(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024119272
(43)【公開日】2024-09-03
(54)【発明の名称】ハイブリッド車両
(51)【国際特許分類】
B60W 20/14 20160101AFI20240827BHJP
B60K 6/442 20071001ALI20240827BHJP
B60W 10/08 20060101ALI20240827BHJP
B60W 10/26 20060101ALI20240827BHJP
B60W 10/30 20060101ALI20240827BHJP
F01P 5/10 20060101ALI20240827BHJP
F01P 7/16 20060101ALI20240827BHJP
B60L 50/16 20190101ALI20240827BHJP
B60L 58/26 20190101ALI20240827BHJP
B60L 58/12 20190101ALI20240827BHJP
B60L 15/20 20060101ALI20240827BHJP
B60L 7/22 20060101ALI20240827BHJP
【FI】
B60W20/14
B60K6/442 ZHV
B60W10/08 900
B60W10/26 900
B60W10/30 900
F01P5/10 Z
F01P7/16
B60L50/16
B60L58/26
B60L58/12
B60L15/20 S
B60L7/22 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023026055
(22)【出願日】2023-02-22
(71)【出願人】
【識別番号】000006286
【氏名又は名称】三菱自動車工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002664
【氏名又は名称】弁理士法人相原国際知財事務所
(72)【発明者】
【氏名】澤田 徹
【テーマコード(参考)】
3D202
5H125
【Fターム(参考)】
3D202AA02
3D202BB11
3D202BB15
3D202BB19
3D202BB46
3D202CC58
3D202CC61
3D202DD02
3D202DD06
3D202DD22
3D202DD26
3D202DD45
3D202DD46
3D202EE00
5H125AA01
5H125AC08
5H125AC12
5H125CB03
5H125CD06
5H125EE27
5H125FF24
(57)【要約】
【課題】回生発電による蓄電池への充電を適切に行えるハイブリッド車両を提供する。
【解決手段】減速走行時に走行駆動用のフロントモータ4により発電させて駆動用バッテリ11を充電する回生制動モードと、回生制動モード時に駆動用バッテリ11の充電率SOCが所定値以上の場合にモータジェネレータ9の駆動によりエンジン2を強制駆動させるモータリングを実行するモータリングモードとが切り替え可能な車両1において、モータリングモード時に、エンジン2に冷却水を循環させるウォータポンプ30を駆動させ、ウォータポンプ30は冷却水の温度に基づいて出力が制御される。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両に搭載される内燃機関と、前記内燃機関を駆動可能な第1電気モータと、前記車両を走行させるとともに減速走行時に回生発電可能な第2電気モータと、前記第2電気モータに電力を供給する蓄電池と、前記内燃機関に冷媒を循環させる電動ポンプと前記第1電気モータと前記第2電気モータとを制御する制御部と、を有するハイブリッド車両であって、
前記冷媒の温度を取得する冷媒温度検出部を備え、
前記制御部は、
前記第2電気モータで回生発電し前記蓄電池を充電することで前記車両を減速させる回生制動モードと、前記回生制動モード時に前記蓄電池の充電量が所定値以上の場合に、前記第1電気モータの駆動により前記内燃機関を強制駆動させるモータリングを実行して前記第2電気モータで回生発電した電力を消費するモータリングモードと、を切り替え可能であり、
前記モータリングモード時に、前記電動ポンプを駆動させ、前記冷媒の温度に基づいて前記電動ポンプの出力を制御する
ことを特徴とするハイブリッド車両。
【請求項2】
前記内燃機関の油温を取得する油温検出部を有し、
前記制御部は、前記電動ポンプの出力を、前記油温と前記冷媒の温度差に応じて制御する
ことを特徴とする請求項1に記載のハイブリッド車両。
【請求項3】
前記電動ポンプの出力は、前記モータリングの回転速度に応じて制御され、
前記制御部は、前記油温と前記冷媒の温度との差が所定温度差以上のとき、前記モータリングの回転速度に応じて決定された前記電動ポンプの出力を増加させるように補正し、前記油温と前記冷媒の温度との差が前記所定温度差未満のとき、前記モータリングの回転速度に応じて決定された前記電動ポンプの出力で制御する
ことを特徴とする請求項2に記載のハイブリッド車両。
【請求項4】
前記制御部は、前記モータリングの回転速度が所定速度以上の場合、前記モータリングの回転速度及び前記冷媒の温度に基づいて前記電動ポンプの出力を制御し、前記モータリングの回転速度が前記所定速度未満の場合、前記モータリングの回転速度に基づいて電動ポンプの出力を制御する
ことを特徴とする請求項1に記載のハイブリッド車両。
【請求項5】
前記内燃機関と前記電動ポンプを繋ぎ、内部を前記冷媒が流通する冷媒通路を有し、
前記冷媒通路には、前記内燃機関をバイパスするバイパス通路が接続され、
前記制御部は、前記モータリングモード時に前記冷媒の温度が所定温度以下の場合、前記電動ポンプを駆動させるとともに前記冷媒が前記バイパス通路を流れるように制御する
ことを特徴とする請求項1に記載のハイブリッド車両。
【請求項6】
前記蓄電池からの電力で駆動され、前記蓄電池を冷却する冷却装置を有し、
前記制御部は、前記モータリング及び前記電動ポンプの駆動をしても前記回生発電による電力が余剰になった場合に、前記冷却装置の出力を増加させる
ことを特徴とする請求項1に記載のハイブリッド車両。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ハイブリッド車両の回生制動時における制御技術に関する。
【背景技術】
【0002】
近年開発されているハイブリッド車において、エンジン(内燃機関)と、内燃機関により駆動されて発電する発電機と、発電機から電力を供給されて充電可能な駆動用バッテリ(蓄電池)と、駆動用バッテリまたは発電機から電力を供給されて走行駆動輪を駆動する駆動用モータと、を備えた車両が知られている。
上記のようなハイブリッド車においては、発電機により発電された電力は、駆動用バッテリや駆動用モータに供給される。また、車両減速時においては、駆動用モータによって回生発電が行われ、発電された電力が駆動用バッテリに供給されて充電可能となっている。回生発電を行うことで駆動用モータによって制動力が付与される(回生制動)。
【0003】
特許文献1に記載されているように、回生制動時に駆動用バッテリが満充電付近であると、駆動用モータによって発電した電力を駆動用バッテリに充電させることができないので、エンジンを例えば発電機で駆動して電力を消費するモータリングを行うことで回生制動を可能にする技術が知られている。
また、特許文献1には、駆動用バッテリの満充電付近においてモータリングを行った際に、モータリングによって十分に電力を消費できない場合に、モータリングとともにエンジンの電動ウォータポンプを作動させることで電力消費量を増加させ、回生制動を可能にしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、電動ウォータポンプを作動させると騒音発生の要因になるので、必要以上に電動ポンプを作動させることは好ましくない。また、過剰に電動ポンプを作動させることで内燃機関が過冷却となる虞もある。
本発明は、上述した課題を解決すべくなされたものであり、その目的とするところは、蓄電池の満充電付近においてモータリングを行った際に、回生制動力を確保するとともに、騒音を抑えるように電動ポンプを適切に作動させるハイブリッド車両を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の目的を達成するべく、本発明のハイブリッド車両は、車両に搭載される内燃機関と、前記内燃機関を駆動可能な第1電気モータと、前記車両を走行させるとともに減速走行時に回生発電可能な第2電気モータと、前記第2電気モータに電力を供給する蓄電池と、前記内燃機関に冷媒を循環させる電動ポンプと前記第1電気モータと前記第2電気モータとを制御する制御部と、を有するハイブリッド車両であって、前記冷媒の温度を取得する冷媒温度検出部を備え、前記制御部は、前記第2電気モータで回生発電し前記蓄電池を充電することで前記車両を減速させる回生制動モードと、前記回生制動モード時に前記蓄電池の充電量が所定値以上の場合に、前記第1電気モータの駆動により前記内燃機関を強制駆動させるモータリングを実行して前記第2電気モータで回生発電した電力を消費するモータリングモードと、を切り替え可能であり、前記モータリングモード時に、前記電動ポンプを駆動させ、前記冷媒の温度に基づいて前記電動ポンプの出力を制御することを特徴とする。
【0007】
これにより、モータリングモード時に電動ポンプを駆動させて電力を消費させることで、蓄電池の充電量が所定値以上であっても第2電気モータによる回生発電可能な電力を増加させ、回生制動力を確保することができる。更に、電動ポンプは、冷媒の温度に基づいて出力が制御されるので、電動ポンプの過剰な作動による騒音を抑えるとともに内燃機関の過冷却を抑制することができる。
【0008】
好ましくは、前記内燃機関の油温を取得する油温検出部を有し、前記制御部は、前記電動ポンプの出力は、前記油温と前記冷媒の温度差に応じて制御するとよい。
これにより、内燃機関の油温と水温の両方にもとづいて内燃機関の状態をより正確に把握して、電動ポンプの作動状態をより適切にすることができる。
好ましくは、前記電動ポンプの出力は、前記モータリングの回転速度に応じて制御され、前記制御部は、前記油温と前記冷媒の温度との差が所定温度差以上のとき、前記モータリングの回転速度に応じて決定された前記電動ポンプの出力を増加させるように補正し、前記油温と前記冷媒の温度との差が前記所定温度差未満のとき、前記モータリングの回転速度に応じて決定された前記電動ポンプの出力で制御するとよい。
【0009】
これにより、モータリング時に油温と冷媒の温度との差が所定温度差以上のときには、モータリングの回転速度に応じて決定された電動ポンプの出力を増加させるように制御して、冷媒と潤滑油との熱交換を促進させ、内燃機関の状態を制御することができる。
好ましくは、前記制御部は、前記モータリングの回転速度が所定速度以上の場合、前記モータリングの回転速度及び前記冷媒の温度に基づいて前記電動ポンプの出力を制御し、前記モータリングの回転速度が前記所定速度未満の場合、前記モータリングの回転速度に基づいて電動ポンプの出力を制御するとよい。
【0010】
これにより、モータリングの回転速度が所定速度以上の場合には、内燃機関の温度が上昇しやすいので、モータリングの回転速度と冷媒の温度に基づいて電動ポンプの出力を制御することで、内燃機関の温度が過度に上昇することを抑制することができる。。
好ましくは、前記内燃機関と前記電動ポンプを繋ぎ、内部を前記冷媒が流通する冷媒通路を有し、前記冷媒通路には、前記内燃機関をバイパスするバイパス通路が接続され、前記制御部は、前記モータリングモード時に前記冷媒の温度が所定温度以下の場合、前記電動ポンプを駆動させるとともに前記冷媒が前記バイパス通路を流れるように制御するとよい。
【0011】
これにより、モータリングモード時に冷媒の温度が所定温度以下の場合には、冷媒がバイパス通路を流れるように制御することで、内燃機関の温度低下を抑制することができる。
好ましくは、前記蓄電池からの電力で駆動され、前記蓄電池を冷却する冷却装置を有し、前記制御部は、前記モータリング及び前記電動ポンプの駆動をしても前記回生発電による電力が余剰になった場合に、前記冷却装置の出力を増加させるとよい。
【0012】
これにより、モータリング及び電動ポンプの駆動では回生電力を消費しきれない場合に、冷却装置の出力を増加させることで消費電力を増加させ、回生制動力を確保することができる。
【発明の効果】
【0013】
本発明のハイブリッド車両によれば、モータリングモードにおいて、電動ポンプを駆動させることで電力を消費させ、回生電力を増加可能とし回生制動力を大きく確保することができる。更に電動ポンプを冷媒の温度に基づいて出力を制御することで、モータリングにおける内燃機関の温度変化に伴うフリクションの変化に対応して、電動ポンプを適切に作動させ、電動ポンプの作動による騒音を低下させるともに内燃機関の過冷却を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本発明の一実施形態に係るハイブリッド車の概略構成図である。
【
図2】本実施形態のハイブリッド車における回生制御装置の構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明のハイブリッド車両の実施形態について図面を参照しながら説明する。
図1は、本発明の一実施形態に係るハイブリッド車両(以下、車両1という)の走行駆動系の概略構成図である。
本発明の一実施形態における車両1は、エンジン2(内燃機関)の出力によってモータジェネレータ9(電動機)を駆動して発電するとともに、車輪を駆動する電動のフロントモータ4(第2電気モータ)を備えたプラグインハイブリッド車やハイブリッド車等の車両である。
【0016】
エンジン2は、フロントトランスアクスル7を介して前輪3の駆動軸8を駆動可能であるとともに、フロントトランスアクスル7を介してモータジェネレータ9(第1電気モータ)を駆動して発電させることが可能となっている。また、エンジン2と前輪3とは、フロントトランスアクスル7内に配置されたクラッチ16を介して接続されている。
フロントモータ4は、コントロールユニット20を介して、車両1に搭載された駆動用バッテリ11(蓄電池)やモータジェネレータ9から電力を供給されて駆動し、フロントトランスアクスル7を介して前輪3の駆動軸8を駆動する。
【0017】
モータジェネレータ9によって発電された電力は、駆動用バッテリ11を充電可能であるとともに、フロントモータ4に電力を供給可能である。駆動用バッテリ11は、リチウムイオン電池等の二次電池で構成されている。また、駆動用バッテリ11には、駆動用バッテリ11の充電率(SOC)を検出する充電率検出部11a(充電量検出部)を備えている。
【0018】
コントロールユニット20は、走行モード、フロントモータ4の出力、モータジェネレータ9の発電量及び出力、エンジン2における燃料噴射量及び燃料噴射時期、フロントトランスアクスル7におけるクラッチ16の断接等を制御する機能を有する。走行モードは、EV走行モード、エンジン走行モード、パラレル走行モード、シリーズ走行モードを含む。
【0019】
コントロールユニット20は、車両1の総合的な制御を行うための制御装置である。コントロールユニット20は、入出力装置、記憶装置(ROM、RAM、不揮発性RAM等)、中央演算処理装置(CPU)及びタイマ等を含んで構成される。
EVモードでは、エンジン2を停止し、モータ46を駆動して走行させる。
シリーズモードでは、フロントトランスアクスル7のクラッチ16を切断し、エンジン2によりモータジェネレータ9を駆動させることで発電を行うとともに、フロントモータ4を駆動して走行させる。なお、シリーズモードでは、エンジン2の回転速度を効率のよい値に設定する。
【0020】
パラレルモードでは、フロントトランスアクスル7のクラッチ16を接続し、エンジン2及びフロントモータ4の動力を伝達して前輪3を駆動させる。
コントロールユニット20は、例えば、高速領域のように、エンジン2の効率のよい領域では、走行モードをパラレルモードとする。また、パラレルモードを除く領域、即ち中低速領域では、駆動用バッテリ11の充電率SOC(充電量)に基づいてEVモードとシリーズモードとの間で切換える。
【0021】
また、コントロールユニット20は、車両の減速走行時において前輪3の回転力によりフロントモータ4を強制駆動して発電(回生発電)させるとともに、前輪3に制動力を付与させる回生制動を実行する回生制動モードが可能になっている。
回生制動モードにおける回生制動力は、シフトレバーの選択操作によって変更することができる。
【0022】
更に、コントロールユニット20は、車両減速走行時における回生制動モードにおいて、例えば駆動用バッテリ11の充電率が満充電付近の閾値(所定値)以上になった場合に、モータジェネレータ9に電力を供給して作動させエンジン2を回転駆動させるモータリングを実行するモータリングモードが可能である。なお、モータリングモードでは、回生発電モードと同様にエンジン2への燃料噴射が抑制されるが、燃料噴射及び点火を行いつつモータリングを実行してもよい。
【0023】
モータリングモードでは、燃料噴射の抑制によりエンジンの出力が抑制されている状態で、モータジェネレータ9によりエンジン2を駆動することで電力消費される。これにより、駆動用バッテリ11の充電率が満充電付近であっても回生制動力を確保することができる。なお、モータジェネレータ9による電力消費量は、エンジン2のフリクションにより変化する。
【0024】
コントロールユニット20は、モータリングモードにおいて、駆動用バッテリ11の充電量(充電率)とフロントモータ4における回生発電量とに応じてモータジェネレータ9を制御してモータリングによるエンジン回転速度(モータリング速度)を制御する。例えばフロントモータ4における回生発電量はコントロールユニット20から入力すればよい。
【0025】
図2は、本実施形態の車両における回生制御装置の構成図である。
図2に示すように、コントロールユニット20は、エンジン2に備えられた冷却水温センサ25(冷媒温度検出部)からエンジン2の冷却水の温度(エンジン水温)と、油温センサ26(油温検出部)からエンジン2の潤滑油温度(エンジン油温)を入力するとともに、エンジン回転速度(モータリング時におけるモータリング速度)を入力し、ウォータポンプ30、冷却水路切替バルブ31及びバッテリ冷却装置37を作動制御する。なお、エンジン回転速度は、エンジン回転速度センサ27や、モータリング時におけるモータジェネレータ9の回転数を取得すればよい。
【0026】
ウォータポンプ30は、エンジン2の冷却水が流通する冷却水循環路35(冷媒通路)に備えられている電動ポンプであり、冷却水循環路35に冷却水を循環可能である。冷却水循環路35には、エンジン2をバイパスするバイパス通路36が備えられている。
冷却水路切替バルブ31は、冷却水循環路35とバイパス通路36との上流側の分岐点に備えられ、ウォータポンプ30から吐出した冷却水をエンジン2またはバイパス通路36のいずれかに流入させるかを切り替える。
【0027】
バッテリ冷却装置37(冷却装置)は、例えば電動ファンのような、駆動用バッテリ11を冷却させるための電動装置である。
以下に、モータリングモード時におけるウォータポンプ30、冷却水路切替バルブ31及びバッテリ冷却装置37の具体的な作動制御について説明する。
コントロールユニット20は、モータリング時において、エンジン水温が適宜設定された所定温度T1より高い場合には、ウォータポンプ30を作動させ、エンジン水温が所定温度T1以下である場合には、ウォータポンプ30の作動を抑制する。なお、所定温度T1は、例えばエンジン2の暖機完了温度付近に設定すればよい。エンジン温度が高くなるに伴ってエンジン2のフリクションが低下するのでモータリングモード時におけるモータジェネレータ9の消費電力が減少する。エンジン温度と関連性のあるエンジン水温が所定温度T1以上である場合、即ちエンジン2が暖機の完了後には、エンジン2を冷却することによりエンジン2のフリクションを増加させるとともに、ウォータポンプ30を作動させることで電力を消費する。これにより、回生電力(回生発電によって得られる電力)を増加させて回生制動力を高く確保することができる。
【0028】
また、エンジン水温が所定温度T1未満である場合、即ちエンジン2暖機の完了前には、ウォータポンプ30を停止してもエンジン2のフリクションが高く、モータリングモードでのモータジェネレータ9の消費電力が十分であるため回生制動力を高く確保することができる。そして、ウォータポンプ30の作動を抑制することで、エンジン2の暖機完了を早めるとともに、ウォータポンプ30の作動による騒音を低下させることができる。
【0029】
更に、コントロールユニット20は、モータリング時において、エンジン水温が上昇するに伴ってウォータポンプ30の出力を低下させるように制御する。
これにより、エンジン2のフリクションの増減、すなわちモータリングモードでのモータジェネレータ9の消費電力の増減に合わせてウォータポンプ30の消費電力を増減させ、回生制動力の確保を図りつつウォータポンプ30の騒音を低下させることができる。
【0030】
また、コントロールユニット20は、エンジン水温とともにエンジン油温を入力して、モータリングモードにおいてエンジン水温とエンジン油温との温度差に基づいて、ウォータポンプ30の出力を補正するようにするとよい。
例えば温度差が所定温度差ΔT2以上の場合には、温度差が所定温度差ΔT2未満の場合よりもウォータポンプ30の出力が増加するように補正するようにすればよい。エンジン水温とエンジン油温との差が発生している場合には、ウォータポンプ30の出力を増加するように補正することでエンジン水温とエンジン油温との間で熱交換を促進することができるので、モータジェネレータ9の消費電力を増加させて、回生電力を増加可能にし、回生制動力を確保することができる。
【0031】
また、コントロールユニット20は、ウォータポンプ30の出力をモータリング速度(モータリング時の回転速度)に応じて制御し、エンジン油温とエンジン水温との温度差が所定温度差以上のとき、モータリング速度に応じて決定されたウォータポンプ30の出力を増加させるように補正し、温度差が所定温度差未満のとき、モータリング速度に応じて決定されたウォータポンプ30の出力で制御する。
【0032】
例えばモータリング速度が上昇するに伴ってエンジン2の温度上昇の可能性があるので、ウォータポンプ30の出力を上げればよい。なお、エンジン油温とエンジン水温との温度差が所定温度差未満の場合には、エンジン水温とエンジン油温との間で熱交換が期待できないので、モータリング速度に応じて決定されたウォータポンプ30の出力に設定することで、十分にエンジン2の過度な温度上昇を抑制する。
【0033】
また、コントロールユニット20は、モータリング速度が所定速度V1以上の場合、モータリング速度及びエンジン水温に基づいてウォータポンプ30を制御し、モータリング速度が所定速度V1未満の場合、モータリング速度に基づいてウォータポンプ30の出力を制御するようにしてもよい。
モータリング速度が所定速度以上の場合には、消費電力が大きくなるためエンジン水温の温度変化によって消費電力の差が大きくなる。そこで、モータリング速度とエンジン水温に基づいてウォータポンプ30の出力を制御することで、ウォータポンプ30における消費電力を精度よく設定することができる。モータリング速度が所定速度未満の場合には、モータジェネレータ9の消費電力が小さくなるため冷媒の温度変化によって消費電力の差も小さくなるので、モータリング速度に基づいてウォータポンプ30の出力を精度よく制御することができる。
【0034】
また、エンジン2の冷却水循環路35には、エンジン2をバイパスするバイパス通路36が備えられており、コントロールユニット20は、モータリングモード時にエンジン水温が所定温度以下の場合、ウォータポンプ30を駆動させるとともに冷却水がバイパス通路36を流れるように制御するとよい。
これにより、モータリングモード時にエンジン水温が所定温度以下の場合には、冷却水がバイパス通路36を流れるように制御することで、エンジン2の温度低下を抑制しつつウォータポンプ30により電力消費量を増加させることができる。
【0035】
また、車両1には、駆動用バッテリ11からの電力で駆動され、駆動用バッテリ11を冷却するバッテリ冷却装置37を備えており、コントロールユニット20は、モータリング及びウォータポンプ30の駆動では回生電力を消費しきれずに要求される回生制動力が得られない場合、すなわち回生電力がモータリング及びウォータポンプ30による消費電力より大きい場合には、バッテリ冷却装置37の出力を増加させるとよい。
【0036】
これにより、モータリング及びウォータポンプ30の駆動では回生電力を消費しきれない場合に、バッテリ冷却装置37の消費電力を増加させることで、回生電力をより大きく可能にして、回生制動力を確保することができる。また、モータリング時に回生電力を駆動用バッテリ11に充電させた場合に、駆動用バッテリ11が発熱するので、バッテリ冷却装置37を作動させることで駆動用バッテリ11の温度上昇を抑え、充電性能を向上させることができる。
【0037】
なお、本願発明は、上記実施形態に限定するものでない。例えば上記の詳細な制御について適宜変更してもよい。
本発明は、回生発電及びモータリングが可能なハイブリッド車両に広く適用できる。
【符号の説明】
【0038】
1 車両
2 エンジン(内燃機関)
4 フロントモータ(第2電気モータ)
9 モータジェネレータ(第1電気モータ)
11 駆動用バッテリ(蓄電池)
11a 充電率検出部(充電量検出部)
20 コントロールユニット(制御部)
25 冷却水温センサ(冷媒温度検出部)
26 油温センサ(油温検出部)
30 ウォータポンプ(電動ポンプ)
35 冷却水循環路(冷媒通路)
36 バイパス通路
37 バッテリ冷却装置(冷却装置)