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特開2024-119290塗装ノズル、及びプリプレグ製造装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024119290
(43)【公開日】2024-09-03
(54)【発明の名称】塗装ノズル、及びプリプレグ製造装置
(51)【国際特許分類】
   B05B 1/34 20060101AFI20240827BHJP
   B29B 11/16 20060101ALI20240827BHJP
   B05B 1/04 20060101ALI20240827BHJP
   B29K 105/08 20060101ALN20240827BHJP
【FI】
B05B1/34 101
B29B11/16
B05B1/04
B29K105:08
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023026080
(22)【出願日】2023-02-22
(71)【出願人】
【識別番号】000004215
【氏名又は名称】株式会社日本製鋼所
(74)【代理人】
【識別番号】100103894
【弁理士】
【氏名又は名称】家入 健
(72)【発明者】
【氏名】岩本 拓也
(72)【発明者】
【氏名】服部 公治
(72)【発明者】
【氏名】田部 陽大
(72)【発明者】
【氏名】田代 晃
(72)【発明者】
【氏名】前田 俊樹
【テーマコード(参考)】
4F033
4F072
【Fターム(参考)】
4F033BA01
4F033BA05
4F033CA05
4F033DA01
4F033EA01
4F033KA01
4F033NA01
4F072AA04
4F072AA08
4F072AB10
4F072AB28
4F072AD05
4F072AG03
4F072AH05
4F072AH12
4F072AH17
4F072AH24
4F072AJ04
4F072AJ12
4F072AJ15
4F072AJ40
(57)【要約】
【課題】シート状繊維基材へ樹脂粉体を均一(又は概ね均一)に付着させることができる塗装ノズル、及びプリプレグ製造装置を提供する。
【解決手段】樹脂粉体をシート状繊維基材に付着させてプリプレグを製造するプリプレグ製造装置に用いられる塗装ノズル100であって、前記シート状繊維基材の幅方向に配置された樹脂粉体吐出口を含むエアーノズル41と、前記樹脂粉体吐出口から前記シート状繊維基材に向けて噴射される空気及び樹脂粉体を前記エアーノズルまで供給する管路170と、前記管路内に配置され、前記空気及び樹脂粉体を旋回流に変換する旋回翼160と、を備える。
【選択図】図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
樹脂粉体をシート状繊維基材に付着させてプリプレグを製造するプリプレグ製造装置に用いられる塗装ノズルであって、
前記シート状繊維基材の幅方向に配置された樹脂粉体吐出口を含むエアーノズルと、
前記樹脂粉体吐出口から前記シート状繊維基材に向けて噴射される空気及び樹脂粉体を前記エアーノズルまで供給する管路と、
前記管路内に配置され、前記空気及び樹脂粉体を旋回流に変換する旋回翼と、を備える塗装ノズル。
【請求項2】
前記樹脂粉体吐出口は、前記シート状繊維基材の幅方向に延びたスリット状の樹脂粉体吐出口である請求項1に記載の塗装ノズル。
【請求項3】
前記樹脂粉体吐出口は、前記シート状繊維基材の幅方向に配置された複数の樹脂粉体吐出口である請求項1に記載の塗装ノズル。
【請求項4】
前記旋回翼を回転させるモータと、
前記モータを制御する制御装置と、をさらに備える請求項1から3のいずれか1項に記載の塗装ノズル。
【請求項5】
前記制御装置は、前記シート状繊維基材に対する樹脂粉体の付着量が均一になるように前記旋回翼の回転速度を制御する請求項4に記載の塗装ノズル。
【請求項6】
前記制御装置は、前記シート状繊維基材に対して樹脂粉体が目標とする付着量分布で付着するように前記旋回翼の1回転中の回転速度を部分的に制御する請求項4に記載の塗装ノズル。
【請求項7】
前記目標とする付着量分布は、前記シート状繊維基材の幅方向に均一な付着量分布である請求項6に記載の塗装ノズル。
【請求項8】
前記目標とする付着量分布は、前記シート状繊維基材の幅方向の特定箇所の付着量が相対的に多い付着量分布である請求項6に記載の塗装ノズル。
【請求項9】
請求項1から3のいずれか1項に記載の塗装ノズルを備えたプリプレグ製造装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、シート状繊維基材へ樹脂粉体を均一(又は概ね均一)に付着させることができる塗装ノズル、及びプリプレグ製造装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
荷電された樹脂粉体を、高電圧が印加される電極(高電圧板)と搬送されるシート状繊維基材との間に形成された電界によるクーロン力及びエアーノズルから噴射されるエアの搬送力により、シート状繊維基材に付着させるように構成されたプリプレグ製造装置が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第6121978号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1においては、エアーノズル(スリット)から樹脂粉体が不均一(スリットの長手方向に不均一)に噴射されるため、任意の付着量分布(例えば、シート状繊維基材の幅方向に均一な付着量分布又はシート状繊維基材の幅方向の特定箇所の付着量が相対的に多い付着量分布)となるように樹脂粉体をシート状繊維基材へ付着させることができないという課題がある。
【0005】
その他の課題と新規な特徴は、本明細書の記述及び添付図面から明らかになるであろう。
【課題を解決するための手段】
【0006】
一実施の形態に係る塗装ノズルは、樹脂粉体をシート状繊維基材に付着させてプリプレグを製造するプリプレグ製造装置に用いられる塗装ノズルであって、前記シート状繊維基材の幅方向に延びたスリット状の樹脂粉体吐出口を含むエアーノズルと、前記樹脂粉体吐出口から前記シート状繊維基材に向けて噴射される空気及び樹脂粉体を前記エアーノズルまで供給する管路と、前記管路内に配置され、前記空気及び樹脂粉体を旋回流に変換する旋回翼と、を備える。
【発明の効果】
【0007】
前記一実施の形態によれば、任意の付着量分布となるように樹脂粉体をシート状繊維基材へ付着させることができる塗装ノズル、及びプリプレグ製造装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本開示の実施形態に係るプリプレグ製造装置の構成概要を示す平面図である。
図2】本開示の実施形態に係るプリプレグ製造装置の構成概要を示す側面図である。
図3図2のA-A矢視図である。
図4】参考例のプリプレグ製造装置を用いてプリプレグを製造する製造方法を説明するための図である。
図5】塗装ノズル100の斜視図である。
図6】(a)図5中の矢印AR4方向から見たエアーノズル41の矢視図、(b)図6(a)のB-B断面図である。
図7】(a)旋回翼160の斜視図、(b)図7(a)中の矢印AR5方向から見た旋回翼160の矢視図、(c)図7(a)中の矢印AR6方向から見た旋回翼160の矢視図、(d)旋回翼160の別の角度から見た斜視図である。
図8】制御装置190等のシステム構成図である。
図9】旋回翼160の制御例(旋回翼制御処理)のフローチャートである。
図10】実験1の結果(第1スリットSL1から噴射される樹脂粉体の分布)を表すグラフである。
図11】第1変形例の概略構成図である。
図12】第2変形例の概略構成図である。
図13】旋回翼160の制御例(回転速度制御処理)のフローチャートである。
図14】第3変形例の概略構成図である。
図15】実験2の結果を表す図である。
図16】1回転の中で旋回翼160の回転速度を部分的に(又は角度範囲ごとに)可変する範囲を表す図である。
図17】試作1、試作2の結果を表すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
<参考例>
図1から図3を参照して参考例のプリプレグ製造装置について説明する。
【0010】
参考例のプリプレグ製造装置は、樹脂粉体30を炭素繊維織物やUDテープなどのシート状繊維基材50に付着させてプリプレグを製造する装置であって、図1及び図2に示すように、シート状繊維基材50を間にして左右に設けられた2つのチャンバー31,32と、チャンバー31,32内にそれぞれ設けられた供給管37,38と、供給管37,38の端部にそれぞれ接続されたフラット型エアーノズル41,42と、供給管37,38にそれぞれ設けられた粉末樹脂帯電部43,44を主に備えている。
【0011】
チャンバー31,32は、矩形状の外殻31a,32aと、外殻31a,32aの内部に設けられた略矩形状で四角が丸みを帯びた内殻31b,32bを有している。
【0012】
外殻31a,32aのシート状繊維基材50側、すなわち、左側チャンバー31の右端(前面)及び右側チャンバー32の左端(前面)の位置は開放されていて、その間に樹脂粉体30が付着されるシート状繊維基材50が設置されている。また、外殻31a,32aのシート状繊維基材50側とは逆側、すなわち、左側チャンバー31の左端(後面)及び右側チャンバー32の右端(後面)の位置には排出口35,36が形成されている。排出口35,36には、排出口35,36から排出された樹脂粉体30を集める集塵機53,54が取付けられている。
【0013】
また、内殻31b,32bのシート状繊維基材50に相対向する前面位置、すなわち、左側チャンバー31の内殻31bの右端(前面)及び右側チャンバー32の内殻32bの左端(前面)の位置には開口部33,34が形成されている。開口部33,34の周囲には、全体を取り囲むように高電圧板51,52が設置されている。
【0014】
また、チャンバー31,32の内殻31b,32bは、外殻31a,32aに交わることなく仕切られた状態で設けられていて、外殻31a,32aと内殻31b,32bの間には、上下左右に開口部33,34から空気とともに吐出され付着しなかった樹脂粉体30が排出口35,36からチャンバー31,32の外側に排出されるような流路(隙間)45,46が形成されている。
【0015】
供給管37,38は、2つのチャンバー31,32の内殻31b,32b内の略中央の高さの位置にそれぞれ設けられ、その一端が開口部33,34まで略水平に延びている。また、供給管37,38の他端には、フラット型エアーノズル41,42が接続されている。
【0016】
フラット型エアーノズル41,42は、その本体部41a,42aが2つのチャンバー31,32の幅方向(図2においては紙面の表裏方向)に延び、本体部41a,42aのシート状繊維基材50側端部に、本体部41a,42aと同様にチャンバー31,32の幅方向に延びる長穴状の第1スリットSL1(図4参照)が形成され、第1スリットSL1からはカーテン状にエアーが噴射されるようになっている。第1スリットSL1が本開示の樹脂粉体吐出口の一例である。
【0017】
フラット型エアーノズル41,42の本体部41a,42aの基端には、一端に樹脂粉体30が投入される投入口47a,48aが設けられた投入管47,48の他端が接続されている。投入管47,48の他端はチャンバー31,32の内殻31b,32b内に入り込んでいるが、投入管47,48の一端は、チャンバー31,32の外部に位置し、その一端に設けられた投入口47a,48aから定量フィーダーなどによって定量の樹脂粉体30が連続的に投入される。
【0018】
また、投入管47,48の略中央には、空気増幅装置Tを介してコンプレッサ39,40が接続されている。これにより、コンプレッサ39,40から送られた圧縮空気は、空気増幅装置Tで流速がさらに高められるとともに、投入口47a,48aから定量フィーダーなどによって供給される樹脂粉体30に混合され、高圧の固気二相流としてフラット型エアーノズル41,42に押し込まれるようになっている。
【0019】
粉末樹脂帯電部43,44は、供給管37,38の略中央に設けられ、樹脂粉体30を空気とともにマイナス(逆にプラスでもよい)に帯電させるもので、高い電荷量が樹脂粉体30に与えられる。
【0020】
なお、樹脂粉体30としては、一般的に熱硬化性樹脂が使用されるが熱可塑性樹脂や天然樹脂などであってもよい。また、シート状繊維基材50は炭素繊維系以外の金属繊維や鉱物繊維やガラス繊維や合成繊維からなるものであってもよい。
【0021】
また、シート状繊維基材50はグランド接続されていて、チャンバー31,32の内殻31b,32bに形成された開口部33,34の周囲に設置された高電圧板51,52との間に高圧の電界がかけられている。
【0022】
このように構成されたプリプレグ製造装置を使用してプリプレグを製造する方法について説明する。
【0023】
投入管47,48の投入口47a,48aから定量フィーダーなどによって定量の樹脂粉体30が連続的に投入されると、樹脂粉体30は、コンプレッサ39,40から送られた圧縮空気が空気増幅装置Tによってその流速がさらに高められた高圧の空気と投入管47,48の内部で混合された後、フラット型エアーノズル41,42に押し込まれる。
【0024】
これにより、フラット型エアーノズル41,42の噴射スリットから供給管37,38内に風速が均一化され、樹脂粉体30と空気が混合された固気二相流がエアーカーテン状に送られるとともに、供給管37,38に設けられた粉末樹脂帯電部43,44によって樹脂粉体30と空気がともにマイナスに帯電させられる。
【0025】
そして、帯電された樹脂粉体30と空気が混合された固気二相流は、チャンバー31,32の開口部33,34(以下、第2スリットSL2とも記載する)から吐出させられ、シート状繊維基材50に吹き付けられる。このとき、開口部33,34の周囲に設置された高電圧板51,52によって、開口部33,34とグランド接続されたシート状繊維基材50の間には、高圧の電界がかけられているとともに、開口部33,34側に負の高電圧がかけられるようにすると、マイナスに帯電された樹脂粉体30は勢いよく開口部33,34からシート状繊維基材50に向かって吐出してそのままシート状繊維基材50に強固な接着力で付着され、プリプレグが製造される。
【0026】
なお、樹脂粉体30が粉末樹脂帯電部43,44によってプラスに帯電される場合には、高電圧板51,52によって開口部33,34側には正の高電圧がかけられる。
【0027】
なお、本明細書においては、プリプレグは、セミプレグを含む。
【0028】
なお、シート状繊維基材50に付着されなかった樹脂粉体30は、2つのチャンバー31,32の外殻31a,32aと内殻31b,32bの間に形成された流路45,46を介して外殻31a,32aの後面側に流され、排出口35,36から2つのチャンバー31,32の外側に排出される。
【0029】
排出された樹脂粉体30は、排出口35,36に接続された集塵機53,54によって、集められ再利用できるようにしている。本実施形態では、図1に示したように、集塵機53,54で集められた樹脂粉体30を再度、定量フィーダーなどを介して投入管47,48の投入口47a,48aに投入し、コンプレッサ39,40を介して空気とともにフラット型エアーノズル41,42に押し込むようにしている。
【0030】
これによれば、シート状繊維基材50を間にして左右に外殻31a,32aと内殻31b,32bで構成されたチャンバー31,32を設け、チャンバー31,32の内殻31b,32bにはそれぞれフラット型エアーノズル41,42が設けられた構成であるので、装置全体が小型化され省スペース化が図られるとともにシート状繊維基材50の両面に対して樹脂粉体30が同時に付着させられる。
【0031】
しかも、フラット型エアーノズル41,42を採用したことで、樹脂粉体30が空気と混合されて供給管37,38の後側から高圧でかつ均一の流速で押し込まれるので、供給管37,38内で帯電させられた樹脂粉体30と空気からなる固気二相流の流速は速く、しかも均一化されるために、通常使用されていた整流装置やブロワーは不要となり、これ
によっても装置全体の小型化が図れる。
【0032】
なお、本参考例では、2つのチャンバー31,32間にシート状繊維基材50を固定して両面に樹脂粉体30を同時に付着させるようにしたが、シート状繊維基材50自体を上方向又は下方向に連続的に搬送可能な搬送装置をさらに備えるようにすることで、シート状繊維基材50の両面に対して樹脂粉体30を広範囲にわたってしかも単時間に連続して付着させることができる。
【0033】
また、本参考例では、チャンバー31,32の開口部33,34の周囲に高電圧板51,52を設置してシート状繊維基材50に対して樹脂粉体30がより強固に付着するようにしたが、高電圧板51,52,粉末樹脂帯電部43,44を省いてもシート状繊維基材50に対して樹脂粉体30を付着させることはできる。
【0034】
次に、上記参考例のプリプレグ製造装置を用いてプリプレグを製造する製造方法について説明する。
【0035】
図4は、参考例のプリプレグ製造装置を用いてプリプレグを製造する製造方法を説明するための図である。
【0036】
以下、シート状繊維基材50として織物基材を用いる。織物基材とは、横糸及び縦糸に相当する繊維により構成されるシート状繊維基材をいう。以下、織物基材m1と記載する。なお、説明を簡略化するため、図4には、開口部33(第2スリット)のみを記載し、開口部34を省略した。以下の説明も、第2スリットSL2側の動作説明を中心に行い、開口部34側の動作説明については省略する。
【0037】
図4に示すように、織物基材m1は、当該織物基材m1をロール状に巻き取ったロール体M1から連続的に引き出され、従動ローラR1、R2に掛け渡され、巻取軸Aに連結されている。織物基材m1は、巻取軸Aがモータ(図示せず)により回転されることにより搬送(図4中矢印AR1~AR3が示す方向に搬送)され、従動ローラR1、R2間に配置された第2スリットSL2、樹脂溶着ヒータ60、樹脂溶着ヒータ60の後段に配置された膜厚計80(定点膜厚計)をこの順に通過する。
【0038】
高電圧板51(電極板)には、高電圧電源70が電気的に接続されており、高電圧V(例えば、数十KV)が印加されている。そのため、高電圧板51からグランドに接地された織物基材m1に向かってコロナ放電が発生する。そのため、第2スリットSL2からエア(空気)と共に噴射される樹脂粉体は、高電圧板51を通過する際、コロナ放電により発生するイオンにより荷電される。この荷電された樹脂粉体は、高電圧板51と織物基材m1との間に形成された電界によるクーロン力及び第2スリットSL2から噴射されるエアの搬送力により、第2スリットSL2を通過する織物基材m1(表面又は裏面)に付着する(静電粉体塗装の原理)。なお、この第2スリットSL2から織物基材m1に向けて噴射されるエア及び樹脂粉体は、供給管37により、当該第2スリットSL2まで供給され当該第2スリットSL2から噴射される。
【0039】
上記のように樹脂粉体が付着した織物基材m1は、樹脂溶着ヒータ60を通過する際、当該樹脂溶着ヒータ60で加熱される。これにより、織物基材m1に付着した樹脂粉体が織物基材m1に溶着し、プリプレグm2(図4参照)が製造される。
【0040】
この製造されたプリプレグm2は、膜厚計80を通過する際、当該膜厚計80により膜厚が計測される。そして、この計測された膜厚が目標膜厚となるように定量フィーダー90(樹脂粉体の供給量)が制御(フィードバック制御)される。
【0041】
以上のようにして製造されたプリプレグm2は、従動ローラR2を介して、モータ(図示せず)により回転される巻取軸Aに巻き取られる。
【0042】
<実施形態>
まず、上記参考例のプリプレグ製造装置を用いてプリプレグを製造する製造方法において本発明者らが見出した課題について説明する。
【0043】
本発明者らは、上記参考例においては、エアーノズル41(第1スリットSL1)から樹脂粉体が不均一(第1スリットSL1の長手方向に不均一)に噴射され、この不均一に噴射される樹脂粉体が供給管37により第2スリットSL2まで供給され当該第2スリットSL2から不均一(第2スリットSL2の長手方向に不均一)に噴射されるため、織物基材m1へ樹脂粉体を均一(又は概ね均一)に付着させることが難しいという課題を見出した。
【0044】
次に、実施形態として、上記課題を解決するための構成例を上記参考例に適用した例について説明する。以下、上記課題を解決するための構成例として、旋回翼を用いる例について説明する。なお、上記参考例と同様の構成については同じ符号を付し適宜説明を省略する。なお、フラット型エアーノズル41、42は同様の構成及び動作であるため、説明を簡略化するため、以下代表して、フラット型エアーノズル41及び供給管37を用いる例について説明し、フラット型エアーノズル42及び供給管38を用いる例については省略する。
【0045】
<塗装ノズル100>
図5は、塗装ノズル100の斜視図である。
【0046】
図5に示すように、エアーノズル41及び供給管37が塗装ノズル100を構成している。旋回翼160は、投入管47に接続された管路170内に配置されている。旋回翼110については後に詳述する。
【0047】
<エアーノズル41>
まず、エアーノズル41について説明する。このエアーノズル41は上記参考例と同様の構成である。
【0048】
図6(a)は図5中の矢印AR4方向から見たエアーノズル41の矢視図、図6(b)は図6(a)のB-B断面図である。
【0049】
図6(b)に示すように、エアーノズル41は、第1スリットSL1を備えたエアーノズル本体120、エアーノズル本体120にエア及び樹脂粉体(樹脂粉体が混合された高圧空気)を供給する投入管47を備えるフラット型エアーノズルである。エア及び樹脂粉体(樹脂粉体が混合された高圧空気)は、後述のように、旋回翼160により旋回流に変換された後、投入管47を介してエアーノズル本体120に供給され、エアーノズル本体120の内部空間を通過して第1スリットSL1から噴射される。
【0050】
エアーノズル41の構成についてさらに詳細に説明する。
【0051】
図6(b)に示すように、エアーノズル本体120は、織物基材m1の幅方向(図6(a)中左右方向)に延びる断面矩形形状の筒状体である。なお、エアーノズル本体120の断面形状は、矩形以外の断面形状(例えば、六角形状)であってもよい。エアーノズル本体120の長手方向の両端部はそれぞれ壁部107、108により閉塞されている(図6(a)参照)。
【0052】
エアーノズル本体120には、第1スリットSL1(図5図6(a)、図6(b)参照)が形成されている。図6(a)に示すように、第1スリットSL1は、織物基材m1の幅方向に延びる、長さLSL1×スリット幅WSL1の横長矩形形状のスリットである。長さLSL1は例えば400mm、スリット幅WSL1は例えば20mmである。投入管47は、第1スリットSL1の反対側かつエアーノズル本体120の長手方向の中央に設けられている(図5参照)。投入管47と第1スリットSL1とは、エアーノズル本体120の内部空間を介して互いに連通している。エアーノズル本体120の内部空間は、投入管47及び第1スリットSL1以外、密閉された状態である。なお、投入管47の配置は上記参考例と相違している(図1参照)が、投入管47の機能は上記参考例と同様である。
【0053】
図6(b)に示すように、エアーノズル本体120の内部空間には、第1拡散板140及び第2拡散板150が配置されている。第1拡散板140及び第2拡散板150により、エアーノズル本体120の内部空間は、第1~第4内部空間S1~S4に区画されている。
【0054】
次に、第1拡散板140の構成について説明する。
【0055】
図6(b)に示すように、第1拡散板140は、第1~第3板状部141~143により構成される。第1~第3板状部141~143はそれぞれ織物基材m1の幅方向(図6(a)中左右方向)に延びている。そして、第1~第3板状部141~143それぞれの一端部は壁部107まで達している。第1~第3板状部141~143それぞれの一端部と壁部107との間にはシール材(図示せず)が配置されている。一方、第1~第3板状部141~143それぞれの他端部は壁部108まで達している。第1~第3板状部141~143それぞれの他端部と壁部108との間にはシール材(図示せず)が配置されている。
第2板状部142は、第1板状部141の一方の長辺からエアーノズル本体120の後方上部の角部まで延びている(図6(b)参照)。第2板状部142と後方上部の角部との間にはシール材(図示せず)が配置されている。同様に、第3板状部143は、第1板状部141の他方の長辺からエアーノズル本体120の後方下部の角部まで延びている(図6(b)参照)。第3板状部143と後方下部の角部との間にはシール材(図示せず)が配置されている。
【0056】
図6(b)に示すように、第2板状部142には、貫通穴142a(複数)が形成されている。この貫通穴142aは、例えば、織物基材m1の幅方向(図6(a)中左右方向)に一列に配置されている。同様に、第3板状部143には、貫通穴143a(複数)が形成されている。この貫通穴143aは、例えば、織物基材m1の幅方向(図6(a)中左右方向)に一列に配置されている。この貫通穴142a、143aの直径は例えば10mm程度である。
【0057】
次に、第2拡散板150の構成について説明する。
【0058】
図6(b)に示すように、第2拡散板150は、第4~第6板状部151~153により構成される。第4~第6板状部151~153はそれぞれ織物基材m1の幅方向(図6(a)中左右方向)に延びている。そして、第4~第6板状部151~153それぞれの一端部は壁部107まで達している。第4~第6板状部151~153それぞれの一端部と壁部107との間にはシール材(図示せず)が配置されている。一方、第4~第6板状部151~153それぞれの他端部は壁部108まで達している。第4~第6板状部151~153それぞれの他端部と壁部108との間にはシール材(図示せず)が配置されている。
【0059】
第5板状部152は、第4板状部151の一方の長辺からエアーノズル本体120の前方上部の角部まで延びている(図6(b)参照)。第5板状部152と前方上部の角部との間にはシール材(図示せず)が配置されている。同様に、第6板状部153は、第4板状部151の他方の長辺からエアーノズル本体120の前方下部の角部まで延びている。第6板状部153と前方下部の角部との間にはシール材(図示せず)が配置されている。
【0060】
図6(b)に示すように、第5板状部152には、貫通穴152a(複数)が形成されている。同様に、第6板状部153には、貫通穴153a(複数)が形成されている。
【0061】
この貫通穴152a、153aは、例えば、織物基材m1の幅方向(図6(a)中左右方向)に一列に配置されている。この貫通穴152a、153aの直径は第2板状部142及び第3板状部143に形成された貫通穴142a、143aの直径より小さい。
【0062】
上記構成の第1拡散板140(第1板状部141)と第2拡散板150(第4板状部151)とは固定(例えば、ねじ固定)されている。
【0063】
<供給管37>
次に、供給管37について説明する。この供給管37は上記参考例と同様の構成である。
【0064】
図5に示すように、供給管37は、板状部37a~37dにより構成される断面矩形形状の管路である。板状部37a、37cは互いに平行で、所定間隔をあけて配置されている。同様に、板状部37b、37dは互いに平行で、所定間隔をあけて配置されている。供給管37の高さH37は例えば20mm、幅W37は例えば400mm、長さL37は例えば500mmである。供給管37の基端部37e側(開口端部)は、第1スリットSL1を取り囲んだ状態でエアーノズル41に固定されている。その際、供給管37の基端部37e側(開口端部)とエアーノズル41との間にはシール材(図示せず)が配置されている。一方、供給管37の先端部37f側には、第2スリットSL2が配置されている。図3に示すように、第2スリットSL2は、織物基材m1の幅方向に延びる、長さLSL2×スリット幅WSL2の横長矩形形状のスリットである。長さLSL2は例えば400mm、スリット幅WSL2は例えば20mmである。
【0065】
<旋回翼160>
次に、旋回翼160について説明する。
【0066】
図7(a)は旋回翼160の斜視図、図7(b)は図7(a)中の矢印AR5方向から見た旋回翼160の矢視図、図7(c)は図7(a)中の矢印AR6方向から見た旋回翼160の矢視図、図7(d)は旋回翼160の別の角度から見た斜視図である。
【0067】
図5に示すように、旋回翼160は、投入管47に接続された管路170内に配置され、管路170を介して上流側から供給されるエア及び樹脂粉体(樹脂粉体が混合された高圧空気)を旋回流に変換する。
【0068】
図7(a)~図7(d)に示すように、旋回翼160は、円筒形状の軸部161と、軸部161の外側に当該軸部161に対して同心円状に配置された円筒部162と、軸部161に沿って延び軸部161の外周面と円筒部162の内周面とを連結することにより軸部161と円筒部162との間の内部空間を区画する第1仕切り板163a及び第2仕切り板163bと、第1仕切り板163a及び第2仕切り板163bにより区画された一方の内部空間(以下、第1内部空間Saと呼ぶ。図7(c)、図7(d)参照)の下流側端部を閉塞する第1閉塞板164aと、他方の内部空間(以下、第2内部空間Sbと呼ぶ。図7(c)、図7(d)参照)の下流側端部を閉塞する第2閉塞板164bと、を含む。なお、仕切り板と閉塞板との組み合わせは2組(第1仕切り板163aと第1閉塞板164a、第2仕切り板163bと第2閉塞板164bの2組)に限らず、3組以上であってもよい。
【0069】
第1閉塞板164aは、円筒部162の円筒軸AX162に(図7(b)参照)に直交する面に対して角度θ(図7(b)参照)傾斜した傾斜面である。一方、第2閉塞板164bは、円筒部162の円筒軸AX162に直交する面に対して角度-θ傾斜した傾斜面である。
【0070】
第1仕切り板163aには、上流側と下流側とを連通する貫通穴H163aが形成されている。図示しないが、同様に、第2仕切り板163bにも、上流側と下流側とを連通する貫通穴H163bが形成されている。
【0071】
上記構成の旋回翼160は、投入管47に接続された管路170内に当該管路170に対して同心円状に配置されている(図5参照)。なお、旋回翼160(円筒部162)の直径は、管路170の内径より若干小さい。
【0072】
旋回翼160は、管路170内において回転可能に支持されている。具体的には、図5に示すように、旋回翼160の軸部161に挿入され当該軸部161に固定(例えば、ねじ固定)された回転軸165の両端部がそれぞれ、管路170内に配置された軸受け180a、180bにより支持されている。各々の軸受け180a、180bは、管路170に形成された貫通穴に挿入された固定ねじN1が径方向の両側から螺合することにより、管路170内に宙づりの状態で配置されている。
【0073】
軸受け180a、180bにより支持された回転軸165には、管路170に形成された貫通穴を介して挿入されたフレキシブルシャフト(図示せず)の一端側が連結されている。一方、図示しないが、フレキシブルシャフトの他端側は、管路170外部に配置されたモータに連結されている。
【0074】
次に、上記構成の旋回翼160の作用について説明する。
【0075】
図7(d)に示すように、旋回翼160の上流側から管路170を介して供給される空気及び樹脂粉体(樹脂粉体が混合された高圧空気。図7(d)中矢印AR7参照)は、旋回翼160により、旋回流に変換される。
【0076】
具体的には、旋回翼160の上流側から管路170を介して供給される空気及び樹脂粉体(樹脂粉体が混合された高圧空気)は、まず旋回翼160の第1内部空間Sa及び第2内部空間Sbに流入する。
【0077】
第1内部空間Saに流入した空気及び樹脂粉体(図7(d)中矢印AR7参照)は、まず角度θ傾斜した第1閉塞板164aに突き当たる。第1閉塞板164aに突き当たった空気及び樹脂粉体は、第1閉塞板164a及び円筒部162の内周面に沿って螺旋状に進路変更された後(図7(d)中矢印AR8参照)、第1仕切り板163aに形成された貫通穴H163aを通過し(図7(d)中矢印AR9参照)、螺旋状に旋回する旋回流となって下流側に向かう。図示しないが、同様に、第2内部空間Sbに流入した空気及び樹脂粉体も、まず角度-θ傾斜した第2閉塞板164bに突き当たる。第2閉塞板164bに突き当たった空気及び樹脂粉体は、第2閉塞板164b及び円筒部162の内周面に沿って螺旋状に進路変更された後、第2仕切り板163bに形成された貫通穴H163bを通過し、螺旋状に旋回する旋回流となって下流側に向かう。
【0078】
以上のようにして、旋回翼160の上流側から管路170を介して供給される空気及び樹脂粉体(樹脂粉体が混合された高圧空気)は、旋回翼160により、旋回流に変換される。そして、旋回翼160が後述のように回転することにより、当該旋回翼160により変換された旋回流(樹脂粉体が混合された高圧空気)も軸部161を中心に回転する。これにより、樹脂粉体(旋回流に含まれる樹脂粉体)が偏在することなく均一化された状態の旋回流が得られる。
【0079】
次に、本実施形態の制御装置190について説明する。図8は、制御装置190等のシステム構成図である。
【0080】
制御装置190は、図示しないが、プロセッサ、RAM等を備えている。図8に示すように、制御装置190には、モータ200、記憶部210が電気的に接続されている。記憶部210は、例えば、ハードディスク装置やROM等の不揮発性の記憶部である。記憶部210には、プログラム211、目標回転速度212が記憶されている。プログラム211は、制御装置190(プロセッサ)により実行されるプログラムである。
【0081】
プロセッサは、例えば、CPUである。プロセッサは、1つの場合もあるし、複数の場合もある。例えば、プロセッサは、記憶部210(例えば、ROM)からRAMに読み込まれたプログラム211を実行することで、モータ200(旋回翼160の回転数等)を制御する制御手段として機能する。モータ200には、フレキシブルシャフト220を介して旋回翼160が連結されている。
【0082】
制御装置190は、旋回翼160が目標回転速度で回転するようにモータ200を制御する。モータ200の回転はフレキシブルシャフト220を介して旋回翼160に伝達される。これにより旋回翼160は回転軸165を中心に回転する。
【0083】
次に、上記構成の旋回翼160の制御例(旋回翼制御処理)について説明する。
【0084】
図9は、旋回翼160の制御例(旋回翼制御処理)のフローチャートである。
【0085】
まず、旋回翼起動タイミングが到来した場合(ステップS10:YES)、旋回翼160が目標回転速度で回転するようにモータ200を制御する(ステップS11)。これは、制御装置190がプログラム211を実行することにより実現される。その際、目標回転速度は記憶部210に記憶された目標回転速度212が用いられる。これにより旋回翼160は回転軸165を中心に目標回転速度で回転する。なお、樹脂粉体の粒径や密度の違いが旋回流の挙動に影響するため、樹脂粉体の種類に応じて旋回翼160の回転速度(目標回転速度)を調整してもよい。
【0086】
上記ステップS11の処理は、旋回翼停止タイミングが到来するまで実行される。そして、旋回翼停止タイミングが到来した場合(ステップS12:YES)、上記ステップS10以下の処理が繰り返し実行される。
【0087】
以上のように旋回翼160が回転することにより、当該旋回翼160により変換された旋回流(樹脂粉体が混合された高圧空気)も軸部161を中心に回転する。これにより、樹脂粉体(旋回流に含まれる樹脂粉体)が偏在することなく均一化された状態の旋回流が得られる。この均一化された状態の樹脂粉体を含む旋回流は、投入管47を介してエアーノズル本体120に供給され、エアーノズル本体120の内部空間S1~S4を通過して第1スリットSL1から噴射される。
【0088】
具体的には、投入管47を介してエアーノズル本体120に供給される旋回流(均一化された状態の樹脂粉体が混合された高圧空気)は、まずエアーノズル41の内部空間S1に供給される。このエアーノズル41の内部空間S1に供給された旋回流は、エアーノズル41の内部空間S1において織物基材m1の幅方向(図6(a)中左右方向)に拡散されると共に圧縮された後、第1拡散板140(第2板状部142)に形成された貫通穴142a(複数)を介してエアーノズル41の内部空間S2に供給され、かつ、第1拡散板140(第3板状部143)に形成された貫通穴143a(複数)を介してエアーノズル41の内部空間S3に供給される。
【0089】
次に、エアーノズル41の内部空間S2に供給された旋回流は、エアーノズル41の内部空間S2においてさらに圧縮された後、第2拡散板150(第5板状部152)に形成された貫通穴152a(複数)を介してエアーノズル41の内部空間S4に供給される。同様に、エアーノズル41の内部空間S3に供給された旋回流は、エアーノズル41の内部空間S3においてさらに圧縮された後、第2拡散板150(第6板状部153)に形成された貫通穴153a(複数)を介してエアーノズル41の内部空間S4に供給される。
【0090】
次に、上記のようにエアーノズル41の内部空間S4に供給された旋回流は、エアーノズル41の内部空間S4においてさらに圧縮された後、第1スリットSL1から噴射される。その際、空気については第1スリットSL1から均一(第1スリットSL1の長手方向に均一又は概ね均一)に噴射され、かつ、樹脂粉体についても上記のように均一化された状態であるため第1スリットSL1から均一(第1スリットSL1の長手方向に均一又は概ね均一)に噴射される。
【0091】
このエアーノズル41(第1スリットSL1)から均一(又は概ね均一)に噴射されるエア及び樹脂粉体(樹脂粉体が混合された高圧空気)は、供給管37により第2スリットSL2まで供給され、第2スリットSL2から均一(又は概ね均一)に噴射される。これにより、織物基材m1へ樹脂粉体を均一(又は概ね均一)に付着させることが可能となる。
【0092】
以上のように、エアーノズル41の上流側に旋回翼160を配置することにより、エアーノズル41(第1スリットSL1)から樹脂粉体が均一(又は概ね均一)に噴射される。本発明者らは、このことを実験1により確認した。以下、本発明者らが行った実験1について説明する。
【0093】
<実験1>
実験1の条件は次のとおりである。
【0094】
樹脂粉体としてポリスチレン、メディアン径47μmの樹脂粉体を用いた。また、シート状繊維基材50として炭素繊維平織、目付200g/m2を用いた。また、塗装ノズルとして本実施形態の塗装ノズル100、すなわち、エアーノズル41の上流側に旋回翼160が配置された塗装ノズル100を用いた。旋回翼160の直径D(図5参照)は66mmで、以下の実験中、この旋回翼160を3000rpmの回転速度で常時旋回(回転)させた。それ以外、図4に示す装置構成と同様の装置構成で実験を行った。
【0095】
次に、上記条件で行った実験の結果について説明する。
【0096】
図10は、実験1の結果(織物基材m1に付着させた樹脂粉体の分布)を表すグラフである。図10中、縦軸がVfを表し、一方、横軸が幅方向位置、すなわち、プリプレグ(織物基材m1)基材幅を表す。Vfは、織物基材m1の堆積含有率(繊維の堆積割合)を表す。Vfのばらつきが少ないことは、織物基材m1に付着した樹脂粉体量のばらつきが少ないことを表す。また、図10中、「旋回ノズルあり-1」は管路170内に旋回翼160を配置した状態で行った実験(1回目)の結果を表す。同様に、図10中、「旋回ノズルあり-2」は管路170内に旋回翼160を配置した状態で行った実験(2回目)の結果を表す。一方、図10中、「旋回ノズルなし-1」は管路170内に旋回翼160を配置しない状態で行った実験(1回目)の結果を表す。同様に、図10中、「旋回ノズルなし-2」は管路170内に旋回翼160を配置しない状態で行った実験(2回目)の結果を表す。また、図10中、変動係数5.6%は、変動係数=標準偏差÷平均の式を用いて織物基材m1の幅方向7点で計算して、「旋回ノズルなし-1」及び「旋回ノズルなし-2」を平均した結果を示している。一方、変動係数3.3%は、変動係数=標準偏差÷平均の式を用いて織物基材m1の幅方向7点で計算して、「旋回ノズルあり-1」及び「旋回ノズルあり-2」を平均した結果を示している。この変動係数が小さいほど、織物基材m1の幅方向の樹脂粉体付着分布が均一であることを意味する。すなわち、図10においては、「旋回ノズルあり-1」及び「旋回ノズルあり-2」の方が、織物基材m1の幅方向の樹脂粉体付着分布が均一であることを意味する。
【0097】
以上のように図10を参照すると、エアーノズル41の上流側に旋回翼160を配置することにより、幅方向樹脂付着ばらつきが改善されること、すなわち、エアーノズル41(第1スリットSL1)から樹脂粉体が均一(又は概ね均一)に噴射されることが分かる。
【0098】
なお、エアーノズル41(第1スリットSL1)から噴射される樹脂粉体を織物基材m1の幅方向(第2スリットSL2の長手方向)に均一化(又は概ね均一化)する旋回翼160の回転速度は、例えば、エアーノズル41や供給管37の形状、サイズ、投入管47を介してエアーノズル41に供給されるエア及び樹脂粉体(樹脂粉体が混合された高圧空気)の流速、流量、樹脂粉体の種類(粒径、質量、形状等)により変動する。そのため、エアーノズル41(第1スリットSL1)から噴射される樹脂粉体を織物基材m1の幅方向(第2スリットSL2の長手方向)に均一化(又は概ね均一化)する旋回翼160の回転速度を具体的な数値等で表すのは困難である。
【0099】
しかしながら、旋回翼160の回転速度を変更(調整)し、変更するごとに、第2スリットSL2から噴射される樹脂粉体の分布(又は織物基材mに付着させた樹脂粉体の分布)を確認することにより、エアーノズル41(第1スリットSL1)から噴射される樹脂粉体を織物基材m1の幅方向(第2スリットSL2の長手方向)に均一化(又は概ね均一化)するのに適した旋回翼160の回転速度を見出すことができる。
【0100】
以上説明したように、本実施形態によれば、第1スリットSL1、第2スリットSL2から噴射される樹脂粉体の分布を任意の分布(例えば、第2スリットSL2の長手方向に概ね均一な分布、第2スリットSL2の長手方向の特定箇所の噴射量が多い分布)に調整することができる。その結果、任意の付着量分布となるように樹脂粉体をシート状繊維基材(例えば、織物基材、UD基材)へ付着させることができる。すなわち、樹脂粉体が任意の付着量分布で付着したシート状繊維基材を製造することができる。
【0101】
次に、変形例について説明する。
【0102】
<第1変形例>
第1変形例は、旋回翼160を回転させるための構成として、モータ200及びフレキシブルシャフト220に代えて、マグネットカップリングを用いる例である。
【0103】
図11は、第1変形例の概略構成図である。
【0104】
図11に示すように、マグネットカップリングは、モータ300により回転される第1磁石301、旋回翼160(円筒部162)に設けられた第2磁石302により構成される。なお、旋回翼160の円筒部162自体を第2磁石302で構成してもよい。図11中、斜めハッチング領域が第1磁石301、第2磁石302を表す。マグネットカップリングとしては、例えば、プロスパインカップリングCOシリーズ(プロスパイン社製)を用いることができる。
【0105】
第1変形例によれば、管路170外に設置した第1磁石301を回転させると、この第1磁石301と旋回翼160に設けられた第2磁石302との間の磁力により、管路170に貫通穴(フレキシブルシャフト挿入用の貫通穴)を形成することなく、旋回翼160を回転させることができる。なお、第1磁石301と旋回翼160は、互いに平行であってもよいし平行でなくてもよい。
【0106】
第1変形例によっても、上記実施形態と同様の効果を奏することができる。
【0107】
<第2変形例>
第2変形例は、フラット型エアーノズル41に代えて、分岐型エアーノズル400を用いる例である。
【0108】
図12は、第2変形例の概略構成図である。
【0109】
図12に示すように、分岐型エアーノズル400は、エアーノズル本体410、管路170の端部に設けられた管路端部420を備えている。
【0110】
エアーノズル本体410には、エア噴射口411(複数)が形成されている。このエア噴射口411は、例えば、織物基材m1の幅方向(図6(a)中左右方向)に一列に配置されている。エア噴射口411が本開示の樹脂粉体吐出口の一例である。
【0111】
管路端部420には、エア噴射口421(複数)が形成されている。このエア噴射口421は、例えば、管路端部420の周方向に配置されている。
【0112】
図示しないが、エアーノズル本体410のエア噴射口411と管路端部420のエア噴射口421とは、管路(例えば、鋼管やフレキホース)により、一対一で接続されている。例えば、図12の場合、エアーノズル本体410のエア噴射口411(6箇所)と管路端部420のエア噴射口421(6箇所)とは、合計6本の管路で接続されている。なお、エアーノズル本体410のエア噴射口411と管路端部420のエア噴射口421とは、一対一で接続されていればよく、その対応関係はどのような関係であってもよい。
【0113】
次に、上記構成の分岐型エアーノズル400の作用について説明する。
【0114】
図12に示すように、旋回翼160の上流側から管路170を介して供給される空気及び樹脂粉体(樹脂粉体が混合された高圧空気。図12中矢印AR10参照)は、上記のように旋回翼160により、旋回流に変換される。そして、旋回翼160が回転することにより、当該旋回翼160により変換された旋回流(樹脂粉体が混合された高圧空気)も軸部161を中心に回転する。これにより、樹脂粉体(旋回流に含まれる樹脂粉体)が偏在することなく均一化された状態の旋回流が得られる。
【0115】
この均一化された状態の樹脂粉体を含む旋回流は、管路端部420、及び、エアーノズル本体410のエア噴射口411と管路端部420のエア噴射口421とを接続する管路(複数の管路。図示せず)を介してエアーノズル本体410に供給され、エアーノズル本体410のエア噴射口411(複数)から噴射される。
【0116】
このエアーノズル400(エア噴射口411(複数))から噴射されるエア及び樹脂粉体(樹脂粉体が混合された高圧空気)は、供給管37により第2スリットSL2まで供給され、第2スリットSL2から均一(又は概ね均一)に噴射される。これにより、織物基材m1へ樹脂粉体を均一(又は概ね均一)に付着させることが可能となる。
【0117】
次に、上記第2変形例の分岐型エアーノズル400を用いる場合の旋回翼160の制御例(回転速度制御処理)について説明する。
【0118】
図13は、旋回翼160の制御例(回転速度制御処理)のフローチャートである。図13は、図9のフローチャートに対してステップS11A、S11Bを追加したものに相当する。以下、図9との相違点を中心に説明する。回転速度制御処理は、1回転の中で旋回翼160の回転速度を部分的に(又は角度範囲ごとに)可変する処理である。
【0119】
旋回翼160が目標回転速度で回転している状況で(ステップS11)、回転速度制御タイミングが到来した場合(ステップS11A:YES)、1回転中の旋回翼160の回転速度が部分的に(又は角度範囲ごとに)制御される(ステップS11B)。これは、制御装置190がプログラム211を実行しモータ200を制御することにより実現される。具体的には、モータ200としてステッピングモータ(コントローラからのパルス信号に基づき回転角度と回転速度を制御可能なステッピングモータ)を用い、1回転中の角度範囲ごとの回転速度を制御するとこにより実現することができる。
【0120】
回転速度制御タイミングは、例えば、装置内(例えば、エアーノズル41内)に樹脂粉体が堆積する等により樹脂粉体の付着が織物基材m1の幅方向で不均一になったタイミングや織物基材m1の幅方向の厚さ分布のばらつき(例えば、標準偏差)がしきい値を超えたタイミングである。織物基材m1の幅方向の厚さは、例えば、特開2007-298387に記載の走査式X線膜厚計を用いて計測することができる。図示しないが、走査式X線膜厚計は、織物基材m1の幅方向に移動可能な可動部に設けられたX線源、X線検出器、X線源及びX線検出器を織物基材m1の幅方向に移動させる移動手段を備えている。走査式X線膜厚計は、例えば、膜厚計80(図4参照)に代えて、開口部33と樹脂溶着ヒータ60との間に配置される。
【0121】
1回転中の旋回翼160の回転速度の部分的な(又は角度範囲ごとの)制御は次のようにして実現される。例えば、制御装置190は、0~120度は30rpm、120~240度は40rpm、240~360度は35rpmのように回転速度を部分的に制御する。これにより、第1スリットSL1から噴射される樹脂粉体の分布(織物基材m1の幅方向の分布)を意図的につけることができる。
【0122】
上記ステップS11、S11A、S11Bの処理は、旋回翼停止タイミングが到来するまで実行される。そして、旋回翼停止タイミングが到来した場合(ステップS12:YES)、上記ステップS10以下の処理が繰り返し実行される。
【0123】
第2変形例によっても、上記実施形態と同様の効果を奏することができる。また、第2変形例によれば、上記のように1回転中の旋回翼160の回転速度を部分的に(又は角度範囲ごとに)制御することにより、例えば、特定箇所(例えば、織物基材m1の幅方向の中央)の樹脂粉体付着量が特に多い織物基材m1(例えば、プリプレグ)を狙って製造することもできる。
【0124】
<第3変形例>
第3変形例は、第2変形例と同様、フラット型エアーノズル41に代えて、分岐型エアーノズル400を用いる例である。
【0125】
図14は、第3変形例の概略構成図である。
【0126】
第2変形例との違いは、エアーノズル本体410のエア噴射口411と管路端部420のエア噴射口421とを接続する管路の数である。すなわち、エアーノズル本体410のエア噴射口411と管路端部420のエア噴射口421とを接続する管路の数が、第2変形例では6本であるのに対して、第3変形例では8本である。それ以外、第2変形例と同様である。
【0127】
次に、本変形例3の分岐型エアーノズル400を用いて本発明者らが行った実験2について説明する。
【0128】
<実験2>
実験2の条件は次のとおりである。
【0129】
実験2では、旋回翼160を45度回転させるごとに、開口部33の位置で幅方向8箇所の風速を測定した。
【0130】
図15は、実験2の結果を表すグラフである。縦軸の「風速」は、開口部33の位置での高圧空気の風速を表す。一方、横軸の「幅方向位置」は、エアーノズル本体410のエア噴射口411に対応する位置を表す。図15中、「0度」は、旋回翼160を基準位置(0度位置)に配置した場合の「風速」と「幅方向位置」との関係を表すグラフである。「45度」は、旋回翼160を基準位置から45度回転した位置(45度位置)に配置した場合の「風速」と「幅方向位置」との関係を表すグラフである。「90度」は、旋回翼160を基準位置から90度回転した位置(90度位置)に配置した場合の「風速」と「幅方向位置」との関係を表すグラフである。「135度」は、旋回翼160を基準位置から135度回転した位置(135度位置)に配置した場合の「風速」と「幅方向位置」との関係を表すグラフである。
【0131】
図15を参照すると、旋回翼160の位置を45度刻みで変化させることにより、風速が最大となる位置を変化させることができることが分かる。なお、旋回翼160の位置を45度以外の角度刻みで変化させても上記と同様の効果を奏することができる。
【0132】
次に、本変形例3の分岐型エアーノズル400を用いて本発明者らが試作したプリプレグ(基材)について説明する。
【0133】
<試作1>
試作1の条件は次のとおりである。
【0134】
樹脂粉体としてフェノキシ、メディアン径47μmの樹脂粉体を用いた。また、シート状繊維基材50として炭素繊維平織、目付75g/m2を用いた。また、塗装ノズルとして本変形例3の分岐型エアーノズル400を用いた。旋回翼160の直径D(図5参照)は66mmで、この旋回翼160を60rpmの回転速度で常時旋回(回転)させた。それ以外、図4に示す装置構成と同様の装置構成で試作を行った。
【0135】
<試作2>
試作2の条件は、基本的に上記試作1と同様であるが、1回転の中で旋回翼160の回転速度を部分的に(又は角度範囲ごとに)可変した。具体的には、図16に示すように可変した。図16は、1回転の中で旋回翼160の回転速度を部分的に(又は角度範囲ごとに)可変する範囲を表す図である。
【0136】
図17は、試作1、試作2の結果を表すグラフである。図17中「等速動作」は旋回翼160を等速動作させることにより試作されたプリプレグ(基材)、すなわち試作1のプリプレグの「基材厚さ」と「基材幅方向」との関係を表すグラフである。一方、図17中「変速動作」は旋回翼160を変速動作させることにより試作されたプリプレグ(基材)、すなわち試作2のプリプレグの「基材厚さ」と「基材幅方向」との関係を表すグラフである。
【0137】
図17を参照すると、旋回翼160を変速動作(1回転の中で旋回翼160の回転速度を部分的に(又は角度範囲ごとに)可変)させることにより、幅方向の一部(図17の場合、再両端)を相対的に樹脂付着が多い状態とすることができる。
【0138】
以上、本発明者らによってなされた発明を実施の形態に基づき具体的に説明したが、本開示は既に述べた実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において種々の変更が可能であることはいうまでもない。
【符号の説明】
【0139】
11 注入口
12 加速容器
13 ブラシ
14 圧縮部
15 格納ボックス
16 チューブ
17 粉体
18 穴
19 チャンバー
20 炭素繊維織物
30 樹脂粉体
31,32 チャンバー
31a,32a 外殻
31b,32b 内殻
33,34 開口部(樹脂粉体吐出出口)
35,36 排出口
37,38 供給管
39,40 コンプレッサ
41,42 フラット型エアーノズル(エアーノズル)
41a,42a 本体部
43,44 粉末樹脂帯電部
45,46 流路
47,48 投入管
47a,48a 投入口
50 シート状繊維基材
51,52 高電圧板
53,54 集塵機
T 空気増倍装置
60 樹脂溶着ヒータ
70 高電圧電源
80 膜厚計
90 定量フィーダー
100 塗装ノズル
120 エアーノズル本体
130 閉塞板
140 第1拡散板
150 第2拡散板
160 旋回翼
170 管路
180a、180b 軸受け
190 制御装置
200 モータ
210 記憶装置
220 フレキシブルシャフト
SL1 第1スリット
SL2 第2スリット
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17