(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024119309
(43)【公開日】2024-09-03
(54)【発明の名称】巻線界磁型回転電機および巻線界磁型回転電機の製造方法
(51)【国際特許分類】
H02K 3/28 20060101AFI20240827BHJP
【FI】
H02K3/28 N
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023026109
(22)【出願日】2023-02-22
(71)【出願人】
【識別番号】000000011
【氏名又は名称】株式会社アイシン
(74)【代理人】
【識別番号】100104433
【弁理士】
【氏名又は名称】宮園 博一
(72)【発明者】
【氏名】三好 洋一
【テーマコード(参考)】
5H603
【Fターム(参考)】
5H603AA00
5H603BB01
5H603BB09
5H603BB12
5H603CA02
5H603CA05
5H603CC05
5H603CC07
5H603CC11
5H603CC17
5H603CD06
5H603CD21
5H603CE01
(57)【要約】
【課題】ロータコイルの占積率が低下するのを抑制することが可能な巻線界磁型回転電機を提供する。
【解決手段】この巻線界磁型回転電機100では、ロータ102は、ロータコア10と、ロータコア10に対して波巻形状に配置されたロータコイル20と、を含む。ロータコイル20は、丸型形状の断面を有する。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ロータコアに対して界磁巻線としてのロータコイルが配置されたロータを備える巻線界磁型回転電機であって、
ステータと、
前記ステータに対して径方向に対向するように配置された前記ロータと、を備え、
前記ロータは、軸方向に延びるとともに周方向に並ぶ複数のスロットを有する前記ロータコアと、前記ロータコアに対して前記複数のスロットの各々を前記軸方向に沿って通過するように波巻形状に配置された前記ロータコイルと、を含み、
前記ロータコイルは、丸型形状の断面を有する、巻線界磁型回転電機。
【請求項2】
前記ロータコイルは、丸型形状の断面を有する細線から構成され、前記ロータコアに対して前記複数のスロットの各々を前記軸方向に沿って通過するように前記波巻形状に配置されながら、複数回に渡って巻回されている、請求項1に記載の巻線界磁型回転電機。
【請求項3】
前記ロータコアは、前記複数のスロットの各々の前記周方向の両側に配置された複数のティースを含み、
前記丸型形状の断面を有する細線から構成された前記ロータコイルの断面の直径は、前記複数のスロットの各々における前記ティースの根元部同士の前記周方向の間隔の4分の1以下である、請求項2に記載の巻線界磁型回転電機。
【請求項4】
前記ロータコアは、第1分割コア部材と、前記第1分割コア部材に対して分割された第2分割コア部材とが、互いに組み合わされることにより形成されている、請求項1に記載の巻線界磁型回転電機。
【請求項5】
ロータコアに対して界磁巻線としてのロータコイルが配置されたロータを備える巻線界磁型回転電機の製造方法であって、
丸型形状の断面を有する前記ロータコイルを、軸方向に延びるとともに周方向に並ぶ複数のスロットを有する前記ロータコアに対して前記複数のスロットの各々を前記軸方向に沿って通過するように波巻形状に配置することによって、前記ロータコイルと前記ロータコイルが配置された前記ロータコアとを含む前記ロータを製造するロータ製造工程と、
前記ロータ製造工程の後、前記ロータを、ステータに対して径方向に対向するように配置するロータ配置工程と、を備える、巻線界磁型回転電機の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、巻線界磁型回転電機および巻線界磁型回転電機の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ロータコアに対して界磁巻線としてのロータコイルが配置されたロータを備える巻線界磁型回転電機が知られている(たとえば、特許文献1参照)。
【0003】
上記特許文献1には、ロータコアに対して界磁巻線としてのロータコイルが配置されたロータを備える回転電機(巻線界磁型回転電機)が開示されている。この回転電機のロータでは、ロータコアに対してロータコイルが波巻形状に配置されている。また、ロータコイルは、矩形形状の断面を有する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記特許文献1の回転電機では、ロータコイルは、矩形形状の断面を有する。この場合、ロータコイルの表面に絶縁被膜を均一な厚みで設けることが比較的難しいとともに、ロータコイルを波巻形状に曲げる際に絶縁被膜に割れが生じやすい。このため、ロータコイルの表面に設ける絶縁被膜を比較的厚くする必要がある。この場合、ロータコイルの占積率が低下しやすい。このため、ロータコイルの占積率が低下するのを抑制することが可能な回転電機(巻線界磁型回転電機)が望まれている。
【0006】
この発明は、上記のような課題を解決するためになされたものであり、この発明の1つの目的は、ロータコイルの占積率が低下するのを抑制することが可能な巻線界磁型回転電機および巻線界磁型回転電機の製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、この発明の第1の局面における巻線界磁型回転電機は、ロータコアに対して界磁巻線としてのロータコイルが配置されたロータを備える巻線界磁型回転電機であって、ステータと、ステータに対して径方向に対向するように配置されたロータと、を備え、ロータは、軸方向に延びるとともに周方向に並ぶ複数のスロットを有するロータコアと、ロータコアに対して複数のスロットの各々を軸方向に沿って通過するように波巻形状に配置されたロータコイルと、を含み、ロータコイルは、丸型形状の断面を有する。
【0008】
この発明の第1の局面における巻線界磁型回転電機では、上記のように、ロータコイルは、丸型形状の断面を有する。これにより、ロータコイルが矩形形状の断面を有する場合と比較して、ロータコイルの表面に絶縁被膜を均一な厚みで設けることが容易であるとともに、ロータコイルを波巻形状に曲げる際に絶縁被膜に割れが生じにくい。これにより、ロータコイルが矩形形状の断面を有する場合と異なり、ロータコイルの表面に設ける絶縁被膜を比較的厚くする必要がない。その結果、ロータコイルの占積率が低下するのを抑制することができる。
【0009】
上記第1の局面における巻線界磁型回転電機において、好ましくは、ロータコイルは、丸型形状の断面を有する細線から構成され、ロータコアに対して複数のスロットの各々を軸方向に沿って通過するように波巻形状に配置されながら、複数回に渡って巻回されている。
【0010】
このように構成すれば、ロータコイルが矩形形状の断面を有する細線から構成されている場合と異なり、ロータコイルの断面に角部がないので、ロータコイルをロータコアに対して波巻形状に配置させながら複数回に渡って巻回する際に、ロータコイルのうちのロータコアに既に巻回された部分によって、ロータコイルを構成する細線同士が互いの移動を妨げにくい。これにより、ロータコイルが矩形形状の断面を有する細線から構成されている場合と比較して、ロータコイルをロータコアに対して波巻形状に配置させながら複数回に渡って巻回する際に、ロータコイルを密に配置することができる。その結果、ロータコイルを配置できない無駄なスペースが生じるのを抑制することができる。
【0011】
上記ロータコイルが丸型形状の断面を有する細線から構成されロータコアに対して波巻形状に配置されながら複数回に渡って巻回されている構成において、好ましくは、ロータコアは、複数のスロットの各々の周方向の両側に配置された複数のティースを含み、丸型形状の断面を有する細線から構成されたロータコイルの断面の直径は、複数のスロットの各々におけるティースの根元部同士の周方向の間隔の4分の1以下である。
【0012】
このように構成すれば、丸型形状の断面を有する細線から構成されたロータコイルの断面の直径を、ロータコイルをロータコアに対して波巻形状に配置させながら複数回に渡って巻回するのが可能なように十分に小さくすることができる。
【0013】
上記第1の局面における巻線界磁型回転電機において、好ましくは、ロータコアは、第1分割コア部材と、第1分割コア部材に対して分割された第2分割コア部材とが、互いに組み合わされることにより形成されている。
【0014】
このように構成すれば、第1分割コア部材と第2分割コア部材とを分割することができるので、ロータコイルを第1分割コア部材に対して波巻形状に配置させた後に、ロータコイルが波巻形状に配置された第1分割コア部材に対して、第2分割コア部材を組み合わせることができる。これにより、ロータコイルを第1分割コア部材に対して波巻形状に配置させる際に、第1分割コア部材に対して第2分割コア部材が配置されていない分だけ、ロータコイルの余長を短くすることができる。その結果、ロータコイルのコイルエンド部が大きくなるのを抑制することができる。
【0015】
また、上記目的を達成するために、この発明の第2の局面における巻線界磁型回転電機の製造方法は、ロータコアに対して界磁巻線としてのロータコイルが配置されたロータを備える巻線界磁型回転電機の製造方法であって、丸型形状の断面を有するロータコイルを、軸方向に延びるとともに周方向に並ぶ複数のスロットを有するロータコアに対して複数のスロットの各々を軸方向に沿って通過するように波巻形状に配置することによって、ロータコイルとロータコイルが配置されたロータコアとを含むロータを製造するロータ製造工程と、ロータ製造工程の後、ロータを、ステータに対して径方向に対向するように配置するロータ配置工程と、を備える。
【0016】
この発明の第2の局面における巻線界磁型回転電機の製造方法では、上記のように、ロータ製造工程において、丸型形状の断面を有するロータコイルを、ロータコアに対して波巻形状に配置する。これにより、矩形形状の断面を有するロータコイルをロータコアに対して波巻形状に配置する場合と比較して、ロータコイルの表面に絶縁被膜を均一な厚みで設けることが容易であるとともに、ロータコイルを波巻形状に曲げる際にロータコイルの表面に設けられた絶縁被膜に割れが生じにくい。これにより、矩形形状の断面を有するロータコイルをロータコアに対して波巻形状に配置する場合と異なり、ロータコイルの表面に設ける絶縁被膜を比較的厚くする必要がない。その結果、上記第1の局面における巻線界磁型回転電機と同様に、ロータコイルの占積率が低下するのを抑制することが可能な巻線界磁型回転電機の製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】本発明の一実施形態による巻線界磁型回転電機を示した平面図である。
【
図2】本発明の一実施形態による巻線界磁型回転電機のロータを示した斜視図である。
【
図3】本発明の一実施形態による巻線界磁型回転電機のロータコイルのスロットの近傍の拡大平面図である。
【
図4】本発明の一実施形態による巻線界磁型回転電機のロータコアを示した斜視図である。
【
図5】本発明の一実施形態による巻線界磁型回転電機のロータコアのうちの第1分割コア部材を示した斜視図である。
【
図6】本発明の一実施形態による巻線界磁型回転電機のロータコアのうちの第2分割コア部材を示した斜視図である。
【
図7】本発明の一実施形態による巻線界磁型回転電機の製造フローを示した図である。
【
図8】本発明の一実施形態による巻線界磁型回転電機の製造フローにおけるロータコイル波巻配置工程を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
【0019】
[巻線界磁型回転電機の構成]
図1~
図6を参照して、本発明の一実施形態による巻線界磁型回転電機100の構成について説明する。
【0020】
以下の説明では、巻線界磁型回転電機100が備えるロータ102(
図1参照)の軸方向、径方向および周方向を、それぞれ、Z方向、R方向およびC方向とする。また、軸方向(Z方向)の一方側および他方側を、それぞれ、Z1側およびZ2側とする。また、径方向(R方向)の内側および外側を、それぞれ、R1側およびR2側とする。
【0021】
巻線界磁型回転電機100は、巻線界磁式の同期モータである。巻線界磁型回転電機100は、たとえば、駆動用モータとして車両に搭載される。
【0022】
図1に示すように、巻線界磁型回転電機100は、ステータ101と、ロータ102と、を備える。ロータ102は、ステータ101に対してR1側(径方向の内側)に対向するように配置されている。すなわち、巻線界磁型回転電機100は、インナーロータ型の回転電機である。
【0023】
(ロータの構成)
図2に示すように、ロータ102は、ロータコア10と、ロータコイル20と、を含む。
【0024】
(ロータコアの構成)
ロータコア10は、複数の電磁鋼板(たとえば、珪素鋼板)がZ方向に積層されることにより形成されている。
【0025】
ロータコア10は、Z方向に沿った中心軸線Aを中心軸とした円環状の環状部11を含む。Z方向に見て、環状部11の中央部には、シャフト挿入孔10aが形成されている。シャフト挿入孔10aには、巻線界磁型回転電機100の回転中心となるロータシャフトが挿入される。
【0026】
ロータコア10は、環状部11からR2側に突出する複数のティース12を含む。複数のティース12の各々は、Z方向に延びるように形成されている。複数のティース12は、C方向に等角度間隔で並ぶように配置されている。そして、C方向に隣接するティース12同士の間には、各々、スロット13が形成されている。すなわち、ロータコア10は、Z方向(軸方向)に延びるとともにC方向(周方向)に並ぶ複数のスロット13と、複数のスロット13の各々のC方向の両側に配置されている複数のティース12と、を有する。
【0027】
複数のティース12は、C方向に並ぶ複数の第1ティースT1と、C方向において複数の第1ティースT1同士の間に配置された複数の第2ティースT2と、を含む。すなわち、第1ティースT1と第2ティースT2とがC方向に交互に並ぶように配置されている。
【0028】
図3に示すように、複数のスロット13の各々において、ティース12の先端部同士のC方向の間隔D1は、ティース12のうちの先端部よりも根元部側(R1側)の部分同士のC方向の間隔D2よりも小さい。言い換えると、複数のスロット13の各々において、スロット13の先端部同士のC方向の幅は、スロット13のうちの先端部よりも根元部側の部分同士のC方向の幅よりも小さい。すなわち、複数のスロット13の各々は、セミオープン型のスロット形状を有する。なお、複数のスロット13の各々において、ティース12同士のC方向の間隔は、根元部からR2側に向かって徐々に大きくなっている。
【0029】
(ロータコイルの構成)
図2に示すように、ロータコイル20は、ロータコア10に対して配置されている。ロータコイル20は、銅、銅合金、アルミニウムおよびアルミニウム合金のうちのいずれかを主成分とする導線と、導線を覆う絶縁被膜とから構成されている。ロータコイル20は、3相交流の電力が供給されることにより、磁束を発生させるように構成されている。すなわち、ロータコイル20は、ロータコア10に対して界磁巻線として配置されている。
【0030】
ロータコイル20は、スロット収容部21と、コイルエンド部22と、を含む。スロット収容部21は、ロータコイル20のうちの複数のスロット13の各々に収容されている部分である。コイルエンド部22は、ロータコイル20のうちの、ロータコア10のZ1側の端面10bからZ1側に突出する部分、および、ロータコア10のZ2側の端面からZ2側に突出する部分である。
【0031】
ロータコイル20は、ロータコア10に対して複数のスロット13の各々をZ方向(軸方向)に沿って通過するように波巻形状に配置されている。具体的には、ロータコイル20は、スロット収容部21と、Z1側のコイルエンド部22と、スロット収容部21と、Z2側のコイルエンド部22と、をこの順に繰り返すように、ロータコア10に対して配置されている。すなわち、ロータコイル20は、ロータコア10に対してZ方向に蛇行しながらC方向に延びるミアンダ状に配置されている。
【0032】
図3に示すように、ロータコイル20は、丸型形状の断面を有する細線から構成されている。そして、ロータコイル20は、ロータコア10に対して複数のスロット13の各々をZ方向(軸方向)に沿って通過するように波巻形状に配置されながら、複数回に渡って巻回されている。
【0033】
丸型形状の断面を有する細線から構成されたロータコイル20の断面の直径Dは、複数のスロット13の各々におけるティース12の根元部同士のC方向(周方向)の間隔D3の4分の1以下である。言い換えると、丸型形状の断面を有する細線から構成されたロータコイル20の断面の直径Dは、複数のスロット13の各々の根元部のC方向の幅の4分の1以下である。なお、
図3では、ロータコイル20の断面の直径Dが、複数のスロット13の各々におけるティース12の根元部同士のC方向の間隔D3の約10分の1である例を示している。
【0034】
丸型形状の断面を有する細線から構成されたロータコイル20の断面の直径Dは、複数のスロット13の各々におけるティース12の先端部同士のC方向の間隔D1よりも小さい。言い換えると、丸型形状の断面を有する細線から構成されたロータコイル20の断面の直径Dは、複数のスロット13の各々の先端部のC方向の幅よりも小さい。なお、
図3では、ロータコイル20の断面の直径Dが、複数のスロット13の各々におけるティース12の先端部同士のC方向の間隔D1の3分の1以下である例を示している。
【0035】
(ロータコアの分割構造)
図4に示すように、ロータコア10は、第1分割コア部材31と、第1分割コア部材31に対して分割された第2分割コア部材32とが、互いに組み合わされることにより形成されている。具体的には、
図5に示すように、第1分割コア部材31は、環状部11(
図4参照)から第2係合部32c(後述する)を除いた部分に相当する環状部31aと、環状部31aと一体的に形成された複数(実施形態では4つ)の第1ティースT1を有する。
図6に示すように、第2分割コア部材32は、複数(実施形態では4つ)設けられている。複数の第2分割コア部材32の各々は、1つの第2ティースT2を有する。そして、ロータコア10は、
図4に示すように、1つの第1分割コア部材31と、複数の第2分割コア部材32とが、互いに組み合わされることにより形成されている。すなわち、ロータコア10は、複数の第1ティースT1が一体的に形成された1つの第1分割コア部材31と、複数の第2ティースT2の各々を1つずつ有する複数の第2分割コア部材32とが、互いに組み合わされることにより形成されている。
【0036】
ロータコア10は、ロータコイル20が波巻形状に配置された第1分割コア部材31に対して、第2分割コア部材32が組み付けられることにより形成されている。具体的には、ロータコア10は、ロータコイル20を第1分割コア部材31に対して波巻形状に配置させた後に、ロータコイル20が波巻形状に配置された第1分割コア部材31に対して、第2分割コア部材32を組み合わせることにより形成されている。
【0037】
図5に示すように、第1分割コア部材31は、複数のスロット13(
図4参照)の各々よりもR1側に配置された第1係合部31cを含む。
図6に示すように、第2分割コア部材32は、複数のスロット13の各々よりもR1側に配置され、第1係合部31c(
図5参照)と係合する第2係合部32cを含む。そして、
図4に示すように、ロータコア10は、第1係合部31cと第2係合部32cとが互いに係合するように、第1分割コア部材31と第2分割コア部材32とが互いに組み合わされることにより形成されている。
【0038】
[巻線界磁型回転電機の製造方法]
図7および
図8を参照して、本発明の一実施形態による巻線界磁型回転電機100の製造方法について説明する。
【0039】
(ロータ製造工程)
まず、
図7に示すように、ステップS10において、ロータ製造工程が行われる。ロータ製造(S10)は、丸型形状の断面を有するロータコイル20を、Z方向(軸方向)に延びるとともにC方向(周方向)に並ぶ複数のスロット13を有するロータコア10に対して複数のスロット13の各々をZ方向に沿って通過するように波巻形状に配置することによって、ロータコイル20とロータコイル20が配置されたロータコア10とを含むロータ102(
図2参照)を製造する工程である。
【0040】
ロータ製造工程(S10)では、第1分割コア部材形成工程(S11)と、第2分割コア部材形成工程(S12)と、ロータコイル波巻配置工程(S13)と、第2分割コア部材組合せ工程(S14)とが、この順に行われる。なお、第1分割コア部材形成工程(S11)と、第2分割コア部材形成工程(S12)とが、互いに逆の順序で行われてもよい。
【0041】
<第1分割コア部材形成工程>
第1分割コア部材形成工程(S11)は、複数の第1ティースT1を有する第1分割コア部材31(
図5参照)を形成する工程である。
【0042】
<第2分割コア部材形成工程>
第2分割コア部材形成工程(S12)は、1つの第2ティースT2を有する第2分割コア部材32(
図6参照)を複数形成する工程である。
【0043】
<ロータコイル波巻配置工程>
図8に示すように、ロータコイル波巻配置工程(S13)は、ロータコイル20を、第1分割コア部材31に対して波巻形状に配置する工程である。
【0044】
<第2分割コア部材組合せ工程>
図7に示すように、第2分割コア部材組合せ工程(S14)は、ロータコイル20が波巻形状に配置された第1分割コア部材31に対して、複数の第2分割コア部材32の各々を組み合わせる(
図2参照)工程である。
【0045】
(ロータ配置工程)
次に、ステップS20において、ロータ配置工程が行われる。ロータ配置工程(S20)は、ロータ102を、ステータ101に対してR1側(径方向の内側)に対向するように配置する(
図1参照)工程である。
【0046】
[実施形態の効果]
本実施形態では、以下のような効果を得ることができる。
【0047】
(巻線界磁型回転電機の効果)
本実施形態では、上記のように、ロータコイル20は、丸型形状の断面を有する。これにより、ロータコイル20が矩形形状の断面を有する場合と比較して、ロータコイル20の表面に絶縁被膜を均一な厚みで設けることが容易であるとともに、ロータコイル20を波巻形状に曲げる際に絶縁被膜に割れが生じにくい。これにより、ロータコイル20が矩形形状の断面を有する場合と異なり、ロータコイル20の表面に設ける絶縁被膜を比較的厚くする必要がない。その結果、ロータコイル20の占積率が低下するのを抑制することができる。
【0048】
また、本実施形態では、上記のように、ロータコイル20は、丸型形状の断面を有する細線から構成されている。そして、ロータコイル20は、ロータコア10に対して複数のスロット13の各々をZ方向(軸方向)に沿って通過するように波巻形状に配置されながら、複数回に渡って巻回されている。これにより、ロータコイル20が矩形形状の断面を有する細線から構成されている場合と異なり、ロータコイル20の断面に角部がないので、ロータコイル20をロータコア10に対して波巻形状に配置させながら複数回に渡って巻回する際に、ロータコイル20を構成する細線同士が互いの移動を妨げにくい。これにより、ロータコイル20が矩形形状の断面を有する細線から構成されている場合と比較して、ロータコイル20をロータコア10に対して波巻形状に配置させながら複数回に渡って巻回する際に、ロータコイル20を密に配置することができる。その結果、ロータコイル20を配置できない無駄なスペースが生じるのを抑制することができる。
【0049】
また、本実施形態では、上記のように、ロータコア10は、複数のスロット13の各々のC方向(周方向)の両側に配置された複数のティース12を含む。そして、丸型形状の断面を有する細線から構成されたロータコイル20の断面の直径Dは、複数のスロット13の各々におけるティース12の根元部同士のC方向の間隔D3の4分の1以下である。これにより、丸型形状の断面を有する細線から構成されたロータコイル20の断面の直径Dを、ロータコイル20をロータコア10に対して波巻形状に配置させながら複数回に渡って巻回するのが可能なように十分に小さくすることができる。
【0050】
また、本実施形態では、上記のように、ロータコア10は、第1分割コア部材31と、第1分割コア部材31に対して分割された第2分割コア部材32とが、互いに組み合わされることにより形成されている。これにより、第1分割コア部材31と第2分割コア部材32とを分割することができるので、ロータコイル20を第1分割コア部材31に対して波巻形状に配置させた後に、ロータコイル20が波巻形状に配置された第1分割コア部材31に対して、第2分割コア部材32を組み合わせることができる。これにより、ロータコイル20を第1分割コア部材31材に対して波巻形状に配置させる際に、第1分割コア部材31に対して第2分割コア部材32が配置されていない分だけ、ロータコイル20の余長を短くすることができる。その結果、ロータコイル20のコイルエンド部22が大きくなるのを抑制することができる。
【0051】
(巻線界磁型回転電機の製造方法の効果)
本実施形態では、上記のように、ロータ製造工程(S10)において、丸型形状の断面を有するロータコイル20を、ロータコア10に対して波巻形状に配置する。これにより、矩形形状の断面を有するロータコイル20をロータコア10に対して波巻形状に配置する場合と比較して、ロータコイル20の表面に絶縁被膜を均一な厚みで設けることが容易であるとともに、ロータコイル20を波巻形状に曲げる際にロータコイル20の表面に設けられた絶縁被膜に割れが生じにくい。これにより、矩形形状の断面を有するロータコイル20をロータコア10に対して波巻形状に配置する場合と異なり、ロータコイル20の表面に設ける絶縁被膜を比較的厚くする必要がない。その結果、上記巻線界磁型回転電機100と同様に、ロータコイル20の占積率が低下するのを抑制することが可能な巻線界磁型回転電機100の製造方法を提供することができる。
【0052】
[変形例]
なお、今回開示された実施形態は、すべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した実施形態の説明ではなく特許請求の範囲によって示され、さらに特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更(変形例)が含まれる。
【0053】
たとえば、上記実施形態では、第1分割コア部材31が、複数のスロット13の各々よりもR1側(径方向の内側)に配置された第1係合部31cを含み、第2分割コア部材32が、複数のスロット13の各々よりもR1側に配置され、第1係合部31cと係合する第2係合部32cを含み、ロータコア10が、第1係合部31cと第2係合部32cとが互いに係合するように、第1分割コア部材31と第2分割コア部材32とが互いに組み合わされることにより形成されている例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、第1分割コア部材が、複数のスロットの各々よりも径方向の外側に配置された第1係合部を含み、第2分割コア部材が、複数のスロットの各々よりも径方向の外側に配置され、第1係合部と係合する第2係合部を含み、ロータコアが、第1係合部と第2係合部とが互いに係合するように、第1分割コア部材と第2分割コア部材とが互いに組み合わされることにより形成されていてもよい。
【0054】
また、上記実施形態では、ロータコア10が、第1分割コア部材31と、第1分割コア部材31に対して分割された第2分割コア部材32とが、互いに組み合わされることにより形成されている例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、ロータコアが、一体的に形成されていてもよい。
【0055】
また、上記実施形態では、丸型形状の断面を有する細線から構成されたロータコイル20の断面の直径Dが、複数のスロット13の各々におけるティース12の根元部同士のC方向(周方向)の間隔D3の4分の1以下である例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、丸型形状の断面を有する細線から構成されたロータコイルの断面の直径が、複数のスロットの各々におけるティースの根元部同士の周方向の間隔の4分の1よりも大きくてもよい。
【0056】
また、上記実施形態では、ロータコイル20が、丸型形状の断面を有する細線から構成され、ロータコア10に対して複数のスロット13の各々をZ方向(軸方向)に沿って通過するように波巻形状に配置されながら、複数回に渡って巻回されている例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、ロータコイルが、丸型形状の断面を有する太線から構成され、ロータコアに対して複数のスロットの各々を軸方向に沿って通過するように波巻形状に配置されながら、1回だけ巻回されていてもよい。
【0057】
また、上記実施形態では、巻線界磁型回転電機100が、インナーロータ型の回転電機である例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、巻線界磁型回転電機が、アウターロータ型の回転電機であってもよい。
【0058】
また、上記実施形態では、複数のスロット13の各々において、ティース12の先端部同士のC方向(周方向)の間隔D1が、ティース12のうちの先端部よりもR1側(径方向の内側)の部分同士のC方向の間隔D2よりも小さい例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、複数のスロットの各々において、ティースの先端部同士の周方向の間隔が、ティースのうちの先端部よりも径方向の内側の部分同士の周方向の間隔以上であってもよい。
【0059】
また、上記実施形態では、複数のスロット13の各々において、ティース12同士のC方向(周方向)の間隔が、根元部からR2側(径方向の外側)に向かって徐々に大きくなっている例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、複数のスロットの各々において、ティース同士の周方向の間隔が、根元部から径方向の外側に向かって均一であってもよいし、根元部から径方向の外側に向かって徐々に小さくなっていてもよい。
【0060】
また、上記実施形態では、丸型形状の断面を有する細線から構成されたロータコイル20の断面の直径Dが、複数のスロット13の各々におけるティース12の先端部同士のC方向(周方向)の間隔D1よりも小さい例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、丸型形状の断面を有する細線から構成されたロータコイルの断面の直径が、複数のスロットの各々におけるティースの先端部同士の周方向の間隔以上であってもよい。
【0061】
また、上記実施形態では、丸型形状の断面を有する細線から構成されたロータコイル20の断面の直径Dが、複数のスロット13の各々におけるティース12の根元部同士のC方向(周方向)の間隔D3の4分の1以下である例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、丸型形状の断面を有する細線から構成されたロータコイルの断面の直径が、複数のスロットの各々におけるティースの根元部同士の周方向の間隔の4分の1よりも大きくてもよい。
【符号の説明】
【0062】
10 ロータコア
13 スロット
20 ロータコイル
31 第1分割コア部材
32 第2分割コア部材
100 巻線界磁型回転電機
101 ステータ
102 ロータ
D (ロータコイルの)断面の直径
D3 (複数のスロットの各々におけるティースの根元部同士の)周方向の間隔