(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024119228
(43)【公開日】2024-09-03
(54)【発明の名称】静電チャック及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
H01L 21/683 20060101AFI20240827BHJP
H01L 21/31 20060101ALN20240827BHJP
C23C 16/458 20060101ALN20240827BHJP
【FI】
H01L21/68 R
H01L21/31 F
C23C16/458
【審査請求】有
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023025982
(22)【出願日】2023-02-22
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2024-01-09
(71)【出願人】
【識別番号】000010087
【氏名又は名称】TOTO株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100140486
【弁理士】
【氏名又は名称】鎌田 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100079108
【弁理士】
【氏名又は名称】稲葉 良幸
(74)【代理人】
【識別番号】100121843
【弁理士】
【氏名又は名称】村井 賢郎
(74)【代理人】
【識別番号】100170058
【弁理士】
【氏名又は名称】津田 拓真
(72)【発明者】
【氏名】宮崎 俊哉
(72)【発明者】
【氏名】白石 純
(72)【発明者】
【氏名】籾山 大
(72)【発明者】
【氏名】板倉 郁夫
【テーマコード(参考)】
4K030
5F045
5F131
【Fターム(参考)】
4K030CA04
4K030GA02
4K030KA47
4K030LA12
4K030LA15
5F045AA08
5F045DP02
5F045EJ03
5F045EM05
5F131AA02
5F131BA04
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5F131CA31
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5F131EB17
5F131EB18
5F131EB54
5F131EB72
5F131EB78
5F131EB79
5F131EB82
5F131EB84
(57)【要約】
【課題】ガス穴を介した放電の発生を抑制することのできる静電チャック、及びその製造方法を提供する。
【解決手段】静電チャック10は、ガス穴140が形成された誘電体基板100と、ガス穴240が形成されたベースプレート200と、誘電体基板100とベースプレート200との間に設けられ、絶縁性の材料により形成された接合層300と、を備える。誘電体基板100のうち接合層300側の面120には、ガス穴140の端部である開口142が形成されている。ベースプレート200のうち接合層300側の面210には、開口142とは異なる位置において、ガス穴240の端部である開口241が形成されている。ベースプレート200のうち接合層300側の面210には、開口142と開口241との間を連通させる連通溝260が形成されている。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1ガス穴が形成された誘電体基板と、
第2ガス穴が形成されたベースプレートと、
前記誘電体基板と前記ベースプレートとの間に設けられ、絶縁性の材料により形成された接合層と、を備え、
前記誘電体基板のうち前記接合層側の面には、前記第1ガス穴の端部である第1開口が形成されており、
前記ベースプレートのうち前記接合層側の面には、前記第1開口とは異なる位置において、前記第2ガス穴の端部である第2開口が形成されており、
前記ベースプレートのうち前記接合層側の面には、前記第1開口と前記第2開口との間を連通させる連通溝が形成されていることを特徴とする、静電チャック。
【請求項2】
前記第2開口が、前記連通溝を介して複数の前記第1開口に連通されていることを特徴とする、請求項1に記載の静電チャック。
【請求項3】
前記ベースプレートのうち前記連通溝の内面には、絶縁膜が設けられていることを特徴とする、請求項1に記載の静電チャック。
【請求項4】
前記絶縁膜が溶射により形成された膜であることを特徴とする、請求項3に記載の静電チャック。
【請求項5】
前記接合層が、固形の接着剤シートを硬化させたものであることを特徴とする、請求項1に記載の静電チャック。
【請求項6】
第1ガス穴と、前記第1ガス穴の端部である第1開口と、が形成されている誘電体基板を準備する工程と、
第2ガス穴と、前記第2ガス穴の端部である第2開口に繋がる連通溝と、が形成されているベースプレートを準備する工程と、
絶縁性の部材である固形の接着剤シートを準備する工程と、
互いに異なる位置にある前記第1開口と前記第2開口との間が前記連通溝によって連通されるように、前記誘電体基板のうち前記第1開口が形成されている面と、前記ベースプレートのうち前記第2開口が形成されている面と、を互いに対向させ、前記誘電体基板と前記ベースプレートとの間に前記接着剤シートを挟み込む工程と、
前記接着剤シートを硬化させる工程と、を含むことを特徴とする、静電チャックの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は静電チャック及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
例えばCVD装置等の半導体製造装置には、処理の対象となるシリコンウェハ等の基板を吸着し保持するための装置として、静電チャックが設けられる。静電チャックは、吸着電極が設けられた誘電体基板と、誘電体基板を支持するベースプレートと、を備え、これらが互いに接合された構成を有する。吸着電極は、誘電体基板に内蔵されるのが一般的であるが、下記特許文献1に記載されているように、金属であるベースプレートが吸着電極として用いられる場合もある。吸着電極に電圧が印加されると静電力が生じ、誘電体基板上に載置された基板が吸着され保持される。
【0003】
処理中における基板の温度調整等を目的として、誘電体基板と基板との間には、ヘリウム等の不活性ガスが供給されることが多い。このようなガスの供給路として、誘電体基板及びベースプレートのそれぞれにはガス穴が形成される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記特許文献1に記載の構成において、ガス穴は、誘電体基板とベースプレートの接合部分を、被接合面に対し垂直な方向に沿って直線状に貫くよう形成されている。ベースプレートに設けられたガス穴の内面においては金属が露出しているが、この露出した金属は、直線状のガス穴を通じて基板と対向した状態となる。このため、上記構成の静電チャックにおいては、直線状のガス穴に沿って、基板とベースプレートとの間の放電が比較的生じやすくなっていた。
【0006】
本発明はこのような課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、ガス穴を介した放電の発生を抑制することのできる静電チャック、及びその製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明に係る静電チャックは、第1ガス穴が形成された誘電体基板と、第2ガス穴が形成されたベースプレートと、誘電体基板とベースプレートとの間に設けられ、絶縁性の材料により形成された接合層と、を備える。誘電体基板のうち接合層側の面には、第1ガス穴の端部である第1開口が形成されている。ベースプレートのうち接合層側の面には、第1開口とは異なる位置において、第2ガス穴の端部である第2開口が形成されている。ベースプレートのうち接合層側の面には、第1開口と第2開口との間を連通させる連通溝が形成されている。
【0008】
このような構成の静電チャックでは、第1ガス穴の端部である第1開口と、第2ガス穴の端部である第2開口とが、互いに異なる位置にあり、これらの間が、ベースプレートに設けられた連通溝によって連通されている。上記の「位置」とは、例えば、被接合面に対し垂直な方向から見た場合における、第1開口や第2開口の位置のことである。
【0009】
このような構成においては、第1ガス穴の直下において、第2ガス穴の内面が基板側に向けて露出することがない。第2ガス穴の内面で露出した金属から、第1ガス穴を通じて基板に至るまでの経路の沿面距離が、従来構成に比べて長く確保されるので、当該経路に沿った放電の発生を抑制することができる。
【0010】
また、本発明に係る静電チャックでは、第2開口が、連通溝を介して複数の第1開口に連通されていることも好ましい。このような構成においては、第2開口の数を第1開口の数よりも少なくすることができる。放電の起点となり得る第2開口の数を減少させることで、放電の発生を更に抑制することが可能となる。
【0011】
また、本発明に係る静電チャックでは、ベースプレートのうち連通溝の内面に、絶縁膜が設けられていることも好ましい。このような構成においては、第1開口の直下となる部分においてベースプレートの金属表面が露出しないので、放電の発生を更に抑制することが可能となる。
【0012】
また、本発明に係る静電チャックでは、絶縁膜が溶射により形成された膜であることも好ましい。このような構成においては、高い絶縁性を有する膜を容易に形成し、放電の発生を抑制することが可能となる。
【0013】
また、本発明に係る静電チャックでは、接合層が、固形の接着剤シートを硬化させたものであることも好ましい。このような構成においては、接着剤を硬化させる過程において、未硬化の接着剤が連通溝に入り込んでしまったり、連通溝を塞いでしまったりすることを確実に防止することができる。
【0014】
本発明に係る静電チャックの製造方法は、第1ガス穴と、第1ガス穴の端部である第1開口と、が形成されている誘電体基板を準備する工程と、第2ガス穴と、第2ガス穴の端部である第2開口に繋がる連通溝と、が形成されているベースプレートを準備する工程と、絶縁性の部材である固形の接着剤シートを準備する工程と、互いに異なる位置にある第1開口と第2開口との間が連通溝によって連通されるように、誘電体基板のうち第1開口が形成されている面と、ベースプレートのうち第2開口が形成されている面と、を互いに対向させ、誘電体基板とベースプレートとの間に接着剤シートを挟み込む工程と、接着剤シートを硬化させる工程と、を含む。
【0015】
このような静電チャックの製造方法によれば、ガス穴を介した放電の発生を上記のように抑制することのできる静電チャックを、容易に製造することができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、ガス穴を介した放電の発生を抑制することのできる静電チャック、及びその製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】本実施形態に係る静電チャックの構成を模式的に示す断面図である。
【
図2】
図1の静電チャックが備える誘電体基板の構成を示す図である。
【
図3】
図1の静電チャックが備えるベースプレートの構成を示す図である。
【
図4】
図1の静電チャックが備える接合層の構成を示す図である。
【
図5】
図1の静電チャックにおける、連通溝を介したガスの流れについて説明するための図である。
【
図6】ガス穴を介した放電経路について説明するための図である。
【
図7】
図1の静電チャックの製造方法について説明するための図である。
【
図8】変形例に係る静電チャックにおける、連通溝を介したガスの流れについて説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、添付図面を参照しながら本実施形態について説明する。説明の理解を容易にするため、各図面において同一の構成要素に対しては可能な限り同一の符号を付して、重複する説明は省略する。
【0019】
本実施形態に係る静電チャック10は、例えばCVD成膜装置のような不図示の半導体製造装置の内部において、処理対象となる基板Wを静電力によって吸着し保持するものである。基板Wは、例えばシリコンウェハである。静電チャック10は、半導体製造装置以外の装置に用いられてもよい。
【0020】
図1には、基板Wを吸着保持した状態の静電チャック10の構成が、模式的な断面図として示されている。静電チャック10は、誘電体基板100と、ベースプレート200と、接合層300と、を備える。
【0021】
誘電体基板100は、セラミック焼結体からなる略円盤状の部材である。誘電体基板100は、例えば高純度の酸化アルミニウム(Al2O3)を含むが、他の材料を含んでもよい。誘電体基板100におけるセラミックスの純度や種類、添加物等は、半導体製造装置において誘電体基板100に求められる対プラズマ性等を考慮して、適宜設定することができる。
【0022】
誘電体基板100のうち
図1における上方側の面110は、基板Wが載置される「吸着面」となっている。また、誘電体基板100のうち
図1における下方側の面120は、後述の接合層300を介してベースプレート200に接合される「被接合面」となっている。面110に対し垂直な方向に沿って、面110側から静電チャック10を見た場合の視点のことを、以下では「上面視」のようにも表記する。
【0023】
誘電体基板100の内部には吸着電極130が埋め込まれている。吸着電極130は、例えばタングステン等の金属材料により形成された薄い平板状の層である。給電路13を介して外部から吸着電極130に電圧が印加されると、面110と基板Wとの間に静電力が生じ、これにより基板Wが吸着保持される。吸着電極130は、所謂「双極」の電極として2つ設けられていてもよいが、所謂「単極」の電極として1つだけ設けられていてもよい。
【0024】
図1においては、給電路13の全体が簡略化して描かれている。給電路13のうち誘電体基板100の内部の部分は、例えば、導電体の充填された細長いビア(穴)として構成されており、その下端には不図示の電極端子が設けられている。給電路13のうちベースプレート200を貫いている部分は、上記の電極端子に一端が接続された棒状の金属(バスバー)である。ベースプレート200には、当該金属を挿通するための貫通穴213(
図1では不図示、
図3を参照)が形成されている。
【0025】
図1に示されるように、誘電体基板100と基板Wとの間には空間SPが形成されている。半導体製造装置において成膜処理が行われる際には、空間SPには、後述のガス穴140等を介して外部から温度調整用のヘリウムガスが供給される。誘電体基板100と基板Wとの間にヘリウムガスを介在させることで、両者間の熱抵抗が調整され、これにより基板Wの温度が適温に保たれる。尚、空間SPに供給される温度調整用のガスは、ヘリウムとは異なる種類のガスであってもよい。
【0026】
図2は、誘電体基板100を上面視で描いた図である。
図2に示されるように、吸着面である面110上にはシールリング111やドット112が設けられており、上記の空間SPはこれらの周囲に形成されている。
【0027】
シールリング111は、空間SPを区画する壁であり、上面視において同心円状に並ぶように複数設けられている。それぞれのシールリング111の上端は、面110の一部となっており、基板Wに当接する。本実施形態では、計4つのシールリング111が設けられており、これにより空間SPは4つに分けられている。このような構成とすることで、それぞれの空間SPにおけるヘリウムガスの圧力を個別に調整し、処理中における基板Wの表面温度分布を均一に近づけることが可能となる。
【0028】
図1等において符号「116」が付されている部分は、空間SPの底面である。以下では、当該部分のことを「底面116」とも称する。シールリング111は、次に述べるドット112と共に、面110の一部を底面116の位置まで掘り下げた結果として形成されている。
【0029】
ドット112は、底面116から突出する円形の突起である。
図2に示されるように、ドット112は複数設けられており、誘電体基板100の吸着面において略均等に分散配置されている。それぞれのドット112の上端は、面110の一部となっており、基板Wに当接する。このようなドット112を複数設けておくことで、基板Wの撓みが抑制される。
【0030】
それぞれの空間SPの底面116には、溝113及び開口141が形成されている。溝113は、底面116から更に面120側へと後退させるように形成された溝である。溝113は、次に述べる開口141から供給されるヘリウムガスを、空間SP内に素早く拡散させ、空間SP内の圧力分布を短時間のうちに略均一とすることを目的として形成されている。
【0031】
開口141は、空間SP内に供給されるヘリウムガスの出口として設けられた開口である。
図1に示されるように、誘電体基板100には、面110から面120に向かって垂直に貫くようガス穴140が形成されている。ガス穴140は、それぞれの空間SPにおいて複数個ずつ形成されており、それぞれのガス穴140の一方側の端部が、上記の開口141となっている。それぞれのガス穴140の他方側の端部は、誘電体基板100の面120に形成された開口142となっている。それぞれの開口141は、本実施形態のように単一の開口として形成されていてもよいが、複数の小さな開口の集合体として形成されていてもよい。
【0032】
ガス穴140は、本実施形態における「第1ガス穴」に該当する。ガス穴140のうち、面120に形成された開口142は、本実施形態における「第1開口」に該当する。
【0033】
図2に示されるように、本実施形態では、全ての開口141が、上面視において溝113と重なる位置に形成されている。尚、図示の便宜上、
図2においては、開口141の直径が溝113の幅よりも大きくなっているように描かれているが、
図1に示されるように、実際の開口141の直径は溝113の幅よりも小さい。開口141が溝113の内側に収まるように、開口141の位置において、溝113の幅が局所的に大きくなっていてもよい。
【0034】
図2において符号「115」が付されているのは、半導体製造装置に設けられた不図示のリフトピンが挿通される穴である。当該穴のことを、以下では「リフトピン穴115」とも称する。リフトピン穴115は計3つ形成されており、これらが120度等配となるように配置されている。リフトピン穴115を通じて上下に移動するリフトピンにより、誘電体基板100の面110に対する基板Wの着脱が行われる。
【0035】
図1に戻って説明を続ける。ベースプレート200は、誘電体基板100を支持する略円盤状の部材である。ベースプレート200は、例えばアルミニウムのような金属により形成されている。ベースプレート200のうち、
図1における上方側の面210は、接合層300を介して誘電体基板100に接合される「被接合面」となっている。
【0036】
ベースプレート200のうち、
図1における下方側の面220を除く表面の略全体には、絶縁膜230が形成されている。絶縁膜230は、例えばアルミナのような絶縁性の材料からなる膜であり、例えば溶射によって形成されている。先に述べた面210は、その全体が絶縁膜230上の面となっている。このため、面210においては、後述の開口241等が形成されている部分を除き、ベースプレート200を構成する金属は接合層300側に一切露出していない。尚、ベースプレート200のうち絶縁膜230が形成されている範囲は、
図1の例とは異なる範囲であってもよい。例えば、被接合面である面210の範囲のみ(後述の連通溝260の内面を含む)に絶縁膜230が形成されていてもよい。
【0037】
ベースプレート200の内部には、冷媒を流すための冷媒流路250が形成されている。半導体製造装置において成膜処理が行われる際には、外部から冷媒が冷媒流路250に供給され、これによりベースプレート200が冷却される。成膜処理中において基板Wで生じた熱は、空間SPのヘリウムガス、誘電体基板100、及びベースプレート200を介して冷媒へと伝えられ、冷媒と共に外部へと排出される。
【0038】
図1に示されるように、ベースプレート200には、面210から面220側に向かって垂直に伸びるガス穴240が形成されている。尚、ガス穴240は、本実施形態のように全体が直線状に伸びるように形成されていてもよいが、面220に向かう途中で屈曲するように形成されていてもよい。
【0039】
ベースプレート200おいてガス穴240は複数形成されている。それぞれのガス穴240のうち面210側の端部は、面210に形成された開口241となっている。ガス穴240のうち面220側の端部は、面220に形成された開口242となっている。ガス穴240は、本実施形態における「第2ガス穴」に該当する。ガス穴240のうち、面210に形成された開口241は、本実施形態における「第2開口」に該当する。ガス穴240は、面210側の部分において拡径されている。このため、開口241の内径は、ガス穴240のうちその他の部分における内径よりも僅かに大きい。
【0040】
ガス穴240は、先に述べたガス穴140に連通される穴であり、空間SPに向けてヘリウムガスを供給するための経路の一部となっている。ただし、ガス穴240は、上面視においてガス穴140とは異なる位置に設けられている。また、ガス穴240の個数は、ガス穴140の個数とは異なっている。
【0041】
図3は、ベースプレート200のうち面210のみを、
図2と同様に上面視で描いた図である。
図3に示されるように、本実施形態では、ガス穴240は計4つ形成されており、それぞれの端部である開口241が、面210において4つ形成されている。
図2と
図3とを対比すると明らかなように、上面視において開口241が形成されている位置は、誘電体基板100の開口141や開口142が形成されている位置とは異なっている。後に説明するように、互いに異なる位置にあるガス穴140とガス穴240との間は、ベースプレート200に設けられた連通溝260によって連通されている。
【0042】
図3に示されるように、ベースプレート200には、貫通穴213と、リフトピン穴215と、が形成されており、これらの端部が面210において開口している。
【0043】
貫通穴213は、先に述べた通り給電路13を通すための穴である。貫通穴213は、吸着電極130の数に対応して2つ形成されている。リフトピン穴215は、リフトピン穴115と同様にリフトピンが挿通される穴である。リフトピン穴215は計3つ設けられており、上面視においてリフトピン穴115のそれぞれと対応する位置に形成されている。
【0044】
図1に戻って説明を続ける。接合層300は、誘電体基板100とベースプレート200との間に設けられた層であって、両者を接合している。接合層300は、絶縁性の材料からなる接着材を硬化させたものである。このような接着剤としては、例えばポリイミド系の接着剤を用いることができる。
【0045】
図4は、静電チャック10から接合層300のみを取り出して、これを
図2や
図3と同様に上面視で描いた図である。
図4に示されるように、接合層300には複数の貫通穴が形成されている。これらの貫通穴には、電極穴313と、リフトピン穴315と、連通穴340と、が含まれる。
【0046】
電極穴313は、貫通穴213と同様に給電路13を通すための穴である。電極穴313は計2つ設けられており、上面視において貫通穴213のそれぞれと対応する位置に形成されている。
【0047】
リフトピン穴315は、リフトピン穴215と同様にリフトピンが挿通される穴である。リフトピン穴315は計3つ設けられており、上面視においてリフトピン穴215のそれぞれと対応する位置に形成されている。
【0048】
連通穴340は、ガス穴140に向けてヘリムウガスを通過させるために形成された穴である。連通穴340は開口142と同じ数だけ設けられており、上面視において開口142と重なる位置のそれぞれに形成されている。連通穴340は円形の穴であり、その内径は、開口142の内径よりも僅かに大きい。
【0049】
図3を再び参照しながら、連通溝260の構成について説明する。先に述べたように、連通溝260は、互いに異なる位置にあるガス穴140とガス穴240との間を連通させるために、面210に設けられた溝である。それぞれの連通溝260は、出口部263と、接続部261、262と、を含む。
【0050】
出口部263は、連通溝260を通ったヘリウムガスの出口となる部分である。出口部263は、誘電体基板100の面120に形成された開口142と同じ数だけ形成されており、それぞれの開口142と対応する位置に設けられている。つまり、上面視において開口142と重なる位置のそれぞれに、出口部263が設けられている。出口部263は略円形の凹部であり、その内径は開口142の内径よりも僅かに大きい。出口部263と開口142との間の部分では、接合層300に上記の連通穴340が形成されている。
【0051】
接続部261、262は、開口241と出口部263との間を繋ぐ流路として形成された溝である。これらのうち、接続部262は、複数の出口部263を繋ぐように周方向に沿って円弧状に伸びる溝となっている。接続部261は、開口241から、その外周側にある接続部262に向かって直線状に伸びる溝となっている。
【0052】
本実施形態では、計4つの連通溝260が形成されており、上面視においてこれらが外周側から内周側に向かって並ぶように配置されている。それぞれの連通溝260は、4つに分けられた空間SPのそれぞれに対応しており、各空間SPの直下に設けられている。
【0053】
図5には、最も内周側にある連通溝260を通るヘリウムガスの流れが、模式的に描かれている。同図の矢印AR1は、ベースプレート200のガス穴240を通るヘリウムガスの流れを表している。ヘリウムガスは、開口241から接続部261を通って接続部262へと流入する(矢印AR2)。その後、ヘリウムガスは接続部262に沿って流れながら(矢印AR3)、それぞれの出口部263から、誘電体基板100のガス穴140へと流入し(矢印AR4)、ガス穴140を通って空間SPへと供給される。その他の連通溝260においても、上記と同様にヘリウムガスが流れる。
【0054】
以上のように、静電チャック10では、開口142(第1開口)の位置と開口241(第2開口)の位置とを互いに異ならせた上で、両者の間を連通させる連通溝260を、ベースプレート200の面210に形成している。
【0055】
このような構成としたことの利点について、
図6を参照しながら説明する。
図6(A)には、比較例に係る静電チャックの構成が示されている。この比較例では、開口142と開口241とが互いに同じ位置、すなわち、上面視において互いに重なる位置に形成されている。接合層300には、開口142と開口241との間を繋ぐ貫通穴が形成されており、当該貫通穴を通じてガス穴140とガス穴240とが互いに連通されている。つまりこの比較例では、ガス穴140及びガス穴240からなるヘリウムガスの流路の全体が、接合層300を垂直に且つ直前状に貫くよう形成されている。
【0056】
ベースプレート200に設けられたガス穴240の内面においては金属が露出している。
図6(A)に示される点P1は、ガス穴240の内面で露出している金属表面のうち、最も上方側にある部分を表している。この比較例の構成においては、点P1が、直線状の空間を通じて基板Wと対向した状態となっている。このような構成においては、所謂「沿面距離」が短いため、矢印AR11で示されるような略直線状の経路に沿った放電が比較的生じやすい。
【0057】
これに対し、本実施形態では上記のように、開口142の位置と開口241の位置とを互いに異ならせた上で、両者の間を連通させる連通溝260を、ベースプレート200の面210に形成している。このような構成においては、
図6(B)に示されるように、ガス穴140の直下において、ガス穴240の内面が基板W側に向けて露出することがない。ガス穴240の内面で露出した金属から、ガス穴140等を通じて基板Wに至るまでの経路は、矢印AR12で示されるように屈曲した経路となる。上記比較例に比べて沿面距離が長く確保されるので、当該経路に沿った放電の発生を十分に抑制することが可能となっている。
【0058】
図5、6に示されるように、それぞれの連通溝260は、1つの開口241が、接続部261、262を介して複数の出口部263に繋がるように形成されている。その結果、本実施形態では、1つの開口241が、連通溝260を介して複数の開口142に連通されている。このような構成においては、開口241の数を開口142の数よりも少なくすることができる。放電の起点となり得る開口241の数を減少させることで、放電の発生を更に抑制することが可能となっている。
【0059】
尚、1つの連通溝260に繋がる開口241の数は2つ以上であってもよい。いずれの場合であっても、1つの連通溝260に設けられた出口部263の数に比べて、当該連通溝260に繋がる開口241の数が少なくなっていることが好ましい。
【0060】
先に述べたように、ベースプレート200のうち接合層300側の面210には、その全体を覆うように絶縁膜230が設けられている。絶縁膜230は、連通溝260の内面全体をも覆っている。このような構成においては、開口142の直下となる部分においてベースプレート200の金属表面が露出しないので、放電の発生を更に抑制することが可能となる。絶縁膜230としては、本実施形態のように溶射により形成されたアルミナの膜が好ましいが、他の製法によって形成された膜であってもよく、他の材料からなる膜であってもよい。尚、絶縁膜230によって覆われる範囲は、連通溝260の内面のうち、上面視において開口142と重なる部分を少なくとも含んでいるのであれば、面210の一部のみであってもよい。
【0061】
静電チャック10を製造する方法について簡単に説明する。先ず、
図7に示されるように、誘電体基板100、ベースプレート200、及び接着剤シート300Aのそれぞれを準備する。その後、接着剤シート300Aを用いて誘電体基板100とベースプレート200との間を接合する。
【0062】
誘電体基板100は、接合前において吸着電極130やガス穴140、開口142、シールリング111等が予め形成された状態となっている。これらの形成方法としては、公知となっている種々の方法を採用することができる。
【0063】
ベースプレート200も同様に、接合前において冷媒流路250やガス穴240、開口241等が予め形成された状態となっている。これらの形成方法としては、公知となっている種々の方法を採用することができる。また、ベースプレート200には、接合前において
図3の連通溝260も予め形成されており、連通溝260が開口241に繋がった状態となっている。連通溝260の内面等を覆う絶縁膜230も、接合前において予め形成されている。
【0064】
接着剤シート300Aは、接合時において硬化して接合層300となる絶縁性の部材である。つまり、接着剤シート300Aは「接着剤」なのであるが、硬化前の段階においても液状とはなっておらず、可撓性を有する固形のシート状の部材となっている。このような接着剤シート300Aとしては、例えば、ポリイミド系、エポキシ系、シリコーン系、アクリル系などの接着剤フィルム等を用いることができる。接着剤フィルムとしては、熱伝導に優れたものや絶縁性が高いものを好適に用いることができる。
【0065】
接着剤シート300Aは、上記のように硬化前においても固形のシート状となっているので、例えば、金型を用いた穴抜き加工等を施すことにより、接合前において連通穴340や電極穴313、リフトピン穴315等を予め形成しておくことができる。
【0066】
以上のような誘電体基板100、ベースプレート200、及び、接着剤シート300Aを用意した後、
図7に示されるように、誘電体基板100とベースプレート200との間に接着剤シート300Aを挟み込む。具体的には、互いに異なる位置にある開口142と開口241との間が連通溝260によって連通されるように、誘電体基板100のうち開口142が形成されている面120と、ベースプレート200のうち開口241が形成されている面210と、を互いに対向させ、誘電体基板100とベースプレート200との間に接着剤シート300Aを挟み込む。
【0067】
以上のように接着剤シート300Aを挟み込んだ状態で、誘電体基板100、ベースプレート200、及び接着剤シート300Aの全体を所定温度まで加熱する。加熱により、接着剤シート300Aは、面120及び面210の両方に対し接合された状態で硬化し、
図1の接合層300となる。接着剤シート300Aにおいて予め形成されていた連通穴340等の貫通穴は、接着剤シート300Aが硬化した後においても概ね元の形状を維持する。このため、ベースプレート200に形成されていた連通溝260に接着剤シート300Aの一部が入り込むことは無く、連通溝260も元の形状を維持する。以上のような方法により、
図1に示される構成の静電チャック10が完成する。
【0068】
以上のように、本実施形態の接合層300は、予め連通穴340等が形成された固形の接着剤シート300Aを硬化させたものである。接着剤シート300Aを用いることにより、接合前の段階で、接合層300となる部分(接着剤シート300A)に対し連通穴340等を容易に形成しておくことができる。また、接着剤を硬化させる過程において、連通溝260が変形したり塞がったりしてしまうことを確実に防止することができる。
【0069】
尚、連通溝260への接着剤の侵入等を何らかの方法で防止し得るのであれば、接合層300となる接着剤として、接着剤シート300Aに替えて液状の接着剤を用いることもできる。例えば、液状の接着剤の侵入を防止する「堤防」となるような紐状の固形材料を、連通溝260や連通穴340等の外周に沿って予め配置した後に接着を行えば、本実施形態と同様の接合層300を形成することができる。
【0070】
ベースプレート200に形成される連通溝260の形状は、適宜変更することができる。
図8には、変形例に係る静電チャック10の連通溝260が、
図5と同様の方法で描かれている。この変形例では、誘電体基板100に形成されたガス穴140の個数と、ベースプレート200に形成されたガス穴240の個数と、が互いに同じ数となっている。このため、ベースプレート200の面210に設けられたそれぞれの連通溝260は、接続部261及び出口部263のそれぞれを1つずつ有しており、開口241と出口部263との間が1本の接続部261で直接繋がっている。このように、開口241のそれぞれが、連通溝260を介して1つの開口142のみに連通されている構成としてもよい。
【0071】
以上、具体例を参照しつつ本実施形態について説明した。しかし、本開示はこれらの具体例に限定されるものではない。これら具体例に、当業者が適宜設計変更を加えたものも、本開示の特徴を備えている限り、本開示の範囲に包含される。前述した各具体例が備える各要素およびその配置、条件、形状などは、例示したものに限定されるわけではなく適宜変更することができる。前述した各具体例が備える各要素は、技術的な矛盾が生じない限り、適宜組み合わせを変えることができる。
【符号の説明】
【0072】
10:静電チャック
100:誘電体基板
140:ガス穴
142:開口
200:ベースプレート
230:絶縁膜
240:ガス穴
241:開口
260:連通溝
300:接合層
【手続補正書】
【提出日】2023-08-30
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1ガス穴が形成された誘電体基板と、
第2ガス穴が形成されたベースプレートと、
前記誘電体基板と前記ベースプレートとの間に設けられ、絶縁性の材料により形成された接合層と、を備え、
前記誘電体基板のうち前記接合層側の面には、前記第1ガス穴の端部である第1開口が形成されており、
前記ベースプレートのうち前記接合層側の面には、前記第1開口とは異なる位置において、前記第2ガス穴の端部である第2開口が形成されており、
前記ベースプレートのうち前記接合層側の面には、前記第1開口と前記第2開口との間を連通させる連通溝が形成されており、
前記ベースプレートのうち前記連通溝の内面には、絶縁膜が設けられていることを特徴とする、静電チャック。
【請求項2】
前記第2開口が、前記連通溝を介して複数の前記第1開口に連通されていることを特徴とする、請求項1に記載の静電チャック。
【請求項3】
前記絶縁膜が溶射により形成された膜であることを特徴とする、請求項1に記載の静電チャック。
【請求項4】
前記接合層が、固形の接着剤シートを硬化させたものであることを特徴とする、請求項1に記載の静電チャック。
【請求項5】
第1ガス穴と、前記第1ガス穴の端部である第1開口と、が形成されている誘電体基板を準備する工程と、
第2ガス穴と、前記第2ガス穴の端部である第2開口に繋がる連通溝と、前記連通溝の内面を覆う絶縁膜と、が形成されているベースプレートを準備する工程と、
絶縁性の部材である固形の接着剤シートを準備する工程と、
互いに異なる位置にある前記第1開口と前記第2開口との間が前記連通溝によって連通されるように、前記誘電体基板のうち前記第1開口が形成されている面と、前記ベースプレートのうち前記第2開口が形成されている面と、を互いに対向させ、前記誘電体基板と前記ベースプレートとの間に前記接着剤シートを挟み込む工程と、
前記接着剤シートを硬化させる工程と、を含むことを特徴とする、静電チャックの製造方法。