IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 極東開発工業株式会社の特許一覧

<>
  • 特開-ギヤケース及び流体圧機器 図1
  • 特開-ギヤケース及び流体圧機器 図2
  • 特開-ギヤケース及び流体圧機器 図3
  • 特開-ギヤケース及び流体圧機器 図4
  • 特開-ギヤケース及び流体圧機器 図5
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024119260
(43)【公開日】2024-09-03
(54)【発明の名称】ギヤケース及び流体圧機器
(51)【国際特許分類】
   F04C 2/18 20060101AFI20240827BHJP
【FI】
F04C2/18 311B
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023026035
(22)【出願日】2023-02-22
(71)【出願人】
【識別番号】000163095
【氏名又は名称】極東開発工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002734
【氏名又は名称】弁理士法人藤本パートナーズ
(72)【発明者】
【氏名】樫本 有司
【テーマコード(参考)】
3H041
【Fターム(参考)】
3H041AA02
3H041BB02
3H041CC13
3H041DD03
3H041DD04
3H041DD10
(57)【要約】
【課題】カバーの変形を抑制できるギヤケースを提供する。
【解決手段】本発明のギヤケース4は、流体との間で力の伝達を行うギヤを収容するギヤケースであって、ギヤを収容する収容室を形成するケース本体7と、ケース本体に連結されるとともに、収容室を流体圧に対抗して閉じるカバー8と、を備え、ケース本体は、収容室の内外を連通し、流体を出し入れする吸込口及び吐出口を備え、カバーは、ケース本体に連結された状態において、収容室と対向する内面及びカバーの厚み方向において内面と反対側の外面を有するカバー本体と、カバー本体の外面側に連結され、外方に延伸するリブと、を備えるよう構成される。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
流体との間で力の伝達を行うギヤを収容するギヤケースであって、
前記ギヤを収容する収容室を形成するケース本体と、前記ケース本体に連結されるとともに、前記収容室を流体圧に対抗して閉じるカバーと、を備え、
前記ケース本体は、前記収容室の内外を連通し、流体を出し入れする吸込口及び吐出口を備え、
前記カバーは、
前記ケース本体に連結された状態において、前記収容室と対向する内面及び前記カバーの厚み方向において前記内面と反対側の外面を有するカバー本体と、
前記カバー本体の前記外面側に連結され、外方に延伸するリブと、を備えるギヤケース。
【請求項2】
前記カバーは、前記カバー本体の外縁部分に周方向に間隔をあけて配置され、かつ、前記ケース本体に対して螺合する複数のボルトを備え、
前記周方向において、前記ボルトと前記リブは周期的に配置されるよう構成される、請求項1に記載のギヤケース。
【請求項3】
前記カバーは、前記カバー本体の外縁部分に周方向に間隔をあけて配置され、かつ、前記ケース本体に対して螺合する複数のボルトを備え、
前記周方向において、前記ボルトと前記リブは交互に配置されるよう構成される、請求項1に記載のギヤケース。
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれか1項に記載のギヤケースと、前記ギヤケースに収容され、流体との間で力の伝達を行うギヤと、を備える流体圧機器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ギヤを収容するギヤケース及び該ギヤケースを備える流体圧機器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、流体圧機器における、流体との間で力の伝達をするギヤを収容するギヤケースとして、特許文献1に記載のような歯車ポンプのケースが知られている。ケースは、歯車を収容する収容室を形成するケース本体と、収容室を密閉するカバーと、を備え、ケースは、収容室の内外を連通する吐出口及び吸込口を備え、収容室に収容される歯車は、ケース本体及びカバーに支持されるように構成されている。また、ケース本体とカバーは、ボルト及びノックピンで連結されている。
【0003】
以上のような構成の歯車ポンプによれば、ケース本体とカバーがノックピンで連結されているので、歯車の動作によって収容室内の吐出口側の圧力が高まった場合に、ケース本体が撓む力と、歯車が受ける圧によりカバーがケース本体に対してずれようとする力をノックピンで打ち消すことができる。よって、ケースの撓みやカバーのずれを抑制できるとされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平10-68389号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載のようなギヤケースでは、収容室内の圧力によりカバーが収容室の外方に膨らみ、カバー自体が変形するおそれがあった。なお、このような問題は、歯車ポンプの歯車を収容するギヤケースに限らず、例えば、圧力をかけた液体の液圧でギヤを回転させて回転力を得る、圧力モータのギヤを収容するギヤケースでも起こり得る。
【0006】
そこで、本発明は、カバーの変形を抑制できるギヤケース及び流体圧機器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明のギヤケースは、流体との間で力の伝達を行うギヤを収容するギヤケースであって、前記ギヤを収容する収容室を形成するケース本体と、前記ケース本体に連結されるとともに、前記収容室を流体圧に対抗して閉じるカバーと、を備え、前記ケース本体は、前記収容室の内外を連通し、流体を出し入れする吸込口及び吐出口を備え、前記カバーは、前記ケース本体に連結された状態において、前記収容室と対向する内面及び前記カバーの厚み方向において前記内面と反対側の外面を有するカバー本体と、前記カバー本体の前記外面側に連結され、外方に延伸するリブと、を備えるよう構成される。
【0008】
かかる構成によれば、カバー本体に対して収容室の内方から外方に向かう圧力がかかったとしても、外面から外方に延びるようにリブが設けられるので、リブによってカバー本体が外方に膨らむことを抑制できる。よって、カバーの変形を抑制できる。
【0009】
また、前記カバーは、前記カバー本体の外縁部分に周方向に間隔をあけて配置され、かつ、前記ケース本体に対して螺合する複数のボルトを備え、前記周方向において、前記ボルトと前記リブは周期的に配置されるよう構成されるよう構成することもできる。
【0010】
かかる構成によれば、ボルトとリブが周期的に設けられているので、カバーのうちボルトが配置されない部分が圧力で変形することを抑制できる。
【0011】
また、前記カバーは、前記カバー本体の外縁部分に周方向に間隔をあけて配置され、かつ、前記ケース本体に対して螺合する複数のボルトを備え、前記周方向において、前記ボルトと前記リブは交互に配置されるよう構成することもできる。
【0012】
かかる構成によれば、リブとボルトが交互に設けられているので、カバーのうちボルトが配置されない部分が圧力で変形することを抑制できる。
【0013】
また、本発明の流体圧機器は、前記ギヤケースと、前記ギヤケースに収容され、流体との間で力の伝達を行うギヤと、を備えるよう構成される。
【0014】
かかる構成によれば、カバー本体に対して収容室の内方から外方に向かう圧力がかかったとしても、外面から外方に延びるようにリブが設けられるので、リブによってカバー本体が外方に膨らむことを抑制できる。よって、カバーの変形を抑制できる。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、カバーの変形を抑制できるギヤケース及び流体圧機器を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本発明の一実施形態に係るギヤケースを備えた流体圧機器の斜視図である。
図2】同流体圧機器の手前側の面を示す図である。
図3】同流体圧機器の機器本体の奥側の面を示す図である。
図4図2に示すIV-IV断面図である。
図5】ボルトによる圧縮応力の作用範囲とリブの関係を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明の一実施形態に係るギヤケース4を備える流体圧機器1について図1乃至図5を参照して説明する。流体圧機器1は、流体との間で力の伝達を行う機器である。なお、説明の便宜上、奥行方向は、図1に記載の方向を基準に説明する。
【0018】
図1に示すように、流体圧機器1は、流体との間で力の伝達を行う機器本体2と、機器本体2に対する流体の流れを制御する開閉部3と、を備える。本実施形態の流体圧機器1は、外部から入力された力を流体に伝達するポンプであり、具体的には、動作油に力を伝達する油圧ポンプである。
【0019】
開閉部3は、内部に一対の流路(図示しない)と、各流路に配置されるバルブ(図示しない)と、各バルブを操作するための操作部31と、流路及びバルブを内部に収容する筐体32と、を備える。本実施形態のバルブはボールバルブであり、流路の流れ方向に直交する軸周りで回動して流路を開閉する。操作部31は、バルブに連結されるとともに、一部が筐体32から露出するように配置されている。このような開閉部3では、操作部31の筐体32から露出する部分を流路の流れ方向に直交する軸周りで回動させることで、ボールバルブを回動させて流路を開閉することができる。
【0020】
図1及び図4に示すように、機器本体2は、箱型で内部に収容室4aを有するギヤケース4と、収容室4aに収容されるギヤ5と、駆動軸6と、を備える。また、機器本体2は、開閉部3との間で流体のやり取りが可能となるように開閉部3と連結されている。ギヤケース4は、ギヤ5を収容する収容室4aを形成するケース本体7と、収容室4aを閉じるようにケース本体7に連結されるカバー8とを備える。
【0021】
図3及び図4に示すように、ケース本体7は、手前側が開放された箱形の部位であり、具体的には、収容室4aの奥側を画定する奥壁部71と、奥行方向から手前側に延びるように設けられ、収容室4aの奥行方向まわりの周方向における端を画定する周壁部72と、を備える。図1に示すように、奥壁部71は、機器本体2が開閉部3に連結された状態において外面(奥側の面)が開閉部3と対向する。また、図3に示すように、奥壁部71には、厚み方向(奥行方向)で貫通する吐出口73及び吸込口74が奥壁部71の外面の面方向で間隔をあけて形成されている。吐出口73及び吸込口74は、収容室4aの内外を連通するように形成された孔であり、機器本体2が開閉部3に連結された状態において、開閉部3の各流路と収容室4aを連通する。図4に示すように、周壁部72には、手前側の端部から奥側に窪むボルト螺合部75が周方向で間隔をあけて複数形成されている。ボルト螺合部75は、後述するカバー8のボルト84を螺合可能な窪みである。
【0022】
カバー8は、ケース本体7の手前側に配置される板状の部位である。具体的に、カバー8は、縦長の長円形の平板状で、ケース本体7の手前側を覆うカバー本体81と、カバー本体81から手前側に延出する複数のリブ82と、カバー本体81から手前側に延出する軸受突起83と、ボルト84と、を備える。
【0023】
図2及び図4に示すように、カバー本体81は、面方向長さに比べて厚みが小さい板状体であり、ケース本体7の手前側の全域を覆うことができる程度の大きさを有する。具体的にカバー本体81は、厚み方向で一方側に位置する内面8bと、厚み方向で他方側に位置する外面8aと、を備える。また、カバー本体81は、厚み方向周りの周方向に延びる外縁部分811を有する。
【0024】
図2に示すように、外縁部分811は、直線状に延びる一対のストレート部81Sと、一対のストレート部81Sを連結する湾曲して延びる湾曲部81Rと、を備える。本実施形態で一対のストレート部81Sは、互いに平行に延びている。また、湾曲部81Rは、略半円形状である。また、外縁部分811にはボルト挿通孔814が複数形成されている。
【0025】
ボルト挿通孔814は、外縁部分811に形成されたカバー本体81の外面8aから内面8bまで貫通する孔であり、外縁部分811の延伸方向に離間して複数(本実施形態では6か所に)形成されている。具体的に、ボルト挿通孔814は、ストレート部81Sに形成されたストレート部用孔814Aと、湾曲部81Rに形成された湾曲部用孔814Bと、を含む。ストレート部用孔814Aは、各ストレート部81Sに複数ずつ形成されており、具体的には各ストレート部81Sの延伸方向の両端部に形成されている。湾曲部用孔814Bは、各湾曲部81Rに1つずつ形成されており、本実施形態では、各湾曲部81Rの延伸方向の略中央部分に形成されている。また、本実施形態で、ボルト挿通孔814は、カバー本体81の面方向の中央線を基準に線対称となるように配置されている。
【0026】
図4に示すように、ボルト84は、頭部841と軸部842とを備え、軸部842がボルト挿通孔814に挿通され、頭部841が外縁部分811の外面8aに当接するように構成されている。本実施形態でボルト84は、ボルト挿通孔814にそれぞれ挿通されている。
【0027】
図5に示すように、カバー本体81には、ボルト挿通孔814に挿通されたボルト84によって、圧縮応力が作用する。カバー本体81の内面8bにおける圧縮応力が分布する範囲である圧縮応力分布範囲は、頭部841の外径(二面幅)と、カバー本体81の外縁部分811の厚みの2倍と、を足し合わせた直径のボルト84の軸中心を中心とした円の範囲内(図5にドットで示す範囲)である。本実施形態の外縁部分811には、圧縮応力分布範囲に含まれる分布領域A1と、圧縮応力分布範囲に含まれない非分布領域A2と、が含まれる。また、本実施形態で、一のボルト84によって生じる分布範囲は、他のボルト84によって生じる分布範囲と重なり合わない。即ち、外縁部分811において、一のボルト84によって生じる分布範囲と他のボルト84によって生じる分布範囲の間には非分布領域A2が位置する。
【0028】
軸受突起83は、カバー本体81の外面8aから外方(手前側)に延出する突起部分であり、具体的には、カバー本体81の面方向において、外縁部分811の内側の部分から手前側に突出する突起である。本実施形態の軸受突起83は、カバー本体81の外面8aから手前側への延出量が略均一になるように設けられている。また、図4に示すように、軸受突起83は、内面8b側(奥側)に後述するギヤ5の手前側軸部53が嵌合する軸収容空間83aを有する。さらに、軸受突起83は、後述する駆動軸6を支持する駆動支持部831を有する。駆動支持部831は、ベアリングを介して駆動軸6を保持するように構成されている。
【0029】
図1及び図2に示すように、リブ82はカバー本体81の外面8aから外方(手前側)に延伸する突起であり、具体的には、カバー本体81の外縁部分811から外方に延伸する突起である。また、リブ82は、外縁部分811の延伸方向、つまり、長円形状における周方向で離間して複数設けられている。本実施形態のリブ82は、カバー本体81の外面8aから手前側への延出量が略均一になるように設けられており、また、リブ82の延出量は軸受突起83の延出量と略同じである。さらに、リブ82は、カバー本体81の面方向における軸受突起83の外縁部に連結されている。即ち、リブ82と軸受突起83は、カバー本体81の面方向において連続するように配置されている。本実施形態のリブ82は、軸受突起83の外縁部から、カバー本体81の面方向における外端部に亘って延びる。また、リブ82は、カバー本体81の面方向の中央線を基準に線対称となるように配置されている。
【0030】
ボルト84とリブ82は、外縁部分811の延伸方向(周方向)において、周期的に配置されており、本実施形態では交互に配置されている。即ち、リブ82は、外縁部分811の延伸方向において、隣り合うボルト84同士の間にそれぞれ配置されている。また、リブ82は、外縁部分811における非分布領域A2の全域を含むように設けられている。即ち、外縁部分811は、全域が、少なくとも分布領域A1及びリブ82が配置された範囲のいずれかの範囲内となるように構成されている。
【0031】
このようなカバー8は、ボルト84によってケース本体7に連結される。具体的には、カバー本体81の内面8bをケース本体7の手前側の端面に当接させるとともに、ボルト挿通孔814をボルト螺合部75と連通させた状態で、ボルト挿通孔814にボルト84を挿通して、該ボルト84をボルト螺合部75に螺合することで、ケース本体7とカバー8が連結される。このとき、カバー本体81の外縁部分811は、全体がケース本体7の周壁部72の手前側の端面(肉厚)に当接した状態となっている。ケース本体7とカバー8が連結されると、収容室4aの手前側が閉じられる。また、カバー8はボルト84によってケース本体7に固定されるので、後述するように収容室4aの流体に圧力がかかったとしても、その流体圧に対抗して収容室4aを閉じることができる。
【0032】
図4に示すように、ギヤ5は、収容室4aの内部に一対設けられており、互いに接して収容室4a内の流体との間で力の伝達を行う。本実施形態で一対のギヤ5は、互いに外接して収容室4a内の流体との間で力のやり取りを行う、いわゆる外接歯車である。具体的にギヤ5は、円柱状で外周面に複数の歯を有するギヤ本体51と、ギヤ本体51と同軸に設けられ、ギヤ本体51から奥側に延びる奥側軸部52と、ギヤ本体51と同軸に設けられ、ギヤ本体51から手前側に延びる手前側軸部53と、を備える。このようなギヤ本体51は、奥行方向に延びる軸周りで回動可能である。また、奥側軸部52及びギヤ本体51は、ケース本体7の内部に収容されており、手前側軸部53は、軸受突起83に形成された軸収容空間83a内に収容されている。このようなギヤ5は、奥側軸部52がケース本体7に支持され、手前側軸部53が軸受突起83によって支持されている。
【0033】
一対のギヤ本体51は、収容室4a内に配置された状態において、互いに噛み合った状態となる。よって、一方のギヤ本体51が軸周りで回動した場合に、該回動が他方のギヤ本体51に伝達されて、他方のギヤ本体51が軸周りで回動する。本実施形態で、一対のギヤ本体51は、互いに逆向きに回動する。
【0034】
駆動軸6は、ギヤ5に対して外部から動力を入力するための軸であり、本実施形態では、車両のエンジンからPTO軸(パワーテイクオフ軸)を介して回動力を入力される。具体的に、駆動軸6は、外部の動力源(本実施形態ではPTO軸)に対して連結される動力連結部61と、動力連結部61から入力された動力をギヤ5に伝達する軸本体62と、を備える。軸本体62は、駆動支持部831によって支持されるとともに、軸受突起83を厚み方向で貫通するように配置されており、奥側の端部が複数のギヤ5のうち1つのギヤ5の手前側軸部53に連結されている。
【0035】
以上のような構成の流体圧機器1の使用方法について説明する。流体圧機器1を使用する場合には、図1に示すように、機器本体2と開閉部3を連結し、開閉部3のバルブを開いて、流路を介して液体(例えば動作油)を収容室4aに対して出し入れ可能な状態とする。
【0036】
次に、動力連結部61を外部の動力源と連結し、外部の動力源の回動力を駆動軸6の軸本体62に入力する。回動力が軸本体62に入力されると、軸本体62及び軸本体62に連結された一方のギヤ5が回動する。また、一方のギヤ5が回動すると、該回動力が他方のギヤ5に伝達されて、他方のギヤ5が一方のギヤ5とは反対向きに回動する。両ギヤ5が回動すると、各ギヤ5のギヤ本体51の歯が収容室4a内の流体を吸込口74側から吐出口73側に移動させて、流体を吐出口73から送り出す。以上のように、流体圧機器1では、外部の動力源から入力された力をギヤ5によって流体に伝達し、流体に圧力を与えることができる。
【0037】
ギヤ5によって流体に力が伝達されると、カバー8に対して、収容室4a内から収容室4a外に向かう力がかかる。ギヤ5から収容室4a内の液体への力の伝達により、収容室4a内の液体には全体的に圧力がかかっているため、カバー8の内面8bには全体的に外向きの力がかかった状態となる。カバー8は、内面8bから外方に向かう力によって、外向きに膨らむように変形しようとする。
【0038】
ここで、カバー本体81の外縁部分811において、分布領域A1にはボルト84による圧縮応力が作用しているので、圧縮応力によってカバー本体81の外向きへの変形が抑制される。また、カバー本体81の外縁部分811において、非分布領域A2にはリブ82が設けられている。よって、カバー本体81の非分布領域A2がリブ82によって補強されているため、カバー本体81の外向きへの変形が抑制される。さらに、外縁部分811よりも内側の部分には軸受突起83が設けられている。よって、外縁部分811よりも内側の部分が軸受突起83によって補強されているので、カバー本体81の外向きへの変形が抑制される。以上のように、カバー本体81の全域がボルト84の圧縮応力、並びに、リブ82及び軸受突起83による補強によって外向きへの変形が抑制された状態となるので、カバー8全体が収容室4aから受けた圧力によって変形することを抑制できる。
【0039】
以上のような構成のギヤケース4によれば、カバー本体81に対して収容室4aの内方から外方に向かう圧力がかかったとしても、外面8aから外方に延びるようにリブ82が設けられるので、リブ82によってカバー本体81が外方に膨らむことを抑制できる。よって、カバー8の変形を抑制できる。
【0040】
また、外縁部分811の周方向においてボルト84とリブ82が周期的に設けられているので、カバー8のうちボルト84が配置されない部分が圧力で変形することを抑制できる。
【0041】
さらに、外縁部分811の周方向においてリブ82とボルト84が交互に設けられているので、カバー8のうちボルト84が配置されない部分が圧力で変形することを抑制できる。
【0042】
また、外縁部分811には、ボルト84の圧縮応力が作用する分布領域A1と、ボルト84の圧縮応力が作用する範囲外の非分布領域A2と、が形成され、リブ82は、カバー本体81の外面8aの面方向において少なくとも非分布領域A2の全域を覆うように配置される。よって、外縁部分811の全域を分布領域A1とする場合に比べてボルト84の数を抑制しつつ、リブ82によってカバー本体81の変形を抑制できる。
【0043】
さらに、リブ82は、軸受突起83と連続して延びるように設けられるので、カバー本体81の外方に向かう力をリブ82と軸受突起83でしっかり受けることができる。
【0044】
また、外縁部分811は、ストレート部81Sと湾曲部81Rとを備え、ボルト挿通孔814は、少なくとも、外縁部分811の周方向におけるストレート部81Sの両端部及び湾曲部81Rの中央部に配置される。よって、収容室4aからカバー本体81に対して外方に向かう力がかかったとしても、該力に対抗して収容室4aを閉じることができる。
【0045】
また、以上のような構成の流体圧機器によれば、カバー本体81に対して収容室4aの内方から外方に向かう圧力がかかったとしても、外面8aから外方に延びるようにリブ82が設けられるので、リブ82によってカバー本体81が外方に膨らむことを抑制できる。よって、カバー8の変形を抑制できる。
【0046】
以上、本発明の実施形態について一例を挙げて説明したが、本発明は前記実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々の変更を加えることができる。
【0047】
例えば、流体圧機器1は、流体に対して圧力を与える油圧ポンプであるとして説明したが、このような構成に限らず、例えば、油圧によってギヤ5が駆動する油圧モータのような、流体から力を伝達される機器として構成することもできる。このような構成を採用する場合には、駆動軸6が、流体からの力を出力するための出力軸となる。
【0048】
また、ギヤ5は、外接歯車として構成される場合について説明したが、このような構成に限らず、内接歯車など流体との間で力の伝達をすることができる種々の構成を採用できる。
【0049】
さらに、流体圧機器1は、機器本体2と、開閉部3と、を備える場合について説明したが、このような構成に限らず、開閉部3を備えない構成とすることもできる。また、開閉部3を備える場合であっても、機器本体2と開閉部3が別体であって、機器本体2を開閉部3に連結可能な構成に限らず、機器本体2と開閉部3が一体の構成とすることもできる。
【0050】
また、ボルト84とリブ82は、外縁部分811の延伸方向において交互に配置される場合について説明したが、このような構成に限らず、例えば、外縁部分811の延伸方向でボルト84が連続して配置される構成やリブ82が連続して配置される構成とすることもできる。具体的には、外縁部分811の延伸方向において、ボルト84、ボルト84、リブ82、ボルト84、ボルト84、リブ82…のように、周期的かつ交互でない配置とすることもできるし、ボルト84、ボルト84、リブ82、ボルト84、リブ82…のように、周期的でも交互でもない配置とすることもできる。このような配置であっても、リブ82によってカバー本体81の変形を抑制できる。
【0051】
さらに、カバー8は軸受突起83を備える場合について説明したが、このような構成に限らず、軸受突起83を備えない構成とすることもできる。
【0052】
また、ボルト84及びリブ82の数及び配置は、図示した数及び配置に限定されず、ギヤケース4の大きさや、流体から受ける力に応じて適宜変更することができる。例えば、リブ82が6つ設けられる場合について図示したが、2つのみ設けられる構成とすることもできる。また、リブ82がカバー本体81の面方向の中央線を基準に線対称に配置される場合に限らず、リブ82が非対称に配置される構成とすることもできる。このような構成であっても、リブ82によってカバー本体81が外方に膨らむことを抑制できる。また、少なくとも、ギヤケースのうち流体から受ける圧力が大きい高圧側(油圧ポンプの場合には吐出口73が設けられる側)にリブ82が設けられていれば、流体からの圧力によって受ける圧力でカバー本体81が外方に膨らむことを抑制できる。高圧側にリブ82が設けられる例としては、例えば、カバー本体81の中央から吐出口73と吸込口74を結ぶ仮想線に沿って吐出口73側に向かって延びるリブ82を設けることができる。このような構成の場合には、高圧側が外方に膨らみ、吐出口73と吸込口74を結ぶ仮想線の吐出口73側からカバー本体81がケース本体7に対してはがれようとすることを抑制できる。また、高圧側において、吐出口73と吸込口74を結ぶ仮想線に対して交差する斜め方向に延びるリブ82を設けることもできる。このような構成の場合には、高圧側が外方に膨らみ、前記斜め方向からカバー本体81がケース本体7に対してはばれようとすることを抑制できる。
【0053】
さらに、駆動軸6は、自動車のPTO軸と連結される場合について説明したが、このような構成に限らず、自動車以外の動力源に連結される構成とし、自動車以外から動力の供給を受ける構成とすることもできる。
【符号の説明】
【0054】
1…流体圧機器、2…機器本体、3…開閉部、31…操作部、32…筐体、4…ギヤケース、4a…収容室、5…ギヤ、51…ギヤ本体、52…奥側軸部、53…手前側軸部、6…駆動軸、61…動力連結部、62…軸本体、7…ケース本体、71…奥壁部、72…周壁部、73…吐出口、74…吸込口、75…ボルト螺合部、8…カバー、8a…外面、8b…内面、81…カバー本体、81R…湾曲部、81S…ストレート部、811…外縁部分、814…ボルト挿通孔、814A…ストレート部用孔、814B…湾曲部用孔、82…リブ、83…軸受突起、83a…軸収容空間、831…駆動支持部、84…ボルト、841…頭部、842…軸部、A1…分布領域、A2…非分布領域
図1
図2
図3
図4
図5