(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024119301
(43)【公開日】2024-09-03
(54)【発明の名称】バルブタイミング調整装置
(51)【国際特許分類】
F01L 1/356 20060101AFI20240827BHJP
F01L 1/352 20060101ALI20240827BHJP
【FI】
F01L1/356 Z
F01L1/352
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023026099
(22)【出願日】2023-02-22
(71)【出願人】
【識別番号】000004260
【氏名又は名称】株式会社デンソー
(74)【代理人】
【識別番号】110003214
【氏名又は名称】弁理士法人服部国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】井本 祥平
【テーマコード(参考)】
3G018
【Fターム(参考)】
3G018AB02
3G018BA32
3G018CA04
3G018CA07
3G018CA13
3G018DA21
3G018DA23
3G018DA65
3G018DA75
3G018DA83
3G018GA32
(57)【要約】
【課題】作動時のオルダム継手からの異音の発生を抑制可能なバルブタイミング調整装置を提供する。
【解決手段】ハウジング20は、駆動軸2と同期回転する。カムギヤ30は、内歯歯車部301を有し、従動軸3と一体に回転するよう設けられている。遊星回転体40は、内歯歯車部301に噛み合う外歯歯車部43を有し、カムギヤ30の内側において自転しつつ公転可能なよう設けられている。オルダム継手50は、少なくとも遊星回転体40と摺動可能なようカムギヤ30および遊星回転体40に対し従動軸3とは反対側に設けられ、ハウジング20とカムギヤ30とを相対回転させることが可能である。プレート70は、オルダム継手50に対しカムギヤ30および遊星回転体40とは反対側に設けられている。付勢部材80は、オルダム継手50に対しプレート70側に設けられ、オルダム継手50をハウジング20の軸方向かつ径方向に付勢可能である。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
内燃機関(1)の駆動軸(2)からのトルク伝達により回転する従動軸(3)により開閉するバルブ(5)の開閉タイミングを調整するバルブタイミング調整装置であって、
前記駆動軸と同期回転する筒状の駆動側回転体(20)と、
内歯歯車部(301)を有し、前記従動軸と一体に回転するよう前記駆動側回転体の内側に設けられた従動側回転体(30)と、
前記内歯歯車部に噛み合う外歯歯車部(43)を有し、前記従動側回転体の内側において自転しつつ公転可能なよう前記従動側回転体に対し偏心して設けられた遊星回転体(40)と、
少なくとも前記遊星回転体と摺動可能なよう前記従動側回転体および前記遊星回転体に対し前記従動軸とは反対側に設けられ、前記遊星回転体の自転成分を前記従動側回転体に伝達し、前記駆動側回転体と前記従動側回転体とを相対回転させることが可能なオルダム継手(50)と、
前記オルダム継手に対し前記従動側回転体および前記遊星回転体とは反対側において、前記駆動側回転体の前記従動軸とは反対側の端部を塞ぐよう設けられたプレート(70)と、
前記オルダム継手に対し前記プレート側または前記プレートとは反対側に設けられ、前記オルダム継手を前記駆動側回転体の軸方向かつ径方向に付勢可能な付勢部材(80)と、
を備えるバルブタイミング調整装置。
【請求項2】
前記オルダム継手は、前記駆動側回転体の軸に対し傾斜するよう形成されたオルダム継手傾斜面(541、542)を有し、
前記付勢部材は、前記オルダム継手傾斜面に対応し前記駆動側回転体の軸に対し傾斜するよう形成され前記オルダム継手傾斜面に当接することで前記オルダム継手を前記駆動側回転体の軸方向かつ径方向に付勢可能な付勢部材傾斜面(841、842、881)を有する請求項1に記載のバルブタイミング調整装置。
【請求項3】
前記オルダム継手傾斜面は、前記オルダム継手の前記プレート側または前記プレートとは反対側のいずれか一方に形成された第1オルダム継手傾斜面(541、542)であり、
前記オルダム継手は、前記オルダム継手の前記プレート側または前記プレートとは反対側のいずれか他方において前記駆動側回転体の軸に対し傾斜するよう形成された第2オルダム継手傾斜面(561、562)を有する請求項2に記載のバルブタイミング調整装置。
【請求項4】
前記付勢部材は、前記プレートと一体に形成されている請求項1~3のいずれか一項に記載のバルブタイミング調整装置。
【請求項5】
前記付勢部材は、環状に形成され、
前記付勢部材傾斜面は、前記付勢部材の周方向に複数形成されている請求項1~3のいずれか一項に記載のバルブタイミング調整装置。
【請求項6】
前記付勢部材は、前記プレートと一体に環状に形成され、
前記付勢部材傾斜面は、前記付勢部材の周方向に複数形成されている請求項1~3のいずれか一項に記載のバルブタイミング調整装置。
【請求項7】
前記付勢部材は、前記駆動側回転体の周方向に複数設けられている請求項1~3のいずれか一項に記載のバルブタイミング調整装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、バルブタイミング調整装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、内燃機関の駆動軸と同期回転する駆動側回転体と、従動軸と一体に回転する従動側回転体と、を減速して相対回転させる部材としてオルダム継手を用いたバルブタイミング調整装置が知られている。このようなKHV型減速機を有するバルブタイミング調整装置では、作動時におけるオルダム継手の異音が課題となっており、異音抑制のためには、オルダム継手の軸方向への移動を抑制すること、および、オルダム継手の径方向への他部材との衝突速度を低減することが重要である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2017-115602号公報
【特許文献2】特開2018-87564号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
例えば特許文献1のバルブタイミング調整装置では、回転時の駆動側回転体のオルダム継手との嵌合部への応力集中を抑制するとともに、オルダム継手の中心位置での安定性の向上による省電力化を図るため、オルダム継手を駆動側回転体の径方向に付勢する付勢部材を設けている。しかしながら、特許文献1のバルブタイミング調整装置では、付勢部材により、オルダム継手の径方向への他部材との衝突速度を低減することは可能であるものの、オルダム継手の軸方向への移動を抑制することはできない。
【0005】
また、例えば特許文献2のバルブタイミング調整装置では、遊星回転体と嵌め合い支持されている軸受の姿勢を安定させ、遊星回転体と周辺部材とを面当たりさせることで摩耗を抑制することを目的として、オルダム継手と軸受との間に付勢部材としてのウェーブワッシャを設けている。しかしながら、特許文献2のバルブタイミング調整装置では、付勢部材により、オルダム継手の軸方向への移動を抑制することは可能であるものの、オルダム継手の径方向への他部材との衝突速度を低減することはできない。
【0006】
本発明の目的は、作動時のオルダム継手からの異音の発生を抑制可能なバルブタイミング調整装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、内燃機関(1)の駆動軸(2)からのトルク伝達により回転する従動軸(3)により開閉するバルブ(5)の開閉タイミングを調整するバルブタイミング調整装置であって、筒状の駆動側回転体(20)と従動側回転体(30)と遊星回転体(40)とオルダム継手(50)とプレート(70)と付勢部材(80)とを備える。駆動側回転体は、駆動軸と同期回転する。従動側回転体は、内歯歯車部(301)を有し、従動軸と一体に回転するよう駆動側回転体の内側に設けられている。
【0008】
遊星回転体は、内歯歯車部に噛み合う外歯歯車部(43)を有し、従動側回転体の内側において自転しつつ公転可能なよう従動側回転体に対し偏心して設けられている。オルダム継手は、少なくとも遊星回転体と摺動可能なよう従動側回転体および遊星回転体に対し従動軸とは反対側に設けられ、遊星回転体の自転成分を従動側回転体に伝達し、駆動側回転体と従動側回転体とを相対回転させることが可能である。プレートは、オルダム継手に対し従動側回転体および遊星回転体とは反対側において、駆動側回転体の従動軸とは反対側の端部を塞ぐよう設けられている。
【0009】
付勢部材は、オルダム継手に対しプレート側またはプレートとは反対側に設けられ、オルダム継手を駆動側回転体の軸方向かつ径方向に付勢可能である。そのため、付勢部材により、オルダム継手の軸方向への移動を抑制するとともに、オルダム継手の径方向への他部材との衝突速度を低減することができる。したがって、バルブタイミング調整装置の作動時におけるオルダム継手からの異音を効果的に抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】第1実施形態のバルブタイミング調整装置を示す断面図。
【
図5】
図1のIV-IV線断面図において付勢部材を重ねて示す図。
【
図6】第1実施形態のバルブタイミング調整装置の一部を示す模式的断面図。
【
図7】第2実施形態のバルブタイミング調整装置の一部を示す模式的断面図。
【
図8】第3実施形態のバルブタイミング調整装置の一部を示す模式的断面図。
【
図9】第4実施形態のバルブタイミング調整装置の一部を示す模式的断面図。
【
図10】第5実施形態のバルブタイミング調整装置の一部を示す模式的断面図。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、複数の実施形態によるバルブタイミング調整装置を図面に基づき説明する。なお、複数の実施形態において実質的に同一の構成部位には同一の符号を付し、説明を省略する。
【0012】
(第1実施形態)
第1実施形態のバルブタイミング調整装置およびその一部を
図1~6に示す。バルブタイミング調整装置10は、「内燃機関」としてのエンジン1の駆動軸2からのトルク伝達により回転する従動軸3により開閉する「バルブ」としての吸気バルブ5の開閉タイミングを調整する。
【0013】
より詳細には、バルブタイミング調整装置10は、エンジン1の駆動軸2に対する従動軸3の回転位相を変化させることによって、従動軸3が開閉駆動する吸気バルブ5または排気バルブのうち吸気バルブ5のバルブタイミングを調整するものである。バルブタイミング調整装置10は、駆動軸2から従動軸3までの動力伝達経路に設けられる。
【0014】
エンジン1は、シリンダブロックに形成された複数のシリンダ6にピストン7を収容し、ピストン7をコネクティングロッド8により駆動軸2に連結した4サイクル型のエンジンである。駆動軸2に取り付けた出力スプロケット9と、後述する「駆動側回転体」としてのハウジング20のスプロケット23とにチェーン16が巻回されている。
【0015】
この構成により、エンジン1の稼働時、バルブタイミング調整装置10は、全体が回転軸Axr1を中心に回転する。また、バルブタイミング調整装置10に隣接して設けたモータ90の駆動力により、ハウジング20に対し「従動側回転体」としてのカムギヤ30を回転方向と同方向または逆方向に相対回転させることで、ハウジング20とカムギヤ30との相対回転位相を設定し、カム部4による吸気バルブ5の開閉時期すなわち開閉タイミングの制御が可能である。
【0016】
ここで、カムギヤ30がハウジング20の回転方向と同方向に相対回転(変位)する作動を「進角作動」とよぶ。進角作動により、吸気圧縮比が増大する。また、カムギヤ30がハウジング20の回転方向と逆方向に相対回転(変位)する作動を「遅角作動」とよぶ。遅角作動により、吸気圧縮比が低減する。
【0017】
図1に示すように、バルブタイミング調整装置10は、筒状のハウジング20とカムギヤ30と遊星回転体40とオルダム継手50とプレート70と付勢部材80とを備える。ハウジング20は、「駆動側回転体」に対応する。カムギヤ30は、「従動側回転体」に対応する。
【0018】
ハウジング20は、駆動軸2と同期回転する。カムギヤ30は、内歯歯車部301を有し、従動軸3と一体に回転するようハウジング20の内側に設けられている。
【0019】
遊星回転体40は、内歯歯車部301に噛み合う外歯歯車部43を有し、カムギヤ30の内側において自転しつつ公転可能なようカムギヤ30に対し偏心して設けられている。オルダム継手50は、少なくとも遊星回転体40と摺動可能なようカムギヤ30および遊星回転体40に対し従動軸3とは反対側に設けられ、遊星回転体40の自転成分をカムギヤ30に伝達し、ハウジング20とカムギヤ30とを相対回転させることが可能である。プレート70は、オルダム継手50に対しカムギヤ30および遊星回転体40とは反対側において、ハウジング20の従動軸3とは反対側の端部を塞ぐよう設けられている。
【0020】
付勢部材80は、オルダム継手50に対しプレート70側に設けられ、オルダム継手50をハウジング20の軸方向かつ径方向に付勢可能である。
【0021】
以下、バルブタイミング調整装置10の構成について詳細に説明する。
【0022】
ハウジング20は、例えば金属により形成され、ハウジング筒部21、ハウジング底部22、スプロケット23、ハウジング穴部24、ハウジング係合溝26を有している。ハウジング筒部21は、筒状に形成されている。ハウジング底部22は、ハウジング筒部21の軸方向の一方の端部を塞ぐよう板状に形成されている。ハウジング穴部24は、ハウジング底部22の中央を板厚方向に貫くよう円形に形成されている。そのため、ハウジング底部22は、環状の板状に形成されている。ハウジング20は、全体としては筒状に形成されている。
【0023】
ハウジング係合溝26は、ハウジング筒部21のハウジング底部22とは反対側の端部からハウジング底部22側へ凹むよう形成されている。ハウジング係合溝26は、ハウジング筒部21の周方向に等間隔で2つ形成されている(
図4参照)。
【0024】
スプロケット23は、ハウジング筒部21の外周壁から径方向外側へ突出するよう環状に形成されている。スプロケット23の外縁部には、外歯231が形成されている。外歯231には、駆動軸2の出力スプロケット9に巻回されたチェーン16が巻回される。そのため、エンジン1の稼働時、ハウジング20は、駆動軸2と同期回転する。
【0025】
カムギヤ30は、例えば金属により形成され、カムギヤ筒部31、カムギヤ底部32、カムギヤ穴部34、延伸穴部35、カムギヤ延伸筒部36、内歯歯車部301を有している。カムギヤ筒部31は、筒状に形成されている。カムギヤ底部32は、カムギヤ筒部31の軸方向の一方の端部を塞ぐよう板状に形成されている。カムギヤ筒部31のカムギヤ底部32側の部位は、カムギヤ底部32とは反対側の部位と比べ、内径が小さく設定されている。
【0026】
カムギヤ穴部34は、カムギヤ底部32の中央を板厚方向に貫くよう円形に形成されている。延伸穴部35は、カムギヤ穴部34の内縁部の周方向の一部から径方向外側へ延びるよう形成されている。カムギヤ延伸筒部36は、カムギヤ底部32のカムギヤ筒部31とは反対側の面から筒状に延びるようカムギヤ筒部31と同軸に形成されている。内歯歯車部301は、カムギヤ筒部31のカムギヤ底部32とは反対側の内周壁においてカムギヤ筒部31の周方向の全範囲に形成されている。
【0027】
カムギヤ30は、ハウジング筒部21とカムギヤ筒部31とが同軸になるようハウジング20の内側に設けられている。カムギヤ筒部31の外径は、ハウジング筒部21の内径よりやや小さい。カムギヤ延伸筒部36の外径は、ハウジング穴部24の内径より小さい。カムギヤ筒部31は、ハウジング穴部24の径方向内側に位置している。
【0028】
カムギヤ30は、カムギヤ延伸筒部36の径方向内側に従動軸3の端部が嵌合するよう従動軸3に接続される。カムギヤ30と従動軸3とは、ボルト14により互いに相対回転不能に固定される。これにより、カムギヤ30は、従動軸3と一体に回転する。
【0029】
遊星回転体40は、例えば金属により形成され、回転体本体41、回転体係合部42、外歯歯車部43を有している。回転体本体41は、筒状に形成されている。回転体係合部42は、回転体本体41の軸方向の一方の端部から軸方向に突出するよう形成されている。回転体係合部42は、回転体本体41の周方向に等間隔で2つ形成されている(
図4参照)。
【0030】
外歯歯車部43は、回転体本体41の外周壁において回転体本体41の周方向の全範囲に形成されている。回転体本体41の外径は、カムギヤ筒部31のカムギヤ底部32とは反対側の部位の内径より小さい。外歯歯車部43の歯数は、内歯歯車部301の歯数より1歯少なく設定されている。
【0031】
遊星回転体40は、外歯歯車部43の周方向の一部が内歯歯車部301の周方向の一部に噛み合うようカムギヤ30のカムギヤ筒部31に対し偏心して設けられている(
図1、3参照)。遊星回転体40は、カムギヤ30のカムギヤ筒部31の内側において、外歯歯車部43が内歯歯車部301に噛み合いながら、自転しつつ公転可能である。
【0032】
遊星回転体40がカムギヤ筒部31の内側に設けられた状態において、回転体係合部42は、カムギヤ筒部31のカムギヤ底部32とは反対側の端面に対しカムギヤ底部32とは反対側に位置している(
図1参照)。
【0033】
オルダム継手50は、例えば金属により形成され、オルダム継手本体51、オルダム継手突出部521、オルダム継手突出部522、オルダム継手凹部531を有している(
図4参照)。オルダム継手本体51は、環状の板状に形成されている。オルダム継手突出部521は、オルダム継手本体51の外縁部から径方向外側へ突出するよう形成されている。オルダム継手突出部521は、オルダム継手本体51の周方向に等間隔で2つ形成されている。オルダム継手突出部522は、オルダム継手本体51の外縁部において2つのオルダム継手突出部521の中間位置から径方向外側へ突出するよう形成されている。オルダム継手突出部522は、オルダム継手本体51の周方向に等間隔で2つ形成されている。そのため、2つのオルダム継手突出部521および2つのオルダム継手突出部522は、オルダム継手本体51の周方向に等間隔(90度間隔)で形成されている(
図4参照)。ここで、2つのオルダム継手突出部521の中心を通る直線L1と2つのオルダム継手突出部522の中心を通る直線L2とは直交する。
【0034】
オルダム継手凹部531は、オルダム継手本体51の内縁部のオルダム継手突出部521に対応する位置から径方向外側へ凹状に延びるよう形成されている。ここで、オルダム継手凹部531は、オルダム継手突出部521の一部にまで延びるよう形成されている。
【0035】
オルダム継手50は、オルダム継手突出部522がハウジング係合溝26に係合し、回転体係合部42がオルダム継手凹部531に係合するよう、カムギヤ30および遊星回転体40に対し従動軸3とは反対側に設けられている(
図1、4参照)。
【0036】
直線L2と平行な方向D2において、回転体係合部42の幅は、オルダム継手凹部531の幅よりやや小さい。遊星回転体40は、回転体係合部42がオルダム継手凹部531と摺動しつつ、オルダム継手50に対し、直線L1と平行な方向D1に沿って相対移動可能である(
図4参照)。
【0037】
直線L1と平行な方向D1において、オルダム継手突出部522の幅は、ハウジング係合溝26の幅よりやや小さい。オルダム継手50は、オルダム継手突出部522がハウジング係合溝26と摺動しつつ、ハウジング20に対し、直線L2と平行な方向D2に沿って相対移動可能である(
図4参照)。
【0038】
オルダム継手50は、オルダム継手傾斜面541、オルダム継手傾斜面542、オルダム継手平坦面551、オルダム継手平坦面552を有している(
図4、6参照)。オルダム継手傾斜面541は、オルダム継手50の軸方向の一方側の面、すなわち従動軸3とは反対側の面において、2つのオルダム継手突出部521それぞれのオルダム継手本体51とは反対側に形成されている。オルダム継手傾斜面541は、ハウジング20の軸Ax1に対し傾斜するよう平面状に形成されている。より詳細には、オルダム継手傾斜面541は、ハウジング20の軸Ax1に沿って従動軸3側へ向かうに従い、一定の割合で軸Ax1および直線L2から離れるよう形成されている(
図4参照)。
【0039】
オルダム継手傾斜面542は、オルダム継手50の軸方向の一方側の面、すなわち従動軸3とは反対側の面において、2つのオルダム継手突出部522それぞれのオルダム継手本体51とは反対側に形成されている。オルダム継手傾斜面542は、ハウジング20の軸Ax1に対し傾斜するよう平面状に形成されている。より詳細には、オルダム継手傾斜面542は、ハウジング20の軸Ax1に沿って従動軸3側へ向かうに従い、一定の割合で軸Ax1および直線L1から離れるよう形成されている(
図4、6参照)。
【0040】
オルダム継手平坦面551は、オルダム継手50の軸方向の一方側の面、すなわち従動軸3とは反対側の面において、オルダム継手傾斜面541およびオルダム継手傾斜面542以外の部分に形成されている。オルダム継手平坦面551は、ハウジング20の軸Ax1に対し略直交するよう平面状に形成されている。ここで、「略直交」とは、厳密に直交する状態に限らず、わずかに傾斜した状態も含む意味である(以下、同じ)。
【0041】
オルダム継手傾斜面541およびオルダム継手傾斜面542は平面状に形成されているため、オルダム継手傾斜面541およびオルダム継手傾斜面542とオルダム継手平坦面551との境界線は、直線L2または直線L1に対し平行な直線状に形成されている(
図4参照)。
【0042】
オルダム継手平坦面552は、オルダム継手50の軸方向の他方側の面、すなわち従動軸3側の面に形成されている(
図6参照)。オルダム継手平坦面552は、ハウジング20の軸Ax1に対し略直交するよう平面状に形成されている。
【0043】
プレート70は、例えば金属により環状の板状に形成されている。プレート70は、オルダム継手50に対しカムギヤ30および遊星回転体40とは反対側において、ハウジング20のハウジング筒部21のハウジング底部22とは反対側の端部を塞ぐよう設けられている。プレート70は、ボルト15により、ハウジング20のハウジング筒部21に固定されている。プレート70により、ハウジング20からのオルダム継手50および遊星回転体40の脱落を抑制可能である。
【0044】
付勢部材80は、例えば金属により形成され、オルダム継手50に対しプレート70側に設けられている。付勢部材80は、付勢部材本体81、付勢部材突出部82、付勢部材凹部831、付勢部材傾斜面841、付勢部材傾斜面842、付勢部材平坦面851、付勢部材係止部86を有している(
図5、6参照)。付勢部材本体81は、環状の薄板状に形成されている。付勢部材突出部82は、例えば付勢部材本体81をプレス加工することにより、付勢部材本体81から軸方向の一方側へ突出するようにして形成されている。付勢部材突出部82は、概ねオルダム継手50の形状に対応した形状に形成されている(
図5参照)。付勢部材凹部831は、付勢部材本体81の内縁部から径方向外側へ凹状に延びるよう形成されている。付勢部材凹部831の形状は、オルダム継手凹部531の形状に対応している。
図5において、付勢部材80の外形を太い破線で示し、付勢部材突出部82の外形を太い一点鎖線で示している。
【0045】
付勢部材傾斜面841は、付勢部材突出部82のオルダム継手50側の面において、2つのオルダム継手傾斜面541それぞれに対応する位置に形成されている。付勢部材傾斜面841は、ハウジング20の軸Ax1に対し傾斜するよう平面状に形成されている。より詳細には、付勢部材傾斜面841は、ハウジング20の軸Ax1に沿って従動軸3側へ向かうに従い、一定の割合で軸Ax1および直線L2から離れるよう形成されている(
図5参照)。ここで、ハウジング20の軸Ax1に対する付勢部材傾斜面841の傾斜角は、ハウジング20の軸Ax1に対するオルダム継手傾斜面541の傾斜角と同じである。そのため、付勢部材傾斜面841は、オルダム継手傾斜面541に面接触(当接)可能である。
【0046】
付勢部材傾斜面842は、付勢部材突出部82のオルダム継手50側の面において、2つのオルダム継手傾斜面542それぞれに対応する位置に形成されている。付勢部材傾斜面842は、ハウジング20の軸Ax1に対し傾斜するよう平面状に形成されている。より詳細には、付勢部材傾斜面842は、ハウジング20の軸Ax1に沿って従動軸3側へ向かうに従い、一定の割合で軸Ax1および直線L1から離れるよう形成されている(
図5、6参照)。ここで、ハウジング20の軸Ax1に対する付勢部材傾斜面842の傾斜角は、ハウジング20の軸Ax1に対するオルダム継手傾斜面542の傾斜角と同じである。そのため、付勢部材傾斜面842は、オルダム継手傾斜面542に面接触(当接)可能である。
【0047】
付勢部材平坦面851は、付勢部材突出部82の従動軸3側の面において、付勢部材傾斜面841および付勢部材傾斜面842以外の部分に形成されている。付勢部材平坦面851は、ハウジング20の軸Ax1に対し略直交するよう平面状に形成されている。そのため、付勢部材平坦面851は、オルダム継手平坦面551に面接触(当接)可能である。
【0048】
付勢部材係止部86は、付勢部材本体81の外縁部に形成されている。付勢部材係止部86は、プレート70の外縁部を係止可能に形成されている。これにより、プレート70に対する付勢部材80の相対移動を規制することができる。
【0049】
本実施形態では、バルブタイミング調整装置10は、入力部材60、ベアリング11、ベアリング12、スプリング13をさらに備えている。入力部材60は、例えば金属により形成され、入力筒部61、入力溝部62を有している。入力筒部61は、筒状に形成され、同心筒部611、偏心筒部612を有している。同心筒部611は、入力筒部61の軸方向の一方側において、外周壁の軸が、入力筒部61の内周壁の軸と一致する(同軸となる)よう形成されている。偏心筒部612は、入力筒部61の軸方向の他方側において、外周壁の軸が、入力筒部61の内周壁の軸に対し偏心するよう形成されている。
【0050】
入力部材60は、カムギヤ筒部31および遊星回転体40の径方向内側に設けられている。ここで、同心筒部611の外周壁の軸は回転軸Axr1と一致し、偏心筒部612の外周壁の軸は回転軸Axr1に対し偏心している。
【0051】
入力溝部62は、入力筒部61の内周壁から径方向外側へ凹み、入力筒部61の軸に平行に延びるよう直線状に形成されている。入力溝部62は、入力筒部61の周方向に等間隔で2つ形成されている。
【0052】
ベアリング11は、例えばボールベアリングであって、カムギヤ筒部31のカムギヤ底部32側の内周壁と入力部材60の同心筒部611の外周壁との間に設けられ、入力部材60を軸受けしている。ベアリング12は、例えばボールベアリングであって、遊星回転体40の回転体本体41の内周壁と入力部材60の偏心筒部612の外周壁との間に設けられ、遊星回転体40を軸受けしている。
【0053】
スプリング13は、偏心筒部612の偏心方向における外周壁に形成された収容凹部63に設けられている。スプリング13は、ベアリング12を介して遊星回転体40を、偏心筒部612の偏心方向へ付勢している。これにより、遊星回転体40の外歯歯車部43の周方向の一部が、内歯歯車部301の周方向の一部に押し付けられる。
【0054】
ハウジング20に対し入力部材60を相対回転させると、遊星回転体40は、カムギヤ30の内側において、外歯歯車部43が内歯歯車部301に噛み合いながら自転しつつ公転する。回転体係合部42とオルダム継手凹部531とが係合し、オルダム継手突出部522とハウジング係合溝26とが係合し、外歯歯車部43の歯数と内歯歯車部301の歯数とが異なることにより、遊星回転体40がカムギヤ30の内側において自転しつつ公転すると、ハウジング20とカムギヤ30とが相対回転する。これにより、ハウジング20とカムギヤ30との相対回転位相を変更可能である。
【0055】
なお、ハウジング20に対し入力部材60が相対回転するとき、オルダム継手50はハウジング20に対し方向D2に沿って相対移動し、遊星回転体40はオルダム継手50に対し方向D1に沿って相対移動する(
図4参照)。
【0056】
バルブタイミング調整装置10に対し従動軸3とは反対側には、モータ90が設けられる。モータ90は、トルクを出力するモータ軸95を有している。モータ90は、モータ軸95が回転軸Axr1と一致する(同軸となる)よう支持フレーム18によりエンジン1に支持されている。モータ軸95には、回転軸Axr1に対し直交するジョイント951が設けられている。モータ90は、ジョイント951が入力部材60の入力溝部62に係合するよう支持フレーム18に取り付けられる。
【0057】
モータ90は、図示しない電子制御ユニット(以下、「ECU」)により作動が制御される。ECUは、エンジン1の稼働時、モータ90を従動軸3の回転速度と等しい速度で駆動することで相対回転位相を維持する。これに対し、モータ90の回転速度を従動軸3の回転速度より低減することにより進角作動が行われ、これとは逆にモータ90の回転速度を従動軸3の回転速度より増大することにより遅角作動が行われる。上述したように、進角作動により吸気圧縮比が増大し、遅角作動により吸気圧縮比が低減する。
【0058】
モータ90がハウジング20と等速(従動軸3と等速)で回転する場合には、カムギヤ30の内歯歯車部301に対する遊星回転体40の外歯歯車部43の噛み合い位置が変化しないため、ハウジング20に対するカムギヤ30の相対回転位相は維持される。
【0059】
これに対し、ハウジング20の回転速度より高速または低速でモータ90のモータ軸95を駆動回転することにより、遊星回転体40が回転軸Axr1を中心に公転する。この公転によりカムギヤ30の内歯歯車部301に対する遊星回転体40の外歯歯車部43の噛み合い位置がカムギヤ筒部31の内周に沿って変位し、遊星回転体40とカムギヤ30との間に回転力が作用する。つまり、カムギヤ30には回転軸Axr1を中心とする回転力が作用し、遊星回転体40には自転させようとする回転力が作用する。
【0060】
図1に示すように、従動軸3の周囲に設けられた油路形成部材19には、油路101が形成されている。また、従動軸3の端部には、油路101に連通する油路102が形成されている。油路102は、ハウジング20の延伸穴部35を経由してハウジング20の内側の空間に連通している。ポンプ17から油路101、油路102を経由してハウジング20の内側の空間に潤滑油を供給することにより、ハウジング20の内側に設けられた各部材を潤滑することが可能である。
【0061】
オルダム継手50は、ハウジング20の軸Ax1に対し傾斜するよう形成されたオルダム継手傾斜面541を有している。付勢部材80は、オルダム継手傾斜面541に対応しハウジング20の軸Ax1に対し傾斜するよう形成されオルダム継手傾斜面541に当接することでオルダム継手50をハウジング20の軸方向かつ径方向に付勢可能な付勢部材傾斜面841を有する(
図5参照)。
【0062】
また、オルダム継手50は、ハウジング20の軸Ax1に対し傾斜するよう形成されたオルダム継手傾斜面542を有している。付勢部材80は、オルダム継手傾斜面542に対応しハウジング20の軸Ax1に対し傾斜するよう形成されオルダム継手傾斜面542に当接することでオルダム継手50をハウジング20の軸方向かつ径方向に付勢可能な付勢部材傾斜面842を有する(
図5、6参照)。
【0063】
以上説明したように、<1>本実施形態では、付勢部材80は、オルダム継手50に対しプレート70側に設けられ、オルダム継手50をハウジング20の軸方向かつ径方向に付勢可能である。
【0064】
そのため、付勢部材80により、オルダム継手50の軸方向への移動を抑制するとともに、オルダム継手50の径方向への他部材との衝突速度を低減することができる。したがって、バルブタイミング調整装置10の作動時におけるオルダム継手50からの異音を効果的に抑制できる。
【0065】
また、<2>本実施形態では、オルダム継手50は、ハウジング20の軸Ax1に対し傾斜するよう形成されたオルダム継手傾斜面541を有している。付勢部材80は、オルダム継手傾斜面541に対応しハウジング20の軸Ax1に対し傾斜するよう形成されオルダム継手傾斜面541に当接することでオルダム継手50をハウジング20の軸方向かつ径方向に付勢可能な付勢部材傾斜面841を有する。また、オルダム継手50は、ハウジング20の軸Ax1に対し傾斜するよう形成されたオルダム継手傾斜面542を有している。付勢部材80は、オルダム継手傾斜面542に対応しハウジング20の軸Ax1に対し傾斜するよう形成されオルダム継手傾斜面542に当接することでオルダム継手50をハウジング20の軸方向かつ径方向に付勢可能な付勢部材傾斜面842を有する。
【0066】
ハウジング20の軸Ax1に対し傾斜するよう形成されたオルダム継手傾斜面541、542および付勢部材傾斜面841、842をオルダム継手50および付勢部材80のそれぞれに設けることで、付勢部材80によりオルダム継手50をハウジング20の軸方向かつ径方向に効率的に付勢することができる。
【0067】
また、<5>本実施形態では、付勢部材80は、環状に形成されている。付勢部材傾斜面841、842は、付勢部材80の周方向に複数形成されている。
【0068】
そのため、部材点数を低減しつつ、付勢部材80によりオルダム継手50をハウジング20の軸方向かつ径方向に効率的に付勢することができる。
【0069】
(第2実施形態)
第2実施形態のバルブタイミング調整装置の一部を
図7に示す。第2実施形態は、オルダム継手50の構成が第1実施形態と異なる。
【0070】
本実施形態では、オルダム継手50は、オルダム継手傾斜面561、オルダム継手傾斜面562を有する。オルダム継手傾斜面561は、オルダム継手50のオルダム継手傾斜面541とは反対側において、ハウジング20の軸Ax1に対し傾斜するよう平面状に形成されている。より詳細には、オルダム継手傾斜面541は、ハウジング20の軸Ax1に沿って従動軸3側へ向かうに従い、一定の割合で軸Ax1および直線L2に近付くよう形成されている。ここで、ハウジング20の軸Ax1に対するオルダム継手傾斜面561の傾斜角は、ハウジング20の軸Ax1に対するオルダム継手傾斜面541の傾斜角と同じである。
【0071】
オルダム継手傾斜面562は、オルダム継手50のオルダム継手傾斜面542とは反対側において、ハウジング20の軸Ax1に対し傾斜するよう平面状に形成されている。より詳細には、オルダム継手傾斜面542は、ハウジング20の軸Ax1に沿って従動軸3側へ向かうに従い、一定の割合で軸Ax1および直線L1に近付くよう形成されている(
図7参照)。ここで、ハウジング20の軸Ax1に対するオルダム継手傾斜面562の傾斜角は、ハウジング20の軸Ax1に対するオルダム継手傾斜面542の傾斜角と同じである。
【0072】
オルダム継手傾斜面541、542は、オルダム継手50のプレート70側に形成された「第1オルダム継手傾斜面」である。オルダム継手50は、オルダム継手50のプレート70とは反対側においてハウジング20の軸Ax1に対し傾斜するよう形成された「第2オルダム継手傾斜面」としてのオルダム継手傾斜面561、562を有する。
【0073】
以上説明したように、<3>本実施形態では、オルダム継手傾斜面541、542は、オルダム継手50のプレート70側またはプレート70とは反対側のいずれか一方に形成された「第1オルダム継手傾斜面」である。オルダム継手50は、オルダム継手50のプレート70側またはプレート70とは反対側のいずれか他方においてハウジング20の軸Ax1に対し傾斜するよう形成された「第2オルダム継手傾斜面」としてのオルダム継手傾斜面561、562を有する。
【0074】
そのため、オルダム継手50を裏表逆にしても組付けることができ、組付け性を向上できる。
【0075】
(第3実施形態)
第3実施形態のバルブタイミング調整装置の一部を
図8に示す。第3実施形態は、プレート70および付勢部材80の構成が第1実施形態と異なる。
【0076】
<4>本実施形態では、付勢部材80は、プレート70と同じ材料によりプレート70と一体に形成されている。そのため、部材点数を低減できる。
【0077】
<6>本実施形態では、付勢部材80は、プレート70と同じ材料によりプレート70と一体に環状に形成され、付勢部材傾斜面841、842は、付勢部材80の周方向に複数設けられている。そのため、部材点数を低減しつつ、付勢部材80によりオルダム継手50をハウジング20の軸方向かつ径方向に効率的に付勢することができる。
【0078】
(第4実施形態)
第4実施形態のバルブタイミング調整装置の一部を
図9に示す。第4実施形態は、オルダム継手50および付勢部材80の配置等が第1実施形態と異なる。
【0079】
本実施形態では、オルダム継手50は、オルダム継手傾斜面541、542がプレート70とは反対側を向くよう設けられている。付勢部材80は、オルダム継手50に対しプレート70とは反対側に設けられている。付勢部材係止部86は、ハウジング筒部21の外縁部を係止している。
【0080】
本実施形態においても、付勢部材80は、オルダム継手傾斜面541に対応しハウジング20の軸Ax1に対し傾斜するよう形成されオルダム継手傾斜面541に当接することでオルダム継手50をハウジング20の軸方向かつ径方向に付勢可能な付勢部材傾斜面841を有する。また、付勢部材80は、オルダム継手傾斜面542に対応しハウジング20の軸Ax1に対し傾斜するよう形成されオルダム継手傾斜面542に当接することでオルダム継手50をハウジング20の軸方向かつ径方向に付勢可能な付勢部材傾斜面842を有する(
図9参照)。
【0081】
このように、オルダム継手50および付勢部材80の配置を変更しても、付勢部材80により、オルダム継手50の軸方向への移動を抑制するとともに、オルダム継手50の径方向への他部材との衝突速度を低減することができる。
【0082】
(第5実施形態)
第5実施形態のバルブタイミング調整装置の一部を
図10に示す。第5実施形態は、付勢部材80およびハウジング20の構成等が第4実施形態と異なる。
【0083】
本実施形態では、付勢部材80は、ハウジング20の周方向に複数設けられている。より詳細には、付勢部材80は、付勢部材本体87を有している。付勢部材本体87は、例えば矩形の金属薄板を「くの字」に折り曲げ、板バネ状に形成したものである。
【0084】
付勢部材80は、ハウジング筒部21のハウジング係合溝26に形成されたハウジング凹部27に設けられている。ハウジング凹部27は、ハウジング筒部21の周方向に等間隔で4つ形成されている。付勢部材80は、4つのハウジング凹部27それぞれに1つずつ計4つ設けられている。なお、ハウジング凹部27は、ハウジング20に対する付勢部材80の位置が変化しないよう、付勢部材80の形状に合わせて形成されている。
【0085】
付勢部材80は、付勢部材傾斜面881を有している。付勢部材傾斜面881は、オルダム継手傾斜面541、542に対応しハウジング20の軸Ax1に対し傾斜するよう平面状に形成されオルダム継手傾斜面541、542に当接することでオルダム継手50をハウジング20の軸方向かつ径方向に付勢可能である(
図10参照)。ここで、ハウジング20の軸Ax1に対する付勢部材傾斜面881の傾斜角は、ハウジング20の軸Ax1に対するオルダム継手傾斜面541、542の傾斜角と同じである。
【0086】
以上説明したように、<7>本実施形態では、付勢部材80は、ハウジング20の周方向に複数設けられている。
【0087】
そのため、第1~4実施形態のように付勢部材を環状に形成し付勢部材傾斜面を付勢部材の周方向に複数形成する場合と比べ、付勢部材自体の構成を簡易にでき、容易に製造できる。
【0088】
(他の実施形態)
他の実施形態では、付勢部材は、プレートと一体に形成され、駆動側回転体の周方向に複数設けられていてもよい。
【0089】
また、上述の実施形態では、オルダム継手傾斜面および付勢部材傾斜面を、駆動側回転体の軸に対し傾斜するよう平面状に形成する例を示した。これに対し、他の実施形態では、オルダム継手傾斜面および付勢部材傾斜面を、駆動側回転体の軸に対し傾斜するよう円錐面に沿うテーパ状すなわち曲面状に形成してもよい。この場合、オルダム継手傾斜面を切削加工等により容易に形成できる。
【0090】
また、上述の実施形態では、オルダム継手傾斜面および付勢部材傾斜面を、駆動側回転体の軸に沿って一方側へ向かうに従い、一定の割合で軸から離れるよう形成される例を示した。これに対し、他の実施形態では、オルダム継手傾斜面および付勢部材傾斜面を、駆動側回転体の軸に沿って一方側へ向かうに従い、一定の割合で軸に近付くよう形成してもよい。
【0091】
本発明のバルブタイミング調整装置は、内燃機関の排気バルブのバルブタイミングを調整することとしてもよい。
【0092】
本開示の特徴を以下の通り示す。
「開示1」
内燃機関(1)の駆動軸(2)からのトルク伝達により回転する従動軸(3)により開閉するバルブ(5)の開閉タイミングを調整するバルブタイミング調整装置であって、
前記駆動軸と同期回転する筒状の駆動側回転体(20)と、
内歯歯車部(301)を有し、前記従動軸と一体に回転するよう前記駆動側回転体の内側に設けられた従動側回転体(30)と、
前記内歯歯車部に噛み合う外歯歯車部(43)を有し、前記従動側回転体の内側において自転しつつ公転可能なよう前記従動側回転体に対し偏心して設けられた遊星回転体(40)と、
少なくとも前記遊星回転体と摺動可能なよう前記従動側回転体および前記遊星回転体に対し前記従動軸とは反対側に設けられ、前記遊星回転体の自転成分を前記従動側回転体に伝達し、前記駆動側回転体と前記従動側回転体とを相対回転させることが可能なオルダム継手(50)と、
前記オルダム継手に対し前記従動側回転体および前記遊星回転体とは反対側において、前記駆動側回転体の前記従動軸とは反対側の端部を塞ぐよう設けられたプレート(70)と、
前記オルダム継手に対し前記プレート側または前記プレートとは反対側に設けられ、前記オルダム継手を前記駆動側回転体の軸方向かつ径方向に付勢可能な付勢部材(80)と、
を備えるバルブタイミング調整装置。
「開示2」
前記オルダム継手は、前記駆動側回転体の軸に対し傾斜するよう形成されたオルダム継手傾斜面(541、542)を有し、
前記付勢部材は、前記オルダム継手傾斜面に対応し前記駆動側回転体の軸に対し傾斜するよう形成され前記オルダム継手傾斜面に当接することで前記オルダム継手を前記駆動側回転体の軸方向かつ径方向に付勢可能な付勢部材傾斜面(841、842、881)を有する開示1に記載のバルブタイミング調整装置。
「開示3」
前記オルダム継手傾斜面は、前記オルダム継手の前記プレート側または前記プレートとは反対側のいずれか一方に形成された第1オルダム継手傾斜面(541、542)であり、
前記オルダム継手は、前記オルダム継手の前記プレート側または前記プレートとは反対側のいずれか他方において前記駆動側回転体の軸に対し傾斜するよう形成された第2オルダム継手傾斜面(561、562)を有する開示2に記載のバルブタイミング調整装置。
「開示4」
前記付勢部材は、前記プレートと一体に形成されている開示1~3のいずれか一項に記載のバルブタイミング調整装置。
「開示5」
前記付勢部材は、環状に形成され、
前記付勢部材傾斜面は、前記付勢部材の周方向に複数形成されている開示1~4のいずれか一項に記載のバルブタイミング調整装置。
「開示6」
前記付勢部材は、前記プレートと一体に環状に形成され、
前記付勢部材傾斜面は、前記付勢部材の周方向に複数形成されている開示1~3のいずれか一項に記載のバルブタイミング調整装置。
「開示7」
前記付勢部材は、前記駆動側回転体の周方向に複数設けられている開示1~4のいずれか一項に記載のバルブタイミング調整装置。
【0093】
このように、本開示は、上記実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々の形態で実施可能である。
【符号の説明】
【0094】
1 エンジン(内燃機関)、2 駆動軸、3 従動軸、5 吸気バルブ(バルブ)、10 バルブタイミング調整装置、20 ハウジング(駆動側回転体)、30 カムギヤ(従動側回転体)、40 遊星回転体、43 外歯歯車部、50 オルダム継手、70 プレート、80 付勢部材、301 内歯歯車部