IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ TOTO株式会社の特許一覧

<>
  • 特開-静電チャック及びその製造方法 図1
  • 特開-静電チャック及びその製造方法 図2
  • 特開-静電チャック及びその製造方法 図3
  • 特開-静電チャック及びその製造方法 図4
  • 特開-静電チャック及びその製造方法 図5
  • 特開-静電チャック及びその製造方法 図6
  • 特開-静電チャック及びその製造方法 図7
  • 特開-静電チャック及びその製造方法 図8
  • 特開-静電チャック及びその製造方法 図9
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024119233
(43)【公開日】2024-09-03
(54)【発明の名称】静電チャック及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/683 20060101AFI20240827BHJP
   C23C 16/458 20060101ALI20240827BHJP
   H01L 21/31 20060101ALN20240827BHJP
   H01L 21/3065 20060101ALN20240827BHJP
【FI】
H01L21/68 R
C23C16/458
H01L21/31 F
H01L21/302 101G
【審査請求】有
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023025987
(22)【出願日】2023-02-22
(71)【出願人】
【識別番号】000010087
【氏名又は名称】TOTO株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100140486
【弁理士】
【氏名又は名称】鎌田 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100079108
【弁理士】
【氏名又は名称】稲葉 良幸
(74)【代理人】
【識別番号】100121843
【弁理士】
【氏名又は名称】村井 賢郎
(74)【代理人】
【識別番号】100170058
【弁理士】
【氏名又は名称】津田 拓真
(72)【発明者】
【氏名】宮崎 俊哉
(72)【発明者】
【氏名】白石 純
(72)【発明者】
【氏名】籾山 大
(72)【発明者】
【氏名】板倉 郁夫
【テーマコード(参考)】
4K030
5F004
5F045
5F131
【Fターム(参考)】
4K030CA04
4K030DA06
4K030GA02
4K030JA06
4K030KA14
4K030KA26
4K030KA47
4K030LA12
4K030LA15
5F004AA01
5F004BB18
5F004BB22
5F004BB25
5F004BD03
5F004BD04
5F045AA08
5F045BB02
5F045DP02
5F045EJ03
5F045EK05
5F131AA02
5F131CA02
5F131CA03
5F131DA33
5F131DA42
5F131EA03
5F131EB11
5F131EB14
5F131EB15
5F131EB17
5F131EB18
5F131EB54
5F131EB72
5F131EB78
5F131EB79
5F131EB82
5F131EB84
(57)【要約】
【課題】基板の面内温度分布のばらつきを抑制することのできる静電チャック、を提供する。
【解決手段】静電チャック10は、基板Wが載置される面110を有し、面110を貫く貫通穴(ガス穴150及びリフトピン穴160)が形成された誘電体基板100と、誘電体基板100のうち面110とは反対側の面120に設けられた電極端子121と、誘電体基板100の面120に接合されるベースプレート200と、誘電体基板100とベースプレート200との間に設けられ、絶縁性の材料により形成された接合層300と、を備える。面110に対し垂直な方向から見た場合において、接合層300のうち、上記の貫通穴及び電極端子121のいずれとも重ならない位置には、空間340が形成されている。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
被吸着物が載置される載置面を有し、当該載置面を貫く貫通穴が形成された誘電体基板と、
前記誘電体基板のうち前記載置面とは反対側の面、に設けられた電極端子と、
前記誘電体基板のうち前記載置面とは反対側の面、に接合されるベースプレートと、
前記誘電体基板と前記ベースプレートとの間に設けられ、絶縁性の材料により形成された接合層と、を備え、
前記載置面に対し垂直な方向から見た場合において、
前記接合層のうち、前記貫通穴及び前記電極端子のいずれとも重ならない位置には、空間が形成されていることを特徴とする静電チャック。
【請求項2】
前記載置面に対し垂直な方向から見た場合において、
前記接合層の単位面積あたりにおいて前記空間の面積の占める割合、のことを空間割合としたときに、
前記接合層の中央部における前記空間割合が、前記接合層の外周部における前記空間割合よりも大きいことを特徴とする、請求項1に記載の静電チャック。
【請求項3】
前記空間は複数形成されており、
前記接合層の中央部における前記空間の密度が、前記接合層の外周部における前記空間の密度よりも高いことを特徴とする、請求項2に記載の静電チャック。
【請求項4】
前記空間は複数形成されており、
前記接合層の中央部に配置されたそれぞれの前記空間が、前記接合層の外周部に配置されたそれぞれの前記空間よりも大きいことを特徴とする、請求項2に記載の静電チャック。
【請求項5】
前記空間は、前記載置面に対し垂直な方向に沿って前記接合層を貫通するように形成されていることを特徴とする、請求項1に記載の静電チャック。
【請求項6】
前記ベースプレートのうち前記接合層側の面には、絶縁膜が設けられていることを特徴とする、請求項1に記載の静電チャック。
【請求項7】
前記絶縁膜が溶射により形成された膜であることを特徴とする、請求項6に記載の静電チャック。
【請求項8】
前記接合層が、凹部又は貫通穴である空間部が予め形成された固形の接着剤シート、を硬化させたものであることを特徴とする、請求項1に記載の静電チャック。
【請求項9】
前記ベースプレートには、冷媒を流すための冷媒流路が形成されており、
前記載置面に対し垂直な方向から見た場合において、
前記接合層の単位面積あたりにおいて前記空間の面積の占める割合、のことを空間割合としたときに、
前記接合層のうち前記冷媒流路の上流側と重なる第1部分における前記空間割合が、前記接合層のうち前記冷媒流路の下流側と重なる第2部分における前記空間割合よりも大きいことを特徴とする、請求項1に記載の静電チャック。
【請求項10】
前記載置面に対し垂直な方向から見た場合において、
前記第1部分は、前記第2部分よりも中央寄りとなる位置にあることを特徴とする、請求項9に記載の静電チャック。
【請求項11】
被吸着物が載置される載置面を有し、当該載置面を貫く貫通穴が形成されており、前記載置面とは反対側の面には電極端子が設けられた誘電体基板を準備する工程と、
ベースプレートを準備する工程と、
絶縁性の部材であって、凹部又は貫通穴である空間部が形成された固形の接着剤シートを準備する工程と、
前記誘電体基板のうち前記載置面とは反対側の面と、前記ベースプレートと、を互いに対向させ、前記貫通穴及び前記電極端子のいずれとも前記空間部が重ならないように、前記誘電体基板と前記ベースプレートとの間に前記接着剤シートを挟み込む工程と、
前記接着剤シートを硬化させる工程と、を含むことを特徴とする、静電チャックの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は静電チャック及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
例えばCVD装置やエッチング装置のような半導体製造装置には、処理の対象となるシリコンウェハ等の基板を吸着し保持するための装置として、静電チャックが設けられる。静電チャックは、吸着電極が設けられた誘電体基板と、誘電体基板を支持するベースプレートと、を備え、これらが互いに接合された構成を有する。吸着電極は、誘電体基板に内蔵されるのが一般的であるが、金属であるベースプレートが吸着電極として用いられる場合もある。吸着電極に電圧が印加されると静電力が生じ、誘電体基板上に載置された基板が吸着され保持される。
【0003】
エッチング等の処理中においては、基板の温度を適切な温度に維持する必要がある。このため、下記特許文献1に記載されているように、冷却用のガスを基板と誘電体基板との間に供給することや、ベースプレートの冷媒流路に冷媒を通すこと等が行われている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2019-165193号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
処理中においては、上記のように基板の温度を適切な温度に維持することに加え、基板の各部における温度分布(つまり面内温度分布)のばらつきを可能な限り小さくすることも求められる。基板の面内温度分布を均一に近づけるための対策として、冷却用ガスの供給経路を複数設けて経路毎に圧力等を制御したり、冷媒流路を複数設けて流路毎に冷媒温度を調整したりする等の対策が取られることもある。しかしながら、このような対策のみでは、基板の面内温度分布のばらつきを十分には抑制できない場合も生じ得る。
【0006】
本発明はこのような課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、基板の面内温度分布のばらつきを抑制することのできる静電チャック、を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明に係る静電チャックは、被吸着物が載置される載置面を有し、当該載置面を貫く貫通穴が形成された誘電体基板と、誘電体基板のうち載置面とは反対側の面、に設けられた電極端子と、誘電体基板のうち載置面とは反対側の面、に接合されるベースプレートと、誘電体基板とベースプレートとの間に設けられ、絶縁性の材料により形成された接合層と、を備える。載置面に対し垂直な方向から見た場合において、接合層のうち、貫通穴及び電極端子のいずれとも重ならない位置には、空間が形成されている。
【0008】
このような構成の静電チャックでは、接合層の空間を「断熱層」として機能させることができる。例えば、基板のうち低温となりやすい部分の直下となる位置で、接合層に空間を配置しておけば、当該位置の直上における誘電体基板及び基板の温度を上昇させ、基板の面内温度分布を均一に近づけることが可能となる。
【0009】
また、本発明に係る静電チャックでは、載置面に対し垂直な方向から見た場合において、接合層の単位面積あたりにおいて空間の面積の占める割合、のことを空間割合としたときに、接合層の中央部における空間割合が、接合層の外周部における空間割合よりも大きいことも好ましい。中央部における空間割合を大きくしておくことで、低温となる傾向のある基板の中央部の温度を上昇させ、基板の面内温度分布を均一に近づけることが可能となる。
【0010】
また、本発明に係る静電チャックでは、空間は複数形成されており、接合層の中央部における空間の密度が、接合層の外周部における空間の密度よりも高いことも好ましい。中央部における空間割合を、空間の密度を高めることによって大きくしておくことで、基板の面内温度分布を均一に近づけることが可能となる。尚、「空間の密度」とは、単位面積あたりに配置された空間の個数のことである。
【0011】
また、本発明に係る静電チャックでは、空間は複数形成されており、接合層の中央部に配置されたそれぞれの空間が、接合層の外周部に配置されたそれぞれの空間よりも大きいことも好ましい。中央部における空間割合を、それぞれの空間の大きさを調整することによって大きくしておくことで、基板の面内温度分布を均一に近づけることが可能となる。
【0012】
また、本発明に係る静電チャックでは、空間は、載置面に対し垂直な方向に沿って接合層を貫通するように形成されていることも好ましい。断熱層として機能する空間の厚さを最大限確保することで、基板に対する温度調整の効果を高めることができる。
【0013】
また、本発明に係る静電チャックでは、ベースプレートのうち接合層側の面には、絶縁膜が設けられていることも好ましい。このような構成においては、ベースプレートの表面が、接合層と絶縁膜の両方によって覆われた状態となるので、基板とベースプレートとの間における放電の発生を抑制することが可能となる。
【0014】
また、本発明に係る静電チャックでは、絶縁膜が溶射により形成された膜であることも好ましい。このような構成においては、高い絶縁性を有する膜を容易に形成し、放電の発生を抑制することが可能となる。
【0015】
また、本発明に係る静電チャックでは、接合層が、凹部又は貫通穴である空間部が予め形成された固形の接着剤シート、を硬化させたものであることも好ましい。このような構成においては、接合前の段階で、接着剤シートに対し、空間となる凹部又は貫通穴を容易に形成しておくことができる。また、接着剤を硬化させる過程において、空間が変形したり消滅したりしてしまうことを確実に防止することができる。
【0016】
また、本発明に係る静電チャックでは、ベースプレートには、冷媒を流すための冷媒流路が形成されており、載置面に対し垂直な方向から見た場合において、接合層の単位面積あたりにおいて空間の面積の占める割合、のことを空間割合としたときに、接合層のうち冷媒流路の上流側と重なる第1部分における空間割合が、接合層のうち冷媒流路の下流側と重なる第2部分における空間割合よりも大きいことも好ましい。
【0017】
半導体製造装置においては、基板の処理が完了した後に、続けて装置内のクリーニングが行われることがある。基板の処理においては、ベースプレートには低温の冷媒が供給されるが、クリーニングが開始されると、それまでよりも高温の冷媒がベースプレートに供給される。このため、クリーニングが開始された直後には、冷媒流路の上流側におけるベースプレートの温度が先に上昇し、冷媒流路の上流側におけるベースプレートの温度が遅れて上昇する。このように、クリーニングの開始時には、ベースプレートにおいて一時的な温度差が生じる。ベースプレートからの伝熱により誘電体基板においても同様の温度差が生じ得るが、誘電体基板にはセラミック焼結体が用いられることが多いので、このような温度差は好ましくない。
【0018】
その対策として、上記構成の静電チャックでは、接合層のうち冷媒流路の上流側と重なる第1部分における空間割合が、接合層のうち冷媒流路の下流側と重なる第2部分における空間割合よりも大きくなっている。ベースプレートのうち先に高温となる部分から誘電体基板への熱伝導は、第1部分によって抑制される一方で、遅れて高温となる部分から誘電体基板への熱伝導は、第2部分によって相対的に促進される。これにより、誘電体基板における温度差を抑制することができる。
【0019】
また、本発明に係る静電チャックでは、載置面に対し垂直な方向から見た場合において、第1部分は、第2部分よりも中央寄りとなる位置にあることも好ましい。
【0020】
基板の処理中においては、基板の外周部に比べて中央部が低温となる傾向がある。上記構成の静電チャックでは、空間割合の高い第1部分を中央寄りとなる位置に設けておくことで、処理中において基板の中央部の温度を上昇させ、面内温度分布を均一に近づけることが可能となる。
【0021】
本発明に係る静電チャックの製造方法は、被吸着物が載置される載置面を有し、当該載置面を貫く貫通穴が形成されており、載置面とは反対側の面には電極端子が設けられた誘電体基板を準備する工程と、ベースプレートを準備する工程と、絶縁性の部材であって、凹部又は貫通穴である空間部が形成された固形の接着剤シートを準備する工程と、誘電体基板のうち載置面とは反対側の面と、ベースプレートと、を互いに対向させ、貫通穴及び電極端子のいずれとも空間部が重ならないように、誘電体基板とベースプレートとの間に接着剤シートを挟み込む工程と、接着剤シートを硬化させる工程と、を含む。
【0022】
このような静電チャックの製造方法によれば、基板の面内温度分布のばらつきを上記のように抑制することのできる静電チャックを、容易に製造することができる。
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、基板の面内温度分布のばらつきを抑制することのできる静電チャック、を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1】第1実施形態に係る静電チャックの構成を模式的に示す断面図である。
図2図1の静電チャックが備える接合層の構成を示す図である。
図3図1の静電チャックが備える接合層の構成を示す図である。
図4】変形例における接合層の構成について説明するための図である。
図5図1の静電チャックの製造方法について説明するための図である。
図6】第2実施形態に係る静電チャックが備える、接合層の構成を示す図である。
図7】第3実施形態に係る静電チャックが備える、接合層の構成を示す図である。
図8】第4実施形態に係る静電チャックが備える、接合層の構成を示す図である。
図9】第5実施形態に係る静電チャックが備える、接合層等の構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、添付図面を参照しながら本実施形態について説明する。説明の理解を容易にするため、各図面において同一の構成要素に対しては可能な限り同一の符号を付して、重複する説明は省略する。
【0026】
第1実施形態について説明する。本実施形態に係る静電チャック10は、例えばCVD成膜装置のような不図示の半導体製造装置の内部において、処理対象となる基板Wを静電力によって吸着し保持するものである。基板Wは、例えばシリコンウェハである。静電チャック10は、半導体製造装置以外の装置に用いられてもよい。
【0027】
図1には、基板Wを吸着保持した状態の静電チャック10の構成が、模式的な断面図として示されている。静電チャック10は、誘電体基板100と、ベースプレート200と、接合層300と、を備える。
【0028】
誘電体基板100は、セラミック焼結体からなる略円盤状の部材である。誘電体基板100は、例えば高純度の酸化アルミニウム(Al)を含むが、他の材料を含んでもよい。誘電体基板100におけるセラミックスの純度や種類、添加物等は、半導体製造装置において誘電体基板100に求められる対プラズマ性等を考慮して、適宜設定することができる。
【0029】
誘電体基板100のうち図1における上方側の面110は、被吸着物である基板Wが載置される「載置面」となっている。また、誘電体基板100のうち図1における下方側の面120は、後述の接合層300を介してベースプレート200に接合される「被接合面」となっている。面110に対し垂直な方向に沿って、面110側から静電チャック10を見た場合の視点のことを、以下では「上面視」のようにも表記する。
【0030】
誘電体基板100の内部には吸着電極130が埋め込まれている。吸着電極130は、例えばタングステン等の金属材料により形成された薄い平板状の層であり、面110に対し平行となるように配置されている。給電路13を介して外部から吸着電極130に電圧が印加されると、面110と基板Wとの間に静電力が生じ、これにより基板Wが吸着保持される。吸着電極130は、所謂「双極」の電極として本実施形態のように2つ設けられていてもよいが、所謂「単極」の電極として1つだけ設けられていてもよい。
【0031】
図1においては、給電路13の全体が簡略化して描かれている。給電路13のうち誘電体基板100の内部の部分は、例えば、導電体の充填された細長いビア(穴)として構成されており、その下端には電極端子121が設けられている。電極端子121は、面110の反対側にある面120において、不図示の絶縁部材を介して埋め込まれている。給電路13のうちベースプレート200を貫いている部分は、電極端子121に一端が接続された棒状の金属(バスバー)である。ベースプレート200には、当該金属を挿通するための貫通穴270が形成されている。
【0032】
誘電体基板100と基板Wとの間には空間SPが形成されている。半導体製造装置において成膜等の処理が行われる際には、空間SPには、後述のガス穴150を介して外部から温度調整用のヘリウムガスが供給される。誘電体基板100と基板Wとの間にヘリウムガスを介在させることで、両者間の熱抵抗が調整され、これにより基板Wの温度が適温に保たれる。尚、空間SPに供給される温度調整用のガスは、ヘリウムとは異なる種類のガスであってもよい。
【0033】
吸着面である面110上にはシールリング111やドット112が設けられており、空間SPはこれらの周囲に形成されている。
【0034】
シールリング111は、最外周となる位置において空間SPを区画する壁である。それぞれのシールリング111の上端は面110の一部となっており、基板Wに当接する。尚、空間SPを分割するように複数のシールリング111が設けられていてもよい。このような構成とすることで、それぞれの空間SPにおけるヘリウムガスの圧力を個別に調整し、処理中における基板Wの表面温度分布を均一に近づけることが可能となる。
【0035】
図1等において符号「116」が付されている部分は、空間SPの底面である。以下では、当該部分のことを「底面116」とも称する。シールリング111は、次に述べるドット112と共に、面110の一部を底面116の位置まで掘り下げた結果として形成されている。
【0036】
ドット112は、底面116から突出する円形の突起である。ドット112は複数設けられており、誘電体基板100の吸着面において略均等に分散配置されている。それぞれのドット112の上端は、面110の一部となっており、基板Wに当接する。このようなドット112を複数設けておくことで、基板Wの撓みが抑制される。
【0037】
それぞれの空間SPの底面116には、溝113が形成されている。溝113は、底面116から更に面120側へと後退させるように形成された溝である。溝113は、ガス穴150から供給されるヘリウムガスを、空間SP内に素早く拡散させ、空間SP内の圧力分布を短時間のうちに略均一とすることを目的として形成されている。
【0038】
誘電体基板100には、面110から面120に向かって垂直に貫くようガス穴150が形成されている。ガス穴150は複数個形成されているが、図1においてはそのうちの1つのみが図示されている。ガス穴150のうち空間SP側の端部は、溝113の底面において開口している。ガス穴150は、誘電体基板100の面110を貫くように形成された「貫通穴」に該当する。吸着電極130のうちそれぞれのガス穴150と交差する部分には、ガス穴150との干渉を避けるための開口131が形成されている。このような開口131を形成しておくことにより、ガス穴150の内面において吸着電極130が露出しないため、基板Wと吸着電極130との間における放電が防止される。
【0039】
誘電体基板100には更に、面110から面120側に向かって垂直に貫くようリフトピン穴160が形成されている。リフトピン穴160は、半導体製造装置に設けられた不図示のリフトピンが挿通される穴である。リフトピン穴160は、計3つ形成されており、これらが120度等配となるように配置されているのであるが、図1においてはそのうちの1つのみが図示されている。リフトピン穴160を通じて上下に移動するリフトピンにより、誘電体基板100の面110に対する基板Wの着脱が行われる。リフトピン穴160は、上記のガス穴150と同様に、誘電体基板100の面110を貫くように形成された「貫通穴」に該当する。吸着電極130のうちそれぞれのリフトピン穴160と交差する部分には、リフトピン穴160との干渉を避けるための開口132が形成されている。このような開口132を形成しておくことにより、リフトピン穴160の内面において吸着電極130が露出しないため、基板Wと吸着電極130との間における放電が防止される。
【0040】
ベースプレート200は、誘電体基板100を支持するために、誘電体基板100の面120に接合される略円盤状の部材である。ベースプレート200は、例えばアルミニウムのような金属により形成されている。ベースプレート200のうち、図1における上方側の面210は、接合層300を介して誘電体基板100に接合される「被接合面」となっている。
【0041】
ベースプレート200のうち、図1における下方側の面220を除く表面の略全体には、絶縁膜230が形成されている。絶縁膜230は、例えばアルミナのような絶縁性の材料からなる膜であり、例えば溶射によって形成されている。先に述べた面210は、その全体が絶縁膜230上の面となっている。
【0042】
このような構成においては、ベースプレート200の表面が、後述の接合層300と絶縁膜230の両方によって覆われた状態となるので、基板Wとベースプレート200との間における放電の発生を抑制することが可能となる。絶縁膜230としては、本実施形態のように溶射により形成されたアルミナの膜が好ましいが、他の製法によって形成された膜であってもよく、他の材料からなる膜であってもよい。
【0043】
尚、ベースプレート200のうち絶縁膜230が形成されている範囲は、図1の例とは異なる範囲であってもよい。例えば、被接合面である面210の範囲のみに絶縁膜230が形成されていてもよい。接合層300のみによって放電を十分に防止し得る場合には、絶縁膜230は無くてもよい。
【0044】
ベースプレート200の内部には、冷媒を流すための冷媒流路280が形成されている。半導体製造装置において成膜等の処理が行われる際には、外部から冷媒が冷媒流路280に供給され、これによりベースプレート200が冷却される。処理中において基板Wで生じた熱は、空間SPのヘリウムガス、誘電体基板100、及びベースプレート200を介して冷媒へと伝えられ、冷媒と共に外部へと排出される。
【0045】
ベースプレート200には、面210から面220側に向かって垂直に伸びるガス穴250が形成されている。ガス穴250は、上面視において誘電体基板100のガス穴150と重なる位置、のそれぞれに形成されており、接合層300に設けられた貫通穴310を介してガス穴150に連通されている。ガス穴250は、誘電体基板100のガス穴150と共に、空間SPに向けてヘリウムガスを供給するための経路の一部となっている。
【0046】
尚、ガス穴250は、本実施形態のように全体が直線状に伸びるように形成されていてもよいが、面220に向かう途中で屈曲するように形成されていてもよい。また、面210側の複数のガス穴250を、ベースプレート200の内部において少数の流路に集約した上で、当該流路を面220側まで伸ばすような構成としてもよい。
【0047】
ベースプレート200には更に、面210から面220側に向かって垂直に貫くようリフトピン穴260が形成されている。リフトピン穴260は、誘電体基板100のリフトピン穴160と同様に、半導体製造装置に設けられた不図示のリフトピンが挿通される穴である。リフトピン穴260は、上面視において誘電体基板100のリフトピン穴160と重なる位置、のそれぞれに形成されており、接合層300に設けられた貫通穴320を介してリフトピン穴160に連通されている。
【0048】
接合層300は、誘電体基板100とベースプレート200との間に設けられた層であって、両者を接合している。接合層300は、絶縁性の材料からなる接着材を硬化させたものである。このような接着剤としては、例えばポリイミド系の接着剤を用いることができる。
【0049】
図2は、接合層300を上面視で描いた図である。同図に示されるように、接合層300には複数の貫通穴が形成されている。これらの貫通穴には、貫通穴310、320、330、340が含まれる。
【0050】
貫通穴310は先に述べた通り、ガス穴150とガス穴250との間を連通させるために形成された穴である。貫通穴320は先に述べた通り、リフトピン穴160と。リフトピン穴260との間を連通させるために形成された穴である。
【0051】
貫通穴330は、上面視において電極端子121や貫通穴270と重なる位置のそれぞれに形成されている。図1に示されるように、貫通穴330は、給電路13を通すために形成された穴である。
【0052】
誘電体基板100には、吸着電極130に加えて、例えばRF電極のような他の電極が埋め込まれていてもよい。この場合、誘電体基板100の面120には、当該電極に繋がる電極端子が設けられる。また、接合層300のうち当該電極端子と上面視において重なる位置のそれぞれにおいては、電極端子に繋がる給電路を通すための更なる貫通穴が形成される。
【0053】
貫通穴340は、上記の貫通穴310、320、330、及び電極端子121のいずれとも重ならない位置に形成された穴である。換言すれば、貫通穴340は、上面視において、誘電体基板100に形成された貫通穴(ガス穴150やリフトピン穴160)、及び電極端子121のいずれとも重ならない位置に形成されている。それぞれの貫通穴340の内側に形成された空間は、誘電体基板100とベースプレート200との間の伝熱を妨げる「断熱層」として機能する。貫通穴340の内側に形成された空間のことを、以下では「空間340」とも表記する。
【0054】
本実施形態に係る静電チャック10では、処理中における基板Wの面内温度分布が均一となるように、断熱層である空間340を接合層300内に複数配置している。例えば、基板Wのうち低温となりやすい部分の直下となる位置で、接合層300に空間340を配置しておけば、当該位置の直上においてはベースプレート200による冷却が抑制されるので、誘電体基板100及び基板Wの温度が局所的に上昇する。これにより、基板Wの面内温度分布を均一に近づけることが可能となる。
【0055】
空間340の具体的な配置について説明する。空間340の配置がより明確となるように、図3では、図2から貫通穴310、320、330の図示を省略しており、空間340のみを図示してある。
【0056】
本実施形態においては、接合層300において空間340は複数形成されており、いずれの空間340も上面視で円形の空間となっている。また、それぞれの空間340の形状は全て同じである。
【0057】
ここで、載置面である面110に対し垂直な方向から見た場合において、接合層300の単位面積あたりにおいて空間340の面積が占めている割合、のことを「空間割合」と定義する。「単位面積」の大きさは特に限定されないが、図3において点線DL1で囲まれた領域のように、最も大きな空間340を複数個以上包含し得る程度の面積を、上記の「単位面積」として設定すればよい。
【0058】
図3に示されるように、本実施形態では、空間340が接合層300の全体において均等には配置されていない。具体的には、接合層300の中央部における空間割合が、接合層300の外周部における空間割合よりも大きくなるように、複数の空間340が配置されている。「接合層300の中央部」とは、例えば、図3において点線DL1で囲まれた領域のことであり、「接合層300の外周部」とは、例えば、図3において点線DL2で囲まれた領域のことである。点線DL1、DL2のそれぞれで囲まれた領域の広さは互いに同一である。空間割合は、それぞれの点線で囲まれた領域において、当該領域内に含まれる空間340の総面積が占める割合、ということもできる。
【0059】
成膜やエッチング等の処理を基板Wの全体で均等に行うためには、処理中において基板Wの面内温度分布を可能な限り均一とすることが望ましい。しかしながら、基板Wの外周部は、基板Wの中央部に比べて静電チャック10による冷却が行われにくく、中央部よりも高温となる傾向がある。換言すれば、基板Wの処理中においては、基板Wの外周部に比べて中央部の方が低温となる傾向がある。
【0060】
そこで、本実施形態に係る静電チャック10では、接合層300の中央部における空間割合を、接合層300の外周部における空間割合よりも大きくしている。基板Wのうち低温となりやすい中央部は、空間340の配置によってベースプレート200から冷却されにくくなるので、中央部の温度は上昇し外周部の温度に近づくこととなる。これにより、基板Wの面内温度分布を均一に近づけることが可能となる。
【0061】
本実施形態では、複数形成された空間340のそれぞれの形状を同一とした上で、接合層300の中央部における空間340の密度が、接合層300の外周部における空間340の密度よりも高くなるように、それぞれの空間340を配置している。接合層300の中央部における空間割合を、空間340の密度を高めることによって大きくしておくことで、基板Wの面内温度分布を均一に近づけることができる。尚、「空間340の密度」とは、単位面積あたりに配置された空間340の個数のことである。
【0062】
図1図4(A)に示されるように、それぞれの空間340は、載置面である面110に対し垂直な方向に沿って接合層300を貫通する「貫通穴」として形成されている。このような態様に換えて、図4(B)に示される変形例のように、ベースプレート200側に底部341を有する「有底の穴」の内部空間として、それぞれの空間340が形成されていてもよい。つまり、「貫通穴」ではなく「凹部」の内部空間として、空間340が形成されていてもよい。ただし、断熱層として機能する空間340の厚さを最大限確保し、基板Wに対する温度調整の効果をより高めるという観点においては、本実施形態のように、貫通穴の内部空間として空間340を形成した方が好ましい。
【0063】
静電チャック10を製造する方法について簡単に説明する。先ず、図5に示されるように、誘電体基板100、ベースプレート200、及び接着剤シート300Aのそれぞれを準備する。その後、接着剤シート300Aを用いて誘電体基板100とベースプレート200との間を接合する。
【0064】
誘電体基板100は、接合前において、面110を貫くガス穴150やリフトピン穴160、吸着電極130、及び電極端子121等が予め形成された状態となっている。これらの形成方法としては、公知となっている種々の方法を採用することができる。
【0065】
同様に、ベースプレート200も、接合前において、ガス穴250やリフトピン穴260、冷媒流路280、及び絶縁膜230等が予め形成された状態となっている。これらの形成方法としては、公知となっている種々の方法を採用することができる。
【0066】
接着剤シート300Aは、接合時において硬化して接合層300となる絶縁性の部材である。つまり、接着剤シート300Aは「接着剤」なのであるが、硬化前の段階においても液状とはなっておらず、可撓性を有する固形のシート状の部材となっている。このような接着剤シート300Aとしては、例えば、ポリイミド系、エポキシ系、シリコーン系、アクリル系などの接着剤フィルム等を用いることができる。接着剤フィルムとしては、熱伝導に優れたものや絶縁性が高いものを好適に用いることができる。
【0067】
接着剤シート300Aは、上記のように硬化前においても固形のシート状となっているので、例えば、金型を用いた穴抜き加工等を施すことにより、接合前において貫通穴310、320、330、340等を予め形成しておくことができる。貫通穴340は、最終的には空間340となるように予め接着剤シート300Aに形成された穴であって、本実施形態における「空間部」に該当する。
【0068】
以上のような誘電体基板100、ベースプレート200、及び、貫通穴340等が設けられた接着剤シート300Aを用意した後、図5に示されるように、誘電体基板100とベースプレート200との間に接着剤シート300Aを挟み込む。具体的には、誘電体基板100の面120と、ベースプレート200の面210と、を互いに対向させ、ガス穴150やリフトピン穴160、及び電極端子121のいずれとも貫通穴340が重ならないように、誘電体基板100とベースプレート200との間に接着剤シート300Aを挟み込む。
【0069】
以上のように接着剤シート300Aを挟み込んだ状態で、誘電体基板100、ベースプレート200、及び接着剤シート300Aの全体を所定温度まで加熱する。加熱により、接着剤シート300Aは、面120及び面210の両方に対し接合された状態で硬化し、図1の接合層300となる。接着剤シート300Aにおいて予め形成されていた貫通穴340等は、接着剤シート300Aが硬化した後においても概ね元の形状を維持している。以上のような方法により、図1に示される構成の静電チャック10が完成する。
【0070】
以上のように、本実施形態の接合層300は、貫通穴340が予め形成された固形の接着剤シート300Aを硬化させたものである。接着剤シート300Aを用いることにより、接合前の段階で、接合層300となる部分(接着剤シート300A)に対し所定形状の貫通穴340を容易に形成しておくことができる。また、接着剤を硬化させる過程において、空間340が変形したり消滅したりしてしまうことを確実に防止することができる。
【0071】
尚、硬化時における空間340等の変形を何らかの方法で防止し得るのであれば、接合層300となる接着剤として、接着剤シート300Aに替えて液状の接着剤を用いることもできる。例えば、液状の接着剤の侵入を防止する「堤防」となるような紐状の固形材料を、空間340等となる領域の外周に沿って予め配置した後に接着を行えば、本実施形態と同様の接合層300を形成することができる。
【0072】
図4(B)に示される変形例のように、ベースプレート200側に底部341を有する「有底の穴」の内部空間として、それぞれの空間340を形成する場合には、接着剤シート300Aの当該位置に、貫通穴ではなく有底の穴(つまり凹部)を予め形成しておけばよい。この場合、接着剤シート300Aに形成された凹部が、最終的に空間340となる「空間部」に該当することとなる。
【0073】
第2実施形態について説明する。以下では、第1実施形態と異なる点について主に説明し、第1実施形態と共通する点については適宜説明を省略する。
【0074】
本実施形態では、接合層300に形成された空間340の配置において第1実施形態と異なっている。図6には、本実施形態における接合層300の構成が、図3と同様の方法で模式的に描かれている。
【0075】
本実施形態においても第1実施形態と同様に、接合層300において空間340は複数形成されており、いずれの空間340も上面視で円形の空間となっている。また、それぞれの空間340の形状は全て同じである。
【0076】
図6に示されるように、本実施形態では、接合層300の中心から外周側に行くに従って、空間340の密度が(段階的にではなく)次第に疎となるように、それぞれの空間340が配置されている。このため、先に述べた「空間割合」は、接合層300の中心から外周側に行くに従って次第に小さくなっている。このような態様であっても、接合層300の中央部(例えば点線DL1で囲まれた領域)における空間割合が、接合層300の外周部(例えば点線DL2で囲まれた領域)における空間割合よりも大きくなるため、第1実施形態で説明したものと同様の効果を奏する。
【0077】
第3実施形態について説明する。以下では、第1実施形態と異なる点について主に説明し、第1実施形態と共通する点については適宜説明を省略する。
【0078】
本実施形態でも、接合層300に形成された空間340の配置において第1実施形態と異なっている。図7には、本実施形態における接合層300の構成が、図3と同様の方法で模式的に描かれている。
【0079】
本実施形態においても第1実施形態と同様に、接合層300において空間340は複数形成されており、いずれの空間340も上面視で円形の空間となっている。ただし、それぞれの空間340の形状は全て同じとはなっていない。本実施形態の空間340には、直径が比較的大きな空間340Aと、直径が比較的小さな空間340Bと、が含まれる。
【0080】
空間340Aは、接合層300のうち中心に近い領域に配置されており、空間340Bは、その外側の領域に配置されている。つまり、接合層300の中央部に配置されたそれぞれの空間340Aが、接合層300の外周部に配置されたそれぞれの空間340Bよりも大きくなっている。その結果、接合層300の中央部(例えば点線DL1で囲まれた領域)における空間割合は、外周部(例えば点線DL2で囲まれた領域)における空間割合よりも大きくなっている。このように、中央部の空間割合を、それぞれの空間340の大きさを調整することによって大きくした構成でも、第1実施形態で説明したものと同様の効果を奏することができる。
【0081】
尚、接合層300の中心から外周側に行くに従って、空間340が(段階的にではなく)次第に大きくなっていくような態様としてもよい。
【0082】
第4実施形態について説明する。以下では、第1実施形態と異なる点について主に説明し、第1実施形態と共通する点については適宜説明を省略する。
【0083】
本実施形態でも、接合層300に形成された空間340の配置において第1実施形態と異なっている。図8には、本実施形態における接合層300の構成が、図3と同様の方法で模式的に描かれている。同図に示されるように、本実施形態の空間340は、接合層300において1つだけ形成されており、接合層300の中心から螺旋状に伸びるように形成されている。空間340の幅寸法は全体において均一である。螺旋状に伸びる空間340のうち、径方向に沿って互いに隣り合う部分同士の間隔は、接合層300の中心から外周側に行くに従って次第に大きくなっている。例えば、図8に示される寸法L2は、その内側の寸法L1よりも大きい。
【0084】
その結果、接合層300の中央部(例えば点線DL1で囲まれた領域)における空間割合は、外周部(例えば点線DL2で囲まれた領域)における空間割合よりも大きくなっている。このような構成でも、第1実施形態で説明したものと同様の効果を奏することができる。
【0085】
第5実施形態について説明する。以下では、第1実施形態と異なる点について主に説明し、第1実施形態と共通する点については適宜説明を省略する。
【0086】
図9(A)には、本実施形態における接合層300の構成が、図3と同様の方法で模式的に描かれている。本実施形態においても第1実施形態と同様に、接合層300において空間340は複数形成されており、いずれの空間340も上面視で円形の空間となっている。また、それぞれの空間340の形状は全て同じである。ただし、本実施形態における空間340は、接合層300の中央部、具体的には、点線DL11で示される領域の内側にのみ配置されており、当該領域の外側には配置されていない。
【0087】
図9(B)には、本実施形態のベースプレート200に形成された冷媒流路280の形状が、上面視で模式的に描かれている。尚、図9(B)では、ベースプレート200のうち面210の内側の部分のみが描かれているが、冷媒流路280が、上面視において面210の外側の領域まで伸びている態様であってもよい。図9(B)の点線DL12は、上面視において点線DL11と重なる部分を表している。
【0088】
図9(B)に示されるように、ベースプレート200には、入口部281と出口部282とが設けられている。入口部281は、ベースプレート200に外部から供給される冷媒の入口であり、出口部282は、冷媒流路280を通った冷媒の出口である。これらはいずれも、ベースプレート200の面220に形成された穴であって、流路FPに繋がっている。
【0089】
本実施形態の冷媒流路280は単一の流路であって、螺旋状に伸びるように形成されている。その一端に設けられた入口部281は、上面視における面210の中心もしくはその近傍となる位置に設けられており、点線DL12で囲まれた領域の内側にある。冷媒流路280の他端に設けられた出口部282は、上面視における面210の外周端近傍となる位置に設けられており、点線DL12で囲まれた領域の外側にある。
【0090】
図9(A)において、接合層300のうち点線DL11の内側の部分のことを、以下では「第1部分P1」とも称する。また、接合層300のうち点線DL11の外側の部分のことを、以下では「第2部分P2」とも称する。先に述べた空間340は、第1部分P1にのみ配置されており、第2部分P2には配置されていない。
【0091】
接合層300の第1部分P1は、冷媒流路280のうち点線DL12の内側の部分に対し上面視において重なる部分である。換言すれば、第1部分P1は、冷媒流路280の上流側に対し上面視において重なる部分である。
【0092】
また、接合層300の第2部分P2は、冷媒流路280のうち点線DL12の外側の部分に対し上面視において重なる部分である。換言すれば、第2部分P2は、冷媒流路280の下流側に対し上面視において重なる部分である。
【0093】
以上のような構成としたことで、本実施形態では、接合層300のうち冷媒流路280の上流側と重なる第1部分P1における空間割合が、接合層300のうち冷媒流路280の下流側と重なる第2部分P2における空間割合よりも大きくなっている。
【0094】
例えばエッチング装置のような半導体製造装置においては、基板Wの処理が完了した後に、続けて装置内のクリーニングが行われることがある。基板Wの処理においては、ベースプレート200には入口部281から低温の冷媒が供給されるが、クリーニングが開始されると、それまでよりも高温の冷媒が入口部281からベースプレート200に供給される。このため、クリーニングが開始された直後には、冷媒流路280の上流側におけるベースプレート200の温度が先に上昇し、冷媒流路280の下流側におけるベースプレート200の温度が遅れて上昇する。このように、クリーニングの開始時には、ベースプレート200において一時的な温度差が生じる。ベースプレート200からの伝熱により誘電体基板100においても同様の温度差が生じ得るが、本実施形態のように、誘電体基板100にはセラミック焼結体が用いられることが多いので、このような温度差は好ましくない。
【0095】
その対策として、本実施形態に係る静電チャック10では上記のように、接合層300のうち冷媒流路288の上流側と重なる第1部分P1における空間割合を、接合層300のうち冷媒流路280の下流側と重なる第2部分P2における空間割合よりも大きくしている。ベースプレート200のうち先に高温となる部分(つまり、点線DL12の内側部分)から誘電体基板100への熱伝導は、第1部分P1によって抑制される一方で、ベースプレート200のうち遅れて高温となる部分(つまり、点線DL12の外側部分)から誘電体基板100への熱伝導は、第2部分P2によって相対的に促進される。これにより、誘電体基板100における温度差を抑制することができる。
【0096】
尚、入口部281と出口部282とが互いに入れ替わっている場合、すなわち、冷媒がベースプレート200の外周部から供給され中央部から排出されるような場合には、空間340を、例えば点線DL11の外側にのみ配置することとすればよい。
【0097】
ただし、基板Wの処理中においては、基板Wの外周部に比べて中央部が低温となる傾向がある。このため、本実施形態のように入口部281を中央部に設けた上で、空間割合の高い第1部分P1を、空間割合の低い第2部分P2よりも中央寄りとなる位置に設けておくことが好ましい。このような構成とすることで、他の実施形態と同様に、処理中において基板Wの中央部の温度を上昇させ、面内温度分布を均一に近づけることが可能となる。
【0098】
接合層300における空間340の配置は、図9(A)に示される例とは異なっていてもよい。例えば、図3、6、7、8のいずれかに記載されている例のように、空間340が配置されていてもよい。
【0099】
以上、具体例を参照しつつ本実施形態について説明した。しかし、本開示はこれらの具体例に限定されるものではない。これら具体例に、当業者が適宜設計変更を加えたものも、本開示の特徴を備えている限り、本開示の範囲に包含される。前述した各具体例が備える各要素およびその配置、条件、形状などは、例示したものに限定されるわけではなく適宜変更することができる。前述した各具体例が備える各要素は、技術的な矛盾が生じない限り、適宜組み合わせを変えることができる。
【符号の説明】
【0100】
10:静電チャック
100:誘電体基板
110,120:面
121:電極端子
150:ガス穴
160:リフトピン穴
200:ベースプレート
300:接合層
340:空間
W:基板
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9