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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024119235
(43)【公開日】2024-09-03
(54)【発明の名称】内燃機関
(51)【国際特許分類】
   F02B 19/16 20060101AFI20240827BHJP
   F02B 19/12 20060101ALI20240827BHJP
   F02P 13/00 20060101ALI20240827BHJP
【FI】
F02B19/16 A
F02B19/12 A
F02P13/00 302B
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023025991
(22)【出願日】2023-02-22
(71)【出願人】
【識別番号】000006286
【氏名又は名称】三菱自動車工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100130513
【弁理士】
【氏名又は名称】鎌田 直也
(74)【代理人】
【識別番号】100074206
【弁理士】
【氏名又は名称】鎌田 文二
(74)【代理人】
【識別番号】100130177
【弁理士】
【氏名又は名称】中谷 弥一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100187827
【弁理士】
【氏名又は名称】赤塚 雅則
(74)【代理人】
【識別番号】100167380
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 隆
(72)【発明者】
【氏名】柳川 健介
(72)【発明者】
【氏名】廣江 健太
(72)【発明者】
【氏名】細野 清隆
(72)【発明者】
【氏名】村上 隆
(72)【発明者】
【氏名】川辺 敬
【テーマコード(参考)】
3G019
3G023
【Fターム(参考)】
3G019KA16
3G023AA01
3G023AB01
3G023AC02
3G023AC03
3G023AD23
3G023AD25
3G023AD28
3G023AD30
(57)【要約】
【課題】副室式の内燃機関において、主燃焼室での安定的な燃焼状態を得る。
【解決手段】シリンダヘッド2及びピストン4を備えた主燃焼室5と、主燃焼室5内のシリンダヘッド2にピストン4の移動方向に延びる軸を中心に回転可能に支持された副室6と、副室6の回転を制御する制御部41とを備え、制御部41は、内燃機関1の回転数に応じて副室6の回転数を制御するようにした。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
シリンダヘッド及びピストンを備えた主燃焼室と、
前記主燃焼室内の前記シリンダヘッドに前記ピストンの移動方向に延びる軸を中心に回転可能に支持された副室と、
前記副室の回転を制御する制御部と、を備え、
前記制御部は、前記内燃機関の回転数に応じて前記副室の回転数を制御する内燃機関。
【請求項2】
前記制御部は、前記内燃機関の回転数が大きくなるほど前記副室の回転数が減少するように制御する請求項1記載の内燃機関。
【請求項3】
前記制御部は、前記内燃機関の回転数及び負荷に応じて前記副室の回転数を制御する請求項1に記載の内燃機関。
【請求項4】
前記制御部は、前記内燃機関の回転数が第1回転数以下では、前記内燃機関の負荷が大きくなるほど前記副室の回転数を増加させ、前記内燃機関の回転数が前記第1回転数を超える場合では、前記内燃機関の負荷が大きくなるほど前記副室の回転数を減少させる請求項3に記載の内燃機関。
【請求項5】
前記内燃機関の回転数が前記第1回転数を超えるとともに前記内燃機関の負荷が第1負荷を超える第1領域と、前記内燃機関の回転数が前記第1回転数を超えるとともに前記内燃機関の負荷が前記第1負荷よりも大きい第2負荷を超える第2領域とを有し、
前記制御部は、前記第2領域では、前記第2領域を除く前記第1領域よりも目標空燃比をリッチにするエンリッチ制御を行い、且つ、前記第2領域では、前記第2領域を除く前記第1領域よりも前記副室の回転数を増加させる請求項4記載の内燃機関。
【請求項6】
前記内燃機関の実出力が目標出力を所定以上下回る場合、前記内燃機関の回転数が大きくなった際の前記副室の回転数の減少を抑制する請求項2記載の内燃機関。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、内燃機関に関する。
【背景技術】
【0002】
主燃焼室内に副室を設けた副室式の内燃機関においては、燃料と吸気の混合気が副室内に供給され、点火プラグによって混合気が副室内で点火される。副室内で火炎が形成されると、この火炎が副室に形成された複数の噴孔を通って主燃焼室内に噴射される。そして、噴射された複数の火炎によって主燃焼室内の混合気が着火する。これにより、主燃焼室内での良好な燃焼状態が実現される(例えば、下記特許文献1を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2020-197203号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
副室式の内燃機関、特に、吸気通路や主燃焼室内で混合した混合気を副室内に導入するパッシブ方式の副室式内燃機関では、副室に充填される燃料量は、運転状態に応じてサイクル毎に変動する。また、副室に充填される燃料量に応じて、各噴孔から噴射された火炎のエネルギ、すなわち、主燃焼室に飛び出す火炎の威力(以下、JET威力と称する)が変化するので、サイクル毎にJET威力は変化する。このJET威力の変動は、主燃焼室側のサイクル燃焼変動に直結し、主燃焼室の安定的な燃焼の点で問題となるおそれがある。
【0005】
そこで、この発明は、副室式の内燃機関において、主燃焼室での安定的な燃焼状態を得ることを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の課題を解決するために、この発明においては、シリンダヘッド及びピストンを備えた主燃焼室と、前記主燃焼室内の前記シリンダヘッドに前記ピストンの移動方向に延びる軸を中心に回転可能に支持された副室と、前記副室の回転を制御する制御部と、を備え、前記制御部は、前記内燃機関の回転数に応じて前記副室の回転数を制御する内燃機関を構成した。
【0007】
前記の構成においては、前記制御部は、前記内燃機関の回転数が大きくなるほど前記副室の回転数が減少するように制御する構成を採用できる。
【0008】
また、前記の構成においては、前記制御部は、前記内燃機関の回転数及び負荷に応じて前記副室の回転数を制御する構成を採用できる。
【0009】
ここで、前記制御部は、前記内燃機関の回転数が第1回転数以下では、前記内燃機関の負荷が大きくなるほど前記副室の回転数を増加させ、前記内燃機関の回転数が前記第1回転数を超える場合では、前記内燃機関の負荷が大きくなるほど前記副室の回転数を減少させる構成を採用できる。
【0010】
さらに、前記内燃機関の回転数が前記第1回転数を超えるとともに前記内燃機関の負荷が第1負荷を超える第1領域と、前記内燃機関の回転数が前記第1回転数を超えるとともに前記内燃機関の負荷が前記第1負荷よりも大きい第2負荷を超える第2領域とを有し、前記制御部は、前記第2領域では、前記第2領域を除く前記第1領域よりも目標空燃比をリッチにするエンリッチ制御を行い、且つ、前記第2領域では、前記第2領域を除く前記第1領域よりも前記副室の回転数を増加させる構成を採用できる。
【0011】
前記制御部は、前記内燃機関の回転数が大きくなるほど前記副室の回転数が減少するように制御する場合において、前記内燃機関の実出力が目標出力を所定以上下回る場合、前記内燃機関の回転数が大きくなった際の前記副室の回転数の減少を抑制する構成を採用できる。
【発明の効果】
【0012】
この発明では、内燃機関の回転数に応じて副室の回転数を制御するようにしたので、主燃焼室での安定的な燃焼状態を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】この発明の制御の例を示すグラフ図である。
図2】この発明の制御の例を示すグラフ図である。
図3】この発明に係る内燃機関の実施形態の要部を模式的に示す断面図である。
図4図3に示す内燃機関に用いられる副室を構成する部材の平面図である。
図5図3に示す内燃機関に用いられる副室を構成する部材の断面図である。
図6図3に示す内燃機関に用いられる副室を構成する部材の斜視図である。
図7】この発明に係る内燃機関を搭載した車両の模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
この発明に係る内燃機関1の実施形態を、図面に基づいて説明する。図1及び図2は、この発明の制御の例を示すグラフ図であり、図3図6は、この発明の実施形態の内燃機関1の要部とその構成部品等を示している。図7は、この内燃機関1を搭載した車両Vを示している。
【0015】
この実施形態において、内燃機関1は、図3に示すように、シリンダヘッド2及びシリンダブロック3によって形成された主燃焼室5と、主燃焼室5内を往復動するピストン4と、主燃焼室5内に設けられた副室6と、を主要な構成要素とした副室式の内燃機関1(ガソリンエンジン)である。なお、本図は、内燃機関1の複数の気筒のうちの一つの気筒の要部を示したものである。また、本図では、この発明に直接関係する部材のみを示し、主燃焼室5内に空気を送り込む吸気通路、主燃焼室5から燃焼ガスを排気する排気通路、主燃焼室5に燃料を供給する噴射装置などの一般的な構成の記載を省略している。本実施形態では、吸気通路に噴射装置を有し、吸気通路及び主燃焼室5内で吸気と燃料を混合する内燃機関1とするが、この構成に限定されるものではない。以下、主燃焼室5におけるピストン4の移動方向に沿った軸心(シリンダの軸心)を単に「軸心」と称し、その軸心周りの周方向を単に「軸回り」と称する。
【0016】
シリンダヘッド2は、下部ヘッド7と、各気筒の位置に対応して配置される上部ヘッド8から構成される。下部ヘッド7の上面側には、各気筒の位置に対応して、内面に雌ねじ部を有する円柱状の凹部9が形成されている。この凹部9の底面には、主燃焼室5側に連通する貫通孔10が形成されている。上部ヘッド8の外周には雄ねじ部が形成されており、この上部ヘッド8を下部ヘッド7にねじ込むことで、下部ヘッド7と上部ヘッド8は一体化される。
【0017】
上部ヘッド8の軸心には、その底面から上に向かって空洞部が形成されており、この空洞部内に臨むように点火プラグ12が設けられている。なお、上部ヘッド8と点火プラグ12は一体に形成してもよい。
【0018】
副室6は、図3に示すように、主燃焼室5に面する外面と外面とは反対側を向く内面とを有する本体部17と、本体部17の上端外縁から径方向外向きに延びるフランジ部18と、を有している。本体部17は底部と周面部とを備えて上向きに開口した凹状を成し、本体部17の軸の中心から径方向外側に離れた位置には、周面部の内外面間を貫通し、外径側へ向かうにつれて軸方向下向きに傾斜した複数の噴孔19が形成されている。本体部17の下端及び噴孔19は、下部ヘッド7に形成された貫通孔10を通って主燃焼室5側に突出している。本体部17の外面には、鏡面加工が施されている。
【0019】
フランジ部18は、シリンダヘッド2を構成する下部ヘッド7と上部ヘッド8の間に形成された周溝30によって回転可能に支持される。このとき、副室6の本体部17の内部空間と上部ヘッド8に形成された空洞部によって、副室燃焼室24が構成される。シリンダヘッド2の周溝30におけるフランジ部18に対する隙間は、副室6のスムーズな回転を妨げない程度の大きさに適切に設定されている。
【0020】
フランジ部18には、複数の回転子31(永久磁石)が周方向に一定間隔で設けられるとともに、シリンダヘッド2には、回転子31と径方向に対向するように固定子32(電磁石)が設けられており、この回転子31と固定子32がモータを構成している。そして、固定子32への通電によって副室6に軸周りの回転力(駆動力)が与えられる。また、シリンダヘッド2にはフランジ部18に臨むようにホールセンサ33が設けられており、このホールセンサ33で回転子31の回転を検知することで、副室6の回転の角速度を実測できるように構成されている。副室6は、内燃機関1の駆動中に任意の回転数で回転するように制御される。このような副室6の回転の制御は、この内燃機関1を搭載した車両Vが備える電子制御ユニット(Electronic Control Unit)40の制御部41によって制御される(図7参照)。電子制御ユニット40は、内燃機関1及び車両Vが備える装置全般を制御している。
【0021】
上記のように、内燃機関1は、副室6が、シリンダヘッド2によって軸周りに回転可能に支持されており、固定子32への通電によって副室6を回転するように構成したので、燃焼行程において、各噴孔19から噴射される火炎の大きさが燃焼サイクルごとに変動することによって主燃焼室5内の燃え広がり方に差が生じるのを抑制することができる。また、この回転によって、各噴孔19から噴射された火炎伝搬同士が衝突することに起因するショックを抑制することができる。
【0022】
一方、副室6を回転させることによって、各噴孔19から噴射される火炎の進行方向から離れるように各噴孔19が移動することになる。よって、副室6を回転させると、火炎の直進性が減少し、副室6からの火炎が主燃焼室5端部に到達するまでの時間が長くなる。また、吸気圧縮工程において副室6内に吸気や燃料(以下、まとめて「混合気」と称する)を導入するにあたり、副室6を回転させると混合気を導入する入口部にあたる各噴孔19が移動するため、副室6内へ混合気が導入され難くなる。これらは、副室6の回転数が大きくなるほど顕著になる。本発明は、副室6を回転させることにより発生するこれらの特性を利用し、内燃機関1の回転数、負荷に基づいて副室6の回転数を制御することにより、内燃機関1の燃焼状態を適切に制御する。
【0023】
以下、制御部41による副室6の回転の制御について説明する。
【0024】
制御部41は、内燃機関1の回転数(以下、エンジン回転数と称する)に応じて副室6の回転数(以下、副室回転数と称する)を制御する。ここで、エンジン回転数及び副室回転数とは、それぞれ単位時間当たりの回転数(rpm)である。副室6を備えた従来の内燃機関1では、各噴孔19から噴射される火炎の強さは、基本的に高回転高負荷の運転状態に対応するように設定されている。これは、仮に、火炎の強さを低回転側や低負荷側に対応するように設定すると、高回転高負荷の運転状態に移行した際に、火炎の強さが足りない事態が生じるからである。このため、エンジン回転数によって、火炎が強すぎたり弱すぎたりする場合があった。
【0025】
しかし、本実施形態によれば、エンジン回転数に応じて副室回転数を増減させ、副室6に供給される予混合気の量を変化させることができるので、運転状態に応じて火炎の強さを調整することができる。
【0026】
具体的には、制御部41は、エンジン回転数が大きくなるほど副室回転数が減少するように制御する。すなわち、エンジン回転数が大きいときは、副室回転数を減少させて火炎の直進性を確保し、主燃焼室5内の混合気を早期に燃焼させる。一方、エンジン回転数が小さいときは、副室回転数を増加させて主燃焼室5の燃焼変動を抑制するとともに、火炎の直進性や副室6への混合気の導入を抑制することで、火炎の強さを抑え、エンジン回転数に見合った主燃焼室5内の燃焼状態とする。
【0027】
また、制御部41は、内燃機関1の負荷(以下、エンジン負荷と称する)を考慮した制御としてもよい。エンジン回転数及びエンジン負荷に応じて副室回転数を制御することで、その時点での運転状態に応じたよりきめ細かな制御を行う趣旨である。
【0028】
具体的には、制御部41は、エンジン回転数が図1に示す第1回転数a0以下では、エンジンの負荷が大きくなるほど副室回転数を増加させ、エンジン回転数が第1回転数a0を超える場合では、エンジンの負荷が大きくなるほど副室回転数を減少させる。すなわち、エンジン回転数が低回転側にある時は、エンジン負荷が大きくなるほど副室回転数を大きくし、エンジン回転数が高回転側にある時は、エンジン負荷が大きくなるほど副室回転数を小さくする。なお、第1回転数a0は、例えば内燃機関1の使用が想定されている回転領域の中間値など、適当な値を予め設定すればよい。エンジン低回転、かつ高負荷状態は、エンジン回転数が小さいにもかかわらず燃料供給量が大きくなる状態である。このため、過度な火炎の強さとならないよう、副室回転数を大きくし火炎の強さを抑える。また、エンジン高回転、かつ高負荷状態は、エンジン回転数が大きく燃料供給量も大きくなる状態である。このため、多量な燃料を早期に燃焼させるため、副室回転数を小さくし火炎の直進性を確保する。
【0029】
図2に、エンジン回転数及び負荷に基づいた副室回転数の簡易的なマップを示す。図2では、エンジン回転数及び負荷に基づいて内燃機関1の運転領域を4つに分割している。領域Eは、エンジン回転数が第1回転数a0以下かつエンジン負荷が予め定められた第1負荷b0以下の、低回転低負荷領域である。領域Fは、エンジン回転数が第1回転数a0以下かつエンジン負荷が第1負荷b0を超える、低回転高負荷領域である。領域Gは、エンジン回転数が第1回転数a0を超えかつエンジン負荷が第1負荷b0以下の、高回転低負荷領域である。領域Hは、エンジン回転数が第1回転数a0を超えかつエンジン負荷が第1負荷b0を超える、高回転高負荷領域である。副室回転数は、領域Eでは中回転、領域Fでは高回転、領域Gでは低回転、領域Hでは極低回転である。すなわち、領域Eでの副室回転数ωe、領域Fでの副室回転数ωf、領域Gの副室回転数ωg、領域Hでの副室回転数ωhとしたときに、ωf>ωe>ωg>ωhとなる。なお、副室回転数は、各領域E,F,G,H内でそれぞれ一定の回転数ωe,ωf,ωg,ωhとしてもよいが、各領域E,F,G,H内でそれぞれエンジン回転数及び負荷に基づいて連続的に変化するように制御してもよい。
【0030】
図1に戻り、説明を続ける。本実施形態では、内燃機関1は限界運転領域付近の超高回転高負荷領域においてエンリッチ制御を行う。ここで、エンリッチ制御とは、出力全開時における排気系保護のために、排気温度を低下させるために燃料増量するものである。すなわち、燃料増量に伴う燃料気化熱で、排気温度を低下させている。本実施形態では、エンジン回転数が第1回転数a0を超えかつエンジン負荷が第1負荷b0を超える、高回転高負荷領域C(図2の領域Hに相当、以下、第1領域とする)において、第1負荷b0よりも大きい第2負荷b1以上、かつ内燃機関1の運転可能上限負荷bmax以下の領域を、エンリッチ制御が行われる超高回転高負荷領域D(第2領域)としている。
【0031】
そして、エンリッチ制御を行う第2領域において、第1領域よりも副室回転数を大きくする。すなわち、エンジン回転数が第1回転数a0を超える領域では、エンジン負荷が大きくなるほど副室回転数を小さくするが、エンジン負荷が第2負荷b1以上となった場合は、エンジン負荷が第2負荷b1未満に比べ副室回転数を大きくする。これにより、エンリッチ化に伴って生じる火炎の過度な増大を抑制することができる。
【0032】
ここで、第2負荷b1は、運転領域C(運転領域Dを除く部分)と運転領域Dとの境界の値に相当する。第2負荷b1は、エンジン回転数に関わらず一定の値としてもよいが、図1に示す境界線cのように、エンジン回転数が大きくなるにつれて第2負荷b1の値が小さくなる設定とすることが望ましい。
【0033】
また、本実施形態では、内燃機関1の実出力(以下、エンジン実出力と称する)が目標出力を所定以上下回る場合、エンジン回転数が大きくなった際の副室回転数の減少を抑制する。
【0034】
従来から、アクセルを急激に踏み込んだ時のような急加速時の運転条件では、吸気量の上昇と点火進角を行うのが一般的である。しかし、点火進角はすぐできるのに対して、吸気量の上昇は時間に遅れが生じる。このタイムラグによりノッキングが生じるので、これを抑えるために加速リタード制御(吸気遅れを考慮して点火進角も遅らせる制御)を行っている。これに対して、本実施形態では、エンジン実出力が目標出力に対して所定以上小さい場合に、エンジン回転数が大きくなった際の副室回転数の減少を抑制する。すなわち副室回転数を大きな状態に維持することで、火炎の直進性を抑制し主燃焼室5の燃焼を遅らせることで加速リタード制御と同様の効果を期待している。すなわち、副室6の回転を強めることで加速リタードを不要としている。ここで、副室回転数の減少を抑制する制御とは、副室6の回転数を維持する、若しくは、副室6の回転数の減少量を小さくすることには限らず、副室6の回転数を増加させることを含む概念である。
【0035】
今回開示された実施形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。したがって、本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。例えば、本実施の形態では、電磁石を用いて副室6の回転を制御したが、この構成に限らず、油圧を用いて副室6の回転を制御してもよい。また、噴孔19を径方向に対して周方向いずれか一方側へ傾斜させ、火炎の力で副室6を回転させるものとしてもよい。このとき、副室6の回転の制御は、電磁石や油圧を用いればよい。
【符号の説明】
【0036】
1 内燃機関
2 シリンダヘッド
3 シリンダブロック
4 ピストン
5 主燃焼室
6 副室
7 下部ヘッド
8 上部ヘッド
9 凹部
10 貫通孔
11 シール部材
12 点火プラグ
13、14 環状溝
15、16 シール溝
17 本体部
18 フランジ部
19 噴孔
24 副室燃焼室
30 周溝
31 回転子
32 固定子
33 ホールセンサ
40 電子制御ユニット
41 制御部
V 車両
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7