(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024119305
(43)【公開日】2024-09-03
(54)【発明の名称】媒体搬送装置、媒体搬送方法及び制御プログラム
(51)【国際特許分類】
B65H 9/00 20060101AFI20240827BHJP
B65H 7/14 20060101ALI20240827BHJP
【FI】
B65H9/00 J
B65H7/14
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023026104
(22)【出願日】2023-02-22
(71)【出願人】
【識別番号】000136136
【氏名又は名称】株式会社PFU
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100114018
【弁理士】
【氏名又は名称】南山 知広
(74)【代理人】
【識別番号】100180806
【弁理士】
【氏名又は名称】三浦 剛
(72)【発明者】
【氏名】吉田 祥悟
【テーマコード(参考)】
3F048
3F102
【Fターム(参考)】
3F048AA01
3F048AB02
3F048BA20
3F048BB02
3F048CA09
3F048CC03
3F048CC11
3F048DB04
3F048DB06
3F048DC12
3F048EB23
3F048EB29
3F102AA03
3F102AB01
3F102BA02
3F102BB06
3F102CA03
3F102CB01
3F102CB07
3F102EA03
3F102EC02
3F102FA04
(57)【要約】
【課題】媒体のスキューをより簡易且つ適切に補正することが可能な媒体搬送装置を提供する。
【解決手段】媒体搬送装置は、それぞれ独立に回転して媒体を搬送する第1ローラ及び第2ローラと、第1ローラの下流側に配置された第1センサと、第2ローラの下流側に配置された第2センサと、第2センサが媒体を検出する前に第1センサが媒体を検出したときに、第1ローラの周速度を第1速度に、第2ローラの周速度を第1速度より高い第2速度に設定することによって媒体のスキューを補正する制御部と、を有し、第1センサ及び第2センサは、媒体搬送方向と直交する方向から見て同じ位置に配置され、媒体搬送方向と直交する方向における第1センサの配置位置は、第1速度に対する第2速度の速度比によって媒体が回転する回転中心位置と同じである。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
媒体搬送方向と直交する方向に間隔を空けて配置され、それぞれ独立に回転して媒体を搬送する第1ローラ及び第2ローラと、
媒体搬送方向において前記第1ローラの下流側に配置された第1センサと、
媒体搬送方向において前記第2ローラの下流側に配置された第2センサと、
前記第2センサが媒体を検出する前に前記第1センサが媒体を検出したときに、前記第1ローラの周速度を第1速度に、前記第2ローラの周速度を前記第1速度より高い第2速度に設定することによって媒体のスキューを補正する制御部と、を有し、
前記第1センサ及び前記第2センサは、媒体搬送方向と直交する方向から見て同じ位置に配置され、
媒体搬送方向と直交する方向における前記第1センサの配置位置は、前記第1速度に対する前記第2速度の速度比によって前記媒体が回転する回転中心位置と同じである、
ことを特徴とする媒体搬送装置。
【請求項2】
前記第1センサは、媒体搬送方向と直交する方向において前記第1ローラより、以下の式で算出される距離Lだけ外側の位置から所定範囲内に配置される、
L=D/(α-1)
ここで、αは前記第1速度に対する前記第2速度の比であり、Dは前記第1ローラと前記第2ローラの間の距離である、請求項1に記載の媒体搬送装置。
【請求項3】
前記第1センサは、媒体搬送方向において前記第1ローラより、以下の式を満たす距離Aだけ下流側の位置に配置される、
A≧(L+D)・tanθb
ここで、θbは前記媒体搬送装置が補正をサポートする媒体の傾きの最大角度である、請求項2に記載の媒体搬送装置。
【請求項4】
媒体搬送方向と直交する方向に間隔を空けて配置され、それぞれ独立に回転する第1ローラ及び第2ローラにより、媒体を搬送し、
媒体搬送方向において前記第2ローラの下流側に配置された第2センサが媒体を検出する前に媒体搬送方向において前記第1ローラの下流側に配置された第1センサが媒体を検出したときに、前記第1ローラの周速度を第1速度に、前記第2ローラの周速度を前記第1速度より高い第2速度に設定することによって媒体のスキューを補正する、ことを含み、
前記第1センサ及び前記第2センサは、媒体搬送方向と直交する方向から見て同じ位置に配置され、
媒体搬送方向と直交する方向における前記第1センサの配置位置は、前記第1速度に対する前記第2速度の速度比によって前記媒体が回転する回転中心位置と同じである、
ことを特徴とする媒体搬送方法。
【請求項5】
媒体搬送方向と直交する方向に間隔を空けて配置され、それぞれ独立に回転して媒体を搬送する第1ローラ及び第2ローラと、媒体搬送方向において前記第1ローラの下流側に配置された第1センサと、媒体搬送方向において前記第2ローラの下流側に配置された第2センサと、を有する媒体搬送装置の制御プログラムであって、
前記第2センサが媒体を検出する前に前記第1センサが媒体を検出したときに、前記第1ローラの周速度を第1速度に、前記第2ローラの周速度を前記第1速度より高い第2速度に設定することによって媒体のスキューを補正する、ことを前記媒体搬送装置に実行させ、
前記第1センサ及び前記第2センサは、媒体搬送方向と直交する方向から見て同じ位置に配置され、
媒体搬送方向と直交する方向における前記第1センサの配置位置は、前記第1速度に対する前記第2速度の速度比によって前記媒体が回転する回転中心位置と同じである、
ことを特徴とする制御プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、媒体搬送装置、媒体搬送方法及び制御プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
スキャナ等の媒体搬送装置では、媒体を搬送させて読み取る際に、媒体が傾いて搬送されるスキュー(斜行)が発生し、媒体全体が撮像されない場合、又は、媒体が搬送路の側壁に衝突して媒体のジャム(紙詰まり)が発生する場合がある。
【0003】
媒体搬送方向と直交する方向に間隔を空けて配置され、それぞれ独立に回転して媒体を給送する複数の給送ローラを有する媒体搬送装置が開示されている(特許文献1を参照)。この媒体搬送装置は、媒体のスキューが検出された場合、複数の給送ローラの周速度を相互に異ならせることにより媒体のスキューを補正する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
媒体搬送装置では、媒体のスキューをより簡易且つ適切に補正することが求められている。
【0006】
本発明の目的は、媒体のスキューをより簡易且つ適切に補正することが可能な媒体搬送装置、媒体搬送方法及び制御プログラムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一側面に係る媒体搬送装置は、媒体搬送方向と直交する方向に間隔を空けて配置され、それぞれ独立に回転して媒体を搬送する第1ローラ及び第2ローラと、媒体搬送方向において第1ローラの下流側に配置された第1センサと、媒体搬送方向において第2ローラの下流側に配置された第2センサと、第2センサが媒体を検出する前に第1センサが媒体を検出したときに、第1ローラの周速度を第1速度に、第2ローラの周速度を第1速度より高い第2速度に設定することによって媒体のスキューを補正する制御部と、を有し、第1センサ及び第2センサは、媒体搬送方向と直交する方向から見て同じ位置に配置され、媒体搬送方向と直交する方向における第1センサの配置位置は、第1速度に対する第2速度の速度比によって媒体が回転する回転中心位置と同じである。
【0008】
本発明の一側面に係る媒体搬送方法は、媒体搬送方向と直交する方向に間隔を空けて配置され、それぞれ独立に回転する第1ローラ及び第2ローラにより、媒体を搬送し、媒体搬送方向において第2ローラの下流側に配置された第2センサが媒体を検出する前に媒体搬送方向において第1ローラの下流側に配置された第1センサが媒体を検出したときに、第1ローラの周速度を第1速度に、第2ローラの周速度を第1速度より高い第2速度に設定することによって媒体のスキューを補正する、ことを含み、第1センサ及び第2センサは、媒体搬送方向と直交する方向から見て同じ位置に配置され、媒体搬送方向と直交する方向における第1センサの配置位置は、第1速度に対する第2速度の速度比によって媒体が回転する回転中心位置と同じである。
【0009】
本発明の一側面に係る制御プログラムは、媒体搬送方向と直交する方向に間隔を空けて配置され、それぞれ独立に回転して媒体を搬送する第1ローラ及び第2ローラと、媒体搬送方向において第1ローラの下流側に配置された第1センサと、媒体搬送方向において第2ローラの下流側に配置された第2センサと、を有する媒体搬送装置の制御プログラムであって、第2センサが媒体を検出する前に第1センサが媒体を検出したときに、第1ローラの周速度を第1速度に、第2ローラの周速度を第1速度より高い第2速度に設定することによって媒体のスキューを補正する、ことを媒体搬送装置に実行させ、第1センサ及び第2センサは、媒体搬送方向と直交する方向から見て同じ位置に配置され、媒体搬送方向と直交する方向における第1センサの配置位置は、第1速度に対する第2速度の速度比によって媒体が回転する回転中心位置と同じである。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、媒体搬送装置、媒体搬送方法及び制御プログラムは、媒体のスキューをより簡易且つ適切に補正することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図2】媒体搬送装置100内部の搬送経路を説明するための図である。
【
図3】各センサについて説明するための模式図である。
【
図4】ピックローラ112について説明するための模式図である。
【
図5】媒体搬送装置100の概略構成を示すブロック図である。
【
図6】記憶装置150及び処理回路160の概略構成を示す図である。
【
図7】媒体読取処理の動作の例を示すフローチャートである。
【
図8】スキュー判定処理の動作の例を示すフローチャートである。
【
図9】スキュー判定処理の動作の例を示すフローチャートである。
【
図10】スキュー判定処理の動作の例を示すフローチャートである。
【
図11】(A)は媒体M1について説明するための模式図であり、(B)は媒体M2について説明するための模式図である。
【
図12】(A)は媒体M4について説明するための模式図であり、(B)は補正不足について説明するための模式図である。
【
図13】補正過多について説明するための模式図である。
【
図14】媒体の傾きについて説明するためのグラフである。
【
図15】(A)~(C)は媒体の給送について説明するための模式図である。
【
図16】(A)、(B)は媒体M4について説明するための模式図である。
【
図17】媒体M8及びM9について説明するための模式図である。
【
図18】他の実施形態に係る処理回路260の概略構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の一側面に係る媒体搬送装置、媒体搬送方法及び制御プログラムについて図を参照しつつ説明する。但し、本発明の技術的範囲はそれらの実施の形態に限定されず、特許請求の範囲に記載された発明とその均等物に及ぶ点に留意されたい。
【0013】
図1は、イメージスキャナとして構成された媒体搬送装置100を示す斜視図である。媒体搬送装置100は、原稿である媒体を搬送し、撮像する。媒体は、用紙、厚紙又はカード等である。媒体搬送装置100は、ファクシミリ、複写機、プリンタ複合機(MFP、Multifunction Peripheral)等でもよい。なお、搬送される媒体は、原稿でなく印刷対象物等でもよく、媒体搬送装置100はプリンタ等でもよい。
【0014】
図1において矢印A1は略鉛直方向(高さ方向)を示し、矢印A2は媒体搬送方向を示し、矢印A3は媒体排出方向を示し、矢印A4は媒体搬送方向A2又は媒体排出方向A3と直交する幅方向を示す。以下では、上流とは媒体搬送方向A2又は媒体排出方向A3の上流のことをいい、下流とは媒体搬送方向A2又は媒体排出方向A3の下流のことをいう。
【0015】
媒体搬送装置100は、第1筐体101、第2筐体102、載置台103、排出台104、操作装置105及び表示装置106等を備える。
【0016】
第2筐体102は、第1筐体101の内側に配置され、媒体つまり時、又は、媒体搬送装置100内部の清掃時等に開閉可能なようにヒンジにより第1筐体101に回転可能に係合している。
【0017】
載置台103は、搬送される媒体を載置可能に第1筐体101に係合している。載置台103は、第1筐体101の媒体供給側の側面に、高さ方向A1に移動可能に設けられる。載置台103は、媒体を搬送していないときは媒体が容易に載置されるように下端の位置に配置され、媒体を搬送するときは最も上側に載置された媒体が、後述するピックローラと接触する位置まで上昇する。
【0018】
排出台104は、第2筐体102上に形成される。排出台104は、第1筐体101及び第2筐体102の排出口から排出された媒体を載置する。
【0019】
操作装置105は、ボタン等の入力デバイス及び入力デバイスから信号を取得するインタフェース回路を有し、利用者による入力操作を受け付け、利用者の入力操作に応じた操作信号を出力する。表示装置106は、液晶、有機EL(Electro-Luminescence)等を含むディスプレイ及びディスプレイに画像データを出力するインタフェース回路を有し、画像データをディスプレイに表示する。なお、表示装置106は、タッチパネル機能付きの液晶ディスプレイでもよい。その場合、操作装置105は、タッチパネルから入力信号を取得するインタフェース回路を有する。
【0020】
図2は、媒体搬送装置100内部の搬送経路を説明するための図である。
【0021】
媒体搬送装置100内部の搬送経路は、載置台センサ111、ピックローラ112、給送ローラ113、分離ローラ114、回転センサ115、分離センサ116、ピックセンサ117、第1スキューセンサ118、第2スキューセンサ119、第1~第6搬送ローラ120a~f、第1~第6従動ローラ121a~f、フィードセンサ122及び撮像装置123等を有している。
【0022】
ピックローラ112、給送ローラ113、分離ローラ114、第1~第6搬送ローラ120a~f及び/又は第1~第6従動ローラ121a~fは、媒体を搬送するローラ又は搬送ローラの一例である。なお、ピックローラ112、給送ローラ113、分離ローラ114、第1~第6搬送ローラ120a~f及び/又は第1~第6従動ローラ121a~fのそれぞれの数は一つに限定されず、複数でもよい。その場合、複数の給送ローラ113、分離ローラ114、第1~第6搬送ローラ120a~f及び/又は第1~第6従動ローラ121a~fは、それぞれ媒体搬送方向と直交する幅方向A4に間隔を空けて並べて配置される。
【0023】
第2筐体102は、媒体搬送路を挟んで第1筐体101と対向して配置される。第1筐体101の、第2筐体102と対向する面は媒体搬送路の第1ガイド101aを形成し、第2筐体102の、第1筐体101と対向する面は媒体搬送路の第2ガイド102aを形成する。第1ガイド101a及び第2ガイド102aは、いわゆるUターンパスを有する。
【0024】
載置台センサ111は、載置台103に、即ち給送ローラ113及び分離ローラ114より上流側に配置され、載置台103における媒体の載置状態を検出する。載置台センサ111は、媒体が接触している場合、又は、媒体が接触していない場合に所定の電流を流す接触検知センサにより、載置台103に媒体が載置されているか否かを判別する。載置台センサ111は、載置台103に媒体が載置されている状態と載置されていない状態とで信号値が変化する載置台信号を生成して出力する。なお、載置台センサ111は接触検知センサに限定されず、載置台センサ111として、光検知センサ等の、媒体の有無を検出可能な他の任意のセンサが使用されてもよい。
【0025】
ピックローラ112は、第2筐体102に、媒体搬送方向A2において給送ローラ113及び分離ローラ114より上流側に配置される。ピックローラ112は、媒体搬送路と略同一の高さまで上昇した載置台103に載置された媒体のうち最も上側に載置された媒体に当接して、その媒体を下流側に向けて給送(搬送)する。
【0026】
給送ローラ113は、第2筐体102内に、ピックローラ112より下流側に設けられ、載置台103に載置されてピックローラ112により給送(搬送)された媒体をさらに下流側に向けて給送(搬送)する。給送ローラ113が複数設けられる場合、各給送ローラ113は、別個のモータにより、それぞれ独立に回転するように設けられる。複数の給送ローラ113は、第1ローラ及び第2ローラの一例である。各給送ローラ113は、共通のモータにより一体に回転するように設けられてもよい。
【0027】
分離ローラ114は、第1筐体101内に、給送ローラ113に対向して配置される。分離ローラ114は、いわゆるブレーキローラ又はリタードローラであり、媒体給送方向の反対方向A13に回転可能に又は停止可能に設けられる。給送ローラ113及び分離ローラ114は、媒体の分離動作を行う分離部として機能し、媒体を分離して一枚ずつ給送する。給送ローラ113は、分離ローラ114に対して上側に配置されており、媒体搬送装置100は、いわゆる上取り方式により媒体を給送する。
【0028】
分離ローラ114と、分離ローラ114に駆動力を付与するモータとの間には、分離ローラ114にかかるトルクのリミット値を規定するトルクリミッタが設けられる。トルクリミッタのリミット値は、媒体が一つの場合はトルクリミッタを介した回転力が絶たれ、媒体が複数の場合はトルクリミッタを介した回転力が伝達されるような値に設定される。これにより、媒体が一つだけ搬送される場合、分離ローラ114は、モータからの駆動力に従って回転することなく、給送ローラ113に従って従動する。一方、媒体が複数搬送される場合、分離ローラ114は、媒体給送方向の反対方向A13に回転し、給送ローラ113と接触している媒体とそれ以外の媒体とを分離して、重送の発生を防止する。このとき、分離ローラ114の外周面は、媒体給送方向の反対方向A13に回転せずに停止した状態で、媒体給送方向の反対方向A13の力を媒体に印加してもよい。
【0029】
分離ローラ114は、アーム114cにより第1筐体101に支持される。アーム114cの一端には、分離ローラ114が取り付けられ、アーム114cの他端は、第1筐体101に取り付けられる。アーム114cは、第1筐体101に、回転(揺動)可能に設けられる。アーム114cには、ばね部材又はゴム部材等の付勢部材(不図示)により、上方に、即ち分離ローラ114が給送ローラ113側に向かう方向に付勢力が付与される。アーム114cは、分離ローラ114を給送ローラ113側に押圧する押圧力を分離ローラ114に付与する。また、アーム114cには、後述するモータからの駆動力により、回転(揺動)する回転力が付与される。媒体搬送装置100は、アーム114cを回転(揺動)させることにより、分離ローラ114が給送ローラ113を押圧する押圧力を調節する。
【0030】
回転センサ115は、エンコーダ等であり、分離ローラ114の回転軸であるシャフトに設けられ、分離ローラ114の回転を検出する。回転センサ115は、多数のスリット(光の透過穴)が形成され且つ分離ローラ114の回転に従って回転するように設けられた円板と、その円板を挟んで対向するように設けられた発光器及び受光器とを有する。発光器は、LED(Light Emitting Diode)等であり、円板(受光器)に向けて光を照射する。受光器は、フォトダイオード等であり、発光器により照射された光を、円板を介して受光する。受光器は、所定期間内に、発光器と受光器の間にスリットが存在する状態から、スリットが存在せずに円板により遮られている状態へ変化した変化回数を検出する。受光器は、検出した変化回数に、相互に隣接する二つのスリットの間の距離だけ円板が回転した時に分離ローラ114の外周面が移動する距離を乗算することにより、分離ローラ114の外周面の移動距離を検出する。また、発光器と受光器の間には、出力信号(パルス)を2相にするための固定スリットが設けられており、受光器は、各相の出力信号の立ち上がりタイミングにより円板の回転方向を検出する。回転センサ115は、検出した移動距離と、円板の回転方向(停止/正方向/逆方向)とを示す回転信号を生成して出力する。
【0031】
なお、回転センサ115は、光学式エンコーダに限定されず、機械式エンコーダ、磁気式エンコーダ、電磁誘導式エンコーダ等の任意のエンコーダでもよい。
【0032】
第1~第6搬送ローラ120a~f及び第1~第6従動ローラ121a~fは、媒体搬送方向A2において、ピックローラ112、給送ローラ113及び分離ローラ114より下流側に、それぞれ相互に対向して配置される。第1~第6搬送ローラ120a~f及び第1~第6従動ローラ121a~fは、給送ローラ113及び分離ローラ114により給送された媒体を下流側に向けて搬送する。第6搬送ローラ120f及び第6従動ローラ121fは、媒体を排出台104に排出する。
【0033】
撮像装置123は、媒体搬送方向A2において、第1~第2搬送ローラ120a~bより下流側に配置され、第1~第2搬送ローラ120a~b及び第1~第2従動ローラ121a~bにより搬送された媒体を撮像する。撮像装置123は、媒体搬送路を挟んで相互に対向して配置された第1撮像装置123a及び第2撮像装置123bを含む。第1撮像装置123aは、第2筐体102に設けられ、第2撮像装置123bは、第1筐体101に設けられる。
【0034】
第1撮像装置123aは、主走査方向に直線状に配列されたCMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)による撮像素子を有する等倍光学系タイプのCIS(Contact Image Sensor)によるラインセンサを有する。また、第1撮像装置123aは、撮像素子上に像を結ぶレンズと、撮像素子から出力された電気信号を増幅し、アナログ/デジタル(A/D)変換するA/D変換器とを有する。第1撮像装置123aは、搬送される媒体の表面を撮像して入力画像を生成し、出力する。
【0035】
同様に、第2撮像装置123bは、主走査方向に直線状に配列されたCMOSによる撮像素子を有する等倍光学系タイプのCISによるラインセンサを有する。また、第2撮像装置123bは、撮像素子上に像を結ぶレンズと、撮像素子から出力された電気信号を増幅し、アナログ/デジタル(A/D)変換するA/D変換器とを有する。第2撮像装置123bは、搬送される媒体の裏面を撮像して入力画像を生成し、出力する。
【0036】
なお、媒体搬送装置100は、第1撮像装置123a及び第2撮像装置123bを一方だけ配置し、媒体の片面だけを読み取ってもよい。また、CMOSによる撮像素子を備える等倍光学系タイプのCISによるラインセンサの代わりに、CCD(Charge Coupled Device)による撮像素子を備える等倍光学系タイプのCISによるラインセンサが利用されてもよい。また、CMOS又はCCDによる撮像素子を備える縮小光学系タイプのラインセンサが利用されてもよい。
【0037】
載置台103に載置された媒体は、ピックローラ112、給送ローラ113がそれぞれ媒体給送方向A11、A12に回転することによって、第1ガイド101aと第2ガイド102aの間を媒体搬送方向A2に向かって搬送される。媒体搬送装置100は、給送モードとして、媒体を分離しながら給送する分離モードと、媒体を分離せずに給送する非分離モードとを有する。給送モードは、利用者により操作装置105又は媒体搬送装置100と通信接続する情報処理装置を用いて設定される。給送モードが分離モードに設定されている場合、分離ローラ114は、矢印A13の方向、即ち媒体給送方向の反対方向に回転又は停止する。これにより、分離された媒体以外の媒体の給送が制限される(重送の防止)。一方、給送モードが非分離モードに設定されている場合、分離ローラ114は、矢印A13の反対方向、即ち媒体給送方向に回転する。
【0038】
媒体は、第1ガイド101aと第2ガイド102aによりガイドされながら、第1~第2搬送ローラ120a~bが矢印A14~15の方向に回転することによって、撮像装置123の撮像位置に送り込まれ、撮像装置123によって撮像される。さらに、媒体は、第3~第6搬送ローラ120c~fがそれぞれ矢印A16~19の方向に回転することによって排出台104上に排出される。
【0039】
図3は、各センサについて説明するための模式図である。
図3は、媒体搬送口の周辺を上方(第2筐体102側)から見た模式図である。
【0040】
図3に示す例では、給送ローラ113は、第1給送ローラ113a及び第2給送ローラ113bを含み、分離ローラ114は、第1分離ローラ114a及び第2分離ローラ114bを含む。第1給送ローラ113a及び第1分離ローラ114aは、幅方向A4において、中心位置より、下流側から見て左側(
図3において左側)に配置される。第2給送ローラ113b及び第2分離ローラ114bは、幅方向A4において、中心位置より、下流側から見て右側(
図3において右側)に配置される。第1給送ローラ113aは、第1ローラの一例であり、第2給送ローラ113bは、第2ローラの一例である。
【0041】
分離センサ116は、媒体搬送方向A2において給送ローラ113及び分離ローラ114のニップ部N1より下流側且つ第1搬送ローラ120a及び第1従動ローラ121aのニップ部N2より上流側に配置される。特に、分離センサ116は、給送ローラ113及び分離ローラ114の近傍に配置される。また、分離センサ116は、媒体搬送方向A2において、ピックセンサ117、第1スキューセンサ118及び第2スキューセンサ119より上流側に配置される。また、分離センサ116は、幅方向A4において、中央部に、特に第1給送ローラ113aと第2給送ローラ113bの間(第1分離ローラ114aと第2分離ローラ114bの間)に配置される。また、分離センサ116は、幅方向A4において、第1スキューセンサ118と第2スキューセンサ119の間に配置される。
【0042】
分離センサ116は、媒体搬送路に対して一方の側に設けられた発光器及び受光器と、媒体搬送路を挟んで発光器及び受光器と対向する位置に設けられた導光管とを含む。発光器は、LED等であり、媒体搬送路に向けて光を照射する。一方、受光器は、フォトダイオード等であり、発光器により照射され、導光管により導かれた光を受光する。分離センサ116は、受光器が受光する光の強度に基づいて、分離センサ116の位置に媒体が存在する状態と存在しない状態とで信号値が変化する分離信号を生成して出力する。これにより、分離センサ116は、その配置位置に搬送された媒体を検出する。
【0043】
ピックセンサ117は、媒体搬送方向A2において給送ローラ113及び分離ローラ114のニップ部N1より下流側且つ第1搬送ローラ120a及び第1従動ローラ121aのニップ部N2より上流側に配置される。特に、ピックセンサ117は、媒体搬送方向A2において、分離センサ116より下流側、且つ、第1スキューセンサ118及び第2スキューセンサ119より上流側に配置される。ピックセンサ117は、媒体搬送方向A2において、第1スキューセンサ118及び第2スキューセンサ119と同一位置又は第1スキューセンサ118及び第2スキューセンサ119より下流側に配置されてもよい。また、ピックセンサ117は、幅方向A4において、中央部に、特に第1給送ローラ113aと第2給送ローラ113bの間(第1分離ローラ114aと第2分離ローラ114bの間)に配置される。また、ピックセンサ117は、幅方向A4において、第1スキューセンサ118と第2スキューセンサ119の間に配置される。
【0044】
ピックセンサ117は、媒体搬送路に対して一方の側に設けられた発光器及び受光器と、媒体搬送路を挟んで発光器及び受光器と対向する位置に設けられた導光管とを含む。発光器は、LED等であり、媒体搬送路に向けて光を照射する。一方、受光器は、フォトダイオード等であり、発光器により照射され、導光管により導かれた光を受光する。ピックセンサ117は、受光器が受光する光の強度に基づいて、ピックセンサ117の位置に媒体が存在する状態と存在しない状態とで信号値が変化するピック信号を生成して出力する。これにより、ピックセンサ117は、その配置位置に搬送された媒体を検出する。
【0045】
第1スキューセンサ118及び第2スキューセンサ119は、第1センサ及び第2センサ、又は、複数のセンサの一例である。第1スキューセンサ118及び第2スキューセンサ119は、媒体搬送方向A2において給送ローラ113及び分離ローラ114のニップ部N1より下流側且つ第1搬送ローラ120a及び第1従動ローラ121aのニップ部N2より上流側に配置される。特に、第1スキューセンサ118及び第2スキューセンサ119は、媒体搬送方向A2において分離センサ116及びピックセンサ117より下流側に配置される。第1スキューセンサ118及び第2スキューセンサ119は、媒体搬送方向A2においてピックセンサ117と同一位置又はピックセンサ117より上流側に配置されてもよい。第1スキューセンサ118及び第2スキューセンサ119は、媒体搬送方向と直交する幅方向A4から見て同じ位置に、即ち媒体搬送方向A2において相互に同じ位置に、且つ、幅方向A4に間隔を空けて並べて配置される。
【0046】
第1スキューセンサ118は、媒体搬送方向A2において第1給送ローラ113aの下流側に配置され、第2スキューセンサ119は、媒体搬送方向A2において第2給送ローラ113bの下流側に配置される。第1スキューセンサ118は、幅方向A4において、中心位置より、下流側から見て左側(
図3において左側)、即ち第1給送ローラ113a及び第1分離ローラ114a側に配置される。第2スキューセンサ119は、幅方向A4において、中心位置より、下流側から見て右側(
図3において右側)、即ち第2給送ローラ113b及び第2分離ローラ114b側に配置される。
【0047】
第1スキューセンサ118は、媒体搬送路に対して一方の側に設けられた発光器及び受光器と、媒体搬送路を挟んで発光器及び受光器と対向する位置に設けられた導光管とを含む。発光器は、LED等であり、媒体搬送路に向けて光を照射する。一方、受光器は、フォトダイオード等であり、発光器により照射され、導光管により導かれた光を受光する。第1スキューセンサ118は、受光器が受光する光の強度に基づいて、第1スキューセンサ118の位置に媒体が存在する状態と存在しない状態とで信号値が変化する第1スキュー信号を生成して出力する。これにより、第1スキューセンサ118は、その配置位置に搬送された媒体を検出する。第1スキュー信号は、第1スキューセンサ118の出力信号の一例である。
【0048】
第2スキューセンサ119は、媒体搬送路に対して一方の側に設けられた発光器及び受光器と、媒体搬送路を挟んで発光器及び受光器と対向する位置に設けられた導光管とを含む。発光器は、LED等であり、媒体搬送路に向けて光を照射する。一方、受光器は、フォトダイオード等であり、発光器により照射され、導光管により導かれた光を受光する。第2スキューセンサ119は、受光器が受光する光の強度に基づいて、第2スキューセンサ119の位置に媒体が存在する状態と存在しない状態とで信号値が変化する第2スキュー信号を生成して出力する。これにより、第2スキューセンサ119は、その配置位置に搬送された媒体を検出する。第2スキュー信号は、第2スキューセンサ119の出力信号の一例である。
【0049】
媒体搬送装置100は、第2スキューセンサ119が媒体を検出する前に第1スキューセンサ118が媒体を検出したときに、第1給送ローラ113aの周速度を第1速度V1に、第2給送ローラ113bの周速度を第1速度V1より高い第2速度V2に設定する。同様に、媒体搬送装置100は、第1スキューセンサ118が媒体を検出する前に第2スキューセンサ119が媒体を検出したときに、第2給送ローラ113bの周速度を第1速度V1に、第1給送ローラ113aの周速度を第2速度V2に設定する。これらにより、媒体搬送装置100は、媒体のスキューを補正する。媒体搬送方向と直交する幅方向A4における第1スキューセンサ118及び第2スキューセンサ119の配置位置は、第1速度V1に対する第2速度V2の速度比αによって媒体が回転する回転中心位置Cと同じとなるように設定される。第1速度V1に対する第2速度V2の速度比αは、1より大きい値に設定される。
【0050】
第2スキューセンサ119が媒体を検出する前に第1スキューセンサ118が媒体を検出した場合、第1スキューセンサ118側において媒体の進行が進み、第2スキューセンサ119側において媒体の進行が遅れている。この場合、第1給送ローラ113aの周速度が第1速度V1に設定され、第2給送ローラ113bの周速度が第2速度V2(=α・V1)に設定される。回転中心位置Cにおいて所定期間Tに媒体が回転する回転角度θaについて以下の式(1)、(2)が成立する。
tanθa=(V1・T)/L (1)
tanθa=(V2・T)/(L+D)=(α・V1・T)/(L+D) (2)
ここで、Lは、幅方向A4における回転中心位置Cと第1給送ローラ113aの中心位置との間の距離である。Dは、幅方向A4における第1給送ローラ113aの中心位置と第2給送ローラ113bの中心位置との間の距離である。
【0051】
式(1)、(2)から以下の式(3)が成立する。
L=D/(α-1) (3)
第1スキューセンサ118は、媒体搬送方向と直交する幅方向A4において、第1給送ローラ113aより、式(3)で算出される距離Lだけ外側の位置から所定範囲内に配置される。所定範囲は、例えば媒体搬送装置100の製造誤差等を考慮した範囲(例えばその位置から10mm内の範囲)に設定される。同様に、第2スキューセンサ119は、媒体搬送方向と直交する幅方向A4において、第2給送ローラ113bより、式(3)で算出される距離Lだけ外側の位置から所定範囲内に配置される。この場合、Lは、幅方向A4における回転中心位置Cと第2給送ローラ113bの中心位置との間の距離である。
【0052】
なお、速度比αが大きいほど、媒体のスキュー補正にかかる時間は短くなる。但し、速度比αが大きいほど、スキュー補正時に媒体にかかる負荷が大きくなる。また、式(3)に示されるように、速度比αが大きいほど、距離Lは小さくなり、媒体搬送装置100がスキューを検出可能な媒体のサイズが小さくなる。速度比αは、媒体のスキュー補正にかかる時間と、媒体搬送装置100がサポートする媒体の厚さ(強度)及びサイズとを考慮して設定される。
【0053】
これにより、傾いて搬送された媒体の先端E1が第1スキューセンサ118を通過した時に、第1給送ローラ113aに対する第2給送ローラ113bの速度比をαに設定すると、媒体の先端E1は回転中心位置Cを中心に回転する。したがって、幅方向A4において第1スキューセンサ118と並べて配置された他のセンサ(第2スキューセンサ119等)が媒体の先端E1を検出するまで媒体のスキューを補正することにより、媒体のスキューは第1スキューセンサ118の位置で解消する。同様に、傾いて搬送された媒体の先端が第2スキューセンサ119を通過した時に、第2給送ローラ113bに対する第1給送ローラ113aの速度比をαに設定すると、媒体の先端は、幅方向A4の中心位置に対して回転中心位置Cと線対称となる位置を中心に回転する。したがって、幅方向A4において第2スキューセンサ119と並べて配置された他のセンサ(第1スキューセンサ118等)が媒体の先端を検出するまで媒体のスキューを補正することにより、媒体のスキューは第2スキューセンサ119の位置で解消する。
【0054】
これにより、媒体搬送装置100は、媒体の傾きに応じて各給送ローラ113の周速度を調整することなく、媒体のスキューを簡易且つ適切に補正することができる。したがって、媒体搬送装置100は、媒体のスキューを補正するために媒体の傾きを算出する必要がなくなり、媒体のスキュー補正にかかる処理負荷を低減させることができる。
【0055】
なお、第1スキューセンサ118は、幅方向A4において第1給送ローラ113aと第1分離ローラ114aのニップ部N1の左端又は右端位置より、式(3)で算出される距離Lだけ外側の位置から所定範囲内に配置されてもよい。その場合、式(3)のLは、幅方向A4における回転中心位置Cと第1給送ローラ113aと第1分離ローラ114aのニップ部N1の左端又は右端位置との間の距離である。同様に、第2スキューセンサ119は、幅方向A4において第2給送ローラ113bと第2分離ローラ114bのニップ部N1の左端又は右端位置より、式(3)で算出される距離Lだけ外側の位置から所定範囲内に配置されてもよい。その場合、式(3)のLは、幅方向A4における回転中心位置Cと第2給送ローラ113bと第2分離ローラ114bのニップ部N1の左端又は右端位置との間の距離である。
【0056】
また、第1、第2スキューセンサ118、119が媒体の先端を検出したタイミングで、給送ローラ113を用いた媒体のスキュー補正を開始するためには、そのタイミングで媒体の先端が、二つの給送ローラ113の位置を通過している必要がある。したがって、第1スキューセンサ118及び第2スキューセンサ119は、媒体搬送方向A2において、第1給送ローラ113a及び第2給送ローラ113bの中心位置より、以下の式(4)を満たす距離Aだけ下流側の位置に配置される。
A≧(L+D)・tanθb (4)
ここで、θbは媒体搬送装置100が補正をサポートする媒体の傾きの最大角度である。
【0057】
これにより、媒体搬送装置100は、補正をサポートする最大角度で傾いて媒体が搬送された場合にも、媒体の傾きを算出して、算出した傾きに応じて各給送ローラ113の周速度を調整することなく、媒体のスキューを簡易且つ適切に補正することができる。したがって、媒体搬送装置100は、媒体のスキュー補正にかかる処理負荷を低減させつつ、媒体のスキューを適切に補正することができる。
【0058】
なお、第1スキューセンサ118及び第2スキューセンサ119は、媒体搬送方向A2において、各給送ローラ113と各分離ローラ114のニップ部N1の下流端又は上流端の位置より、上記式(4)を満たす距離Aだけ下流側の位置に配置されてもよい。
【0059】
フィードセンサ122は、媒体搬送方向A2において第1搬送ローラ120aと第1従動ローラ121aのニップ部N2より下流側且つ第2搬送ローラ120bと第2従動ローラ121bのニップ部N3より上流側に配置される。フィードセンサ122は、媒体搬送方向A2において第2搬送ローラ120b及び第2従動ローラ121bより下流側且つ撮像装置123より上流側に配置されてもよい。また、フィードセンサ122は、幅方向A4において、中央部に、特に第1給送ローラ113aと第2給送ローラ113bの間(第1分離ローラ114aと第2分離ローラ114bの間)に配置される。また、フィードセンサ122は、幅方向A4において、第1スキューセンサ118と第2スキューセンサ119の間に配置される。
【0060】
フィードセンサ122は、媒体搬送路に対して一方の側に設けられた発光器及び受光器と、媒体搬送路を挟んで発光器及び受光器と対向する位置に設けられた導光管とを含む。発光器は、LED等であり、媒体搬送路に向けて光を照射する。一方、受光器は、フォトダイオード等であり、発光器により照射され、導光管により導かれた光を受光する。フィードセンサ122は、受光器が受光する光の強度に基づいて、フィードセンサ122の位置に媒体が存在する状態と存在しない状態とで信号値が変化するフィード信号を生成して出力する。これにより、フィードセンサ122は、その配置位置に搬送された媒体を検出する。
【0061】
なお、分離センサ116、ピックセンサ117、第1スキューセンサ118、第2スキューセンサ119及び/又はフィードセンサ122において、導光管の代わりに、ミラー等の反射部材が使用されてもよい。また、各センサにおいて、発光器及び受光器は、媒体搬送路を挟んで対向して設けられてもよい。また、各センサは、媒体が接触している場合、又は、媒体が接触していない場合に所定の電流を流す接触検知センサ等により、媒体の存在を検出してもよい。
【0062】
図4は、ピックローラ112について説明するための模式図である。
【0063】
図4に示すように、媒体搬送装置100は、ピックローラ112を支持するアーム131を有する。アーム131は、媒体搬送方向A2に延伸し且つ下流側端部131aを中心に回転(揺動)可能に、第2筐体102に設けられる。アーム131の上流側端部131bには、ピックローラ112が取り付けられる。アーム131の上方には、付勢部材131cが取り付けられる。付勢部材131cは、ねじりコイルばね等のばね部材、又は、ゴム部材等であり、アーム131に下方に向かう付勢力を付与する。なお、付勢部材131cは省略され、アーム131には自重により下方に向かう力のみが付与されてもよい。アーム131が下方に向けて付勢されることにより、ピックローラ112は、載置台103に載置された媒体を下方に押圧しながら、媒体を適切に搬送することができる。
【0064】
また、アーム131には、モータからの駆動力により、上方に揺動(回転)する回転力が付与される。媒体搬送装置100は、アーム131を回転(揺動)させることにより、ピックローラ112を、載置台103に載置された媒体に当接する第1位置と、載置台103に載置された媒体と離間する第2位置との間で移動させることができる。このように、ピックローラ112は、第1位置と第2位置との間で移動可能に設けられる。
【0065】
図5は、媒体搬送装置100の概略構成を示すブロック図である。
【0066】
媒体搬送装置100は、前述した構成に加えて、モータ141、インタフェース装置142、記憶装置150及び処理回路160等をさらに有する。
【0067】
モータ141は、一又は複数のモータを含み、処理回路160からの制御信号によって、ピックローラ112、給送ローラ113、分離ローラ114及び第1~第6搬送ローラ120a~fを回転させるための駆動力を発生させて、媒体を給送及び搬送させる。給送ローラ113が複数設けられる場合、各給送ローラ113をそれぞれ独立に回転するように、各給送ローラ113毎に別個のモータが設けられる。各給送ローラ113は、共通のモータにより一体に回転するように設けられてもよい。また、第1~第6従動ローラ121a~fは、第1~第6搬送ローラ120a~fに従動回転するのでなく、モータ141の駆動力に従って回転するように設けられてもよい。
【0068】
また、モータ141に含まれる各モータは、処理回路160からの制御信号によって、載置台103を移動させ、ピックローラ112を移動させ、又は、分離ローラ114を揺動させる。ピックローラ112を支持するアーム131、付勢部材131c、及び/又は、ピックローラ112を移動させるモータは、ピックローラ112を移動させる移動機構の一例である。分離ローラ114を支持するアーム114c、及び/又は、アーム114cを揺動させるモータは、分離ローラ114を給送ローラ113側に押圧する押圧力を分離ローラ114に付与する付与機構の一例である。
【0069】
インタフェース装置142は、例えばUSB等のシリアルバスに準じるインタフェース回路を有し、不図示の情報処理装置(例えば、パーソナルコンピュータ、携帯情報端末等)と電気的に接続して入力画像及び各種の情報を送受信する。また、インタフェース装置142の代わりに、無線信号を送受信するアンテナと、所定の通信プロトコルに従って、無線通信回線を通じて信号の送受信を行うための無線通信インタフェース回路とを有する通信部が用いられてもよい。所定の通信プロトコルは、例えば無線LAN(Local Area Network)である。通信部は、有線LAN等の通信プロトコルに従って、有線通信回線を通じて信号の送受信を行うための有線通信インタフェース回路を有してもよい。
【0070】
記憶装置150は、RAM(Random Access Memory)、ROM(Read Only Memory)等のメモリ装置、ハードディスク等の固定ディスク装置、又はフレキシブルディスク、光ディスク等の可搬用の記憶装置等を有する。また、記憶装置150には、媒体搬送装置100の各種処理に用いられるコンピュータプログラム、データベース、テーブル等が格納される。コンピュータプログラムは、コンピュータ読み取り可能な可搬型記録媒体から、公知のセットアッププログラム等を用いて記憶装置150にインストールされてもよい。可搬型記録媒体は、例えばCD-ROM(compact disc read only memory)、DVD-ROM(digital versatile disc read only memory)等である。記憶装置150は、データとして、媒体のスキューの補正状態を示す状態情報を記憶する。
【0071】
処理回路160は、予め記憶装置150に記憶されているプログラムに基づいて動作する。処理回路は、例えばCPU(Central Processing Unit)である。処理回路160として、DSP(digital signal processor)、LSI(large scale integration)、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)、FPGA(Field-Programmable Gate Array)等が用いられてもよい。
【0072】
処理回路160は、操作装置105、表示装置106、載置台センサ111、回転センサ115、分離センサ116、ピックセンサ117、第1スキューセンサ118、第2スキューセンサ119、フィードセンサ122、撮像装置123、モータ141、インタフェース装置142及び記憶装置150等と接続され、これらの各部を制御する。処理回路160は、各センサから受信した信号に基づいて、モータ141の駆動制御、撮像装置123の撮像制御等を行う。処理回路160は、撮像装置123から入力画像を取得し、インタフェース装置142を介して情報処理装置に送信する。
【0073】
図6は、記憶装置150及び処理回路160の概略構成を示す図である。
【0074】
図6に示すように、記憶装置150には、受付プログラム151、制御プログラム152、取得プログラム153及び判定プログラム154等が記憶される。これらの各プログラムは、プロセッサ上で動作するソフトウェアにより実装される機能モジュールである。処理回路160は、記憶装置150に記憶された各プログラムを読み取り、読み取った各プログラムに従って動作する。これにより、処理回路160は、受付部161、制御部162、取得部163及び判定部164として機能する。
【0075】
図7は、媒体搬送装置100の媒体読取処理の動作の例を示すフローチャートである。
【0076】
以下、
図7に示したフローチャートを参照しつつ、媒体搬送装置100の媒体読取処理の動作の例を説明する。なお、以下に説明する動作のフローは、予め記憶装置150に記憶されているプログラムに基づき主に処理回路160により媒体搬送装置100の各要素と協働して実行される。なお、このフローチャートでは、給送モードが分離モードに設定されている場合について説明する。
【0077】
最初に、受付部161は、利用者により操作装置105又は情報処理装置を用いて、媒体搬送装置100に対する設定が入力されて、媒体搬送装置100に対する設定を利用者から受け付けたか否かを判定する(ステップS101)。受付部161は、媒体搬送装置100に対する設定を指示する設定信号を操作装置105から又はインタフェース装置142を介して情報処理装置から受信した場合、媒体搬送装置100に対する設定を利用者から受け付けたと判定する。媒体搬送装置100に対する設定には、媒体のスキューを補正する際の各給送ローラ113の周速度に関する設定が含まれる。各給送ローラ113の周速度に関する設定は、各給送ローラ113の周速度自体、各給送ローラ113の1分間あたりの回転数(RPM)、各給送ローラ113を駆動するモータの1分間あたりの回転数(RPM)等である。各給送ローラ113の周速度に関する設定は、各給送ローラ113の基準(初期)周速度に対する比又は差等でもよい。また、媒体搬送装置100に対する設定には、媒体のスキュー補正を実行するか否かの設定が含まれていてもよい。
【0078】
媒体搬送装置100は、利用者から、媒体のスキューを補正する際の各給送ローラ113の周速度に関する設定を受け付けることにより、各給送ローラ113を、搬送される媒体の厚さ又は材質等に適した速度で回転させて媒体のスキューを補正できる。したがって、媒体搬送装置100は、様々な種類の媒体に対して媒体のスキューを適切に補正できる。媒体搬送装置100に対する設定を受け付けていない場合、受付部161は、特に処理を実行せずに、ステップS103へ処理を移行する。
【0079】
一方、媒体搬送装置100に対する設定を受け付けた場合、受付部161は、受け付けた設定を記憶装置150に記憶する(ステップS102)。
【0080】
次に、制御部162は、利用者により操作装置105又は情報処理装置を用いて媒体の読み取りの指示が入力されて、媒体の読み取りの指示を利用者から受け付けたか否かを判定する(ステップS103)。制御部162は、媒体の読み取りを指示する操作信号を操作装置105から又はインタフェース装置142を介して情報処理装置から受信した場合、媒体の読み取りの指示を利用者から受け付けたと判定する。媒体の読み取りの指示を受け付けていない場合、制御部162は、特に処理を実行せずに、ステップS101へ処理を戻す。
【0081】
一方、媒体の読み取りの指示を受け付けた場合、制御部162は、載置台センサ111から載置台信号を取得し、取得した載置台信号に基づいて、載置台103に媒体が載置されているか否かを判定する(ステップS104)。載置台103に媒体が載置されていない場合、制御部162は、特に処理を実行せずに、ステップS101へ処理を戻す。
【0082】
一方、載置台103に媒体が載置されている場合、制御部162は、モータ141を駆動して、媒体を給送可能な位置に載置台103を移動させるとともに、ピックローラ112を第1位置に配置させる。また、制御部162は、モータ141を駆動して、ピックローラ112、給送ローラ113、分離ローラ114及び/又は第1~第6搬送ローラ120a~fを回転させることにより、載置台103に載置された媒体を給送及び搬送させる(ステップS105)。このとき、制御部162は、第1給送ローラ113aの周速度及び第2給送ローラ113bの周速度を、相互に同一である基準速度に設定する。また、制御部162は、分離ローラ114を給送ローラ113側に押圧する押圧力が基準値(初期値)となるようにモータ141を制御する。
【0083】
次に、制御部162は、媒体のスキューの補正状態を示す状態情報を、媒体のスキューの補正を開始していないことを示す未開始状態に設定(初期化)する(ステップS106)。
【0084】
次に、取得部163は、媒体の先端がピックセンサ117の位置を通過するまで待機する(ステップS107)。取得部163は、ピックセンサ117から定期的にピック信号を取得する。取得部163は、ピック信号の信号値が、媒体が存在しないことを示す値から存在することを示す値に変化した時に、媒体の先端がピックセンサ117の位置を通過し、ピックセンサ117が媒体の先端を検出したと判定する。
【0085】
次に、取得部163は、第1給送ローラ113a及び第2給送ローラ113bと、第1給送ローラ113a及び第2給送ローラ113bによって給送(搬送)される媒体との間のスリップ度合いを算出する(ステップS108)。スリップ度合いは、給送ローラ113の外周面上で媒体が滑ってしまい、給送ローラ113を回転させたにも関わらず媒体が移動しなかった度合いを示す。取得部163は、モータ141の駆動量と、給送ローラ113によって給送(搬送)される媒体の移動距離とに基づいて、スリップ度合いを算出する。
【0086】
取得部163は、媒体の給送を開始した後、分離センサ116から定期的に分離信号を取得する。取得部163は、分離信号の信号値が、媒体が存在しないことを示す値から存在することを示す値に変化した時に、媒体の先端が分離センサ116の位置を通過し、分離センサ116が媒体の先端を検出したと判定する。取得部163は、媒体の先端が分離センサ116の位置を通過してからピックセンサ117の位置を通過するまでの期間に、給送ローラ113を回転させるためにモータ141を駆動した駆動量を監視する。取得部163は、上記期間におけるモータ141の駆動量(パルス数)と、1パルスあたりの給送ローラ113の外周面の移動距離とを乗算することにより、給送ローラ113の外周面の移動距離を算出する。取得部163は、分離センサ116とピックセンサ117の間の媒体搬送方向A2における距離を、上記期間における給送される媒体の移動距離として特定する。
【0087】
取得部163は、給送ローラ113の外周面の移動距離と、給送される媒体の移動距離とに基づいて、以下の式(5)に従ってスリップ度合いを算出し、算出したスリップ度合いを記憶装置150に記憶する。
(スリップ度合い)=1-(給送される媒体の移動距離)/(給送ローラ113の外周面の移動距離) (5)
【0088】
次に、制御部162は、媒体の後端が撮像装置123の撮像位置を通過するまで待機する(ステップS109)。制御部162は、フィードセンサ122から定期的にフィード信号を取得する。制御部162は、フィード信号の信号値が、媒体が存在することを示す値から存在しないことを示す値に変化した時に、媒体の後端がフィードセンサ122の位置を通過し、フィードセンサ122が媒体の後端を検出したと判定する。制御部162は、媒体の後端がフィードセンサ122の位置を通過してから第1時間が経過した時に、媒体の後端が撮像装置123の撮像位置を通過したと判定する。第1時間は、媒体がフィードセンサ122の位置から撮像装置123の撮像位置まで移動するのに要する時間に設定される。
【0089】
次に、制御部162は、撮像装置123から入力画像を取得し、取得した入力画像を、インタフェース装置142を介して情報処理装置に送信することにより出力する(ステップS110)。制御部162は、例えば媒体の先端がフィードセンサ122の位置を通過したタイミングのように、媒体の先端が撮像装置123の撮像位置に到達する前に撮像装置123に撮像を開始させる。また、制御部162は、例えばフィードセンサ122が媒体の後端を検出してから第1時間が経過したタイミングのように、媒体の後端が撮像装置123の撮像位置を通過した後に撮像装置123に撮像を終了させ、撮像装置123から入力画像を取得する。
【0090】
次に、制御部162は、載置台センサ111から受信する載置台信号に基づいて載置台103に媒体が残っているか否かを判定する(ステップS111)。載置台103に媒体が残っている場合、制御部162は、処理をステップS106へ戻し、ステップS106以降の処理を繰り返す。
【0091】
載置台103に媒体が残っていない場合、制御部162は、ピックローラ112、給送ローラ113、分離ローラ114及び/又は第1~第6搬送ローラ120a~fを停止させるようにモータ141を制御し(ステップS112)、一連のステップを終了する。
【0092】
図8、
図9及び
図10は、媒体搬送装置100のスキュー判定処理の動作の例を示すフローチャートである。
【0093】
以下、
図8、
図9及び
図10に示したフローチャートを参照しつつ、媒体搬送装置100のスキュー判定処理の動作の例を説明する。なお、以下に説明する動作のフローは、予め記憶装置150に記憶されているプログラムに基づき主に処理回路160により媒体搬送装置100の各要素と協働して実行される。
図8、
図9及び
図10に示す動作のフローは、媒体搬送中に実行される。スキュー判定処理は、
図7のステップS101で受付部161が受け付けた設定において、媒体のスキュー補正を実行することが設定されている場合に限り実行されてもよい。
【0094】
最初に、判定部164は、回転センサ115、分離センサ116、ピックセンサ117、第1スキューセンサ118及び第2スキューセンサ119からそれぞれ回転信号、分離信号、ピック信号、第1スキュー信号及び第2スキュー信号を受信する。判定部164は、受信した各信号を記憶装置150に記憶する(ステップS201)。
【0095】
次に、判定部164は、スキュー条件が満たされたか否かを判定する(ステップS202)。判定部164は、媒体の先端が第1スキューセンサ118及び第2スキューセンサ119の各位置に到達したか否かを判定する。判定部164は、第1スキュー信号の信号値が、媒体が存在しないことを示す値から存在することを示す値に変化したときに、媒体の先端が第1スキューセンサ118の位置に到達し、第1スキューセンサ118が媒体の先端を検出したと判定する。また、判定部164は、第2スキュー信号の信号値が、媒体が存在しないことを示す値から存在することを示す値に変化したときに、媒体の先端が第2スキューセンサ119の位置に到達し、第2スキューセンサ119が媒体の先端を検出したと判定する。
【0096】
判定部164は、媒体の先端が第1スキューセンサ118の位置及び第2スキューセンサ119の位置のうちの一方の位置に到達してから第2時間内に他方の位置に到達しなかった場合、スキュー条件が満たされたと判定する。即ち、判定部164は、第1スキューセンサ118及び第2スキューセンサ119のうちの一方のセンサが媒体の先端を検出してから第2時間内に他方のセンサが媒体の先端を検出しなかった場合、スキュー条件が満たされたと判定する。第2時間は、例えば、媒体を傾いて搬送させる事前の実験により、媒体のジャムが発生したとき又は入力画像内で媒体の欠けが発生したときに、その媒体が各スキューセンサを通過した時刻の差の平均値、中央値、最小値又は最大値等に設定される。
【0097】
判定部164は、スキュー条件が満たされていない場合、媒体のスキューが発生していないと判定し(ステップS203)、ステップS212へ処理を移行する。
【0098】
一方、判定部164は、スキュー条件が満たされた場合、媒体のスキューが発生したと判定する(ステップS204)。このように、判定部164は、第1スキューセンサ118から出力される第1スキュー信号及び第2スキューセンサ119から出力される第2スキュー信号に基づいて、媒体のスキューが発生したか否かを判定する。即ち、判定部164は、第1スキューセンサ118又は第2スキューセンサ119による媒体の検出結果に基づいて、媒体のスキューが発生したか否かを判定する。特に、判定部164は、第1スキューセンサ118及び第2スキューセンサ119のそれぞれが媒体の先端を検出したタイミングに基づいて、媒体のスキューが発生したか否かを判定する。
【0099】
次に、取得部163は、スリップ度合いを取得する(ステップS205)。取得部163は、直前に搬送された媒体について、
図7のステップS108で算出されたスリップ度合いを記憶装置150から読み出すことにより、スリップ度合いを取得する。即ち、取得部163は、直前に搬送された媒体のスリップ度合いを算出することにより、スリップ度合いを取得する。現在搬送中の媒体についてはスリップ度合いがまだ算出されていない可能性がある。取得部163は、直前に搬送された媒体のスリップ度合いを読み出すことにより、最新の状態におけるスリップ度合いを確実に取得することができる。
【0100】
なお、取得部163は、直近の所定数の媒体について算出されたスリップ度合いの統計値(平均値、中央値、最大値又最小値)を算出することにより、スリップ度合いを取得してもよい。これにより、取得部163は、より高精度にスリップ度合いを算出することができる。また、取得部163は、現在搬送中の媒体について、
図7のステップS108で算出されたスリップ度合いを記憶装置150から読み出すことにより、スリップ度合いを取得してもよい。これにより、取得部163は、現在搬送中の媒体の材質に対応するスリップ度合いを取得することができる。また、媒体搬送装置100は、製品未使用状態におけるスリップ度合いを算出しておき、記憶装置150に予め記憶しておいてもよい。その場合、
図7のステップS108の処理は省略され、取得部163は、記憶装置150に予め記憶されたスリップ度合いを読み出すことにより、スリップ度合いを取得する。これにより、取得部163は、より低負荷にスリップ度合いを取得することができる。
【0101】
次に、制御部162は、媒体のスキューが発生した場合、スキュー補正の禁止条件が満たされたか否かを判定する(ステップS206)。スキュー補正の禁止条件が満たされた場合、制御部162は、後述する処理において、媒体のスキューの補正を禁止し、媒体のスキューを補正しない。
【0102】
例えば、制御部162は、第1スキューセンサ118及び第2スキューセンサ119より前に、ピックセンサ117が媒体の先端を検出した場合、スキュー補正の禁止条件が満たされたと判定し、媒体のスキューを補正しない。
【0103】
図11(A)は、第1スキューセンサ118及び第2スキューセンサ119より前にピックセンサ117により検出される媒体M1について説明するための模式図である。
【0104】
図11(A)に示す例では、媒体M1は、わずかに傾いて搬送され、第1スキューセンサ118及び第2スキューセンサ119より前にピックセンサ117により検出される。この場合、媒体M1は、傾いているものの、このまま搬送され続けても、撮像装置123により適切に撮像される可能性が高く、且つ、搬送路の側壁に衝突しない可能性が高い。媒体搬送装置100は、第1スキューセンサ118及び第2スキューセンサ119より前にピックセンサ117が媒体を検出した場合に媒体のスキューを補正しないことにより、媒体のトータル搬送時間の増大を抑制し、媒体読取処理の処理時間の増大を抑制できる。また、媒体搬送装置100は、第1スキューセンサ118及び第2スキューセンサ119とピックセンサ117とがそれぞれ媒体を検出したタイミングを用いることにより、スキュー補正を禁止するか否かを低負荷に判定することができる。
【0105】
なお、制御部162は、第1スキューセンサ118及び第2スキューセンサ119が媒体の先端を検出してから第3時間が経過する前にピックセンサ117が媒体の先端を検出した場合、スキュー補正の禁止条件が満たされたと判定してもよい。第3時間は、十分に短い時間(例えば1秒間)に設定される。この場合も、媒体の傾きは十分に小さい可能性が高い。制御部162は、この場合に媒体のスキューを補正しないことにより、媒体のトータル搬送時間の増大を抑制し、媒体読取処理の処理時間の増大を抑制できる。
【0106】
また、制御部162は、分離センサ116より前に、第1スキューセンサ118又は第2スキューセンサ119が媒体の先端を検出した場合、スキュー補正の禁止条件が満たされたと判定し、媒体のスキューを補正しない。
【0107】
図11(B)は、分離センサ116より前に第1スキューセンサ118又は第2スキューセンサ119により検出される媒体M2について説明するための模式図である。
【0108】
図11(B)に示す例では、媒体M2及び媒体M3が、先端が揃っていない状態で載置台103に載置されている。給送対象の媒体M3の次に給送されるべき媒体M2において、先端の左側部分が給送ローラ113より下流側に進入してしまい、第1スキューセンサ118により検出されている。このように、分離センサ116より前に第1スキューセンサ118又は第2スキューセンサ119により検出される媒体は、給送対象の媒体ではなく、載置台103上で傾いた状態で載置されている媒体である可能性がある。給送対象でない媒体は、その後、分離ローラ114により載置台103側に押し戻される。この状態で、媒体のスキューを補正しようとすると、給送対象の媒体M3は、誤った方向に回転する可能性がある。媒体搬送装置100は、分離センサ116より前に第1スキューセンサ118又は第2スキューセンサ119が媒体の先端を検出した場合、媒体のスキューを補正しないことにより、給送対象の媒体を誤った方向に回転させることを抑制できる。
【0109】
図12(A)は、ある程度傾いている媒体M4について説明するための模式図である。
【0110】
図12(A)に示す例では、媒体M4は、傾いており、分離センサ116、第1スキューセンサ118、ピックセンサ117の順に検出される。この場合、媒体搬送装置100は、媒体のスキューを補正することにより、媒体全体が撮像装置123により撮像されないこと、及び、媒体が搬送路の側壁に衝突することを防止できる。
【0111】
また、制御部162は、ステップS205で取得されたスリップ度合いに基づいて、スキュー補正の禁止条件が満たされたか否かを判定してもよい。制御部162は、スリップ度合いが上限閾値を超えた場合にスキュー補正の禁止条件が満たされたと判定し、スリップ度合いが上限閾値以下である場合にスキュー補正の禁止条件が満たされていないと判定する。上限閾値は、様々な状態の給送ローラ113を用いて媒体を搬送させる事前の実験により、媒体のスキューを良好に補正できた場合に算出されたスリップ度合いと、媒体のスキューを適切に補正できなかった場合に算出されたスリップ度合いとの間の値に設定される。
【0112】
このように、制御部162は、スリップ度合いに基づいて、媒体のスキューの補正を禁止する。これにより、媒体搬送装置100は、媒体のスキューを適切に補正できないにもかかわらず、スキュー補正による負荷が媒体にかかること、又は、媒体読取処理の処理時間が増大することを抑制できる。
【0113】
また、制御部162は、過去にスキュー補正が実行された媒体について補正不足が発生した場合に、スキュー補正の禁止条件が満たされたと判定し、以降に搬送される媒体のスキューの補正を禁止してもよい。制御部162は、後述する処理において、スキュー補正を実行した媒体について補正不足が発生したか否かを判定する。例えば、制御部162は、分離センサ116が媒体の後端を検出する前に、第1スキューセンサ118及び第2スキューセンサ119のうち、先に媒体の先端を検出したセンサが媒体の後端を検出した場合、補正不足が発生したと判定する。
【0114】
図12(B)は、媒体のスキュー補正の補正不足について説明するための模式図である。
【0115】
図12(B)は、
図12(A)に示した媒体M4のスキュー補正後の様子の一例を示す。
図12(B)に示す例では、媒体M4の傾きが解消しておらず、媒体M4の後端は、分離センサ116より前に第1スキューセンサ118により検出される。この場合、媒体M4のスキューは何らかの原因により適切に補正されておらず、以降に搬送される媒体のスキューについても、適切に補正されない可能性が高い。
【0116】
また、制御部162は、過去にスキュー補正が実行された媒体について補正過多が発生した場合に、スキュー補正の禁止条件が満たされたと判定し、以降に搬送される媒体のスキューの補正を禁止してもよい。制御部162は、後述する処理において、スキュー補正を実行した媒体について、補正過多が発生したか否かを判定する。例えば、制御部162は、第1スキューセンサ118及び第2スキューセンサ119が媒体の後端を検出した順序が媒体の先端を検出した順序から変化した場合、補正過多が発生したと判定する。
【0117】
図13は、媒体のスキューの補正の補正過多について説明するための模式図である。
【0118】
図13は、
図12(A)に示した媒体M4のスキュー補正後の様子の一例を示す。
図13に示す例では、媒体M4の傾き方向が
図12(A)に示す補正前の状態の反対になっており、媒体M4の後端は、第1スキューセンサ118より前に第2スキューセンサ119により検出される。この場合、媒体M4のスキューは何らかの原因により適切に補正されておらず、以降に搬送される媒体のスキューについても適切に補正されない可能性が高い。
【0119】
このように、制御部162は、第1スキューセンサ118及び第2スキューセンサ119が、スキュー補正した媒体の後端を検出したタイミングに基づいて、以降に搬送される媒体のスキューの補正を禁止する。これにより、媒体搬送装置100は、媒体のスキューを適切に補正できないにもかかわらず、スキュー補正による負荷が媒体にかかること、又は、媒体読取処理の処理時間が増大することを抑制できる。
【0120】
制御部162は、補正不足又は補正過多が発生したと判定し、媒体のスキューの補正を停止した場合、載置台103に載置された全ての媒体の搬送が完了するまでスキュー補正の禁止条件が満たされていると判定し、媒体のスキューの補正を再開しなくてもよい。載置台103に載置された全ての媒体はまとめて載置されている可能性が高く、全ての媒体が同一方向に傾いて載置されている可能性がある。多数の媒体が同一方向に傾いて載置されている場合、多数の媒体が一方の給送ローラ113と分離ローラ114のニップ部にのみ進入し、二組の給送ローラ113及び分離ローラ114による分離力(バック負荷)に差が発生する可能性がある。この場合、媒体のスキューの補正を実行することにより、媒体の傾きが増大する可能性がある。媒体搬送装置100は、補正不足又は補正過多が発生した場合に、載置台103に載置された全ての媒体の搬送が完了するまでスキュー補正を禁止することにより、媒体の傾きが増大することを抑制できる。
【0121】
また、制御部162は、補正不足又は補正過多が発生したと判定し、媒体のスキューの補正を停止した場合、回転センサ115が分離ローラ114の給送ローラ113への従動回転を検出するまで、媒体のスキューの補正を再開しなくてもよい。分離ローラ114が給送ローラ113に従動回転している場合、給送ローラ113と分離ローラ114のニップ部に複数の媒体が存在しておらず、多数の媒体のニップ部への進入は解消されている可能性が高い。媒体搬送装置100は、補正不足又は補正過多が発生した場合に、分離ローラ114が従動回転するまでスキュー補正を禁止することにより、媒体の傾きが増大することを抑制しつつ、媒体の傾きを、補正可能な状態になったときに適切に補正することができる。
【0122】
スキュー補正の禁止条件が満たされた場合、制御部162は、媒体のスキューの補正を禁止し、媒体のスキューを補正せず(ステップS207)、ステップS212へ処理を移行する。
【0123】
一方、スキュー補正の禁止条件が満たされなかった場合、制御部162は、媒体のスキューの補正が開始されているか否かを判定する(ステップS208)。制御部162は、状態情報が未開始状態に設定されている場合、媒体のスキューの補正がまだ開始されていないと判定し、状態情報が未開始状態以外の状態に設定されている場合、媒体のスキューの補正が既に開始されていると判定する。媒体のスキューの補正が既に開始されている場合、制御部162は、特に処理を実行せずに、ステップS212へ処理を移行する。
【0124】
一方、媒体のスキューの補正がまだ開始されていない場合、制御部162は、分離ローラ114を給送ローラ113側に押圧する押圧力を基準値より増大させるようにモータ141を制御する(ステップS209)。このように、制御部162は、媒体のスキューを補正しているときと、媒体のスキューを補正していないときとで、押圧力が異なるように、分離ローラ114を支持するアーム114c及びモータ141を制御する。これにより、媒体搬送装置100は、媒体のスキューを補正する際に、給送された媒体と給送ローラ113及び分離ローラ114との間に発生する摩擦力を増大させて、媒体のスキューをより良好に補正することができる。
【0125】
次に、制御部162は、ピックローラ112を第1位置から第2位置に移動させるようにモータ141を制御する(ステップS210)。このように、制御部162は、媒体のスキューが発生した場合、ピックローラ112を第1位置から第2位置に移動させるように、ピックローラ112を支持するアーム131、付勢部材131c及びモータ141を制御する。この場合、ピックローラ112は、媒体から離間して媒体の幅方向A4の移動を妨げないため、媒体搬送装置100は、媒体のスキューをより良好に補正することができる。
【0126】
次に、制御部162は、状態情報を、媒体のスキューの補正を開始できるまで待機していることを示す開始待機状態に設定する(ステップS211)。
【0127】
次に、制御部162は、スキュー補正の開始条件が満たされたか否かを判定する(ステップS212)。スキュー補正の開始条件が満たされた場合、制御部162は、後述する処理において、媒体のスキューの補正を開始する。
【0128】
制御部162は、状態情報が開始待機状態に設定されてから第4時間が経過した場合に、スキュー補正の開始条件が満たされたと判定する。即ち、制御部162は、分離ローラ114を給送ローラ113側に押圧する押圧力を増大させるようにモータ141の制御を開始してから第4時間が経過した場合に、スキュー補正の開始条件が満たされたと判定する。また、制御部162は、ピックローラ112を第2位置に移動させるように移動機構の制御を開始してから第4時間が経過した場合に、スキュー補正の開始条件が満たされたと判定する。第4時間は、所定時間の一例である。第4時間は、モータ141の制御を開始してから、分離ローラ114の押圧力が切り替わるまで、又は、ピックローラ112が実際に第2位置に移動するまでにかかる時間に設定される。一方、制御部162は、状態情報が開始待機状態以外の状態に設定されている場合、又は、状態情報が開始待機状態に設定されてから第4時間が経過していない場合、スキュー補正の開始条件が満たされていないと判定する。
【0129】
このように、制御部162は、分離ローラ114を給送ローラ113側に押圧する押圧力を増大させるようにモータ141の制御を開始してから第4時間経過後に、媒体のスキューの補正を開始する。これにより、媒体搬送装置100は、分離ローラ114を給送ローラ113側に押圧する押圧力を確実に増大させた状態で媒体のスキューを補正できるため、媒体のスリップの発生を抑制し、媒体のスキューをより良好に補正することができる。また、制御部162は、ピックローラ112を第1位置から第2位置に移動させるように移動機構の制御を開始してから第4時間経過後に、媒体のスキューの補正を開始する。これにより、媒体搬送装置100は、ピックローラ112が媒体から確実に離間した状態で媒体のスキューを補正できるため、媒体の幅方向A4の移動がピックローラ112により妨げられることを抑制し、媒体のスキューをより良好に補正することができる。
【0130】
スキュー補正の開始条件が満たされていない場合、制御部162は、特に処理を実行せずに、ステップS218へ処理を移行する。
【0131】
一方、スキュー補正の開始条件が満たされた場合、制御部162は、給送ローラ113の周速度を設定する(ステップS213)。制御部162は、第2スキューセンサ119が媒体を検出する前に第1スキューセンサ118が媒体を検出したときに、第1給送ローラ113aの周速度を第1速度V1に、第2給送ローラ113bの周速度を第1速度V1より高い第2速度V2に設定する。一方、制御部162は、第1スキューセンサ118が媒体を検出する前に第2スキューセンサ119が媒体を検出したときに、第2給送ローラ113bの周速度を第1速度V1に、第1給送ローラ113aの周速度を第2速度V2に設定する。制御部162は、第1速度V1に対する第2速度V2の速度比が上記した式(3)に示される速度比αとなるように、給送ローラ113の周速度を設定する。
【0132】
なお、
図7のステップS102で受付部161が給送ローラ113の周速度に関する設定を受け付けていた場合、制御部162は、各給送ローラ113の周速度を、受け付けた設定に従った第1速度V1及び第2速度V2に設定する。一方、受付部161が給送ローラ113の周速度に関する設定を受け付けていない場合、制御部162は、各給送ローラ113の周速度を予め定められた第1速度V1及び第2速度V2に設定する。
【0133】
次に、制御部162は、給送ローラ113の周速度の補正条件が満たされているか否かを判定する(ステップS214)。給送ローラ113の周速度の補正条件が満たされている場合、制御部162は、後述する処理において、給送ローラ113の周速度を補正する。
【0134】
例えば、制御部162は、ステップS205で取得したスリップ度合いに基づいて、補正条件が満たされているか否かを判定する。制御部162は、スリップ度合いがスリップ閾値より大きい場合、補正条件が満たされていると判定し、スリップ度合いがスリップ閾値以下である場合、補正条件が満たされていないと判定する。スリップ閾値は、例えば、速度比αを有するように各給送ローラ113の周速度を異ならせる事前の実験により、媒体のスキューが補正されたときのスリップ度合いと、媒体のスキューが補正されなかったときのスリップ度合いとの間の値に予め設定される。
【0135】
また、制御部162は、過去にスキュー補正が実行された媒体、特に直前にスキュー補正が実行された媒体について補正不足が発生した場合に、補正条件が満たされていると判定してもよい。
図12(B)に示したように、媒体M4の後端が分離センサ116、第1スキューセンサ118又は第2スキューセンサ119を通過した時点で媒体M4の傾きが解消していなかった場合、スキューの補正量が不十分であったと考えられる。
【0136】
また、制御部162は、過去にスキュー補正が実行された媒体、特に直前にスキュー補正が実行された媒体について補正過多が発生した場合に、補正条件が満たされていると判定してもよい。
図13に示したように、媒体M4の傾き方向が補正開始前の反対になっている場合、スキューの補正量が大きすぎたと考えられる。
【0137】
給送ローラ113の周速度の補正条件が満たされていない場合、制御部162は、特に処理を実行せずに、ステップS216へ処理を移行する。
【0138】
一方、給送ローラ113の周速度の補正条件が満たされている場合、制御部162は、第1給送ローラ113aの周速度及び第2給送ローラ113bの周速度を補正する(ステップS215)。制御部162は、後述する処理において、ステップS213で設定された周速度又はステップS215で補正された周速度で給送ローラ113を回転させることにより、媒体のスキューを補正する。
【0139】
例えば、スリップ度合いがスリップ閾値より大きかった場合、制御部162は、各給送ローラ113の周速度の速度比が、上記した式(3)に示される速度比αより大きくなるように各給送ローラ113の周速度を補正する。制御部162は、スリップ度合いが大きいほど、第1給送ローラ113aの周速度と第2給送ローラ113bの周速度との差が大きくなるように各給送ローラ113の周速度を補正してもよい。スリップ度合いが大きい場合、給送ローラ113からの給送力が媒体に伝達せず、スキューの補正度合いが小さくなる可能性がある。媒体搬送装置100は、スリップ度合いが大きい場合に、各給送ローラ113の周速度の差を大きくすることにより、媒体の傾きをより適切に補正できる。
【0140】
このように、制御部162は、スリップ度合いに基づいて、媒体のスキューを補正する際の第1給送ローラ113aの周速度及び第2給送ローラ113bの周速度を設定する。これにより、媒体搬送装置100は、媒体のスキューをより適切に補正できる。
【0141】
また、過去にスキュー補正が実行された媒体について補正不足が発生していた場合、制御部162は、各給送ローラ113の周速度の速度比を、補正不足が発生していた媒体について設定した速度比より大きくする。上記したように、補正不足が発生していた場合、その媒体のスキューの補正量は不十分であった可能性が高い。媒体搬送装置100は、過去にスキュー補正が実行された媒体について補正不足が発生していた場合に各給送ローラ113の周速度の差を大きくすることにより、今回搬送される媒体の傾きをより適切に補正できる。
【0142】
また、過去にスキュー補正が実行された媒体について補正過多が発生していた場合、制御部162は、各給送ローラ113の周速度の速度比を、補正過多が発生していた媒体について設定した速度比より小さくする。上記したように、補正過多が発生していた場合、その媒体のスキューの補正量は大きすぎた可能性が高い。媒体搬送装置100は、過去にスキュー補正が実行された媒体について補正不足が発生していた場合に各給送ローラ113の周速度の差を小さくすることにより、今回搬送される媒体の傾きをより適切に補正できる。
【0143】
このように、制御部162は、第1スキューセンサ118及び第2スキューセンサ119のそれぞれが、スキュー補正が実行された媒体の後端を検出したタイミングに基づいて、第1給送ローラ113a及び第2給送ローラ113bの周速度を補正する。これにより、媒体搬送装置100は、媒体搬送装置100の最新の状態に適した補正量で媒体のスキューを補正でき、その結果、媒体のスキューをより適切に補正できる。
【0144】
次に、制御部162は、各給送ローラ113を回転させるためのモータを、設定した速度に従って回転させることにより、媒体のスキュー補正を開始する(ステップS216)。このように、制御部162は、第1スキューセンサ118及び第2スキューセンサ119のうちの何れかのセンサが媒体を検出したときに、媒体のスキューの補正を開始する。
【0145】
特に、制御部162は、媒体のスキューが発生した場合に、給送ローラ113を用いて、媒体のスキューを補正する。制御部162は、媒体のスキューが発生した場合に、第1給送ローラ113aの周速度及び第2給送ローラ113bの周速度を相互に異ならせることによって媒体のスキューを補正する。即ち、制御部162は、複数の給送ローラ113のうちの一方の給送ローラの周速度を他方の給送ローラの周速度より高くすることにより、媒体のスキューを補正する。これにより、制御部162は、媒体のスキューを適切に補正することができる。
【0146】
図14は、媒体の傾きについて説明するためのグラフである。
【0147】
図14において、横軸はスキュー補正前の媒体の幅方向A4に対する傾き[deg]を示し、縦軸はスキュー補正後の媒体の幅方向A4に対する傾き[deg]を示す。グラフG1は、給送ローラ113、第1スキューセンサ118及び第2スキューセンサ119を上記したように配置し、且つ、各給送ローラ113の周速度の速度比を式(3)に示すαとしたときの媒体の傾きを示す。グラフG1に示すように、スキュー補正前の媒体の傾きが大きいほど、スキュー補正後の媒体の傾きも大きいが、スキュー補正後の媒体の傾きは、スキュー補正前の媒体の傾きに対して十分に小さくなる。
【0148】
このように、媒体搬送装置100は、幅方向A4において第1スキューセンサ118及び第2スキューセンサ119をスキュー補正による媒体の回転中心位置に配置することにより、各給送ローラ113の速度比を固定にしつつ媒体のスキューを適切に補正できる。したがって、媒体搬送装置100は、媒体の傾きに応じて各給送ローラ113の周速度を調整することなく、媒体のスキューを簡易且つ適切に補正でき、媒体のスキュー補正にかかる処理負荷を低減させることができる。
【0149】
図14に示すグラフG2は、スリップ度合いがある程度の大きさを有する給送ローラ113を用いて媒体のスキューを補正したときの媒体の傾きを示す。スリップ度合いがある程度の大きさを有する給送ローラ113を用いて媒体のスキューを補正した場合、各給送ローラ113により媒体が実際に移動する速度の速度比は、各給送ローラ113の周速度の速度比に対して小さくなる。したがって、グラフG2に示すように、スキュー補正後の媒体の傾きが十分に小さくならない可能性がある。媒体搬送装置100は、上記したように、スリップ度合いに基づいて、媒体のスキューを補正する際の各給送ローラ113の周速度を補正することにより、媒体の補正後の傾きがより0に近付くように、媒体のスキューを補正することができる。
【0150】
次に、制御部162は、状態情報を、媒体のスキューの補正の実行中であることを示す補正中状態に設定する(ステップS217)。
【0151】
次に、制御部162は、現在、媒体のスキューの補正の実行中であるか否かと、分離ローラ114が正転した後に逆転又は停止したか否かと、を判定する(ステップS218)。制御部162は、状態情報が補正中状態に設定されているか否かにより、現在、媒体のスキューの補正の実行中であるか否かを判定する。
【0152】
また、制御部162は、回転信号の信号値が示す回転方向により、分離ローラ114が正転(媒体給送方向に回転)しているか、逆転(媒体給送方向の反対方向A13に回転)又は停止しているかを判定する。制御部162は、さらに、受信した回転信号の信号値が示す移動距離、即ち分離ローラ114の外周面の移動距離が所定距離以上である場合に限り、分離ローラ114が逆転していると判定してもよい。その場合、制御部162は、回転信号の信号値が、分離ローラ114が逆転していることを示すときの移動距離の合計が所定距離以上である場合に限り、分離ローラ114が逆転していると判定する。これにより、制御部162は、わずかなスリップが発生した場合に、分離ローラ114が逆転していると誤って判定することを抑制できる。
【0153】
図15(A)~(C)は、先端が揃っていない状態で載置台103に載置された媒体の給送について説明するための模式図である。
図15(A)~(C)は、最も上側に配置された媒体M5の先端より、媒体M5の下側に配置された媒体M6の先端が下流側に位置するように、複数の媒体が載置台103に載置された例を示している。
【0154】
図15(A)は、媒体の給送開始直後の各ローラの状態を示す。
図15(A)に示すように、媒体の給送開始直後に、モータ141による駆動に従って、ピックローラ112及び給送ローラ113は、それぞれ媒体給送方向A11、A12に回転し、分離ローラ114は、媒体給送方向の反対方向A13に回転する。
図15(A)に示すように、複数の媒体が分離部に到達していない場合、分離ローラ114に設けられたトルクリミッタの働きにより、分離ローラ114は、給送ローラ113に従って媒体給送方向A13’に従動回転する。
【0155】
図15(B)は、下側に配置された媒体M6の先端が分離部を通過した状態を示す。
図15(B)に示すように、給送対象の媒体M5でなく、下側に配置された媒体M6が給送ローラ113と当接することにより、媒体M6が給送ローラ113により下流側に給送される。この場合も、分離ローラ114に設けられたトルクリミッタの働きにより、モータ141からの駆動力は絶たれ、分離ローラ114は、モータ141からの駆動力に従って回転することなく、給送ローラ113に従って媒体給送方向A13’に従動回転する。
【0156】
図15(C)は、
図15(B)に示す状態から媒体の給送が継続された状態を示す。
図15(C)に示すように、下側に配置された媒体M6が先行して分離部を通過した場合、その後、上側に配置された媒体M5(及び媒体M5と媒体M6の間に配置された媒体)が、ピックローラ112及び給送ローラ113によって給送され、分離部を通過する。上側に配置された媒体M5が分離部を通過すると、給送ローラ113と分離ローラ114の間に複数の媒体が存在し、モータ141からの駆動力が分離ローラ114に伝達され、分離ローラ114は、逆転(媒体給送方向の反対方向A13に回転)又は停止する。これにより、分離ローラ114と接触している媒体M6が上流側に押し戻される。
【0157】
このように、分離ローラ114が正転した後に逆転又は停止する場合、先端が揃っていない状態で媒体が載置台103に載置され、複数の媒体が一時的に分離ローラ114より下流側に搬送されている可能性が高い。一時的に分離ローラ114より下流側に搬送された媒体の先端が分離センサ116、ピックセンサ117、第1スキューセンサ118又は第2スキューセンサ119によって検出されると、媒体のスキュー状態が誤って判定される可能性がある。
【0158】
現在、媒体のスキューの補正の実行中でない場合、又は、分離ローラ114が正転した後に逆転もしくは停止していない場合、制御部162は、特に処理を実行せずに、ステップS221へ処理を移行する。
【0159】
一方、現在、媒体のスキューの補正の実行中あり、且つ、分離ローラ114が正転した後に逆転もしくは停止している場合、制御部162は、媒体のスキューの逆補正を開始する(ステップS219)。制御部162は、幅方向A4において、媒体に対して、ステップS216で開始したスキュー補正の反対方向の力が加わるように、逆補正を実行する。例えば、制御部162は、第1給送ローラ113aに設定した周速度を第2給送ローラ113bの周速度として設定し、第2給送ローラ113bに設定した周速度を第1給送ローラ113aの周速度として設定する。そして、制御部162は、ステップS216でスキュー補正を開始してから現在までの経過時間と同じ時間だけ、各給送ローラ113を、設定した各速度で回転させる。
【0160】
このように、制御部162は、複数の給送ローラ113のうちの一方の給送ローラ113の周速度を他方の給送ローラ113の周速度より高くすることにより、媒体のスキューを補正する。制御部162は、媒体のスキューの補正中に、回転センサ115が分離ローラ114の正転を検出した後に分離ローラ114の逆転又は停止を検出した場合、その一方の給送ローラ113の周速度を他方の給送ローラ113の周速度より低くする。これにより、媒体搬送装置100は、媒体のスキューを誤って検出して、媒体を誤った方向に回転させてしまった場合に、媒体の方向を戻すことができる。したがって、媒体搬送装置100は、媒体を適切でない方向に回転させて、媒体のジャムを発生させることを抑制できる。
【0161】
次に、制御部162は、状態情報を、媒体のスキューの逆補正の実行中であることを示す逆補正中状態に設定する(ステップS220)。
【0162】
次に、制御部162は、媒体のスキュー補正の完了条件又は停止条件が満たされたか否かを判定する(ステップS221)。媒体のスキュー補正の完了条件又は停止条件が満たされた場合、制御部162は、後述する処理において、媒体のスキューの補正を停止する。
【0163】
制御部162は、第1スキューセンサ118及び第2スキューセンサ119のうち、ステップS202で媒体の先端を検出していなかった方のセンサが媒体の先端を検出した場合、媒体のスキュー補正の完了条件が満たされたと判定する。上記したように、媒体は、スキュー補正により、第1スキューセンサ118及び第2スキューセンサ119のうち、媒体の先端を検出した方のセンサの位置を中心に回転する。したがって、媒体搬送装置100は、媒体の先端を検出していなかった方のセンサが媒体の先端を検出したときにスキュー補正を停止することにより、媒体の先端を幅方向A4に合わせることができ、媒体のスキューを良好に解消できる。
【0164】
媒体搬送方向A2においてピックセンサ117が第1スキューセンサ118及び第2スキューセンサ119と同一位置に配置されている場合、制御部162は、ピックセンサ117による媒体の検出結果に基づいて、媒体のスキュー補正を停止してもよい。例えば、制御部162は、ピックセンサ117が媒体の先端を検出した時に媒体のスキュー補正の完了条件が満たされたと判定する。
【0165】
制御部162は、媒体の先端を検出していなかった方のスキューセンサ、又は、ピックセンサ117が媒体の先端を検出してから第5時間が経過した時に媒体のスキュー補正の完了条件が満たされたと判定してもよい。第5時間は、所定時間の一例である。第5時間は、事前の実験により、各センサが媒体の先端を検出してから、媒体の傾きが0になる(媒体の先端が幅方向A4と平行になる)までに要する時間の平均値等に設定される。
【0166】
このように、制御部162は、媒体の先端を検出していなかった方のスキューセンサ、又は、ピックセンサ117が媒体の先端を検出してから第5時間が経過した時に媒体のスキューの補正を停止する。これにより、媒体搬送装置100は、媒体のスキューをより適切に補正できる。
【0167】
第5時間は、ステップS205で取得されたスリップ度合いに基づいて設定されてもよい。例えば、第5時間は、スリップ度合いが大きいほど長くなり、スリップ度合いが小さいほど短くなるように設定される。スリップ度合いが大きい場合、媒体はスキュー補正時にスリップしながら回転し、媒体の回転中心位置はスキューセンサ(又はピックセンサ117)の配置位置より下流側にずれる。媒体搬送装置100は、スリップ度合いに基づいて、媒体のスキューの補正を停止することにより、給送ローラ113による媒体のスリップを考慮して、媒体のスキューを適切に補正することができる。
【0168】
図14に示すグラフG3は、グラフG2に示す特性を有する給送ローラ113を用いて媒体のスキューを補正する際に、ピックセンサ117が媒体の先端を検出してから第5時間が経過した時に媒体のスキュー補正を停止させた場合の媒体の傾きを示す。グラフG3に示すように、媒体のスリップを考慮してスキューを補正する時間を長くすることにより、スキュー補正後の媒体の傾きをより小さくすることができる。
【0169】
また、制御部162は、現在媒体のスキューの逆補正の実行中であり、且つ、媒体のスキューの逆補正を実行した時間が媒体のスキューの補正を実行した時間以上となった場合に、媒体のスキュー補正の停止条件が満たされたと判定する。制御部162は、媒体のスキューを誤って検出して、媒体を誤った方向に回転させてしまった時間と同じ時間だけ、媒体を逆方向に回転させることにより、媒体の方向を戻すことができる。
【0170】
このように、制御部162は、回転センサ115が分離ローラ114の正転を検出した後に分離ローラ114の逆転又は停止を検出した場合、媒体のスキューの補正を停止する。これにより、媒体搬送装置100は、先端が揃っていない状態で媒体が載置台103に載置され、複数の媒体が一時的に分離ローラ114より下流側に搬送された場合に、媒体を誤った方向に回転させてしまうことを抑制できる。利用者は、複数の媒体を載置台103にまとめてセットする際に、媒体をていねいに整列させる必要がなくなり、媒体搬送装置100は、利用者の利便性を向上させることができる。
【0171】
また、制御部162は、第1スキューセンサ118及び第2スキューセンサ119のうち、ステップS202で媒体の先端を検出していたセンサが媒体の先端を検出しなくなった場合、媒体のスキュー補正の停止条件が満たされたと判定する。制御部162は、スキュー信号の信号値が、媒体が存在しないことを示す値から存在することを示す値に変化した後に、媒体が存在しないことを示す値にさらに変化した時に、媒体の先端が、対応するスキューセンサより上流側に戻ったと判定する。そして、制御部162は、そのスキューセンサが媒体の先端を検出しなくなったと判定する。
【0172】
図16(A)は、上流側に戻る媒体M4について説明するための模式図である。
【0173】
図16(A)に示す例では、
図12(A)に示した、第1スキューセンサ118により検出された媒体M4の先端が、第1スキューセンサ118より上流側に戻り、第1スキューセンサ118により検出されなくなっている。この場合、媒体M4は、給送対象の媒体ではなく、給送対象の媒体M7より先に分離ローラ114より下流側に移動し、その後、給送対象の媒体M7が分離ローラ114を通過したことにより、分離ローラ114の分離力により上流側に戻された可能性が高い。
【0174】
制御部162は、第1スキューセンサ118及び第2スキューセンサ119のうち、媒体の先端を検出していたセンサが媒体の先端を検出しなくなった場合、媒体のスキューの補正を停止する。これにより、媒体搬送装置100は、給送対象の媒体M7を誤った方向に回転させてしまうことを抑制できる。
【0175】
制御部162は、第1スキューセンサ118及び第2スキューセンサ119のうち、媒体の先端を検出していたセンサが、第6時間連続して媒体の先端を検出しなくなった場合に、媒体のスキュー補正の停止条件が満たされたと判定し、媒体のスキューの補正を停止してもよい。第6時間は、媒体が一般的なパンチ穴のサイズ分だけ移動するのに要する時間に設定される。給送される媒体にはパンチ穴等が形成されている可能性がある。制御部162は、媒体のスキュー補正の停止条件が満たされたと判定するまでに猶予時間を設けることにより、媒体に形成されたパンチ穴がスキューセンサの位置を通過した場合に、媒体のスキュー補正を誤って停止することを抑制できる。
【0176】
また、制御部162は、第1スキューセンサ118及び第2スキューセンサ119のうち、ステップS202で媒体の先端を検出していたセンサが媒体の先端を検出しなくなり且つステップS202で媒体の先端を検出していなかったセンサが媒体の先端を検出した場合に、媒体のスキュー補正の停止条件が満たされたと判定してもよい。また、制御部162は、第1スキューセンサ118及び第2スキューセンサ119のうち、ステップS202で媒体の先端を検出していたセンサが媒体の先端を検出しなくなり且つピックセンサ117が媒体の先端を検出した場合に、媒体のスキュー補正の停止条件が満たされたと判定してもよい。これらの場合、制御部162は、第6時間の経過を待たずに、即時で媒体のスキュー補正の停止条件が満たされたと判定してもよい。
【0177】
図16(B)は、逆方向に傾く媒体M4について説明するための模式図である。
【0178】
図16(B)に示す例では、
図12(A)に示した、第1スキューセンサ118により検出された媒体M4が、第1スキューセンサ118により検出されなくなり且つ第2スキューセンサ119及びピックセンサ117により検出されている。この場合、媒体M4は、スキューの補正過多により逆方向に傾いている可能性が高い。媒体搬送装置100は、媒体の先端を検出していた方のスキューセンサが媒体を検出しなくなり且つ他方のスキューセンサ又はピックセンサ117が媒体を検出した場合、媒体のスキューの補正を停止することにより、スキューの補正過多の発生を抑制できる。
【0179】
また、制御部162は、ピックセンサ117が媒体の先端を検出しておらず且つ第1スキューセンサ118及び第2スキューセンサ119の両方が媒体の先端を検出した場合、媒体のスキュー補正の停止条件が満たされたと判定し、媒体のスキューの補正を停止してもよい。
【0180】
図17は、ピックセンサ117により検出されず且つ第1スキューセンサ118及び第2スキューセンサ119の両方により検出される媒体M8及びM9について説明するための模式図である。
【0181】
図17に示す例では、媒体M8及び媒体M9が、先端が揃っていない状態で載置台103に載置されている。媒体M8において先端の左側部分が給送ローラ113より下流側に進入してしまい、第1スキューセンサ118により検出され、媒体M9において先端の右側部分が給送ローラ113より下流側に進入してしまい、第2スキューセンサ119により検出されている。このように、ピックセンサ117により検出されず且つ第1スキューセンサ118及び第2スキューセンサ119の両方により検出された媒体は、載置台103に揃えられずに載置された別個の媒体である可能性が高い。媒体搬送装置100は、ピックセンサ117が媒体の先端を検出しておらず且つ第1スキューセンサ118及び第2スキューセンサ119の両方が媒体の先端を検出した場合、媒体のスキューの補正を停止することにより、誤った方向へのスキュー補正を抑制できる。
【0182】
また、制御部162は、媒体のスキューの補正を開始してから第7時間が経過するまでにピックセンサ117が媒体を検出しない場合、媒体のスキュー補正の停止条件が満たされたと判定し、媒体のスキューの補正を停止してもよい。第7時間は、所定時間の一例である。第7時間は、例えば、事前の実験により、媒体のジャムが発生していない場合に、媒体のスキューの補正を開始してからピックセンサ117が媒体を検出するまでにかかった時間の最大値等に設定される。制御部162は、媒体のスキューの補正を開始してから第7時間が経過するまでにピックセンサ117が媒体を検出しない場合、媒体のジャムが発生した又は媒体のジャムが発生する可能性が高いとみなして、媒体のスキュー補正を停止する。これにより、媒体搬送装置100は、ジャム状態の媒体に負荷を与えてしまい、媒体の損傷が発生することを抑制できる。
【0183】
スキュー補正の完了条件及び停止条件の何れも満たされていない場合、制御部162は、特に処理を実行せずに、ステップS228へ処理を移行する。
【0184】
一方、スキュー補正の完了条件又は停止条件が満たされている場合、制御部162は、ピックローラ112、給送ローラ113、分離ローラ114及び/又は第1~第6搬送ローラ120a~fを一旦停止させるようにモータ141を制御する(ステップS222)。
【0185】
次に、制御部162は、ステップS209で増大させた、分離ローラ114を給送ローラ113側に押圧する押圧力を基準値に戻すようにモータ141を制御する(ステップS223)。これにより、媒体搬送装置100は、媒体のスキューを補正していない場合に、給送された媒体と給送ローラ113との間に発生する摩擦力を適切な値に設定して、媒体を良好に給送することができる。
【0186】
次に、制御部162は、ピックローラ112を第2位置から第1位置に移動させるようにモータ141を制御する(ステップS224)。このように、制御部162は、媒体のスキューの補正を停止する場合、ピックローラ112を第2位置から第1位置に移動させるように、ピックローラ112を支持するアーム131、付勢部材131c及びモータ141を制御する。これにより、ピックローラ112は、載置台103に載置された媒体に当接して、媒体を適切に給送及び搬送することができる。
【0187】
次に、制御部162は、状態情報を、媒体のスキューの補正を終了できるまで待機していることを示す終了待機状態に設定する(ステップS225)。
【0188】
次に、制御部162は、ステップS221においてスキュー補正の停止条件が満たされたか否かを判定する(ステップS226)。停止条件が満たされていない場合、制御部162は、特に処理を実行せずに、ステップS228へ処理を移行する。
【0189】
一方、停止条件が満たされている場合、制御部162は、媒体のスキュー補正を停止(中止)させる旨を、表示装置106に表示し又はインタフェース装置142を介して情報処理装置に送信することにより利用者に通知する(ステップS227)。制御部162は、さらに、媒体のスキュー補正を停止(中止)させる理由を利用者に通知してもよい。
【0190】
次に、制御部162は、スキュー補正の終了条件が満たされたか否かを判定する(ステップS228)。スキュー補正の終了条件が満たされた場合、制御部162は、後述する処理において、媒体のスキューの補正を停止し、媒体の搬送を再開始する。
【0191】
制御部162は、状態情報が終了待機状態に設定されから第8時間が経過した場合に、スキュー補正の終了条件が満たされたと判定する。即ち、制御部162は、分離ローラ114を給送ローラ113側に押圧する押圧力を戻すようにモータ141の制御を開始してから第8時間が経過した場合に、スキュー補正の終了条件が満たされたと判定する。また、制御部162は、ピックローラ112を第1位置に移動させるように移動機構の制御を開始してから第8時間が経過した場合に、スキュー補正の終了条件が満たされたと判定する。第8時間は、第2所定時間の一例である。第8時間は、モータ141の制御を開始してから、分離ローラ114の押圧力が切り替わるまで、又は、ピックローラ112が実際に第1位置に移動するまでにかかる時間に設定される。一方、制御部162は、状態情報が終了待機状態以外の状態に設定されている場合、又は、状態情報が終了待機状態に設定されから第8時間が経過していない場合、スキュー補正の終了条件が満たされていないと判定する。
【0192】
このように、制御部162は、分離ローラ114を給送ローラ113側に押圧する押圧力を戻すようにモータ141の制御を開始してから第8時間経過後に、媒体のスキューの補正を停止する。これにより、媒体搬送装置100は、分離ローラ114を給送ローラ113側に押圧する押圧力を確実に戻した状態で媒体の搬送を再開できるため、媒体をより適切に搬送することができる。また、制御部162は、媒体のスキューの補正が完了した場合、ピックローラ112を第2位置から第1位置に移動させるように移動機構を制御する。また、制御部162は、ピックローラ112を第2位置から第1位置に移動させるように移動機構の制御を開始してから第8時間が経過するまで、媒体の搬送を停止させる。ピックローラ112が媒体に当接する前に媒体の搬送及び給送を開始させると、媒体のスキューが発生する可能性が高い。媒体搬送装置100は、ピックローラ112が媒体に確実に当接するまで媒体の搬送を停止させることにより、媒体のスキューの発生を抑制できる。
【0193】
スキュー補正の終了条件が満たされていない場合、制御部162は、特に処理を実行せずに、ステップS231へ処理を移行する。
【0194】
一方、スキュー補正の終了条件が満たされた場合、制御部162は、第1給送ローラ113aの周速度及び第2給送ローラ113bの周速度を、相互に同一である基準速度に戻すことにより、媒体のスキューの補正を停止する(ステップS229)。
【0195】
次に、制御部162は、モータ141を駆動して、ピックローラ112、給送ローラ113、分離ローラ114及び/又は第1~第6搬送ローラ120a~fを再回転させる(ステップS230)。
【0196】
次に、制御部162は、現在搬送中の媒体についてスキュー補正を実行したか否かを判定する(ステップS231)。現在搬送中の媒体についてスキュー補正を実行していない場合、制御部162は、特に処理を実行せずに、ステップS234へ処理を移行する。
【0197】
一方、現在搬送中の媒体についてスキュー補正を実行した場合、制御部162は、媒体のスキュー補正の補正不足が発生したか否かを判定する(ステップS232)。上記したように、制御部162は、例えば、分離センサ116が媒体の後端を検出する前に、第1スキューセンサ118及び第2スキューセンサ119のうち、先に媒体の先端を検出したセンサが媒体の後端を検出した場合、補正不足が発生したと判定する。
【0198】
制御部162は、第1スキュー信号の信号値が、媒体が存在することを示す値から存在しないことを示す値に変化した時に、媒体の後端が第1スキューセンサ118の位置を通過し、第1スキューセンサ118が媒体の後端を検出したと判定する。制御部162は、第2スキュー信号の信号値が、媒体が存在することを示す値から存在しないことを示す値に変化した時に、媒体の後端が第2スキューセンサ119の位置を通過し、第2スキューセンサ119が媒体の後端を検出したと判定する。制御部162は、分離信号の信号値が、媒体が存在することを示す値から存在しないことを示す値に変化した時に、媒体の後端が分離センサ116の位置を通過し、分離センサ116が媒体の後端を検出したと判定する。制御部162は、補正不足が発生したと判定した場合、補正不足が発生した旨を記憶装置150に記憶する。
【0199】
次に、制御部162は、媒体のスキュー補正の補正過多が発生したか否かを判定する(ステップS233)。上記したように、制御部162は、例えば第1スキューセンサ118及び第2スキューセンサ119が媒体の後端を検出した順序が媒体の先端を検出した順序から変化した場合、補正過多が発生したと判定する。制御部162は、補正過多が発生したと判定した場合、補正過多が発生した旨を記憶装置150に記憶する。
【0200】
次に、制御部162は、スキュー補正異常が発生したか否かを判定する(ステップS234)。例えば、制御部162は、媒体のスキュー補正を開始してから予め定められた時間内に媒体のスキュー補正の完了条件及び停止条件の何れも満たされない場合、スキュー補正異常が発生したと判定する。スキュー補正異常が発生していない場合、制御部162は、ステップS201へ処理を戻し、ステップS201以降の処理を繰り返す。
【0201】
一方、スキュー補正異常が発生した場合、制御部162は、異常処理を実行する(ステップS235)。制御部162は、異常処理として、ピックローラ112、給送ローラ113、分離ローラ114及び/又は第1~第6搬送ローラ120a~fを停止させるようにモータ141を制御する。また、制御部162は、異常処理として、スキュー補正異常が発生した旨を、表示装置106に表示し又はインタフェース装置142を介して情報処理装置に送信することにより利用者に通知する。これにより、媒体搬送装置100は、媒体のジャムの発生及び損傷の発生を抑制できる。次に、制御部162は、ステップS201へ処理を戻し、以後、ステップS201以降の処理を繰り返す。
【0202】
なお、
図7のステップS101~S102の処理は省略されてもよい。その場合、制御部162は、
図9のステップS213において、給送ローラ113の周速度を予め定められた第1速度V1及び第2速度V2に設定する。
【0203】
また、
図7のステップS108の処理及び
図8のステップS205の処理は省略されてもよい。その場合、制御部162は、
図8のステップS206において、スリップ度合いに基づいてスキュー補正の禁止条件が満たされたか否かを判定しない。また、制御部162は、
図9のステップS214において、スリップ度合いに基づいて給送ローラ113の周速度の補正条件が満たされたか否かを判定せず、ステップS215において、スリップ度合いに基づいて給送ローラ113の周速度を補正しない。また、制御部162は、
図10のステップS221において、スリップ度合いに基づいて媒体のスキュー補正の停止条件が満たされたか否かを判定しない。
【0204】
また、
図8のステップS202~S204の処理は省略されてもよい。その場合、制御部162は、媒体のスキューが発生しているか否かを判定することなく、媒体の先端が第1スキューセンサ118及び第2スキューセンサ119の何れか一方を通過した時に媒体のスキュー補正を開始する。
【0205】
また、
図8のステップS206及びS207の処理は省略されてもよい。また、
図8のステップS206において、制御部162は、ステップS218の処理と同様に、分離ローラ114が正転した後に逆転又は停止した場合に、スキュー補正の禁止条件が満たされたと判定してもよい。
【0206】
また、
図8のステップS209及び/又は
図10のステップS223の処理は省略されてもよい。また、制御部162は、
図10のステップS223の処理の代わりに、自動トルク制御により、分離ローラ114を給送ローラ113側に押圧する押圧力を戻してもよい。また、
図8のステップS210及び
図10のS224の処理は省略されてもよい。また、制御部162は、
図9のステップS212において、分離ローラ114を給送ローラ113側に押圧する押圧力を増大させるようにモータ141の制御を開始した直後に、スキュー補正の開始条件が満たされたと判定してもよい。また、制御部162は、
図9のステップS212において、ピックローラ112を第2位置に移動させるように移動機構の制御を開始した直後に、スキュー補正の開始条件が満たされたと判定してもよい。同様に、制御部162は、
図10のステップS228において、分離ローラ114を給送ローラ113側に押圧する押圧力を戻すようにモータ141の制御を開始した直後に、スキュー補正の終了条件が満たされたと判定してもよい。同様に、制御部162は、
図10のステップS228において、ピックローラ112を第1位置に移動させるように移動機構の制御を開始した直後に、スキュー補正の終了条件が満たされたと判定してもよい。
【0207】
また、
図9のステップS214~S215の処理は省略されてもよい。
【0208】
また、
図9のステップS218~S220の処理は省略されてもよい。その場合、制御部162は、
図10のステップS221において、分離ローラ114が正転した後に逆転又は停止した直後に、スキュー補正の停止条件が満たされたと判定してもよい。また、制御部162は、ステップS218で分離ローラ114が正転した後に逆転又は停止したことにより媒体のスキュー補正の停止条件が満たされたと判定した場合、スキュー補正を停止した後に、媒体のスキューを再判定してもよい。その場合、制御部162は、ステップS229でスキュー補正を停止した後に、状態情報を未開始状態に設定(初期化)する。これにより、媒体のスキューが改めて補正され、媒体搬送装置100は、媒体のスキューを適切に補正できる可能性を高めることができる。
【0209】
また、制御部162は、
図10のステップS221において、媒体のスキュー補正の停止条件が満たされたか否かを判定しなくてもよい。また、制御部162は、ステップS221で媒体の先端を検出していたスキューセンサが媒体の先端を検出しなくなったことにより媒体のスキュー補正の停止条件が満たされたと判定した場合、スキュー補正を停止した後に、媒体のスキューを再判定してもよい。その場合、制御部162は、ステップS229でスキュー補正を停止した後に、状態情報を未開始状態に設定(初期化)する。これにより、媒体のスキューが改めて補正され、媒体搬送装置100は、媒体のスキューを適切に補正できる可能性を高めることができる。
【0210】
また、
図10のステップS222及びS230の処理は省略されてもよい。
【0211】
また、
図10のステップS226及びS227の処理は省略されてもよい。
【0212】
また、
図10のステップS232の処理は省略されてもよい。その場合、制御部162は、ステップS206において、補正不足に基づいてスキュー補正の禁止条件が満たされたか否かを判定せず、ステップS214において、補正不足に基づいて給送ローラ113の周速度の補正条件が満たされているか否かを判定しない。同様に、
図10のステップS233の処理は省略されてもよい。その場合、制御部162は、ステップS206において、補正過多に基づいてスキュー補正の禁止条件が満たされたか否かを判定せず、ステップS214において、補正過多に基づいて給送ローラ113の周速度の補正条件が満たされているか否かを判定しない。
【0213】
また、スキュー補正の禁止条件、給送ローラ113の周速度の補正条件、媒体のスキュー補正の完了条件又は停止条件には、それぞれ上記した全ての条件が含まれていなくてもよく、少なくとも一つの条件が含まれていればよい。
【0214】
以上詳述したように、媒体搬送装置100は、媒体のスキュー補正を開始させるためのスキューセンサの幅方向A4の位置をスキュー補正中の媒体の回転中心位置と一致させるように、各給送ローラ113のスキュー補正時の速度比に基づいて設定する。これにより、媒体搬送装置100は、媒体のスキュー発生時に、媒体の傾きによらず、予め定められた速度で各給送ローラ113を回転させることで、媒体のスキューを適切に補正することができる。したがって、媒体搬送装置100は、媒体の傾き量を算出することなく、媒体のスキューをより簡易且つ適切に補正することが可能となった。これにより、媒体搬送装置100は、媒体読取処理の処理時間及び処理負荷の低減、並びに、消費電力の低減を図ることが可能となった。
【0215】
また、媒体搬送装置100は、媒体の傾き量を算出する必要がないため、媒体の先端が第1スキューセンサ118及び第2スキューセンサ119の両方を通過する前に媒体のスキュー補正を開始することができる。これにより、媒体搬送装置100は、傾いた媒体の先端が第1スキューセンサ118及び第2スキューセンサ119より下流側に配置された搬送ローラと当接する前に媒体のスキューを補正できるため、媒体のスキューを良好に補正できる。また、媒体搬送装置100は、各搬送ローラを媒体搬送方向A2において各給送ローラ113から十分に離間して配置する必要がないため、小さいサイズの媒体の搬送をサポートできるとともに、装置サイズの低減を図ることができる。
【0216】
図18は、他の実施形態に係る媒体搬送装置の処理回路260の概略構成を示す図である。
【0217】
処理回路260は、媒体搬送装置100の処理回路160の代わりに使用され、処理回路160の代わりに、媒体読取処理及びスキュー判定処理等を実行する。処理回路260は、受付回路261、制御回路262、取得回路263及び判定回路264等を有する。なお、これらの各部は、それぞれ独立した集積回路、マイクロプロセッサ、ファームウェア等で構成されてもよい。
【0218】
受付回路261は、受付部の一例であり、受付部161と同様の機能を有する。受付回路261は、操作装置105又はインタフェース装置142から設定信号を受信し、受信した設定信号で指定された設定を受け付けて、記憶装置150に記憶する。
【0219】
制御回路262は、制御部の一例であり、制御部162と同様の機能を有する。制御回路262は、操作装置105又はインタフェース装置142から操作信号を受信する。また、制御回路262は、載置台センサ111、回転センサ115、分離センサ116、ピックセンサ117及びフィードセンサ122からそれぞれ、載置台信号、回転信号、分離信号、ピック信号、フィード信号を受信する。また、制御回路262は、記憶装置150からスリップ度合い及びスキューの判定結果を読み出す。制御回路262は、受信した各信号及び/又は読み出した各情報に基づいてモータ141を制御し、撮像装置123から入力画像を取得し、インタフェース装置142に出力する。
【0220】
取得回路263は、取得部の一例であり、取得部163と同様の機能を有する。取得回路263は、分離センサ116及びピックセンサ117からそれぞれ分離信号及びピック信号を受信し、受信した各信号に基づいてスリップ度合いを算出する。または、取得回路263は、記憶装置150からスリップ度合いを読み出す。取得回路263は、算出した又は読み出したスリップ度合いを記憶装置150に記憶する。
【0221】
判定回路264は、判定部の一例であり、判定部164と同様の機能を有する。判定回路264は、第1スキューセンサ118及び第2スキューセンサ119からそれぞれ第1スキュー信号及び第2スキュー信号を受信する。判定回路264は、受信した各信号に基づいて媒体のスキューが発生したか否かを判定し、判定結果を記憶装置150に記憶する。
【0222】
以上詳述したように、媒体搬送装置は、処理回路260を用いる場合においても、媒体のスキューをより簡易且つ適切に補正することが可能となった。
【0223】
以上、好適な実施形態について説明してきたが、実施形態はこれらに限定されない。例えば、幅方向A4において、第1スキューセンサ118及び/又は第2スキューセンサ119は、媒体の回転中心位置と異なる位置に配置されてもよい。また、幅方向A4において、第1スキューセンサ118及び/又は第2スキューセンサ119は、媒体搬送装置100の未使用時(製品出荷時)のスリップ度合いに基づいて回転中心位置の外側又は内側にずらした位置に配置されてもよい。また、媒体搬送方向A2において、第1スキューセンサ118及び/又は第2スキューセンサ119は、上記した式(4)を満たす距離Aより上流側の位置に配置されてもよい。
【0224】
また、媒体搬送装置は、給送ローラ113の代わりに、第1~第6搬送ローラ120a~fのうちの何れかの搬送ローラを用いて媒体のスキューを補正してもよい。その場合、媒体のスキューを補正するための搬送ローラは、幅方向A4に間隔を空けて配置され、それぞれ独立に回転して媒体を搬送する複数のローラを含む。また、媒体のスキューを補正するための搬送ローラの下流側には、分離センサ116、ピックセンサ117、第1スキューセンサ118及び第2スキューセンサ119と同様の各センサが配置される。各センサは、各センサと各搬送ローラの位置関係が、分離センサ116、ピックセンサ117、第1スキューセンサ118及び第2スキューセンサ119と各給送ローラ113の位置関係と同じになるように配置される。各搬送ローラ又は各搬送ローラと対向する従動ローラには、分離ローラ114に押圧力を付与する付与機構と同様の付与機構が設けられる。制御部162は、各センサからの出力信号に基づいて媒体のスキューが発生したか否かを判定し、媒体のスキューが発生した場合に、各搬送ローラの周速度を相互に異ならせることによって媒体のスキューを補正する。また、制御部162は、各センサからの出力信号に基づいて、上記した各処理に従って、給送ローラ113の代わりに、媒体のスキューを補正するための搬送ローラを制御する。
【0225】
また、媒体搬送装置は、媒体の重送を検出するために、回転センサ115の代わりに、他のセンサを利用してもよい。媒体搬送装置は、例えば、光学センサを用いて、媒体の重送を検出する。その場合、給送される媒体において幅方向A4から見て給送ローラ113と分離ローラ114のニップ部N1と重なる領域を下方から撮像するように光学センサが配置される。光学センサは、媒体の搬送路に対して同じ側に設けられた発光器及び受光器を有し、媒体搬送方向A2及び幅方向A4における媒体の移動を検出する。発光器は、LED等であり、搬送路に向けて光を放射する。受光器は、一定期間毎に受光した光に応じた画像を撮像し、最新の画像と直前の画像とから共通部分を検出する。受光器は、検出した共通部分の画像内の位置の変化に基づいて、搬送された媒体の移動方向及び移動速度を算出し、算出した移動方向及び移動速度を示す移動信号を生成して出力する。一定期間は、例えば、モータ141の100動作パルス分に相当する期間である。ステップS218において、制御部162は、光学センサから移動信号を受信し、受信した移動信号の信号値に基づいて、媒体の移動方向を特定する。制御部162は、特定した移動方向に基づいて分離ローラ114が正転しているか逆転しているか停止しているかを判定する。
【0226】
また、媒体搬送装置は、いわゆるストレートパスを有し、載置台に載置された媒体を下側から順に給送及び搬送してもよい。その場合、給送ローラは、分離ローラの下方に、分離ローラに対向して配置される。
【0227】
上述した実施の形態に関し、さらに以下の付記を開示する。
【0228】
(付記1)
媒体搬送方向と直交する方向に間隔を空けて配置され、それぞれ独立に回転して媒体を搬送する第1ローラ及び第2ローラと、
媒体のスキューが発生したか否かを判定する判定部と、
媒体のスキューが発生した場合に、前記第1ローラの周速度及び前記第2ローラの周速度を相互に異ならせることによって媒体のスキューを補正する制御部と、
媒体のスキューを補正する際の前記第1ローラの周速度又は前記第2ローラの周速度に関する設定を、利用者から受け付ける受付部と、
を有することを特徴とする媒体搬送装置。
【0229】
(付記2)
媒体を搬送するローラと、
媒体搬送方向と直交する方向に間隔を空けて配置され、それぞれ媒体を検出する第1センサ及び第2センサと、
媒体搬送方向において前記第1センサ及び前記第2センサより上流側に且つ媒体搬送方向と直交する方向において前記第1センサと前記第2センサの間に配置され、媒体を検出するピックセンサと、
前記第1センサ又は前記第2センサによる検出結果に基づいて、媒体のスキューが発生したか否かを判定する判定部と、
媒体のスキューが発生した場合に、媒体のスキューを補正する制御部と、を有し、
前記制御部は、前記第1センサ及び前記第2センサより前に前記ピックセンサが媒体を検出した場合、媒体のスキューを補正しない、
ことを特徴とする媒体搬送装置。
【0230】
(付記3)
媒体を搬送するローラと、
媒体搬送方向と直交する方向に間隔を空けて配置され、それぞれ媒体を検出する第1センサ及び第2センサと、
媒体搬送方向において前記第1センサ及び前記第2センサより上流側に且つ媒体搬送方向と直交する方向において前記第1センサと前記第2センサの間に配置され、媒体を検出する分離センサと、
前記第1センサ又は前記第2センサによる検出結果に基づいて、媒体のスキューが発生したか否かを判定する判定部と、
媒体のスキューが発生した場合に、媒体のスキューを補正する制御部と、を有し、
前記制御部は、前記分離センサより前に前記第1センサ又は前記第2センサが媒体を検出した場合、媒体のスキューを補正しない、
ことを特徴とする媒体搬送装置。
【0231】
(付記4)
媒体を給送する給送ローラと、
前記給送ローラに対向して配置される分離ローラと、
前記分離ローラの回転を検出する回転センサと、
媒体搬送方向と直交する方向に間隔を空けて配置され、それぞれ媒体を検出する複数のスキューセンサと、
前記複数のスキューセンサの出力信号に基づいて、媒体のスキューが発生したか否かを判定する判定部と、
媒体のスキューが発生した場合に、媒体のスキューを補正する制御部と、を有し、
前記制御部は、前記回転センサが前記分離ローラの正転を検出した後に前記分離ローラの逆転又は停止を検出した場合、媒体のスキューの補正を停止する、
ことを特徴とする媒体搬送装置。
【0232】
(付記5)
前記給送ローラは、複数設けられ、
前記制御部は、
前記複数の給送ローラのうちの一方の給送ローラの周速度を他方の給送ローラの周速度より高くすることにより、媒体のスキューを補正し、
媒体のスキューの補正中に、前記回転センサが前記分離ローラの正転を検出した後に前記分離ローラの逆転又は停止を検出した場合、前記一方の給送ローラの周速度を前記他方の給送ローラの周速度より低くする、付記4に記載の媒体搬送装置。
【0233】
(付記6)
媒体を給送する給送ローラと、
前記給送ローラに対向して配置される分離ローラと、
前記分離ローラを前記給送ローラ側に押圧する押圧力を前記分離ローラに付与する付与機構と、
媒体のスキューが発生したか否かを判定する判定部と、
媒体のスキューが発生した場合に、前記給送ローラを用いて媒体のスキューを補正する制御部と、を有し、
前記制御部は、媒体のスキューを補正しているときと、媒体のスキューを補正していないときとで前記押圧力が異なるように前記付与機構を制御する、
ことを特徴とする媒体搬送装置。
【0234】
(付記7)
媒体を搬送するピックローラと、
前記ピックローラを、媒体に当接する第1位置と、媒体から離間する第2位置との間で移動させる移動機構と、
媒体搬送方向において前記ピックローラより下流側に配置され、且つ、媒体を搬送する搬送ローラと、
媒体のスキューが発生したか否かを判定する判定部と、
媒体のスキューが発生した場合、前記ピックローラを前記第2位置に移動させるように前記移動機構を制御し、且つ、前記搬送ローラを用いて媒体のスキューを補正する制御部と、を有し、
前記制御部は、前記ピックローラを前記第2位置に移動させるように前記移動機構の制御を開始してから所定時間経過後に、媒体のスキューの補正を開始する、
ことを特徴とする媒体搬送装置。
【0235】
(付記8)
前記制御部は、
媒体のスキューの補正が完了した場合、前記ピックローラを前記第1位置に移動させるように前記移動機構を制御し、
前記ピックローラを前記第1位置に移動させるように前記移動機構の制御を開始してから第2所定時間が経過するまで、媒体の搬送を停止させる、付記7に記載の媒体搬送装置。
【0236】
(付記9)
媒体搬送方向と直交する方向に間隔を空けて配置され、それぞれ独立に回転して媒体を搬送する第1ローラ及び第2ローラと、
媒体のスキューが発生したか否かを判定する判定部と、
媒体のスキューが発生した場合に、前記第1ローラの周速度及び前記第2ローラの周速度を相互に異ならせることによって媒体のスキューを補正する制御部と、
前記第1ローラ及び前記第2ローラと前記第1ローラ及び前記第2ローラによって搬送される媒体との間のスリップ度合いを取得する取得部と、を有し、
前記制御部は、前記スリップ度合いに基づいて、媒体のスキューを補正する際の前記第1ローラの周速度及び前記第2ローラの周速度を設定する、
ことを特徴とする媒体搬送装置。
【0237】
(付記10)
スリップ度合いが予め記憶された記憶部をさらに有し、
前記取得部は、前記記憶部に予め記憶されたスリップ度合いを読み出すことにより、スリップ度合いを取得する、付記9に記載の媒体搬送装置。
【0238】
(付記11)
前記取得部は、直前に搬送された媒体のスリップ度合いを算出することにより、スリップ度合いを取得する、付記9に記載の媒体搬送装置。
【0239】
(付記12)
媒体搬送方向と直交する方向に間隔を空けて配置され、それぞれ独立に回転して媒体を搬送する第1ローラ及び第2ローラと、
媒体搬送方向と直交する方向に間隔を空けて配置された複数のセンサと、
前記複数のセンサのそれぞれが媒体の先端を検出したタイミングに基づいて、媒体のスキューが発生したか否かを判定する判定部と、
媒体のスキューが発生した場合に、前記第1ローラの周速度及び前記第2ローラの周速度を相互に異ならせることによって媒体のスキューを補正する制御部と、を有し、
前記制御部は、前記複数のセンサのそれぞれが前記補正した媒体の後端を検出したタイミングに基づいて、前記第1ローラの周速度又は前記第2ローラの周速度を補正する、
ことを特徴とする媒体搬送装置。
【0240】
(付記13)
媒体を搬送するローラと、
媒体搬送方向と直交する方向に間隔を空けて配置された複数のセンサと、
前記複数のセンサのうちの何れかのセンサが媒体を検出したときに、媒体のスキューの補正を開始する制御部と、を有し、
前記制御部は、前記複数のセンサのうち、媒体を検出していたセンサが、媒体を検出しなくなった場合、媒体のスキューの補正を停止する、
ことを特徴とする媒体搬送装置。
【0241】
(付記14)
前記制御部は、前記複数のセンサのうち、媒体を検出していたセンサが、所定時間連続して媒体を検出しなくなった場合に、媒体のスキューの補正を停止する、付記12に記載の媒体搬送装置。
【0242】
(付記15)
媒体を搬送するローラと、
媒体搬送方向と直交する方向に間隔を空けて配置された第1センサ及び第2センサと、
媒体搬送方向と直交する方向において前記第1センサと前記第2センサの間に配置されたピックセンサと、
前記第1センサ及び前記第2センサのうちの何れかのセンサが媒体を検出したときに、媒体のスキューの補正を開始する制御部と、を有し、
前記制御部は、前記ピックセンサが媒体を検出しておらず且つ前記第1センサ及び前記第2センサの両方が媒体を検出した場合、媒体のスキューの補正を停止する、
ことを特徴とする媒体搬送装置。
【0243】
(付記16)
媒体を搬送するローラと、
媒体搬送方向と直交する方向に間隔を空けて配置された第1センサ及び第2センサと、
媒体搬送方向と直交する方向において前記第1センサと前記第2センサの間に配置されたピックセンサと、
前記第1センサ及び前記第2センサのうちの何れかのセンサが媒体を検出したときに、媒体のスキューの補正を開始する制御部と、を有し、
前記制御部は、前記ピックセンサが媒体を検出してから所定時間が経過した時に媒体のスキューの補正を停止する、
ことを特徴とする媒体搬送装置。
【0244】
(付記17)
媒体を搬送するローラと、
媒体搬送方向と直交する方向に間隔を空けて配置された第1センサ及び第2センサと、
媒体搬送方向と直交する方向において前記第1センサと前記第2センサの間に配置されたピックセンサと、
前記第1センサ及び前記第2センサのうちの何れかのセンサが媒体を検出したときに、媒体のスキューの補正を開始する制御部と、を有し、
前記制御部は、媒体のスキューの補正を開始してから所定時間が経過するまでに前記ピックセンサが媒体を検出しない場合、媒体のスキューの補正を停止する、
ことを特徴とする媒体搬送装置。
【0245】
(付記18)
媒体を搬送するローラと、
前記ローラと前記ローラによって搬送される媒体との間のスリップ度合いを取得する取得部と、
媒体のスキューが発生したか否かを判定する判定部と、
媒体のスキューが発生した場合に、媒体のスキューを補正する制御部と、を有し、
前記制御部は、前記スリップ度合いに基づいて、媒体のスキューの補正を禁止する、
ことを特徴とする媒体搬送装置。
【0246】
(付記19)
媒体を搬送するローラと、
媒体搬送方向と直交する方向に間隔を空けて配置された複数のセンサと、
前記複数のセンサのそれぞれが媒体の先端を検出したタイミングに基づいて、媒体のスキューが発生したか否かを判定する判定部と、
媒体のスキューが発生した場合に、媒体のスキューを補正する制御部と、を有し、
前記制御部は、前記複数のセンサのそれぞれが前記補正した媒体の後端を検出したタイミングに基づいて、以降に搬送される媒体のスキューの補正を禁止する、
ことを特徴とする媒体搬送装置。
【0247】
(付記20)
載置台をさらに有し、
前記制御部は、媒体のスキューの補正を停止した場合、前記載置台に載置された全ての媒体の搬送が完了するまで、媒体のスキューの補正を再開しない、付記19に記載の媒体搬送装置。
【0248】
(付記21)
前記ローラに対向して配置される分離ローラと、
前記分離ローラの回転を検出する回転センサと、
前記制御部は、媒体のスキューの補正を停止した場合、前記回転センサが前記分離ローラの前記ローラへの従動回転を検出するまで、媒体のスキューの補正を再開しない、付記19に記載の媒体搬送装置。
【符号の説明】
【0249】
100 媒体搬送装置、103 載置台、112 ピックローラ、113 給送ローラ、114 分離ローラ、114c アーム、115 回転センサ、116 分離センサ、117 ピックセンサ、118 第1スキューセンサ、119 第2スキューセンサ、120a~120f 第1~第6搬送ローラ、121a~121f 第1~第6従動ローラ、131 アーム、131c 付勢部材、141 モータ、150 記憶装置、161 受付部、162 制御部、163 取得部、164 判定部