(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024119225
(43)【公開日】2024-09-03
(54)【発明の名称】インクジェット印刷装置
(51)【国際特許分類】
B41J 2/165 20060101AFI20240827BHJP
B41J 2/18 20060101ALI20240827BHJP
【FI】
B41J2/165 505
B41J2/18
B41J2/165 203
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023025979
(22)【出願日】2023-02-22
(71)【出願人】
【識別番号】000207551
【氏名又は名称】株式会社SCREENホールディングス
(74)【代理人】
【識別番号】100135013
【弁理士】
【氏名又は名称】西田 隆美
(72)【発明者】
【氏名】大西 秀明
【テーマコード(参考)】
2C056
【Fターム(参考)】
2C056EA15
2C056EB15
2C056EB34
2C056EB51
2C056EC17
2C056EC18
2C056EC49
2C056EC56
2C056FA13
2C056HA15
2C056JC23
2C056KA01
2C056KB04
2C056KB08
2C056KB16
2C056KB26
2C056KB37
(57)【要約】
【課題】循環流路に発生した気泡を効果的に除去することができる技術を提供する。
【解決手段】
インクジェット印刷装置1は、吐出ヘッド80と、供給タンク51と、供給側分岐配管62と、回収側分岐配管63と、回収側開閉弁631と、圧力差形成部55と、制御部9とを備える。圧力差形成部55の圧力調整部552は、回収側分岐配管63に負圧を発生させることが可能である。制御部9は、回収側開閉弁631を閉じた状態で、圧力調整部552により回収側分岐配管63に負圧を発生させるとともに、圧力差形成部55により供給タンク51から吐出ヘッド80へインクを供給させて、吐出ヘッド80からインクを吐出させる吐出処理を実行する。また、制御部9は、吐出処理の後、回収側開閉弁631を開けて、吐出ヘッド80から回収側分岐配管63にインクを引き込む開放処理を実行する。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
インクジェット印刷装置であって、
インクを吐出するノズルを有する吐出ヘッドと、
前記吐出ヘッドに供給される前記インクを貯留する供給タンクと、
前記供給タンクの前記インクを前記吐出ヘッドへ送るための供給管と、
前記吐出ヘッドから回収された前記インクを前記供給タンクへ送る回収管と、
前記回収管を開閉する開閉弁と、
前記供給タンクに貯留された前記インクを前記吐出ヘッドへ送液するとともに、前記回収管に負圧を発生させることが可能な送液部と、
前記吐出ヘッド、前記開閉弁および前記送液部を制御する制御部と、
を備え、
前記制御部は、
前記開閉弁を閉じた状態で、前記送液部により前記回収管を負圧にするとともに、前記送液部により前記供給タンクから前記吐出ヘッドに前記インクを供給させて、前記吐出ヘッドからインクを吐出させる吐出処理と、
前記吐出処理の後、前記開閉弁を開けて、前記吐出ヘッドから前記回収管に前記インクを引き込む開放処理と、
を実行する、インクジェット印刷装置。
【請求項2】
請求項1に記載のインクジェット印刷装置であって、
前記回収管を介して前記吐出ヘッドから回収された前記インクを貯留する回収タンク、
をさらに備える、インクジェット印刷装置。
【請求項3】
請求項2に記載のインクジェット印刷装置であって、
前記送液部は、前記回収タンクを負圧にすることが可能である、インクジェット印刷装置。
【請求項4】
請求項1または請求項2に記載のインクジェット印刷装置であって、
前記回収管の前記開閉弁よりも回収側の圧力を測定する圧力センサ、
をさらに備え、
前記制御部は、前記開放処理の後、前記圧力センサによって測定された圧力を取得する、インクジェット印刷装置。
【請求項5】
請求項4に記載のインクジェット印刷装置であって、
前記制御部は、前記圧力センサによって測定された圧力変化の傾きが一定となった後、前記送液部による前記インクの送液を停止させる、インクジェット印刷装置。
【請求項6】
請求項4または請求項5に記載のインクジェット印刷装置であって、
前記制御部は、前記圧力センサによって測定された圧力変化に基づいてエラーの種類を判定する、インクジェット印刷装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書で開示される主題は、インクジェット印刷装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、インクジェット印刷装置において、印刷媒体に対してインクを吐出する吐出ヘッドへインクを供給し、さらに吐出ヘッドから吐出されなかったインクを回収して、再び吐出ヘッドへ供給する、循環流路が設けられる場合がある。このようなインクの循環流路が設けられたインクジェット印刷装置は、例えば特許文献1に記載されている。
【0003】
特許文献1のインク供給装置は、インクタンクからヘッドへインクを供給するとともに、ヘッドからインクタンクへインクを回収することによって、インクを循環させている。供給ポンプは、インクタンクからヘッドへインクを供給する供給流路の圧力(送液量)を制御し、回収ポンプは、ヘッドからインクタンクへインクを回収する回収流路の圧力(送液量)を制御する。
【0004】
特許文献1のインクジェット印刷装置では、インクタンクから第1のインクチューブを介して印字ヘッドのマニホールドにインクを供給するとともに、当該マニホールドから第2のインクチューブを介してインクタンクへインクを回収する。これにより、インクタンクとマニホールドとの間で、インクを循環させている。マニホールドへのインクの供給は、第1のチューブに取り付けられた循環ポンプの駆動によって行われる。
【0005】
また、特許文献1では、インク流路の内壁面等に付着した気泡を除去するため、循環パージと補助パージとが行われる。循環パージでは、インクタンクとマニホールドとの間でインクを循環させる。補助パージでは、開閉バルブによって第2のインクチューブが閉じられた状態で、循環ポンプを一定時間だけ駆動する。この補助パージによって、第1のインクチューブのインク流路内の圧力を高め、それにより、インク流路の壁面および圧力室内の気泡を、インクとともに印字ヘッドのノズル孔から外部に押し出している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1の補助パージのようなポンプの加圧だけでは、循環流路内の気泡を充分に除去するだけの圧力を得ることが困難な場合があった。
【0008】
本発明の目的は、循環流路に発生した気泡を効果的に除去することができる技術を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するため、第1態様は、インクジェット印刷装置であって、インクを吐出するノズルを有する吐出ヘッドと、前記吐出ヘッドに供給される前記インクを貯留する供給タンクと、前記供給タンクの前記インクを前記吐出ヘッドへ送るための供給管と、前記吐出ヘッドから回収された前記インクを前記供給タンクへ送る回収管と、前記回収管を開閉する開閉弁と、前記供給タンクに貯留された前記インクを前記吐出ヘッドへ送液するとともに、前記回収管に負圧を発生させることが可能な送液部と、前記吐出ヘッド、前記開閉弁および前記送液部を制御する制御部と、を備え、前記制御部は、前記開閉弁を閉じた状態で、前記送液部により前記回収管を負圧にするとともに、前記送液部により前記供給タンクから前記吐出ヘッドにインクを供給させて、前記吐出ヘッドからインクを吐出させる吐出処理と、前記吐出処理の後、前記開閉弁を開けて、前記吐出ヘッドから前記回収管に前記インクを引き込む開放処理とを実行する。
【0010】
第2態様は、第1態様のインクジェット印刷装置であって、前記回収管を介して前記吐出ヘッドから回収された前記インクを貯留する回収タンクをさらに備える。
【0011】
第3態様は、第2態様のインクジェット印刷装置であって、前記送液部は、前記回収タンクを負圧にすることが可能である。
【0012】
第4態様は、第1態様または第2態様のインクジェット印刷装置であって、回収管の前記開閉弁よりも回収側の圧力を測定する圧力センサ、をさらに備え、前記制御部は、前記開放処理の後、前記圧力センサによって測定された圧力を取得する。
【0013】
第5態様は、第4態様のインクジェット印刷装置であって、前記制御部は、前記圧力センサによって測定された圧力変化の傾きが一定となった後、前記送液部による前記インクの送液を停止させる。
【0014】
第6態様は、第4態様または第5態様のインクジェット印刷装置であって、前記制御部は、前記圧力センサによって測定された圧力変化に基づいてエラーの種類を判定する。
【発明の効果】
【0015】
第1態様から第6態様のインクジェット印刷装置によれば、回収管を負圧にした後、開閉弁を開く開放処理によって吐出ヘッドから回収管へインクを勢いよく引き込むことができる。これにより、供給管または吐出ヘッドに存在する気泡等を効率的に除去できる。
【0016】
第2態様のインクジェット印刷装置によれば、インクとともに気泡を回収タンクに回収できる。
【0017】
第3態様のインクジェット印刷装置によれば、回収タンクを負圧することによって、回収管を負圧にすることができる。
【0018】
第4態様のインクジェット印刷装置によれば、圧力センサを取得することによって、開放処理が行われたときの圧力変化を取得することができる。圧力変化を取得することによって、気泡除去の状況を推測できる。
【0019】
第5態様のインクジェット印刷装置によれば、供給管および吐出ヘッドの気泡を適切に除去でき、かつ、無駄にインクの消費を回避できる。
【0020】
第6態様のインクジェット印刷装置によれば、圧力変化に基づいて、気泡の発生、フィルタ詰まりの発生、または開閉弁不具合の発生等を判定できる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】実施形態に係るインクジェット印刷装置の構成を示す図である。
【
図2】1つのインク供給部および1つのヘッドユニットの構成を概念的に示す図である。
【
図3】ヘッドユニットおよびインク供給部の一部を示す斜視図である。
【
図4】制御部とインクジェット印刷装置の各部との接続を示す機能ブロック図である。
【
図5】制御部の供給制御部が実行するパージ処理の流れを示す図である。
【
図7】変形例に係るヘッドユニットおよびインク供給部の一部を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、添付の図面を参照しながら、本発明の実施形態について説明する。なお、この実施形態に記載されている構成要素はあくまでも例示であり、本発明の範囲をそれらのみに限定する趣旨のものではない。図面においては、理解容易のため、必要に応じて各部の寸法や数が誇張又は簡略化して図示されている場合がある。
【0023】
<1. 実施形態>
図1は、実施形態に係るインクジェット印刷装置1の構成を示す図である。インクジェット印刷装置1は、長尺帯状の連続紙10を搬送しつつ、複数のヘッドユニット35から連続紙10へ向けて水性のインクの液滴を吐出することにより、連続紙10の表面に文字や画像を記録する、インクジェット方式の印刷機である。連続紙10は、印刷媒体の一例である。なお、印刷媒体は、単票紙であってもよいし、プラスチックフィルム、段ボール、金属箔、またはガラス製の基材等であってもよい。また、インクジェット印刷装置1においてヘッドユニット35が吐出するインクは、例えば水性インクである。ただし、ヘッドユニット35が吐出するインクは、油性インクまたはUVインクなどであってもよい。
【0024】
図1に示されるように、インクジェット印刷装置1は、巻き出しローラ11と、巻き取りローラ12と、搬送部2と、印刷部3と、制御部9とを備える。
【0025】
巻き出しローラ11は、ロール状に巻かれた連続紙10を保持している。巻き出しローラ11は、回転することによって連続紙10を繰り出し、搬送部2に連続紙10を供給する。巻き取りローラ12は、連続紙10をロール状に巻き取る。インクジェット印刷装置1では、巻き出しローラ11および巻き取りローラ12によって、連続紙10がロールtoロールで搬送される。
【0026】
搬送部2は、巻き出しローラ11から供給された連続紙10を、巻き取りローラ12へ搬送する。搬送部2は、駆動ローラ21と、ニップローラ23と、複数の搬送ローラ25とを有する。駆動ローラ21は、モータに接続されており、モータの動力によって能動回転する。ニップローラ23は、駆動ローラ21とともに連続紙10を挟み込む。ニップローラ23は、連続紙10を介して駆動ローラ21を押圧することにより、駆動ローラ21が連続紙10を搬送するためのグリップ力を発生させる。複数の搬送ローラ25は、受動回転する。なお、複数の搬送ローラ25のうち少なくとも一部は、能動回転可能に構成されていてもよい。
【0027】
印刷部3は、4つのヘッドユニット35と、4つのインク供給部4とを有する。4つのヘッドユニット35は、互いに同様の構造を有し、4つのインク供給部4は、互いに同様の構造を有する。
【0028】
4つのヘッドユニット35は、互いに搬送方向に間隔を空けて配列されている。4つのヘッドユニット35はそれぞれ、ノズル83から連続紙10の表面に向けてインクの液滴を吐出する。4つのヘッドユニット35は、互いに異なる色(例えば、シアン、マゼンタ、イエロー、ブラック)のインクを吐出することによって、連続紙10の表面に、それぞれ単色画像を記録する。4つの単色画像の重ね合わせにより、連続紙10の上面に、多色画像が形成される。
【0029】
図2は、1つのインク供給部4および1つのヘッドユニット35の構成を概念的に示す図である。本実施形態では、各ヘッドユニット35は、複数の吐出ヘッド80を有する。本例では、各ヘッドユニット35は、5つの吐出ヘッド80を有する。複数の吐出ヘッド80は、互いに同じ構造を有する。
図2では、1つの吐出ヘッド80のみが詳細に図示されており、残りの4つの吐出ヘッド80が、簡略化して図示されている。
図2に示されるように、吐出ヘッド80は、筐体81と、内部タンク82と、複数のノズル83とを有する。
【0030】
筐体81は、吐出ヘッド80の外枠を形成する。内部タンク82は、筐体81の内部に配設され、インクを一時的に貯留することが可能である。複数のノズル83は、筐体81の下部において、互いに連続紙10の搬送方向および幅方向に等間隔に配列されている。複数のノズル83は、内部タンク82とそれぞれ連通する。また、各ノズル83は、ピエゾ素子831と、インク室832と、吐出口830とを有する。ピエゾ素子831は、圧力発生素子である。インク室832は、内部タンク82に連通する。
【0031】
内部タンク82のインクは、インク室832へ流下する。そして、ピエゾ素子831によって、インク室832内のインクが加圧されることにより、吐出口830からインクの液滴が吐出される。なお、インクの吐出方式は、圧力発生素子としてヒーターを用いる、いわゆるサーマル方式であってもよい。
【0032】
インク供給部4は、ヘッドユニット35へインクを供給し、且つヘッドユニット35から吐出されなかったインクを回収することによって、インクを循環させる装置である。4つのインク供給部4の構造は互いに同じである。
【0033】
図2に示されるように、インク供給部4は、供給タンク51と、回収タンク52と、補充タンク53と、供給側マニホールド61と、複数(本実施形態では、5つ)の供給側分岐配管62と、複数(本実施形態では、5つ)の回収側分岐配管63と、回収側マニホールド64と、接続配管65と、補充配管66と、循環ポンプ71と、補充ポンプ72と、逆流防止開閉弁73と、ヒーター74と、第1フィルタ75と、第2フィルタ76と、脱気ユニット77とを有する。
【0034】
供給タンク51は、ヘッドユニット35へ供給されるインクを一時的に貯留するための容器である。供給タンク51は、内部室を有する。供給タンク51は、インクを一時的に貯留することが可能である。
【0035】
供給タンク51には、4つの液面センサ511,512,513,514が取り付けられている。液面センサ511~514は、制御部9と電気的に接続されている。液面センサ511~514は、供給タンク51の内部室に貯留されたインクの液面の高さをそれぞれ検出し、制御部9に信号を出力する。液面センサ511は液面の高さが供給レベルL11以上か否かを検出し、液面センサ512は液面の高さが供給レベルL12以上か否かを検出し、液面センサ513は液面の高さが供給レベルL13以上か否かを検出し、液面センサ514は液面の高さが供給レベルL14以上か否かを検出する。供給レベルL12は供給レベルL11より高いレベルであり、供給レベルL13は供給レベルL12より高いレベルであり、供給レベルL14は供給レベルL13より高いレベルである。液面の高さは、貯留されているインクの残量を示しており、液面の高さ(レベル)が高いほど、インクの残量が多い。液面センサ511~514は、供給タンク51におけるインクの残量(以下、「供給タンク残量」)を検出する、「供給タンク残量検出部」の一例である。液面センサ511~514は、静電容量式のレベルセンサである。ただし、供給タンク残量検出部は、液面反射型のレベルセンサなどであってもよい。
【0036】
供給側マニホールド61および5つの供給側分岐配管62は、供給タンク51と、1つのヘッドユニット35が有する5つの吐出ヘッド80と、を接続している。
図3は、ヘッドユニット35およびインク供給部4の一部を示す斜視図である。なお、
図3では、ヘッドユニット35が有する5つの吐出ヘッド80のうちの1つのみが図示され、供給側マニホールド61に繋がる5つの供給側分岐配管62のうちの1つのみが図示され、回収側マニホールド64に繋がる5つの回収側分岐配管63のうちの1つのみが図示されている。
【0037】
図2および
図3に示されるように、供給側マニホールド61の上流端は、供給タンク51の内部室に連通接続されている。5つの供給側分岐配管62は、供給側マニホールド61から分岐する。供給側マニホールド61は、供給側分岐配管62より太い管である。各供給側分岐配管62の上流端は、供給側マニホールド61の内部通路に連通されている。各供給側分岐配管62の下流端は、1つの吐出ヘッド80の内部タンク82に連通接続されている。
【0038】
図2および
図3に示されるように、各供給側分岐配管62は、供給側開閉弁621およびフィルタ623を有する。供給側開閉弁621及びフィルタ623は、供給側分岐配管62において、吐出ヘッド80よりも上流側(供給側)、且つ供給タンク51よりも下流側(回収側)に位置する。フィルタ623は、供給側開閉弁621よりも上流側に位置する。ただし、フィルタ623は、供給側開閉弁621よりも下流側に位置していてもよい。
【0039】
供給側開閉弁621は、制御部9によって出力された制御信号に基づいて、供給側分岐配管62を開閉する。供給側開閉弁621が閉じた状態では、供給側分岐配管62が遮断されることによって、供給側マニホールド61から吐出ヘッド80へ向かうインクの流れが停止される。供給側開閉弁621が開くと、供給側分岐配管62が連通される。フィルタ623は、供給側分岐配管62を通過するインクを濾過し、インク中の異物を除去する。
【0040】
5つの回収側分岐配管63および回収側マニホールド64は、1つのヘッドユニット35が有する5つの吐出ヘッド80と、回収タンク52とを接続している。
図2および
図3に示されるように、5つの回収側分岐配管63は、回収側マニホールド64から分岐する細管である。各回収側分岐配管63の上流端は、1つの吐出ヘッド80の内部タンク82に連通接続されている。各回収側分岐配管63の下流端は、回収側マニホールド64の内部通路に連通接続されている。回収側マニホールド64の下流端は、回収タンク52の内部室に連通接続されている。回収側マニホールド64は、回収側分岐配管63より太い管である。
【0041】
図2および
図3に示されるように、各回収側分岐配管63は、回収側開閉弁631を有する。回収側開閉弁631は、回収側分岐配管63において、回収タンク52よりも上流側(供給側)、且つ吐出ヘッド80よりも下流側(回収側)に位置する。
【0042】
回収側開閉弁631は、制御部9によって出力された制御信号に基づいて、回収側分岐配管63を開閉する。回収側開閉弁631が閉じた状態では、回収側分岐配管63が遮断されることにより、吐出ヘッド80から回収タンク52へ向かうインクの流れが停止される。回収側開閉弁631が開くと、回収側分岐配管63が連通される。
【0043】
回収タンク52は、ヘッドユニット35から回収されたインクを一時的に貯留するための容器である。回収タンク52は、インクを貯留する内部室を有する。
【0044】
回収タンク52には、3つの液面センサ521、522,523が取り付けられている。液面センサ521~523は、制御部9と電気的に接続されている。液面センサ521~523は、回収タンク52の内部室に貯留されているインクの液面の高さを検出する。液面センサ521は液面の高さが第1回収レベルL21以上か否かを検出し、液面センサ522は液面の高さが回収レベルL22以上か否かを検出し、液面センサ523は液面の高さが回収レベルL23以上か否かを検出する。回収レベルL22は回収レベルL21より高いレベルであり、第3回収レベルL23は第2回収レベルL22より高いレベルである。液面センサ521~523は、回収タンク52におけるインクの残量(以下、「回収タンク残量」と称する。)を検出する、「回収タンク残量検出部」の一例である。液面センサ521~523は、静電容量式のレベルセンサである。ただし、回収タンク残量検出部は、液面反射型のレベルセンサなどであってもよい。
【0045】
図2に示されるように、インク供給部4は、圧力差形成部55を有する。圧力差形成部55は、供給タンク51および回収タンク52に接続されている。圧力差形成部55は、供給タンク51の内部室の圧力(内圧)と、回収タンク52の内部室の圧力(内圧)とを、調整することによって、供給タンク51の内部室と回収タンク52の内部室との間に圧力差を形成する。
【0046】
詳細には、圧力差形成部55は、圧力調整部551,552を有する。圧力調整部551,552は、制御部9によって制御される。圧力調整部551は、供給タンク51の内部室に気体を供給することなどによって、供給タンク51の内圧を大気圧より大きい正圧とすることが可能である。また、圧力調整部552は、回収タンク52の内部室から気体を吸引することなどによって、回収タンク52の内圧を大気圧より小さい負圧とすることが可能である。
【0047】
図2に示されるように、インク供給部4は、2つの圧力センサ561,562を備えている。圧力センサ561は、供給タンク51に設置されており、供給タンク51の内部室の圧力(内圧)を測定する。圧力センサ562は、回収タンク52に設置されており、回収タンク52の内部室の圧力を測定する。圧力センサ561,562は、測定された圧力を示す信号を、制御部9に出力する。
【0048】
圧力差形成部55が形成する差圧により、供給タンク51に貯留されたインクが、供給側マニホールド61および各供給側分岐配管62を経由して、各吐出ヘッド80の内部タンク82に送られる。また、圧力差形成部55が形成する差圧により、各吐出ヘッド80から吐出されなかったインクが、各回収側分岐配管63および回収側マニホールド64を経由して、回収タンク52に送られる。圧力差形成部55は、「送液部」の一例である。
【0049】
接続配管65は、供給タンク51の内部室と、回収タンク52の内部室と、を連通可能に接続している。
図2に示されるように、接続配管65の上流端は、回収タンク52の内部室に連通接続されている。また、接続配管65の下流端は、供給タンク51の内部室に連通接続されている。接続配管65には、循環ポンプ71と、逆流防止開閉弁73と、ヒーター74と、第2フィルタ76と、脱気ユニット77とが取り付けられている。なお、接続配管65における、逆流防止開閉弁73とヒーター74との間の接続箇所655には、補充配管66が接続されている。
【0050】
循環ポンプ71は、インクを回収タンク52から供給タンク51へ送る送液動作を実行する。循環ポンプ71は、接続配管65の内部通路において、回収タンク52から供給タンク51へ向かうインクの流れを生成する。循環ポンプ71は、好ましくは、駆動時に粉塵等の異物が発生し難いダイヤフラムポンプである。循環ポンプ71の流量は、制御部9によって出力される制御信号によって、複数段階の大きさで変更される。
【0051】
逆流防止開閉弁73は、接続配管65において、循環ポンプ71よりも下流側、且つ接続箇所655よりも上流側に位置する。逆流防止開閉弁73が閉じると、接続配管65が遮断される。すなわち、逆流防止開閉弁73が閉じた状態では、接続箇所655から循環ポンプ71へと向かうインクの逆流が防止される。逆流防止開閉弁73が開くと、接続配管65が連通される。
【0052】
ヒーター74は、接続配管65を通過するインクを加熱する。ヒーター74は、接続配管65における、接続箇所655と供給タンク51との間に位置する。ヒーター74は、温度センサ741を有する。温度センサ741は、ヒーター74に流入するインクの温度を計測する。なお、温度センサ741は、ヒーター74を通過したインクの温度を計測してもよい。ヒーター74は、制御部9と電気的に接続されている。ヒーター74は、温度センサ741によって計測された温度を示すデータを、制御部9へ出力する。制御部9は、温度センサ741によって計測された温度に基づいてヒーター74を制御する。
【0053】
第2フィルタ76は、接続配管65における、接続箇所655と供給タンク51との間に位置する。第2フィルタ76は、接続配管65内を流れるインクを濾過し、インク中に含まれる異物を除去する。第2フィルタ76の濾過径(第2フィルタ76の目の大きさ)は、例えば、4~6μmである。
【0054】
脱気ユニット77は、接続配管65における、接続箇所655と供給タンク51との間に位置する。本実施形態の脱気ユニット77は、例えば、中空糸膜脱気モジュールである。脱気ユニット77は、接続配管65内を流れるインク中の気泡を除去する。
【0055】
補充タンク53は、供給タンク51へ補充されるインクを貯留する。補充タンク53は、インクを貯留することが可能な内部室を有する。補充タンク53は、上記の供給タンク51と回収タンク52との間を循環するインクの循環流路の外部に位置する。
【0056】
補充配管66は、補充タンク53の内部室と、接続配管65と、を連通可能に接続する。
図2に示すように、補充配管66は、上流端において、補充タンク53の内部室に接続されている。また、補充配管66は、下流端の接続箇所655において、接続配管65と接続されている。接続箇所655は、接続配管65における、循環ポンプ71と、供給タンク51との間に位置する。接続箇所655は、接続配管65における、逆流防止開閉弁73と、供給タンク51との間に位置する。また、補充配管66には、補充ポンプ72と、第1フィルタ75とが取り付けられている。
【0057】
補充ポンプ72は、補充タンク53から接続配管65へインクを送る送液動作を実行する。補充ポンプ72は、例えば、ダイヤフラムポンプである。補充ポンプ72の流量は、制御部9によって出力される制御信号によって、複数段の大きさに変更される。
【0058】
第1フィルタ75は、補充配管66における、補充ポンプ72と接続箇所655との間に位置する。第1フィルタ75は、補充配管66を流れるインクを濾過し、インク中に含まれる異物を除去する。第1フィルタ75の濾過径(第1フィルタ75の目の大きさ)は、例えば、10~30μm程度である。すなわち、第1フィルタ75の濾過径は、第2フィルタ76の濾過径以上である。ただし、第1フィルタ75の濾過径は、第2フィルタ76の濾過径未満であってもよい。
【0059】
制御部9は、インクジェット印刷装置1の各部を制御するための情報処理装置である。
図1に示されるように、制御部9は、CPU等のプロセッサ91と、RAM等のメモリ92と、ハードディスクドライブ等の記憶部93とを有する。記憶部93は、連続紙10を搬送しつつ印刷処理を実行する処理、および、ヘッドユニット35へインクを供給する処理を実行するためのプログラム931を記憶している。また、記憶部93は、連続紙10に印刷するべき画像を示す印刷データ933を記憶している。
【0060】
図4は、制御部9とインクジェット印刷装置1の各部との接続を示す機能ブロック図である。
図4に示されるように、制御部9は、搬送部2、各ヘッドユニット35、各インク供給部4が備える循環ポンプ71、補充ポンプ72、逆流防止開閉弁73、ヒーター74、液面センサ511~514、液面センサ521~523、温度センサ741、圧力調整部551および圧力調整部552と、通信可能に接続されている。また、制御部9は、各インク供給部4が備える、複数の供給側開閉弁621、複数の回収側開閉弁631、および圧力センサ561,562と、通信可能に接続されている。
【0061】
制御部9は、印刷制御部911と、供給制御部912とを有する。印刷制御部911および供給制御部912は、プロセッサ91がプログラム931を実行することによって実現される機能である。印刷制御部911は、搬送部2およびヘッドユニット35を制御することにより、連続紙10の搬送および印刷処理を実行する。供給制御部912は、インク供給部4の各部を制御することにより、各ヘッドユニット35の内部タンク82へインクを供給する。
【0062】
供給制御部912は、エラー判定部913を有する。エラー判定部913は、圧力センサ562によって測定される回収タンク52内の圧力変化に基づいて、エラーの発生を判定するエラー判定処理を実行する。エラー判定の具体的な処理内容については、後述する。エラー判定部913は、エラー判定の結果を、出力装置95に出力する。出力装置95は、例えば、ディスプレイ、プロジェクタ、プリンター、スピーカー、または警告灯などである。
【0063】
<パージ処理>
図5は、制御部9の供給制御部912が実行するパージ処理の流れを示す図である。パージ処理は、各吐出ヘッド80にけるインクの吐出不良を抑制するため、ヘッドユニット35の各吐出ヘッド80からインクを吐出する処理である。以下の説明では、5つのヘッドユニット35のうち、1つのヘッドユニット35に着目して、パージ処理を行う場合について説明するが、他のヘッドユニット35についても、同様にパージ処理を行うことが可能である。
【0064】
パージ処理が開始されると、まず、供給制御部912は、対象のヘッドユニット35に対応するインク供給部4の複数の供給側開閉弁621を開状態とし、対象のインク供給部4の複数の回収側開閉弁631を閉状態とする(ステップS1)。
【0065】
ステップS1の後、供給制御部912は、圧力差形成部55によって、供給タンク51の内圧、および回収タンク52の内圧を調整する(ステップS2)。具体的には、供給制御部912は、供給タンク51の内圧が大気圧より大きい目標正圧(例えば120kPa)となるように、圧力調整部551を駆動させる。また、供給制御部912は、回収タンク52の内圧を、大気圧より低い目標負圧(例えば-8kPa)となるように、圧力調整部552を駆動させる。このように、供給タンク51に正圧が印加されることによって、対象のヘッドユニット35の各吐出ヘッド80にインクが供給され、各吐出ヘッド80のノズル83からインクが吐出される。なお、目標正圧は、供給タンク51と回収タンク52との間でインクを循環させるときに、供給タンク51に印加される圧力よりも大きい。
【0066】
各回収側開閉弁631が閉じた状態で、供給タンク51に正圧が印加されることにより、供給側マニホールド61、各回収側分岐配管63および各吐出ヘッド80の内圧が高められる。これにより、供給側マニホールド61、各回収側分岐配管63および各吐出ヘッド80内の異物が効率よく除去される。
【0067】
ステップS2の後、供給制御部912は、圧力センサ561,562が出力する圧力を取得する(ステップS3)。なお、圧力の取得は、ステップS2より前に行われてもよい。そして、供給制御部912は、圧力センサ562によって測定された圧力が、目標負圧に達したか判定する(ステップS4)。回収タンク52内の内圧が目標負圧に達していると判定された場合(ステップS4においてYES)、制御部9は、圧力センサ561によって測定された供給タンク51の内圧が目標正圧に達し、且つ目標正圧に達してから既定時間が経過したか判定する(ステップS5)。これにより、供給タンク51に目標正圧が印加された状態で、少なくとも既定時間の間、各吐出ヘッド80からインクが吐出される。
【0068】
ステップS5によって規定時間が経過した場合、供給制御部912は、圧力調整部552の駆動を停止させることによって、回収タンク52に対する負圧の印加を解除する。そして、供給制御部912は、インク供給部4の複数の供給側開閉弁621を開けたまま、複数の回収側開閉弁631を開ける(ステップS6)。回収側開閉弁631が開くことにより、各吐出ヘッド80内のインクが各回収側分岐配管63へ引き込まれる。
【0069】
各回収側開閉弁631が開いた時点では、各回収側分岐配管63における回収側開閉弁631より回収タンク52側は負圧となっている。このため、各吐出ヘッド80のインクは、供給側分岐配管62側の目標正圧と、回収側分岐配管63の目標負圧との圧力差により、回収側分岐配管63へ勢いよく流れ込む。このため、インクとともに、供給側分岐配管62または吐出ヘッド80内の気泡を回収側分岐配管63へ流し込むことができる。なお、目標正圧と目標負圧との差は、吐出ヘッド80の流路抵抗より大きい。これにより、インクおよび気泡を回収側分岐配管63へ勢いよく流すことができる。また、目標正圧と目標負圧との差は、大気圧より大きい。これにより、吐出ヘッド80の各ノズル83から吐出ヘッド80内に空気が引き込まれることを回避できる。
【0070】
各回収側分岐配管63へ引き込まれたインクは、回収側マニホールド64を介して、回収タンク52に回収される。なお、各吐出ヘッド80から回収タンク52にインクが回収されることで、回収タンク52が満杯になるおそれがある。このため、供給制御部912は、回収タンク52の液面レベルを液面センサ521~523によって監視する。そして、例えば液面レベルL22を超える場合には、供給制御部912は、循環ポンプ71を駆動することによって、回収タンク52から供給タンク51へインクを送る。これにより、回収タンク52が満杯になることを回避できる。
【0071】
ステップS6の後、供給制御部912のエラー判定部913は、圧力センサ562によって測定される回収タンク52の圧力変化に基づいてエラーが発生しているか判定する(ステップS7)。ここで、
図6を参照しつつ、回収タンク52の圧力変化について説明する。
【0072】
図6は、回収タンク52の圧力変化を示すグラフである。
図6中、縦軸は圧力を示し、横軸は時間を示している。また、
図6中、時刻t0は、ステップS3により圧力の取得が開始された時刻であり、時刻t1は、ステップS6により回収側開閉弁631が開いた時刻である。
図6中、グラフG1は、正常な場合(すなわち、気泡発生等の異常がない場合)の圧力変化を示しており、グラフG2は、供給側分岐配管62または吐出ヘッド80に気泡が発生した場合の圧力変化を示している。グラフG3は、フィルタ623の詰まり(フィルタ詰まり)が発生した場合の圧力変化を示している。グラフG4は、回収側開閉弁631の不具合により回収側開閉弁631が開かない場合の圧力変化を示している。
【0073】
グラフG1に示されるように、気泡発生等の異常が無い場合は、時刻t1の後、回収タンク52の圧力は、大気圧に向けてほぼ一定の傾きで上昇する。一方、気泡が発生している場合、グラフG2に示されるように、時刻t1の後、回収タンク52の圧力は、正常時のグラフG1と比べて、急激に圧力が大きくなる。これは、インクの代わりに気泡が吐出ヘッド80から供給側分岐配管62へ移動するためである。供給側分岐配管62へ移動した気泡は、供給側分岐配管62を抜けて回収タンク52へ送られる。このため、時刻t1から所定の時間が経過した時刻t2以降、グラフG2の傾きは、グラフG1の傾きとほぼ一致する。
【0074】
また、グラフG3に示されるように、フィルタ詰まりが発生している場合、インクの流れが妨げられる。このため、圧力変化の傾きが次第に大きくなるように、圧力が変化する。また、グラフG4に示されるように、回収側開閉弁631が開かない場合、圧力がほとんど変化しない。
【0075】
以上のことから、ステップS7において、時刻t1以降の圧力変化を解析することによって、気泡の発生等のエラーを判定できる。エラー判定のため、時刻t1以降の例えば時刻t2における圧力の正常範囲が予め決められていてもよい。この場合、エラー判定部913は、時刻t2に測定された圧力が正常範囲内の場合は、「正常」と判定し、時刻t2の圧力が正常範囲を超える場合は、「気泡発生」と判定するとよい。また、エラー判定部913は、時刻t2に測定された圧力が正常範囲を下回る場合は、さらに、圧力が目標圧力とほぼ同じか判定することによって、「フィルタ詰まり」または「回収側開閉弁631の不具合」と判定するとよい。
【0076】
なお、エラー判定部913は、測定された圧力を2回微分した値に基づいて、エラー判定を行ってもよい。例えば、グラフG1に示されるように、正常な場合は、圧力変化の傾きがほぼ一定となるため、2回微分の値がゼロまたはゼロに近い値となる。また、グラフG2に示されるように、気泡が発生している場合、時刻t1直後の圧力変化が上に凸となるため、圧力を2回微分した値が正となる。また、グラフG3に示されるように、フィルタ詰まりが発生している場合、時刻t1直後の圧力変化が下に凸となるため、2回微分の値が負となる。
【0077】
図5に戻って、ステップS7のエラー判定の後、供給制御部912は、エラー判定結果が「正常」であるか判定する(ステップS8)。「正常」と判定された場合(ステップS8においてYES)、供給制御部912はパージ処理を終了する。すなわち、供給制御部912は、圧力調整部551の駆動を停止させることによって、供給タンク51に対する正圧の印加を解除する。これにより、各吐出ヘッド80からのインクの吐出が停止される。エラー判定結果が「正常」ではないと判定された場合(ステップS8においてNO)、供給制御部912のエラー判定部913は、出力装置95に判定結果であるエラーの種類を報知させる(ステップS9)。出力装置95がディスプレイである場合、エラー判定部913は、ディスプレイにエラーの種類を示す画像を表示させる。
【0078】
ステップS9の後、供給制御部912は、エラー判定結果が「気泡発生」か判定する(ステップS10)。エラー判定結果が「気泡発生」と判定された場合(ステップS10においてYES)、供給制御部912は圧力変化の傾きがほぼ一定になったか判定する(ステップS11)。供給制御部912は、圧力変化の傾きがほぼ一定か否かを、例えば、圧力の2回微分の値に基づいて判定してもよい。圧力変化の傾きがほぼ一定と判定された場合(ステップS11においてYES)、供給制御部912はパージ処理を終了する。また、ステップS10において、エラー判定結果が「気泡発生」ではないと判定された場合(ステップS10においてNO)、供給制御部912はパージ処理を終了する。
【0079】
<効果>
インクジェット印刷装置1によれば、制御部9の供給制御部912は、各回収側開閉弁631を閉じた状態で、圧力差形成部55(送液部)の圧力調整部552により、各回収側分岐配管63(回収管)を負圧にする。また、供給制御部912は、各回収側開閉弁631を閉じた状態で、圧力差形成部55の圧力調整部551により、供給タンク51を正圧にすることによって、供給タンク51から吐出ヘッド80にインクを供給させて、各吐出ヘッド80からインクを吐出させる吐出処理を行う(
図5:ステップS2)。そして、吐出処理に続いて、供給制御部912は、回収側開閉弁631を開けて、各吐出ヘッド80から各回収側分岐配管63にインクを引き込む開放処理を行う(
図5:ステップS6)。このように、回収管である各回収側分岐配管63を負圧にすることによって、開放処理により各吐出ヘッド80から各回収側分岐配管63へインクを勢いよく引き込むことができる。これにより、供給管である各供給側分岐配管62または各吐出ヘッド80に存在する気泡を効率的に除去できる。
【0080】
インクジェット印刷装置1は、回収タンク52を備えている。これにより、インクとともに気泡を回収タンク52に回収できる。
【0081】
圧力差形成部55の圧力調整部552は、回収タンク52内を負圧することが可能である。これにより、回収タンク52を負圧にすることによって、回収管を負圧にすることができる。
【0082】
圧力センサ562は、回収タンク52の圧力を測定する。すなわち、圧力センサ562は、各回収側分岐配管63の回収側開閉弁631より回収タンク52側の圧力を測定する。制御部9の供給制御部912は、開放処理(ステップS6)の後、圧力センサ562によって測定された圧力を取得する。これにより、開放処理が行われた後の圧力変化を取得できる。この圧力変化に基づいて、気泡除去の状況を推測できる。
【0083】
制御部9の供給制御部912は、圧力変化の傾きが一定となった後、圧力調整部551の駆動を停止させることで、各吐出ヘッド80へのインクの送液を停止させる(
図5:ステップS11)。これにより、各供給側分岐配管62及び各吐出ヘッド80の気泡を適切に除去できるとともに、無駄にインクを消費することを回避できる。また、無駄なインクの吐出を回避することによって、パージ処理の時間を短縮することができる。
【0084】
制御部9のエラー判定部913は、圧力センサ562によって測定された圧力変化に基づいてエラーの種類を判定する(
図5:ステップS7)。これにより、気泡の発生、フィルタ詰まりの発生、および回収側開閉弁631の不具合の発生を判定できる。
【0085】
<2. 変形例>
以上、実施形態について説明してきたが、本発明は上記のようなものに限定されるものではなく、様々な変形が可能である。
【0086】
例えば、上記実施形態では、インク供給部4が有する全ての吐出ヘッド80について同時にパージ処理を行うようにしている。しかしながら、1つの吐出ヘッド80の毎に、パージ処理が行われてもよい。これにより、気泡の発生等の異常な吐出ヘッド80を特定することが可能である。
【0087】
また、上記実施形態では、1つのインク供給部4において、複数の回収側分岐配管63に回収側開閉弁631がそれぞれ配置されている。しかしながら、回収側マニホールド64に1つの回収側開閉弁631が配置されていてもよい。すなわち、回収側マニホールド64における、5つの回収側分岐配管63よりも下流側(回収側)、且つ回収タンク52よりも上流側(供給側)に1つの回収側開閉弁631が配置されていてもよい。この場合、回収側開閉弁631が複数の回収側分岐配管63にそれぞれ配置される場合よりも、回収側開閉弁631の数を減らすことができるため、装置コストを低減できる。
【0088】
また、上記実施形態では、パージ処理において、ステップS2により供給タンク51に正圧を印加することによって、各吐出ヘッド80からインクの吐出処理が行われている。しかしながら、各吐出ヘッド80からのインクの吐出が水頭差によって行われるようにしてもよい。この場合、圧力調整部551が、供給タンク51の内圧を大気圧より低い負圧にしてもよい。
【0089】
また、上記実施形態では、回収タンク52に負圧を印加しているが、回収側分岐配管63に直接負圧を印加するようにしてもよい。
図7は、変形例に係るヘッドユニット35およびインク供給部4Aの一部を示す図である。
図7には、1つの吐出ヘッド80と、吐出ヘッド80に接続された供給側分岐配管62の一部および回収側分岐配管63の一部が示されている。
図7に示されるように、インク供給部4Aは、送液ポンプ553と、圧力センサ563とを有する。送液ポンプ553は、回収側分岐配管63内のインクを、吐出ヘッド80とは反対側(回収側)に送る。送液ポンプ553は、制御部9によって制御される。圧力センサ563は、回収側開閉弁631と送液ポンプ553との間に位置する。圧力センサ563は、回収側分岐配管63における、回収側開閉弁631よりも回収側の内圧を測定し、圧力を示す信号を制御部9に送信する。
【0090】
このようなインク供給部4Aにおいても、回収側開閉弁631を閉じた状態で、送液ポンプ553を駆動することにより、回収側分岐配管63における回収側開閉弁631よりも回収側を負圧にすることができる。そして、圧力センサ563によって測定される圧力が、目標負圧に達した時点で、送液ポンプ553の駆動を停止し、回収側開閉弁631を開ける。そうすると、回収側分岐配管63に印加された負圧により、吐出ヘッド80内のインクを回収側分岐配管63に勢いよく引き込むことができるため、供給側分岐配管62または吐出ヘッド80内の気泡を回収側分岐配管63へ送ることができる。
【0091】
この発明は詳細に説明されたが、上記の説明は、すべての局面において、例示であって、この発明がそれに限定されるものではない。例示されていない無数の変形例が、この発明の範囲から外れることなく想定され得るものと解される。上記各実施形態及び各変形例で説明した各構成は、相互に矛盾しない限り適宜組み合わせたり、省略したりすることができる。
【符号の説明】
【0092】
1 インクジェット印刷装置
10 連続紙
51 供給タンク
52 回収タンク
55 圧力差形成部(送液部)
562 圧力センサ
62 供給側分岐配管(供給管)
63 回収側分岐配管(回収管)
631 回収側開閉弁(開閉弁)
80 ヘッドユニット
9 制御部