(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024119242
(43)【公開日】2024-09-03
(54)【発明の名称】ウォーターポンプ
(51)【国際特許分類】
F04D 29/046 20060101AFI20240827BHJP
F04D 29/044 20060101ALI20240827BHJP
B29C 45/14 20060101ALI20240827BHJP
【FI】
F04D29/046 D
F04D29/044
B29C45/14
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023026005
(22)【出願日】2023-02-22
(71)【出願人】
【識別番号】000114215
【氏名又は名称】ミネベアミツミ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【弁理士】
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【弁理士】
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】藤本 征也
【テーマコード(参考)】
3H130
4F206
【Fターム(参考)】
3H130AA03
3H130AB07
3H130AB22
3H130AB47
3H130AC16
3H130BA73A
3H130BA73D
3H130BA73E
3H130BA98A
3H130BA98D
3H130BA98E
3H130CA23
3H130DA02X
3H130DB11Z
3H130DB15X
3H130DD01X
3H130EA02A
3H130EA02D
3H130EA02E
4F206AD03
4F206AD15
4F206AD19
4F206AH04
4F206AM32
4F206JA07
4F206JB12
4F206JF05
4F206JL02
(57)【要約】
【課題】高精度の金型を用いることなく効率の良いウォーターポンプを提供する。
【解決手段】本発明のウォーターポンプ(100)は、シャフト(165)と、シャフト(165)に対して回転可能なロータ(150)と、ロータ(150)と一体に回転可能なインペラ(140)と、ロータ(150)を囲繞し、モータハウジング(130)に固定されたステータ(160)と、その中心にシャフト(165)が固定され、かつ、ロータ(150)の周囲に配置された円筒体部(192)の外周面(192ag)にステータ(160)の突極(161c)が固定された状態でモータハウジング(130)と一体に固定されたホルダ(190)と、を備える。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
シャフトと、
前記シャフトに対して回転可能なロータと、
前記ロータと一体に回転可能なインペラと、
前記ロータを囲繞し、モータハウジングに固定されたステータと、
その中心に前記シャフトが固定され、かつ、前記ロータの周囲に配置された円筒体部を有し、当該円筒体部の外周面に前記ステータの突極が固定された状態で前記モータハウジングと一体に固定されたホルダと、
を備える、ウォーターポンプ。
【請求項2】
前記ホルダの外周壁は、その外側に段差面を有すると共に、前記段差面を境に大径円筒部分と、当該大径円筒部分よりも上側に配置された小径円筒部分とを有し、
前記小径円筒部分の外周面に前記ステータの前記突極が固定されている、請求項1に記載のウォーターポンプ。
【請求項3】
前記ホルダは、前記シャフトを一体に固定するボス部を有する、請求項1または2に記載のウォーターポンプ。
【請求項4】
前記ホルダは、前記ボス部に固定された前記シャフトの軸心と前記小径円筒部分の軸心とが一致している、請求項3に記載のウォーターポンプ。
【請求項5】
前記シャフトは、前記ホルダを介して前記モータハウジングとモールド成形によって一体に固定されている、請求項1に記載のウォーターポンプ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ウォーターポンプに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、モータを備えた電動ウォーターポンプPが知られている(例えば、特許文献1を参照。)。
【0003】
この特許文献1の電動ウォーターポンプPでは、樹脂製のケーシング2と、そのケーシング2に一方側の端部14が固定された金属製の軸部材1と、その軸部材1の他方側の端部15を枢支しながら、ケーシング2を密閉するハウジング4と、軸部材1に軸支されたロータ3と、そのロータ3に取り付けられたインペラ5とを備えている。
【0004】
ケーシング2の内部には軸部材1の軸芯Lの回りに沿ってコイル21が配置されると共に、ロータ3の内部には永久磁石31が配置されている。コイル21を備えたステータおよび軸部材1は、インサート成形によりケーシング2に封止され、軸部材1は、鍔部12がケーシング2に埋設されることによって、ケーシング2に固定されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら先行文献1の電動ウォーターポンプPにおいては、コイル21を備えたステータおよび軸部材1をインサート成型してケーシング2を成形する場合、インサート成型用金型6に対して、コイル21を備えたステータと、軸部材1とをそれぞれ所定の位置にセットする必要がある。
【0007】
このとき、コイル21を備えたステータおよび軸部材1はインサート成型用金型6に対して高精度に位置決めされる必要がある。そのため、インサート成型用金型6は高精度に加工される必要があった。
【0008】
本発明は、以上の点を鑑み、高精度の金型を用いることなく効率の良いウォーターポンプを提供することを課題の一例とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明のウォーターポンプは、シャフトと、前記シャフトに対して回転可能なロータと、前記ロータと一体に回転可能なインペラと、前記ロータを囲繞し、モータハウジングに固定されたステータと、その中心に前記シャフトが固定され、かつ、前記ロータの周囲に配置された円筒体部を有し、当該円筒体部の外周面に前記ステータの突極が固定された状態で前記モータハウジングと一体に固定されたホルダと、を備える。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本発明の一例である実施の形態にかかるウォーターポンプを上方から視た場合の外観構成(A)および下方から視た場合の外観構成(B)を示す斜視図である。
【
図2】本発明の一例である実施の形態にかかるウォーターポンプの構成を示す縦断面図である。
【
図3】本発明の一例である実施の形態にかかるウォーターポンプのポンプハウジングの構成を示す底面図(A)、および、下方から視た場合の斜視図(B)である。
【
図4】本発明の一例である実施の形態にかかるウォーターポンプのシャフトに固定されるブッシュを上方から視た場合の外観構成(A)および下方から視た場合の外観構成(B)を示す斜視図である。
【
図5】本発明の一例である実施の形態にかかるウォーターポンプのシャフトとブッシュが一体化された場合のシャフト組立体の構成を示す斜視断面図である。
【
図6】本発明の一例である実施の形態にかかるウォーターポンプのシャフト、ブッシュ、および、ステータが一体となったステータ組立体の構成を示す斜視図である。
【
図7】本発明の一例である実施の形態にかかるウォーターポンプのシャフト、ブッシュ、および、ステータが一体となったステータ組立体の構成を示す縦断面斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
<実施の形態>
以下、本発明の一例である実施の形態について図面を参照しながら説明する。
図1は、本発明の一例である実施の形態にかかるウォーターポンプを上方から視た場合の外観構成(A)および下方から視た場合の外観構成(B)を示す斜視図である。
図2は、本発明の一例である実施の形態にかかるウォーターポンプの構成を示す縦断面図である。
図3は、本発明の一例である実施の形態にかかるウォーターポンプのポンプハウジングの構成を示す底面図(A)、および、下方から視た場合の斜視図(B)である。
【0012】
図4は、本発明の一例である実施の形態にかかるウォーターポンプのシャフトに固定されるブッシュを上方から視た場合の外観構成(A)および下方から視た場合の外観構成(B)を示す斜視図である。
図5は、本発明の一例である実施の形態にかかるウォーターポンプのシャフトとブッシュが一体化された場合のシャフト組立体の構成を示す斜視断面図である。
【0013】
図6は、本発明の一例である実施の形態にかかるウォーターポンプのシャフト、ブッシュ、および、ステータが一体となったステータ組立体の構成を示す斜視図である。
図7は、本発明の一例である実施の形態にかかるウォーターポンプのシャフト、ブッシュ、および、ステータが一体となったステータ組立体の構成を示す縦断面斜視図である。
【0014】
なお、本実施の形態の説明において、説明の便宜上、軸Xに沿った矢印a方向を上側または一方側とする。軸Xに沿った矢印b方向を下側または他方側とする。ここで、矢印ab方向を上下方向またはX軸方向と称する。ただし、上下方向は、鉛直方向とは必ずしも一致しない。また、矢印cd方向を径方向と称し、軸Xから離れる矢印c方向を外側または径方向一方側、軸Xに近づく矢印d方向を内側または径方向他方側と称する。
【0015】
<ウォーターポンプの外観構成>
図1に示すように、ウォーターポンプ100は、例えばエンジンの冷却水を移送する、いわゆる遠心ポンプである。
【0016】
ウォーターポンプ100は、当該ウォーターポンプ100をエンジンルーム内に取り付けるための3つのフランジ135、その内部にインペラ140(
図2)等を収容する側面視略円錐形のポンプハウジング120、その内部に駆動源であるモータ170(
図2)を収容する円筒形状または略円筒形状のモータハウジング130を有している。
【0017】
<フランジ>
ウォーターポンプ100のフランジ135は、モータハウジング130のモータハウジング本体部131の外周面に対して互いに120度間隔かつ放射状に三方へ延びる部分である。フランジ135は、先端の略円形の開口部135aを有している。したがって、ウォーターポンプの100は、フランジ135の開口部135aを介してエンジンルーム内等(図示せず)に取り付けられる。
【0018】
<ポンプハウジング>
ウォーターポンプ100のポンプハウジング120は、樹脂の射出成形により形成された成型品である。
【0019】
ポンプハウジング120は、内部にポンプとして作用するためのインペラ140を収容するポンプハウジング本体部121と、そのポンプハウジング本体部121の外周面の中心には軸方向の上側(矢印a方向)に突出しインペラ140に冷却水を吸入(導入)するための円筒形状の吸入部123と、ポンプハウジング本体部121の外周面から吸入部123とは直交する径方向へ突出し、インペラ140の回転によって冷却水を外部へ吐出するための円筒形状の吐出部125とを有している。
【0020】
吸入部123は、ポンプハウジング本体部121の頂部からX軸方向の上側(矢印a方向)に延びる円筒形状を有し、例えば、水、冷却水等の流体を吸入する部位である。吐出部125は、ポンプハウジング本体部121の外周面から吸入部123とは直交する径方向の外側(矢印c方向)へ延びる円筒形状を有し、吸入部123から吸入された流体がインペラ140の回転によって外部へ吐出(圧送)する部位である。
【0021】
図3に示すように、ポンプハウジング120のポンプハウジング本体部121は、側面視略円錐形のお椀形状からなり、外周側の底面に環状の溝121mを有すると共に、その溝121mの内側(矢印d方向)にはインペラ140を収容可能な円錐状のインペラ収容空間120sを有している。ポンプハウジング本体部121の溝121mは、ポンプハウジング120とモータハウジング130とが接合される際、例えばOリング等のシール部材126(
図2)が収容される空間である。
【0022】
ポンプハウジング本体部121は、吸入部123からインペラ収容空間120sに所定の長さだけ突出する軸支部124(
図2)を有している。軸支部124は、吸入部123の内周面に対して、所定の角度間隔で設けられた複数本(例えば3本)の腕部124aによって吸入部123の内周面に対して一体に結合されている。
【0023】
複数本の腕部124aの中心には、略円筒状のシャフト支持部124pが設けられ、そのシャフト支持部124pの下側(矢印b方向)の端部には、後述するシャフト165の半球状の頭部165aを径方向において軸支する円筒状の内周面124c(
図2および
図3)形成されている。なお、シャフト165の頭部165aは、その外周面が断面半円状の曲面となっている。
【0024】
この場合、シャフト165はX軸方向における下側(矢印b方向)の端部が後述するホルダとしてのブッシュ190に固定され、かつ、X軸方向における上側(矢印a方向)の頭部165aが軸支部124に支持されているので、当該シャフト165の振れ周りが抑制されている。
【0025】
軸支部124のシャフト支持部124pは、その下側(矢印b方向)の外周端に径方向(矢印cd方向)の外側(矢印c方向)へ僅かに延びた環状のフランジ部124dを有している。フランジ部124dは、吸入部123から吸入した流体をインペラ140の羽根145(
図2)へ導く機能を有する方向変換部位である。
【0026】
<インペラ>
図2に示すように、インペラ140は、熱可塑性樹脂材である例えばPPS(ポリフェニレンサルファイド)の射出成形により形成された成型品である。
【0027】
インペラ140は、X軸方向(矢印ab方向)に沿って延びる円柱状のロータ本体141、そのロータ本体141の上側(矢印a方向)の端部に一体に形成された円盤状の主板142と、その主板142の中心部分において上側(矢印a方向)に向かってなだらかに膨出した膨出部143と、その膨出部143の周囲であって主板142の上に立設された複数の羽根145とを有している。
【0028】
インペラ140のロータ本体141、主板142、膨出部143、および、羽根145は全て一体に形成されている。ただし、これに限るものではなく、例えば、ロータ本体141と主板142等とが別々に形成された後に溶着等によって一体形成されていてもよい。
【0029】
ロータ本体141は、所定の外径を有する円柱体からなり、後述するモータハウジング130のモータハウジング本体部131に形成されたモータ収容空間130sに収容される部分である。
【0030】
ロータ本体141において、その上側(矢印a方向)の所定位置には径方向の外側(矢印c方向)へ突出した上側フランジ部141fa、および、その下側端部には径方向の外側(矢印c方向)へ突出した下側フランジ部141fbを有している。
【0031】
上側フランジ部141faは、下側フランジ部141fbよりも外側(矢印c方向)へ大きく突出している。ただし、これに限るものではなく、上側フランジ部141faおよび下側フランジ部141fbの突出量は同じであってもよく、または、下側フランジ部141fbが上側フランジ部141faよりも外側(矢印c方向)へ大きく突出していてもよい。
【0032】
上側フランジ部141faと下側フランジ部141fbとの間には環状の凹空間が形成されており、そこにマグネット159が接着等により固定されている。マグネット159は、永久磁石からなり、S極に着磁された領域と、N極に着磁された領域とに分けられ、周方向に沿って交互に配置されている。
【0033】
因みに、磁石粉末を含んだ樹脂材でマグネット159を射出成形し、磁石粉末を含まない樹脂材でロータ本体141と主板142および羽根145を射出成形により形成するようにしてもよい。
【0034】
マグネット159の外径は、上側フランジ部141faの外周端と面一である。なお、ロータ本体141およびマグネット159は、後述するモータハウジング130のモータハウジング本体部131とは接触することのない大きさの外径を有している。要は、インペラ140の回転時にロータ本体141が、後述するモータハウジング本体部131と接触することなく回転できさえすればよい。
【0035】
主板142は、薄い円盤状の部材であり、ロータ本体141の上側(矢印a方向)の端部において一体に形成されている。主板142の外径は、インペラ収容空間120sの内径よりも小さい。
【0036】
膨出部143およびロータ本体141は、その中心においてX軸方向(矢印ab方向)に沿って貫通した貫通孔140hを有している。この貫通孔140hの内径は、後述するシャフト165の外径よりも僅かに大きく形成されている。この場合、インペラ140における貫通孔140hの内周面と、シャフト165の外周面とはスリーブ軸受として機能する。
【0037】
これによりインペラ140は、ブッシュ190に固定されたシャフト165に対して回転可能とすることができる。なお、これに限るものではなく、ロータ本体141および膨出部143に円筒状の焼結軸受を設けるようにしてもよい。
【0038】
複数の羽根145は、回転軸となるシャフト165を中心として膨出部143の周囲に放射状に配置されている。羽根145は、弧状に湾曲しており、シャフト165から径方向の外側(矢印c方向)へ離れるに連れてその高さが次第に低くなっている。この場合、羽根145は例えば7枚設けられているが、これに限るものではなく、他の枚数であってもよい。
【0039】
<モータハウジング>
図2に示すように、モータハウジング130は、円筒形状のモータハウジング本体部131と、そのモータハウジング本体部131の上側(矢印a方向)の端部から径方向の外側(矢印c方向)へ向かって延びた環状のフランジ部132と、モータハウジング本体部131の底部を閉塞するカバー部133とを有している。
【0040】
モータハウジング本体部131のフランジ部132は、ポンプハウジング本体部121の溝121m(
図3)と対向配置される部分である。モータハウジング本体部131のフランジ部132の外径とポンプハウジング本体部121の外径とは同じである。
【0041】
モータハウジング本体部131の底部には、カバー部133が一体に形成されており、これによりモータ170のロータ150を構成するマグネット159およびロータ本体141を収容可能なモータ収容空間130sを形成している。
【0042】
モータ収容空間130sは、ロータ本体141の周囲が樹脂で形成されたモータハウジング本体部131と、後述するブッシュ190と、によって形成され、ロータ本体141およびマグネット159を収容可能な凹空間である。
【0043】
モータハウジング130のモータハウジング本体部131、フランジ部132、および、カバー部133は、全て一体に形成された樹脂の成型品である。モータハウジング本体部131は、ステータ160および後述するブッシュ190についてもインサート成型により一体に形成されている。
【0044】
なお、
図2においては図示していないが、ウォーターポンプ100は、モータハウジング130の下方に、モータ駆動するためのモータ駆動制御回路を構成する各種電子部品が実装された回路基板(図示せず)が配置されている。
【0045】
<ステータ>
モータ収容空間130sに配置されたロータ150のロータ本体141およびマグネット159の外周側には、モータハウジング本体部131によって樹脂封止されたステータ160がロータ150を囲繞するように配置されている。
【0046】
このステータ160においては、インシュレータ(図示せず)を介してコイル162の巻回されたステータコア161がモータハウジング本体部131によってモールド成形された状態で配置されている。つまり、ステータコア161およびコイル162は、モータハウジング本体部131と一体化されている。
【0047】
ステータコア161は、軟磁性材からなる電磁鋼板を複数枚積層された積層体によって形成されており、円環状のコアバック、コイル162が巻回されたティース、および、突極161c(
図6)を有している。
【0048】
ステータコア161において、互いに隣り合う突極161c同士の間にはコイル162が収められるスロットが形成されている。因みに、シャフト165の軸心はX軸であり、ステータコア161の軸心もX軸であり、両者は一致している。
【0049】
<ロータ>
図2に示すように、ロータ150は、ロータ本体141およびマグネット159からなり、ブッシュ190およびモータハウジング本体部131に固定されたシャフト165に対して、当該シャフト165を回転軸として回転する。なお、ロータ本体141は、インペラ140の一部である。
【0050】
すなわち、シャフト165は、ブッシュ190によって回転不能な固定状態でモータ収容空間130sに取り付けられている。このため、シャフト165は、非回転であり、ブッシュ190を介してモータハウジング本体部131と一体に固定されている。
【0051】
ロータ150は、モータハウジング本体部131のモータ収容空間130sに配置されており、ロータ本体141およびマグネット159の外径がモータ収容空間130sの内径よりも小さい。これにより、ロータ150が回転したときにロータ本体141およびマグネット159がモータ収容空間130sを形成しているモータハウジング本体部131の内周面と接触することはない。
【0052】
このようにモータ170は、ステータ160とロータ150によって構成されたインナーロータ型の三相のブラシレスDCモータである。ただし、モータ170は、三相のブラシレスDCモータに限るものではなく、例えば単相ブラシレスDCモータ等、その他のモータであってもよい。
【0053】
<シャフト組立体>
図2、
図4および
図5に示すように、シャフト165はブッシュ190に対して予め一体に組み立てられた組立体(以下、これを「シャフト組立体」と呼ぶ。)200(
図5)として形成されている。
【0054】
シャフト組立体200のブッシュ190は、全体的に有底円筒形状の非磁性金属材(例えば、真鍮、非磁性ステンレス鋼等)からなり、一方側となる上側(矢印a方向)が開口し、他方側となる下側(矢印b方向)が平板部191によって閉塞されている。
【0055】
ブッシュ190は、所定厚さの円板形状を有する平板部191、その平板部191の上側(矢印a方向)に設けられた円筒体からなる円筒体部192、および、平板部191の下側(矢印b方向)に向かって突出した円筒体からなるボス部193が一体に形成されている。
【0056】
平板部191は、所定の外径および厚さを有する円板体からなり、その中央には軸Xを中心として下側(矢印b方向)へ向かって所定の長さだけ突出したボス部193が形成されている。
【0057】
ボス部193は、円筒体部192の内径よりも小さな外径を有し、X軸を中心として所定径の貫通孔193hを有している。なお、ボス部193の貫通孔193hは、平板部191をも貫通している。
【0058】
ボス部193の貫通孔193hの内径は、シャフト165の外径と同じ、または、シャフト165の外径よりも僅かに小さく、シャフト165はボス部193の貫通孔193hに対して圧入により固定される。
【0059】
なお、
図2に示すように、シャフト165の下側(矢印b方向)の端部については、ブッシュ190のボス部193およびモータハウジング130のカバー部133から突出するように固定されている。ただし、これに限るものではなく、シャフト165の下側(矢印b方向)の端部がモータハウジング130のカバー部133の内部に埋設されるように固定されていてもよい。
【0060】
ブッシュ190の円筒体部192は、軸方向の下側(矢印b方向)に大径円筒部分192b、軸方向の上側(矢印a方向)に小径円筒部分192aを有している。大径円筒部分192bは、X軸方向において所定の厚さを有する円筒体であり、その外径は、平板部191の外径と同じであり、面一となっている。
【0061】
すなわち大径円筒部分192bは、平板部191の上部に位置する部分であり、両者は境界がなく一体である。因みに、小径円筒部分192aの内径は、大径円筒部分192bの内径と同じであり、面一である。
【0062】
小径円筒部分192aは、径方向において大径円筒部分192bよりも薄い所定の厚さを有する円筒体であり、その外径は大径円筒部分192bよりも小さい。すなわち、大径円筒部分192bは小径円筒部分192aよりも外径の大きな外周壁であり、小径円筒部分192aは大径円筒部分192bよりも外径の小さな外周壁である。なお、大径円筒部分192bの外周側の面を第1外周壁面192bgと呼び、小径円筒部分192aの外周側の面を第2外周壁面192agと呼ぶものとする。
【0063】
図5乃至
図7に示すように、ブッシュ190において、小径円筒部分192aの第2外周壁面192agと大径円筒部分192bの第1外周壁面192bgとの間には、径方向に沿って平坦に延びる段差面192dが形成されている。
【0064】
この段差面192dには、ステータコア161の内周側の端部である突極161cの一部が載置され、これによりステータコア161の軸方向の高さが決定される。同時に、小径円筒部分192aの第2外周壁面192agと突極161c(
図6および
図7)の内周面とが接触される。
【0065】
実際上、
図2に示すように、ブッシュ190はモータハウジング本体部131にインサート成型されて一体化されるが、小径円筒部分192aおよび大径円筒部分192bの内周面はモータハウジング本体部131の樹脂によって封止されて露出することはない。ただし、ブッシュ190においては、平板部191の底面191bだけがモータハウジング本体部131に封止されることなく露出した状態となる。
【0066】
<ステータ組立体>
図6および
図7に示すように、ウォーターポンプ100においては、シャフト組立体200のブッシュ190に対して、コイル162およびステータコア161からなるステータ160を一体化して固定することにより組立体(以下、これを「ステータ組立体」と呼ぶ。)220が形成されている。
【0067】
この場合、ブッシュ190の段差面192dには、ステータコア161の内周側に設けられた突極161cが載置され、ステータコア161の軸方向の高さが決定される。同時に、突極161c(
図6および
図7)の内周面には、ブッシュ190の小径円筒部分192aの第2外周壁面192agが嵌着される。
【0068】
このとき、ステータコア161の突極161cの内周面は、シャフト165と同心状になるように形成されている。これにより、シャフト165、ブッシュ190、およびステータコア161が全て同心状に配置されたステータ組立体220が形成される。
【0069】
<モータハウジング構造>
続いて、モータハウジング130の構造について説明する。モータハウジング130を形成するには、図示しない金型の所定位置に上述したステータ組立体220を配置してセットする。
【0070】
具体的には、金型には、シャフト165のシャフト位置決穴が設けられており、そのシャフト位置決穴にシャフト165の頭部165aとは反対となる下側(矢印b方向)の端部を配置してセットする。
【0071】
ここで、シャフト165は、シャフト組立体200に予め固定され、そのシャフト組立体200はステータ160が予め固定されたステータ組立体220と一体に形成されている。
【0072】
このため、ステータ組立体220のシャフト165の端部を金型のシャフト位置決穴に配置しさえすれば、金型に対して高精度にシャフト165、ブッシュ190およびステータ160が位置決めされることになる。
【0073】
続いて、金型に溶融した熱可塑性樹脂を注入し、その後冷却することにより、モータハウジング130を成形する。これによりモータハウジング130では、ステータコア161、コイル162、およびブッシュ190をモータハウジング本体部131に封止し、ブッシュ190と一体化されたシャフト165についてもモータハウジング本体部131に固定することができる。
【0074】
この場合、ステータコア161における突極161cの内周面およびブッシュ190における円筒体部192の内周面については、外部に露出することがないように熱可塑性樹脂によって覆われる。
【0075】
因みに、モータハウジング130とブッシュ190との結合強度を高めるために、例えばブッシュ190における円筒体部192の大径円筒部分192bの第1外周壁面192bgまたは小径円筒部分192aの第2外周壁面192agにローレット目加工を施してもよい。あるいは、カバー部133と接触する平板部191の部分に貫通孔や切り起こし部を設けるようにしてもよい。
【0076】
その後、ウォーターポンプ100では、インペラ140の貫通孔140hを介して当該インペラ140をシャフト165の上側(矢印a方向)の頭部165aから挿通させることにより、当該シャフト165に対してインペラ140を回転可能な状態で取り付ける。
【0077】
そして、ウォーターポンプ100では、ポンプハウジング120の軸支部124によりシャフト165の頭部165aを軸支するように当該ポンプハウジング120とモータハウジング130とを結合する。
【0078】
これにより、ウォーターポンプ100では、ポンプハウジング120のインペラ収容空間120sとモータハウジング130のモータ収容空間130sとが相互に空間として連通し、インペラ140がシャフト165を中心として回転可能に軸支される。
【0079】
<ウォーターポンプの動作>
実際にウォーターポンプ100においては、モータ170のロータ150とステータ160との電磁気的作用によりシャフト165を中心としてインペラ140のロータ本体141が回転する。
【0080】
これによりウォーターポンプ100では、ロータ本体141と共に羽根145が回転し、吸入部123から吸入した流体を複数の羽根145の作用により径方向の外側(矢印c方向)の吐出部125から圧送することができる。
【0081】
ウォーターポンプ100では、金型のシャフト位置決穴にステータ組立体220に予め一体に組み込まれたシャフト165の下側(矢印b方向)の端部を配置して射出成形するだけで、シャフト165、ブッシュ190およびステータ160を高精度に配置した状態でポンプハウジング120を成形することができる。これによりウォーターポンプ100では、高精度の金型を用いることなく効率の良いウォーターポンプを提供することができる。
【0082】
かくして、ウォーターポンプ100においては、シャフト165の軸心、ブッシュ190の軸心、および、吸入部123の軸心とが一致するので、吸入部123から吸入した流体を、インペラ140を介して吐出部125から圧送する際のポンプ動作を最も効率の良い状態で実行させることができる。
【0083】
<他の実施の形態>
以上、本発明のウォーターポンプについて、好ましい実施の形態を挙げて説明したが、本発明のウォーターポンプは上記実施の形態の構成に限定されるものではない。
【0084】
なお、実施の形態におけるホルダとしてのブッシュ190は、円筒体部192の大径円筒部分192bと小径円筒部分192aとの間に段差面192dを形成するようにした場合について述べた。しかしながら、本発明はこれに限らず、段差面192dがなく、外周側の面が面一の円筒体部192を有するブッシュ190を用いるようにしてもよい。
【0085】
この場合、ステータコア161の突極161cの内周面をブッシュ190における円筒体部192の面一の外周面に圧入すればよく、その際、軸方向において所定の高さとなる位置で固定すればよい。つまり、ブッシュ190の円筒体部192の外周面とステータコア161の突極161cの内周面とで固定する際に双方の軸心が一致しさえすれば段差面の有無は関係ない。
【0086】
さらに実施の形態におけるホルダとしてのブッシュ190は、平板部191よりも下側(矢印b方向)に突出したボス部193を設けるようにした場合について述べた。しかしながら、本発明はこれに限らず、モータ収容空間130sに空間的な余裕があれば平板部191よりも上側(矢印a方向)に突出したボス部193を設けるようにしてもよい。
【0087】
さらに、インペラ140では、ロータ本体141がインペラ140の一部であり、かつ、ロータ150の一部として主板142、膨出部143および羽根145と一体に設けられているようにした構成について述べたが、本発明はこれに限らず、ロータ150とインペラ140とは別部品として形成された後に溶着等により一体に結合するようにしてもよい。
【0088】
さらに、実施の形態におけるウォーターポンプ100においては、エンジンルーム内に取り付けられる場合を一例として説明したが、本発明はこれに限らず、近年普及したハイブリッド車や電気自動車において、インバータ等の電動機器やバッテリに対して冷却水を強制循環させる場合に用いるようにしてもよい。
【0089】
その他、当業者は、従来公知の知見に従い、本発明のウォーターポンプを適宜改変し、また各種構成の組み合わせを変更することができる。かかる変更によってもなお本発明の構成を具備する限り、勿論、本発明の範疇に含まれるものである。
【符号の説明】
【0090】
100…ウォーターポンプ、120…ポンプハウジング、120s…インペラ収容空間、121…ポンプハウジング本体部、121m…溝、123…吸入部、124…軸支部、124a…腕部、124d…フランジ部、124p…シャフト支持部、125…吐出部、126…シール部材、130…モータハウジング、130s…モータ収容空間、131…モータハウジング本体部、133…カバー部、135…フランジ、140…インペラ、141…ロータ本体、142…主板、143…膨出部、145……羽根、150…ロータ、159…マグネット、160…ステータ、161…ステータコア、162…コイル、165…シャフト、170…モータ、190…ブッシュ、191…平板部、192…円筒体部、192a…小径円筒部分、192b…大径円筒部分、193…ボス部、200…シャフト組立体、220…ステータ組立体。