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特開2024-119253製茶揉み込み装置及びそれを用いた製茶揉乾方法
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  • 特開-製茶揉み込み装置及びそれを用いた製茶揉乾方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024119253
(43)【公開日】2024-09-03
(54)【発明の名称】製茶揉み込み装置及びそれを用いた製茶揉乾方法
(51)【国際特許分類】
   A23F 3/12 20060101AFI20240827BHJP
   A23F 3/06 20060101ALI20240827BHJP
【FI】
A23F3/12 Z
A23F3/06 301G
A23F3/06 301F
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023026022
(22)【出願日】2023-02-22
(71)【出願人】
【識別番号】000104375
【氏名又は名称】カワサキ機工株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100205914
【弁理士】
【氏名又は名称】堀越 総明
(74)【代理人】
【識別番号】100162189
【弁理士】
【氏名又は名称】堀越 真弓
(72)【発明者】
【氏名】平野 智久
(72)【発明者】
【氏名】中村 守伸
(72)【発明者】
【氏名】久米 明
【テーマコード(参考)】
4B027
【Fターム(参考)】
4B027FB02
4B027FC10
4B027FE01
4B027FP13
4B027FP21
4B027FP26
4B027FP27
4B027FP41
4B027FP47
4B027FP56
(57)【要約】      (修正有)
【課題】揉捻工程よりも前の揉乾工程、すなわち、蒸熱工程と揉捻工程との間に行われる揉乾工程において、茶葉の揉み込みを十分に行うことができ、「細よれ」の外観を有する茶を製造することのできる製茶揉み込み装置及びこの装置を用いた製茶揉乾方法を提供すること。
【解決手段】製茶揉み込み装置1は、円筒状の揉胴2内に、スクリューシャフト31の外周面にスクリュー羽根32がらせん状に設けられたスクリュー3が回転自在に配置され、スクリューを回転させることにより揉胴の一端側に供給された茶葉を揉胴の他端側へ移送しながら揉み込みするスクリュー型の製茶揉み込み装置であって、この装置は、揉胴の他端側の開口部に進退自在に配置された略円錐台状の排出部形成プレート5と、この排出部形成プレートに対し、スクリューによる茶葉の移送方向とは逆の方向へ押付け力を付与する押圧手段6と、を備える。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
円筒状の揉胴内に、スクリューシャフトの外周面にスクリュー羽根がらせん状に設けられたスクリューが回転自在に配置され、該スクリューを回転させることにより該揉胴の一端側に供給された茶葉を該揉胴の他端側へ移送しながら揉み込みするスクリュー型の製茶揉み込み装置であって、
前記製茶揉み込み装置は、
前記揉胴の他端側の開口部に進退自在に配置された略円錐台状の排出部形成プレートと、
前記排出部形成プレートに対し、前記スクリューによる茶葉の移送方向とは逆の方向へ押付け力を付与する押圧手段と、を備え、
前記排出部形成プレートと前記開口部との間の隙間に茶葉が排出される排出部が形成されるように構成されており、
前記スクリューシャフトは、前記スクリューによる茶葉の移送方向に向かって、その径が漸次拡大する形状に形成され、
前記スクリューにより揉胴内を移送された茶葉が前記排出部形成プレートを押すことにより、該排出部形成プレートが後退して前記排出部が広がり、該排出部から茶葉が排出されるように構成されていることを特徴とする製茶揉み込み装置。
【請求項2】
前記排出部形成プレートの周側面の傾斜角度は、該排出部形成プレートの摺動方向に対して20度~45度であることを特徴とする請求項1に記載の製茶揉み込み装置。
【請求項3】
前記スクリューシャフトに設けられたスクリュー羽根のピッチは、前記スクリューによる茶葉の移送方向に向かって、漸次狭くなるように構成されていることを特徴とする請求項1に記載の製茶揉み込み装置。
【請求項4】
前記スクリューシャフトは、前記スクリューによる茶葉の移送方向に向かって、その径が漸次拡大する拡径部と、該拡径部から延びる略同径の同径部とを有し、
前記排出部形成プレートは、前記スクリューシャフトの同径部に摺動自在に外嵌されていることを特徴とする請求項1に記載の製茶揉み込み装置。
【請求項5】
蒸熱工程と揉捻工程との間に行われる製茶揉乾方法であって、
蒸熱工程を経た茶葉の乾量基準含水率が250~80%となるまで、前記茶葉を乾燥させる乾燥工程と、
請求項1~4のいずれか1項に記載の製茶揉み込み装置に、前記乾燥工程を経た茶葉を供給し、前記スクリューを2~20rpmで回転させることにより、前記茶葉を揉み込みする揉み込み工程と、
を有することを特徴とする製茶揉乾方法。
【請求項6】
前記乾燥工程が、ネット型乾燥機、高温熱風乾燥機、炒り蒸し機、殺青機、高温熱風殺青機、葉打機、ワイド粗揉機及び粗揉機からなる群より選ばれる少なくとも1つの揉乾装置を用いて行うことを特徴とする請求項5に記載の製茶揉乾方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、主に、蒸熱工程と揉捻工程との間に行われる揉乾工程において用いられる製茶揉み込み装置及びそれを用いた製茶揉乾方法に関する。
【背景技術】
【0002】
一般的に、煎茶の茶葉の外観は、伸び形で細く丸くよれ、硬く締まってしわがなく、中ほどが太く、両端に向かって次第に細くなり、両端が尖った紡錘形が良いとされている。このような、いわゆる「細よれ」と呼ばれる外観の茶は、品評会等での官能審査においても評価が高く、市場で上級品として扱われ、通常品と比べて2割ほど高い価格で取引されている。このような「細よれ」の茶を得るためには、製茶工程において茶葉の整形が十分に行われる必要があるところ、茶葉によれ形をつける揉捻工程よりも前の揉乾工程において、茶葉の揉み込みが十分であるほど「細よれ」の茶が製造されやすい。
【0003】
蒸熱工程と揉捻工程との間に行われる揉乾工程では、葉打機、ワイド粗揉機及び粗揉機といった揉乾装置が一般的に用いられている。これらは、処理胴内に熱風を吹き込んで茶葉を乾燥させながら、処理胴内に設けられた揉み手で茶葉を揉み込みする装置である。これらの装置における揉圧は揉み手のばね圧で設定されるが、揉捻工程で用いられる揉盤型の揉捻機での揉圧と比べると揉圧は弱くなるように調整され、茶葉は柔らかく揉み込みされている。
【0004】
他方、上述した装置のほかに、効率的に茶葉の揉み込みを行うことができる装置として、特許文献1ではスクリュー型の揉み込み装置が提案されている。このスクリュー型の揉み込み装置は、いわゆるチョッパー様の構造からなり、ホッパー部から投入した粗揉葉をスクリュー羽根で丸めるとともに押圧してしごき、しごいた粗揉葉を排出口に設けた押出板の孔から細長状に押出しながら、スクリュー羽根の先端部に設けた切断刃で切断して成形するものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第5324650号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところが、特許文献1に記載された装置は、揉捻工程で用いられる揉盤型の揉捻機の代替として用いられるものであり、非常に効率的に茶葉の揉み込みが行われるというメリットがある一方、含水率が比較的高く、柔らかで繊細な蒸熱工程後の茶葉に適用すると、装置内で切れ葉が生じやすくなるおそれがあった。さらに、特許文献1に記載された装置では、揉み込みされた茶葉は絡み合った玉状に成形され、細よれ形状の茶は得ることができなかった。
【0007】
したがって、本発明は上述した点に鑑みてなされたもので、その目的は、揉捻工程よりも前の揉乾工程、すなわち、蒸熱工程と揉捻工程との間に行われる揉乾工程において、茶葉の揉み込みを十分に行うことができ、「細よれ」の外観を有する茶を製造することのできる製茶揉み込み装置及びこの装置を用いた製茶揉乾方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するため、本発明の製茶揉み込み装置は、円筒状の揉胴内に、スクリューシャフトの外周面にスクリュー羽根がらせん状に設けられたスクリューが回転自在に配置され、スクリューを回転させることにより揉胴の一端側に供給された茶葉を揉胴の他端側へ移送しながら揉み込みするスクリュー型の製茶揉み込み装置であって、この製茶揉み込み装置は、揉胴の他端側の開口部に進退自在に配置された略円錐台状の排出部形成プレートと、排出部形成プレートに対し、スクリューによる茶葉の移送方向とは逆の方向へ押付け力を付与する押圧手段と、を備え、排出部形成プレートと開口部との間の隙間に茶葉が排出される排出部が形成されるように構成されており、スクリューシャフトは、スクリューによる茶葉の移送方向に向かって、その径が漸次拡大する形状に形成され、スクリューにより揉胴内を移送された茶葉が排出部形成プレートを押すことにより、排出部形成プレートが後退して排出部が広がり、排出部から茶葉が排出されるように構成されている。
【0009】
本発明の製茶揉み込み装置は、茶葉を揉胴内に供給し、スクリューを回転させると、揉胴内部で圧縮を受けながら茶葉が移送されていくところ、スクリューシャフトの径が茶葉の移送方向に向かって漸次拡大する形状に形成されている。これにより、揉胴の内周面とスクリューシャフトの外周面に囲まれた空間が、茶葉の移送方向に向かって漸次狭くなるため、揉み込み装置内で茶葉が移送される際に茶葉密度が漸次増大する。それゆえ、漸次増大する圧力が茶葉に加わり、茶葉が捻じれ、茶葉によれ形がつけられる。また、茶葉に圧力が加えられることによって、茶葉の内部水分が茶葉の表面側に移行し易くなるため、茶葉の各部分の水分が均一となり、揉み込み処理が十分に行われる。さらに、本発明の製茶揉み込み装置では、開口部に進退自在に配置された排出部形成プレートと開口部との間に生じる環状隙間に、茶葉が排出される排出部が形成されるところ、揉胴内を移送された茶葉が排出部形成プレートを押すことにより、排出部形成プレートが後退して排出部が広がり、排出部から茶葉が排出されるように構成されている。この排出部形成プレートは、押圧手段によって茶葉の移送方向とは逆の方向に押付けされているので、茶葉を揉胴内に供給する前は、排出部形成プレートと開口部との間の隙間、すなわち、排出部はほとんど形成されていない状態であるか、極めて狭く形成されている状態である。そこで、揉み込み装置を作動させて茶葉を揉胴内に供給すると、揉胴内を移送されてきた茶葉が揉胴の他端側の開口部、すなわち排出部近傍に到達し、茶葉が排出部形成プレートを押すように構成されている。これにより、排出部形成プレートが後退して排出部が広がり、排出部から茶葉が排出される。また、排出部形成プレートは円錐台状に形成されているために、揉胴の内周面と排出部形成プレートの周側面とで囲まれた空間は、排出部に向かって狭くなっている。それゆえ、茶葉が排出される前の装置後段において、茶葉がさらに圧縮されるため、茶葉が捻じり合ってよれ形がより確実に形成されると共に、茶葉の内部水分が茶葉の表面側に移行し易くなり、揉み込み処理が十分に行われる装置が得られる。また、本発明の製茶揉み込み装置において、揉胴内の茶葉が移送される空間は、スクリューシャフトを漸次拡径すること及び排出部形成プレートを円錐台形状とすることにより、茶葉の移送方向に向かって漸次狭くなるように形成されている。それゆえ、移送される茶葉は徐々に圧縮され、徐々に大きな力が加えられていくので、切れ葉が発生し難く、最終的に大きな力が茶葉に加えられて揉み込みされ、茶葉によれ形をつけることが可能となっている。
【0010】
また、本発明の製茶揉み込み装置の排出部形成プレートの周側面の傾斜角度は、排出部形成プレートの摺動方向に対して20度~45度であることも好ましい。これにより、円錐台状に形成された排出部形成プレートの周側面の長さ(円錐台における勾配面の長さ)を一定程度長くできるため、揉胴の内周面と排出部形成プレートの周側面との間隙での茶葉の揉み込みを十分に行うことのできる装置が得られる。また、この角度とすることによって、この間隙部分で揉み込みされている茶葉によって排出部形成プレートが後退する方向に押されやすくなり、後述する共廻り現象(茶葉が揉胴内に滞留した状態でスクリューが空回りし、揉胴内から茶葉が排出されなくなる現象)の発生を防ぐことができ、茶葉の排出もスムーズに行うことのできる装置が得られる。
【0011】
また、本発明の製茶揉み込み装置のスクリューシャフトに設けられたスクリュー羽根のピッチは、スクリューによる茶葉の移送方向に向かって、漸次狭くなるように構成されていることも好ましい。これにより、スクリュー羽根の各ピッチにおける、揉胴の内周面、スクリューシャフトの外周面及びスクリュー羽根とで囲まれる空間が、茶葉の移送方向に向かって漸次狭くなるため、茶葉が移送されるに従って茶葉の収容空間が確実に狭くなり、茶葉密度が徐々に増加する。それゆえ、茶葉が徐々に圧縮されながら移送されるため、茶葉のよれ形がより確実に形成されると共に、茶葉の内部水分が茶葉の表面側に移行し易くなり、揉み込み処理が十分に行われる装置が得られる。
【0012】
また、本発明の製茶揉み込み装置のスクリューシャフトは、スクリューによる茶葉の移送方向に向かって、その径が漸次拡大する拡径部と、拡径部から延びる略同径の同径部とを有し、排出部形成プレートは、スクリューシャフトの同径部に摺動自在に外嵌されていることも好ましい。これにより、スクリューシャフトの移送方向の先端に位置する同径部に排出部形成プレートが連続して配置されるため、揉胴内における茶葉が移送される空間が、連続的に茶葉の移送方向に向かって漸次狭くなるように形成することができる。それゆえ、移送される茶葉に対し、徐々に大きな力を加えることができ、茶葉によれ形をつけるべくしっかりと揉み込みすることが可能となる。また、スクリューシャフトと排出部形成プレートとが連続して設けられることによって、揉胴内で茶葉が滞留し易くなる場所もなくなるため、茶葉の移送及び排出をスムーズに行うことができる。
【0013】
さらに、本発明の製茶揉乾方法は、蒸熱工程と揉捻工程との間に行われる製茶揉乾方法であって、蒸熱工程を経た茶葉の乾量基準含水率が250~80%となるまで、茶葉を乾燥させる乾燥工程と、上述した製茶揉み込み装置に、乾燥工程を経た茶葉を供給し、スクリューを2~20rpmで回転させることにより、茶葉を揉み込みする揉み込み工程とを有する。
【0014】
本発明の製茶揉乾方法に係る乾燥工程によれば、蒸熱工程を経た茶葉の乾量基準含水率が250~80%となるまで、茶葉を乾燥させる。これにより、次工程において、十分な揉み込み処理が行われると共に、製茶揉み込み装置内における茶葉のスムーズな移送・排出を行うことができる。そして、引き続いて行われる揉み込み工程によれば、所定の含水率まで乾燥された茶葉を製茶揉み込み装置に供給し、スクリューを2~20rpmと低速で回転させることにより、切れ葉の発生を防ぎつつ、揉胴内部で十分な圧縮を受けながら茶葉が移送されていくため、茶葉に捻じれが生じて、よれ形がつけられる。さらに、揉み込み装置内で移送されている間に茶葉に圧力が加わるため、茶葉の各部分の水分が均一となり、十分な揉み込み効果が得られる。これにより、後工程の揉捻工程における揉み込みが容易となり、「細よれ」の外観を有する茶を製造することができる。なお、本発明において、茶葉の含水率は乾量基準含水率(D.B)を意味している。茶葉の乾量基準含水率は、茶葉の乾燥重量に対する、乾燥前の茶葉に含まれる水分の重量の割合(%)であり、乾量基準含水率(%)=乾燥前の茶葉に含まれる水分の重量/乾燥後の茶葉の重量、で求められる。
【0015】
また、本発明の製茶揉乾方法は、乾燥工程が、ネット型乾燥機、高温熱風乾燥機、炒り蒸し機、殺青機、高温熱風殺青機、葉打機、ワイド粗揉機及び粗揉機からなる群より選ばれる少なくとも1つの揉乾装置を用いて行うことも好ましい。これにより、乾燥工程に好ましく用いられる装置が選択される。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、以下のような優れた効果を有する製茶揉み込み装置及びこの装置を用いた製茶揉乾方法を提供することができる。
(1)装置内に供給された茶葉に対し、茶葉を移送しながら徐々に圧縮し、徐々に大きな力を加えていく構造であるので、切れ葉が発生し難く、最終的に大きな力で茶葉を捻じって茶葉を揉み込みし、よれ形をつけることができる。
(2)後工程の揉捻工程における揉み込みが容易となり、「細よれ」の外観を有する茶を製造することができる。
(3)十分な茶葉の圧縮による揉み込み処理により、茶葉の内部水分が茶葉の表面側に移行し易くなるため、茶葉の各部分の水分が均一となり、揉み込み処理が十分に行われる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本実施形態に係る製茶揉み込み装置を示す(a)分解斜視図及び(b)平面図である。
図2図1に示す製茶揉み込み装置の断面図であって、図1(b)のI-I線断面図である。
図3】本実施形態に係る製茶揉み込み装置を構成するスクリューを示す(a)揉胴内に収容されている状態の側面図、(b)スクリューシャフトの大径側(排出部側)から見た図及び(c)スクリューシャフトの小径側(投入部側)から見た図である。
図4】本実施形態に係る製茶揉み込み装置を構成する排出部形成プレートを示す(a)表面図、(b)側面図、(c)裏面図及び(d)図4(a)のII-II線断面図である。
図5】本実施形態に係る製茶揉み込み装置の使用状態を示す説明図であり、(a)排出部形成プレートを取付けする前の状態を示す図、(b)装置内に茶葉を供給して揉み込み処理を開始したところを示す図、及び(c)茶葉が排出部形成プレートを押すことによって排出部形成プレートが後退し、生じた排出部から茶葉が排出されているところを示す図である。
図6】本実施形態に係る製茶揉乾方法を概略的に示すフローチャートである。
図7】実施例1の製茶工程を示すフロー図である。
図8】実施例1で製造された緑茶を示す写真である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の実施形態に係る製茶揉み込み装置及びこの装置を用いた製茶揉乾方法について詳細に説明する。本実施形態に係る製茶揉み込み装置1は、図1(b)及び図2に示すように、茶葉が投入される投入部11と、円筒状の揉胴2内に配置されたスクリュー3を回転させることにより揉胴2内に供給された茶葉を揉胴2の他端側に移送しながら揉み込みする揉み込み部12と、揉み込みされた茶葉を揉胴2から排出する排出部13から概略構成されている。図1図5に示すように、本実施形態に係る製茶揉み込み装置1は、円筒状の揉胴2と、この揉胴2内に配置されたスクリュー3と、このスクリュー3を回転駆動させる駆動モーター4とを備えている。揉胴2の一端側の上方は開口しており、この開口と連続して投入部11を構成するホッパー7が設けられている。茶葉がホッパー7内に投入されると、揉胴2内に茶葉が受入される。他方、円筒状の揉胴2の他端側には開口部21を有しており、この開口部21には略円錐台状の排出部形成プレート5が進退自在に配置され、この排出部形成プレート5は押圧手段6によって、スクリュー3による茶葉の移送方向とは反対方向へ押付けされるように構成されている。上述した排出部13は、排出部形成プレート5と開口部21との間の隙間に形成されているところ、スクリュー3により揉胴2内を移送された茶葉が排出部形成プレート5を押すことによって、排出部形成プレート5が後退して排出部13が広がり、茶葉が排出されるように構成されている。
【0019】
まず、揉み込み装置1内に配置されたスクリュー3について、図1~3を参照して説明する。揉み込み装置1の揉胴2の内部には、スクリューシャフト31の外周面にスクリュー羽根32がらせん状に設けられたスクリュー3が回転自在に配置されている。スクリューシャフト31の一端は駆動モーター4と接続されており、駆動モーター4の駆動によってスクリュー3は所定の回転数で回転できるように構成されている。本発明におけるスクリューシャフト31は、ホッパー7が設けられている揉胴2の一端側からスクリュー3による移送方向の他端側に向かって、その径が漸次拡大する形状に形成されている。本実施形態においては、スクリューシャフト31は、その径が漸次拡大する形状に形成された拡径部310と、拡径部310の径大部分の端部から延びる略同径の同径部311とから構成されている。
【0020】
スクリューシャフト31の拡径部310に関し、この拡径部310の軸方向の長さは、揉み込み処理を十分に行う観点から、スクリュー羽根32のらせん状の巻回数が2以上となる長さとすることが好ましく、3以上となる長さとすることがより好ましく、4以上となる長さとすることがさらに好ましい。また、スクリューシャフト31の拡径部310の勾配面の傾斜角度31θは、実効的な揉み込み処理を行うことができ、装置のサイズも大きすぎないようにする観点から、スクリューシャフト31の軸方向に対して0.5度~10度が好ましく、1度~5度がより好ましく、1度~3度がさらに好ましい。特に限定されないが、本実施形態に係る拡径部310の勾配面の傾斜角度31θは、1.35度となっている。このように、スクリューシャフト31の径を漸次拡大する形状に形成することにより、スクリューシャフト31の外周面と揉胴2の内周面とで囲まれる空間が、スクリュー3の移送方向に向かって漸次狭くなり容積が徐々に減少するため、揉み込み装置1内で茶葉が移送される際に漸次増大する圧力が茶葉に加わるようになっている。そのため、揉胴2内部を移送される茶葉が徐々に圧縮され、捻じれて茶葉によれ形がつけられる。また、茶葉の表面側に茶葉の内部水分が移行しやすくなるため、茶葉の各部分の水分が均一となり、揉み込み処理が十分に行われる。それゆえ、本実施形態に係る揉み込み装置1によれば、従来の葉打機等の装置と比較して、十分な揉み込み処理を行うことができ、細よれ形状の荒茶に仕上げることができる。
【0021】
他方、このスクリューシャフト31の他端側の同径部311は、揉胴2の他端側の開口部21よりも突出するように配置されており、この同径部311の外周面には、このスクリューシャフトの同径部311と同心状に、後述する排出部形成プレート5が摺動自在に外嵌される。スクリューシャフト31の同径部311の軸方向の長さは、排出部形成プレート5の挿通孔51の孔深さ(円錐台における底面から上面までの高さ)よりも長くなるように設計されており、スクリューシャフト31の同径部311の外周面を排出部形成プレート5が摺動することにより、開口部21を進退するように構成されている。また、スクリューシャフト31の同径部311の外径311Dは、移送される茶葉が排出部形成プレート5の摺動面に入り込まないよう、排出部形成プレート5の挿通孔51の孔径51Dよりも僅かに小さい程度に設計されている。
【0022】
また、本実施形態に係るスクリュー羽根32は、スクリューシャフト31の拡径部310にらせん状に配置されている。このスクリュー羽根32のらせん状の巻回数は、揉み込み処理を十分に行う観点から、2以上とすることが好ましく、3以上とすることがより好ましく、4以上とすることがさらに好ましい。また、図3に示すように、本実施形態におけるスクリュー羽根32の巻回数は4であるところ、その巻きピッチ32a~32dは、スクリュー3による茶葉の移送方向Aに向かって、漸次狭くなるように設計されている。これにより、スクリュー羽根32の各ピッチにおける、揉胴2の内周面、スクリューシャフト31の外周面及びスクリュー羽根32とで囲まれる空間が、茶葉の移送方向に向かって漸次狭くなるため、茶葉が移送されるに従って茶葉の収容空間が確実に狭くなり、茶葉密度が徐々に増加する。それゆえ、茶葉が徐々に圧縮されながら移送されるため、茶葉のよれ形がより確実に形成されると共に、茶葉の内部水分が茶葉の表面側に移行し易くなり、揉み込み処理が十分に行われる。スクリュー羽根32の巻きピッチは、各々直前のピッチの75%~95%となるように漸次狭く形成されることが好ましく、直前のピッチの85%~95%となるように漸次狭く形成されることがより好ましい。特に限定されないが、本実施形態においては、直前のピッチを100%とすると、ピッチ2(32b)はピッチ1(32a)の90%、ピッチ3(32c)はピッチ2(32b)の92%、ピッチ4(32d)はピッチ3(32c)の94%となるようにピッチ長さが漸次減少するように形成されており、最終的には、ピッチ4(32d)は、ピッチ1(32a)の約78%のピッチ長さとなっている。
【0023】
さらに、スクリュー羽根32の外径32Dは、揉胴2の内径2Dと略同程度の大きさとなるように形成されている。具体的には、例えば、揉胴2の内径2Dに対し、スクリュー羽根32の外径32Dは、2D-32D=10mm以下となるように形成することが好ましく、2D-32D=7mm以下となるように形成することがより好ましい。これにより、揉胴2の内壁とスクリュー羽根32の外径の外側との間に移送される茶葉が入り込み、スクリュー羽根32のエッジで茶葉が切断されて切れ葉が生じるのを防ぐことができる。
【0024】
次に、排出部形成プレート5について、図2及び図4~5を参照して説明する。排出部形成プレート5は、円錐台状に形成されてテーパー状の周側面52を有しており、揉胴2の開口部21に進退自在に配置され、排出部形成プレート5のテーパー面52と揉胴2の開口部21との間に形成される環状の隙間によって排出部13が形成されるように構成されている。
【0025】
本実施形態において、排出部形成プレート5は、揉胴2の開口部21に進退自在に配置されるように、スクリューシャフト31の拡径部310の先端から延びる同径部311に摺動可能に外嵌されている。それゆえ、図4に示すように、排出部形成プレート5は、スクリューシャフトの同径部311を挿通させるための挿通孔51を、円錐台の上面及び底面を貫くように有しており、この挿通孔51の内壁53はスクリューシャフト31の同径部311の外周面を摺動可能な摺動面53として形成されている。本実施形態においては、挿通孔51の内壁53には複数の環状の凹溝53aが形成されており、排出部形成プレート5がスクリューシャフト31を摺動した際に、挿通孔51の摺動面53に入り込む水分や微細な粉屑を凹溝53aの溝内に逃がすことができるようになっている。また、図4(c)に示すように、排出部形成プレート5の裏面側には、押圧手段6の連結部材61を固定するためのネジ穴54が環状に一定間隔で配置されている。茶葉の揉み込みは、排出部形成プレート5の表面のテーパー状の周側面52と揉胴2の内周面との間で行われるところ、排出部形成プレート5の周側面52の傾斜角度52θは、揉み込み処理を十分に行う観点から、排出部形成プレート5の摺動方向に対して20度~45度であることが好ましく、20度~30度であることがより好ましい。特に限定されないが、本実施形態に係る排出部形成プレート5の周側面52の傾斜角度52θは、25度となっており、排出部形成プレート5の周側面52の長さ(円錐台における勾配面の長さ)は127mm、排出部形成プレート5の挿通孔51の深さ(円錐台における底面から上面までの高さ)は120mmとなっている。これにより、排出部形成プレート5の周側面52の長さを一定程度大きくすることができるため、揉胴2の内周面と排出部形成プレート5の周側面52との間での茶葉の揉み込みを十分に行うことが可能となる。また、この角度とすることによって、揉胴2の内周面から排出部形成プレート5の周側面52方向への力が伝わり易くなるため、この間隙部分で揉み込みされた茶葉によって排出部形成プレート5が後退する方向に押されやすくなり、茶葉の排出もスムーズに行われる。
【0026】
次に、茶葉の移送方向とは逆の方向に排出部形成プレート5を押付けする押圧手段6について、図1、2を参照して説明する。本実施形態に係る押圧手段6は、排出部形成プレート5の裏面側と連結するための複数個の連結部材61と、これと連結して排出部形成プレート5を支持する支持プレート60と、支持プレート60に接続され、支持プレート60を介して排出部形成プレート5を押圧するように作用する圧縮ばね62と、圧縮ばね62による押圧レベルを調整可能な圧調整ハンドル63とから構成されている。押圧手段6は、圧調整ハンドル63を回して圧縮ばね62を圧縮させることにより、支持プレート60と連結部材61を介し、排出部形成プレート5が茶葉の移送方向とは逆の方向に押付けされる。このとき、押圧手段6の支持プレート60は揉胴2の両側方に平行に配置されたレール8に係止されて案内されるように構成されているので、排出部形成プレート5の移動方向、すなわち、排出部形成プレート5の押付け方向が固定される。押圧手段6による押付け力は、押付け力が弱すぎると排出部13が大きく開きすぎてしまい、茶葉の揉圧が弱くなるおそれがあるため、揉胴2内に投入される茶葉の量やスクリュー3の回転数等に応じて押圧手段6による押付け力のレベルを調整することが好ましい。
【0027】
本実施形態に係る製茶揉み込み装置1においては、図5に示すように茶葉の揉み込みが行われる。図中の矢印Aは茶葉の移送方向を示し、矢印Bは押圧手段6による押付け力が付与される方向を示している。また、白抜きの矢印は、移送された茶葉によって排出部形成プレート5が押される方向を示している。図5(a)は揉胴2の開口部21に排出部形成プレート5を取付けする前の状態を示し、図5(b)は揉胴2の開口部21に排出部形成プレート5を取付けして、揉み込み処理を開始したところを示し、図5(c)は揉胴2内を移送されてきた茶葉が排出部形成プレート5を押すことによって排出部形成プレート5が後退し、生じた排出部13から茶葉が排出されているところを示している。
【0028】
本実施形態に係る揉み込み装置1は、図5(b)に示すように、揉胴2の開口部21に取付された排出部形成プレート5が、押圧手段6によって、茶葉の移送方向とは逆の方向に押付けされている。図5(b)では、排出部13、すなわち、排出部形成プレート5のテーパー面52と揉胴2の開口部21との間に形成される環状の隙間は僅かであるか、ほとんど無い状態にセットされている。この状態で駆動モーター4を駆動し、スクリュー3を2~20rpmと低速で回転させた状態でホッパー7に茶葉を投入すると、茶葉はスクリュー羽根32に押されてゆっくりと移送されながら、揉胴2の内周面とスクリュー3の外周面との間で圧縮され、茶葉どうしがスクリューの回転作用により捻じれ合った状態を保ちながら茶葉の揉み込みが行われる。本実施形態に係る製茶揉み込み装置1によれば、スクリューシャフト31の径が茶葉の移送方向Aに向かって漸次拡大する形状に形成されており、スクリュー羽根32のピッチは茶葉の移送方向Aに向かって、漸次狭くなるように構成されている。これにより、揉胴2の内周面、スクリューシャフト31の外周面及びスクリュー羽根32とで囲まれる空間が、茶葉の移送方向に向かって漸次狭くなるため、茶葉が移送されるに従って茶葉の収容空間が確実に狭くなり、茶葉密度が徐々に増加する。それゆえ、茶葉が徐々に圧縮されながら移送されるため、茶葉のよれ形がより確実に形成されると共に、茶葉の内部水分が茶葉の表面側に移行し易くなり、揉み込み処理が十分に行われる。さらに、排出部13近傍に配置されている排出部形成プレート5は円錐台状に形成されているために、揉胴2の内周面と排出部形成プレート5の周側面52との間隙は、揉胴2の開口部21に向かってより狭くなっている。それゆえ、茶葉が排出される際にさらなる力が茶葉に加わるようになるため、茶葉が捻じり合ってよれ形がより確実に形成されると共に、茶葉の内部水分が茶葉の表面側に移行し易くなり、揉み込み処理が十分に行われる。
【0029】
図5(c)に示すように、揉胴2内を移送された茶葉は、揉胴2の開口部21近傍で、排出部形成プレート5のテーパー面52に強制的に押し付けられ、排出部形成プレート5のテーパー面52を揉胴2の内部から押すように作用する。ここで、茶葉が排出部形成プレート5のテーパー面52を押す力が、押圧手段6による排出部形成プレート5の押付け力を超えると、排出部形成プレート5が揉胴2の開口部21から後退して排出部13が広がり、茶葉が排出部13から排出される。本実施形態の揉み込み装置1によって、排出部13から排出される茶葉は、一枚一枚の茶葉は切断されておらず、複数の茶葉がまとまってよれた状態で排出される。そのため、後工程の揉捻工程においては、従来の葉打機を経た茶葉のような玉状の茶葉よりも揉み込みがしやすく、細よれ形をつけやすいという利点を有する。このようにして、本実施形態に係る製茶揉み込み装置1によれば、茶葉表面と茶葉内部の水分量を均一化させながら、理想的なよれ形をつけることができ、十分な茶葉揉み込みを行うことができる。
【0030】
なお、上述した本発明に係る製茶揉み込み装置1は、主として、蒸熱工程と揉捻工程との間に行われる製茶揉乾方法において使用されるが、揉圧機能を有する中揉機や揉捻機等にも転用することも可能である。
【0031】
続いて、本発明に係る製茶揉み込み装置1を用いた製茶揉乾方法について説明する。図6に示すように、本発明に係る製茶揉乾方法は、蒸熱工程S1と揉捻工程S4との間に行われる製茶揉乾方法であって、乾燥工程S2と揉み込み工程S3とから概略構成されている。なお、図6に示すフローチャートでは、蒸熱工程S1、乾燥工程S2、揉み込み工程S3及び揉捻工程S4が連続的に示されているが、蒸熱工程S1と乾燥工程S2との間には、蒸葉処理工程等の他の工程が設けられていてもよく、同様に、揉み込み工程S3と揉捻工程S4との間にも、粗揉工程等の他の工程が設けられていてもよい。
【0032】
[乾燥工程]
まず、茶葉を乾燥させる乾燥工程S2について説明する。この乾燥工程S2では、蒸熱工程S1で蒸熱された茶葉を乾量基準含水率(D.B)が250~80%となるまで乾燥させることが行われる。蒸し機で蒸された茶葉は含水率が300%を超えるほど水分量が多いところ、後工程の揉み込み工程S3における茶葉の揉み込みには茶葉同士の摩擦が必要であるが、揉み込み装置1に投入される茶葉が250%を超える水分を含んでいると、茶葉同士が滑りやすく摩擦が小さいために揉み込みが弱くなり、揉み込み処理の実効性に影響を与える。他方、揉み込み装置1に投入される茶葉の含水率が80%未満であると、茶葉同士の摩擦が大きくなりすぎるため、揉み込み装置1内での茶葉の移送や排出にあたって抵抗が増し、茶葉自体がスクリューシャフト31やスクリュー羽根32に付着し易くなると共に、揉胴2の内周面に対して茶葉がスリップし易くなる。それゆえ、茶葉がスクリュー3に固着した状態でスクリュー3が空回りし、装置1から茶葉が排出されなくなるという共廻り現象が発生する。このため、本実施形態に係る乾燥工程S2においては、次工程の揉み込み工程S3における茶葉の揉み込みの実効性を高めると共に揉み込み装置1での共廻り現象の発生を防止するため、蒸熱工程S1で蒸熱された茶葉を乾量基準含水率(D.B)が250~80%となるまで乾燥させることが重要である。より詳細には、本実施形態に係る製茶揉乾方法を、通常の葉打機等による葉打工程に替えて行い、通常の粗揉機による粗揉工程は別途実施する場合には、茶葉の乾量基準含水率(D.B)が250~130%となるまで乾燥させることが好ましく、220~160%となるまで乾燥させることがより好ましく、210~180%となるまで乾燥させることがさらに好ましい。また、本実施形態に係る製茶揉乾方法を、通常の葉打機等による葉打工程と通常の粗揉機による粗揉工程とを兼ねた方法として行う場合には、茶葉の乾量基準含水率(D.B)が200~80%となるまで乾燥させることが好ましく、160~100%となるまで乾燥させることがより好ましく、130~100%となるまで乾燥させることがさらに好ましい。
【0033】
本実施形態に係る乾燥工程においては、蒸熱された茶葉を所定の含水率となるまで乾燥させることができれば、あらゆる装置・方法が適用可能であるが、いわゆる、製茶における乾燥曲線に沿うように、風量、排気温度及び熱風温度等の乾燥条件を適宜調整して乾燥を行うことが好ましい。乾燥曲線に沿って乾燥させることで、茶葉表面からの蒸散速度と内部拡散の速度が平衡して乾燥が行われるため、恒率乾燥を維持することができる。なお、乾燥にあたって茶葉の表面温度が36℃を超えると、茶葉が上乾きの状態となりやすく、減率乾燥となって茶葉の表面温度が上昇し、クロロフィルが黄褐色のフェオフィチンに変化して茶葉の色が退色し、茶の品質が低下するおそれを有する。そのため、茶葉の表面温度が36℃を超えないように乾燥条件を調整することが好ましい。
【0034】
本実施形態に係る乾燥工程において用いられる装置としては、特に限定されないが、ネット型乾燥機、高温熱風乾燥機(装置内に200~350℃の高温熱風を送風して茶葉を乾燥させる装置)、炒り蒸し機、殺青機、高温熱風殺青機(装置内に200~350℃の高温熱風を供給し、熱風で生茶葉を殺青する装置)、葉打機、ワイド粗揉機及び粗揉機等が好適に用いられ、これら装置を単独で、または複数組み合わせて使用することが可能であるが、所定の含水率になるまで乾燥することが可能なものであれば、その種類は問わない。これらの乾燥機能を備えた装置に蒸熱工程S1後の茶葉を供給し、風量、乾燥時間及び熱風温度を自在に調整して茶葉を乾燥させることができる。なお、乾燥工程S2において、これら装置に付設されている揉み手等で茶葉を揉み込み処理することも勿論可能である。さらに、他の実施形態として、上述した乾燥工程の途中に、茶葉をローラープレス機等の加圧手段で加圧する加圧処理を行ってもよい。例えば、乾燥工程を複数の工程に分けて、その工程間にローラープレス機により加圧処理を行うことが挙げられる。これにより、茶葉の内部水分が茶葉の外側に移行しやすくなるため、更に恒率乾燥を継続させることができ、より一層乾燥効率を上昇させることができる。
【0035】
さらに、蒸熱工程S1と乾燥工程S2との間に、茶葉を打圧する等の蒸葉処理工程を設け、蒸葉処理された茶葉に対して、乾燥処理を施してもよい。
【0036】
上述した乾燥工程S2を経た茶葉は、引き続き、後述する揉み込み工程S3による揉み込みが行われる。
【0037】
[揉み込み工程]
次に、乾燥工程S2を経た茶葉を揉み込みする揉み込み工程S3について説明する。本実施形態に係る揉み込み工程S3においては、本発明に係る揉み込み装置1に上述した乾燥工程S2を経た茶葉を供給し、スクリュー3を回転させて茶葉を揉み込み装置1の揉胴2内で移送させることにより、茶葉の揉み込みを行う。揉み込み装置1に供給された茶葉は、揉胴2の内周面と漸次拡径するスクリューシャフト31の外周面との間の徐々に狭くなる空間をスクリュー羽根32で押されながら移送されるところ、その際に茶葉が徐々に圧縮されて揉圧される。茶葉に圧力が加わることにより、茶葉の各部分の水分が均一化されるため、揉み込み処理が十分に行われると共に茶葉によれ形をつけることができる。
【0038】
本実施形態に係る揉み込み工程S3においては、茶葉の揉み込みの実効性を高める観点、すなわち、茶葉の各部分の水分を均一化させながら、茶葉に確実によれ形をつける観点から、スクリューの回転数を2~20rpmと低速に調整することが好ましく、5~15rpmとすることがより好ましく、5~10rpmとすることが特に好ましい。このように、スクリューの回転数を低速とすることにより、揉胴2の内部において茶葉がゆっくりと圧縮されながら移送されるため、茶葉が切断されて切れ葉が生じるのを防ぐことができ、さらに、揉胴2内での茶葉の揉圧時間も十分に取ることができるため、揉み込みが好適になされる。
【0039】
また、揉み込み工程S3においては、揉み込み装置1の揉胴2内で揉み込みされた茶葉を揉胴2の他端側の開口部21からそのまま押し出して排出するのではなく、移送方向の開口部21に排出部形成プレート5を進退自在に配置して、開口部21と排出部形成プレート5との間に生じる環状間隙を排出部13とし、押圧手段6で茶葉の移送方向とは逆の方向に押付け力を付与しながら、揉み込みされた茶葉をこの排出部13から排出させる。これにより、揉み込み工程3において、揉み込み装置1内で移送される茶葉が排出される際にさらなる圧力が茶葉に加わり、茶葉のよれ形がより確実に形成されると共に、茶葉の内部水分が茶葉の表面側に移行し易くなり、揉み込み処理が十分に行われる。
【0040】
さらに、本実施形態に係る揉み込み工程S3においては、揉み込み装置1に配置された排出部形成プレート5の周側面52の傾斜角度52θが、排出部形成プレート5の摺動方向に対して20度~45度である揉み込み装置1を使用することも好ましい。これにより、円錐台状に形成された排出部形成プレート5の周側面52の長さ(勾配面長さ)を一定程度長くできるため、揉胴2の内周面と排出部形成プレート5の周側面との間隙での茶葉の揉み込みを十分に行うことができる。また、この角度とすることによって、揉胴2の内周面側から排出部形成プレート5の周側面方向への力が伝わり易くなるため、この間隙部分で揉み込みされた茶葉によって排出部形成プレート5が後退する方向に押されやすくなる。それゆえ、共廻り現象も生じ難くなり、茶葉の排出もスムーズに行われる。
【0041】
また、本実施形態に係る揉み込み工程S3においては、揉み込み装置1内に設けられたスクリュー羽根32のピッチが、茶葉の移送方向に向かって、漸次狭くなるように構成されている揉み込み装置1を用いることも好ましい。これにより、スクリュー羽根32の各ピッチにおける、揉胴2の内周面、スクリューシャフト31の外周面及びスクリュー羽根32とで囲まれる空間が、茶葉の移送方向に向かって漸次狭くなるため、茶葉が移送されるに従って茶葉の収容空間が確実に狭くなり、茶葉密度が徐々に増加する。それゆえ、茶葉が徐々に圧縮されながら移送されるため、茶葉のよれ形がより確実に形成されると共に、茶葉の内部水分が茶葉の表面側に移行し易くなり、揉み込み処理が十分に行われる。
【0042】
本実施形態に係る揉み込み工程S3においては、茶葉にある程度の水分量が含まれていることが後工程の揉捻工程S4における揉み込みに影響するため、揉み込み装置から排出される茶葉の乾量基準含水率(D.B)が70%未満とならないよう、茶葉の含水率に留意することが好ましく、茶葉の乾量基準含水率(D.B)が80%未満とならないよう留意することがより好ましい。より詳細には、本実施形態に係る製茶揉乾方法を、通常の葉打機等による葉打工程に替えて行い、通常の粗揉機による粗揉工程は実施する場合には、揉み込み装置から排出される茶葉の乾量基準含水率(D.B)が230~130%となるように調整することが好ましく、210~150%となるように調整することがより好ましく、200~160%となるように調整することがさらに好ましい。また、本実施形態に係る製茶揉乾方法を、通常の葉打機等による葉打工程と通常の粗揉機による粗揉工程とを兼ねた方法として行う場合には、揉み込み装置から排出される茶葉の含水率が180~80%となるように調整することが好ましく、150~90%となるように調整することがより好ましく、120~90%となるように調整することがさらに好ましい。
【0043】
上述した本発明に係る製茶揉み込み装置及び製茶揉乾方法によれば、蒸熱工程と揉捻工程との間に行われる揉乾工程において、従来工程等と比べ、茶葉の揉み込みを十分に行うことができ、「細よれ」の外観を有する茶を製造することができる。
【実施例0044】
以下、本発明を実施例及び比較例によりさらに詳細に説明するが、本発明はこの実施例等によってなんら限定されるものではない。
【0045】
[実施例1]
図1図5に示す、本実施形態に係る製茶揉み込み装置1を用いて、図7のフローに示す工程で実施例1に係る茶を製造した。製茶工程は、「蒸熱工程」、「蒸葉処理工程」、「乾燥工程」、「本発明の製茶揉み込み装置1による揉み込み工程」、「粗揉工程」、「揉捻工程」、「中揉工程」、「精揉工程」及び「最終乾燥工程」の順に行った。なお、図1では、製茶揉み込み装置1における押圧手段6を構成する圧縮ばね62は2本図示されているが、本実施例及び比較例では4本の圧縮ばね62を用いた。また、乾燥工程は、ネット型乾燥機とローラープレス機を用いて行い、ネット型乾燥機で一定程度まで乾燥させた後、ローラープレス機で加圧処理を行い、その後再度ネット型乾燥機で所定の含水率となるまで乾燥させた。より具体的には、生茶葉50kgを蒸機に投入し、蒸熱処理を行った。蒸し茶葉の乾量基準含水率は315%であった。この蒸し茶葉をネット型乾燥機に供給し、ベルトコンベア上で天地返ししながら乾燥させた。ネット型乾燥機による乾燥工程の途中には、ローラープレス機による加圧処理を行った。乾燥機の設定条件及び乾量基準含水率は以下表1の通りである。その後、本実施形態に係る製茶揉み込み装置1に投入し、スクリュー回転数7rpm、押圧手段6による押付け力3660Nの条件にて揉込みを行った。なお、押圧手段6による押付け力は、図1(a)及び(b)に示されているように、圧調整ハンドル63を回して圧縮ばね62による押圧レベルを調整した後の圧縮ばね62の変位分の長さと、圧縮ばね62のばね定数とから求めることができる。本実施例及び比較例で使用した圧縮ばね62のばね定数は、4本のうちの2本が12.2N/mm、2本が6.1N/mmであり、圧縮ばね62の変位分の長さはいずれも100mmであった。このように、押圧手段6による押付け力を調整することで、茶葉の揉み込み処理が十分となるような揉圧とすることが容易になる。本実施例での揉み込み後の茶葉の乾量基準含水率は174%であった。後工程として、常法及び従来の処理装置を用いて粗揉、揉捻、中揉、精揉及び最終仕上げの乾燥処理を行った。
【0046】
【表1】
【0047】
本実施例で製造された茶の外観写真を図8に示す。本実施例によって得られた煎茶は、色、香り、味は従来製法のものと遜色がなく、図8に示すように、紡錘形の細よれ形状の外観を呈しており、従来の葉打機等を用いて製造したものと比べて整っていた。この結果より、本発明に係る揉み込み装置及びこれを用いた揉乾方法によれば、形状、色、香り、味のすべての点において高品質な茶を製造できることがわかった。
【0048】
[比較例1]
上述した実施例1で使用した製茶揉み込み装置1で使用したスクリュー3について、スクリューシャフト31の拡径部310を全て同径(Φ154mm)とし、スクリュー羽根の巻回数及び巻きピッチを次のように変更した以外は同じ構成としたスクリューに替え(以下表2参照)、上記実施例1と同様の方法にて比較例1に係る茶を製造した。
・拡径部の勾配面の傾斜角度:0度(傾斜なし、全て同径)
・スクリュー羽根の巻回数:4.5回巻き
・巻きピッチ:直前のピッチを100%とすると、ピッチ2はピッチ1の88%、ピッチ3はピッチ2の89%、ピッチ4はピッチ3の85%、ピッチ5(0.5巻)はピッチ4の88%とした。
【0049】
本比較例1によれば、揉み込み装置から排出された茶葉を確認したところ、揉み込みが不十分であり、最終的に得られた茶の外観も実施例1の茶と比べて、締まり不足の状態であった。このことから、十分な揉み込み処理を行い、細よれ形状の茶を安定的に得るためには、揉胴2の内周面とスクリュー3の外周面との間で、茶葉が徐々に圧縮を受けながら移送されることが重要であることがわかった。
【0050】
[比較例2]
上述した実施例1で使用した製茶揉み込み装置1で使用した排出部形成プレート5について、排出部形成プレート5の周側面52の傾斜角度52θを57度としたものに変更した以外は同じ構成とした排出部形成プレートに替え(以下表2参照)、上記実施例1と同様の方法にて比較例2に係る茶を製造することを試みた。
・排出部形成プレートの周側面の傾斜角度:57度
・排出部形成プレートの周側面の長さ(円錐台における勾配面の長さ):71mm
・排出部形成プレート5の挿通孔51の深さ(円錐台における底面から上面までの高さ):50mm
【0051】
本比較例2によれば、茶葉が揉胴内に滞留した状態でスクリューが空回りしてしまい、揉み込み装置から茶葉が排出されなくなるという共廻り現象が発生した。このことから、排出部形成プレート5の周側面52の傾斜角度52θを大きくしすぎると、揉胴2の内周面から排出部形成プレート5の周側面52方向への力が伝わり難くなるため、この間隙部分で揉み込みされた茶葉によって排出部形成プレート5が後退する方向に押され難くなり、茶葉の排出が滞ってしまったことが考えられた。また、排出部形成プレート5を装置から外し、開口部21近傍に溜まっていた茶葉を回収して確認したところ、揉み込みが不十分であり、よれ形がついておらず、締まり不足の状態であった。
【0052】
【表2】
【0053】
本発明は、上記の実施形態又は実施例に限定されるものでなく、特許請求の範囲に記載された発明の要旨を逸脱しない範囲内での種々、設計変更した形態も技術的範囲に含むものである。
【産業上の利用可能性】
【0054】
本発明は、茶の品質を向上させる新たな製茶装置及び製茶方法を提供するものであり、製茶分野の産業において幅広く役立つものである。
【符号の説明】
【0055】
1 製茶揉み込み装置
11 投入部
12 揉み込み部
13 排出部
2 揉胴
2D 揉胴の内径
21 移送側開口部
3 スクリュー
31 スクリューシャフト
31θ シャフトの傾斜角度
310 拡径部
311 同径部
311D スクリューシャフトの同径部の外径
32 スクリュー羽根
32D スクリュー羽根の外径
32a ピッチ1
32b ピッチ2
32c ピッチ3
32d ピッチ4
4 駆動モーター
5 排出部形成プレート
51 挿通孔
51D 挿通孔の孔径
52 周側面(テーパー面)
52θ 排出部形成プレートの周側面の傾斜角度
53 挿通孔の内壁(摺動面)
53a 凹溝
54 ネジ穴
6 押圧手段
60 支持部
61 連結部材
62 圧縮ばね
63 圧調整ハンドル
7 ホッパー
8 レール
A 茶葉の移送方向
B 押圧手段による押付け方向
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8