ましい。このため、二酸化炭素回収器21、22内の吸着剤の温度が一定温度となるように、制御部31は、ユニット温度センサにより計測された二酸化炭素回収ユニット11、12の温度を監視する。そして、ユニット温度センサにより計測された温度が一定温度以上となった場合には、制御部31は、冷却ポンプ13、14の冷媒流量を制御して、二酸化炭素回収ユニット11、12の冷却を行う。これにより、二酸化炭素を吸着させる際の発熱反応により吸着剤の吸着温度が上昇することに伴う二酸化炭素の吸着性能の低下を抑止することができる。冷却ポンプ14、15は冷媒として海水を用いることができる。冷却ポンプは海水以外の冷媒を用いてもよい。
【0028】
図3を参照して、二酸化炭素回収ユニット11の詳細について説明する。図3は、二酸化炭素回収ユニット11の構成の一例を示す図である。図3では、二酸化炭素回収ユニット11について説明しているが、二酸化炭素回収ユニット12の構成についても図3で説明する二酸化炭素回収ユニット11と同内容であるため説明を省略する。二酸化炭素回収ユニット11には、前処理を経由して、除塵が行われ不純物が回収された排ガスgが流入される。
【0029】
二酸化炭素回収ユニット11は、二酸化炭素回収器21、仕切弁(第1仕切弁)50A~50F、仕切弁(第2仕切弁)51A~51F、真空ポンプ52、送風ブロワ53、置換パージ用濃度センサ54を備える。二酸化炭素回収器21は、複数の二酸化炭素回収器21A~21Fにより構成される。二酸化炭素回収器21A~21Fは、内部に搭載する吸着剤として、例えば一次側より、活性アルミナ、活性炭、ゼオライトの順に積層される。活性アルミナにて水分を除去し、活性炭にて二酸化炭素を吸着し、ゼオライトにてN2、O2、および、残余を吸着することができる。上述の吸着剤は一例であり、その他の素材を利用してもよい。二酸化炭素回収器21A~21Fの二酸化炭素の流入側には仕切弁50A~50Fが配置され、二酸化炭素回収器21A~21Fの二酸化炭素の排出側には仕切弁51A~51Fが配置されている。仕切弁50A~50Fを開状態とすることにより、二酸化炭素回収器21A~21Fへの二酸化炭素の流入が許容され、仕切弁50A~50Fを閉状態とすることにより、二酸化炭素回収器21A~21Fへの二酸化炭素の流入が遮断される。また、仕切弁51A~51Fを開状態とすることにより、二酸化炭素回収器21A~21Fからの二酸化炭素の流出が許容され、仕切弁51A~51Fを閉状態とすることにより、二酸化炭素回収器21A~21Fからの二酸化炭素の流出が遮断される。したがって、二酸化炭素回収器21A~21Fの流入側と排出側に配置されている各仕切弁50A~50F及び仕切弁51A~51Fをそれぞれ開状態とすることにより、二酸化炭素回収器21A~21Fへの二酸化炭素の流出入を許容することができる。また、二酸化炭素回収器21A~21Fの流入側と排出側に配置されている各仕切弁50A~50F及び仕切弁51A~51Fをそれぞれ閉状態とすることにより、二酸化炭素回収器21A~21Fで回収された二酸化炭素の流出入を封入することができる。
【0030】
二酸化炭素回収ユニット11は、以下の方法により、二酸化炭素を吸着剤に吸着させて濃縮することができる。二酸化炭素回収器21A~21Eは、再生済の吸着剤が使用されている。また、二酸化炭素回収器21Fは、置換パージ用の二酸化炭素吸着済のものが使用される。二酸化炭素回収器21A~21Eは、船上に配置された二酸化炭素回収ユニット11内において並列回路で連結接続される。
【0031】
船上のエンジン3の運転が開始したのち、仕切弁50A、51Aを開状態として送風ブロワ7を経て、送出される排ガスgをまず二酸化炭素回収器(第1二酸化炭素回収器)21Aに流して排ガスg中の二酸化炭素を吸着させる。二酸化炭素回収器21Aの出口濃度センサ8Bで計測した出口二酸化炭素濃度が、二酸化炭素回収器21Aの入口濃度センサ8Aで計測した二酸化炭素濃度と同値になった場合に、制御部31は、仕切弁50A、51Aを閉状態とし,仕切弁50B、51Bを開状態とする切替制御を行うことにより、排ガスgの流れを二酸化炭素回収器21Aから二酸化炭素回収器(第2二酸化炭素回収器)21Bに切り替えて排ガスgを二酸化炭素回収器21Bへ送出する。二酸化炭素回収器21Aから二酸化炭素回収器21Bへの切替制御を行う際に、排ガスg中の二酸化炭素の高濃度吸着が完了次第、制御部31は、二酸化炭素回収器21に接続された仕切弁50A、51Aをともに閉状態とすることで、外気温度の変化及び器外との呼吸により吸着剤から二酸化炭素が脱離することを防止することができる。なお、二酸化炭素回収器の切替制御は、予め定めた管理値に基づいて行ってもよい。例として、入口濃度センサ8Aで計測した二酸化炭素濃度の一定濃度を管理値として制御を行ってもよい。二酸化炭素回収器21Aの出口濃度センサ8Bで計測した出口二酸化炭素濃度が、二酸化炭素回収器21Aの入口濃度センサ8Aで計測した二酸化炭素濃度の一定濃度(例えば、95~98%)を超過した場合に、制御部31は、仕切弁50A、51Aを閉状態とし,仕切弁50B、51Bを開状態とする切替制御を行うことにより、排ガスgの流れを二酸化炭素回収器21Aから二酸化炭素回収器21Bに切り替えて排ガスgを二酸化炭素回収器21Bへ送出してもよい。二酸化炭素回収器21Aの入口濃度センサ8Aで計測した二酸化炭素濃度の一定濃度を超過した場合に、切替制御を行うことにより、仕切弁50A、51Aを閉状態とするまでに流れる二酸化炭素も回収することができ、連続的に二酸化炭素を回収して二酸化炭素の回収効率を向上することができる。
【0032】
なお、ガス回収システム200は、更に、吸着熱用計測温度センサを二酸化炭素回収器21A~21E内に設置してもよい。吸着熱用計測温度センサは、二酸化炭素回収器21A~21E内の吸着剤に排ガスg中の二酸化炭素を吸着させる際の吸着熱を計測することができる。制御部31は、二酸化炭素回収器21A内に設置された吸着熱用計測温度センサにより計測された計測温度が予め定められた所定の変曲点(閾値)を超過したか否かを判定する。そして、二酸化炭素回収器21A内に設置された吸着熱用計測温度センサにより計測された計測温度が予め定められた所定の変曲点を超過した場合には、制御部31は、二酸化炭素回収器21A内の二酸化炭素の吸着が完了したと判断する。二酸化炭素回収器21A内の二酸化炭素の吸着が完了したと判断した場合、制御部31は、二酸化炭素回収器21Aの仕切弁50A、51Aを閉状態とし、二酸化炭素回収器21Bの仕切弁50B、51Bを開状態とする切替制御を行う。吸着熱用計測温度センサにより計測される温度は、吸着熱によって徐々に上昇していくが、吸着剤による二酸化炭素の吸着が完了した場合には、吸着熱は一気に上昇する。したがって、計測温度が予め定められた所定の変曲点を超過したか否かに応じて、二酸化炭素回収器21Aの仕切弁50A、51Aを閉状態とし、二酸化炭素回収器21Bの仕切弁50B、51Bを開状態とする切替制御を行うことにより、二酸化炭素回収器21の切替作業を正確に行うことができる。
【0033】
次に、置換パージ用の二酸化炭素吸着済の二酸化炭素回収器21Fにより、真空ポンプ52の減圧吸引にて脱離した二酸化炭素(例えば1/5程度の二酸化炭素量)を二酸化炭素回収済みの二酸化炭素回収器21Aに流し、共吸着した他組成ガス(N2やCO,02等)を吸着剤内の濃度勾配をもって、入れ替えることで、二酸化炭素回収器21Aの二酸化炭素吸着濃度を高める。二酸化炭素回収器21B~21Eについても同様の作業を繰り返し実行する。置換パージ用濃度センサ54は、置換パージ用の二酸化炭素回収器21Fに流入する二酸化炭素の濃度を計測することができる。
【0034】
なお、制御部31は、置換パージ用の二酸化炭素回収器(置換パージ二酸化炭素回収器)21Fは、二酸化炭素回収器21F以外の二酸化炭素回収器21A~21Eの数に応じて、各二酸化炭素回収器において用いられる二酸化炭素を脱離する量(以下、「脱離量」とも呼ぶ)を制御してもよい。例えば、制御部31は、置換パージ用の二酸化炭素回収器21F以外の二酸化炭素回収器21が5つである場合には、二酸化炭素回収器21F内の二酸化炭素を5等分とし、二酸化炭素回収器21が6つである場合には、制御部31は、二酸化炭素回収器21F内の二酸化炭素を6等分とする。本実施形態においては、置換パージ用の二酸化炭素回収器の数は、1機だがこれに限られず複数機備えていてもよい。脱離量は、下記式1により算出することができる。
【0035】
脱離量=1/((全体の二酸化炭素回収器の数)-(置換パージ用の二酸化炭素回収器の数)…式1
【0036】
このように、置換パージに使用する二酸化炭素の脱離量を制御することにより、置換パージ用の二酸化炭素回収器21の数を最小構成で賄うことができる。例えば、本実施の形態においては、置換パージ用の二酸化炭素回収器21Fを1機で賄うことができる。これにより、システム構成のコストの低減を図るとともに、システムの小型化を図ることができる。
【0037】
更に、置換パージ用の二酸化炭素回収器21Fが途中で空になった場合には、制御部31は、既に二酸化炭素を吸着済みの二酸化炭素回収器21A~21Eのうち何れかの二酸化炭素回収器21A~21Eを代替置換パージ用の二酸化炭素回収器21として選択して、選択した二酸化炭素回収器21に吸着されている二酸化炭素を置換パージ用に用いてもよい。この場合、置換パージ用の二酸化炭素回収器を船舶運転中に切り替えることができる。これにより、置換パージ用の二酸化炭素回収器の数を少なくすることができ、システム構成のコストの低減を図るとともに、システムの小型化を図ることができる。更に、万が一、置換パージ用の二酸化炭素が不足した場合であっても、既に吸着済みの二酸化炭素を再利用することにより、ガス処理システムの停止を回避して、船舶の運転を継続することができる。
【0038】
二酸化炭素回収器21A~21Eの5台の二酸化炭素吸着濃度が高まったのち、置換パージ用である二酸化炭素回収器21F内の二酸化炭素吸着量が空となるため、次に二酸化炭素回収器21Fに排ガスgを流して、二酸化炭素を吸着させる。二酸化炭素回収器21Fは二酸化炭素回収器21Eから高濃度の二酸化炭素を置換ガスとして定量(例えば1/5程度)流し、二酸化炭素の吸着濃度を高める。
【0039】
置換パージ用の二酸化炭素吸着済の二酸化炭素回収器21Fにより、真空ポンプ52の減圧吸引にて脱離した二酸化炭素を二酸化炭素吸着済みの二酸化炭素回収器21A~21Eに流し、共吸着した他組成ガスを吸着剤内の濃度勾配をもって入れ替えを行う際に、制御部31は、置換パージ用濃度センサ54で計測した置換パージ用の二酸化炭素回収器21Fに流入する二酸化炭素濃度と、出口濃度センサ8Bで計測した各二酸化炭素回収器21A~21Eの二酸化炭素濃度と、が同値となったか否かを判定する。置換パージ用濃度センサ54で計測した置換パージ用の二酸化炭素回収器21Fに流入する二酸化炭素濃度と、出口濃度センサ8Bで計測した各二酸化炭素回収器21A~21Eの二酸化炭素濃度と、が同値となった場合には、制御部31は、各二酸化炭素回収器21A~21Eによる二酸化炭素の吸着濃度を高める運転方式が完了したと判断する。これにより、二酸化炭素の吸着濃度を効率よく高めることができる。
【0040】
港湾着岸時に、二酸化炭素回収器21B~21Eを陸揚げして、陸上の二酸化炭素脱離システム300にて高濃度の二酸化炭素を取り出す。二酸化炭素回収器21Fは陸上にて置換パージを実施する。また、二酸化炭素回収器21Aは、次回航海時の置換パージ用の二酸化炭素吸着済の二酸化炭素回収器21Fとして、陸揚げせず船上使用してもよい。次回港湾着岸時にも同様に、二酸化炭素回収器21Aは、二酸化炭素回収器21Fとして位置付け、循環使用することとしてもよい。船上に搭載する電気電力が必要な機器は主に、送風ブロワ7、共吸着した残余ガスの置換パージ用濃縮二酸化炭素ガス(少量)を減圧吸引する真空ポンプ52、送風ブロワ53の3つである。これらは、排ガス全体を高圧に圧縮する圧縮機と比べて、低動力な機器と言える。
【0041】
図4は、二酸化炭素脱離システム300の一例を示す図である。二酸化炭素脱離システム300は、例えば船が帰還する港湾に設置されている。二酸化炭素脱離システム300は、二酸化炭素濃度センサ301、二酸化炭素濃度センサ302、二酸化炭素回収器21、真空ポンプ303、および、二酸化炭素濃縮分離回収装置304を備えている。
【0042】
二酸化炭素回収器21は、二酸化炭素回収ユニット11、二酸化炭素回収ユニット12内に配置されているコンテナ状の二酸化炭素回収器21(または二酸化炭素回収器22)を港湾に陸揚げして配置したものである。配置した二酸化炭素回収器21から、真空ポンプ303を用いて吸引することにより二酸化炭素を脱離することができる。本実施形態においては、真空ポンプ303を用いて二酸化炭素を脱離しているがこれに限られるものではない。例えば、加熱装置により二酸化炭素回収器21を加熱することにより、二酸化炭素を脱離してもよい。
【0043】
二酸化炭素回収器21の前後に配置された二酸化炭素濃度センサ301、および、二酸化炭素濃度センサ302により計測された二酸化炭素濃度を計測して、二酸化炭素の濃度がほぼ同濃度となった場合に、二酸化炭素の脱離が完了したものと判断することができる。二酸化炭素濃度センサ301による二酸化炭素濃度の計測は、加熱装置により二酸化炭素回収器21を加熱し、再生パージガスを流して二酸化炭素を脱離する場合に、計測することができる。二酸化炭素濃度センサ302による二酸化炭素の計測は、二酸化炭素回収器21から脱離して流れる二酸化炭素の濃度を計測することができる。
【0044】
また、ガス回収システム200にあっては、制御部31、記憶部32及び通信部33を更に備えている。
【0045】
制御部31、記憶部32及び通信部33を有する装置として、プログラマブルコントローラ(PLC)やパーソナルコンピュータ(PC)を例示することができる。制御部31は、中央処理装置(CPU)等からなり、ガス回収システム200の各部の制御を介して全体を制御する。制御部31は、記憶部32に記憶されているプログラムに従い、記憶部32や通信部33から入力される情報に対する各種の演算処理や、海水ポンプ40による除熱・脱水装置23への海水aの供給量を制御する機能等を有する。
【0046】
記憶部32は、RAM(Random Access Memory)やROM(Read Only Memory)等を備えている。RAMは、制御部31の作業領域として用いられたり、通信部33から出力された情報等が制御部31を介して記憶される。ROMでは、制御部31が各種の演算、制御を行うためのプログラムや、アプリケーションとして機能するためのプログラム、データ等が記憶される。
【0047】
通信部33は、通信インターフェースとして有線又は無線通信によって計測結果、データ、指令信号等を送受信する。通信部33は、エンジン3や、窒素酸化物処理装置41、各温度センサ、それ以外の不図示の各種センサ(船舶の各種センサも含む)から出力された検知結果、計測結果、データ、指令信号等を取得して制御部31に出力する。
【0048】
以上のように、上記の実施の形態によれば、船上には、ガス回収システム200のみを搭載すれば二酸化炭素の回収を行うことができるので、船上という限られた空間において、船舶の燃焼ガスから二酸化炭素の分離を低動力で実施することできる。
【0049】
また、他の二酸化炭素の分離方式である、分離膜や化学吸収法を用いるためには大きなエネルギーが必要であるところ、本発明の実施形態においては、圧縮機などの大きなエネルギーを必要とする機器を必要としないことから、低動力を図ることができる。
【0050】
また、今までは、排ガスからの二酸化炭素の分離回収に加えて、二酸化炭素の貯留、例えば二酸化炭素の液化等の工程が必要であったためプラントが長大なものを必要としていた。これに対し、本発明の実施の形態においては、船舶上で分離回収と貯留工程を統合して、吸着剤又は吸収剤による二酸化炭素の吸着・吸収貯蔵を行なうことで、二酸化炭素の液化等の工程を削減してシンプルな構成とすることができる。
【0051】
更に、船舶の大きさ(総トン数や排水トン数等)、航海距離が変更した場合でも二酸化炭素回収器の数や、二酸化炭素回収ユニットの数の構成を自由に変更できるため、船舶規模、距離に応じた二酸化炭素回収システム及び貯留システムのプラント都度設計を回避することができる。これにより、拡張性を持ったユニットで構成することができる。また、港湾に備えた二酸化炭素脱離システムにおいて二酸化炭素の脱離工程及び脱離時間は、多数の船舶の港湾離着岸スケジュールに応じて、最適なタイムスケジュールを組むことができる。これにより、港湾のシステムの稼働率を向上することができる。
【0052】
更に、制御部31は、要求される二酸化炭素の処理量に応じて、同時に運転する二酸化炭素回収器21A~21Fの数を制御してもよい。例えば、制御部31は、船舶の大きさや、エンジン3の負荷等に応じて変化する二酸化炭素の処理量に応じて、同時に運転する二酸化炭素回収器21A~21Fの数を制御してもよい。例えば、船舶の大きさが小さい場合や、エンジン3の負荷が低い場合には、制御部31は、同時に運転する二酸化炭素回収器21A~21Fの台数を1台とする。一方で、船舶の大きさが大きい場合や、エンジン3の負荷が高い場合には、制御部31は、同時に運転する二酸化炭素回収器21A~21Fの台数を少なくとも2台以上とする。これにより、エンジン3の負荷や船舶の大きさが変更して排ガスgや二酸化炭素の排出量が増減した場合であっても、ガス回収システム200自体は変更せずに、同時に運転する台数を変更するだけで柔軟に対応することができる。したがって、システム改修のコストの増加を抑止することができる。
【0053】
更に、二酸化炭素脱離システム300において、二酸化炭素の分離回収にかかる動力として、再生可能エネルギーで発電した電力を利用してもよい。二酸化炭素の分離回収にかかる動力として、例えば、真空ポンプ303や、二酸化炭素濃度センサ301、302が含まれる。再生可能エネルギーとして、例えば、太陽光、風力、水力、波力、地熱、太陽熱、バイオマス等が含まれる。二酸化炭素の分離回収にかかる動力として、再生可能エネルギーで発電した電力を利用することで、より脱炭素化に寄与できるという効果が期待できる。
【0054】
本発明の実施の形態は上記の各実施の形態に限定されるものではなく、本発明の技術的思想の趣旨を逸脱しない範囲において様々に変更、置換、変形されてもよい。さらには、技術の進歩又は派生する別技術によって、本発明の技術的思想を別の仕方で実現することができれば、その方法を用いて実施されてもよい。したがって、特許請求の範囲は、本発明の技術的思想の範囲内に含まれ得る全ての実施態様をカバーしている。
【0055】
冷却ポンプ13、14が吸収式冷温水機により構成される場合、除熱・脱水装置5に冷媒として供給する冷水の温度を制御部31によって制御することができる。これにより、除熱・脱水装置5での熱交換量を容易に調整することができる。また、吸収式冷温水機を用いた場合、除熱・脱水装置5から排出される温水(冷水)が100℃となるので、廃熱温水として吸収式冷温水機の再生器加熱源として活用でき、吸収式冷温水機の投入エネルギー削減を図ることができる。
【0056】
二酸化炭素回収器21内の吸着剤に排ガス中の二酸化炭素を吸着させる際、残余のSOx,NOx,水分は、二酸化炭素回収器内に設置した吸着熱用計測温度センサにて検知してもよい。そして、予め実験式を用いて演算された二酸化炭素分離回収量に応じた吸着発熱反応温度上昇値を超過する場合は、前処理装置又は排ガス再熱装置からのSOx,NOx,水分のスリップとみなして警報出力をしてもよい。これにより、SOx,NOx,水分のスリップが発生した場合には、異常をより早く検知することができる。
【符号の説明】
【0057】
3 :エンジン
4 :前処理装置
5 :除熱・脱水装置
6 :排ガス再熱装置
7 :送風ブロワ
8A :入口濃度センサ
8B :出口濃度センサ
9 :ユニット切替弁
10 :ユニット切替弁
11、12 :二酸化炭素回収ユニット
13,14,15 :冷却ポンプ
16 :排ガス置換パージ弁
20 :冷却再熱部
21、21A~21F :二酸化炭素回収器
22 :二酸化炭素回収器
31 :制御部
32 :記憶部
33 :通信部
40 :海水ポンプ
41 :窒素酸化物処理装置
42 :排ガス排熱利用装置
43 :除塵装置
44 :硫黄酸化物処理装置
50A~50F :仕切弁
51A~51F :仕切弁
52 :真空ポンプ
53 :送風ブロワ
54 :置換パージ用濃度センサ
100 :ガス処理システム
200 :ガス回収システム
300 :二酸化炭素脱離システム
301,302 :二酸化炭素濃度センサ
303 :真空ポンプ
304 :二酸化炭素濃縮分離回収装置


図1
図2
図3
図4
【手続補正書】
【提出日】2023-05-17
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
燃焼器から排出される燃焼排ガスが供給され、供給された前記燃焼排ガスから二酸化炭素を回収する二酸化炭素回収ユニットを含むガス回収システムと、
前記二酸化炭素回収ユニットに含まれる二酸化炭素回収器から、二酸化炭素を脱離する二酸化炭素脱離システムと、を備え、
前記ガス回収システムは、前記二酸化炭素脱離システムとは分離して船上に搭載される
ことを特徴とするガス処理システム。
【請求項2】
前記ガス回収システムは、前記燃焼排ガスに含まれるNOx,SOx,水分のうち少なくとも1つ以上を除去する前処理装置を更に備える
ことを特徴とする請求項1に記載のガス処理システム。
【請求項3】
前記前処理装置には、前記燃焼排ガスに含まれる熱を吸収して蒸気を発生させる排ガス排熱利用装置を更に備える
ことを特徴とする請求項2に記載のガス処理システム。
【請求項4】
前記二酸化炭素回収器は、残余のSOx,NOx,水分として吸着熱を検知する吸着熱用計測温度センサを備え、前記吸着熱が、予め実験式を用いて演算された二酸化炭素分離回収量に応じた吸着発熱反応温度上昇値を超過する場合は、前処理装置又は排ガス再熱装置からのSOx,NOx,水分のスリップとみなして警報出力をすることを特徴とする請求項1から3のうち何れかに記載のガス処理システム。
【請求項5】
前記ガス回収システムは、複数の前記二酸化炭素回収ユニットと、複数の前記二酸化炭素回収ユニットへ流入する二酸化炭素の濃度を測定する第1二酸化炭素センサと、複数の前記二酸化炭素回収ユニットから排出される二酸化炭素の濃度を測定する第2二酸化炭素センサと、複数の前記二酸化炭素回収ユニットへ流入される二酸化炭素を切り替える複数のユニット切替弁と、を更に備え、
前記ガス回収システムは、前記第1二酸化炭素センサにより計測される二酸化炭素濃度と、前記第2二酸化炭素センサにより計測される二酸化炭素濃度と、が同値となった場合には、前記複数のユニット切替弁の切替制御を行うことを特徴とする請求項1から3のうち何れかに記載のガス処理システム。
【請求項6】
前記ガス回収システムは、複数の前記二酸化炭素回収ユニットと、複数の前記二酸化炭素回収ユニットから排出される二酸化炭素の濃度を測定する二酸化炭素センサと、複数の前記二酸化炭素回収ユニットへ流入される二酸化炭素を切り替える複数のユニット切替弁と、を更に備え、
前記ガス回収システムは、前記二酸化炭素センサにより計測される二酸化炭素濃度があらかじめ設定した二酸化炭素濃度の一定濃度を超過した場合には、前記複数のユニット切替弁の切替制御を行うことを特徴とする請求項1から3のうち何れかに記載のガス処理システム。
【請求項7】
前記ガス回収システムは、前記切替制御を行う場合には、任意の時間を設定できるタイマー設定にて前記複数のユニット切替弁が同時に開状態となる時間を設け、前記複数のユニット切替弁うち前記タイマー設定にて設定した一定時間経過後に任意のユニット切替弁を閉状態とすることを特徴とする請求項5に記載のガス処理システム。
【請求項8】
前記ガス回収システムは、前記二酸化炭素回収ユニットを冷却する冷却ポンプと、前記二酸化炭素回収ユニットの温度を計測するユニット温度センサと、を更に備え、
前記ガス回収システムは、前記ユニット温度センサにより計測された温度が一定温度以上となった場合には、前記冷却ポンプの冷媒流量を制御して、前記二酸化炭素回収ユニットの冷却を行うことを特徴とする請求項1から3のうち何れかに記載のガス処理システム。
【請求項9】
前記ガス回収システムは、複数の前記二酸化炭素回収ユニットのうち第1二酸化炭素回収器及び第2二酸化炭素回収器の二酸化炭素の流入側に配置された第1仕切弁と、前記第1二酸化炭素回収器及び前記第2二酸化炭素回収器の二酸化炭素の排出側に配置された第2仕切弁と、を更に備え、
前記ガス回収システムは、前記第1二酸化炭素回収器へ流入する二酸化炭素濃度が、前記第1二酸化炭素回収器から排出される二酸化炭素濃度の一定濃度を超過した場合に、前記第1二酸化炭素回収器の前記第1仕切弁及び前記第2仕切弁を閉状態とし、前記第2二酸化炭素回収器の前記第1仕切弁及び前記第2仕切弁を開状態とする切替制御を行うことを特徴とする請求項1から3のうち何れかに記載のガス処理システム。
【請求項10】
前記二酸化炭素回収器は、二酸化炭素吸着済みの置換パージ二酸化炭素回収器を含み、
前記ガス回収システムは、前記置換パージ二酸化炭素回収器により、減圧吸引にて脱離した二酸化炭素を二酸化炭素回収済みの前記二酸化炭素回収器に流し、共吸着した他組成ガスを吸着剤内の濃度勾配をもって入れ替えることを特徴とする請求項1から3のうち何れかに記載のガス処理システム。
【請求項11】
前記ガス回収システムは、前記二酸化炭素回収器のうち、前記置換パージ二酸化炭素回収器に流入する二酸化炭素濃度と、前記置換パージ二酸化炭素回収器以外の前記二酸化炭素回収器の二酸化炭素濃度と、が同値となった場合には、前記置換パージ二酸化炭素回収器以外の前記二酸化炭素回収器による二酸化炭素の吸着濃度を高める運転方式が完了したと判断することを特徴とする請求項10に記載のガス処理システム。
【請求項12】
前記ガス回収システムは、要求される二酸化炭素の処理量に応じて、前記二酸化炭素回収器のうち、同時に運転する二酸化炭素回収器の数を制御する
ことを特徴とする請求項1から3のうち何れかに記載のガス処理システム。
【請求項13】
前記二酸化炭素脱離システムは、二酸化炭素の分離回収にかかる動力として、再生可能エネルギーで発電した電力を利用することを特徴とする請求項1から3のうち何れかに記載のガス処理システム。
【請求項14】
船上に搭載され、二酸化炭素回収ユニットを備えるガス回収システムと、前記ガス回収システムとは分離されて配置される二酸化炭素脱離システムと、を備えるガス処理システムが実行するガス処理方法であって、
燃焼器から排出される燃焼排ガスが供給され、供給された前記燃焼排ガスから二酸化炭素を回収し、
前記二酸化炭素回収ユニットに含まれる二酸化炭素回収器から、二酸化炭素を脱離することを特徴とするガス処理方法。