(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024119304
(43)【公開日】2024-09-03
(54)【発明の名称】電力供給システム
(51)【国際特許分類】
H02J 1/00 20060101AFI20240827BHJP
H02J 1/02 20060101ALI20240827BHJP
H02H 3/087 20060101ALI20240827BHJP
【FI】
H02J1/00 301D
H02J1/02
H02H3/087
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023026103
(22)【出願日】2023-02-22
(71)【出願人】
【識別番号】000003609
【氏名又は名称】株式会社豊田中央研究所
(74)【代理人】
【識別番号】110001210
【氏名又は名称】弁理士法人YKI国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】深野 達雄
(72)【発明者】
【氏名】菅井 賢
【テーマコード(参考)】
5G004
5G165
【Fターム(参考)】
5G004AA05
5G004AB01
5G004BA01
5G004BA03
5G165AA05
5G165BB08
5G165CA05
5G165NA03
(57)【要約】
【課題】直流電力線間を接続する直流配電系において、短絡や地絡等の事故による急激な電流の変化を緩和しつつ、事故以外の電圧変動に対する電力損失を抑制する。
【解決手段】繋がる機器の最大供給電力の総和が最大需要電力の総和以上である第1電力線10aと、繋がる機器の最大供給電力の総和が最大需要電力の総和未満である第2電力線10bと、を含み、第1電力線10aと第2電力線10bとの中継点を緩和リアクトル12で接続した電力供給システム100とする。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
直流で電力を供給する電力供給システムであって、
繋がる機器の最大供給電力の総和が最大需要電力の総和以上である第1電力線と、
繋がる機器の最大供給電力の総和が最大需要電力の総和未満である第2電力線と、
を含み、
前記第1電力線と前記第2電力線との中継点を緩和リアクトルで接続したことを特徴とする電力供給システム。
【請求項2】
請求項1に記載の電力供給システムであって、
前記緩和リアクトルは、前記第1電力線又は前記第2電力線において生じた系統事故によって生ずるサージ電圧を緩和するためのリアクトルであることを特徴とする電力供給システム。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の電力供給システムであって、
前記第1電力線は、電力供給線であり、
前記第2電力線は、電力需要線であることを特徴とする電力供給システム。
【請求項4】
請求項1に記載の電力供給システムであって、
前記第1電力線及び前記第2電力線に対して電力を供給する交流直流電力変換器の直流側に直列リアクトルが接続されていることを特徴とする電力供給システム。
【請求項5】
請求項1に記載の電力供給システムであって、
前記第1電力線又は前記第2電力線において生じた系統事故を検出する事故検出器を備えることを特徴とする電力供給システム。
【請求項6】
請求項5に記載の電力供給システムであって、
前記事故検出器によって事故が検出された場合、事故が検出された電力線をシステムから切り離す解列機器を備えることを特徴とする電力供給システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電力供給システムに関する。
【背景技術】
【0002】
高電圧直流系の送電システムにおいて短絡等の事故区間を検出する技術として、送電線の両端に線路と直列にリアクトルを挿入する技術(直列リアクトル方式)が開示されている(非特許文献1)。当該直列リアクトル方式では、直列に繋がれたリアクトルの送電線路側における電圧の変化率を測定する。送電線の線路内において系統事故が発生した場合、事故により生じたサージ電圧により送電線の電圧は急峻に変化するので、リアクトルによってサージ電圧が平滑化される作用を用いて事故の検出を行う。
【0003】
また、交流と直流とを互いに変換する電力変換器の直流側に接続される直流母線に接続される直流の送電線において、並列キャパシタと電流検出器と事故判定装置を備えた送電システムが開示されている(特許文献1)。並列キャパシタは直流の送電線の端部において送電線と接地との間に接続される。電流検知器は、並列キャパシタに流れる電流を検知する。事故判定装置は、電流検知器により検出された電流値に対して演算を行い、送電線の事故の有無を判定する。なお、直流の母線と送電線との間にリアクトルを接続し、並列キャパシタと共にローパスフィルタを構成してもよいとされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】J. Sneath, and A. D. Rajapakse, IEEE Transactions on Power Delivery, Vol. 31, No. 3 (2016), pp.973-981.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従来技術は、直流高電圧送電系に関するものであり、送電側と受電側の系が少ない場合の技術である。したがって、配電系等の電力線の接続箇所が多い場合、電力線間毎に複数の直列リアクトルを接続すると事故以外の電圧変動が生じた際にリアクトルで生じる電力損失が大きくなる。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の1つの態様は、直流で電力を供給する電力供給システムであって、繋がる機器の最大供給電力の総和が最大需要電力の総和以上である第1電力線と、繋がる機器の最大供給電力の総和が最大需要電力の総和未満である第2電力線と、を含み、前記第1電力線と前記第2電力線との中継点を緩和リアクトルで接続したことを特徴とする電力供給システムである。
【0008】
ここで、前記緩和リアクトルは、前記第1電力線又は前記第2電力線において生じた系統事故によって生ずるサージ電圧を緩和するためのリアクトルであることが好適である。
【0009】
また、前記第1電力線は、電力供給線であり、前記第2電力線は、電力需要線であることが好適である。
【0010】
また、前記第1電力線及び前記第2電力線に対して電力を供給する交流直流電力変換器の直流側に直列リアクトルが接続されていることが好適である。
【0011】
また、前記第1電力線又は前記第2電力線において生じた系統事故を検出する事故検出器を備えることが好適である。
【0012】
また、前記事故検出器によって事故が検出された場合、事故が検出された電力線をシステムから切り離す解列機器を備えることが好適である。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、直流電力線間を接続する直流配電系において、短絡や地絡等の事故による急激な電流の変化を緩和しつつ、事故以外の電圧変動に対する電力損失を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】第1の実施の形態における電力供給システムの構成を示す図である。
【
図2】リアクトルの個数と電力サージとの関係を示す図である。
【
図3】第1の実施の形態における電力供給システムの別例の構成を示す図である。
【
図4】第1の実施の形態における電力供給システムの別例の構成を示す図である。
【
図5】第2の実施の形態における電力供給システムの構成を示す図である。
【
図6】第2の実施の形態における電力供給システムの別例の構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
[第1の実施の形態]
第1の実施の形態における電力供給システム100は、
図1に示すように、電力線10(10a,10b)及び緩和リアクトル12を含んで構成される。
【0016】
電力線10は、直流の電力を供給するための電線である。電力線10は、交流直流電力変換器を介して交流発電機に接続された母線に繋がり、母線から供給される直流の電力を負荷へ供給するために用いられる。電力供給システム100では、様々な場所に電力を供給するために複数の電力線10が張り巡らされている。電力線10は、正極側と負極側があり、
図1では、正極側の電力線10を実線で示し、負極側の電力線10を破線で示している。
【0017】
電力供給システム100では、事故を検出する対象である複数の電力線10の中継点において電力線10の間に電圧緩和のための緩和リアクトル12が繋げられている。緩和リアクトル12は、電力線10において短絡等の系統事故が生じた場合に、系統事故によって生ずるサージ電圧により電力線10の電圧が急峻に変化することを緩和するために設けられる。緩和リアクトル12は、第1電力線10aと第2電力線10bの間に接続される。
【0018】
ここで、第1電力線10aは、電源と第2電力線10bとを接続する電力線である。第1電力線10aは、電力供給量が多い電路である。すなわち、第1電力線10aは、繋がる機器の最大供給電力の総和が最大需要電力の総和以上である電力線である。一般的に、第1電力線10aは、電力を供給する電力供給線とみなされる。第2電力線10bは、電力需要量が多い電路である。すなわち、第2電力線10bは、繋がる機器の最大供給電力の総和が最大需要電力の総和未満である。一般的に、第2電力線10bは、負荷に接続される電力需要線とみなされる。第2電力線10bは、少なくとも1つの緩和リアクトル12を介して第1電力線10aに繋がった交流直流電力変換器に接続される。
【0019】
このように、第1電力線10aと第2電力線10bとの間に緩和リアクトル12を接続した構成とすることによって、電力線10に生じた短絡や地絡等の事故による急激な電流変化を緩和リアクトル12によって緩和することができる。一方、第1電力線10aと第2電力線10bとの間のみに緩和のための緩和リアクトル12を設けているので、事故以外の電圧変動に対する電力供給システム100における電力損失を抑制することができる。
【0020】
図2は、電力線に接続されたリアクトル数に対する電流サージの大きさの関係を示す。インダクタンスが10μH、抵抗が0Ωの電力線があり、これに100Ωの負荷抵抗が直列に繋がっているとして、この負荷抵抗に360Vの直流電圧が印加された状態で負荷抵抗を1m秒(1msec)の間に100Ωから0Ωに変化させた場合の電流を示している。
図2では、電力線に100μHのリアクトルを0個から4個直列に接続したときの電流を示した。
図2に示すように、1個のリアクトルでも、電力線が短絡に近い状態に急変した際においても電流サージを抑制できる。
【0021】
なお、電力線における電力損失を考慮すると、電力供給機器(例えば、交流直流電力変換器)から電力需要機器(例えば、負荷)の間に緩和リアクトル12を多数接続することは好ましくない。そこで、本実施の形態における電力供給システム100のように第1電力線10aと第2電力線10bとの中継点のみに緩和リアクトル12を接続することで、系統事故における電流サージを抑制できると共に、緩和リアクトル12による電力損失を低減することができる。
【0022】
また、
図3に示すように、第1電力線10a及び第2電力線10bの各々の電圧変動を検知するための事故検出器14を設けてもよい。なお、
図3では、緩和リアクトル12の配置は
図1と同様であるので符号を省略した。
【0023】
事故検出器14は、
図3に示すように、キャパシタを含み、当該キャパシタの端子間電圧の変動を検出するセンサを組み合わせた構成とすればよい。ただし、事故検出器14の構成は、これに限定されるものではなく、第1電力線10a及び第2電力線10bの電圧変動を検出できるものであればよい。事故検出器14には、短絡等の事故が検出された電力線10を電力供給システム100から切り離すための解列機器を設けてもよい。
【0024】
また、
図4に示すように、事故検出器14は、正極側の電力線10と負極側の電力線10との間に事故検出器15を設けた構成としてもよい。なお、
図4では、緩和リアクトル12及び事故検出器14のキャパシタの配置は
図3と同様であるので符号を省略した。このように、事故検出器15を設けることによって、電力供給システム100において正極側の電力線10若しくは負極側の電力線10との間地絡、又は、正極側の電力線10と負極側の電力線10との間の短絡をより確実に検出することができる。事故検出器15には、短絡等の事故が検出された電力線10を電力供給システム100から切り離すための解列機器を設けてもよい。
【0025】
[第2の実施の形態]
第2の実施の形態における電力供給システム102は、
図5に示すように、電力線10(10a,10b)、緩和リアクトル12及び直列リアクトル16を含んで構成される。電力供給システム102では、特定監視領域Xが設定されている。
図5では、特定監視領域Xはハッチングを施した領域としている。また、緩和リアクトル12の配置は、
図1に示した電力供給システム100と同様であるので符号は省略した。
【0026】
特定監視領域Xは、特定監視領域X内において発生した短絡等の事故の影響が特定監視領域X以外の領域に波及することを抑制した領域である。電力供給システム102では、特定監視領域Xを囲むように、電力線10に直列に直列リアクトル16が接続されている。直列リアクトル16は、特定監視領域X内の電力線10において短絡等の系統事故が生じた場合に、系統事故によって生ずるサージ電圧の影響が特定監視領域Xより外に波及することを防ぐために電力線10の電圧が急峻に変化することを緩和するために設けられる。
【0027】
本実施の形態における電力供給システム102では、第1の実施の形態における電力供給システム100に比べて、直列リアクトル16を設けた分だけ電力線10における電力損失は大きくなるが、特定監視領域X内の系統事故に対する電流サージの抑制効果を高めることができる。したがって、特定監視領域X内の事故の影響が特定監視領域X外へ波及することをより効果的に防ぐことができる。
【0028】
また、
図6に示すように、特定監視領域X内において第1電力線10a及び第2電力線10bの各々の電圧変動を検知する事故検出器14を設けてもよい。なお、
図6では、緩和リアクトル12及び直列リアクトル16の配置は
図5と同様であるので符号を省略した。事故検出器14には、短絡等の事故が検出された電力線10を電力供給システム100から切り離すための解列機器を設けてもよい。
【0029】
[発明の構成]
[構成1]
直流で電力を供給する電力供給システムであって、
繋がる機器の最大供給電力の総和が最大需要電力の総和以上である第1電力線と、
繋がる機器の最大供給電力の総和が最大需要電力の総和未満である第2電力線と、
を含み、
前記第1電力線と前記第2電力線との中継点を緩和リアクトルで接続したことを特徴とする電力供給システム。
[構成2]
構成1に記載の電力供給システムであって、
前記緩和リアクトルは、前記第1電力線又は前記第2電力線において生じた系統事故によって生ずるサージ電圧を緩和するためのリアクトルであることを特徴とする電力供給システム。
[構成3]
構成1又は2に記載の電力供給システムであって、
前記第1電力線は、電力供給線であり、
前記第2電力線は、電力需要線であることを特徴とする電力供給システム。
[構成4]
構成1~3のいずれか1項に記載の電力供給システムであって、
前記第1電力線及び前記第2電力線に対して電力を供給する交流直流電力変換器の直流側に直列リアクトルが接続されていることを特徴とする電力供給システム。
[構成5]
構成1~4のいずれか1項に記載の電力供給システムであって、
前記第1電力線又は前記第2電力線において生じた系統事故を検出する事故検出器を備えることを特徴とする電力供給システム。
[構成6]
構成5に記載の電力供給システムであって、
前記事故検出器によって事故が検出された場合、事故が検出された電力線をシステムから切り離す解列機器を備えることを特徴とする電力供給システム。
【符号の説明】
【0030】
10 電力線、10a 第1電力線、10b 第2電力線、12 緩和リアクトル、14 事故検出器、15 事故検出器、16 直列リアクトル、100,102 電力供給システム。