IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 大日精化工業株式会社の特許一覧

特開2024-119278カルボキシ基含有ポリウレタン樹脂及び樹脂組成物
<>
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024119278
(43)【公開日】2024-09-03
(54)【発明の名称】カルボキシ基含有ポリウレタン樹脂及び樹脂組成物
(51)【国際特許分類】
   C08G 18/44 20060101AFI20240827BHJP
   C08G 59/40 20060101ALI20240827BHJP
【FI】
C08G18/44
C08G59/40
【審査請求】有
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023026063
(22)【出願日】2023-02-22
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2024-07-12
(71)【出願人】
【識別番号】000002820
【氏名又は名称】大日精化工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100098707
【弁理士】
【氏名又は名称】近藤 利英子
(74)【代理人】
【識別番号】100135987
【弁理士】
【氏名又は名称】菅野 重慶
(74)【代理人】
【識別番号】100168033
【弁理士】
【氏名又は名称】竹山 圭太
(74)【代理人】
【識別番号】100161377
【弁理士】
【氏名又は名称】岡田 薫
(72)【発明者】
【氏名】矢口 和樹
(72)【発明者】
【氏名】三輪 祐也
【テーマコード(参考)】
4J034
4J036
【Fターム(参考)】
4J034BA03
4J034CA03
4J034CA04
4J034CB03
4J034DA01
4J034DB03
4J034DC07
4J034DF15
4J034DF16
4J034HA01
4J034HA06
4J034HA07
4J034HA11
4J034HC03
4J034HC12
4J034HC13
4J034HC17
4J034HC22
4J034HC34
4J034HC35
4J034HC52
4J034HC61
4J034HC63
4J034HC64
4J034HC65
4J034HC67
4J034HC71
4J034HC73
4J034KA01
4J034KB01
4J034KC08
4J034KC16
4J034KC17
4J034KD12
4J034LA07
4J034LA33
4J034LA36
4J034QB04
4J034QB19
4J034RA14
4J036AD08
4J036AF06
4J036DC48
4J036FB10
4J036GA00
4J036HA12
(57)【要約】
【課題】非アミド系の有機溶剤に溶けやすく、低温保存下であっても安定性に優れた溶液を調製することが可能であるとともに、吸水性が低いカルボキシ基含有ポリウレタン樹脂を提供する。
【解決手段】その末端に水酸基を有するカルボキシ基含有ポリエステル樹脂と、ポリイソシアネート(c)との反応物であり、カルボキシ基含有ポリエステル樹脂が、ポリマーポリオール(a)に由来する構成単位、及びテトラカルボン酸二無水物(b)に由来する構成単位を有し、テトラカルボン酸二無水物(b)が、4,4’-(4,4’-イソプロピリデンジフェノキシ)ジフタル酸無水物であるカルボキシ基含有ポリウレタン樹脂である。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
その末端に水酸基を有するカルボキシ基含有ポリエステル樹脂と、ポリイソシアネート(c)との反応物であり、
前記カルボキシ基含有ポリエステル樹脂が、ポリマーポリオール(a)に由来する構成単位、及びテトラカルボン酸二無水物(b)に由来する構成単位を有し、
前記テトラカルボン酸二無水物(b)が、4,4’-(4,4’-イソプロピリデンジフェノキシ)ジフタル酸無水物であるカルボキシ基含有ポリウレタン樹脂。
【請求項2】
前記ポリマーポリオール(a)が、脂肪族ポリカーボネートジオール及び脂環族ポリカーボネートジオールからなる群より選択される少なくとも一種である請求項1に記載のカルボキシ基含有ポリウレタン樹脂。
【請求項3】
前記ポリマーポリオール(a)の数平均分子量が400~3,500である請求項1に記載のカルボキシ基含有ポリウレタン樹脂。
【請求項4】
前記ポリイソシアネート(c)が、ジフェニルメタンジイソシアネート、トリレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、1,6-ヘキサメチレンジイソシアネート、1,5-ペンタメチレンジイソシアネート、及び水素添加ジフェニルメタンジイソシアネートからなる群より選択される少なくとも一種である請求項1に記載のカルボキシル基含有ポリウレタン樹脂。
【請求項5】
数平均分子量が10,000~100,000である請求項1に記載のカルボキシ基含有ポリウレタン樹脂。
【請求項6】
酸価が4~80mgKOH/gである請求項1に記載のカルボキシ基含有ポリウレタン樹脂。
【請求項7】
ウレタン結合濃度が0.10~2.00mmol/gである請求項1に記載のカルボキシ基含有ポリウレタン樹脂。
【請求項8】
請求項1~7のいずれか一項に記載のカルボキシ基含有ポリウレタン樹脂と、
1分子中に2以上のエポキシ基を有するエポキシ樹脂と、を含有する樹脂組成物。
【請求項9】
非アミド系の有機溶剤をさらに含有する請求項8に記載の樹脂組成物。
【請求項10】
前記有機溶剤が、メチルエチルケトン、トルエン、及び炭酸ジメチルからなる群より選択される少なくとも一種である請求項9に記載の樹脂組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、カルボキシ基含有ポリウレタン樹脂、及び樹脂組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリウレタン樹脂は、耐摩耗性、屈曲性、及び密着性などの諸物性に優れているとともに、各種の加工法への適性を有する。このため、ポリウレタン樹脂は、各種コーティング剤、インキ、及び塗料等のバインダーや、フィルム及びシートをはじめとする各種の成形物の構成材料等として広く用いられている。なかでも、優れた耐久性が要求される車輌や電子材料等の分野で用いられるポリウレタン樹脂は、原材料の一つとしてポリカーボネートポリオールを用いて製造されることが一般的である。しかし、ポリカーボネートポリオール用いて製造されるポリウレタン樹脂は、耐久性に優れている一方で、柔軟性が低下する傾向にある。
【0003】
ポリウレタン樹脂の機能を制御する手法として、側鎖にカルボキシ基を導入する手法が知られている。例えば、耐熱性等の特性が向上した硬化物を形成しうる、カルボキシ基を有するポリウレタン樹脂とエポキシ樹脂とを組み合わせた接着剤が提案されている(特許文献1)。
【0004】
カルボキシ基が導入されたポリウレタン樹脂を製造する方法としては、ジメチロールプロピオン酸(DMPA)等の低分子量のカルボキシ基含有ポリオールと、ジイソシアネートとを反応させる方法がある。しかし、この方法で得られるポリウレタン樹脂は、ウレタン結合に由来するハードセグメントの含有量が増加するため、柔軟性が低下する傾向にある。また、親水性のカルボキシ基やウレタン結合を多く含有するため、このポリウレタン樹脂で形成したフィルムやシート等の成形物は保管時に吸湿(吸水)し、熱加工工程で発泡しやすくなる等の不具合が生じやすくなる。
【0005】
また、カルボキシ基を含有するポリウレタン樹脂の柔軟性を高めるべく、例えば、ピロメリット酸二無水物(PMDA)等のテトラカルボン酸二無水物とポリオールの反応物であるカルボキシ基含有ポリオールを用いて得られる、カルボキシ基含有ポリウレタン樹脂が提案されている(特許文献2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特許第6499860号公報
【特許文献2】特開2019-1952号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、ピロメリット酸二無水物(PMDA)やジフェニルテトラカルボン酸二無水物(BPDA)等のテトラカルボン酸二無水物を用いて得られるポリウレタン樹脂は結晶性が高く、有機溶剤への溶解性が低い。このため、溶解力に優れたアミド系の有機溶剤を用いて製造及び保管する必要があるが、アミド系の有機溶剤は沸点が高く、乾燥によって除去することが困難である等、取り扱い性が良好であるとはいえない。さらに、ピロメリット酸二無水物等を用いて製造したポリウレタン樹脂をエポキシ樹脂等の硬化剤で硬化させると、得られる硬化物の耐熱性が必ずしも良好であるとはいえず、改良の余地があった。
【0008】
本発明は、このような従来技術の有する問題点に鑑みてなされたものであり、その課題とするところは、非アミド系の有機溶剤に溶けやすく、低温保存下であっても安定性に優れた溶液を調製することが可能であるとともに、吸水性が低いカルボキシ基含有ポリウレタン樹脂を提供することにある。また、本発明の課題は、硬化剤で硬化させることで、吸水性が低く、耐熱性に優れた硬化層等の硬化物を形成することが可能な樹脂組成物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
すなわち、本発明によれば、以下に示すカルボキシ基含有ポリウレタン樹脂が提供される。
[1]その末端に水酸基を有するカルボキシ基含有ポリエステル樹脂と、ポリイソシアネート(c)との反応物であり、前記カルボキシ基含有ポリエステル樹脂が、ポリマーポリオール(a)に由来する構成単位、及びテトラカルボン酸二無水物(b)に由来する構成単位を有し、前記テトラカルボン酸二無水物(b)が、4,4’-(4,4’-イソプロピリデンジフェノキシ)ジフタル酸無水物であるカルボキシ基含有ポリウレタン樹脂。
[2]前記ポリマーポリオール(a)が、脂肪族ポリカーボネートジオール及び脂環族ポリカーボネートジオールからなる群より選択される少なくとも一種である前記[1]に記載のカルボキシ基含有ポリウレタン樹脂。
[3]前記ポリマーポリオール(a)の数平均分子量が400~3,500である前記[1]又は[2]に記載のカルボキシ基含有ポリウレタン樹脂。
[4]前記ポリイソシアネート(c)が、ジフェニルメタンジイソシアネート、トリレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、1,6-ヘキサメチレンジイソシアネート、1,5-ペンタメチレンジイソシアネート、及び水素添加ジフェニルメタンジイソシアネートからなる群より選択される少なくとも一種である前記[1]~[3]のいずれかに記載のカルボキシル基含有ポリウレタン樹脂。
[5]数平均分子量が10,000~100,000である前記[1]~[4]のいずれかに記載のカルボキシ基含有ポリウレタン樹脂。
[6]酸価が4~80mgKOH/gである前記[1]~[5]のいずれかに記載のカルボキシ基含有ポリウレタン樹脂。
[7]ウレタン結合濃度が0.10~2.00mmol/gである前記[1]~[6]のいずれかに記載のカルボキシ基含有ポリウレタン樹脂。
【0010】
また、本発明によれば、以下に示す樹脂組成物が提供される。
[8]前記[1]~[7]のいずれかに記載のカルボキシ基含有ポリウレタン樹脂と、
1分子中に2以上のエポキシ基を有するエポキシ樹脂と、を含有する樹脂組成物。
[9]非アミド系の有機溶剤をさらに含有する前記[8]に記載の樹脂組成物。
[10]前記有機溶剤が、メチルエチルケトン、トルエン、及び炭酸ジメチルからなる群より選択される少なくとも一種である前記[9]に記載の樹脂組成物。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、非アミド系の有機溶剤に溶けやすく、低温保存下であっても安定性に優れた溶液を調製することが可能であるとともに、吸水性が低いカルボキシ基含有ポリウレタン樹脂を提供することにある。また、本発明によれば、硬化剤で硬化させることで、吸水性が低く、耐熱性に優れた硬化層等の硬化物を形成することが可能な樹脂組成物を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0012】
<カルボキシ基含有ポリウレタン樹脂>
以下、本発明の実施の形態について説明するが、本発明は以下の実施の形態に限定されるものではない。本発明のカルボキシ基含有ポリウレタン樹脂(以下、単に「ポリウレタン樹脂」とも記す)の一実施形態は、その末端に水酸基を有するカルボキシ基含有ポリエステル樹脂と、ポリイソシアネート(c)との反応物である。カルボキシ基含有ポリエステル樹脂は、ポリマーポリオール(a)に由来する構成単位、及びテトラカルボン酸二無水物(b)に由来する構成単位を有する。そして、テトラカルボン酸二無水物(b)は、4,4’-(4,4’-イソプロピリデンジフェノキシ)ジフタル酸無水物(BPADA)である。以下、本実施形態のポリウレタン樹脂の詳細について説明する。
【0013】
(カルボキシ基含有ポリエステル樹脂)
本実施形態のポリウレタン樹脂は、その末端に水酸基を有するカルボキシ基含有ポリエステル樹脂と、ポリイソシアネート(c)との反応物である。カルボキシ基含有ポリエステル樹脂は、ポリマーポリオール(a)に由来する構成単位、及びテトラカルボン酸二無水物(b)に由来する構成単位を有する。なお、カルボキシ基含有ポリエステル樹脂は、ポリマーポリオール(a)に由来する構成単位、及びテトラカルボン酸二無水物(b)に由来する構成単位のみで実質的に構成されていることが好ましい。カルボキシ基含有ポリエステル樹脂は、例えば、下記一般式(X)で表される構造を含む。
【0014】
(前記一般式(X)中、Rは、テトラカルボン酸二無水物(b)から酸無水物基を除いた有機基を示し、Rは、ポリマーポリオール(a)から水酸基を除いた有機基を示す)
【0015】
[ポリマーポリオール(a)]
ポリマーポリオール(a)は、好ましくは、その分子中に2つの水酸基を有するポリマージオールである。また、ポリマーポリオール(a)は、ポリカーボネートジオールであることが好ましい。ポリカーボネートジオールをポリマーポリオール(a)として用いることで、その主鎖中にポリカーボネート構造を有するポリウレタン樹脂とすることができる。そして、ポリカーボネート構造を主鎖中に導入することで、非アミド系の有機溶剤により溶けやすく、安定性にさらに優れた溶液を調製することが可能であるとともに、吸水性がより低いポリウレタン樹脂とすることができる。また、ポリカーボネート構造を主鎖中に導入することで、エポキシ樹脂等の硬化剤で硬化させることにより、吸水性がより低く、耐熱性にさらに優れた硬化層等の硬化物を形成することができる。
【0016】
ポリマーポリオール(a)は、脂肪族ポリカーボネートジオール及び脂環族ポリカーボネートジオールからなる群より選択される少なくとも一種であることが好ましい。脂肪族ポリカーボネートジオールをポリマーポリオール(a)として用いると、ポリウレタン樹脂の柔軟性をさらに高めることができる。また、脂環族ポリカーボネートジオールをポリマーポリオール(a)として用いると、ポリウレタン樹脂のガラス転移温度を高めることができる。これにより、ポリウレタン樹脂のべたつき(タック性)を抑制して離型性を高めることが可能となり、ポリウレタン樹脂の取り扱い性や加工性を向上させることができる。
【0017】
ポリカーボネートジオールとしては、例えば、炭酸ジメチル等のジアルキルカーボネートと、分子中に2つの水酸基を有するジオール化合物との反応物を用いることができる。また、市販のポリカーボネートジオールを用いることもできる。ジオール化合物としては、炭素数2~10の直鎖状又は側鎖を持ったジオールを挙げることができる。
【0018】
ジオール化合物としては、脂肪族ジオール及び脂環族ジオール等を挙げることができる。脂肪族ジオールとしては、エチレングリコール、1,3-プロパンジオール、1,4-ブタンジオール、1,5-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、1,7-ヘプタンジオール、1,8-オクタンジオール、1,9-ノナンジオール、1,10-デカンジオール、1,11-ウンデカンジオール、1,12-ドデカンジオール、3-メチル-1,5-ペンタンジオール、ネオペンチルグリコール、及び2-メチル-1,8-オクタンジオール等を挙げることができる。また、脂環族ジオールとしては、1,4-シクロヘキサンジメタノール等を挙げることができる。ポリウレタン樹脂の柔軟性をさらに向上させる観点から、脂肪族ジオールが好ましく、1,3-プロパンジオール、1,4-ブタンジオール、1,5-ペンタンジオール、及び1,6-ヘキサンジオールがさらに好ましい。
【0019】
ポリマーポリオール(a)としては、上記のポリカーボネートジオール以外のポリマーポリオールを用いることもできる。ポリカーボネートジオール以外のポリマーポリオールとしては、ポリエーテルポリオール、ポリエステルポリオール、ポリラクトンポリオール、及びその他のポリマーポリオールを挙げることができる。さらに、分子量400以下の短鎖ポリオールを併用することもできる。
【0020】
ポリマーポリオール(a)の数平均分子量(Mn)は、400~3,500であることが好ましく、500~2,500であることがさらに好ましい。ポリマーポリオール(a)の数平均分子量(Mn)が400未満であると、ポリウレタン樹脂のウレタン結合濃度が増加し、ポリウレタン樹脂やポリウレタン樹脂の硬化物等の柔軟性が低下しやすくなるとともに、吸水性が高まりやすくなることがある。一方、ポリマーポリオール(a)の数平均分子量(Mn)が3,500超であると、ポリウレタン樹脂の酸価を高めることが困難になることがあり、ポリウレタン樹脂やポリウレタン樹脂の硬化物等の耐熱性が低下する場合がある。
【0021】
[テトラカルボン酸二無水物(b)]
テトラカルボン酸二無水物(b)としては、下記式(1)で表される構造を有する4,4’-(4,4’-イソプロピリデンジフェノキシ)ジフタル酸無水物(BPADA)を用いる。テトラカルボン酸二無水物(b)としてBPADAを用いることで、非結晶性であるとともに耐熱性が良好なビスフェノールA骨格をポリウレタン樹脂に導入することができる。これにより、非アミド系の有機溶剤に溶けやすく、安定性に優れた溶液を調製することが可能であるとともに、吸水性が低いポリウレタン樹脂とすることができる。さらに、ビスフェノールA骨格をポリウレタン樹脂に導入したことで、エポキシ樹脂等の硬化剤で硬化させることによって、吸水性が低く、耐熱性に優れた硬化層等の硬化物を形成することができる。
【0022】
【0023】
本実施形態のポリウレタン樹脂は、上記のBPADAを用いたことで、ジメチロールプロピオン酸(DMPA)等のカルボキシ基含有ジオールを実質的に用いることなく、その分子構造中にカルボキシ基が導入されたポリウレタン樹脂である。このため、本実施形態のポリウレタン樹脂はウレタン結合濃度が適度に抑制されており、吸水性が低いとともに、ポリマーポリオール(a)の種類を選択することで柔軟性が向上している。
【0024】
なお、本発明の効果を阻害しない範囲内で、必要に応じて、BPADA以外のテトラカルボン酸二無水物(その他のテトラカルボン酸二無水物)をさらに用いてもよい。その他のテトラカルボン酸二無水物としては、3,3’,4,4’-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、ピロメリット酸二無水物、3,3’,4,4’-ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’-ジフェニルスルホンテトラカルボン酸二無水物、3,4’-オキシジフタル酸無水物、4,4’-オキシジフタル酸無水物、4,4’-(ヘキサフルオロイソプロピリデン)ジフタル酸無水物、エチレングリコールビス(アンヒドロトリメリテート)、p-フェニレンビス(トリメリテート無水物)、シクロブタンテトラカルボン酸二無水物、メチルシクロブタンテトラカルボン酸二無水物、シクロペンタンテトラカルボン酸二無水物、1,2,4,5-シクロヘキサンテトラカルボン酸二無水物、エタンテトラカルボン酸二無水物、及び3,3’,4,4’-ビシクロへキシルテトラカルボン酸二無水物等を挙げることができる。
【0025】
耐熱性等の観点から、その他のテトラカルボン酸二無水物は、芳香族系テトラカルボン酸二無水物であることが好ましく、3,3’,4,4’-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’-ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’-ジフェニルスルホンテトラカルボン酸二無水物、及び4,4’-オキシジフタル酸無水物からなる群より選択される少なくとも一種であることがさらに好ましい。
【0026】
(ポリイソシアネート(c))
ポリイソシアネート(c)は、その分子中に2つのイソシアネート基を有するジイソシアネートであることが好ましい。ジイソシアネートとしては、芳香族ジイソシアネート、脂肪族ジイソシアネート、及び脂環族ジイソシアネート等を挙げることができる。
【0027】
芳香族ジイソシアネートとしては、トリレンジイソシアネート、4-メトキシ-1,3-フェニレンジイソシアネート、4-イソプロピル-1,3-フェニレンジイソシアネート、4-クロル-1,3-フェニレンジイソシアネート、4-ブトキシ-1,3-フェニレンジイソシアネート、2,4-ジイソシアネートジフェニルエーテル、ジフェニルメタンジイソシアネート、ジュリレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、1,5-ナフタレンジイソシアネート、ベンジジンジイソシアネート、o-ニトロベンジジンジイソシアネート、及び4,4’-ジイソシアネートジベンジル等を挙げることができる。
【0028】
脂肪族ジイソシアネートとしては、メチレンジイソシアネート、1,4-テトラメチレンジイソシアネート、1,5-ペンタメチレンジイソシアネート、1,6-ヘキサメチレンジイソシアネート、及び1,10-デカメチレンジイソシアネート等を挙げることができる。
【0029】
脂環族ジイソシアネートとしては、1,4-シクロヘキシレンジイソシアネート、4,4’-メチレンビス(シクロヘキシルイソシアネート)、1,5-テトラヒドロナフタレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、水素添加ジフェニルメタンジイソシアネート、及び水素添加キシリレンジイソシアネート等を挙げることができる。
【0030】
ポリウレタン樹脂の反応性、耐熱性、柔軟性、及び溶解性等の観点から、ポリイソシアネート(c)は、ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)、トリレンジイソシアネート(TDI)、イソホロンジイソシアネート(IPDI)、1,6-ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)、1,5-ペンタメチレンジイソシアネート(PDI)、及び水素添加ジフェニルメタンジイソシアネート(HMDI)からなる群より選択される少なくとも一種であることが好ましく、ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)及びイソホロンジイソシアネート(IPDI)がさらに好ましい。
【0031】
ジイソシアネートは、形成しようとする硬化物の物性等に応じて適宜選択して用いることができる。例えば、耐熱性により優れた硬化物等を形成しようとする場合には、ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)等の芳香族ジイソシアネートを用いることが好ましい。また、柔軟性により優れた硬化物等を形成しようとする場合には、1,6-ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)等の脂肪族ジイソシアネートを用いることが好ましい。
【0032】
(ポリウレタン樹脂)
ポリウレタン樹脂の数平均分子量(Mn)は、10,000~100,000であることが好ましく、20,000~70,000であることがさらに好ましい。ポリウレタン樹脂の数平均分子量が10,000未満であると、成膜性がやや低下するとともに、形成される硬化層等の硬化物の耐熱性が低下する場合がある。一方、ポリウレタン樹脂の数平均分子量が100,000超であると、非アミド系の有機溶剤への溶解性が低下する場合がある。
【0033】
本明細書における樹脂の「数平均分子量(Mn)」は、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)により測定されるポリスチレン換算の値を意味する。GPCは、例えば、以下の装置及び条件にて測定することができる。
【0034】
(1)機器装置:商品名「HLC-8020」(東ソー社製)
(2)カラム:商品名「TSKgel G2000HXL」、「G3000HXL」、
「G4000GXL」(東ソー社製)
(3)溶媒:THF
(4)流速:1.0ml/min
(5)試料濃度:2g/L
(6)注入量:100μL
(7)温度:40℃
(8)検出器:型番「RI-8020」(東ソー社製)
(9)標準物質:TSK標準ポリスチレン(東ソー社製)
【0035】
ポリウレタン樹脂の酸価は、4~80mgKOH/gであることが好ましく、9~61mgKOH/gであることがさらに好ましく、14~51mgKOH/gであることが特に好ましい。ポリウレタン樹脂の酸価が4mgKOH/g以上であると、エポキシ樹脂等の硬化剤と反応させて形成される硬化物(架橋物)の架橋密度が高くなり、硬化物の耐熱性をより向上させることができる。また、ポリウレタン樹脂の酸価が80mgKOH/g以下であると、エポキシ樹脂等の硬化剤と反応させて形成される硬化物(架橋物)の架橋密度が過度に高まることを抑制することができる。これにより、歪の発生を抑制することが可能となり、硬化物の柔軟性を向上させることができる。
【0036】
ポリウレタン樹脂の酸価は、例えば、テトラカルボン酸二無水物(b)の量(mol)、及びポリマーポリオール(a)とポリイソシアネート(c)を含む仕込み固形分量(g)を調整することによって制御することができる。なお、ポリウレタン樹脂の酸価(理論値)は、下記式(A)より算出することができる。
ポリウレタン樹脂の酸価(理論値)=テトラカルボン酸二無水物(b)の量(mol)×2×56.1×1,000/仕込み固形分量(g) ・・・(A)
【0037】
ポリウレタン樹脂の酸価(実測値)は、ポリウレタン樹脂をメチルエチルケトン(MEK)等の有機溶剤に溶解させて調製した溶液を試料として用い、JIS K1557-5:2007に準拠した方法にしたがって測定することができる。
【0038】
ポリウレタン樹脂のウレタン結合濃度は、0.10~2.00mmol/gであることが好ましく、0.20~1.50mmol/gであることがさらに好ましく、0.40~1.30mmol/gであることが特に好ましい。ウレタン結合濃度が0.10mmol/g以上であると、ポリウレタン樹脂や、ポリウレタン樹脂を硬化剤で硬化させた硬化物等の各種基材への密着性をより向上させることができる。また、ポリウレタン樹脂のウレタン結合濃度が2.00mmol/g以下であると、ポリウレタン樹脂やポリウレタン樹脂の硬化物等の吸水性をより低下させることができる。
【0039】
「ウレタン結合濃度」とは、ポリウレタン樹脂1g当たりのウレタン結合の量(mmol)をいう。ポリウレタン樹脂のウレタン結合濃度は、例えば、ポリイソシアネート(c)の量(mol)、及びポリマーポリオール(a)とテトラカルボン酸二無水物(b)を含む仕込み固形分量(g)を調整することによって制御することができる。なお、ポリウレタン樹脂のウレタン結合濃度(理論値)は、下記式(B)より算出することができる。
ポリウレタン樹脂のウレタン結合濃度(理論値)=ポリイソシアネート(c)の量(mol)×ポリイソシアネート(c)中のイソシアネート基の数×1,000/仕込み固形分量(g) ・・・(B)
【0040】
(ポリウレタン樹脂の製造方法)
ポリウレタン樹脂は、例えば、以下に示す方法にしたがって製造することができる。まず、テトラカルボン酸二無水物(b)、過剰量のポリマーポリオール(a)、及び有機溶剤を混合し、撹拌しながら100~150℃で1~7時間程度反応させて、その末端に水酸基を有するカルボキシル基含有ポリエステル樹脂を得る。次いで、水酸基とイソシアネート基のモル比が概ね1.0(OH/NCO≒1.0)となるように、ポリイソシアネート(c)を添加して、50~120℃で1~12時間程度反応させる。その後、必要に応じて有機溶剤で希釈するとともに、冷却することで、目的とするポリウレタン樹脂を樹脂溶液の状態で得ることができる。
【0041】
テトラカルボン酸二無水物(b)とポリマーポリオール(a)は、水酸基/酸無水物基(モル比)=1.5~10.0となる量で反応させることが好ましく、2.0~5.0となる量で反応させることがさらに好ましい。上記のモル比を2.0以上とすることで、エステル化反応をより短時間で完結させることができる。また、上記のモル比を5.0以下とすることで、ウレタン結合濃度が高くなりすぎることを抑制することができる。
【0042】
有機溶剤としては、テトラカルボン酸二無水物(b)、ポリマーポリオール(a)、及びポリイソシアネート(c)のいずれとも反応しない有機溶剤を用いることが好ましい。なかでも、非アミド系の有機溶剤を用いることが好ましい。非アミド系の有機溶剤を用いて反応させることで、得られるポリウレタン樹脂の溶液をそのまま塗料や組成物等として用いることができ、低温かつ短時間で乾燥させたり、硬化させたりすることができる。
【0043】
非アミド系の有機溶剤としては、トルエン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、エチレングリコールジエチルエーテル、プロピレングリコールメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールエチルエーテルアセテート、メトキシプロピオン酸メチル、メトキシプロピオン酸エチル、酢酸エチル、酢酸n-ブチル、酢酸イソアミル、アセトン、メチルエチルケトン、シクロペンタノン、シクロヘキサノン、炭酸ジメチル、テトラヒドロフラン、及びジオキサン等を挙げることができる。なかでも、ポリウレタン樹脂の溶解性及び乾燥容易性等の観点から、トルエン、メチルエチルケトン、炭酸ジメチル、シクロペンタノン、及びシクロヘキサノンが好ましく、トルエン、メチルエチルケトン、及び炭酸ジメチルがさらに好ましい。
【0044】
前述の反応は、触媒の存在下で行うこともできる。触媒としては、トリエチルアミン、トリブチルアミン、ジアザビシクロウンデセン、トリエチレンジアミン、及びピリジン等の塩基性触媒;ジブチルチンラウレート、ジオクチルチンラウレート、スタナスオクトエート、オクチル酸亜鉛、及びテトラn-ブチルチタネート等の金属と有機酸又は無機酸との塩;有機金属誘導体;等を用いることができる。触媒の使用量は、ポリマーポリオール(a)に対して、0.01~2モル当量とすればよい。
【0045】
<樹脂組成物>
本発明の樹脂組成物の一実施形態は、前述のカルボキシ基含有ポリウレタン樹脂と、1分子中に2以上のエポキシ基を有するエポキシ樹脂と、を含有する。すなわち、前述のポリウレタン樹脂を硬化剤であるエポキシ樹脂と反応させて硬化させることで、吸水性が低く、耐熱性に優れた硬化層等の硬化物を形成することができる。
【0046】
硬化剤として用いるエポキシ樹脂は、1分子中に2以上のエポキシ基を有する。このようなエポキシ樹脂としては、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、水添ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、臭素化ビスフェノールA型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、o-クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、可撓性エポキシ樹脂、エポキシ化ポリブタジエン、アミン型エポキシ樹脂、複素環含有エポキシ樹脂、脂環式エポキシ樹脂、ビスフェノールS型エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂、トリグリシジルイソシアヌレート、ビキシレノール型エポキシ樹脂、及びグリシジル基を有する化合物等を挙げることができる。
【0047】
エポキシ樹脂のエポキシ当量は、形成する硬化物の機械的強度、柔軟性、及び耐熱性等の観点から、100~10,000g/eqであることが好ましく、100~600g/eqであることがさらに好ましい。
【0048】
エポキシ樹脂の数平均分子量(Mn)は、反応させるポリウレタン樹脂との相溶性等の観点から、100~100,000であることが好ましく、300~70,000であることがさらに好ましい。
【0049】
エポキシ樹脂中のエポキシ基と、ポリウレタン樹脂中のカルボキシ基とのモル比を調整することにより、所望とする特性を有する硬化物とすることができる。例えば、エポキシ基/カルボキシル基(モル比)=10/1~1/1となる量でエポキシ樹脂とポリウレタン樹脂を反応させることが好ましい。上記のモル比の範囲外とすると、架橋性が低下しやすく、得られる硬化物の耐熱性がやや低下することがある。
【0050】
樹脂組成物中、エポキシ樹脂の含有量は、ポリウレタン樹脂(固形分)100質量部に対して、5~200質量部であることが好ましく、10~100質量部であることがさらに好ましい。ポリウレタン樹脂100質量部に対するエポキシ樹脂の含有量を5質量部以上とすることで、架橋性がより良好となる。また、ポリウレタン樹脂100質量部に対するエポキシ樹脂の含有量を200質量部以下とすることで、架橋性が低下しにくくなり、得られる硬化物の耐熱性をより向上させることができる。
【0051】
樹脂組成物は、エポキシ樹脂と前述のポリウレタン樹脂を所望とする量比で混合することによって調製することができる。調製時には、既述の有機溶剤の存在下で混合してもよく、ポリウレタン樹脂の溶液にエポキシ樹脂を添加して混合してもよい。すなわち、本実施形態の樹脂組成物は、有機溶剤をさらに含有してもよい。低沸点の有機溶剤を用いることで、塗料組成物として利用することができる。塗料組成物とした場合、低温で乾燥及び硬化が可能であるとともに、耐熱性及び接着性等の特性に優れた接着剤等として用いることができる。このような塗料組成物は、例えば、電子部材用途の接着剤や、絶縁保護膜形成用の塗料組成物として有用である。また、塗料組成物は、ソルダーレジスト、電磁波シールドフィルム、及び塗料等の用途や、フレキシブルプリント基板用接着剤、導電性接着剤、及び構造材料用接着剤等の接着剤として用いることができる。
【0052】
有機溶剤は、エポキシ樹脂及びポリウレタン樹脂のいずれもが溶解しうる有機溶剤であることが好ましい。塗料組成物として用いることを考慮すると、環境や人体等への影響が比較的少ない非アミド系の有機溶剤を用いることが好ましい。また、その沸点が170℃以下である非窒素系の有機溶剤を用いることが好ましい。その沸点が170℃以下の有機溶剤を用いることで、乾燥及び硬化をより低温の条件下で実施することができる。
【0053】
有機溶剤としては、ポリウレタン樹脂を製造する際に用いることができる前述の有機溶剤と同様のものを用いることができる。具体的には、トルエン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、エチレングリコールジエチルエーテル、プロピレングリコールメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールエチルエーテルアセテート、メトキシプロピオン酸メチル、メトキシプロピオン酸エチル、酢酸エチル、酢酸n-ブチル、酢酸イソアミル、アセトン、メチルエチルケトン、シクロペンタノン、シクロヘキサノン、及び炭酸ジメチル等を用いることができる。なかでも、エポキシ樹脂やポリウレタン樹脂の溶解性、及び塗料組成物として用いる場合に乾燥効率性等の観点から、トルエン、メチルエチルケトン、及び炭酸ジメチルが好ましい。
【0054】
樹脂組成物には、必要に応じて、前述のポリウレタン樹脂、エポキシ樹脂、及び有機溶剤以外のその他の成分をさらに含有させることができる。その他の成分としては、硬化促進剤、イソシアネート系架橋剤、熱可塑性ポリマー、粘着付与樹脂、顔料、酸化防止剤、紫外線吸収剤、界面活性剤、及び充填剤等を挙げることができる。
【0055】
本実施形態の樹脂組成物は、例えば、所望とする基材等に塗布した後、好ましくは40~200℃、さらに好ましくは130~180℃の温度条件下に保持することで硬化させることができる。
【実施例0056】
以下、本発明を実施例に基づいて具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。なお、実施例、比較例中の「部」及び「%」は、特に断らない限り質量基準である。
【0057】
<材料の用意>
以下に示す各種の材料を用意した。
【0058】
(ポリマーポリオール)
・ポリマーポリオール(1):商品名「エタナコール UH-100」、宇部興産社製、ポリヘキサメチレンカーボネートジオール、数平均分子量993
・ポリマーポリオール(2):商品名「エタナコール UH-200」、宇部興産社製、ポリヘキサメチレンカーボネートジオール、数平均分子量2,004
・ポリマーポリオール(3):商品名「エタナコール UH-50」、宇部興産社製、ポリヘキサメチレンカーボネートジオール、数平均分子量499
・ポリマーポリオール(4):商品名「エタナコール UM-90(1/3)、宇部興産社製、ポリ[シクロヘキシレンビス(メチレン)/ヘキサメチレン]カーボネートジオール、1,4-シクロヘキサンジメタノール/1,6-ヘキサンジオール(モル比)=1/3、数平均分子量898
・ポリマーポリオール(5):商品名「エタナコール UM-90(3/1)」、宇部興産社製、ポリ[シクロヘキシレンビス(メチレン)/ヘキサメチレン]カーボネートジオール、1,4-シクロヘキサンジメタノール/1,6-ヘキサンジオール(モル比)=3/1、数平均分子量898
【0059】
(テトラカルボン酸二無水物)
・BPADA:4,4’-(4,4’-イソプロピリデンジフェノキシ)ジフタル酸無水物
・PMDA:ピロメリット酸無水物
・BPDA:3,3’,4,4’-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物
【0060】
(カルボキシ基含有ジオール)
・DMPA:ジメチロールプロピオン酸
【0061】
(ポリイソシアネート)
・MDI:ジフェニルメタンジイソシアネート
・IPDI:イソホロンジイソシアネート
・TDI:トリレンジイソシアネート
【0062】
(硬化剤)
・エポキシ樹脂A:商品名「XD-1000」、日本化薬社製、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、エポキシ当量252g/eq
・エポキシ樹脂B:商品名「jER-1256」、三菱ケミカル社製、ビスフェノールA型フェノキシ樹脂、エポキシ当量7,800g/eq
【0063】
<ポリウレタン樹脂の製造>
(実施例1)
撹拌機を備えたセパラブルフラスコに、ポリマーポリオール(1)400.0部(0.40mol)及びBPADA48.2部(0.09mol)を入れた。120℃で4時間反応させて、その末端に水酸基を有するカルボキシ基含有ポリエステル樹脂を得た。トルエン385.3部を添加して希釈した後、IPDI65.5部(0.29mol)を添加し、100℃で5時間反応させた。赤外吸収スペクトル分析によって、遊離イソシアネート基に由来する2,270cm-1の吸収が消失したことを確認した後、メチルエチルケトン385.3部を添加して希釈し、室温まで冷却して、固形分濃度40%のポリウレタン樹脂Aの溶液を得た。ポリウレタン樹脂Aの数平均分子量(Mn)は30,000、材料の仕込み量から算出したウレタン結合濃度は1.15mmol/g、酸価(実測値)は20mgKOH/g、熱軟化点は52℃であった。熱軟化点が高いほどべたつきが抑制され、低タック性が良好となる傾向にある。ポリウレタン樹脂の熱軟化点は、以下の手順にしたがって測定した。
【0064】
[熱軟化点の測定方法]
ポリウレタン樹脂の溶液を乾燥後の厚さが40μmとなるように離型紙に塗布した後、120℃で10分間乾燥させて塗膜(乾燥膜)を形成した。離型紙を剥がして得た評価用フィルム(幅1.5cm、長さ6cm)に、中央部長手方向2cmを覆わないような形で上下にセロテープ(登録商標)を貼り付けた。続いて、フィルムに450g/cmの荷重がかかるような重りをクリップで吊るした状態でギアオーブンの回転盤に取り付けた。その後、回転盤を5rpmで回転させながら、室温から3℃/minの速度でギアオーブンを昇温した。評価用フィルムが切断したとき、又は2倍に伸長したときの温度(℃)を熱軟化点とした。
【0065】
(実施例2~9、比較例1~5)
表1-1及び1-2に示す配合としたこと以外は、前述の実施例1と同様にして、ポリウレタン樹脂B~Nの溶液を得た。ポリウレタン樹脂の物性を表1-1及び1-2に示す。
【0066】
<ポリウレタン樹脂の評価>
(溶液安定性)
ポリウレタン樹脂の溶液を5℃で保管し、以下に示す評価基準にしたがってポリウレタン樹脂溶液の溶液安定性を評価した。結果を表1-1及び1-2に示す。
○:1ヶ月経過した時点で溶液性状に変化がなかった
×:1ヶ月以内に溶液性状が変化した。
【0067】
(低吸水性)
ポリウレタン樹脂の溶液を、乾燥後の厚さが40μmとなるように離型紙に塗布した後、120℃で10分間乾燥させて塗膜(乾燥膜)を形成した。塗膜の厚さが約300μmになるように折り重ねた後、熱プレス機を使用し、100℃、1MPaの条件下で熱圧着した。次いで、500×500mmのサイズにカットして試験片を得た。得られた試験片を25℃の純水に24時間浸漬させた。浸漬前後の試験片の質量を測定するとともに、下記式(D)から吸水率を算出し、以下に示す評価基準にしたがってポリウレタン樹脂の低吸水性を評価した。結果を表1-1及び1-2に示す。
吸水率(%)=(浸漬前の試験片質量/浸漬後の試験片質量)×100
・・・(D)
○:吸水率が1.5%未満であった。
△:吸水率が1.5%以上2.0%未満であった。
×:吸水率が2.0%以上であった。
【0068】
(柔軟性)
ポリウレタン樹脂の溶液を、乾燥後の厚さが40μmとなるように離型紙に塗布した後、120℃で10分間乾燥させて塗膜(乾燥膜)を形成した。形成した塗膜を長さ60mm×幅15mmのサイズにカットして試験片を得た。得られた試験片についてオートグラフ(商品名「AGS-J」、島津製作所製)を使用し、JIS K-7127:1999に準拠した引張試験を室温(25℃)条件下で実施した。そして、試験片の100%モジュラスの値を測定し、以下に示す評価基準にしたがってポリウレタン樹脂の柔軟性を評価した。結果を表1-1及び1-2に示す。
○:100%モジュラスの値が1.5MPa未満であった。
△:100%モジュラスの値が1.5MPa以上5.0MPa未満であった。
×:100%モジュラスの値が5.0MPa以上であった。
【0069】
(低タック性)
ポリウレタン樹脂の溶液を、乾燥後の厚さが40μmとなるように離型紙に塗布した後、120℃で10分間乾燥させて塗膜(乾燥膜)を形成した。形成した塗膜の表面を指で押した際の感触を確認し、以下に示す評価基準にしたがってポリウレタン樹脂の低タック性を評価した。結果を表1-1及び1-2に示す。
○:べたつきがなかった。
×:べたつきがあった。
【0070】
【0071】
【0072】
<樹脂組成物の製造>
(実施例10~17、比較例6~10)
表2に示す組成となるようにポリウレタン樹脂の溶液及び硬化剤を混合して、樹脂組成物を得た。
【0073】
<樹脂組成物の評価>
(耐熱性)
樹脂組成物を乾燥後の厚さが40μmとなるように離型紙に塗布した後、120℃で10分間乾燥させて塗膜(乾燥膜)を形成した。形成した塗膜を150℃で3時間加熱し、熱硬化させて試験片(硬化膜)を得た。得られた試験片について、以下に示す条件で線膨張係数(CTE、25~300℃)を測定するとともに、以下に示す基準にしたがって硬化膜の耐熱性を評価した。結果を表2に示す。
(1)機器装置:商品名「熱機械分析装置 TMA-7100E」(日立ハイテクサイエンス社製)
(2)プローブ:石英製引張プローブ
(3)荷重:10mN
(4)昇温速度:5℃/min
(5)測定温度範囲:20~320℃
(6)サンプル長:10mm
○:CTEが500ppm/℃未満であった。
×:CTEが500ppm/℃以上であった。
【0074】
(低吸水性)
樹脂組成物を乾燥後の厚さが40μmとなるように離型紙に塗布した後、120℃で10分間乾燥させて塗膜(乾燥膜)を形成した。塗膜の厚さが約300μmになるように折り重ねた後、熱プレス機を使用し、100℃、1MPaの条件下で熱圧着した。次いで、150℃で3時間加熱し、熱硬化させて硬化膜を形成した後、500×500mmのサイズにカットして試験片を得た。得られた試験片を25℃の純水に24時間浸漬させた。浸漬前後の試験片の質量を測定するとともに、下記式(E)から吸水率を算出し、以下に示す評価基準にしたがって硬化膜の低吸水性を評価した。結果を表2に示す。
吸水率(%)=(浸漬前の試験片質量/浸漬後の試験片質量)×100
・・・(E)
○:吸水率が1.0%未満であった。
△:吸水率が1.0%以上1.5%未満であった。
×:吸水率が1.5%以上であった。
【0075】
(柔軟性)
樹脂組成物を乾燥後の厚さが40μmとなるように離型紙に塗布した後、120℃で10分間乾燥させて塗膜(乾燥膜)を形成した。形成した塗膜を150℃で3時間加熱し、熱硬化させて硬化膜を形成した。形成した硬化膜を長さ60mm×幅15mmのサイズにカットして試験片を得た。得られた試験片についてオートグラフ(商品名「AGS-J」、島津製作所製)を使用し、JIS K-7127:1999に準拠した引張試験を室温(25℃)条件下で実施した。そして、試験片の100%モジュラスの値を測定し、以下に示す評価基準にしたがって硬化膜の柔軟性を評価した。結果を表2に示す。
○:100%モジュラスの値が5MPa未満であった。
△:100%モジュラスの値が5MPa以上10MPa未満であった。
×:100%モジュラスの値が10MPa以上であった。
【0076】
【産業上の利用可能性】
【0077】
本発明のカルボキシ基含有ポリウレタン樹脂は、例えば、フレキシブル基板用の素材等として有用である。
【手続補正書】
【提出日】2024-04-11
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
その末端に水酸基を有するカルボキシ基含有ポリエステル樹脂と、ポリイソシアネート(c)との反応物であり、
前記カルボキシ基含有ポリエステル樹脂が、ポリマーポリオール(a)に由来する構成単位、及びテトラカルボン酸二無水物(b)に由来する構成単位を有し、
前記ポリマーポリオール(a)が、脂肪族ポリカーボネートジオール及び脂環族ポリカーボネートジオールからなる群より選択される少なくとも一種であり、
前記テトラカルボン酸二無水物(b)が、4,4’-(4,4’-イソプロピリデンジフェノキシ)ジフタル酸無水物であるカルボキシ基含有ポリウレタン樹脂。
【請求項2】
前記ポリマーポリオール(a)の数平均分子量が400~3,500である請求項1に記載のカルボキシ基含有ポリウレタン樹脂。
【請求項3】
前記ポリイソシアネート(c)が、ジフェニルメタンジイソシアネート、トリレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、1,6-ヘキサメチレンジイソシアネート、1,5-ペンタメチレンジイソシアネート、及び水素添加ジフェニルメタンジイソシアネートからなる群より選択される少なくとも一種である請求項1に記載のカルボキシル基含有ポリウレタン樹脂。
【請求項4】
数平均分子量が10,000~100,000である請求項1に記載のカルボキシ基含有ポリウレタン樹脂。
【請求項5】
酸価が4~80mgKOH/gである請求項1に記載のカルボキシ基含有ポリウレタン樹脂。
【請求項6】
ウレタン結合濃度が0.10~2.00mmol/gである請求項1に記載のカルボキシ基含有ポリウレタン樹脂。
【請求項7】
請求項1~のいずれか一項に記載のカルボキシ基含有ポリウレタン樹脂と、
1分子中に2以上のエポキシ基を有するエポキシ樹脂と、を含有する樹脂組成物。
【請求項8】
非アミド系の有機溶剤をさらに含有する請求項に記載の樹脂組成物。
【請求項9】
前記有機溶剤が、メチルエチルケトン、トルエン、及び炭酸ジメチルからなる群より選択される少なくとも一種である請求項に記載の樹脂組成物。