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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024119261
(43)【公開日】2024-09-03
(54)【発明の名称】包装材及び包装方法
(51)【国際特許分類】
   B65D 65/02 20060101AFI20240827BHJP
   B65D 81/03 20060101ALI20240827BHJP
【FI】
B65D65/02 D
B65D81/03 100Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】15
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023026036
(22)【出願日】2023-02-22
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用申請有り TOKYO PACK 2022(展示日:令和4年10月12日~令和4年10月14日)
(71)【出願人】
【識別番号】507369811
【氏名又は名称】特種東海製紙株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(72)【発明者】
【氏名】尾崎 守
【テーマコード(参考)】
3E066
3E086
【Fターム(参考)】
3E066AA25
3E066AA34
3E066BA05
3E066CA01
3E066CA03
3E066CB03
3E066DB02
3E066FA06
3E066GA01
3E066JA23
3E066KA06
3E066KA08
3E066MA09
3E086AA02
3E086AB01
3E086AC04
3E086AC21
3E086AD25
3E086BA04
3E086BA14
3E086BA15
3E086BA43
3E086BB61
3E086BB66
(57)【要約】
【課題】使用時のスリットの開口パターンが非同一となり、廃棄時の環境負荷が低く、且つ、包装の作業性に優れたスリット入り包装材、並びに、当該包装材を使用する包装方法を提供すること。
【解決手段】少なくとも紙層を備える多角形の包装材であって、複数の第1のスリット及び複数の第2のスリット、並びに、前記第1のスリット及び/又は前記第2のスリットによって包囲されており、スリットが存在しない無スリット領域を備えており、前記第1のスリットが直線からなり、前記第2のスリットが直線部分及び屈曲部分を含み、前記多角形の頂点の1つが頂点から延びる第1の切り込みを備え、前記多角形の他の頂点の1つが前記第2のスリットの前記屈曲部分から延びる第2の切り込みを備える、包装材。
【選択図】図1A
【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも紙層を備える多角形の包装材であって、
複数の第1のスリット及び複数の第2のスリット
並びに
前記第1のスリット及び/又は前記第2のスリットによって包囲されており、スリットが存在しない無スリット領域
を備えており、
前記第1のスリットが直線からなり、
前記第2のスリットが直線部分及び屈曲部分を含み、
前記多角形の頂点の1つが頂点から延びる第1の切り込みを備え、
前記多角形の他の頂点の1つが前記第2のスリットの前記屈曲部分から延びる第2の切り込みを備える、包装材。
【請求項2】
前記第1の切り込みが前記頂点の内角を対称に分割する半直線である、請求項1記載の包装材。
【請求項3】
前記第1の切り込みの端部が分岐している、請求項2記載の包装材。
【請求項4】
前記第2の切り込みが前記他の頂点の内角を対称に分割する半直線である、請求項1記載の包装材。
【請求項5】
前記無スリット領域に被包装体が載置される、請求項1記載の包装材。
【請求項6】
前記第1のスリット及び前記第2のスリットの前記直線部分が並行している、請求項1記載の包装材。
【請求項7】
前記複数の第1のスリットが並行している、請求項1記載の包装材。
【請求項8】
前記複数の第2のスリットの前記直線部分が並行している、請求項1記載の包装材。
【請求項9】
前記第2のスリットの端部が前記直線部分からなる、請求項1記載の包装材。
【請求項10】
前記第1のスリットの端部及び/又は前記第2のスリットの端部が湾曲している、請求項9記載の包装材。
【請求項11】
前記第1のスリットが前記無スリット領域を包囲しており、
前記無スリット領域を包囲している前記第1のスリットの間隔が該第1のスリットの長さの1/2~1/4に相当する長さを有する、請求項5記載の包装材。
【請求項12】
前記第2のスリットが前記無スリット領域を包囲しており、
前記無スリット領域を包囲している前記第2のスリットの間隔が該第2のスリットの前記直線部分の長さの1/2~1/4に相当する長さを有する、請求項5記載の包装材。
【請求項13】
前記多角形が矩形である、請求項1記載の包装材。
【請求項14】
前記紙層のみからなる、請求項1記載の包装材。
【請求項15】
請求項1乃至14のいずれかに記載の包装材を使用する包装方法であって、
前記無スリット領域に被包装体を載置し、
前記第1の切り込み及び前記第2の切り込みを係合して、
前記被包装体を前記包装材で包装することを特徴とする、包装方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、少なくとも紙からなる、スリット入り包装材、並びに、当該包装材を使用する包装方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、樹脂製のシート又は不織布にスリットを入れた包装材が知られており、例えば、飲食物入り容器の包装に使用されている。スリット入り包装材は、使用時、すなわち、被包装物の包装中にスリットが開き、開いたスリットから、被包装物を目視で確認可能である。
【0003】
しかし、包装材に使用される樹脂製のシート又は不織布は廃棄時の環境負荷が大きい。
【0004】
一方、特許文献1では、紙製のシートにスリットを入れた包装材が記載されている。紙は、もともと、植物に由来する有機物であり、カーボンニュートラルな再生可能な資源であるので、紙製のシートは廃棄時の環境負荷が低い。更に、特許文献1の包装材は被包装物を包装する際に接着剤を使用してシールする必要がある(特許文献1[0027]等参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2022-24526号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、特許文献1記載の包装材は、多数の直線形のスリットが千鳥状に配設されているために、使用時のスリットの開口パターンが同一となり、開口パターンのデザイン性に劣る。また、包装時に接着剤を使用する必要があり、包装の作業性にも劣る。
【0007】
本発明は、使用時のスリットの開口パターンが非同一となり、廃棄時の環境負荷が低く、且つ、包装の作業性に優れたスリット入り包装材、並びに、当該包装材を使用する包装方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
鋭意検討の結果、本発明者らは、直線形のスリット、並びに、直線部分及び屈曲部分を含むスリットの2種類のスリットの組み合わせを使用し、且つ、特定の係合構造を有する紙層を備える多角形の包装材を使用することにより、上記の目的が達成可能であることを見出し、本発明を完成した。
【0009】
本発明の第一の態様は、
少なくとも紙層を備える多角形の包装材であって、
複数の第1のスリット及び複数の第2のスリット
並びに
前記第1のスリット及び/又は前記第2のスリットによって包囲されており、スリットが存在しない無スリット領域
を備えており、
前記第1のスリットが直線からなり、
前記第2のスリットが直線部分及び屈曲部分を含み、
前記多角形の頂点の1つが頂点から延びる第1の切り込みを備え、
前記多角形の他の頂点の1つが前記第2のスリットの前記屈曲部分から延びる第2の切り込みを備える、包装材である。
【0010】
本発明において「屈曲」とは折れ曲がることを意味しており、折れ曲がる角度等の態様は限定されない。したがって、例えば、直角に折れ曲がる場合も、非直角に折れ曲がる場合も「屈曲」に包含される。更に、折れ曲がる部分が曲線であっても「屈曲」に包含される。
【0011】
前記第1の切り込みが前記頂点の内角を対称に分割する半直線であることが好ましい。
【0012】
前記第1の切り込みの端部が分岐していることが好ましい。
【0013】
前記第2の切り込みが前記他の頂点の内角を対称に分割する半直線であることが好ましい。
【0014】
前記無スリット領域に被包装体が載置されることが好ましい。
【0015】
前記第1のスリット及び前記第2のスリットの前記直線部分が並行していることが好ましい。
【0016】
前記複数の第1のスリットが並行していることが好ましい。
【0017】
前記複数の第2のスリットの前記直線部分が並行していることが好ましい。
【0018】
前記第2のスリットの端部が前記直線部分からなることが好ましい。
【0019】
前記第1のスリットの端部及び/又は前記第2のスリットの端部が湾曲していることが好ましい。ここでの「湾曲」とは曲線に曲がることを意味する。
【0020】
前記第1のスリットが前記無スリット領域を包囲しており、
前記無スリット領域を包囲している前記第1のスリットの間隔が該第1のスリットの長さの1/2~1/4に相当する長さを有することが好ましい。
【0021】
前記第2のスリットが前記無スリット領域を包囲しており、
前記無スリット領域を包囲している前記第2のスリットの間隔が該第2のスリットの前記直線部分の長さの1/2~1/4に相当する長さを有することが好ましい。
【0022】
前記多角形が矩形であることが好ましい。
【0023】
本発明の包装材は前記紙層のみからなることが好ましい。
【0024】
本発明の第二の態様は、上記の包装材を使用する包装方法であって、
前記無スリット領域に被包装体を載置し、
前記第1の切り込み及び前記第2の切り込みを係合して、
前記被包装体を前記包装材で包装することを特徴とする。
【発明の効果】
【0025】
本発明の包装材は、使用時のスリットの開口パターンのデザイン性を向上することができる。
【0026】
また、本発明の包装材は、廃棄時の環境負荷を低減することができる。
【0027】
そして、本発明の包装材は、包装の作業性に優れている。
【図面の簡単な説明】
【0028】
図1A】本発明の包装材の一実施態様の概略平面図。
図1B図1Aに示す本発明の包装材の一実施態様における第1のスリット及び第2のスリットの位置関係を説明するための概略平面図。
図2】第1のスリット及び第2のスリットの長さの設定の一例を示す概略平面図。
図3】第1のスリット及び第2のスリットの端部の例を示す概略平面図。
図4】第1の切り込みの一例の拡大図。
図5】第2の切り込みの一例の拡大図。
図6】2つの第1の切り込みを重ねた拡大写真。
図7】第1の切り込みに第2の切り込みを嵌め込んだ状態の拡大写真。
図8】本発明の包装材の一実施態様の使用時のスリットの開口状態を示す写真。
図9】本発明の包装方法の一例を示す写真。
【発明を実施するための形態】
【0029】
[包装材]
本発明の包装材は、少なくとも紙層を備える多角形状であって、更に、
複数の第1のスリット及び複数の第2のスリット
並びに
前記第1のスリット及び/又は前記第2のスリットによって包囲されており、スリットが存在しない無スリット領域
を備えており、
前記第1のスリットが直線からなり、
前記第2のスリットが直線部分及び屈曲部分を含み、
前記多角形の頂点の1つが頂点から延びる第1の切り込みを備え、
前記多角形の他の頂点の1つが前記第2のスリットの前記屈曲部分から延びる第2の切り込みを備える、包装材である。
【0030】
本発明の包装材は紙層を備えるので平面状のシート形態であり、立体的な被包装物をも包装可能な柔軟性又は可撓性を有することが好ましい。
【0031】
(紙層)
本発明の包装材は少なくとも紙層を備える。本発明の包装材は複数の紙層を有してもよい。紙層は本発明の包装材の基材を構成することができる。
【0032】
紙層は、通常、セルロース繊維を含む。セルロース繊維としては、例えば、針葉樹晒クラフトパルプ(NBKP)、広葉樹晒クラフトパルプ(LBKP)、針葉樹晒サルファイトパルプ(NBSP)、サーモメカニカルパルプ(TMP)等の木材パルプ;他、麻、竹、藁、ケナフ、バガス、三椏、楮、木綿等の非木材パルプ;カチオン化パルプ、マーセル化パルプ等の変性パルプ;レーヨン等に由来するセルロース繊維乃至再生セルロース繊維が挙げられ、これらの1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。セルロース繊維として、古紙から得られた古紙パルプも使用することができる。
【0033】
紙層はセルロース繊維以外の他の成分を含んでいてもよい。他の成分としては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート等の樹脂からなる合成繊維;澱粉、ポリアクリルアミド、ポリアミンポリアミドエピクロルヒドリン等の紙力増強剤又は定着剤;サイズ剤、填料、濾水歩留り向上剤、耐水化剤、定着剤、消泡剤、スライムコントロール剤、染料、顔料等の着色剤等が挙げられ、これらの1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0034】
紙層の製造(抄紙)方法は特に限定されるものではなく、長網抄紙機、円網抄紙機等の公知の抄紙機を使用して、公知の製造(抄紙)方法により製造することができる。ポリアクリルアミド、デンプン等の紙力増強剤、各種サイズ剤、その他合成樹脂を用いてサイズプレスを行ってもよい。なお、サイズプレスが実施される場合、サイズプレスによって層が形成される可能性があるが、当該層は紙層の一部を構成する。
【0035】
紙層の坪量は特には限定されるものではないが、坪量(測定方法:JIS P 8124 [2011])80g/m2~550g/m2が好ましく、100g/m2~450g/m2がより好ましく、120/m2~400g/m2が更により好ましい。また、紙層の紙厚も特には限定されるものではないが、紙厚(測定方法:JIS P 8118 [2014])70μm~600μmが好ましく、90μm~550μmがより好ましく、110μm~450μmが更により好ましい。なお、本発明の包装材が複数の紙層を備える場合は、上記の坪量及び厚みの好ましい範囲は、全紙層の総坪量及び総厚みに当てはまる。
【0036】
紙層として、板紙を使用することが好ましい。
【0037】
板紙の坪量(測定方法:JIS P 8124 [2011])は225g/m~550g/mが好ましく、250g/m~500g/mが好ましく、275g/m~450g/mがより好ましく、300g/m~400g/mが更により好ましい。
【0038】
板紙の厚み(測定方法:JIS P 8118 [2014])は特に限定されるものではないが、300μm~600μmが好ましく、310μm~580μmがより好ましく、320μm~560μmが更により好ましく、330μm~540μmが更により好ましい。
【0039】
紙層として板紙を使用する場合は、単一の紙層であっても、紙層が高い剛性を備えており、そのために、本発明の包装材は良好な復元性を有することができる。したがって、何らかの力により、本発明の包装材のスリットが一旦開口しても、当該力が除去されると、スリットは速やかに閉じることができ、開口前の形態に戻ることが容易である。よって、本発明の包装材は未使用時の全体の外観を良好に維持することができる。
【0040】
また、紙層として板紙を使用する場合は、上記のとおり、スリットが一旦開口しても速やかに閉じることができるので、全体として平面形状を維持することが容易である。したがって、本発明の包装材を多数重ねて保管する場合に、何らかの力の作用によりスリットが開口して厚みが増大してしまい、全体が嵩張ることを回避可能である。
【0041】
なお、薄い紙層を複数積層して使用する場合も、板紙を単一の紙層として使用する場合に得られる上記と同様の効果を得ることができる。
【0042】
本発明の包装材の紙層は段ボールのライナーではないことが好ましい。したがって、本発明の包装材は段ボールではないことが好ましい。
【0043】
紙層が本発明の包装材の全質量を基準として50質量%以上を占めることが好ましく、60質量%以上がより好ましく、70質量%以上が更により好ましい。本発明の包装材の質量の過半数を紙層が占めることにより、本発明の包装材の軽量化を図ることができる。また、本発明の包装材において紙層が包装材の質量の50質量%以上を占める場合は、資源の有効な利用の促進に関する法律(資源有効利用促進法)により、本発明の包装材には所謂「紙マーク」を付与することが可能であり、廃棄時には、そのまま焼却廃棄することができる。
【0044】
(追加層)
本発明の包装材は紙層に加えて追加層を備えてもよい。追加層により、紙層を保護したり、本発明の包装材の外観を調整したり、耐水性、耐油性、強度向上等の機能を付与したりすることができる。
【0045】
追加層の数は特には限定されるものではなく、追加層は複数存在してもよいが、追加層の数は1つ又は2つであることが好ましい。追加層の数を1つ又は2つに限定することにより、包装材の厚みを抑制することができる。
【0046】
追加層は包装材の全表面に存在する必要はなく、包装材の表面の少なくとも一部に存在すればよい。
【0047】
追加層としては、例えば、金属箔等の金属層、接着層、フィルム層等の熱可塑性樹脂層等が挙げられる。追加層は、公知の手段により設けられる塗工層またはラミネート層であることが好ましい。
【0048】
金属層に含まれる金属の種類は特には限定されず、様々な種類のものを使用することができる。金属としては、例えば、アルミニウム、銅、ニッケル、スズ、亜鉛、鉛、鉄、銀、金等が挙げられる。加工性等の点でアルミニウム、スズが好ましい。すなわち、金属層はスズ又はアルミニウムを含むことが好ましい。
【0049】
金属層の厚みは40μm以下が好ましく、30μm以下がより好ましく、20μm以下が更により好ましい。
【0050】
熱可塑性樹脂層に含まれる熱可塑性樹脂の種類は特には限定されず、様々な種類のものを使用することができる。熱可塑性樹脂としては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン、ポリエチレンテレフタレート等のポリエステル、ナイロン等のポリアミド、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリ(メタ)アクリレート等を使用することができる。これらは、1種単独で用いても、2種以上を併用してもよい。
【0051】
熱可塑性樹脂層の厚みは40μm以下が好ましく、30μm以下がより好ましく、20μm以下が更により好ましい。
【0052】
追加層は印刷層でもよい。印刷層としては各種のインキを含むものが挙げられる。インキは各種の顔料、樹脂等を含むことができる。樹脂としては、アクリル系樹脂、スチレン系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリウレタン系樹脂、塩素化ポリオレフィン系樹脂、塩化ビニル-酢酸ビニル共重合体系樹脂、ポリビニルブチラール樹脂、アルキド系樹脂、石油系樹脂、ケトン樹脂、エポキシ系樹脂、メラミン系樹脂、フッ素系樹脂、シリコーン系樹脂、繊維素誘導体、ゴム系樹脂等が挙げられる。これらは、1種単独で用いても、2種以上を併用してもよい。インキについては、包装材に一般的に求められるような発色性、安全性等を備えるものであれば特に限定されない。
【0053】
追加層は塗膜でもよい。塗膜としては、例えば、ワニス硬化層が挙げられる。ワニスの種類は特には限定されるものではなく、単一種類のワニスを使用してもよく、複数種類のワニスを併用してもよい。ワニスとしては、例えば、ウレタン樹脂、アルキド樹脂、エポキシ樹脂等の樹脂の有機溶剤溶液を使用することができる。紙層等の外表面にワニスを部分的に塗布して乾燥硬化させることにより、ワニス硬化層を形成することができる。塗膜は透明でもよい。
【0054】
印刷層又は塗膜の厚みは、特には限定されるものではないが、1μm以上が好ましく、2μm以上がより好ましく、3μm以上が更により好ましい。一方、印刷層又は塗膜の厚みは15μm以下が好ましく、10μm以下がより好ましく、8μm以下が更により好ましい。すなわち、印刷層又は塗膜の厚みは1μm~15μmが好ましく、2μm~10μmがより好ましく、3μm~8μmが更により好ましい。
【0055】
本発明の包装材は、金属層又は熱可塑性樹脂層を伴わず、基材として、紙層のみからなることが好ましい。
【0056】
(表面形状)
本発明の包装材の表面の形状は特には限定されない。本発明の包装材の表面は平滑でもよく、平滑でなくともよい。
【0057】
本発明の包装材の表面には凹凸が形成されてもよい。凹凸は連続していてもよく、不連続でもよい。
【0058】
凹凸はエンボス加工により付与されることが好ましい。凹凸の高さ(凹部の最底面から凸部の頂点のレベルまでの垂直高さ)は特には限定されるものではないが、例えば、0.01mm~5mmでもよく、0.02mm~3mmでもよく、0.05mm~1mmでもよい。
【0059】
表面に凹凸を形成することにより、本発明の包装材の外観を調整したり、滑り止めの効果を発揮させたりすることができる。
【0060】
(包装材例)
以下、本発明の包装材の例を、図面を参照しつつ説明する。
【0061】
図1Aは本発明の包装材の一実施態様の概略平面図である。図1Aに示す例では、包装材1は、基材としての単一の紙層を備える。
【0062】
図1Aに示す包装材1は、直線からなる第1のスリット1a、並びに、直線部分及び屈曲部分を含む第2のスリット1bをそれぞれ複数備えている。図1Aに示す例では、第2のスリット1bの両端部は直線部分を備えており、2つの直線部分の間に屈曲部分が存在する。すなわち、第2のスリット1bの端部は直線部分である。屈曲部分の両側に存在する直線部分の長さは異なってもよいが同一であることが好ましい。
【0063】
図1Aに示す例では第2のスリット1bの屈曲部分は曲線からなり、湾曲しているが、直角に屈曲していてもよく、また、直角以外の角度で屈曲していてもよい。しかし、外力により第2のスリット1bの屈曲部分が破損するおそれを低減するために、屈曲部分は湾曲していることが好ましい。
【0064】
一方、包装材1は、スリットが存在しない無スリット領域1cを備えており、図1Aに示す例では、無スリット領域1cは、第1のスリット1a及び第2のスリット1bによって包囲されている。なお、第1のスリット1a又は第2のスリット1bのいずれかによって無スリット領域1cが包囲されてもよい。
【0065】
無スリット領域1cは被包装体が載置される場所であり、図1Aに示す例では無スリット領域1cの形状は矩形の頂角が丸みを帯びた略矩形であるが、その形状は特には限定されず、例えば、多角形乃至略多角形、円形、楕円形等の任意の形状とすることができる。
【0066】
図1B図1Aに示す本発明の包装材の一実施態様における第1のスリット及び第2のスリットの位置関係を説明するための概略平面図である。
【0067】
図1Bに示す例では、無スリット領域1cを包囲する複数の第1のスリット1aは、中央の無スリット領域1cから包装材1の外周を構成する辺に最短で到達する方向(例えば、仮想垂線A-A又はB-B)において、相互に離隔して並行している。ここでの「並行」とは数学的な意味での平行に限らず、若干の非平行状態での並行をも含む。非平行状態での並行では複数の第1のスリット1aは延長線上で交差することが可能であり、延長線が形成する交差角は10°以下が好ましく、5°以下がより好ましく、1°以下が更により好ましい。
【0068】
また、図1Bに示す例では、無スリット領域1cを包囲する複数の第2のスリット1bの直線部分も、中央の無スリット領域1cから包装材1の外周を構成する辺に最短で到達する方向(例えば、仮想垂線A-A又はB-B)において、相互に離隔して並行している。ここでの「並行」とは数学的な意味での平行に限らず、若干の非平行状態での並行をも含む。非平行状態での並行では複数の第2のスリット1bは延長線上で交差することが可能であり、延長線が形成する交差角は10°以下が好ましく、5°以下がより好ましく、1°以下が更により好ましい。
【0069】
更に、図1Bに示す例では、無スリット領域1cを包囲する複数の第1のスリット1a及び複数の第2のスリット1bの直線部分も、中央の無スリット領域1cから包装材1の外周を構成する辺に最短で到達する方向(例えば、仮想垂線A-A又はB-B)において、相互に離隔して並行している。ここでの「並行」とは数学的な意味での平行に限らず、若干の非平行状態での並行をも含む。非平行状態での並行では第1のスリット1a及び第2のスリット1bの直線部分は延長線上で交差することが可能であり、延長線が形成する交差角は10°以下が好ましく、5°以下がより好ましく、1°以下が更により好ましい。
【0070】
図1A及び図1Bに示す例では、第1のスリット1aが無スリット領域1cを包囲しており、無スリット領域1cを包囲している第1のスリット1aの間隔が第1のスリット1aの長さの1/2~1/4に相当する長さを有する。なお、ここでの「間隔」とは第1のスリット1aによる仮想包囲線(図1Bでは、第1のスリット1a及び第1のスリット1aの非存在部分の点線によって形成され、無スリット領域1cを包囲する仮想の線であり、互いに交差しない)に沿った長さを意味しており、図1Bに示す例では、矩形の仮想包囲線(後記図2も参照)に沿った長さを意味する。
【0071】
また、図1A及び図1Bに示す例では、第2のスリット1bも無スリット領域1cを包囲しており、無スリット領域1cを包囲している第2のスリット1bの間隔が第2のスリット1bの直線部分の長さの1/2~1/4に相当する長さを有する。なお、ここでの「間隔」とは第2のスリット1bによる仮想包囲線(図1Bでは、第2のスリット1bの直線部分の延長線に相当する点線及び第2のスリット1bの非存在部分の点線によって形成され、無スリット領域1cを包囲する仮想の線であり、互いに交差しない)に沿った長さを意味しており、図1Bに示す例では、略矩形の仮想包囲線(後記図2も参照)に沿った長さを意味する。
【0072】
図2は、第1のスリット1a及び第2のスリット1bの形成の一例を示す概略平面図である。
【0073】
図2に示す例では、複数の第1のスリット1aは、無スリット領域1cを不連続に包囲しており、矩形の仮想包囲線を系施している。そして、矩形の仮想包囲線の各辺を当該辺に垂直な仮想垂線A-A及びB-Bによって等分割し、更に、各等分割辺をa、a、a及びaの線分に4等分し、そのうちのa~aにスリットを形成する。すなわち、各等分割辺の3/4にスリットが形成される。スリットの形成端は仮想包囲線が形成する矩形の頂角から矩形の仮想包囲線の辺に沿って線分aだけ離隔した位置であり、スリットの終端は矩形の仮想包囲線の辺に沿った他方の頂角から矩形の仮想包囲線の辺に沿って線分aに相当する長さだけ離隔した位置である。このように、第1のスリット1aは矩形の仮想包囲線の一辺の6/8(3/4)に形成される。
【0074】
無スリット領域1cを包囲している複数の第1のスリット1aの間隔は、矩形の仮想包囲線に沿って、線分aの長さの2倍に相当する。したがって、第1のスリット1aの間隔は第1のスリット1aの長さの1/3に相当する長さを有する。
【0075】
また、図2に示す例では、複数の第2のスリット1bも、無スリット領域1cを不連続に包囲しており、略矩形の仮想包囲線を形成している。そして、略矩形の仮想包囲線の各辺を当該辺に垂直な仮想垂線A-A及びB-Bによって等分割し、更に、各等分割辺をb、b、b及びbの線分に4等分し、そのうちのb~bにスリットを形成する。すなわち、各分割辺の3/4にスリットが形成される。スリットの形成端は略矩形の仮想包囲線の一辺と仮想垂線A-Aの交点から当該辺に沿って線分bの長さだけ離隔した位置であり、スリットの終端は略矩形の仮想包囲線の一辺と仮想垂線B-Bの交点から当該辺に沿って線分bの長さだけ離隔した位置である。このように、第2のスリット1bも略矩形の仮想包囲線の一辺の6/8(3/4)に形成される。
【0076】
無スリット領域1cを包囲している複数の第2のスリット1bの間隔は、略矩形の仮想包囲線に沿って、線分bの長さの2倍に相当する。したがって、第2のスリット1bの間隔は第2のスリット1bの長さの1/3に相当する長さを有する。
【0077】
無スリット領域1cを包囲している複数の第1のスリット1a及び/又は複数の第2のスリット1bの間隔は、略矩形の仮想包囲線の各辺を分割した線分の長さを調整することによって、適宜変更することができる。例えば、第1のスリット1a及び第2のスリット1bの間隔は、第1のスリット1a及び第2のスリット1bの長さの1/2~1/4に相当する長さとすることができる。
【0078】
このように、第1のスリット1a及び第2のスリット1bを所定の規則に従って形成することにより、使用時のスリットの開口形状を調整し、複数の開口したスリットからなるデザインを制御し、また、使用時の包装材の強度を向上させることができる。
【0079】
特に、図2に示すように、(略)矩形の仮想包囲線の半辺を4分割し、そのうちの3つにスリットを形成し、残りの1つにスリットを形成しないという規則に沿ってスリットを形成すると、第1のスリット1a及び/又は第2のスリット1bによる無スリット領域1cの包囲が容易である。
【0080】
本発明の包装材の第1のスリット1aの端部は湾曲していることが好ましい。また、本発明の第2のスリット1bの端部が直線部分である場合の当該端部は湾曲していることが好ましい。
【0081】
図3は第1のスリット1a及び第2のスリット1bの端部の例を示す概略平面図であり、図3(a)は端部が湾曲している第1のスリット1aを示し、図3(b)は直線部分からなる端部が湾曲している第2のスリット1bを示す。
【0082】
湾曲の形状は特には限定されるものではなく、各種の形状とすることができるが、形成の容易性の点で、図3に示すような円弧の一部とすることが好ましい。
【0083】
図3に示すように、第1のスリット1aの端部、並びに、直線部分からなる第2のスリット1bの端部が湾曲していることにより、スリットが開口する際に、スリットの末端に印加する外力を分散することができ、スリットの端部の破損を抑制することができる。
【0084】
図1に示す包装材1は矩形であるが、包装材1の形状は多角形である限り特には限定されるものではなく、六角形、八角形等とすることができる。但し、頂角には丸みを形成してもよい。
【0085】
本発明の包装材は多角形の頂点の1つが頂点から延びる第1の切り込みを備え、また、多角形の他の頂点の1つが第2のスリットの屈曲部分から延びる第2の切り込みを備える。
【0086】
例えば、図1に示す包装材1は、対向する頂点の1つの組が、当該頂点から延びる半直線状の第1の切り込み1dを備えている。第1の切り込み1dは第1のスリット1a及び第2のスリット1bのいずれにも到達しない。第1の切り込み1dは頂点の内角を対称に分割することが好ましい。
【0087】
図1に示す包装材1では、第1の切り込み1dの端部は分岐している。図4に第1の切り込み1dを拡大して示す。第1の切り込み1dの端部の分岐の形態は特には限定されないが、2つに分岐することが好ましく、また、各分岐線は直線であることが好ましい。更に、各分岐線の交差角は30°~160°が好ましく、60°~120°がより好ましく、80°~100°が更により好ましい。
【0088】
また、図1に示す包装材1は、第1の切り込み1dが形成されていない、対向する他の頂点の組が、第2のスリット1bの屈曲部分から延びる半直線状の第2の切り込み1eを備える。第2の切り込み1eは頂点には到達しない。屈曲部分の対称中心から第2の切り込み1eが延びることが好ましい。また、第2の切り込み1eは頂点の内角を対称に分割することが好ましい。
【0089】
第2の切り込み1eと第2のスリット1bの交差部分に空間を設けることが好ましい。図5はそのような空間を設けた例であり、第2の切り込み1eが延びる第2のスリット1bの屈曲部分の周囲に空間1fが形成されている。
【0090】
第1の切り込みと第2の切り込みは係合可能であり、包装材の使用時に係合して、包装体を形成することができる。
【0091】
例えば、図1に示す包装材1では、まず、第1の切り込み1dを有する、対向する頂角を図6に示すように重ねる。これにより、第1の切り込み1dが重ねられる。
【0092】
次に、重ねられた第1の切り込み1dに、2つの第2の切り込み1eを嵌め込む。これにより、第1の切り込み1dと第2の切り込み1eが係合する。第1の切り込み1dが分岐していると、各分岐線に2つの第2の切り込み1eを収容することができるので、第2の切り込み1eの嵌め込みが容易である。また、第2の切り込み1eと第2のスリット1bの交差点に空間が設けられていると、第1の切り込み1d中の第2の切り込み1eの移動の自由度が高まるので、第2の切り込み1eの嵌め込みが容易である。第1の切り込み1dに第2の切り込み1eを嵌め込んだ状態の拡大写真を図7に示す。
【0093】
第1の切り込みと第2の切り込みが係合することにより、本発明の包装材は無スリット領域1cを立体的に包囲することができ、包装体を形成することができる。
【0094】
このように、本発明の包装材は、第1の切り込み及び第2の切り込みを係合することにより包装作業を実施可能であるので、包装の際に接着剤等を使用する必要がなく、包装の作業性に優れている。
【0095】
本発明の包装材は、包装時に第1のスリット及び第2のスリットが開口し、網目状の構造を形成する。図8図1に示す本発明の包装材の一実施態様の使用時のスリットの開口状態を示す写真である。なお、開口状態を明確に示すために、図8では、無スリット領域1cに被包装体を載置していない。
【0096】
図8に示す例では、相互に形状が異なる、第1のスリット及び第2のスリットが開口し、相互に形状が異なる開口を形成する。
【0097】
このように、本発明の包装材は、形状の異なる第1のスリット及び第2のスリットを備えており、スリットの開口形状がそれぞれ異なる。そして、第1のスリット及び第2のスリットが形成する開口パターンにより、独特なデザインの網目構造を形成することができる。
【0098】
(製造方法)
本発明の包装材は紙層を備えるシートに所定のスリット及び切り込みを形成することによって製造することができる。スリット及び切り込みの形成は従来公知の方法によって実施することができ、例えば、スリット及び切り込み形成用の切込刃が表面に複数設けられたロールを回転させつつ、包装材に押圧することによって、紙層を貫通する複数のスリット及び切り込みを有する本発明の包装材を製造することができる。
【0099】
その他に、所定のパターンで複数の切込刃が表面に設けられたプレス板を包装材に押し付けることでも、当該パターンを反映した複数のスリット及び切り込みを包装材に形成することもできる。
【0100】
[包装方法]
本発明の包装材は、包装用途に使用することができる。
【0101】
本発明の包装方法は、本発明の包装材の無スリット領域に被包装体を載置し、
第1の切り込み及び第2の切り込みを係合して、
前記被包装体を前記包装材で包装することを特徴とする。
【0102】
本発明の包装材はスリットを備えるので、包装時にスリットが開口して、伸縮可能である。
【0103】
本発明の包装材は各種の物品の包装用途に好適に使用可能であり、その伸縮性のために、立体物の包装に特に好適に使用することができる。したがって、本発明の包装材は包装用シートとして好ましく使用可能である。
【0104】
立体物は特には限定されるものではなく、例えば、飲料を含むボトル、室温(25℃)で固形の食品等を挙げることができる。
【0105】
図9は、本発明の包装方法の一例を示す写真である。図9に示す例では、図1に示す包装材1の無スリット領域1cにペットボトルを載置して、当該ペットボトルを包装材1によって包装している。
【0106】
本発明の包装材は立体物の包装時にスリットが開口し、網目状の構造を形成することができるので、開口したスリットから内容物を視認できる。したがって、本発明の包装材が不透明であっても、被包装体を外部から確認することができる。
【0107】
また、本発明の包装材は包装の際に接着剤、接着テープ等を使用する必要がないので、包装の作業性に優れており、また、環境にも優しい。
【産業上の利用可能性】
【0108】
本発明の包装材は、各種の被包装体の包装に使用することができる。また、本発明の包装材は包装の作業性に優れている。そして、本発明の包装材はスリットの開口パターンにより、独特なデザインを形成することができ、視覚的な審美性を発揮することができる。
【符号の説明】
【0109】
1 包装材
1a 第1のスリット
1b 第2のスリット
1c 無スリット領域
1d 第1の切り込み
1e 第2の切り込み
1f 空間
図1A
図1B
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9