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特開2024-119224燃焼器用筒体、燃焼器及びガスタービン
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024119224
(43)【公開日】2024-09-03
(54)【発明の名称】燃焼器用筒体、燃焼器及びガスタービン
(51)【国際特許分類】
   F23R 3/06 20060101AFI20240827BHJP
   F23R 3/42 20060101ALI20240827BHJP
   F23R 3/28 20060101ALI20240827BHJP
   F02C 7/18 20060101ALI20240827BHJP
   F01D 25/12 20060101ALI20240827BHJP
【FI】
F23R3/06
F23R3/42 E
F23R3/28 D
F02C7/18 C
F01D25/12 E
F23R3/42 A
【審査請求】有
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023025977
(22)【出願日】2023-02-22
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2023-08-09
(71)【出願人】
【識別番号】000006208
【氏名又は名称】三菱重工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000785
【氏名又は名称】SSIP弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】谷口 健太
(72)【発明者】
【氏名】本山 宜彦
(72)【発明者】
【氏名】木下 泰希
(57)【要約】
【課題】燃焼器用筒体の冷却性能の低下を抑制できる燃焼器用筒体を提供する。
【解決手段】一実施形態に係る燃焼器用筒体は、燃料の燃焼によって生成された燃焼ガスが内部を流通可能な燃焼器用筒体であって、軸線に沿って延びる筒本体を備える。筒本体は、筒本体の壁部内に形成されていて、軸線の延在方向に延在し、内部を冷却流体が流通可能な少なくとも1つの冷却通路、を有する。少なくとも1つの冷却通路は、冷却流体の入口であり、筒本体の周面に開口する入口開口と、冷却流体の出口であり、筒本体の周面に開口する出口開口と、を有する。入口開口又は出口開口の少なくともいずれか一方は、軸線の延在方向の第1寸法が筒本体の周方向の第2寸法よりも大きい。
【選択図】図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
燃料の燃焼によって生成された燃焼ガスが内部を流通可能な燃焼器用筒体であって、
軸線に沿って延びる筒本体、
を備え、
前記筒本体は、前記筒本体の壁部内に形成されていて、前記軸線の延在方向に延在し、内部を冷却流体が流通可能な少なくとも1つの冷却通路、を有し、
前記少なくとも1つの冷却通路は、
前記冷却流体の入口であり、前記筒本体の周面に開口する入口開口と、
前記冷却流体の出口であり、前記筒本体の周面に開口する出口開口と、
を有し、
前記入口開口又は前記出口開口の少なくともいずれか一方は、前記軸線の延在方向の第1寸法が前記筒本体の周方向の第2寸法よりも大きい、
燃焼器用筒体。
【請求項2】
前記第2寸法は、前記少なくとも1つの冷却通路の前記周方向の通路幅と等しい、
請求項1に記載の燃焼器用筒体。
【請求項3】
前記少なくとも1つの冷却通路は、前記周方向に間隔を空けて配置された複数の前記冷却通路を含む、
請求項1又は2に記載の燃焼器用筒体。
【請求項4】
前記周方向で隣り合う前記冷却通路同士を隔てる壁の前記周方向の厚さは、前記冷却通路の前記周方向の通路幅の4.0倍以下である、
請求項3に記載の燃焼器用筒体。
【請求項5】
前記第1寸法は、前記第2寸法の1.5倍以上2.0倍以下である、
請求項1又は2に記載の燃焼器用筒体。
【請求項6】
前記入口開口又は前記出口開口の少なくともいずれか一方を前記軸線の径方向から見たときの形状は、長孔、四隅を丸めた矩形、又は楕円の何れかである、
請求項1又は2に記載の燃焼器用筒体。
【請求項7】
請求項1又は2に記載の燃焼器用筒体と、
燃料を噴射するバーナと、
を備える燃焼器。
【請求項8】
請求項7に記載の燃焼器と、
前記燃焼器に送り出す圧縮空気を生成する圧縮機と、
前記燃焼器から送り出された燃焼ガスにより回転するロータを備えるタービンと、
を備えるガスタービン。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、燃焼器用筒体、燃焼器及びガスタービンに関する。
【背景技術】
【0002】
ガスタービンにおける燃焼器は、高温の燃焼ガスが内部を流れるため、圧縮機からの圧縮空気等によって冷却するための構造を有している。燃焼器を冷却するための構造の一例としては、例えば、燃焼器を構成する筒体の壁の内部に設けられた冷却通路を挙げることができる。該冷却通路に圧縮空気等を流通させることで筒体を冷却することができる(例えば特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009-079789号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、上述した冷却通路の筒体の周方向への通路幅や周方向で隣り合う冷却通路同士のピッチは、筒体の強度や製造の観点から制約を受けることがある。そのため、冷却通路の通路断面積に対して冷却通路の入口開口や出口開口の開口面積を十分に確保し難くなるおそれがある。入口開口や出口開口の開口面積を十分に確保できないと、入口開口や出口開口での圧損が大きくなって冷却通路を流通する冷却流体の流量が少なくなり、冷却性能の低下や燃焼器の信頼性低下等を招くおそれがある。
【0005】
本開示の少なくとも一実施形態は、上述の事情に鑑みて、燃焼器用筒体の冷却性能の低下を抑制できる燃焼器用筒体、燃焼器及びガスタービンを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
(1)本開示の少なくとも一実施形態に係る燃焼器用筒体は、
燃料の燃焼によって生成された燃焼ガスが内部を流通可能な燃焼器用筒体であって、
軸線に沿って延びる筒本体、
を備え、
前記筒本体は、前記筒本体の壁部内に形成されていて、前記軸線の延在方向に延在し、内部を冷却流体が流通可能な少なくとも1つの冷却通路、を有し、
前記少なくとも1つの冷却通路は、
前記冷却流体の入口であり、前記筒本体の周面に開口する入口開口と、
前記冷却流体の出口であり、前記筒本体の周面に開口する出口開口と、
を有し、
前記入口開口又は前記出口開口の少なくともいずれか一方は、前記軸線の延在方向の第1寸法が前記筒本体の周方向の第2寸法よりも大きい。
【0007】
(2)本開示の少なくとも一実施形態に係る燃焼器は、
上記(1)の構成の燃焼器用筒体と、
燃料を噴射するバーナと、
を備える。
【0008】
(3)本開示の少なくとも一実施形態に係るガスタービンは、
上記(2)の構成の燃焼器と、
前記燃焼器に送り出す圧縮空気を生成する圧縮機と、
前記燃焼器から送り出された燃焼ガスにより回転するロータを備えるタービンと、
を備える。
【発明の効果】
【0009】
本開示の少なくとも一実施形態によれば、燃焼器用筒体の冷却性能を向上できる燃焼器用筒体、燃焼器及びガスタービンを提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】一実施形態に係るガスタービンの全体構成を示す概略図である。
図2】一実施形態に係るガスタービンの燃焼器及びその周辺構造の一例を示す図である。
図3】一実施形態に係る燃焼器用筒体を示す概略図である。
図4】一実施形態に係る燃焼器用筒体を周方向から見た断面の模式的な拡大図である。
図5図4のV-V矢視断面図である。
図6図5のVI-VI矢視断面図である。
図7図4のV-V矢視断面図に相当する図であり、入口開口の他の例を示す図である。
図8図4のV-V矢視断面図に相当する図であり、入口開口の他の例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、添付図面を参照して本開示の幾つかの実施形態について説明する。ただし、実施形態として記載されている又は図面に示されている構成部品の寸法、材質、形状、その相対的配置等は、本開示の範囲をこれに限定する趣旨ではなく、単なる説明例にすぎない。
例えば、「ある方向に」、「ある方向に沿って」、「平行」、「直交」、「中心」、「同心」或いは「同軸」等の相対的或いは絶対的な配置を表す表現は、厳密にそのような配置を表すのみならず、公差、若しくは、同じ機能が得られる程度の角度や距離をもって相対的に変位している状態も表すものとする。
例えば、「同一」、「等しい」及び「均質」等の物事が等しい状態であることを表す表現は、厳密に等しい状態を表すのみならず、公差、若しくは、同じ機能が得られる程度の差が存在している状態も表すものとする。
例えば、四角形状や円筒形状等の形状を表す表現は、幾何学的に厳密な意味での四角形状や円筒形状等の形状を表すのみならず、同じ効果が得られる範囲で、凹凸部や面取り部等を含む形状も表すものとする。
一方、一の構成要素を「備える」、「具える」、「具備する」、「含む」、又は、「有する」という表現は、他の構成要素の存在を除外する排他的な表現ではない。
【0012】
図1~8を参照して一実施形態に係る燃焼器用筒体、燃焼器、ガスタービンについて説明する。
図1は、一実施形態に係るガスタービンの全体構成を示す概略図である。
図2は、一実施形態に係るガスタービンの燃焼器及びその周辺構造の一例を示す図である。
図3は、一実施形態に係る燃焼器用筒体を示す概略図である。
図4は、一実施形態に係る燃焼器用筒体を周方向から見た断面の模式的な拡大図である。
図5は、図4のV-V矢視断面図である。
図6は、図5のVI-VI矢視断面図である。
図7は、図4のV-V矢視断面図に相当する図であり、入口開口の他の例を示す図である。
図8は、図4のV-V矢視断面図に相当する図であり、入口開口の他の例を示す図である。
【0013】
図1に示すように、本実施形態のガスタービンGTは、圧縮機1と、燃焼器2と、タービン3と、を備える。
圧縮機1は、空気を空気取込口から作動流体として取り込んで圧縮空気を生成する。
燃焼器2は、圧縮機1の吐出口に接続されている。燃焼器2は、圧縮機1から吐出された圧縮空気に燃料を噴射して高温・高圧の燃焼ガスを発生させる。
タービン3は、燃焼器2から送り出された燃焼ガスの熱エネルギをロータ4の回転エネルギに変換して駆動力を発生させる。タービン3は、発生させた駆動力をロータ4に連結された発電機Geに伝達する。
【0014】
本実施形態のガスタービンGTには、圧縮機1で圧縮した圧縮空気の一部を抽気し、圧縮空気よりも高い圧力に昇圧する昇圧装置5がさらに設けられている。昇圧装置5は、圧縮空気を圧縮機1から燃焼器2に供給する圧縮空気供給流路6の途中から分岐して圧縮空気の一部を抽気する分岐流路7に設けられ、例えば電動モータMにより駆動される。
昇圧装置5で昇圧された抽気昇圧空気は、昇圧空気流路8を通って燃焼器2に供給され、後述する燃焼器2の尾筒21を冷却する空気(以下、冷却空気と呼ぶ。)として使用される。尾筒21の冷却に使用された後の冷却空気は、戻し流路9を通って圧縮空気供給流路6に戻され、圧縮空気供給流路6を流れる圧縮空気の主流と合流した後、燃焼器2において燃料を燃焼させるための燃焼用空気として再利用される。
【0015】
すなわち、本実施形態のガスタービンGTは、圧縮機1から供給されて燃焼器2において燃焼用空気として使用される圧縮空気の一部を、燃焼器2の尾筒21を冷却する冷却空気として用いた後、この冷却空気を回収して圧縮空気の主流と共に燃焼器2における燃焼用空気として再利用する回収式空気冷却構造(クローズド冷却サイクル構造)を備える。 主流(圧縮空気供給流路6)から抽気された圧縮空気の一部は、図1に示すように、燃焼器2の尾筒21の冷却のみに使用されることに限らず、例えば、燃焼器2の尾筒21の冷却に加えてタービン3の静翼や動翼などの冷却にも使用されてもよい。
【0016】
燃焼器2は、略円筒形状の外観を有し、例えば図2に示すように、主にガスタービンGTの車室10(ケーシング)内に形成された車室内部空間10Aに配置される。燃焼器2を配した車室内部空間10Aには、圧縮機1において圧縮された圧縮空気が導入されて充満している。燃焼器2は、燃焼器本体11と、燃焼器用筒体12と、を備える。
燃焼器本体11は、供給された燃料と圧縮機1から吐出された圧縮空気とを反応させる燃焼室として機能する。燃焼器用筒体12は、燃焼器本体11から流入した燃焼ガスをタービン3に送る。
【0017】
燃焼器本体11は、円筒状の内筒13と、内筒13内に配されて燃料を噴射するバーナ14と、を備える。
内筒13の一方の開口は、車室内部空間10Aに充満した圧縮空気を内筒13内に導入する上流側の開口である。内筒13の他方の開口は、下流側の開口であり、後述する尾筒21が連結される。
バーナ14には、パイロットバーナ15とメインバーナ16とがある。パイロットバーナ15は、内筒13の中心軸に沿って設けられる。パイロットバーナ15は、外部から供給される燃料を噴射し、燃料を拡散燃焼させる。メインバーナ16は、内筒13内に複数設けられる。複数のメインバーナ16は、パイロットバーナ15を囲むように内筒13の周方向に間隔をあけて配列される。各メインバーナ16は、内筒13の中心軸に平行するように延びている。メインバーナ16は、燃料を噴射し、この燃料と圧縮空気とを予め混合して予混合気を生成した上で、この予混合気を噴射して予混合燃焼させる。
【0018】
燃焼器用筒体12は、図2~4に示すように、尾筒(筒本体)21と、第1冷却通路22と、第2冷却通路23と、音響ライナ24と、を備える。
尾筒21は、軸線AXに沿って延びており、内部に燃焼器本体11から流入した燃焼ガスCgの流速を速めてタービン3に導入する。尾筒21の一方の開口は、前述した燃焼器本体11の内筒13(図2参照)の下流側の開口に接続される。尾筒21の他方の開口は、タービン3に接続される。尾筒21の内部には、燃焼器本体11から流入した燃焼ガスCgが流れる。図3~5、図7,8では、燃焼ガスCgが尾筒21の内部において紙面の左側(上流側)から右側(下流側)に流れる。尾筒21の外側の空間、すなわち車室内部空間10Aにおいては、圧縮機1から吐出された圧縮空気Caが前述した内筒13の上流側の開口に向かうように、尾筒21内における燃焼ガスCgの流通方向と逆向きに流れる。
【0019】
第1冷却通路22は、尾筒21の壁部内のうち燃焼ガスCgの流通方向の上流側に位置する上流側領域21Aに形成される。第1冷却通路22は、尾筒21の外周面21cに開口する入口開口25を有する。これにより、第1冷却通路22は、車室内部空間10Aから入口開口25を通じて圧縮空気(流体)Caを第1冷却空気(第1冷却流体)として導入することで、尾筒21の上流側領域21Aを冷却する。
【0020】
本実施形態の第1冷却通路22は、尾筒21の軸線AX方向に沿って延びている。第1冷却通路22は、尾筒21の周方向に間隔をあけて複数配列されている。
各第1冷却通路22の入口開口25は、尾筒21の上流側領域21Aに設けられた音響ライナ24に対して燃焼ガスCgの流通方向の両側に一つずつ設けられている。音響ライナ24よりも燃焼ガスCgの流通方向の下流側に位置する複数の第1冷却通路22の入口開口25A(以下、下流側入口開口25Aと呼ぶ。)は、尾筒21の周方向に一列に並んでいる。
各第1冷却通路22は、尾筒21の外周面21cに開口して第1冷却空気を尾筒21の外部に排出する出口開口26を有する。第1冷却通路22の出口開口26は音響ライナ24の内部に開口する。すなわち、第1冷却空気は、尾筒21の上流側領域21Aを冷却した上で音響ライナ24内に排出される。
【0021】
第2冷却通路23は、尾筒21の壁部内のうち尾筒21の上流側領域21Aに対して燃焼ガスCgの流通方向の下流側に連続して位置する下流側領域21Bに形成される。第2冷却通路23は、前述した昇圧装置5(図1参照)で昇圧された抽気昇圧空気が第2冷却空気(第2冷却流体)として第2冷却通路23に供給されることで、尾筒21の下流側領域21Bを冷却する。第2冷却通路23は、尾筒21の外周面21cのうち下流側入口開口25Aよりも下流側において開口して第2冷却空気を車室内部空間10Aに排出する出口開口27を有する。
【0022】
本実施形態の第2冷却通路23は、尾筒21の軸線AX方向に沿って延びている。第2冷却通路23は、尾筒21の周方向に間隔をあけて複数配列されている。
各第2冷却通路23の出口開口27は、燃焼ガスCgの流通方向上流側に位置する第2冷却通路23の長手方向の第1端部に設けられている。複数の第2冷却通路23の出口開口27は、尾筒21の周方向に一列に並んでいる。
各第2冷却通路23は、尾筒21の外周面21cに開口して第2冷却空気を第2冷却通路23内に導入するための入口開口28を有する。第2冷却通路23の入口開口28は、第2冷却通路23の長手方向の第2端部に設けられ、タービン3側に位置する尾筒21の下流側端部に位置する。
【0023】
尾筒21の下流側端部の外周面21cには、尾筒21の周方向全体に形成されて、複数の第2冷却通路23の入口開口28を一括して覆うと共に、第2冷却通路23の入口開口28に連通する導入空間を形成する環状通路部29(マニホールド)が設けられている。環状通路部29は、その導入空間が車室内部空間10Aに連通しないように形成されている。これにより、第2冷却空気(昇圧装置5で昇圧された抽気昇圧空気)は、環状通路部29内を介して、各第2冷却通路23の入口開口28から各第2冷却通路23に供給される。
【0024】
第2冷却通路23に供給された第2冷却空気は、尾筒21の下流側領域21Bを冷却した上で車室内部空間10Aに排出される。第2冷却空気は、第2冷却通路23において尾筒21の壁部を冷却することで加熱されるため、第2冷却通路23の出口開口27から排出される際には、第2冷却通路23の入口開口28における第2冷却空気の温度、及び、車室内部空間10Aに充満する圧縮空気Caの温度よりも高い高温空気(高温流体)となる。車室内部空間10Aに排出された高温空気(第2冷却空気)は、車室内部空間10A内に充満する圧縮空気Caと合流することで、燃焼用空気として再利用される。
なお、幾つかの実施形態に係る燃焼器用筒体12では、第2冷却通路23の出口開口27から排出される高温空気が直接下側入口開口25Aから第1冷却通路22に供給され難くするために、不図示の壁部等を設けるようにしてもよい。
【0025】
音響ライナ24は、上流側領域21Aにおける尾筒21の外周に設けられている。音響ライナ24の一部は、尾筒21の壁部によって構成されている。音響ライナ24の内部空間は、尾筒21の壁部を貫通して形成された多数の音響穴24Aを介して尾筒21の内部に連通する。このため、前述した第1冷却通路22は、音響穴24Aと干渉しない位置に設けられる。音響ライナ24は、ガスタービンGTの燃焼振動(燃焼器2内の圧力変動、速度変動、発熱率変動がフィードバックすることで発生する自励振動)を低減する。
上記のように音響ライナ24に音響穴24Aが設けられることで、前述した第1冷却通路22の出口開口26から音響ライナ24内に排出された第1冷却空気は、音響穴24Aを介して尾筒21の内部に流出する。
【0026】
(入口開口25,28、及び出口開口26,27について)
図5から図8を参照して、入口開口25,28、及び出口開口26,27の形状について説明する。なお、図5から図8では第1冷却通路22の下流側入口開口25Aについて図示しているが、以下の説明に関し、下流側入口開口25A以外の入口開口25や、第2冷却通路23の入口開口28、及び出口開口26,27についても同様に当てはまる。
以下の説明では、入口開口25,28、及び出口開口26,27について特に区別する必要がない場合や、入口開口25,28、及び出口開口26,27を総称する場合、入口開口25,28、及び出口開口26,27のことを単に開口31と称することもある。
同様に、以下の説明では、第1冷却通路22、及び第2冷却通路23について特に区別する必要がない場合や、第1冷却通路22、及び第2冷却通路23を総称する場合、第1冷却通路22、及び第2冷却通路23のことを単に冷却通路35と称することもある。
【0027】
例えば冷却通路35の周方向への通路幅Wpや周方向で隣り合う冷却通路35同士のピッチPは、燃焼器用筒体12(尾筒21)の強度や製造の観点から制約を受けることがある。そのため、冷却通路35の通路断面積、すなわち図6の紙面に表れる冷却通路35の断面の面積に対して冷却通路35の開口31の開口面積を十分に確保し難くなるおそれがある。開口31の開口面積を十分に確保できないと、開口31での圧損が大きくなって冷却通路35を流通する冷却流体である冷却空気の流量が少なくなり、冷却性能の低下や燃焼器2の信頼性低下等を招くおそれがある。
【0028】
そこで、幾つかの実施形態に係る燃焼器用筒体12では、入口開口25,28又は出口開口26,27の少なくともいずれか一方について、軸線AX方向の第1寸法L1を尾筒21の周方向の第2寸法L2よりも大きくした。
これにより、入口開口25,28や出口開口26,27の寸法を周方向へ大きくすることに対して制約があるような場合であっても、第1寸法L1を大きくすることで開口面積を確保できる。これにより、入口開口25,28又は出口開口26,27の少なくともいずれか一方における冷却空気の圧損を抑制できるので、冷却通路35を流通する冷却空気の流量の減少を抑制でき、冷却性能を向上できる。
【0029】
また、幾つかの実施形態に係る燃焼器2によれば、入口開口25,28又は出口開口26,27の少なくともいずれか一方における冷却空気の圧損を抑制できるので、冷却通路35を流通する冷却空気の流量の減少を抑制でき、燃焼器用筒体12の冷却性能を向上できる。これにより、燃焼器2の信頼性を向上できる。
【0030】
また、幾つかの実施形態に係るガスタービンGTによれば、燃焼器2の信頼性が向上するので、ガスタービンGTの信頼性を向上できる。
【0031】
なお、開口31の第2寸法L2を大きくすることに対して制約がある場合とは、例えば第2寸法L2を大きくすると、周方向で隣り合う冷却通路35同士を隔てる壁Wのうち、周方向で隣り合う開口31同士の間に位置する壁Waの周方向の厚さTwが薄くなって、この壁Waの強度や燃焼器用筒体12の耐久性の点で好ましくないような場合である。
また、例えば尾筒21が、複数の冷却通路35が内部に形成された板状の部材が周方向に並べられ、周方向で隣り合う該部材の端部同士が溶接によって接合されているものとする。この場合、該端部同士の溶接部分(軸線AXに沿って延びる溶接部)の近傍に形成された冷却通路35について開口31の第2寸法L2を大きくすると、開口31が該溶接部分の熱影響部や溶金に達してしまうおそれがある。そのため、このような場合にも開口31の第2寸法L2を大きくすることに対して制約があることとなる。
【0032】
幾つかの実施形態に係る燃焼器用筒体12では、第2寸法L2は、少なくとも1つの冷却通路35の周方向の通路幅Wpと等しいとよい。
これにより、冷却通路35を区画する周方向の壁W(壁Wa)の厚さTwが薄くならないので、燃焼器用筒体12の強度への影響を抑制しつつ開口31の開口面積を確保できる。
【0033】
幾つかの実施形態に係る燃焼器用筒体12では、少なくとも1つの冷却通路35は、周方向に間隔を空けて配置された複数の冷却通路35を含むとよい。
これにより、燃焼器用筒体12の冷却性能を向上できる。また、上記構成によれば、周方向で隣り合う冷却通路35同士を隔てる壁Wの厚さTwが入口開口25,28又は出口開口26,27の少なくともいずれか一方において確保し易くなるので、燃焼器用筒体12の強度への影響を抑制しつつ開口面積を確保できる。
【0034】
幾つかの実施形態に係る燃焼器用筒体12では、周方向で隣り合う冷却通路35同士を隔てる壁Wの周方向の厚さTwは、冷却通路35の周方向の通路幅Wpの4.0倍以下であってもよい。
これにより、燃焼器用筒体12の単位面積当たりの冷却通路35の数を増やすことができ、燃焼器用筒体12の冷却性能を向上できる。
ところで、周方向で隣り合う冷却通路35同士を隔てる壁Wの周方向の厚さTwが薄くなるほど、開口31の第2寸法L2の大小が壁W(壁Wa)の強度に与える影響が大きくなる。
上記構成によれば、第1寸法L1が第2寸法L2よりも大きいので、周方向で隣り合う冷却通路35同士を隔てる壁W(壁Wa)の強度を確保しつつ開口面積を確保できる。
【0035】
幾つかの実施形態に係る燃焼器用筒体12では、第1寸法L1は、第2寸法L2の1.5倍以上2.0倍以下であるとよい。
これにより、開口31を設けることによる燃焼器用筒体12の強度低下を抑制しつつ開口面積を確保できる。
【0036】
幾つかの実施形態に係る燃焼器用筒体12では、入口開口25,28又は出口開口26,27の少なくともいずれか一方を径方向から見たときの形状は、図5に示すような長孔、図7に示すような四隅を丸めた矩形、又は図8に示すような楕円の何れかであってもよい。
これにより、入口開口25,28又は出口開口26,27の少なくともいずれか一方において開口周縁における応力の集中等を緩和できるとともに、開口31の加工が比較的容易となる。
【0037】
本開示は上述した実施形態に限定されることはなく、上述した実施形態に変形を加えた形態や、これらの形態を適宜組み合わせた形態も含む。
例えば、尾筒21の内周面21dに開口する開口が存在する場合には、該開口の軸線AX方向の第1寸法及び周方向の第2寸法に対して、上述の説明の内容を適用してもよい。
【0038】
上記各実施形態に記載の内容は、例えば以下のように把握される。
(1)本開示の少なくとも一実施形態に係る燃焼器用筒体12は、燃料の燃焼によって生成された燃焼ガスCgが内部を流通可能な燃焼器用筒体12であって、軸線AXに沿って延びる筒本体(尾筒21)を備える。筒本体(尾筒21)は、筒本体(尾筒21)の壁部内に形成されていて、軸線AXの延在方向(軸線AX方向)に延在し、内部を冷却流体(冷却空気)が流通可能な少なくとも1つの冷却通路35(第1冷却通路22、第2冷却通路23)、を有する。少なくとも1つの冷却通路35(第1冷却通路22、第2冷却通路23)は、冷却流体(冷却空気)の入口であり、筒本体(尾筒21)の周面に開口する入口開口25,28と、冷却流体(冷却空気)の出口であり、筒本体(尾筒21)の周面に開口する出口開口26,27と、を有する。入口開口25,28又は出口開口26,27の少なくともいずれか一方は、軸線AXの延在方向(軸線AX方向)の第1寸法L1が筒本体(尾筒21)の周方向の第2寸法L2よりも大きい。
【0039】
上記(1)の構成によれば、軸線AXの延在方向(軸線AX方向)の第1寸法L1を筒本体(尾筒21)の周方向の第2寸法L2よりも大きくすることで、入口開口25,28や出口開口26,27の寸法を周方向へ大きくすることに対して制約があるような場合であっても、第1寸法L1を大きくすることで開口面積を確保できる。これにより、入口開口25,28又は出口開口26,27の少なくともいずれか一方における冷却流体(冷却空気)の圧損を抑制できるので、冷却通路35(第1冷却通路22、第2冷却通路23)を流通する冷却流体(冷却空気)の流量の減少を抑制でき、冷却性能を向上できる。
【0040】
(2)幾つかの実施形態では、上記(1)の構成において、第2寸法L2は、少なくとも1つの冷却通路35(第1冷却通路22、第2冷却通路23)の周方向の通路幅Wpと等しいとよい。
【0041】
上記(2)の構成によれば、冷却通路35(第1冷却通路22、第2冷却通路23)を区画する周方向の壁Wの厚さが薄くならないので、燃焼器用筒体12の強度への影響を抑制しつつ開口面積を確保できる。
【0042】
(3)幾つかの実施形態では、上記(1)又は(2)の構成において、少なくとも1つの冷却通路35(第1冷却通路22、第2冷却通路23)は、周方向に間隔を空けて配置された複数の冷却通路35(第1冷却通路22、第2冷却通路23)を含むとよい。
【0043】
上記(3)の構成によれば、燃焼器用筒体12の冷却性能を向上できる。また、上記(3)の構成によれば、周方向で隣り合う冷却通路35(第1冷却通路22、第2冷却通路23)同士を隔てる壁Wの厚さTwが入口開口25,28又は出口開口26,27の少なくともいずれか一方において確保し易くなるので、燃焼器用筒体12の強度への影響を抑制しつつ開口面積を確保できる。
【0044】
(4)幾つかの実施形態では、上記(3)の構成において、周方向で隣り合う冷却通路35(第1冷却通路22、第2冷却通路23)同士を隔てる壁Wの周方向の厚さTwは、
冷却通路35(第1冷却通路22、第2冷却通路23)の周方向の通路幅Wpの4.0倍以下であってもよい。
【0045】
上記(4)の構成によれば、燃焼器用筒体12の単位面積当たりの冷却通路35(第1冷却通路22、第2冷却通路23)の数を増やすことができ、燃焼器用筒体12の冷却性能を向上できる。
上記(4)の構成によれば、軸線AXの延在方向(軸線AX方向)の第1寸法L1が筒本体(尾筒21)の周方向の第2寸法L2よりも大きいので、周方向で隣り合う冷却通路35(第1冷却通路22、第2冷却通路23)同士を隔てる壁Wの強度を確保しつつ開口面積を確保できる。
【0046】
(5)幾つかの実施形態では、上記(1)乃至(4)の何れかの構成において、第1寸法L1は、第2寸法L2の1.5倍以上2.0倍以下であるとよい。
【0047】
上記(5)の構成によれば、開口31(入口開口25,28、出口開口26,27)を設けることによる燃焼器用筒体12の強度低下を抑制しつつ開口面積を確保できる。
【0048】
(6)幾つかの実施形態では、上記(1)乃至(5)の何れかの構成において、入口開口25,28又は出口開口26,27の少なくともいずれか一方を軸線AXの径方向から見たときの形状は、長孔、四隅を丸めた矩形、又は楕円の何れかであってもよい。
【0049】
上記(6)の構成によれば、入口開口25,28又は出口開口26,27の少なくともいずれか一方において開口周縁における応力の集中等を緩和できるとともに、開口31(入口開口25,28、出口開口26,27)の加工が比較的容易となる。
【0050】
(7)本開示の少なくとも一実施形態に係る燃焼器2は、上記(1)乃至(6)の何れかの構成の燃焼器用筒体12と、燃料を噴射するバーナ14と、を備える。
【0051】
上記(7)の構成によれば、入口開口25,28又は出口開口26,27の少なくともいずれか一方における冷却流体(冷却空気)の圧損を抑制できるので、冷却通路35(第1冷却通路22、第2冷却通路23)を流通する冷却流体(冷却空気)の流量の減少を抑制でき、燃焼器用筒体12の冷却性能を向上できる。これにより、燃焼器2の信頼性を向上できる。
【0052】
(8)本開示の少なくとも一実施形態に係るガスタービンGTは、上記(7)の構成の燃焼器2と、燃焼器2に送り出す圧縮空気を生成する圧縮機1と、燃焼器2から送り出された燃焼ガスCgにより回転するロータ4を備えるタービン3と、を備える。
【0053】
上記(8)の構成によれば、燃焼器2の信頼性が向上するので、ガスタービンGTの信頼性を向上できる。
【符号の説明】
【0054】
1 圧縮機
2 燃焼器
3 タービン
4 ロータ
5 昇圧装置
10 車室(ケーシング)
10A 車室内部空間
11 燃焼器本体
12 燃焼器用筒体
21 尾筒(筒本体)
21c 外周面
22 第1冷却通路
23 第2冷却通路
25 入口開口
25A 入口開口(下流側入口開口)
26 出口開口
27 出口開口
28 入口開口
31 開口
35 冷却通路
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8